説明

プラズマ・ディスプレイ・パネルの蛍光体層形成方法

【課題】PDPを製造するに際して、隔壁頂部に付着した蛍光体を好適に除去し得る蛍光体層の形成方法を提供する。
【解決手段】蛍光体層20を形成するに際しては、蛍光体ペースト印刷工程において、隔壁14の頂部22から複数種類の蛍光体ペーストが放電空間毎に塗り分けて順次印刷され、続く焼成工程において、その蛍光体ペーストを焼成することにより隔壁14の側面18に複数種類の蛍光体層20が形成され、更に、頂部蛍光体除去工程において、表面30に粘着性を備え且つ隔壁頂部22の形状に倣ってその表面30が変形させられる粘着剤28をその頂部22に押しつけることにより、その頂部22に付着している蛍光体が除去される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマ・ディスプレイ・パネル(Plasma Display Panel:以下、PDPという)の蛍光体層形成方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】複数の放電空間を区画形成するために基板の一面から突設された隔壁と、それら複数の放電空間毎に塗り分けられた複数種類の蛍光体層とを備え、その放電空間内で放電を発生させ、それにより発生した紫外線でその蛍光体層を励起して発光させる形式のPDPが知られている。上記の各放電空間内には、多色表示をするために例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の三色の蛍光体層の何れかが設けられる。そして、格子状の隔壁によって区画形成された放電空間毎に、或いは、長手状の隔壁によって区画形成された放電空間の各々をその隔壁に直交して設けられた放電電極で電気的に区分した放電の及ぶ範囲毎に、全体として格子状に配列された複数の発光区画が構成され、各発光区画を選択的に発光させることで文字、記号、図形等の所望の画像が表示される。このようなPDPは、平板型で薄型化および軽量化が容易であるため、CRTに代わる画像表示装置として期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の蛍光体層は、一般に、基板の一面に突設された隔壁の頂部から厚膜スクリーン印刷によって蛍光体ペーストを塗布することで形成される。厚膜スクリーン印刷によれば、製造コストが低く且つ材料の利用効率が高くなると共に、蛍光体層の塗り分けが容易なためである。隔壁の頂部側からその上部に印刷された蛍光体ペーストは、レオロジー(すなわち流動性および表面張力)に基づく経時的フロー、所謂『インクのだれ』によって隔壁側面に一部が残留しつつ流れ落ちる。これにより、放電空間の内壁面を構成する隔壁の側面と基板の表面に、蛍光体ペーストのレオロジーに基づいて定められる厚さで蛍光体層が形成される。
【0004】しかしながら、上記のような隔壁の頂部側からのスクリーン印刷では、その頂部に蛍光体ペーストが残留することが避けられない。そのため、頂部に残留した蛍光体の発光が隣接する放電空間に漏れることにより、混色が発生し得るという問題があった。しかも、ブラック・マスクとして機能させる目的で隔壁の頂部が黒色に形成される場合には、その頂部に蛍光体が付着しているとコントラストが低下するという問題もある。したがって、特に高精細表示を実現する上で、隔壁頂部に残留した蛍光体を除去することが望まれていた。
【0005】なお、隔壁頂部の蛍光体を除去する方法として、例えば蛍光体ペーストを印刷した後にその頂部の研磨処理を施すことが考えられる。しかしながら、隔壁の高さにはある程度のバラツキがあり、更にその頂部には凹凸が存在していることから、研磨処理により蛍光体だけを除去することは困難であるため、研磨処理による場合には、高さのバラツキや頂部の凹凸に応じて決定される研磨除去高さだけ隔壁を高く形成する必要がある。このことは、基板が大型になるほど均一に研磨することが困難になるため、除去量を大きく設定する必要が生じて大きな問題となる。しかも、研磨処理により隔壁に欠けが生じて放電の仕切りが損なわれ得るという問題もある。更に、研磨により生じた蛍光体粉末や隔壁材料等の研磨屑が放電空間内に残留すると、混色や黒点が発生し得るという問題もある。したがって、研磨処理による方法は非現実的であって採用され得ないのである。
【0006】本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、PDPを製造するに際して、隔壁頂部に付着した蛍光体を好適に除去し得る蛍光体層の形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、複数の放電空間を区画形成するために基板の一面から突設された隔壁と、それら複数の放電空間毎に塗り分けられた複数種類の蛍光体層とを備え、その放電空間内で放電させることにより発生した紫外線でその蛍光体層を励起して発光させる形式のPDPを製造するに際して、その隔壁の側面にそれら複数種類の蛍光体層を形成する方法であって、(a) 前記隔壁の頂部から複数種類の蛍光体ペーストを前記放電空間毎に塗り分けて順次印刷する蛍光体ペースト印刷工程と、(b) 前記蛍光体ペーストを焼成することにより前記隔壁の側面に前記複数種類の蛍光体層を形成する焼成工程と、(c) その焼成工程の後に、表面に粘着性を備え且つ前記隔壁の頂部形状に倣ってその表面が変形させられる弾性粘着層をその頂部に押しつけることにより、その頂部に付着している蛍光体を除去する蛍光体除去工程と、を、含むことにある。
【0008】
【発明の効果】このようにすれば、蛍光体層を形成するに際しては、蛍光体ペースト印刷工程において、隔壁の頂部から複数種類の蛍光体ペーストが放電空間毎に塗り分けて順次印刷され、続く焼成工程において、その蛍光体ペーストを焼成することにより隔壁の側面に複数種類の蛍光体層が形成され、更に、その焼成工程の後の蛍光体除去工程において、表面に粘着性を備え且つ隔壁の頂部形状に倣ってその表面が変形させられる弾性粘着層をその頂部に押しつけることにより、その頂部に付着している蛍光体が除去される。そのため、隔壁の頂部から印刷されることによりその頂部にも蛍光体ペーストが付着させられるが、焼成が施されるとその蛍光体ペーストに含まれる有機成分が除去されることにより蛍光体粒子相互の結合力は低下させられることから、その頂部に付着した蛍光体は、弾性粘着層が頂部に押しつけられるとその表面にくっついて頂部から除去される。このとき、弾性粘着層は、粘着性を有する表面が頂部形状に倣って変形させられることから、隔壁の頂部に凹凸や高低差が生じていてもその表面が頂部に密着させられるため、凹部に付着している蛍光体粉末も好適に弾性粘着層に吸着される。したがって、蛍光体層を形成するに際して、隔壁頂部に付着した蛍光体を研磨処理を施すことなく好適に除去することができる。
【0009】
【発明の他の態様】ここで、好適には、(c-2) 前記蛍光体除去工程は、外周面に前記弾性粘着層が備えられたローラを前記隔壁の頂部上で転がすものである。このようにすれば、蛍光体除去工程において、外周面に弾性粘着層が備えられたローラを隔壁の頂部上で転がすことにより、その頂部に付着している蛍光体が除去される。そのため、ローラを適度な力で隔壁頂部に向かって押しつけつつ回転させて一方向に送る簡単な作業で頂部に付着した蛍光体を容易に除去することができる。
【0010】また、前記の弾性粘着層がローラの外周面に備えられる場合において、好適には、前記隔壁は長手状を成して一方向に沿って並ぶものであり、前記蛍光体除去工程は、その長手方向に略沿った方向に前記ローラを転がすものである。このようにすれば、ローラが隔壁の長手方向に略沿った方向に転がされることから、隔壁の幅方向に作用する力が小さくなるため、ローラを押しつけることに起因して隔壁が破損することが好適に抑制される。
【0011】また、好適には、(c-3) 前記蛍光体除去工程は、一面に前記弾性粘着層が備えられたシートを前記隔壁の頂部に密着させて引き剥がすものである。このようにすれば、蛍光体除去工程において、一面に弾性粘着層が備えられたシートを隔壁の頂部に密着させて引き剥がすことにより、その頂部に付着している蛍光体が除去される。すなわち、弾性粘着層の形状は、ローラの外周面に備えられる円筒状の他に、平面シート状であっても差し支えない。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】図1(a) は、本発明の蛍光体層形成方法が適用されたAC型カラーPDPの背面板10を示す図である。背面板10は、例えばソーダ・ライム・ガラス製の平板等から成るものであって、その一面12には、複数本の長手状の隔壁(リブ状壁)14が一定の間隔を以て互いに平行に突設されている。これら複数本の隔壁14は、背面板10の一面12側に配設される図示しない前面板との間に形成される気密空間内に長手状の複数本の放電空間16を区画形成するために設けられているものであって、例えば、B2O3、PbO 系等の低軟化点ガラス、アルミナやジルコニア等の無機充填材(フィラー)、およびCu-Cr-Mn或いはFe-Cr-Mn等の黒色無機顔料から成り、黒色を呈し且つ多孔質に構成されている。本実施例においては、背面板10が基板に相当する。
【0014】そして、放電空間16の内壁面すなわち背面板10の一面12上と隔壁14の側面18上には、放電空間16毎に塗り分けられた蛍光体層20R,20G,20Bが例えば 50(μm)程度以下の範囲で色毎に定められた厚みで設けられている。蛍光体層20は、例えば紫外線励起により発光させられるR(赤),G(緑),B(青)等の発光色に対応する蛍光体から成るものであり、隣接する放電空間16相互に異なる発光色となるように3色が順に並ぶように設けられている。また、図1(b) に示すように、蛍光体層20は、隔壁14の頂部22よりも例えばh= 10(μm)程度だけ下側の範囲に設けられており、露出させられているその頂部22には蛍光体は何ら付着していない。そのため、隔壁14の頂部22上に図示しない前面板を配置した状態では各放電空間16内に備えられた蛍光体層20が隣接する放電空間16から十分に隔てられていることから、隣接する放電空間16内の蛍光体層20の発光が漏れることに起因する混色が好適に抑制されている。しかも、黒色を呈する隔壁14の頂部22が露出させられていることから、その隔壁14が好適にブラック・マスクとして機能させられるため、コントラストも高められる。
【0015】なお、背面板10上には、放電セルを選択するための書込電極や、その書込電極と背面板10或いは蛍光体層20との反応を抑制するためのアンダ・コートおよびオーバ・コート等が必要に応じて設けられるが、これらは本実施例を理解するために必要ではないので省略した。
【0016】ところで、上記の蛍光体層20は、例えば、図2に示される工程に従って設けられたものである。先ず、隔壁形成工程S1において、厚膜スクリーン印刷やサンド・ブラスト法等のよく知られた方法を用いて背面板10上に隔壁14を突設する。次いで、蛍光体ペースト印刷工程S2において、樹脂成分が有機溶剤中に溶解させられたビヒクル中に蛍光体粒子を分散させた蛍光体ペーストを、厚膜スクリーン印刷を用いて隔壁14の上から塗布する。続く乾燥工程S3においては、蛍光体ペーストが塗布された背面板10を乾燥処理することにより、ペースト中の溶剤を除去する。上記の蛍光体ペースト印刷工程S2および乾燥工程S3は、互い異なるスクリーン印刷用製版を用いて蛍光体の色毎に実施される。したがって、RGB三色に塗り分けられる場合には、繰り返し回数は3回である。
【0017】上記のようにして全ての放電空間16に蛍光体ペーストを塗布した後、焼成工程S4において、樹脂成分や蛍光体粒子の種類に応じて定められた温度で熱処理を施す。これにより、ペースト中の樹脂成分が除去され、蛍光体粒子が相互に分子間力等の比較的弱い結合力で結合させられた蛍光体層20が生成される。図3(a) および図4(a) は、この状態を示している。このとき、蛍光体ペーストを塗布するためのスクリーン印刷法では、スクリーンが隔壁頂部22に密着した状態でその頂部22にスクリーンから押し出されたペーストを付着させ、そのペースト自身のレオロジーに基づく経時的フローによって側面18および一面12に塗布が為されることから、図に示されるように、上記の焼成直後の段階では、蛍光体層20が隔壁14の頂部22にも設けられている。すなわち、蛍光体層20は隣接する放電空間16内にそれぞれ設けられているものがその頂部22で重なり合い、その頂部22は蛍光体層20で覆われて露出させられていない。
【0018】そのため、続く頂部蛍光体除去工程S5では、隔壁頂部22に付着している蛍光体を除去することにより、その頂部22が露出させられる。この蛍光体の除去は、図4(b) に示されるように蛍光体除去ローラ24を、図の矢印方向すなわち隔壁14の長手方向に沿ってその頂部22上で転がすことによって行われる。なお、ローラ24は、例えばその自重等の比較的小さな力で隔壁14に押しつけられるため、ローラ24を転がす際に隔壁14が破損させられることはない。本実施例においては、頂部蛍光体除去工程S5が蛍光体除去工程に対応する。
【0019】上記の蛍光体除去ローラ24は、例えばアルミニウムやFRP製の円筒状或いは円柱状の心材26の外周面に、例えばシリコーン樹脂やSBR系、レゾルシン系、或いは天然ゴム系等の高分子ゴム系接着剤等の容易に弾性変形させられる材料から成る粘着剤28が1(cm) 程度の厚さで設けられて成るものである。すなわち、蛍光体除去ローラ24の表面すなわち粘着剤28の表面30は、粘着性を有すると共に、図3(b) に示されるように粘着剤28自身の弾性に基づいて隔壁14の頂部22の形状に倣って変形させられるようになっている。本実施例においては、上記の粘着剤28が弾性粘着層に相当する。
【0020】そのため、前述のように焼成処理を施された蛍光体層20は蛍光体粒子32相互の結合力が弱められていることから、蛍光体除去ローラ24を隔壁14の頂部22に密着させてその上で転がすと、粘着性を有するそのローラ24の表面30に蛍光体粒子32が接着されて隔壁14上から除去される。このとき、表面30が頂部22の形状に倣って変形させられてそこに密着させられることにより、その頂部22の凹凸の有無や高さのバラツキがあっても、隔壁14の一定の高さ以上の位置に付着している蛍光体粒子32は確実に除去されることとなる。すなわち、図4(b) に示されるように、蛍光体除去ローラ24は、その表面30に蛍光体粒子32を付着させながら転がることで頂部22上から余剰の蛍光体粒子を除去する。図3(c) は、このようにして左側に位置する2本の隔壁14上の蛍光体を除去した後の状態を表しており、隔壁14の幅の範囲内に付着していた蛍光体粒子32は除去されて隔壁頂部22が露出させられている。したがって、この背面板10を利用したPDPには、隔壁14の幅寸法に等しい略均一な幅寸法を有するブラック・マスクが備えられることとなる。
【0021】なお、粘着剤28の表面30のうち蛍光体粒子32が付着した部分は粘着性が低下させられ或いは失われるため、そこに重ねて蛍光体粒子32を吸着して隔壁頂部22から除去することはできない。しかしながら、ローラ24の表面30に付着した蛍光体粒子32は、その表面30をアルコール等で拭くか、或いは、粘着剤28と同様な性状を有する粘着テープ等で転写すること等によって除去できる。したがって、ローラ24は蛍光体粒子32を適宜除去することによって繰り返し利用可能である。なお、図においてはローラ24が比較的小さい直径の円柱状に描かれているが、実際には、隔壁14の長手方向寸法よりも円周が長くなるように直径が定められており、隔壁14の長手方向の一端から他端まで転がすことによって一回の操作で長手方向の全長に亘って頂部22上の蛍光体粒子32が除去される。例えば、隔壁14の長さ寸法が1(m)程度である場合には、表面30における直径が35(cm)程度以上のローラ24が用いられる。
【0022】要するに、本実施例においては、蛍光体層20を形成するに際しては、蛍光体ペースト印刷工程S2において、隔壁14の頂部22から複数種類の蛍光体ペーストが放電空間16毎に塗り分けて順次印刷され、続く焼成工程S4において、その蛍光体ペーストを焼成することにより隔壁14の側面18に複数種類の蛍光体層20が形成され、更に、その焼成工程S4の後の頂部蛍光体除去工程S5において、表面30に粘着性を備え且つ隔壁頂部22の形状に倣ってその表面30が変形させられる粘着剤28をその頂部22に押しつけることにより、その頂部22に付着している蛍光体が除去される。そのため、隔壁14の頂部22側から印刷されることによりその頂部22にも蛍光体ペーストが付着させられるが、焼成が施されるとその蛍光体ペーストに含まれる有機成分が除去されることにより蛍光体粒子32相互の結合力は低下させられることから、その頂部22に付着した蛍光体は、粘着剤28が頂部22に押しつけられるとその表面30にくっついて頂部22から除去される。このとき、粘着剤28は、粘着性を有する表面30が頂部22形状に倣って容易に弾性変形させられることから、隔壁14の頂部22に凹凸や高低差が生じていてもその表面30が頂部22に密着させられるため、凹部に付着している蛍光体粒子32も好適に粘着剤28に接着される。したがって、蛍光体層20を形成するに際して、隔壁頂部22に付着した蛍光体を研磨処理を施すことなく好適に除去することができる。
【0023】また、本実施例においては、頂部蛍光体除去工程S5において、外周面に粘着剤28が備えられたローラ24を隔壁14の頂部22上で転がすことにより、その頂部22に付着している蛍光体が除去される。そのため、ローラ24をその自重で隔壁14頂部22に向かって押しつけつつ回転させることで頂部22に付着した蛍光体を容易に除去することができる。
【0024】また、本実施例においては、隔壁14は長手状を成して一方向に沿って並ぶものであり、頂部蛍光体除去工程S5は、その長手方向に沿った方向にローラ24を転がすものである。そのため、ローラ24が隔壁14の長手方向に沿った方向に転がされるため、ローラ24を押しつけることに起因して隔壁14が破損することが一層抑制される。
【0025】なお、蛍光体層20の除去量すなわち前記図1(b) に示される高さhは、ローラ24の構成や使用方法を変更することで適宜設定可能である。すなわち高さhを大きくしたい場合には、粘着剤28を軟質ゴムやシリコーン・ゴム等の一層変形し易い材料で構成し、その厚さtを厚くし、或いはローラ24の印圧(隔壁14への押しつけ力)を高くすればよい。反対に、高さhを小さくしたい場合には、粘着剤28を硬質ゴムやフィラーを添加した軟質ゴム等の変形し難い材料で構成し、その厚さtを薄くし、或いはローラ24の印圧を低くすればよい。図3(b) に、一点鎖線で示しているローラ24は、粘着剤28の厚さtを薄くした例である。厚さtが薄くなることにより粘着剤28の変形量すなわち凹みの大きさが小さくなる。そのため、図3(c) の右端に一点鎖線で示すように、蛍光体層20の除去量は厚さtが厚いローラ24を用いた場合よりも小さくなる。蛍光体層20が設けられている面積を混色が生じ難い範囲で可及的に大きくしたい場合等には、このようにして蛍光体の除去量を制御すればよい。
【0026】次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前述の実施例と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】図5は、前記の頂部蛍光体除去工程S5の他の実施態様を説明する図である。図において、隔壁14の頂部22には、ローラ24に代えて蛍光体除去シート34が密着させられている。シート34は、例えば、紙や樹脂製シート等から成るバック・アップ36の一面にローラ24の場合と同様な粘着剤28が備えられたものであり、全体が可撓性を有している。このようなシート34を用いて頂部22の蛍光体を除去するに際しては、先ず、図に一点鎖線で示されるようにその頂部22にシート34の粘着剤28の表面30を密着させる。このとき、例えばシート34の裏面すなわちバック・アップ36側から棒や板等で押さえつけることにより、前記図3(b) に示されるように粘着剤28が隔壁頂部22に倣った形状に変形させられる。その後、例えば図の左に示される一端から図の矢印Pで示される方向にシート34を引き剥がす。これにより、シート34の粘着剤28に頂部22に付着している蛍光体粒子32が接着されてローラ24の場合と同様に除去され、前記図1に示される背面板10が得られる。要するに、頂部蛍光体除去工程S5は、ローラ24に代えて上記のように構成されたシート34を用いても同様に実施することができる。
【0028】以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は、更に他の態様でも実施される。
【0029】例えば、実施例においては、一方向に沿って並ぶストライプ状の隔壁14が備えられた背面板10上に蛍光体層20を設ける場合について説明したが、本発明は、隔壁14が格子状を成す場合にも同様に適用される。
【0030】また、実施例においては、粘着剤28自身が弾性変形することによってその表面30が頂部22の形状に倣って変形させられていたが、粘着層28を薄く設けてその裏面に備えられる支持体、例えば心材26やバック・アップ36等が弾性変形させられることにより、その表面に設けられた粘着層28が実質的に頂部22に倣って変形させられるように構成されてもよい。
【0031】また、心材26やバック・アップ36等の支持体を備えず、粘着層28だけで蛍光体除去ローラ24や蛍光体除去シート34を構成することもできる。
【0032】また、実施例においては、R,G,B3色の蛍光体が用いられていたが、用いられる蛍光体の色や色数は、PDPの用途に応じて適宜変更される。本発明は、蛍光体が頂部22に残ることによって混色が生じ得るものであれば、2色或いは4色以上の蛍光体層20が塗り分けられる場合にも同様に適用される。
【0033】また、実施例においては、蛍光体ペーストから蛍光体層20を生成するための焼成工程S4が3色の蛍光体ペーストを全て塗布した後に実施されていたが、一色毎に焼成処理を施しても差し支えない。このようにする場合には、焼成処理を終えた一色毎に頂部蛍光体除去工程S5を施すこともできる。
【0034】また、実施例においては、ローラ24が隔壁14の長手方向に沿って転がされていたが、その長手方向に対して僅かに傾いた方向にローラ24を転がしても差し支えない。このようにすれば、表面30のうち隔壁14に接触する位置がローラ24の軸心方向において次第に変化してその表面30に螺旋状に蛍光体粒子32が付着することとなるため、頂部22に付着している蛍光体を一回の走査で除去するために必要なローラ24の直径を小さくすることができる。
【0035】その他、一々例示はしないが、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えた態様で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) は、本発明の蛍光体層形成方法が適用されたPDPの背面板を示す斜視図であり、(b) は、(a) における隔壁の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【図2】図1の背面板の蛍光体層形成方法を説明する工程図である。
【図3】(a) 〜(c) は、図2の工程の各段階における背面板の状態を示す要部断面図である。
【図4】(a) は、図2の焼成工程後の状態を示す図であり、(b) は、頂部蛍光体除去工程の実施中の状態を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例を説明する図4(b) に対応する図である。
【符号の説明】
10:背面板(基板)
14:隔壁
20:蛍光体層
22:頂部
28:粘着剤
30:表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の放電空間を区画形成するために基板の一面から突設された隔壁と、該複数の放電空間毎に塗り分けられた複数種類の蛍光体層とを備え、該放電空間内で放電させることにより発生した紫外線で該蛍光体層を励起して発光させる形式のプラズマ・ディスプレイ・パネルを製造するに際して、該隔壁の側面に該複数種類の蛍光体層を形成する方法であって、前記隔壁の頂部から複数種類の蛍光体ペーストを前記放電空間毎に塗り分けて順次印刷する蛍光体ペースト印刷工程と、前記蛍光体ペーストを焼成することにより前記隔壁の側面に前記複数種類の蛍光体層を形成する焼成工程と、該焼成工程の後に、表面に粘着性を備え且つ前記隔壁の頂部形状に倣って該表面が変形させられる弾性粘着層を該頂部に押しつけることにより、該頂部に付着している蛍光体を除去する蛍光体除去工程と、を、含むことを特徴とするプラズマ・ディスプレイ・パネルの蛍光体層形成方法。
【請求項2】 前記蛍光体除去工程は、外周面に前記弾性粘着層が備えられたローラを前記隔壁の頂部上で転がすものである請求項1のプラズマ・ディスプレイ・パネルの蛍光体層形成方法。
【請求項3】 前記隔壁は長手状を成して一方向に沿って並ぶものであり、前記蛍光体除去工程は、該長手方向に略沿った方向に前記ローラを転がすものである請求項2のプラズマ・ディスプレイ・パネルの蛍光体層形成方法。
【請求項4】 前記蛍光体除去工程は、一面に前記弾性粘着層が備えられたシートを前記隔壁の頂部に密着させて引き剥がすものである請求項1のプラズマ・ディスプレイ・パネルの蛍光体層形成方法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−123730(P2000−123730A)
【公開日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−290407
【出願日】平成10年10月13日(1998.10.13)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【出願人】(599042717)ノリタケ電子工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】