説明

プラズマディスプレイ装置の解体方法およびその解体装置

【課題】PDPと金属支持板を容易に分離することが可能なプラズマディスプレイ装置の解体方法およびその解体装置を提供することを目的としている。
【解決手段】接着部材16を介して接着されたPDP11と金属支持板14を含むPDPユニット19を備えたプラズマディスプレイ装置を解体するプラズマディスプレイ装置の解体装置50であって、熱伝導性と柔軟性を有する緩衝部材32を介してPDP11に接触させて、PDP11を介して接着部材16を加熱する加熱部材31を有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、プラズマディスプレイ装置の解体方法およびその解体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型・大型化に適した表示装置としてプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を用いたプラズマディスプレイ装置が注目され大量に生産されている。
【0003】
プラズマディスプレイ装置の表示部にはPDPが装着されている。PDPは、ガラス基板上に表示電極、誘電体層、保護層などが形成された前面板と、ガラス基板上にアドレス電極、隔壁、蛍光体層などが形成された背面板とから構成されている。前面板と背面板とは両基板の間に微小な放電空間が形成されるように対向配置され、両基板の周縁部はフリットガラスによって封着されている。放電空間にはネオンガス(Ne)およびキセノンガス(Xe)などの不活性ガスを混合してなる放電ガスが封入されている。
【0004】
PDPの背面板の裏面には、例えば熱伝導性シートなどの接着部材を介してシャーシ部材である金属支持板が貼り付けられている。金属支持板は、PDPを駆動するための回路基板を取り付けるためのシャーシ部材としての機能と、PDPの駆動により発生した熱を効率的に放熱する放熱板としての機能とを有している。さらに、プラズマディスプレイ装置にはPDPや回路基板を保護するための前面枠やバックカバーが装着されている。
【0005】
ところで、プラズマディスプレイ装置の急速な普及に伴って、使用済みとなった廃棄プラズマディスプレイ装置の台数が急速に増加している。また、プラズマディスプレイ装置の生産量の増大に伴って、製造工程におけるPDPユニットの不良品の絶対数も多くなっている。そこで、環境問題および省資源の観点から、使用済みの廃棄プラズマディスプレイ装置や製造工程で発生した不良品のプラズマディスプレイ装置を解体して、部材の再利用や原材料として再生する技術に対する社会的なニーズが高まってきている。
【0006】
プラズマディスプレイ装置を再利用できる形態に解体するためには、PDPと金属支持板と回路基板とを破損させずに分離することが必要である。そこで、従来からPDPユニットを分離する方法がいろいろ提案されている。例えば、PDPと金属支持板とを分離する方法として、PDPの表面をホットプレートで加熱し、PDPと金属支持板とを接着している接着部材の接着力を弱化させてPDPと金属支持板とを接着部材から剥離する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−116346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
使用済みとなったプラズマディスプレイ装置や製造工程で発生した不良品は、解体するために収集されて解体工場へ輸送される。その際、PDPの前面板のガラス基板が、輸送時の衝撃や積載による負荷などによって割れた状態で解体工場へ搬入されることがある。前面板と背面板とは封着部材だけで固定されているため、例えばガラス基板が割れると割れた部分に亀裂が発生する。すなわち、接着部材に接着されているカラス基板が割れて隙間ができた状態になる。
【0009】
このようにガラス基板が割れたPDPを従来のように表面が平滑なホットプレートを用いて加熱すると、亀裂が発生した部分の接着部材にはホットプレートからの熱が伝わり難くなるため、接着部材に伝熱される単位時間当たりの熱伝達量が少なくなる。その結果、接着部材の接着力が弱化するまでの時間が長くかかることになり、PDPと金属支持板とを接着部材から剥がす解体効率が低下するという問題があった。
【0010】
また、大画面のPDPのガラス基板が割れた場合は、場所によって接着部材への熱伝達のムラが発生する。そのため、接着部材の接着力も場所によってムラが生じ、最悪の場合はPDPと金属支持板とを接着部材から剥離できなくなるという問題があった。
【0011】
ここに開示された技術は、PDPと金属支持板を容易に分離することが可能なプラズマディスプレイ装置の解体方法およびその解体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、プラズマディスプレイユニットを備えたプラズマディスプレイパネル装置を解体するプラズマディスプレイ装置の解体方法であって、前記プラズマディスプレイユニットは、接着部材を介して接着されたプラズマディスプレイパネルと金属支持板とを含み、熱伝導性と柔軟性を有する緩衝部材を介して前記プラズマディスプレイパネルを加熱部材に接触させて、前記プラズマディスプレイパネルを介して前記接着部材を加熱し、前記プラズマディスプレイパネルと前記金属支持板とを分離させる構成である。
【0013】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、接着部材を介して接着されたプラズマディスプレイパネルと金属支持板とを含むプラズマディスプレイユニットを備えたプラズマディスプレイ装置を解体するプラズマディスプレイ装置の解体装置であって、熱伝導性と柔軟性を有する緩衝部材を介して前記プラズマディスプレイパネルに接触させて、前記プラズマディスプレイパネルを介して前記接着部材を加熱する加熱部材を有する構成である。
【発明の効果】
【0014】
ここに開示された技術によれば、PDPと金属支持板を容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の分解斜視図
【図2】一実施の形態におけるPDPユニットの断面図
【図3】一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の解体を説明するフローチャート
【図4】一実施の形態における解体装置の使用状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1において、プラズマディスプレイ装置10は、PDP11と、このPDP11を収容する前面枠12と、この前面枠12の裏面側を塞ぐバックカバー13を備えている。
【0018】
この前面枠12とバックカバー13との間には、アルミニウムなどの金属板で構成された金属支持板14と、金属支持板14に取り付けられ、PDP11を駆動させる回路基板15と、金属支持板14とPDP11を接着し、PDP11から発生する熱を金属支持板14に伝熱する接着部材16と、バックカバー13と対向する金属支持板14の取付面17に嵌合され、回路基板15を取り付ける固定ピンなどの止め具18が配置されている。
【0019】
このように、プラズマディスプレイ装置10には、接着部材16を介して接着されたPDP11と金属支持板14を含むPDPユニット19が配置されている。
【0020】
図2において、前面板20と背面板21は、その周端部が封着材22によって接着されている。背面板21と金属支持板14とは両面粘着型の接着部材16を介して接着されている。接着部材16は、PDP11の駆動時に発生する熱を金属支持板14に伝熱してPDP11の温度上昇による画質低下を防止する機能と、前面板20を構成するガラス基板の割れを防止する機能とを有している。また、接着部材16は背面板21および金属支持板14のほぼ全面に接着されている。
【0021】
つぎに、プラズマディスプレイ装置10の解体方法について説明する。
【0022】
図3において、まず、プラズマディスプレイ装置10から前面枠12を取り外す(S1)。
【0023】
つぎに、バックカバー13を分離する(S2)。
【0024】
つぎに、接着部材16を加熱して接着力を弱化させ、回路基板15付きの金属支持板14とPDP11とを接着部材16から分離する(S3)。
【0025】
つぎに、PDP11を構成している前面板20と背面板21とを分離する(S4)。
【0026】
つぎに、止め具18を取り外すか、あるいは切断することによって金属支持板14と回路基板15とを分離する(S5)。
【0027】
尚、(S4)で分離した前面板20および背面板21を構成するガラス基板は、それぞれのガラス基板上に形成されている電極や誘電体などの構成物を除去した後、溶解処理などを施してガラス材料として再利用される。
【0028】
つぎに、プラズマディスプレイ装置の解体装置について説明する。
【0029】
図4において、解体装置50は、ホットプレートなどの加熱部材31と、加熱部材31の加熱部に密着させて載置した緩衝部材32とを含む。
【0030】
緩衝部材32は、熱伝導性と柔軟性とを有する構造体で構成されている。このような緩衝部材32としては、フッ素樹脂やシリコン樹脂などの耐熱性樹脂からなるマトリクス樹脂に炭素繊維、炭素粒子、アルミナ、シリカなどの熱伝導性フィラーを5%以上添加したものが望ましい。本実施形態では、フッ素樹脂に炭素繊維の熱伝導性フィラーを約10%添加し、それを発砲させて柔軟性を付与した緩衝部材32を用いた。
【0031】
また、本実施形態では前面板20の厚みが1.8mm〜2.8mmのPDP11を用いた。このような厚さの前面板20を後述するように緩衝部材32に埋没させて背面板21と接触させるには、緩衝部材の厚みを4mm以上にすることが望ましい。
【0032】
つぎに、PDP11と金属支持板14とを分離する解体方法について詳細に説明する。
【0033】
まず、加熱部材31のヒーター(図示せず)に通電して加熱部材31の表面を約300℃に加熱する。このとき、緩衝部材32は加熱部材31からの伝熱により約280℃に加熱される。
【0034】
つぎに、加熱した緩衝部材32の上に前面板20を載置する。緩衝部材32は柔軟性を有しているため、前面板20のガラス基板に欠損部41が存在していても、前面板20の自重によって、前面板20は緩衝部材32に埋没し、背面板21が緩衝部材32と接触する。したがって、背面板21が緩衝部材32を介して過熱されるため、背面板21から伝熱されて接着部材16が加熱される。すなわち、加熱部材31からの熱を前面板20の欠損部41に効率良く伝熱することができるため、短時間で接着部材16の接着力を弱化させてPDP11と金属支持板14とを分離することが可能となる。
【0035】
緩衝部材32の効果について、前面板20のガラス基板に20%の欠損部41を有するPDP11を試料として用いて検証した。緩衝部材32を加熱部材31に載置した場合と載置しなかった場合について、接着部材16の接着力が弱化してPDP11と金属支持板14とが分離可能となる時間を測定した。その結果、緩衝部材32を載置した場合の分離可能となる時間は32分であったのに対して、緩衝部材32を載置しない場合は48分であった。よって、本解体装置を用いると解体時間が33%改善されることが確認できた。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、前面板20のガラス基板が欠損して加熱部材31からの熱が接着部材16へ均一に伝わり難くなっても、緩衝部材32によって接着部材16への熱伝達を均一に行うことができる。よって、PDP11と金属支持板14とを容易に分離することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
ここに開示された技術によれば、使用済みとなったプラズマディスプレイ装置や製造工程で発生した不良品のプラズマディスプレイ装置を効率よく解体する解体方法や解体装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
10 プラズマディスプレイ装置
11 PDP
12 前面枠
13 バックカバー
14 金属支持板
15 回路基板
16 接着部材
17 取付面
18 止め具
19 PDPユニット
20 前面板
21 背面板
31 加熱部材
32 緩衝部材
41 欠損部
50 解体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイユニットを備えたプラズマディスプレイパネル装置を解体するプラズマディスプレイ装置の解体方法であって、
前記プラズマディスプレイユニットは、接着部材を介して接着されたプラズマディスプレイパネルと金属支持板とを含み、
熱伝導性と柔軟性を有する緩衝部材を介して前記プラズマディスプレイパネルを加熱部材に接触させて、前記プラズマディスプレイパネルを介して前記接着部材を加熱し、前記プラズマディスプレイパネルと前記金属支持板とを分離させる
プラズマディスプレイ装置の解体方法。
【請求項2】
前記緩衝部材は、金属酸化物または炭素繊維または炭素粉末のうちのいずれか一つと、フッ素またはシリコンを含有する樹脂とを含むものである
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の解体方法。
【請求項3】
接着部材を介して接着されたプラズマディスプレイパネルと金属支持板とを含むプラズマディスプレイユニットを備えたプラズマディスプレイ装置を解体するプラズマディスプレイ装置の解体装置であって、
熱伝導性と柔軟性を有する緩衝部材を介して前記プラズマディスプレイパネルに接触させて、前記プラズマディスプレイパネルを介して前記接着部材を加熱する加熱部材を有する
プラズマディスプレイ装置の解体装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、金属酸化物または炭素繊維または炭素粉末のうちのいずれか一つと、フッ素またはシリコンを含有する樹脂とを含むものである
請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置の解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83581(P2012−83581A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230215(P2010−230215)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】