説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】パネルの電磁干渉(EMI)を低減出来るPDPを提供する。
【解決手段】放電空間Sを介して対向される前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間に、放電空間内で放電を発生させる行電極対(X,Y)および列電極Dと、この行電極対(X,Y)と列電極Dをそれぞれ被覆する誘電体層2および列電極保護層5が形成され、少なくとも列電極Dが、68.5〜95重量パーセントの導電性金属成分と、5〜25重量パーセントのガラス成分を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマディスプレイパネルの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、密閉された放電空間を介して平行に対向される一対の基板のうち、一方の内面側に行方向に延びる複数の行電極対が列方向に並設され、他方の基板の内面側に列方向に延びる複数の列電極が行方向に並設されて、各行電極対と列電極が交差する部分の放電空間にそれぞれ放電セルが形成されており、各放電セル内に放電セル毎に赤,緑,青に色分けされた蛍光体層が形成された構成を備えている。
【0003】
このPDPは、行電極対の一方の行電極と列電極との間において、発光させる放電セルを選択するためのアドレス放電が発生され、この後に、アドレス放電によって選択された放電セル(発光セル)内において、行電極対を構成する一対の行電極の間においてサステイン放電が発生されて、それぞれの発光セル内に形成されている赤,緑,青の蛍光体層が発光することにより、マトリクス表示による画像を形成する。
【0004】
このような構成の従来のPDPの電極は、導電性金属材料である銀(Ag)およびガラス材料であるガラスフリット,バインダである有機成分を含む電極形成用ペーストが基板上に所要の電極パターンで塗布された後、焼成されることによって形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この従来のPDPの電極を形成する電極形成用ペーストは、電極を被覆する誘電体層が電極と同時に焼成される場合に、電極の銀成分の拡散によって誘電体層が変色するのを防止するために、電極形成用ペースト中のガラスフリットの含有量が1〜12wt%に設定されている。
【0006】
しかしながら、上記従来のPDPのように、銀が導電性金属として電極に含まれる場合には、電極の体積抵抗率が低くなり、このため、パネルの電磁干渉(EMI)が悪化するという問題を有している。
【0007】
【特許文献1】特開2006−128055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記のような従来のPDPが有している問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明(請求項1に記載の発明)によるPDPは、上記課題を達成するために、放電空間を介して対向される二枚の基板の間に、放電空間内で放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層が形成されたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記放電電極が、68.5〜95重量パーセントの導電性金属成分と、5〜25重量パーセントのガラス成分を含んでいることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明は、放電空間を介して対向される二枚の基板の間に、放電空間内で放電を発生させる列電極等の放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層が形成され、この放電電極が、68.5〜95重量パーセントの例えば銀等の導電性金属成分と、5〜25重量パーセントのガラス成分を含んでいるPDPを最良の実施形態としている。
【0011】
この実施形態によるPDPは、放電空間内において放電を発生させる放電電極が、ガラス成分を従来のPDPの放電電極と比べて多く含んでいることによって、従来のPDPよりも大きな体積抵抗率を有しており、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)を低減することが出来る。
【0012】
上記実施形態のPDPにおいて、さらに、放電電極に含まれる導電性金属成分を90重量パーセント以下とし、ガラス成分を10重量パーセント以上とするのが好ましく、これによって、放電電極の体積抵抗率を大きくすることが好ましい。
【0013】
さらに、上記実施形態のPDPにおいて、放電電極の体積抵抗率を8〜60μΩ・cmに設定するのが好ましく、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)の低減効果を有効に発揮することが出来る。
【0014】
さらに、上記実施形態のPDPにおいて、放電電極が、焼結抑制材を含む電極形成用ペーストが焼成されることによって形成され、焼成後において0.5〜11重量パーセントの焼結抑制材を含んでいるのが好ましい。
【0015】
この焼結制御材がPDP製造時の製造工程において電極形成用ペースト中の導電性金属成分の焼結を抑制するので、放電電極が従来のPDPよりも大きな体積抵抗率を有することが出来、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)をさらに低減することが出来る。
【0016】
この焼結抑制材としては、Cu,Cr,Mo,Al,Ni,Mnまたはこれらの金属酸化物が挙げられ、これらの内の少なくとも一つが使用される。
【実施例】
【0017】
図1ないし3は、この発明によるPDPの実施形態の一実施例を示しており、図1はこの第1実施例におけるPDPを模式的に示す正面図、図2は図1のV−V線における断面図、図3は図1のW−W線における断面図である。
この図1ないし3に示されるPDPは、表示面である前面ガラス基板1の内面に、複数の行電極対(X,Y)が、前面ガラス基板1の行方向(図1の左右方向)に延びるとともに列方向に平行に並設されている。
【0018】
行電極X,Yは、それぞれ、行方向に帯状に延びる金属製のバス電極Xa,Yaと、このバス電極Xa,Yaから互いに対になっている相手の行電極側に延びて放電ギャップgを介して互いに対向されるITO等の透明導電膜によって形成された複数の透明電極Xb,Ybとから構成されている。
前面ガラス基板1の内面には、さらに、行電極対(X,Y)を被覆する誘電体層2が形成され、この誘電体層2の内面に酸化マグネシウム等による保護層3が形成されている。
【0019】
この前面ガラス基板1に背面ガラス基板4が放電空間Sを介して平行に対向され、この背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する内面の行電極対(X,Y)の互いに対になっている透明電極Xb,Ybに対向するそれぞれの位置に、列方向に延びる複数の列電極Dが形成されている。
この列電極Dについては、後でさらに詳述する。
背面ガラス基板4の内面上には、さらに、列電極Dを被覆する列電極保護層5が形成されている。
【0020】
この列電極保護層5上には、略格子形状の隔壁6が形成されていて、放電空間Sを行電極対(X,Y)の放電ギャップgを介して対向する透明電極XbとYbの各対に対向する部分毎に区画して、それぞれ放電セルCを形成している。
各放電セルC内には、放電セルC毎に赤,緑,青に色分けされた蛍光体層7が形成されている。
【0021】
放電空間Sは、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間の周縁部に形成された図示しない封着層によって密閉されていて、キセノンを含む放電ガスが封入されている。
【0022】
このPDPは、行電極対(X,Y)の一方の行電極Yと列電極Dとの間で発光させる放電セルCを選択するためのアドレス放電を発生させ、次に、行電極対(X,Y)の行電極XとY間でアドレス放電によって選択された放電セル(発光セル)C内においてサステイン放電を発生させて、各放電セル(発光セル)Cの赤,緑,青の蛍光体層7を発光させることにより、マトリクス表示による画像を形成する。
【0023】
上述した列電極Dは、電極形成用ペーストが背面ガラス基板4の内面上に塗布されてパターニングされ、その後に500℃以上の温度で焼成されることによって形成される。
このとき、列電極Dの焼成収縮率は、10パーセント以下に設定されている。
【0024】
この列電極Dを形成する電極形成用ペーストは、銀(Ag)を導電性金属として53〜59重量パーセント(wt%)含み、Bi23を主成分とする軟化点が450〜600℃のガラス成分(Pbは含んでいない)を8〜15wt%含み、有機バインダとして有機成分を24.5〜38.4wt%含み、さらに、Cu,Cr,Mo,Al,Ni,Mnなどの金属または金属酸化物が、焼結抑制材として0.6〜8wt%混合されている。
【0025】
この焼結抑制材は、背面ガラス基板4上に塗布された電極形成用ペーストが焼成される際に、後述するように、電極形成用ペースト中の導電性金属粒子の粒子成長を抑制する働きを有している。
【0026】
この電極形成用ペーストによって形成された焼成後の列電極Dの成分は、導電性金属である銀(Ag)が68.5〜95wt%,Bi23を主成分とするガラス成分が5〜25wt%,焼結抑制材として混合されたCu,Cr,Mo,Al,Ni,Mnなどの金属または金属酸化物が0.5〜11wt%となっており、その体積抵抗率は、8〜60μΩ・cmである。
【0027】
下記の表1ないし4は、それぞれ、上記実施例における電極形成用ペーストの成分比率と焼成後の列電極Dの成分比率および体積抵抗率の例を示しており、表5は、従来のPDPにおける電極形成用ペーストの成分比率と焼成後の列電極Dの成分比率および体積抵抗率の比較例を示している。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
この実施例における上記の各例において、導電性金属として銀を含む列電極Dが、焼成後にガラス成分を14.3〜20.5wt%と従来のPDPの場合に比べて多く含んでいることによって、列電極Dの体積抵抗率が大きくなっているとともに、列電極Dを形成する列電極形成用ペースト中に、従来は含まれていなかった焼結制御材が0.6〜8wt%含まれていることによって、列電極Dの体積抵抗率がさらに大きくなっている(表5参照)。
特に、表4における例4の場合には、アルミニウム電極とほぼ同程度の体積抵抗率を得ることが出来る。
【0034】
列電極形成用ペースト中に焼結制御材を含んでいる場合に、焼結制御材を含んでいない場合に比べて焼成後の列電極の体積抵抗率が大きくなるのは、焼成時における銀(Ag)の焼結が焼結制御材によって抑制されるためである。
【0035】
図4(a)は焼結制御材を含む電極形成用ペーストによって形成された銀電極の表面のSEM写真であり、図4(b)は焼結制御材を含まない電極形成用ペーストによって形成された従来の銀電極の表面のSEM写真である。
【0036】
この図4の(a)と(b)を比較すると、焼結制御材を含む電極形成用ペーストによって形成された銀電極の焼結が、焼結制御材を含まない電極形成用ペーストによって形成された銀電極と比べて抑制されていることが分かる。
【0037】
このように、上記PDPは、銀電極である列電極Dがガラス成分を従来のPDPの場合に比べて多く含んでおり、さらに、列電極Dの形成に使用される電極形成用ペーストが焼結制御材を含んでいて、この焼結制御材がPDP製造時の製造工程において電極形成用ペースト中の銀(Ag)の焼結を抑制するので、従来のPDPよりも大きな体積抵抗率を有する列電極を備えることが出来、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)を低減することが出来る。
【0038】
そして、上記のPDPによれば、電極形成用ペーストへの焼結制御材の添加量を任意の量に調整することによって、銀電極である列電極Dの体積抵抗値を、所望の値に任意に調整することが可能になる。
【0039】
また、上記のPDPによれば、列電極Dに含まれるガラス成分を従来のPDPの場合よりも増加させたことによって、銀(Ag)の使用量を減少させることが出来、これによって、PDPのコストダウンを図ることが出来る。
【0040】
なお、上記実施例においては、列電極について説明を行ったが、行電極対(X,Y)の金属製のバス電極Xa,Yaを上記と同様の構成にしても良く、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)の低減とコストダウンをさらに図ることが出来るようになる。
【0041】
上記実施例のPDPは、放電空間を介して対向される二枚の基板の間に、放電空間内で放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層が形成されたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記放電電極が、68.5〜95重量パーセントの導電性金属成分と、5〜25重量パーセントのガラス成分を含んでいるPDPを、上位概念の実施形態としている。
【0042】
この実施形態によるPDPは、放電空間内において放電を発生させる放電電極が、ガラス成分を従来のPDPの放電電極と比べて多く含んでいることによって、従来のPDPよりも大きな体積抵抗率を有しており、これによって、パネルの電磁干渉(EMI)を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施形態における一実施例を示す正面図である。
【図2】図1のV−V線における断面図である。
【図3】図1のW−W線における断面図である。
【図4】(a)電極形成用ペーストに焼結抑制材を含んでいる場合の銀電極のSEM写真である。
【0044】
(b)電極形成用ペーストに焼結抑制材を含んでいない場合の銀電極のSEM写真である。
【符号の説明】
【0045】
1 …前面ガラス基板(一方の基板)
2 …誘電体層
4 …背面ガラス基板(他方の基板)
5 …列電極保護層(誘電体層)
C …放電セル
S …放電空間
X,Y …行電極(放電電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を介して対向される二枚の基板の間に、放電空間内で放電を発生させる放電電極とこの放電電極を被覆する誘電体層が形成されたプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記放電電極が、68.5〜95重量パーセントの導電性金属成分と、5〜25重量パーセントのガラス成分を含んでいることを特徴するプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記放電電極に含まれる導電性金属成分が90重量パーセント以下であり、ガラス成分が10重量パーセント以上である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル
【請求項3】
前記放電電極の体積抵抗率が、8〜60μΩ・cmである請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記導電性金属成分の主成分として銀を含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記放電電極が、焼結抑制材を含む電極形成用ペーストが焼成されることによって形成され、焼成後において0.5〜11重量パーセントの焼結抑制材を含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記焼結抑制材が、Cu,Cr,Mo,Al,Ni,Mnまたはこれらの金属酸化物の内の少なくとも一つを含んでいる請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記二枚の基板の一方の基板側に対になった行電極が形成され、この行電極の一方との間で放電を行う列電極が他方の基板側に形成され、前記放電電極が列電極である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記ガラス成分の軟化点が450〜600℃である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記放電電極が、500℃以上の温度で焼成されている請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記放電電極の焼成収縮率が10%以下である請求項5に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−187788(P2009−187788A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26478(P2008−26478)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】