説明

プラズマ処理装置

【課題】レシピ毎に空洞共振部の高さを適切なものとすることができるようにし、レシピ条件が変更された場合にも、均一に試料を処理することを可能とする。
【解決手段】処理室200内に配置され処理対象の試料が載せられる試料台210と、処理室200の上方に配置され前記処理室内にプラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円板状部材204と、この円板状部材204の上方に配置され、前記電界を共振させるための円筒形状を有する空洞共振室203と、該空洞共振室203を囲んで、その天井面を構成する天面部材の中央の上部と連結され、その内部を前記電界が導かれる導波管202と、空洞共振室の高さを可変に調節する駆動機構208と、空洞共振室203の下方外縁に配置された前記空洞共振室内からの前記電界の漏れを抑制する手段213とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に係り、特に、マイクロ波等の電磁波によってプラズマを発生させて均一に試料を処理することを可能としたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマを利用した半導体製造プロセスは、被処理物に対してダメージを与えることなく、均一に被処理物の処理を行うことが必要である。半導体製造プロセスに使用するプラズマ処理装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。
【0003】
この従来技術は、電磁波を装置内に導入する電磁波導入部と、電磁波導入部に続き電磁波を伝播させる空洞共振部と、空洞共振部に繋がる放電領域を形成する処理容器と、空洞共振部と処理容器との間に設けられ処理容器の一部を形成し電磁波のエネルギーを処理容器内に略全面で透過させる電磁波透過部材とから構成され、電磁波が電磁波透過部材及び放電領域の境界面と空洞共振部の電磁波導入側端面との間で複雑な反射と屈折を繰り返し、電磁波導入部を伝播してきたマイクロ波と混在させて放電領域に導入するようにプラズマ処理装置を構成したものである。そして、この従来技術は、空洞共振部分の高さを適切に選ぶことにより、特定の単一モードあるいは複数のモードのマイクロ波を、電磁波波透過部材、シャワープレートを経て処理容器に導くことが可能となり、均一で安定な高密度のプラズマを発生させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3208995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、大口径の被処理物に対応させた処理装置とする場合、マイクロ波が空洞共振部内で様々なモードに励起され、生成されるプラズマ状態が時間的に変化し、このプラズマ状態の変化に伴ってプラズマのインピーダンスが変化し、プラズマへの効率的なマイクロ波エネルギーの伝達ができず高密度のプラズマを生成することが困難になるという問題点を生じる。このため、前述した従来技術は、大口径の試料に対応した広い範囲での均一なプラズマを生成することが困難で、被処理物に対して均一な処理を行うことができないという問題点を生じてしまう。
【0006】
前述したような問題点を生じる理由は、従来技術によるプラズマ処理装置の空洞共振部分の高さを、ある一定のレシピ条件において、安定したプラズマが得られる位置に固定してプラズマ処理を行うようにされていたためである。すなわち、前述した従来技術は、レシピ毎に空洞共振部分の高さを適正化するという点についての配慮がなされていないため、ある一定のレシピ条件では安定したプラズマを発生させることができるものの、レシピ条件によっては、安定したプラズマを発生させることができず、被処理物に対して均一な処理を行うことができないという問題点を有している。
【0007】
従って、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決するために、レシピ毎に空洞共振部の高さを適切なものとすることができるようにすると共に、マイクロ波が漏れない構造にすることにより、レシピ条件が変更された場合にも、均一に試料を処理することを可能としたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば前記目的は、内部に処理室を有する処理容器と、前記処理室内に配置され処理対象の試料が載せられる試料台と、前記処理室の上方に配置され前記処理室内にプラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円板状部材と、この円板状部材の上方に配置され、前記電界を共振させるための円筒形状を有する空洞共振室と、該空洞共振室を囲んで、その天井面を構成する天面部材の中央の上部と連結され、その内部を前記電界が導かれる導波管と、前記空洞共振室の高さを可変に調節する駆動機構と、前記空洞共振室の下方外縁に配置された前記空洞共振室内からの前記電界の漏れを抑制する手段とを備えたことにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レシピ条件が変更された場合にも、空洞共振部の高さ寸法を変更することができるので、プラズマへの効率的なマイクロ波エネルギーの伝達を行ってプラズマ生成領域に、高密度、かつ、均一なプラズマを生成することができ、均一に試料を処理することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置を含むプラズマ処理システムの全体の構成の概略を説明する図である。
【図2】図1に示して説明した本発明の実施形態によるプラズマ処理装置を構成する処理容器103の構成の概略を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるプラズマ生成領域の付近を拡大して示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるプラズマ処理装置におけるプラズマ生成領域の付近を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるプラズマ処理装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置を含むプラズマ処理システムの全体の構成の概略を説明する図であり、図1(a)はプラズマ処理システムを上方から見た構成の概略を示す横断面図、図1(b)はプラズマ処理システムの斜視図である。
【0013】
図1に示す本発明の実施形態によるプラズマ処理装置を含むプラズマ処理システム100は、大きく分けて、大気側ブロック101と真空側ブロック102とにより構成される。大気側ブロック101は、大気圧下で被処理物である半導体ウエハ等を搬送、収納位置決め等を行う部分であり、真空側ブロック102は、大気圧から減圧された圧力下でウエハ等の基板状の試料を搬送し、予め定められた処理容器内において処理を行うブロックである。そして、真空側ブロック102の前述した搬送や処理を行う真空側ブロック102の箇所と大気側ブロック101との間に、試料を内部に有した状態で圧力を大気圧と真空圧との間で上下させる部分を備えている。
【0014】
大気側ブロック101は、内部に大気側搬送ロボット109を備えた略直方体形状の筐体106を有し、この筐体106の前面側(図1(a)右側)に取付けられていて、処理用またはクリーニング用の被処理物としての試料が収納されているカセットがその上に載せられる複数のカセット台107が備えられている。
【0015】
真空側ブロック102は、平面形状が略多角形状(図1に示す例では5角形状)の真空搬送室104の側壁面の周囲に、内部が減圧されその内部に試料が搬送されて、試料を処理する処理室を有する本発明によるプラズマシステム装置を構成する4つの処理容器103a〜103dと、真空搬送室104と大気側ブロック101との間に配置され、試料を大気側と真空側との間でやりとりする試料を内部に有した状態で圧力を大気圧と真空圧との間で上下させる部分である2つのロック室105とを備えている。この真空側ブロック102は、全体が減圧されて高い真空度の圧力に維持可能な容器である。
【0016】
真空搬送室104は、その内部が搬送室とされており、搬送室内には、真空下でロック室105と処理容器103a〜103d内のそれぞれの処理室との間で試料を搬送する真空搬送ロボット108がその中央に配置されている。この真空搬送ロボット108は、そのアーム上に試料が載せられて、各処理容器103a〜103dの各処理室内に配置された試料台上と2つのロック室105の何れかのロック室105内の試料台との間で試料の搬入、搬出を行う。これら処理容器103a〜103d及びロック室105と真空搬送室104の搬送室との間には、それぞれ気密に閉塞、開放可能なバルブにより連通する通路が設けられており、この通路は、バルブにより開閉される。
【0017】
次に、前述したように構成されるプラズマ処理システムにより、試料に対する処理を行う際の試料の搬送過程の概要を説明する。
【0018】
カセット台107の何れか上に載せられたカセット内に収納された複数の半導体ウエハ等の試料は、プラズマ処理システム100の動作を調節する図示しない制御装置の判断の下に、または、プラズマ処理システム100が設置される製造ラインの制御装置等からの指令を受けて、その処理が開始される。制御装置からの指令を受けた大気側搬送ロボット109は、カセット内の特定の試料をカセットから取り出し、取り出した試料を2つのロック室の何れかに搬送する。
【0019】
試料が搬送されて格納されたロック室105は、搬送された試料を収納した状態でバルブが閉塞されて密封され所定の圧力まで減圧される。その後、真空搬送室104に面した側のバルブが開放されてロック室105と真空搬送室104の搬送室とが連通され、真空搬送ロボット108は、そのアームをロック室105内に伸張させて、ロック室105内の試料を真空搬送室104側に搬送する。真空搬送ロボット108は、そのアームに載せた試料を、カセットから取り出した際に予め定められた処理容器103a〜103dの何れかの真空にされた処理室内に搬入する。
【0020】
試料が何れかの処理容器103a〜103d内の処理室に搬送された後、この処理室と真空搬送室104との間を開閉するバルブが閉じられて処理室が封止される。その後、処理室内に処理用のガスが導入されて処理室内にプラズマが形成されて試料が処理される。
【0021】
試料の処理が終了したことが検出されると、前述した処理室と真空搬送室104の搬送室との間を開閉するバルブが開放され、真空搬送ロボット108は、処理済みの試料を、該試料が処理室内に搬入された場合と逆にロック室105へ向けて搬出する。ロック室105の何れかに試料が搬送されると、このロック室105と真空搬送室104の搬送室とを連通する通路を開閉するバルブが閉じられて真空搬送室104の搬送室が密封され、ロック室105内の圧力が大気圧まで上昇させられる。
【0022】
その後、筐体106の内側のバルブが開放されてロック室105の内部と筐体106の内部とが連通され、大気側搬送ロボット109は、ロック室105から元のカセットに試料を搬送してカセット内の元の位置に戻す。
【0023】
図2は図1に示して説明した本発明の実施形態によるプラズマ処理装置を構成する処理容器103の構成の概略を示す縦断面図、図3は図2におけるプラズマ生成部の付近を拡大して示す図である。ここに示す本発明の実施形態は、プラズマを生成する手段としてマイクロ波と磁界とを利用した例である。
【0024】
図2、図3において、処理室200にプラズマを形成するために供給される電界は、マグネトロン201を発振させることにより生成される。マグネトロン201により生成された電界は、その電界を伝播させるための導波管202を通過し、導波管202の出口側端面に連結された円筒形状を有する空洞共振部203の天井部材の中央からその内部に導かれ、この空洞共振部203の内部において共振させられ、円板形状を有する誘電体により構成される電磁波透過部材204、シャワープレート205を透過し、前述の処理室200内に導かれる。前述した処理室200の周囲には、ソレノイドコイル206が設けられており、このソレノイドコイル206により処理室200の内部に磁界が形成される。なお、前述のソレノイドコイル206は、コイルケース207によってその外面が覆われている。
【0025】
前述した空洞共振部203を囲んでその天井面を構成する天面部材の上部と前述のコイルケース207の上部下面とを連結するように、前述の空洞共振部203の高さ寸法を可変に調節する駆動機構208が備えられている。
【0026】
前述の処理室200の内部は、高真空排気ポンプ209により減圧されており、試料Wは、前述の処理室200の内部に設置された試料台210の上に載置され、プラズマ処理が施される。また、前述の試料台210と前述の高真空排気ポンプ209の間には、図示しないコンダクタンス可変バルブが配置されている。
【0027】
そして、試料Wに対してプラズマ処理を施す際、プロセスガスがガス配管211を通り、前述の電磁波透過材204と前述のシャワープレート205とを囲むリング形状を有するガスリング212内に導入され、さらに、前述したガスリング212の内側に設けられている前述の電磁波透過材204とシャワープレート205との間に導入され、前述したシャワープレート205に設けられたガス吹出し口から処理室200の内部に導かれる。
【0028】
これら構成部品は、●で図示したOリング等のシール手段により気密に接続され内側の空間と外部の空間とを高い気圧差に維持可能に構成されている。
【0029】
また、前述した電界の漏れを抑制する手段として、Oリング形状の導電体製のゴム等によるシールドスパイラル(接触バネ材)213が、前述の空洞共振部203の側方周囲を囲む側壁部材である空洞共振リング214とガスリング212との間を、空洞共振リング214が前述した駆動機構208の動きに伴って移動可能に連結している。このため、前述の空洞共振部203の底面よりも下方に延びて前述の電磁波透過材204の外周を囲む前述のガスリング212の外周縁に連結された処理室200の上端部の前述のガスリング212に対して空洞共振リング214が駆動機構208により付勢されて上下に移動制御可能となる。前述により、空洞共振部203の高さ寸法を、プラズマ条件に合わせて変更することができる。
【0030】
前記したように本発明の実施形態によるプラズマ処理装置は、駆動機構208により空洞共振部203の高さ寸法を変更することができるので、レシピ条件が変更された場合に、空洞共振部203の高さ寸法を変更することにより、プラズマへの効率的なマイクロ波エネルギーの伝達を行ってプラズマ生成領域215に、高密度、かつ、均一なプラズマを生成することができるので、均一に試料を処理することできる。
【0031】
図4は本発明の他の実施形態によるプラズマ処理装置におけるプラズマ生成領域の付近を拡大して示す図である。
【0032】
図4に示す他の実施形態が図2、図3により説明した前述の実施形態と異なる点は、リング形状を有するガスリング301上に、前述で説明した電磁波透過材204が配置されており、この電磁波透過材204の周囲にリング形状を有するチョークフランジ302が設けられている点である。このチョークフランジ302は、ガスリング301と空洞共振部203の下方外縁の間を伝播する前記電界を相殺する機能を有するものである。なお、原理は省略するが、チョークフランジの折り返し長さが、管内波長の1/4(約31mm)のとき、マイクロ波は、空洞共振部より漏れなくなる。このため、機械的に短絡することなく、マイクロ波の漏洩を防止することが可能となる。そのため、図2、図3により説明した実施形態のように、電界の漏れを抑制する手段としてのシールドスパイラルを備えなくてもよく、しかも、プラズマ条件に合わせて、前述の空洞共振部203の高さ寸法を、より容易に変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
101 大気側ブロック
102 真空側ブロック
103a〜103d 処理容器
104 真空搬送室
105 ロック室
106 筐体
107 カセット台
108 真空搬送ロボット
109 大気搬送ロボット
200 処理室
201 マグネトロン
202 導波管
203 空洞共振部
204 電磁波透過材
205 シャワープレート
206 ソレノイドコイル
207 コイルケース
208 駆動機構
209 高真空ポンプ
210 試料台
211 ガス配管
212 ガスリング
213 接触バネ材
214 空洞共振リング
215 プラズマ生成領域
301 ガスリング
302 チョークフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に処理室を有する処理容器と、前記処理室内に配置され処理対象の試料が載せられる試料台と、前記処理室の上方に配置され前記処理室内にプラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円板状部材と、この円板状部材の上方に配置され、前記電界を共振させるための円筒形状を有する空洞共振室と、該空洞共振室を囲んで、その天井面を構成する天面部材の中央の上部と連結され、その内部を前記電界が導かれる導波管と、前記空洞共振室の高さを可変に調節する駆動機構と、前記空洞共振室の下方外縁に配置された前記空洞共振室内からの前記電界の漏れを抑制する手段とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
内部に処理室を有する処理容器と、前記処理室内に配置され処理対象の試料が載せられる試料台と、前記処理室の上方に配置され前記処理室内にプラズマを形成するために供給される電界が透過する誘電体製の円板状部材と、この円板状部材の上方に配置され、前記電界を共振させるための円筒形状を有する空洞共振室と、該空洞共振室を囲んで、その天井面を構成する天面部材の中央の上部と連結され、その内部を前記電界が導かれる導波管と、前記空洞共振室の高さを可変に調節する駆動機構と、前記空洞共振室の側方周囲を囲む側壁部材と連結され、前記空洞共振室の底面よりも下方に延びて前期円板状部材の外周を囲むリング状部材の外周縁に連結された前記処理室の上端部と前記リング状部材との間に配置された前記空洞共振室内からの前記電界の漏れを抑制する手段とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電界の漏れを抑制する手段が、前記処理室上端部の内部に配置された導電体製の前記リング状部材及び前記空洞共振室の側方周囲を囲む側壁部材の対向するそれぞれの表面に当接して両者を短絡する導電性部材であることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電界の漏れを抑制する手段が、前記処理室上端部の内部に配置された導電体製の前記リング状部材及び前記空洞共振室の下方外縁の間を伝播する前記電界を相殺する機能を備えたリング形状を有するチョークフランジであることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103238(P2011−103238A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258022(P2009−258022)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】