説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】プラズマディスプレイパネルに表示される画像の黒輝度を低減してコントラストを高め、画像表示品質を高める。
【解決手段】初期化期間に、強制初期化波形と選択初期化波形と非初期化波形とのいずれかを発生して走査電極に印加するとともに、強制初期化波形と非初期化波形とを選択的に発生する特別初期化サブフィールドと、選択初期化波形だけを発生する複数の選択初期化サブフィールドとで1つのフィールドを構成し、1つの走査電極に強制初期化波形を印加する回数を1つのフィールド群で1回とし、特別初期化サブフィールドにおいて強制初期化波形を印加する走査電極の両側の走査電極に、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としては一般にサブフィールド法が用いられている。サブフィールド法では、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドで各放電セルの発光と非発光とを制御する。そして、1フィールドに発生する発光の回数を制御することにより階調表示を行う。
【0004】
各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では、各走査電極に初期化波形を印加し、各放電セルで初期化放電を発生させる。これにより、続く書込み動作のために必要な壁電荷を各放電セルに形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
【0005】
書込み期間では、走査電極には走査パルスを順次印加し、データ電極には表示すべき画像信号に対応した書込みパルスを選択的に印加する。これにより、発光すべき放電セルにおいて、走査電極とデータ電極との間に書込み放電を発生させ、壁電荷を形成する(以下、この動作を「書込み」とも記す)。
【0006】
維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に、サブフィールド毎に定められた回数の維持パルスを交互に印加する。これにより、書込み放電による壁電荷形成が行われた放電セルで維持放電を発生させ、その放電セルの蛍光体層を発光させる。このようにして、パネルの画像表示領域に画像を表示する。
【0007】
パネルにおける画像表示品質を高める上で重要な要因の1つにコントラストの向上がある。そして、サブフィールド法の1つとして、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させる駆動方法が開示されている。
【0008】
この駆動方法では、1フィールドを構成する複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間では全ての放電セルに初期化放電を発生させる初期化動作を行う。また、他のサブフィールドの初期化期間では直前の維持期間で維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行う初期化動作を行う。
【0009】
維持放電を発生させない黒表示領域の輝度(以下、「黒輝度」と略記する)は画像の表示に関係のない発光、例えば、初期化放電によって生じる発光等によって変化する。しかし、上述の駆動方法では、黒表示領域における発光は全ての放電セルに初期化動作を行うときの微弱発光だけとなる。これにより、黒輝度を低減してコントラストの高い画像表示が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、徐々に増加する緩やかな傾斜部分を持つ立ち上がり部と、徐々に減少する緩やかな傾斜部分を持つ立ち下がり部とを有する初期化波形を維持期間に放電した放電セルに印加する初期化期間を設け、かつ1フィールドの任意の初期化期間の直前に、全放電セルを対象として維持電極と走査電極の間で微弱放電を起こす期間を設けることで、黒輝度を下げて黒の視認性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2004−37883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、例えば特許文献1に記載された技術では、全ての放電セルに初期化放電を発生させる初期化動作を1フィールドに1回にすることで、サブフィールド毎に全ての放電セルに初期化放電を発生させる場合と比較して、表示画像の黒輝度を下げ、コントラストを高めることができる。
【0013】
しかしながら、近年、パネルの大画面化、高精細化にともない画像表示品質の更なる向上が望まれている。
【0014】
本発明はこのような要望に鑑みなされたものであり、パネルに表示される画像の黒輝度を低減してコントラストを高め、画像表示品質を高めることができるプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で駆動するとともに特別初期化サブフィールドと複数の選択初期化サブフィールドとで1つのフィールドを構成し、時間的に連続する複数のフィールドで1つのフィールド群を構成してプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイ装置であって、初期化期間に、直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生する強制初期化波形と、直前のサブフィールドの維持期間に維持放電を発生した放電セルだけに初期化放電を発生する選択初期化波形と、放電セルに初期化放電が発生しない非初期化波形とのいずれかを発生して走査電極に印加するとともに、特別初期化サブフィールドの初期化期間では、強制初期化波形または非初期化波形を発生して選択的に走査電極に印加し、選択初期化サブフィールドの初期化期間では選択初期化波形を発生して全ての走査電極に印加し、1つの走査電極に1つのフィールド群で1回だけ強制初期化波形を印加する走査電極駆動回路とを備え、走査電極駆動回路は、特別初期化サブフィールドにおいて強制初期化波形を印加する走査電極の両側の走査電極には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加する駆動波形の発生パターンを1フィールド群に少なくとも1つ含んで駆動波形を発生し、プラズマディスプレイパネルは、前面板と、前面板と対向配置された背面板と、を備え、前面板は、電極と誘電体層と保護層とを有し、保護層は、下地層と下地層の上に形成された金属酸化物とを含み、金属酸化物は、金属酸化物粗粒子が粉砕されたものであり、金属酸化物と前記金属酸化物粗粒子とは、波長200nmから300nmの範囲にフォトルミネッセンスのピークがあり、前記金属酸化物のピークは、前記金属酸化物粗粒子のピークの60%以上、100%未満の強度である、プラズマディスプレイ装置である。
【0016】
これにより、黒輝度を上昇させる主な要因の1つである初期化放電の発生頻度を低減して黒輝度を低減することができるので、表示画像のコントラストを高めることが可能となる。また、強制初期化波形を用いて初期化動作を行う頻度を低減したときに画像表示面に発生しやすいちらつきや線状のノイズを低減することが可能となる。これにより、プラズマディスプレイ装置における画像表示品質を高めることが可能となる。
【0017】
また、このプラズマディスプレイ装置において、走査電極駆動回路は、上昇する傾斜電圧を発生する傾斜電圧発生回路を有し、傾斜電圧発生回路が出力する傾斜電圧に所定の電圧を重畳した電圧を強制初期化波形として出力し、所定の電圧を重畳しない傾斜電圧を非初期化波形として出力する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パネルに表示される画像の黒輝度を低減してコントラストを高め、画像表示品質を高めることができるプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】同パネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図4】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック
【図5】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の一構成例を示す回路図
【図6】本発明の実施の形態1における特定セル初期化サブフィールドの初期化期間の走査電極駆動回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
【図7】同特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの一例を示す概略図
【図8】各フィールドを、パネルの全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うフィールドと、全放電セルで一斉に非初期化動作を行うフィールドとに分ける構成の一例を概略的に示す図
【図9】強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性が高い構成の一例を概略的に示す図
【図10】本発明の実施の形態1の特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの他の一例を示す概略図
【図11A】同特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図
【図11B】同特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図
【図12】本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの一例を示す概略図
【図13】同特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの他の一例を示す概略図
【図14】同特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図
【図15】同特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図
【図16】同特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図
【図17】同保護層の形成方法を示すフローチャート
【図18】フォトルミネッセンス波形を示す図
【図19】保護層評価のためにパネルに印加される駆動波形図
【図20】パネルの評価結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。なお、保護層26については後述する。
【0022】
背面板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0023】
これら前面板21と背面板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0024】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dk(k=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がパネル10の表示領域となる。
【0026】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作の概要について説明する。なお、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
【0027】
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ1、2、4、8、16、32、64、128の輝度重みを有する構成とすることができる。そして、各サブフィールドの維持期間においては、それぞれのサブフィールドの輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24のそれぞれに印加する。
【0028】
なお、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては、直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生する強制初期化動作と、放電セルに初期化放電が発生しない非初期化動作とを選択的に行う特別初期化動作を行い(以下、特別初期化動作を行うサブフィールドを「特別初期化サブフィールド」と呼称する)、他のサブフィールドの初期化期間においては、直前のサブフィールドの維持期間に維持放電を発生した放電セルだけに初期化放電を発生する選択初期化動作を行う(以下、選択初期化動作を行うサブフィールドを「選択初期化サブフィールド」と呼称する)ことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
【0029】
そして、本実施の形態では、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、第1SFの初期化期間では特別初期化動作を行い、第2SF〜第8SFの初期化期間では選択初期化動作を行うものとする。これにより、画像の表示に関係のない発光は第1SFにおける特別初期化動作の放電にともなう発光のみとなり、維持放電を発生させない黒表示領域の輝度である黒輝度は特別初期化動作における微弱発光だけとなる。したがって、表示画像における黒輝度を低減して、コントラストを高めることが可能となる。
【0030】
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
【0031】
なお、この特別初期化動作は、特定の放電セルに対しては強制初期化動作を行い、他の放電セルに対しては非初期化動作を行う特定セル初期化動作(以下、特定セル初期化動作を行うサブフィールドを「特定セル初期化サブフィールド」と呼称する)と、全ての放電セルに対して非初期化動作を行う全セル非初期化動作(以下、全セル非初期化動作を行うサブフィールドを「全セル非初期化サブフィールド」と呼称する)とに分けることができる。しかし、本実施の形態では、特別初期化サブフィールドを全て特定セル初期化サブフィールドとする構成について説明する。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態1におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には、書込み期間において最初に書込み動作を行う走査電極SC1、書込み期間において2番目に書込み動作を行う走査電極SC2、書込み期間において最後に書込み動作を行う走査電極SCn(例えば、走査電極SC1080)、維持電極SU1〜維持電極SUn、およびデータ電極D1〜データ電極Dmの駆動波形を示す。
【0033】
また、図3には、2つのサブフィールドの駆動電圧波形、すなわち特定セル初期化サブフィールドである第1サブフィールド(第1SF)と、選択初期化サブフィールドである第2サブフィールド(第2SF)とを示す。また、以下における走査電極SCi、維持電極SUi、データ電極Dkは、各電極の中からサブフィールドデータ(サブフィールド毎の発光・非発光を示すデータ)にもとづき選択された電極を表す。
【0034】
まず、特定セル初期化サブフィールドである第1SFについて説明する。
【0035】
なお、図3には、配置的に見て上から(1+6×N)番目(Nは整数)の走査電極SC(1+6×N)には直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生する強制初期化波形を印加し、それ以外の走査電極22には放電セルに初期化放電が発生しない非初期化波形を印加する構成を示す。
【0036】
第1SFの初期化期間前半部では、データ電極D1〜データ電極Dm、維持電極SU1〜維持電極SUnにはそれぞれ0(V)を印加し、走査電極SC(1+6×N)には、所定の電圧である電圧Vi1を印加し、電圧Vi1から電圧Vi2に向かって緩やかに(例えば、約0.5V/μsecの勾配で)上昇する傾斜電圧(以下、「上りランプ電圧」と呼称する)L1を印加する。このとき、電圧Vi1は、維持電極SU(1+6×N)に対して放電開始電圧以下の電圧にし、電圧Vi2は維持電極SU(1+6×N)に対して放電開始電圧を超える電圧にする。
【0037】
この上りランプ電圧L1が上昇する間に、走査電極SC(1+6×N)と維持電極SU(1+6×N)との間、および走査電極SC(1+6×N)とデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が持続して起こる。そして、走査電極SC(1+6×N)上部に負の壁電圧が蓄積されるとともに、走査電極SC(1+6×N)と交差するデータ電極D1〜データ電極Dm上部および維持電極SU(1+6×N)上部には正の壁電圧が蓄積される。この電極上部の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0038】
初期化期間後半部では、走査電極SC(1+6×N)の印加電圧を、電圧Vi2から電圧Vi2よりも低い電圧Vi3に下降させる。維持電極SU1〜維持電極SUnには正の電圧Veを印加し、データ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加する。そして、走査電極SC(1+6×N)に、電圧Vi3から負の電圧Vi4に向かって緩やかに(例えば、約−0.5V/μsecの勾配で)下降する傾斜電圧(以下、「下りランプ電圧」と呼称する)L2を印加する。このとき、電圧Vi3は、維持電極SU(1+6×N)に対して放電開始電圧以下の電圧にし、電圧Vi4は維持電極SU(1+6×N)に対して放電開始電圧を超える電圧にする。
【0039】
この間に、走査電極SC(1+6×N)と維持電極SU(1+6×N)との間、および走査電極SC(1+6×N)とデータ電極D1〜データ電極Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こる。そして、走査電極SC(1+6×N)上部の負の壁電圧および維持電極SU(1+6×N)上部の正の壁電圧が弱められ、走査電極SC(1+6×N)と交差するデータ電極D1〜データ電極Dm上部の正の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。
【0040】
以上の波形が、直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生する強制初期化波形であり、以上の動作が強制初期化動作である。
【0041】
一方、走査電極SC(1+6×N)以外の走査電極22は、第1SFの初期化期間前半部では、所定の電圧である電圧Vi1を印加せず、0(V)のままとし、0(V)から電圧Vi2’に向かって緩やかに上昇する上りランプ電圧L1’を印加する。この上りランプ電圧L1’は、上りランプ電圧L1と同じ勾配で、上りランプ電圧L1と同じ時間だけ上昇を続けるものとする。したがって、電圧Vi2’は電圧Vi2から電圧Vi1を引いた電圧に等しい電圧となる。このとき、電圧Vi2’は維持電極23に対して放電開始電圧以下の電圧となるように各電圧および上りランプ電圧L1’を設定する。これにより、上りランプ電圧L1’を印加した放電セルでは放電は実質的に発生しない。
【0042】
初期化期間後半部では、走査電極SC(1+6×N)以外の走査電極22にも、走査電極SC(1+6×N)と同様に、下りランプ電圧L2を印加する。このとき、走査電極SC(1+6×N)以外の走査電極22を有する放電セルでは、第1SFの初期化期間前半部で放電が発生していないので、初期化期間後半部でも放電は実質的に発生しない。
【0043】
以上の波形が、放電セルに初期化放電が発生しない非初期化波形であり、以上の動作が非初期化動作である。
【0044】
なお、本発明における強制初期化波形は、何ら上述した波形に限定されるものではない。強制初期化波形は、直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生する波形であればどのような波形であってもかまわない。また、本発明における非初期化波形も、何ら上述した波形に限定されるものではない。本実施の形態に示す非初期化波形は放電セルに初期化放電が発生しない波形の一例を示したものに過ぎず、例えば、0(V)クランプ波形等、初期化放電が発生しない波形であればどのような波形であってもかまわない。
【0045】
以上により、特定の放電セルに対して強制初期化動作を行い、他の放電セルに対しては非初期化動作を行う特定セル初期化動作が終了する。
【0046】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜走査電極SCnに対しては走査パルス電圧Vaを順次印加し、データ電極D1〜データ電極Dmに対しては発光させるべき放電セルに対応するデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加して、各放電セルに選択的に書込み放電を発生させる。
【0047】
具体的には、まず維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vccを印加する。
【0048】
そして、配置的に見て上から1番目(1行目)の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Vaを印加するとともに、データ電極D1〜データ電極Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vdを印加する。このときデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(電圧Vd−電圧Va)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に放電が発生する。また、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを印加しているため、維持電極SU1上と走査電極SC1上との電圧差は、外部印加電圧の差である(電圧Ve−電圧Va)に維持電極SU1上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧との差が加算されたものとなる。このとき、電圧Veを、放電開始電圧をやや下回る程度の電圧値に設定することで、維持電極SU1と走査電極SC1との間を、放電には至らないが放電が発生しやすい状態にすることができる。これにより、データ電極Dkと走査電極SC1との間に発生する放電を引き金にして、データ電極Dkと交差する領域にある維持電極SU1と走査電極SC1との間に放電を発生させることができる。こうして、発光させるべき放電セルに書込み放電が起こり、走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
【0049】
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vdを印加しなかったデータ電極D1〜データ電極Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0050】
続く維持期間では、輝度重みに所定の輝度倍率を乗じた数の維持パルスを表示電極対24に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
【0051】
具体的には、まず走査電極SC1〜走査電極SCnに正の維持パルス電圧Vsを印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnにベース電位となる接地電位、すなわち0(V)を印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が、維持パルス電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。
【0052】
そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。なお、書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生しない。
【0053】
続いて、走査電極SC1〜走査電極SCnにはベース電位となる0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには維持パルス電圧Vsをそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との電圧差が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され、走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに、輝度重みに輝度倍率を乗じた数の維持パルスを交互に印加し、表示電極対24の電極間に電位差を与える。これにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して発生する。
【0054】
そして、維持期間における維持パルスの発生後に、維持電極SU1〜維持電極SUnおよびデータ電極D1〜データ電極Dmには0(V)を印加したまま、走査電極SC1〜走査電極SCnに、0(V)から放電開始電圧を超える電圧Versに向かって緩やかに(例えば、約10V/μsecの勾配で)上昇する傾斜電圧(以下、「消去ランプ電圧」と呼称する)L3を印加する。これにより、維持放電を起こした放電セルの維持電極SUiと走査電極SCiとの間に、微弱な放電が持続して発生する。そして、この微弱な放電で発生した荷電粒子は、維持電極SUiと走査電極SCiとの間の電圧差を緩和するように、維持電極SUi上および走査電極SCi上に壁電荷となって蓄積されていく。これにより、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCi上の壁電圧および維持電極SUi上の壁電圧は、走査電極SCiに印加した電圧と放電開始電圧の差、例えば(電圧Vers−放電開始電圧)の程度まで弱められる。
【0055】
その後、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する電圧を0(V)に戻し、維持期間における維持動作が終了する。
【0056】
次に、選択初期化サブフィールドである第2SFについて説明する。
【0057】
第2SFの初期化期間では、強制初期化波形の前半部を省略した駆動電圧波形を各電極に印加する。具体的には、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを、データ電極D1〜データ電極Dmに0(V)をそれぞれ印加する。そして、走査電極SC1〜走査電極SCnには放電開始電圧以下となる電圧(例えば、0(V))から負の電圧Vi4に向かって、下りランプ電圧L2と同じ勾配で下降する下りランプ電圧L4を印加する。
【0058】
これにより直前のサブフィールド(図3では、第1SF)の維持期間で維持放電を起こした放電セルでは微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上部および維持電極SUi上部の壁電圧が弱められ、データ電極Dk(k=1〜m)上部の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0059】
以上の波形が、直前のサブフィールドの維持期間に維持放電を発生した放電セルだけに初期化放電を発生する選択初期化波形であり、以上の動作が選択初期化動作である。
【0060】
なお、本発明における選択初期化波形は、何ら上述した波形に限定されるものではない。選択初期化波形は、直前のサブフィールドの維持期間に維持放電を発生した放電セルだけに初期化放電を発生する波形であればどのような波形であってもかまわない。例えば、本実施の形態では、下りランプ電圧L4を全て同じ勾配で発生させる構成を説明したが、下りランプ電圧L4を複数の期間に分け、各期間で勾配を変えて下りランプ電圧L4を発生させる構成としてもよい。
【0061】
第2SFの書込み期間では、第1SFの書込み期間と同様の駆動波形を各電極に印加する。また、第2SFの維持期間では、維持パルスの発生数を除き、第1SFの維持期間と同様の駆動波形を各電極に印加する。
【0062】
また、第3SF以降のサブフィールドでは、維持期間における維持パルスの発生数を除き、第2SFと同様の駆動波形を各電極に印加する。
【0063】
以上が、本実施の形態におけるパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形の概要である。
【0064】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置1の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置1は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0065】
画像信号処理回路41は、パネル10の画素数に応じて、入力された画像信号sigをサブフィールド毎の発光・非発光を示すサブフィールドデータに変換する。
【0066】
タイミング発生回路45は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vにもとづき各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロック(画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44)へ供給する。
【0067】
データ電極駆動回路42は、サブフィールド毎のサブフィールドデータを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する信号に変換し、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて各データ電極D1〜データ電極Dmを駆動する。
【0068】
走査電極駆動回路43は、初期化期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する初期化波形を発生するための初期化波形発生回路、維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生するための維持パルス発生回路、複数の走査電極駆動IC(以下、「走査IC」と略記する)を備え書込み期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する走査パルスを発生するための走査パルス発生回路を有する。そして、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて各走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動する。
【0069】
維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路および電圧Veを発生するための回路を備え、タイミング発生回路45から供給されるタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動する。
【0070】
次に、走査電極駆動回路43の詳細とその動作について説明する。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置1の走査電極駆動回路43の一構成例を示す回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルスを発生させる維持パルス発生回路50、初期化波形を発生させる初期化波形発生回路51、走査パルスを発生させる走査パルス発生回路52を備え、走査パルス発生回路52の各出力端子はパネル10の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに接続されている。なお、本実施の形態では、走査パルス発生回路52に入力される電圧を「基準電位A」と記す。また、以下の説明においてスイッチング素子を導通させる動作を「オン」、遮断させる動作を「オフ」と表記し、スイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
【0072】
また、図5には、負の電圧Vaを用いた回路(例えば、ミラー積分回路54)を動作させているときに、その回路と、維持パルス発生回路50および電圧Vrを用いた回路(例えば、ミラー積分回路53)、電圧Versを用いた回路(例えば、ミラー積分回路55)とを電気的に分離するためのスイッチング素子Q4を用いた分離回路を示している。また、電圧Vrを用いた回路(例えば、ミラー積分回路53)を動作させているときに、その回路と、電圧Vrよりも低い電圧の電圧Versを用いた回路(例えば、ミラー積分回路55)とを電気的に分離するためのスイッチング素子Q6を用いた分離回路を示している。
【0073】
維持パルス発生回路50は、一般に用いられている電力回収回路とクランプ回路とを備え、タイミング発生回路45から出力されるタイミング信号にもとづき、内部に備えた各スイッチング素子を切換えて維持パルスを発生させる。なお、図5では、タイミング信号の信号経路の詳細は省略する。
【0074】
走査パルス発生回路52は、n本の走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに走査パルスを印加するためのスイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnおよびスイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnを備えている。スイッチング素子QHj(j=1〜n)の一方の端子とスイッチング素子QLjの一方の端子とは互いに接続されており、その接続箇所が走査パルス発生回路52の出力端子となって、走査電極SCjに接続されている。また、スイッチング素子QHjの他方の端子は入力端子INbとなっており、スイッチング素子QLjの他方の端子は入力端子INaとなっている。なお、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは複数の出力毎にまとめられIC化されている。このICが走査ICである。
【0075】
また、走査パルス発生回路52は、書込み期間において基準電位Aを負の電圧Vaに接続するためのスイッチング素子Q5と、基準電位Aに電圧Vscを重畳した電圧Vcを発生させるための電源VSC、ダイオードD31、コンデンサC31とを備えている。そして、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnの入力端子INbには電圧Vcが接続され、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnの入力端子INaには基準電位Aが接続されている。
【0076】
このように構成された走査パルス発生回路52では、書込み期間においては、スイッチング素子Q5をオンにして基準電位Aを負の電圧Vaに等しくし、入力端子INaには負の電圧Vaを、入力端子INbには電圧Va+電圧Vscとなった電圧Vc(図3に示す電圧Vcc)を印加する。そして、サブフィールドデータにもとづき、走査パルスを印加する走査電極SCiに対しては、スイッチング素子QHiをオフ、スイッチング素子QLiをオンにすることで、スイッチング素子QLiを経由して走査電極SCiに負の走査パルス電圧Vaを印加し、走査パルスを印加しない走査電極SCh(hは、1〜nのうちiを除いたもの)に対しては、スイッチング素子QLhをオフ、スイッチング素子QHhをオンにすることで、スイッチング素子QHhを経由して走査電極SChに電圧Va+電圧Vscを印加する。
【0077】
また、走査パルス発生回路52は、維持期間においては、維持パルス発生回路50の電圧波形を出力するようにタイミング発生回路45によって制御されるものとする。
【0078】
なお、走査パルス発生回路52の初期化期間における動作の詳細は後述する。
【0079】
初期化波形発生回路51は、ミラー積分回路53、ミラー積分回路54、およびミラー積分回路55を有する。図5には、ミラー積分回路53の入力端子を入力端子IN1、ミラー積分回路54の入力端子を入力端子IN2、ミラー積分回路55の入力端子を入力端子IN3として示している。なお、ミラー積分回路53およびミラー積分回路55は上昇する傾斜電圧を発生させる傾斜電圧発生回路であり、ミラー積分回路54は下降する傾斜電圧を発生させる傾斜電圧発生回路である。
【0080】
ミラー積分回路53は、スイッチング素子Q1とコンデンサC1と抵抗R1とを有し、初期化動作時に、走査電極駆動回路43の基準電位Aを電圧Vi2’までランプ状に緩やかに(例えば、0.5V/μsecで)上昇させて上りランプ電圧L1’を発生させる。
【0081】
ミラー積分回路55は、スイッチング素子Q3とコンデンサC3と抵抗R3とを有し、維持期間の最後に、基準電位Aを上りランプ電圧L1よりも急峻な勾配(例えば、10V/μsec)で電圧Versまで上昇させて消去ランプ電圧L3を発生させる。
【0082】
ミラー積分回路54は、スイッチング素子Q2とコンデンサC2と抵抗R2とを有し、初期化動作時に、基準電位Aを電圧Vi4までランプ状に緩やかに(例えば、−0.5V/μsecの勾配で)下降させて下りランプ電圧L2を発生させる。
【0083】
次に、特定セル初期化サブフィールドの初期化期間において、強制初期化波形および非初期化波形を発生させる動作を図6を用いて説明する。
【0084】
図6は、本発明の実施の形態1における特定セル初期化サブフィールドの初期化期間の走査電極駆動回路43の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、この図面では、強制初期化波形を印加する走査電極22を「走査電極SCx」と表し、非初期化波形を印加する走査電極22を「走査電極SCy」と表す。また、選択初期化サブフィールドにおいて選択初期化波形を発生させるときの走査電極駆動回路43の動作については説明を省略するが、選択初期化波形である下りランプ電圧L4を発生させる動作は、図6に示す下りランプ電圧L2を発生させる動作と同様であるものとする。
【0085】
また、図6では、初期化期間を期間T1〜期間T4で示す4つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。また、以下、電圧Vi1は電圧Vscに等しいものとし、電圧Vi2は電圧Vsc+電圧Vrに等しいものとし、電圧Vi2’は電圧Vrに等しいものとし、電圧Vi3は維持パルスを発生させるときに用いる電圧Vsに等しいものとし、電圧Vi4は負の電圧Vaに等しいものとして説明する。また、図面にはスイッチング素子をオンさせる信号を「Hi」、オフさせる信号を「Lo」と表記する。
【0086】
なお、図6には、電圧Vsが電圧Vscよりも高い電圧値に設定された例を示しているが、電圧Vsと電圧Vscとが互いに等しい電圧値であってもよく、あるいは、電圧Vsの方が電圧Vscよりも低い電圧値であってもかまわない。
【0087】
まず、期間T1に入る前に維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させて基準電位Aを0(V)にしておき、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnをオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをオンにして、走査電極SC1〜走査電極SCnに基準電位A、すなわち0(V)を印加する。
【0088】
(期間T1)
期間T1では、走査電極SCxに接続されたスイッチング素子QHxをオンにし、スイッチング素子QLxをオフにする。これにより、強制初期化波形を印加する走査電極SCxには、基準電位A(このとき、0(V))に電圧Vscを重畳した電圧Vc(すなわち、電圧Vc=電圧Vsc)を印加する。
【0089】
一方、走査電極SCyに接続されたスイッチング素子QHyはオフを、スイッチング素子QLyはオンをそれぞれ維持したままにする。これにより、非初期化波形を印加する走査電極SCyには、基準電位A、すなわち0(V)を印加する。
【0090】
(期間T2)
期間T2では、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは、期間T1と同じ状態を維持する。すなわち、走査電極SCxに接続されたスイッチング素子QHxはオンを、スイッチング素子QLxはオフをそれぞれ維持し、走査電極SCyに接続されたスイッチング素子QHyはオフを、スイッチング素子QLyはオンをそれぞれ維持する。
【0091】
次に、上りランプ電圧L1’を発生するミラー積分回路53の入力端子IN1を「Hi」にする。具体的には入力端子IN1に、所定の定電流を入力する。これにより、コンデンサC1に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q1のソース電圧がランプ状に上昇し、基準電位Aが0(V)からランプ状に上昇し始める。この電圧上昇は、入力端子IN1を「Hi」にしている期間、もしくは、基準電位Aが電圧Vrに到達するまで継続させることができる。
【0092】
このとき、傾斜電圧の勾配が所望の値(例えば、0.5V/μsec)になるように、入力端子IN1に入力する定電流を発生させる。こうして、0(V)から電圧Vi2’(本実施の形態では、電圧Vrに等しい)に向かって上昇する上りランプ電圧L1’を発生させる。
【0093】
スイッチング素子QHyはオフ、スイッチング素子QLyはオンなので、走査電極SCyには、この上りランプ電圧L1’がそのまま印加される。
【0094】
一方、スイッチング素子QHxはオン、スイッチング素子QLxはオフなので、走査電極SCxには、この上りランプ電圧L1’に電圧Vscが重畳された電圧、すなわち電圧Vi1(本実施の形態では、電圧Vscに等しい)から電圧Vi2(本実施の形態では、電圧Vsc+電圧Vrに等しい)に向かって上昇する上りランプ電圧L1が印加される。
【0095】
(期間T3)
期間T3では入力端子IN1を「Lo」にする。具体的には、入力端子IN1への定電流入力を停止する。こうして、ミラー積分回路53の動作を停止する。また、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnをオフ、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをオンにして、基準電位Aを走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。合わせて、維持パルス発生回路50のクランプ回路を動作させて基準電位Aを電圧Vsにする。これにより、走査電極SC1〜走査電極SCnの電圧は電圧Vi3(本実施の形態では、電圧Vsに等しい)まで低下する。
【0096】
(期間T4)
期間T4では、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHn、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnは、期間T3と同じ状態を維持する。
【0097】
次に、下りランプ電圧L2を発生するミラー積分回路54の入力端子IN2を「Hi」にする。具体的には入力端子IN2に、所定の定電流を入力する。これにより、コンデンサC2に向かって一定の電流が流れ、スイッチング素子Q2のドレイン電圧がランプ状に下降し始め、走査電極駆動回路43の出力電圧も、負の電圧Vi4に向かってランプ状に下降し始める。この電圧下降は、入力端子IN2を「Hi」にしている期間、もしくは、基準電位Aが電圧Vaに到達するまで継続させることができる。
【0098】
このとき、傾斜電圧の勾配が所望の値(例えば、−0.5V/μsec)になるように、入力端子IN2に入力する定電流を発生させる。
【0099】
そして、走査電極駆動回路43の出力電圧が負の電圧Vi4(本実施の形態では、電圧Vaに等しい)に到達したら、入力端子IN2を「Lo」にする。具体的には、入力端子IN2への定電流入力を停止する。こうして、ミラー積分回路54の動作を停止する。
【0100】
こうして、電圧Vi3(本実施の形態では、電圧Vsに等しい)から負の電圧Vi4に向かって下降する下りランプ電圧L2を発生させ、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する。
【0101】
なお、入力端子IN2を「Lo」にしてミラー積分回路54の動作を停止したら、スイッチング素子Q5をオンにして、基準電位Aを電圧Vaにする。合わせて、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnをオン、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnをオフにする。こうして、基準電位Aに電圧Vscを重畳した電圧Vc、すなわち、電圧Vcc(本実施の形態では、電圧Va+電圧Vscに等しい)を走査電極SC1〜走査電極SCnに印加し、続く書込み期間に備える。
【0102】
本実施の形態ではこのようにして、特定セル初期化サブフィールドの初期化期間において、強制初期化波形および非初期化波形を発生する。そして、スイッチング素子QH1〜スイッチング素子QHnと、スイッチング素子QL1〜スイッチング素子QLnとを制御することで、強制初期化波形を走査電極SCxに印加し、非初期化波形を走査電極SCyに印加する、というように、強制初期化波形および非初期化波形を選択的に走査電極22に印加することができる。
【0103】
なお、下りランプ電圧L2、下りランプ電圧L4は、図6に示すように電圧Vaまで下降させる構成であってもよいが、例えば、下降する電圧が、電圧Vaに所定の正の電圧Vset2を重畳した電圧に到達した時点で、下降を停止させる構成としてもよい。また、下りランプ電圧L2および下りランプ電圧L4は、あらかじめ設定された電圧に到達した後、直ちに上昇させる構成であってもよいが、例えば、下降する電圧が、あらかじめ設定された低電圧に到達したら、その後、その電圧を一定期間維持する構成であってもよい。
【0104】
次に、本実施の形態における特定セル初期化サブフィールドの初期化期間において強制初期化波形および非初期化波形を発生するときの規則について説明する。
【0105】
プラズマディスプレイ装置1において、画像表示品質を高める上で重要な要素の1つとして、パネル10に表示される画像のコントラストを向上することが挙げられる。パネル10のコントラストを向上するには、表示画像の輝度の最大値を高めるか、あるいは表示画像の輝度の最小値、すなわち黒輝度を低減するかの、少なくとも一方を実現すればよい。このとき、家庭内における一般的なテレビジョン視聴環境を考慮すると、黒輝度を低減してコントラストを向上することが、画像表示品質を高める上でより重要であると考えられる。
【0106】
黒輝度は、画像の表示に関係のない発光によって変化する。そのため、画像の表示に関係のない発光を低減することで黒輝度を低減することができる。画像の表示に関係のない発光の主なものに、初期化放電による発光がある。ただし、上述した選択初期化動作は、直前のサブフィールドで維持放電を発生しなかった放電セルでは放電が発生しないので、黒輝度の明るさに実質的に影響を与えない。一方、上述した強制初期化動作は、直前のサブフィールドの動作にかかわらず放電セルに初期化放電を発生させるため、黒輝度の明るさに影響を与える。
【0107】
そこで、本実施の形態では、この強制初期化動作を行う頻度を低減することで表示画像の黒輝度を低減するものとする。
【0108】
すなわち、本実施の形態では、時間的に連続する複数のフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する複数の走査電極22で1つの走査電極群を構成するものとする。そして、以下の規則に則り、強制初期化動作および非初期化動作を行うものとする。
・1つの走査電極22に強制初期化波形を印加する回数を1つのフィールド群で1回とする。
・特別初期化サブフィールド(本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールド)において、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、1つの走査電極群で1本とする。
・特別初期化サブフィールド(本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールド)において強制初期化波形を印加する走査電極22の両側の走査電極22には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加する。
【0109】
この具体的な一例を、図面を用いて説明する。
【0110】
図7は、本発明の実施の形態1の特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの一例を示す概略図である。図7において、横軸はフィールドを、縦軸は走査電極22を表す。
【0111】
なお、図7には、時間的に連続する5つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する5本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。また、図7に示す例では、第1SFを上述した特定セル初期化サブフィールドとし、残りのサブフィールド(例えば、第2SF〜第8SF)を、上述した選択初期化サブフィールドとする。そして、図7に示す「○」は、第1SFの初期化期間において強制初期化動作を行うこと、すなわち、図6に示した上りランプ電圧L1と下りランプ電圧L2とを有する強制初期化波形を走査電極22に印加することを表し、「×」は、第1SFの初期化期間において上述した非初期化動作を行うこと、すなわち、図6に示した上りランプ電圧L1’と下りランプ電圧L2とを有する非初期化波形を走査電極22に印加することを表す。
【0112】
以下、1つの走査電極群を構成する走査電極SCi〜走査電極SCi+4、および1つのフィールド群を構成するjフィールド〜j+4フィールドを例に挙げて説明を行う。
【0113】
まず、jフィールドの第1SFでは、走査電極SCiに強制初期化波形を印加し、残りの走査電極SCi+1〜走査電極SCi+4には非初期化波形を印加する。
【0114】
続くj+1フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+3に強制初期化波形を印加し、残りの走査電極SCi〜走査電極SCi+2、走査電極SCi+4には非初期化波形を印加する。
【0115】
続くj+2フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+1に強制初期化波形を印加し、残りの走査電極SCi、走査電極SCi+2〜走査電極SCi+4には非初期化波形を印加する。
【0116】
続くj+3フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+4に強制初期化波形を印加し、残りの走査電極SCi〜走査電極SCi+3には非初期化波形を印加する。
【0117】
続くj+4フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+2に強制初期化波形を印加し、残りの走査電極SCi、走査電極SCi+1、走査電極SCi+3、走査電極SCi+4には非初期化波形を印加する。
【0118】
こうして、1つの走査電極群における1つのフィールド群の動作を終了する。他の走査電極群に対しても、上述と同様の動作を行い、これ以降においても、各フィールド群で上述と同様の動作を繰り返す。
【0119】
このように、本実施の形態では、各放電セルで強制初期化動作を行う回数が、1つのフィールド群(図7に示す例では、5フィールド)でそれぞれ1回となるように強制初期化波形および非初期化波形を選択的に発生してパネル10を駆動する。
【0120】
これにより、フィールド毎に全ての放電セルで強制初期化動作を行う構成と比較して、各放電セルで強制初期化動作を行う頻度を低減(図7に示す例では、5分の1に低減)することができるので、表示画像の黒輝度を低減することができる。
【0121】
さらに、本実施の形態では、1つの特定セル初期化サブフィールドにおいて、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、1つの走査電極群で1本となるように強制初期化波形および非初期化波形を選択的に発生してパネル10を駆動する。
【0122】
図7に示す例では、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+4からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+1フィールドでは走査電極SCi+3とし、j+2フィールドでは走査電極SCi+1とし、j+3フィールドでは走査電極SCi+4とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+2とする。
【0123】
これにより、強制初期化動作を行う放電セルを各フィールドに分散することができる。すなわち、特定セル初期化サブフィールドの初期化期間に生じる輝度を、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うときに生じる輝度と比較して、低減することができる。
【0124】
さらに、各フィールドを、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うフィールドと、全放電セルで一斉に非初期化動作を行うフィールドとに分ける構成と比較して、「フリッカー」と呼ばれる細かいちらつきを低減することができる。
【0125】
この、各フィールドを、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うフィールドと、全放電セルで一斉に非初期化動作を行うフィールドとに分ける構成の一例を図8に示し、この構成にするとフリッカーが発生しやすくなる理由について説明する。
【0126】
図8は、各フィールドを、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うフィールドと、全放電セルで一斉に非初期化動作を行うフィールドとに分ける構成の一例を概略的に示す図である。
【0127】
図8には、時間的に連続する3つのフィールドで1つのフィールド群を構成する例を示す。ただし、図8に示す構成は、本実施の形態における図7に示す構成と異なり、3フィールドに1回の周期でパネル10の全放電セルで初期化動作を行う。
【0128】
このような構成では、例えば、jフィールドの第1SFの初期化期間では、パネル10の全放電セルが強制初期化動作による放電によって発光する。一方、j+1フィールドおよびj+2フィールドの第1SFの初期化期間では、全放電セルで非初期化動作が行われるので、発光は生じない。したがって、パネル10の画像表示面において、jフィールドの第1SFとj+1フィールドおよびj+2フィールドの第1SFとの間に、微小ではあるが輝度の差が生じる。そのため、例えば、60フィールド/秒の周期で更新される画像をパネル10に表示すると、この微小な輝度の変化が20フィールド/秒の周期で発生することになる。
【0129】
表示画像が十分に明るければ、この輝度の変化が使用者に認識される可能性は低い。しかし、上述したような20フィールド/秒程度と比較的遅い周期で生じる輝度の変化であれば、暗い画像を表示したときに、その変化が、細かいちらつき、すなわちフリッカーとして使用者に認識されるおそれがある。
【0130】
したがって、黒輝度を低減するために強制初期化動作を行う頻度を低減したとしても、図8に示すような、各フィールドをパネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うフィールドと全放電セルで一斉に非初期化動作を行うフィールドとに分ける構成にすると、フリッカーが認識されやすくなり、画像表示品質を損ねる可能性がある。
【0131】
しかしながら、輝度の変化の周期が十分に早ければ(例えば、60フィールド/秒程度であれば)、表示画像が暗くとも、この輝度の変化が使用者に認識される可能性は低い。すなわち、例えば図7に示すような本実施の形態における構成でパネル10を駆動すれば、強制初期化動作を行う放電セルを各フィールドに分散し、輝度の変化の周期を十分に早めることができるので、図8に示す構成と比較してフリッカーを低減することができる。
【0132】
さらに、本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールドにおいて強制初期化波形を印加する走査電極22の両側の走査電極22に、そのフィールドにおける特定セル初期化サブフィールドと、続くフィールドにおける特定セル初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特定セル初期化サブフィールドで非初期化波形を印加するように強制初期化波形および非初期化波形を選択的に発生してパネル10を駆動する。
【0133】
例えば、図7に示す例では、走査電極SCi+3にj+1フィールドの第1SFで強制初期化波形を印加するとき、その両側の走査電極SCi+2と走査電極SCi+4とに、j+1フィールドおよびj+2フィールドの少なくとも2つのフィールドの第1SFで非初期化波形を印加する。
【0134】
これにより、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性を低減することができる。したがって、強制初期化動作を行う頻度を低減したときにパネル10の画像表示面に発生しやすい線状のノイズを、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性が高い構成と比較して、低減することができる。
【0135】
この、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性が高い構成の一例を図9に示し、線状のノイズが発生しやすい理由について説明する。
【0136】
図9は、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性が高い構成の一例を概略的に示す図である。
【0137】
図9には、時間的に連続する3つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する3本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。ただし、図9に示す構成は、本実施の形態における図7に示す構成と異なり、強制初期化波形を印加した走査電極22に隣り合う走査電極22に、続くフィールドの特定セル初期化サブフィールドで強制初期化波形を印加している。
【0138】
例えば、jフィールドの第1SFで強制初期化波形を印加した走査電極SCiに隣り合う走査電極SCi+1に、続くj+1フィールドの第1SFで強制初期化波形を印加している。また、走査電極SCi+1に隣り合う走査電極SCi+2には、続くj+2フィールドの第1SFで強制初期化波形を印加している。
【0139】
この構成では、例えば、jフィールドの第1SFの初期化期間では、走査電極SCi上に形成された放電セルが強制初期化動作による放電によって発光する。続く、j+1フィールドの第1SFの初期化期間では、走査電極SCi+1上に形成された放電セルが強制初期化動作による放電によって発光する。続く、j+2フィールドの第1SFの初期化期間では、走査電極SCi+2上に形成された放電セルが強制初期化動作による放電によって発光する。
【0140】
このように、図9に示す構成では、強制初期化動作を行った放電セルに隣り合う放電セルに対して、続くフィールドで強制初期化動作が行われる。これにより、使用者には、強制初期化動作を行う放電セルが時間的および位置的に連続して変化したように認識されやすくなる。その結果、その連続した変化の軌跡が線状のノイズとして使用者に認識される可能性が高まる。
【0141】
しかしながら、例えば図7に示すような本実施の形態における構成でパネル10を駆動すれば、強制初期化動作がなされる放電セルに隣り合う放電セルでは、そのフィールドおよび続くフィールドの少なくとも2フィールドの第1SFにおいて非初期化動作がなされ、初期化放電が発生しない。これにより、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性を低減することができ、上述した線状のノイズの発生を低減することができる。
【0142】
以上示したように、本実施の形態では、時間的に連続する複数のフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する複数の走査電極22で1つの走査電極群を構成するものとする。そして、1つの走査電極22に強制初期化波形を印加する回数を1つのフィールド群で1回とする。また、特別初期化サブフィールド(本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールド)において、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、1つの走査電極群で1本とする。さらに、特別初期化サブフィールド(本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールド)において強制初期化波形を印加する走査電極22の両側の走査電極22には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加するものとする。このような規則に則り強制初期化波形および非初期化波形を発生させる構成とすることで、パネル10に表示される画像の黒輝度を低減し、コントラストを高めることが可能となる。さらに、強制初期化動作を行う頻度を低減したときに発生しやすいフリッカーや線状のノイズを低減することが可能となる。
【0143】
なお、本発明は、特定セル初期化サブフィールドにおける強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンが何ら図7に示した構成に限定されるものではない。強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンが本実施の形態に示す規則に則ったものであれば、図7に示した例とは異なるパターンで強制初期化波形および非初期化波形を発生してもよ
い。
【0144】
図10は、本発明の実施の形態1の特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの他の一例を示す概略図である。
【0145】
図10には、図7に示した例と同様に、時間的に連続する5つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する5本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。しかし、強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンは、図7に示した例とは異なる。
【0146】
図10に示す例では、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+4からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+1フィールドでは走査電極SCi+2とし、j+2フィールドでは走査電極SCi+4とし、j+3フィールドでは走査電極SCi+1とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+3とする。
【0147】
このように、図7に示した例とは異なる発生パターンであっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0148】
また、本発明は、フィールド群を構成するフィールドの数および走査電極群を構成する走査電極22の数が何ら図7に示した構成に限定されるものではない。強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンが本実施の形態に示す規則に則ったものであれば、図7に示した例とは異なる数のフィールドでフィールド群を構成し、図7に示した例とは異なる数の走査電極22で走査電極群を構成してもよい。
【0149】
図11A、図11Bは、本発明の実施の形態1の特定セル初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図である。
【0150】
図11Aには、図7に示した例とは異なり、時間的に連続する7つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する7本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。また、図11Bには、時間的に連続する8つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する8本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。
【0151】
図11Aに示す例では、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+6からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+1フィールドでは走査電極SCi+3とし、j+2フィールドでは走査電極SCi+6とし、j+3フィールドでは走査電極SCi+2とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+5とし、j+5フィールドでは走査電極SCi+1とし、j+6フィールドでは走査電極SCi+4とする。
【0152】
また、図11Bに示す例では、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+7からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+1フィールドでは走査電極SCi+3とし、j+2フィールドでは走査電極SCi+6とし、j+3フィールドでは走査電極SCi+1とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+4とし、j+5フィールドでは走査電極SCi+7とし、j+6フィールドでは走査電極SCi+2とし、j+7フィールドでは走査電極SCi+5とする。
【0153】
例えば、このような構成であっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0154】
このように、本発明においては、1つのフィールド群を構成するフィールドの数、および1つの走査電極群を構成する走査電極22の数が何ら限定されるものではない。本実施の形態に示す規則に則り強制初期化波形および非初期化波形を発生すれば、フィールド群および走査電極群はどのように構成されてもよい。
【0155】
(実施の形態2)
実施の形態1では、特別初期化サブフィールドの全てを特定セル初期化サブフィールドとする構成を説明した。しかし、本発明においては、特別初期化サブフィールドを、初期化期間に全ての走査電極22に非初期化波形を印加して全セル非初期化動作を行う全セル非初期化サブフィールドとすることもできる。
【0156】
そこで、本実施の形態では、特別初期化サブフィールドを、特定セル初期化サブフィールドと全セル非初期化サブフィールドとの双方で発生させる構成について説明する。すなわち、本実施の形態では、1つのフィールド群を、特定セル初期化サブフィールド(例えば、第1SF)および複数の選択初期化サブフィールド(例えば、第2SF〜第8SF)を有する初期化フィールドと、全セル非初期化サブフィールド(例えば、第1SF)および複数の選択初期化サブフィールド(例えば、第2SF〜第8SF)を有する非初期化フィールドとで構成するものとする。
【0157】
なお、本実施の形態においては、特別初期化サブフィールドを、特定セル初期化サブフィールドと全セル非初期化サブフィールドとの双方で発生させる以外は、実施の形態1に示した構成と同様であるので、パネル10およびプラズマディスプレイ装置1の構成や各駆動波形等については説明を省略する。
【0158】
本実施の形態では、1つのフィールド群を初期化フィールドと非初期化フィールドとで構成する。したがって、実施の形態1で説明した強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンに関する規則を本実施の形態では以下の通りとする。
・1つの走査電極22に強制初期化波形を印加する回数を1つのフィールド群で1回とする。
・特別初期化サブフィールドにおいて、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、1つの走査電極群で1本または0本とする。すなわち、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、特定セル初期化サブフィールドでは各走査電極群でそれぞれ1本とし、全セル非初期化サブフィールドでは各走査電極群でそれぞれ0本とする。
・特別初期化サブフィールド(特定セル初期化サブフィールド)において強制初期化波形を印加する走査電極22の両側の走査電極22には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールド(本実施の形態では、特定セル初期化サブフィールド、または全セル非初期化サブフィールド)との少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加する。
【0159】
以下、本実施の形態における具体的な構成例を、図面を用いて説明する。
【0160】
図12は、本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの一例を示す概略図である。図12において、横軸はフィールドを、縦軸は走査電極22を表す。
【0161】
なお、図12には、時間的に連続する6つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する3本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。また、図12に示す例では、第1SFを特別初期化サブフィールド(特定セル初期化サブフィールド、または全セル非初期化サブフィールド)とし、残りのサブフィールド(例えば、第2SF〜第8SF)を、選択初期化サブフィールドとする。そして、図12に示す「○」は、第1SFの初期化期間において強制初期化動作を行うこと、すなわち、図6に示した上りランプ電圧L1と下りランプ電圧L2とを有する強制初期化波形を走査電極22に印加することを表し、「×」は、第1SFの初期化期間において上述した非初期化動作を行うこと、すなわち、図6に示した上りランプ電圧L1’と下りランプ電圧L2とを有する非初期化波形を走査電極22に印加することを表す。
【0162】
以下、1つの走査電極群を構成する走査電極SCi〜走査電極SCi+2、および1つのフィールド群を構成するjフィールド〜j+5フィールドを例に挙げて説明を行う。
【0163】
まず、jフィールドの第1SFでは、走査電極SCiに強制初期化波形を印加し、走査電極SCi+1および走査電極SCi+2には非初期化波形を印加する。
【0164】
続くj+1フィールドの第1SFでは、全ての走査電極22に非初期化波形を印加する。
【0165】
続くj+2フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+1に強制初期化波形を印加し、走査電極SCiおよび走査電極SCi+2には非初期化波形を印加する。
【0166】
続くj+3フィールドの第1SFでは、全ての走査電極22に非初期化波形を印加する。
【0167】
続くj+4フィールドの第1SFでは、走査電極SCi+2に強制初期化波形を印加し、走査電極SCiおよび走査電極SCi+1には非初期化波形を印加する。
【0168】
続くj+5フィールドの第1SFでは、全ての走査電極22に非初期化波形を印加する。
【0169】
こうして、1つの走査電極群における1つのフィールド群の動作を終了する。他の走査電極群に対しても、上述と同様の動作を行い、これ以降においても、各フィールド群で上述と同様の動作を繰り返す。なお、図12に示す構成においては、jフィールド、j+2フィールド、j+4フィールド、・・・、は特定セル初期化フィールドとなり、j+1フィールド、j+3フィールド、j+5フィールド、・・・、は非初期化フィールドとなる。
【0170】
本実施の形態では、このような構成とすることで、フィールド毎に全ての放電セルで強制初期化動作を行う構成と比較して、強制初期化動作を行う頻度を低減(図12に示す例では、6分の1に低減)することができる。これにより、表示画像の黒輝度を低減することができる。特に、本実施の形態では、周期的に非初期化フィールドを発生させるので、実施の形態1に示す構成と比較して、走査電極群を構成する走査電極22の数が互いに同じであれば、さらに黒輝度を低減することができる。
【0171】
また、本実施の形態では、このような構成とすることで、実施の形態1と同様に、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行う図8に示すような構成と比較して、強制初期化動作を行う放電セルを各フィールドに分散することができる。これにより、特定セル初期化サブフィールドの初期化期間に生じる輝度を、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行うときに生じる輝度と比較して、低減することができる。
【0172】
なお、初期化フィールドにおける特定セル初期化動作では初期化放電による微弱な発光が生じるが、非初期化フィールドにおける全セル非初期化動作では初期化放電が発生しないので、初期化放電による発光も生じない。そのため、実施の形態1とは異なり、パネル10の画像表示面においてこれらのフィールド間に微小な輝度の差が生じる。したがって、特定セル初期化動作を行う初期化フィールドと、全セル非初期化動作を行う非初期化フィールドとが交互に発生する図12に示す構成では、例えば60フィールド/秒の周期で更新される画像をパネル10に表示すると、この微小な輝度の変化が30フィールド/秒の周期で発生することになる。
【0173】
しかし、本実施の形態では、上述したように、特定セル初期化サブフィールドの初期化期間に生じる輝度が低減(図12に示す構成では、パネル10の全放電セルで一斉に強制初期化動作を行う構成と比較して1/3に低減)されるので、パネル10の画像表示面において、この輝度の変化は非常に小さくなる。したがって、この輝度の変化が使用者に認識される可能性は極めて低いと考えられる。そして、本発明者が行った実験、すなわち表示画像を様々に変えながらフリッカーの発生を確認する実験においても、フリッカーの発生は実質的に確認されなかった。
【0174】
また、本実施の形態では、上述した構成とすることで、実施の形態1と同様に、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性を低減することができる。これにより、強制初期化動作を行う頻度を低減したときにパネル10の画像表示面に発生しやすい線状のノイズを、例えば図9に示したような強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性が高い構成と比較して、低減することができる。
【0175】
特に、本実施の形態では、周期的に非初期化フィールドを発生させるので、強制初期化動作を行う放電セルの時間的および位置的な変化の連続性を、実施の形態1に示した構成、すなわち、フィールド群を初期化フィールドだけで構成する構成よりもさらに低減することができ、上述した線状のノイズの発生をさらに抑制することができる。
【0176】
なお、本発明は、特定セル初期化サブフィールドにおける強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンが何ら図12に示した構成に限定されるものではない。
【0177】
図13は、本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンの他の一例を示す概略図である。
【0178】
図13には、図12に示した例と同様に、時間的に連続する6つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する3本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。しかし、強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンは、図12に示した例とは異なる。
【0179】
図13に示す例では、jフィールド、j+2フィールド、j+4フィールド、・・・、を特定セル初期化フィールドとし、j+1フィールド、j+3フィールド、j+5フィールド、・・・、を非初期化フィールドとする。
【0180】
そして、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+2からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+2フィールドでは走査電極SCi+2とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+1とする。
【0181】
このように、図12に示した例とは異なる発生パターンであっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0182】
図14は、本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図である。
【0183】
図14には、図12に示した例とは異なり、時間的に連続する4つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する2本の走査電極22で1つの走査電極群を構成する例を示す。
【0184】
図14に示す例では、jフィールド、j+2フィールド、j+4フィールド、・・・、を特定セル初期化フィールドとし、j+1フィールド、j+3フィールド、j+5フィールド、・・・、を非初期化フィールドとする。
【0185】
そして、例えば走査電極SCi、走査電極SCi+1からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+2フィールドでは走査電極SCi+1とする。
【0186】
例えば、このような構成であっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0187】
なお、図12、図13、図14では、特定セル初期化フィールドと非初期化フィールドとを交互に発生する構成を説明したが、本発明は何らこの構成に限定されるものではない。1つのフィールド群において、特定セル初期化フィールドの発生数と非初期化フィールドの発生数とが互いに異なっていてもかまわない。
【0188】
図15は、本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図である。
【0189】
図15には、時間的に連続する6つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する4本の走査電極22で1つの走査電極群を構成し、かつ、特定セル初期化フィールドの発生数が非初期化フィールドの発生数よりも多い例を示す。
【0190】
図15に示す例では、jフィールド、j+1フィールド、j+3フィールド、j+4フィールド、・・・、を特定セル初期化フィールドとし、j+2フィールド、j+5フィールド、j+8フィールド、・・・、を非初期化フィールドとする。
【0191】
そして、例えば走査電極SCi〜走査電極SCi+3からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+1フィールドでは走査電極SCi+2とし、j+3フィールドでは走査電極SCi+1とし、j+4フィールドでは走査電極SCi+3とする。
【0192】
例えば、このような構成であっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0193】
図16は、本発明の実施の形態2の特別初期化サブフィールドの初期化期間における強制初期化波形および非初期化波形の発生パターンのさらに他の一例を示す概略図である。
【0194】
図16には、時間的に連続する6つのフィールドで1つのフィールド群を構成するとともに、配置的に連続する2本の走査電極22で1つの走査電極群を構成し、かつ、特定セル初期化フィールドの発生数が非初期化フィールドの発生数よりも少ない例を示す。
【0195】
図16に示す例では、jフィールド、j+3フィールド、j+6フィールド、・・・、を特定セル初期化フィールドとし、j+1フィールド、j+2フィールド、j+4フィールド、j+5フィールド、・・・、を非初期化フィールドとする。
【0196】
そして、例えば走査電極SCi、走査電極SCi+1からなる走査電極群に関しては、強制初期化波形を印加する走査電極22を、jフィールドでは走査電極SCiとし、j+3フィールドでは走査電極SCi+1とする。
【0197】
例えば、このような構成であっても、上述した規則に則り、強制初期化波形および非初期化波形を発生させることができる。
【0198】
以上示したように、本実施の形態では、1つのフィールド群を、特定セル初期化サブフィールドおよび複数の選択初期化サブフィールドを有する初期化フィールドと、全セル非初期化サブフィールドおよび複数の選択初期化サブフィールドを有する非初期化フィールドとで構成するものとする。そして、1つの走査電極22に強制初期化波形を印加する回数を1つのフィールド群で1回とする。また、特別初期化サブフィールドにおいて、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、1つの走査電極群で1本または0本とする。すなわち、強制初期化波形を印加する走査電極22の数を、特定セル初期化サブフィールドでは各走査電極群でそれぞれ1本とし、全セル非初期化サブフィールドでは各走査電極群でそれぞれ0本とする。さらに、特別初期化サブフィールド(特定セル初期化サブフィールド)において強制初期化波形を印加する走査電極22の両側の走査電極22には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールド(特定セル初期化サブフィールド、または全セル非初期化サブフィールド)との少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで非初期化波形を印加するものとする。このような規則に則り強制初期化波形および非初期化波形を発生させる構成とすることで、強制初期化動作を行う頻度を低減したときに発生しやすいフリッカーや線状のノイズを低減しつつ、パネル10に表示される画像の黒輝度をさらに低減し、よりコントラストを高めることが可能となる。
【0199】
なお、初期化放電によって放電セル内に形成される壁電荷は、時間が経過するにつれて徐々に減少していき、初期化放電が発生しない期間が長くなるほど、その減少量は増加する。したがって、初期化放電が発生しない期間が長くなりすぎると、書込み動作が正常に行われなくなる可能性がある。そのため、上述した実施の形態1、2において、例えば60フィールド/秒で更新されるような画像を表示するときには、1つのフィールド群を構成するフィールドの数を20以下にし、少なくとも20フィールドに1回は必ず全ての放電セルに初期化放電が発生するように構成することが望ましい。
【0200】
なお、図6に示したタイミングチャートは本発明の実施の形態における一例を示したものに過ぎず、本発明は何らこれらのタイミングチャートに限定されるものではない。
【0201】
また、本発明における実施の形態は、走査電極SC1〜走査電極SCnを第1の走査電極グループと第2の走査電極グループとに分割し、書込み期間を、第1の走査電極グループに属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第1の書込み期間と、第2の走査電極グループに属する走査電極のそれぞれに走査パルスを印加する第2の書込み期間とで構成する、いわゆる2相駆動によるパネルの駆動方法にも適用させることができる。
【0202】
なお、本発明における実施の形態は、走査電極と走査電極とが隣り合い、維持電極と維持電極とが隣り合う電極構造、すなわち前面板に設けられる電極の配列が、「・・・走査電極、走査電極、維持電極、維持電極、走査電極、走査電極、・・・」となる電極構造のパネルにおいても有効である。
【0203】
なお、本実施の形態において示した具体的な各数値、例えば、上りランプ電圧L1、下りランプ電圧L2、消去ランプ電圧L3の各傾斜電圧の勾配等は表示電極対数1080の50インチのパネルの特性にもとづき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。また、これらの各数値は、上述した効果を得られる範囲でのばらつきを許容するものとする。
【0204】
(保護層26の詳細)
ここから本実施の形態における保護層26について説明する。保護層26は、下地膜91と金属酸化物結晶粒子92aを含む。下地膜91は、一例として、アルミニウム(Al)を不純物として含有する酸化マグネシウム(MgO)膜である。金属酸化物結晶粒子92aは、一例として、酸化マグネシウム(MgO)結晶粒子である。また、本実施例においては、金属酸化物結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92が、下地膜91の全面に亘って均一に分布するように複数個付着している。
【0205】
(凝集粒子92の詳細)
アドレス放電の開始時には、トリガーとなる初期電子が、保護層26の表面から放電空間中に放出される。初期電子量が不足することが、放電遅れの主原因と考えられる。凝集粒子92には、主としてアドレス放電における放電遅れを抑制する効果と、放電遅れの温度依存性を改善する効果とがある。すなわち、凝集粒子92は、高い初期電子放出能力を有する。そこで本実施の形態では、凝集粒子92が、放電パルスの立ち上がり時に必要な初期電子供給部として備えられている。凝集粒子92は、放電パルスの立ち上がり時に放電空間中に初期電子を豊富に存在させる。したがって、パネル10がより高精細になり、アドレス放電のための割り当て時間が短くなっても、放電遅れが抑制され、高速駆動ができる。
【0206】
凝集粒子92とは、所定の一次粒径の金属酸化物結晶粒子92aが複数個凝集した状態のものである。凝集粒子92は、固体として強い結合力によって結合しているのではない。凝集粒子92は、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合したものである。また、凝集粒子92は、超音波などの外力により、その一部または全部が一次粒子の状態に分解する程度の力で結合している。金属酸化物結晶粒子92aは、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
【0207】
(酸化マグネシウム結晶粒子の作製方法)
本実施の形態にかかる方法は、熱分解法に基づいたものである。具体的には、焼成炉などによって、水酸基や炭酸基を有する酸化マグネシウム前駆体(以下、前駆体と称する)が焼成される。熱によって前駆体が有する水酸基や炭酸基などが除去され、金属酸化物粗粒子である酸化マグネシウム粗粒子が作製される。酸化マグネシウム粗粒子は、金属酸化物結晶である酸化マグネシウム結晶の一次粒子が多数凝集したものである。次に、ボールミルなどによって、酸化マグネシウム粗粒子が粉砕される。粉砕されることで平均粒径が小さい酸化マグネシウム結晶粒子が作製される。
【0208】
なお、前駆体は、液相法によって、生成される。よって、前駆体自体が一次粒子の凝集体である。また、前駆体は、特に限定されない。例えば、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなどを用いることができる。
【0209】
また、前駆体が不純物を多く含むと、作製される酸化マグネシウム結晶粒子に意図しない不純物が混入する場合がある。すなわち、酸化マグネシウム結晶粒子の特性がばらつく場合があるので、前駆体の不純物は少ないほうが好ましい。具体的に前駆体が含む不純物量としては、熱分解法により酸化マグネシウム結晶粒子を生成した際に残留する不純物の合計量が、0.1重量%以下が好ましく、0.01重量%以下がより好ましい。
【0210】
焼成炉は、大気炉などが用いられる。すなわち、焼成は、大気や酸素などの雰囲気下で開放して、又は、それらの気流を流しながら行われる。焼成温度は、700℃から1500℃の範囲である。1200℃程度が最も好ましい。焼成時間は、温度にもよるが、1時間から10時間程度である。例えば、温度が1200℃程度の場合には5時間程度が適当である。焼成炉の昇温速度は、特に限定されない。5℃から10℃/min程度が好ましい。焼成時の雰囲気は特に限定されない。例えば、大気、酸素、窒素、アルゴンなどが用いられる。なお、酸化性雰囲気を用いると、前駆体に含まれる不純物を酸化ガスとして除去することが可能となる。すなわち、焼成時の雰囲気は、大気や、酸素が好ましい。
【0211】
上述の工程によって、酸化マグネシウム粗粒子が作製される。酸化マグネシウム粗粒子の平均粒径は1.0μmから4.0μmの範囲である。なお、本実施の形態において、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことである。また、平均粒径の測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置MT−3300(日機装株式会社製)が用いられた。酸化マグネシウム粗粒子をそのまま保護層26に用いると、製造装置に不具合が発生する場合がある。さらには、前面板21と背面板31とを組み立てるときに、隔壁34が破壊される場合がある。よって、酸化マグネシウム粗粒子は、より平均粒径が小さくなるように粉砕されることが好ましい。
【0212】
なお、本実施の形態において、粉砕とは、一次粒子が多数凝集した金属酸化物粗粒子を所定の平均粒径の金属酸化物になるようにほぐすことである。よって、金属酸化物の平均粒径は、金属酸化物結晶の一次粒子の大きさから、金属酸化物結晶の一次粒子が複数凝集したときの大きさまで変動してもよい。なお、粉砕によって、金属酸化物結晶の一次粒子の粒径は、ほとんど変化しない。
【0213】
次に、ボールミルによって酸化マグネシウム粗粒子が粉砕される。粉砕する際の溶媒として、エタノールが用いられる。また、エタノールの他に、メタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類や、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類などの有機溶剤が用いられ得る。溶媒の使用量は、粉砕原料100質量部に対して20質量部〜1000質量部、好ましくは30質量部〜300質量部である。
【0214】
さらに、溶媒に分散剤が添加されてもよい。分散材は、溶媒に合わせて用いられる。分散材には、例えば、アクリル系ポリマー、アミン径ポリマーなどのポリマー類、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが用いられ得る。分散剤を用いる場合、分散剤の添加量は溶媒100質量部あたり0.1質量部〜20質量部である。さらに、0.2質量部〜10質量部であることが好ましい。
【0215】
本実施の形態において、酸化マグネシウム粗粒子は、種々の条件で粉砕された。粉砕条件の一覧、およびそれぞれの粉砕条件におけるフォトルミネッセンスの相対ピーク強度が表1に示される。
【0216】
【表1】

【0217】
粉砕には、ステンレス製のポッドを有するボールミルが用いられた。ポッドの直径は、24cmであった。ポッドの容量は、8Lであった。メディア(ボール)の直径は、15mmであった。メディアには、鉄心入りナイロンボールが用いられた。酸化ジルコニウム(ZrO2)や酸化アルミニウム(Al23)をメディアに用いると、酸化マグネシウム粗粒子によって削られる。すなわち、期待しない不純物として、酸化マグネシウム結晶粒子に混入するので好ましくない。また、ポッドに対するメディアの充填率は、5体積%〜30体積%であった。原料である酸化マグネシウム粗粒子の充填率は40体積%〜75体積%であった。ポッドは、30R.P.Mの速度で2時間〜10時間回転された。
【0218】
次に、ポッドから粉砕後の原料が排出された。最終的に、酸化マグネシウム結晶粒子は、平均粒径が0.3μm〜2μmの範囲にあった。
【0219】
(酸化マグネシウム結晶粒子の評価)
表1に示されるように、粉砕前の酸化マグネシウム粗粒子および粉砕後の酸化マグネシウム結晶粒子について、フォトルミネッセンスの発光強度が測定された。なお、比較例として、ジェットミルにより粉砕された酸化マグネシウム結晶粒子についてもフォトルミネッセンスの発光強度が測定された。フォトルミネッセンス測定は、以下の条件で行われた。光源には、発光波長146nmのエキシマランプ(ウシオ電機株式会社製)が用いられた。エキシマランプは、サンプルから上方に100mmの位置に設置された。ターボ分子ポンプによって、真空チャンバー内の圧力は、1×10-2Paに保たれた。ディテクターには、CCD一体型で波長範囲200nmから800nmの分光器(浜松ホトニクス株式会社製)が用いられた。入射光の波長が、146nmであるため、フォトルミネッセンスは、サンプルのほぼ最表面から生じていると考えられる。
【0220】
全てのサンプルは、波長200nmから300nmの範囲に発光ピークがあった。図18に、粉砕前(酸化マグネシウム粗粒子)、実施例(試料番号1)および比較例のフォトルミネッセンス波形が例示される。図18に示されるように、各サンプルには、波長240nm近傍に発光ピークがあった。
【0221】
表1に示されるように各サンプルの発光ピーク強度は、酸化マグネシウム粗粒子の発光ピーク強度を100%としたときの相対値(相対ピーク強度)である。最も相対ピーク強度が大きいサンプルは、試料番号11であった。試料番号11の相対ピーク強度は、99.4%に達した。最も相対ピーク強度が小さいサンプルは、試料番号10であった。試料番号10の相対ピーク強度は、60.6%であった。なお、相対ピーク強度が低下する原因は、粉砕時に発生する物理衝撃によって酸化マグネシウム結晶粒子の最表面がダメージを受けるためと考えられる。したがって、ダメージを最小限にとどめつつ、粉砕することが好ましい。つまり、粉砕時に、酸化マグネシウム結晶粒子に与えるエネルギーを抑制することで、相対ピーク強度の低下を抑制することができる。なお、実際に製品を製造する際には、タクトタイムなどを考慮して粉砕条件を設定することが望ましい。
【0222】
波長200nmから300nmの範囲に発光ピークがあることは、酸化マグネシウム粗粒子および酸化マグネシウム結晶粒子は、波長200nmから300nmの発光ピークに対応したエネルギー準位を有することを意味する。エネルギー準位は、初期化放電時に発生する電子を長時間(数msec以上)トラップできると考えられる。アドレス放電時にアドレス電圧が印加されると、保護層26に電界が形成される。熱および電界によって、トラップされた電子が放電空間に取り出される。アドレス放電開始に必要な初期電子が迅速かつ十分に得られると、放電開始時間が早められる。
【0223】
以上のように、波長200nmから300nmの発光ピーク強度が大きいと、放電遅れ時間が短縮されると考えられる。すなわち、酸化マグネシウム粗粒子の粉砕によって生じる波長200nmから300nmの発光ピーク強度の低下を抑制することが、放電遅れ時間の短縮につながる。
【0224】
(保護層26の形成方法)
図17に示されるように、保護層26の形成は、誘電体層25形成後から開始される。まず、ステップ1では、下地膜91が形成される。材料には、例えば、アルミニウム(Al)を含む酸化マグネシウム(MgO)の焼結体が用いられる。方法は、例えば、真空蒸着法が用いられる。具体的には、真空チャンバー内で原材料に電子ビームを照射することにより、原材料を蒸発させ誘電体層25上に付着させる。主として酸化マグネシウム(MgO)からなる下地膜91が誘電体層25上に形成される。下地膜91の膜厚は、一例として、500nmから1000nm程度である。
【0225】
ステップ2では、金属酸化物ペースト膜が形成される。材料には、例えば、酸化マグネシウム結晶粒子が複数凝集した凝集粒子92が有機樹脂成分と希釈溶剤とともに混錬された金属酸化物ペーストが用いられる。方法は、例えば、スクリーン印刷法が用いられる。具体的には、金属酸化物ペーストが下地膜91上の全面に亘って塗布されることにより、金属酸化物ペースト膜が形成される。金属酸化物ペースト膜の膜厚は、一例として、5μmから20μm程度である。なお、下地膜上に金属酸化物ペースト膜を形成する方法として、スクリーン印刷法以外に、スプレー法、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法なども用いることができる。
【0226】
ステップ3では、金属酸化物ペースト膜が乾燥される。乾燥炉などにより、金属酸化物ペースト膜が所定の温度で加熱される。温度範囲は、一例として、100℃から150℃程度である。加熱により、金属酸化物ペースト膜から、溶剤成分が除去される。
【0227】
ステップ4では、乾燥後の金属酸化物ペースト膜が焼成される。焼成炉などにより、金属酸化物ペースト膜が所定の温度で加熱される。温度範囲は、一例として、400℃から500℃程度である。焼成時の雰囲気は特に限定されない。例えば、大気、酸素、窒素などが用いられる。加熱により、金属酸化物ペースト膜から、樹脂成分が除去される。
【0228】
以上のステップによって、下地膜91上に、凝集粒子92が離散的に付着する。
【0229】
(実施例)
パネル10が作製され、パネル10の性能が評価された。作製されたパネル10は、42インチクラスのハイビジョンテレビに適合するものである。すなわち、パネル10は、前面板21と、前面板21と対向配置された背面板31と、を備える。また、前面板21と背面板31の周囲は、封着材で封着されている。前面板21は、表示電極対24と誘電体層25と保護層26とを有する。背面板31は、データ電極32と、誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35とを有する。パネル10には、キセノン(Xe)の含有量が15体積%のネオン(Ne)−キセノン(Xe)系の混合ガスが、60kPaの内圧で封入された。また、表示電極6と表示電極6との電極間距離は、0.06mmであった。隔壁34の高さは0.15mm、隔壁34と隔壁34との間隔(セルピッチ)は0.15mmであった。
【0230】
実施例には、上述の方法で作製された、酸化マグネシウム結晶粒子が複数凝集した凝集粒子92が、用いられた。例えば、試料番号1の凝集粒子92の粒度分布は、0.49μm(D10)、1.15μm(D50)、2.41μm(D90)であった。一方、粉砕される前の酸化マグネシウム粗粒子の粒度分布は、0.62μm(D10)、1.86μm(D50)、3.71μm(D90)であった。一方、比較例として、ジェットミルによって、複数の条件で粉砕された、酸化マグネシウム結晶粒子が複数凝集した凝集粒子92が用いられた。ジェットミルによって得られた凝集粒子92の相対発光ピーク強度は、20.3%〜57.0%であった。相対発光ピーク強度が57.0%のサンプルの粒度分布は、0.41μm(D10)、1.20μm(D50)、2.35μm(D90)であった。
【0231】
実施例および比較例の凝集粒子92は、平均粒径が1.1μmであった。実施例および比較例の凝集粒子92の被覆率は8.0%であった。被覆率とは、1個の放電セルの領域において、凝集粒子92が付着している面積aを1個の放電セルの面積bの比率で表したものである。つまり、被覆率(%)=a/b×100の式により計算されたものである。測定方法としては、例えば、隔壁34により区切られた1個の放電セルに相当する領域がカメラにより撮像される。次に、撮像された画像が、x×yの1セルの大きさにトリミングされる。次に、トリミング後の画像が白黒データに2値化される。次に、2値化されたデータに基づき凝集粒子92による黒エリアの面積aを求める。最後に、被覆率が、a/b×100の式により計算される。
【0232】
実施例と比較例におけるパネル10の製造方法の違いは、酸化マグネシウム粗粒子の粉砕方法のみである。
【0233】
(性能評価)
書込み放電時の「放電遅れ」のために、ちらつきが発生する走査パルス幅(印加時間)を測定することによりパネルの性能が評価された。図19に示されるように、パネルの駆動電圧が、走査電極22、維持電極23、データ電極32に印加された。走査パルス幅だけがパラメータとなり、1.5μsから0.1μs間隔で0.3μsまで変化された。
【0234】
走査パルス幅が十分長いと、走査電極22とデータ電極32との間で発生させる書込み放電が遅れても、走査電極22と維持電極23との間で維持放電を発生し得るだけの壁電荷を下地膜91上に蓄積することができる。しかしながら、走査パルス幅を短縮すると、書込み放電中に走査パルスが立ち下がり、下地膜91への壁電荷の蓄積が不十分となる。壁電荷の蓄積が不十分な放電セルにおいては、維持パルスを印加しても、安定した維持放電が発生するだけの壁電荷が蓄積されていないためにちらつきが発生する。
【0235】
したがって、パネルの点灯性能評価として、正常点灯しているときの走査パルス幅から順次短縮していき、ちらつきが発生し始めたときの走査パルス幅を求めることにより、パネルの「放電遅れ」特性を評価することができる。なお、ちらつきの有無は、パネルの全放電セルが点灯した状態(白色表示)にて目視判断された。
【0236】
なお、この性能評価実験でパネルに印加される電圧条件は、以下のとおりである。
【0237】
初期化電圧(固定):330V
走査電圧(固定):−140V、パルス幅(可変)0.3μs〜1.5μs
書込み電圧(固定):70V
維持電圧(固定):200V、維持周期0.5μs
図20には、相対発光ピーク強度とちらつきが発生し始めたときの走査パルス幅が示されている。図20からは、ちらつきが発生し始める走査パルス幅は、相対発光ピーク強度に依存することがわかる。相対発光ピーク強度が60%以上、100%未満の場合は、走査パルス幅が、0.6μsでもちらつきが発生しなかったので、好ましい。これは、凝集粒子92が、走査パルス印加時に十分な量の初期電子を放出するために「放電遅れ」時間が短縮されたためである。さらに、相対発光ピーク強度が80%以上、100%未満の場合は、走査パルス幅が、0.5μsでもちらつきが発生しなかったので、より好ましい。
【0238】
なお、粉砕によって酸化マグネシウム結晶粒子の表面がダメージを受けると考えられるので、単に酸化マグネシウム粗粒子を粉砕したのみでは、相対発光ピーク強度が100%以上になることはない。
【0239】
一方、比較例においては、0.7μs〜0.8μsでちらつきが発生し始めた。1フィールドに配分されている時間は固定されているので、走査パルス印加時間を増加させると、必然的に維持パルス印加時間を減らすか、サブフィールド数を減らす対策を取ることになる。前者の対策ではパネルの輝度が減少し、後者の対策では表現できる階調数が減少して、いずれにしてもパネルの表示品質劣化を招くことになる。この結果より、本実施の形態におけるパネルによれば、書込み放電時の「放電遅れ」を低減し、表示品質の向上が期待できる。
【0240】
このような構成によれば、金属酸化物において、初期電子放出能力と相関が高い波長200nmから300nmの範囲のフォトルミネッセンスのピーク強度の低下が抑制される。
【0241】
なお、金属酸化物のピークは、金属酸化物粗粒子のピークの80%以上、100%未満の強度であるとより好ましい。このような構成によれば、金属酸化物において、初期電子放出能力と相関が高い波長200nmから300nmの範囲のフォトルミネッセンスのピーク強度の低下が、より抑制される。
【0242】
なお、本実施の形態では、金属酸化物結晶粒子92aが、酸化マグネシウム結晶粒子である場合が例示された。しかし、本発明はこれには限られない。酸化マグネシウム(MgO)の他にも、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化アルミニウム(Al23)などを用いることができる。要するに、高い初期電子放出能力を有する金属酸化物結晶粒子92aを用いると、同様の効果を得ることができる。したがって、金属酸化物結晶粒子92aは、酸化マグネシウム(MgO)に限定されない。また、複数の種類の金属酸化物結晶粒子を用いることもできる。
【0243】
さらに、本実施の形態では、下地膜91上に凝集粒子92が形成された場合が例示された。しかし、本発明はこれには限られない。つまり、金属酸化物結晶粒子92aは凝集されないで、一次粒子の状態で下地膜91上に形成されてもよい。
【0244】
なお、本実施の形態では、下地層が、酸化アルミニウムを含む酸化マグネシウム膜である場合が例示された。しかし、本発明はこれには限られない。酸化マグネシウム(MgO)の他にも、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化アルミニウム(Al23)などの金属酸化物膜を用いることができる。また、複数の種類の金属酸化物が混合された膜を用いることもできる。
【0245】
さらに、金属酸化物膜の他にも、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化アルミニウム(Al23)などの金属酸化物微粒子の集合体を用いることができる。また、複数の種類の金属酸化物微粒子が混合された集合体を用いることもできる。
【0246】
このように、上記記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法と、保護層を有したプラズマディスプレイパネルであれば、パネルに表示される画像の黒輝度を低減してコントラストを高め、画像表示品質を高めることができるプラズマディスプレイ装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、パネルに表示される画像の黒輝度を低減してコントラストを高め、画像表示品質を高めることができるので、プラズマディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0248】
1 プラズマディスプレイ装置
10 パネル
21 (ガラス製の)前面板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
31 背面板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
50 維持パルス発生回路
51 初期化波形発生回路
52 走査パルス発生回路
53,54,55 ミラー積分回路
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 金属酸化物結晶粒子
C1,C2,C3,C31 コンデンサ
D31 ダイオード
L1 上りランプ電圧
L2,L4 下りランプ電圧
L3 消去ランプ電圧
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6,QH1〜QHn,QL1〜QLn スイッチング素子
R1,R2,R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを1フィールド内に複数設けて階調表示するサブフィールド法で駆動するとともに特別初期化サブフィールドと複数の選択初期化サブフィールドとで1つのフィールドを構成し、時間的に連続する複数の前記フィールドで1つのフィールド群を構成して、プラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイ装置であって、
前記初期化期間に、直前のサブフィールドの動作にかかわらず前記放電セルに初期化放電を発生する強制初期化波形と、直前のサブフィールドの前記維持期間に維持放電を発生した前記放電セルだけに初期化放電を発生する選択初期化波形と、前記放電セルに初期化放電が発生しない非初期化波形とのいずれかを発生して前記走査電極に印加するとともに、前記特別初期化サブフィールドの前記初期化期間では、前記強制初期化波形または前記非初期化波形を発生して選択的に前記走査電極に印加し、前記選択初期化サブフィールドの前記初期化期間では前記選択初期化波形を発生して全ての前記走査電極に印加し、1つの前記走査電極に1つの前記フィールド群で1回だけ前記強制初期化波形を印加する走査電極駆動回路とを備え、
前記走査電極駆動回路は、
前記特別初期化サブフィールドにおいて前記強制初期化波形を印加する走査電極の両側の走査電極には、その特別初期化サブフィールドと、その特別初期化サブフィールドの後の最初の特別初期化サブフィールドとの少なくとも2つの特別初期化サブフィールドで前記非初期化波形を印加する駆動波形の発生パターンを1フィールド群に少なくとも1つ含んで駆動波形を発生し、
前記プラズマディスプレイパネルは、前面板と、前記前面板と対向配置された背面板と、を備え、前記前面板は、電極と誘電体層と保護層とを有し、前記保護層は、下地層と前記下地層の上に形成された金属酸化物とを含み、
前記金属酸化物は、金属酸化物粗粒子が粉砕されたものであり、前記金属酸化物と前記金属酸化物粗粒子とは、波長200nmから300nmの範囲にフォトルミネッセンスのピークがあり、前記金属酸化物のピークは、前記金属酸化物粗粒子のピークの60%以上、100%未満の強度である、
プラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記走査電極駆動回路は、
上昇する傾斜電圧を発生する傾斜電圧発生回路を有し、
前記傾斜電圧発生回路が出力する傾斜電圧に所定の電圧を重畳した電圧を前記強制初期化波形として出力し、
前記所定の電圧を重畳しない前記傾斜電圧を前記非初期化波形として出力することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマディスプレイ装置であって、
前記金属酸化物のピークは、前記金属酸化物粗粒子のピークの80%以上、100%未満の強度である、
プラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−159557(P2012−159557A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17546(P2011−17546)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】