説明

プラズマ表示装置及びその駆動方法

【課題】 構成が簡略であり、PDPの経年変化をきめ細かく補償することができるプラズマ表示装置及びその駆動方法を提供する。
【解決手段】 プラズマ表示装置1において、PDP2の表示領域4の外部にダミーセル3を設ける。ダミーセル3は、その発光が表示画像に影響を与えないように遮光する。また、ダミーセル3の放電特性を検出する検出手段5を設け、検出手段5の検出結果に基づいてPDP2を駆動する駆動手段6を設ける。検出手段5はダミーセル3の放電電流を測定するものである。駆動手段6は、検出手段5の検出結果に基づいて、プライミングパルスを印加するサブフィールドの数を調整することにより、PDP2の駆動条件を選択し、この選択された駆動条件により、外部から入力される映像信号に基づいてPDP2を駆動するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、表示パネルとしてプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:以下、PDPともいう)を使用したプラズマ表示装置が開発されている。プラズマ表示装置は、高輝度、広視野角、大容量表示及び長寿命という利点を有しているため、パーソナルコンピュータ等のディスプレイ手段及び大画面テレビジョン受像機として、広く使用されている。
【0003】
図1は、従来のプラズマ表示装置を示すブロック図である。図1に示すように、従来のプラズマ表示装置においては、画像を表示するPDP101が設けられており、このPDP101の他に、外部から入力された映像信号を受け取る映像信号入力部102、この映像信号入力部102から入力された映像信号に基づいて制御信号を生成する駆動制御部103、及びこの駆動制御部103から入力された制御信号に基づいてPDP101を駆動する駆動回路部104が設けられている。
【0004】
PDP101は、相互に平行に且つ離隔して配置された2枚の透明基板(図示せず)間に、放電ガスを封入して構成されている。放電ガスには例えば希ガスが使用され、例えばネオン(Ne)に微量のキセノン(Xe)を含有させた混合ガスが使用されている。そして、各透明基板における放電ガス側の表面には各種の電極が敷設されており、この電極を覆うように誘電体層が設けられている。
【0005】
図1に示すプラズマ表示装置においては、外部から映像信号が映像信号入力部102に入力されると、映像信号入力部102がこの映像信号を駆動制御部103に対して出力し、駆動制御部103がこの映像信号に基づいて制御信号を生成して駆動回路部104に対して出力する。そして、駆動回路部104がこの制御信号に基づいてPDP101を駆動して画像を表示させる。
【0006】
しかしながら、図1に示す従来のプラズマ表示装置には、以下に示すような問題点がある。プラズマ表示装置を長期間使用すると、PDPの放電特性が初期状態から変化してしまう。例えば、放電ガス中のキセノンが誘電体層中に取り込まれ、放電ガス中のキセノンの濃度が低下して、放電特性が変化してしまう。ところが、駆動制御部103が生成する制御信号は、初期状態、即ち工場出荷時のPDP101の放電特性に合わせて最適化されたものであり、駆動制御部103はこの初期状態に最適化された制御信号により、永続的にPDP101を制御するようになっている。このため、放電特性が経年変化すると、制御信号がPDP101の放電特性からずれてしまい、点灯すべきセルが点灯しなかったり、消灯すべきセルが点灯してしまったりして、ちらつき等の表示異常が発生する。
【0007】
そこで、特許文献1には、放電特性の経年変化を補償する手段を備えたプラズマ表示装置が開示されている。特許文献1の図1には、多数の受光素子及び光拡散板からなる光センサーを設けたプラズマ表示装置が記載されている。この従来のプラズマ表示装置においては、光センサーの有効受光面は表示画面の全域に対応しており、光センサーは表示画面を構成する全てのドットについて発光の有無を検出し、この検出結果を表示制御部に対して出力するようになっている。そして、プラズマ表示装置の電源投入時に、PDPが全面点灯と全面消灯とを数回繰り返し、このときのPDPの発光状態を光センサーが検出し、点灯異常が発生した場合には、点灯異常がなくなるように駆動条件を調整するようになっている。
【0008】
また、特許文献1の図2には、光ファイバー及び発光スペクトル分析器を設けたプラズマ表示装置が記載されている。この従来のプラズマ表示装置においては、PDPの数ドット分の光が光ファイバーを介して発光スペクトル分析器に導かれるようになっており、発光スペクトル分析器が、入射した光についてキセノンの発光スペクトルの強度を測定するようになっている。これにより、放電ガス中のキセノンの濃度を測定し、この濃度が初期値と比較して減少した場合には、その減少の程度に応じて、PDPの駆動条件を調整するようになっている。
【0009】
更に、特許文献1には、予め放電条件の経時変化を見込んでプラズマ表示装置の使用時間毎に駆動条件を設定しておき、PDPの使用時間が所定時間に達する度に、その時期に対応した駆動条件を選択する技術も開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−119739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来の技術には、以下に示すような問題点がある。特許文献1の図1に記載されたプラズマ表示装置においては、光センサーを構成するために多数の受光素子及び光拡散板を設ける必要があり、プラズマ表示装置の構成が複雑になるという問題点がある。
【0012】
また、特許文献1の図2に記載されたプラズマ表示装置においては、光ファイバー及び発光スペクトル分析器を設ける必要があり、プラズマ表示装置の構成が複雑になるという問題点がある。
【0013】
更に、特許文献1に記載された駆動条件を経時的に切り替えていくプラズマ表示装置においては、PDPの放電特性の変化は環境条件等の駆動条件によって大きく異なるため、使用時間のみに基づいて駆動条件を設定しても、きめ細かな制御が困難であるという問題点がある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題には、上述した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明に係るプラズマ表示装置は、プラズマディスプレイパネルと、このプラズマディスプレイパネルに設けられその発光が表示画像に影響を与えないように遮光されているダミーセルと、このダミーセルの放電特性を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明に係るプラズマ表示装置の駆動方法は、プラズマディスプレイパネルに設けられその発光が表示画像に影響を与えないように遮光されているダミーセルの放電特性を検出する工程と、この検出結果に基づいて前記プラズマディスプレイパネルを駆動する工程と、を有することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図2は、本実施形態に係るプラズマ表示装置を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係るプラズマ表示装置1においては、プラズマディスプレイパネル(PDP)2が設けられており、このPDP2にはダミーセル3が設けられている。ダミーセル3はPDP2の非表示領域、即ち、表示領域4の外部に配置されている。また、ダミーセル3は、その発光が表示画像に影響を与えないように遮光されている。
【0018】
また、プラズマ表示装置1においては、ダミーセル3の放電特性を検出する検出手段5が設けられている。更に、プラズマ表示装置1には、検出手段5の検出結果に基づいてPDP2を駆動する駆動手段6が設けられている。この駆動手段6は、検出手段5の検出結果に基づいてPDP2の駆動条件を選択し、この選択された駆動条件により、外部から入力される映像信号に基づいてPDP2を駆動するものである。
【0019】
次に、上述の如く構成された本実施形態に係るプラズマ表示装置の動作、即ち、本実施形態に係るプラズマ表示装置の駆動方法について、図2を参照して説明する。駆動手段6は、外部から入力される映像信号に基づいてPDP2を駆動し、PDP2の表示領域4に画像を表示する。このとき、駆動手段6は、PDP2の表示領域4を構成する全セルの平均点灯時間と同じ時間だけ、ダミーセル3を発光させる。これにより、ダミーセル3の経年変化を、表示領域4を構成するセルの経年変化と略等しくすることができる。
【0020】
そして、定期的にダミーセル3をテスト発光させる。このとき、ダミーセル3は遮光されているため、ダミーセル3の発光が、表示領域4が表示する画像に影響を与えることはない。そして、検出手段5が、ダミーセル3の放電特性を検出し、その検出結果を駆動手段6に対して出力する。駆動手段6は、検出手段5の検出結果に基づいてPDP2の駆動条件を選択し、この選択された駆動条件により、映像信号に基づいてPDP2を駆動する。即ち、ダミーセル3の放電特性が経年変化して、初期状態から一定程度以上異なった場合には、駆動手段6はPDP2の駆動条件を初期の駆動条件から変更する。また、ダミーセル3の放電特性が更に経年変化した場合には、PDPの駆動条件を更に変更する。
【0021】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態においては、PDP2にダミーセル3を設けているため、このダミーセル3の放電特性を検出する検出手段5を設置することが容易である。また、検出手段5はダミーセル3のみを対象として放電特性を検出しているため、検出手段5の構成を簡略化することができる。更に、ダミーセル3の放電特性を実際に検出し、その検出結果に基づいてPDP2の駆動条件を選択しているため、PDP2の放電特性の経年変化が、プラズマ表示装置1が設置された環境等に依存しても、この経年変化をきめ細かく補償することができる。
【0022】
更に、本実施形態においては、ダミーセル3が遮光されているため、その発光が表示画像に影響を与えることがない。更にまた、ダミーセル3がPDP2の非表示領域に配置されているため、表示領域4内に表示に貢献しないダミーセル3のためのスペースを設ける必要がない。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施例について説明する。図3は、本実施例に係るプラズマ表示装置を示すブロック図であり、図4は、図3に示すPDPを示す斜視図であり、図5(a)及び(b)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)は初期状態の駆動信号を示し、(b)は変更後の駆動信号を示す。
【0024】
図3に示すように、本実施例に係るプラズマ表示装置11においては、PDP12が設けられており、このPDP12にはダミーセル13が設けられている。ダミーセル13はPDP12の非表示領域、即ち、表示領域14の外部に配置されている。また、ダミーセル13は、その発光が表示画像に影響を与えないように遮光されている。
【0025】
図4に示すように、PDP12においては、前面基板31及び背面基板41が相互に平行に設けられている。前面基板31においては、例えばガラス等からなる透明基板32が設けられており、透明基板32における背面基板41に対向する側の表面には、例えば画面の水平方向に延びるように、走査電極33及び維持電極34が交互に配設されている。走査電極33は、例えばITO(Indium tin oxide:インジウム錫酸化物)からなる透明電極33aに、金属からなるバス電極33bが重ねられて構成されている。また、維持電極34は、例えばITOからなる透明電極34aに、金属からなるバス電極34bが重ねられて構成されている。そして、走査電極33及び維持電極34を覆うように、透明誘電体層35が設けられており、この透明誘電体層35上には例えばMgOからなる保護膜36が設けられている。
【0026】
また、背面基板41においては、例えばガラス等からなる透明基板42が設けられており、透明基板42における前面基板31に対向する側の表面には、例えば画面の垂直方向に延びるように、データ電極43が配設されており、このデータ電極43を覆うように、白色誘電体層44が設けられている。また、白色誘電体層44上には、ストライプ状又は格子状の隔壁45が設けられている。隔壁45は、前面基板31と背面基板41との間隔を一定に保持するものであり、隔壁45により区画された空間がセル40となっている。更に、白色誘電体層44の上面上及び隔壁45の側面上には、蛍光体層46が被着されている。そして、セル40内には、放電ガスとして例えばネオンに微量のキセノンが混合された混合ガスが封入されている。
【0027】
また、図3に示すように、プラズマ表示装置11においては、ダミーセル13の放電特性を検出する放電特性検出手段15が設けられている。放電特性検出手段15は、ダミーセル13内を流れる放電電流を測定して、ダミーセル13の放電特性を検出するものである。即ち、放電特性検出手段15は、ダミーセル13内に放電電流が流れていれば、ダミーセル13内に放電が発生しており、従って点灯していると判断し、放電電流が流れていなければ、放電は発生しておらず、従って消灯していると判断する。また、放電電流の大きさにより、放電の程度を検出する。
【0028】
更に、プラズマ表示装置11においては、外部から映像信号が入力される映像信号入力部17が設けられている。更にまた、プラズマ表示装置11には、駆動制御部18及び駆動回路部19が設けられている。駆動制御部18は、放電特性検出手段15から検出結果が入力され、この検出結果に基づいてPDP12の駆動条件を選択し、この選択された駆動条件により、映像信号入力部17から入力された映像信号に基づいて制御信号を生成し、駆動回路部19に対して出力するものである。駆動回路部19は、駆動制御部18から入力された制御信号に基づいてPDP12を駆動するものである。駆動制御部18及び駆動回路部19により、駆動手段20が構成されている。
【0029】
より具体的には、駆動制御部18は、定期的にダミーセル13に対してテストを行う。例えば、ダミーセル13に対して、所定の点灯及び消灯を繰り返させる。そして、放電特性検出手段15がダミーセル13内に流れる放電電流の大きさを測定し、ダミーセル13が点灯しているか消灯しているか、また点灯している場合にはどの程度の放電が発生しているかを検出する。そして、この検出結果に基づいて、駆動制御部18がPDP12の駆動条件を選択する。
【0030】
図5(a)及び(b)に示すように、駆動制御部18は、1画面分の画像を表示する1フィールドをn個(nは2以上の整数)のサブフィールドSF1、SF2、・・・、SFnに分割し、各サブフィールドに、プライミング期間Tp、走査期間Ts及び維持期間Tmを設け、n個のサブフィールドのうち任意のサブフィールドのプライミング期間Tpにおいて、走査電極33(図4参照)にプライミングパルスPpを印加する。これにより、全てのセルにおいて、セル内の電荷状態を初期化するプライミングパルスが発生する。そして、駆動制御部18は、放電特性検出手段15の検出結果に基づいて、プライミングパルスPpを印加するサブフィールドの数を選択するものである。
【0031】
次に、上述の如く構成された本実施例に係るプラズマ表示装置の動作、即ち、本実施例に係るプラズマ表示装置の駆動方法について説明する。プラズマ表示装置11が画像を表示するときに、駆動制御部18は、図5(a)に示すような駆動信号をPDP12の走査電極33に対して印加する。即ち、1フィールドをn個のサブフィールドSF1、SF2、・・・、SFnに分割し、各サブフィールドに、プライミング期間Tp、走査期間Ts及び維持期間Tmを設ける。走査期間Tsは、同じサブフィールドに属する維持期間Tmにおいて発光させる予定のセルに書込パルスPwを印加する期間である。また、維持期間Tmは、この走査期間Tsにおいて書込パルスPwが印加されたセルを発光させる期間である。
【0032】
そして、初期状態、即ち、工場出荷時の状態においては、図5(a)に示すように、1フィールドを構成するn個のサブフィールドのうち、サブフィールドSF1及びSFnのみにおいてプライミングパルスPpを印加し、他のサブフィールドSF2乃至SF(n−1)においては、プライミングパルスPpを印加しない。例えば、図5(a)に示す部分A、即ち、サブフィールドSF2のプライミング期間Tpにおいては、プライミングパルスPpを印加しない。この結果、サブフィールドSF1及びSFnのみにおいてプライミング放電が発生し、セル内の電荷状態が初期化されることになるが、初期状態においては、これでも十分に良好な表示を行うことができる。
【0033】
その後、プラズマ表示装置11の使用に伴い、放電ガス中のキセノンが透明誘電体層35及び白色誘電体層44等に取り込まれてゆき、放電ガス中におけるキセノンの濃度が低下していく。この結果、セル内で放電を発生させるための条件が次第に変化し、放電特性が経年変化する。
【0034】
一方、駆動制御部18は、PDP12に画像を表示しているときに、ダミーセル13も所定の時間だけ発光させておき、ダミーセル13の経年変化の程度を、PDP12を構成する他のセルの経年変化の程度と同程度にしておく。例えば、駆動制御部18は、ダミーセル13を、PDP12を構成するセルの平均点灯時間に等しい時間だけ点灯させるか、又は、予め定められた点灯率を満たすように点灯させる。なお、ダミーセル13は遮光されているため、ダミーセル13の発光がPDP12の表示画像に影響を及ぼすことはない。
【0035】
そして、駆動制御部18は、ダミーセル13を定期的にテスト発光させる。このとき、放電特性検出手段15が、ダミーセル13における放電電流を測定し、ダミーセル13が点灯しているか、消灯しているか、また点灯している場合にはどの程度の放電が発生しているかを検知して、ダミーセル13の放電特性を検出し、駆動制御部18に対して出力する。駆動制御部18は、この検出結果に基づいてPDP12の駆動条件を選択する。そして、ダミーセル13の放電特性が初期状態から一定程度以上変化している場合は、PDP12の駆動条件を変更する。例えば、図5(b)に示すように、プライミングパルスPpを印加するサブフィールドの数を変更し、例えば、全てのサブフィールドにおいてプライミングパルスPpを印加するようにする。これにより、図5(b)に示す部分Aにおいても、プライミングパルスPpが印加される。
【0036】
このように、駆動制御部18は、PDP12の経年変化の程度に応じてプライミング放電を発生させるサブフィールドの数を調整する。これにより、例えば放電ガス中のキセノン濃度が低下する等の経年劣化が発生しても、全てのサブフィールドでプライミング放電を発生させることにより、セル内の電荷状態の初期化を確実に行うことができる。この結果、PDP12の各セルを正常に点灯させることができる。即ち、PDP12の経年変化に合わせてPDP12の駆動条件を最適化し、プラズマ表示装置11に永続的に良好な表示を行わせることができる。
【0037】
次に、本実施例の効果について説明する。図6(a)及び(b)は、横軸にPDPの累積使用時間をとり、縦軸に表示特性をとって、本実施例の効果を示すグラフ図であり、(a)は駆動制御部が駆動条件の変更を行わなかった場合であり、(b)は駆動制御部が駆動条件の変更を行った場合である。図6(a)及び(b)に示すように、累積使用時間が0のとき、即ち、初期状態においては、PDPが実現可能な表示特性範囲51内に、要求される表示特性範囲52が位置しているため、常に要求される表示特性範囲52内の条件を実現することができる。
【0038】
しかしながら、駆動制御部が駆動条件の変更を行わないと、図6(a)に示すように、例えば放電ガスの組成の変化により、実現可能な表示特性範囲51が次第にずれてきてしまい、要求される表示特性範囲52において、実現不可能な条件が生じてしまう。この結果、書込ミス及び誤点灯等の表示異常が発生し、表示品質が低下する。これにより、表示上の寿命が尽きてしまう。
【0039】
これに対して、本実施例のように、放電特性検出手段15を設けることにより、PDP12の経年変化が所定の程度に達したときに、駆動制御部18が駆動条件の変更を行えば、図6(b)に示すように、この時点におけるPDPの放電特性に合わせて駆動条件を最適化することができ、その後しばらくの間、実現可能な表示特性範囲51が、要求される表示特性範囲52をカバーする位置に位置する。この結果、プラズマ表示装置の表示上の寿命を長期化することができる。
【0040】
また、本実施例においては、PDP12にダミーセル13を設けているため、このダミーセル13の放電特性を検出する放電特性検出手段15を容易に設置することができる。また、放電特性検出手段15はダミーセル13のみを対象として放電特性を検出しているため、放電特性検出手段15の構成を簡略化することができる。更に、ダミーセル13の放電特性を実際に検出し、その検出結果に基づいてPDP12の駆動条件を選択しているため、プラズマ表示装置11が設置された環境等に依存してPDP12の放電特性の経年変化がばらついても、この経年変化をきめ細かく補償することができる。
【0041】
更に、本実施例においては、ダミーセル13が遮光されているため、その発光が表示画像に影響を与えることがない。更にまた、ダミーセル13がPDP12の非表示領域に配置されているため、表示領域14内に表示に貢献しないダミーセル13のためのスペースを設ける必要がない。この結果、表示領域14を高精細化することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図7(a)及び(b)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、本実施例において走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)は初期状態の駆動信号を示し、(b)は変更後の駆動信号を示す。本実施例は、前述の第1の実施例と比較して、駆動制御部18(図3参照)が放電特性検出手段15(図3参照)の検出結果に基づいて、プライミングパルスPpにおける電圧の変化速度、即ち、パルスの傾きを調整するものであることが異なっている。
【0043】
即ち、図7(a)に示すように、初期状態においては、駆動制御部18は走査電極に対して、立ち上がりが急峻なプライミングパルスPpを印加する。また、放電特性が初期状態から一定程度以上変化したときには、図7(b)に示すように、駆動制御部18は走査電極に対して、立ち上がりが緩やかなプライミングパルスPpを印加する。これにより、例えば放電ガス中のキセノン濃度が低下する等の経年劣化が発生しても、プライミングパルスPpの立ち上がりを緩やかにすることにより、セル内の電荷状態の初期化を確実に行うことができる。この結果、PDP12の各セルを正常に点灯させることができる。本実施例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施例と同様である。
【0044】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図8(a)乃至(c)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、本実施例において走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)はサブフィールド全体の駆動信号を示し、(b)は初期状態における走査期間の駆動信号を示し、(c)は変更後における走査期間の駆動信号を示す。なお、図8(b)及び(c)は、図8(a)に示す部分Bを拡大して示すものである。図8(a)乃至(c)に示すように、本実施例は、前述の第1の実施例と比較して、駆動制御部18(図3参照)が放電特性検出手段15(図3参照)の検出結果に基づいて、各サブフィールドの走査期間Tsにおける書込パルスPwの時間幅を調整することが異なっている。
【0045】
即ち、図8(b)に示すように、初期状態においては、駆動制御部18は走査電極に対して、時間幅がt1である書込パルスPwを印加する。また、放電特性が初期状態から一定程度以上変化したときには、図8(c)に示すように、駆動制御部18は走査電極に対して、時間幅がt2である書込パルスPwを印加する。図8(b)及び(c)に示すように、時間幅t2は時間幅t1よりも長い。これにより、例えば放電ガス中のキセノン濃度が低下する等の経年劣化が発生しても、書込パルスPwの時間幅を長くすることにより、書込放電を確実に発生させて、データの書込を確実に行うことができる。この結果、PDP12の各セルを正常に点灯させることができる。本実施例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施例と同様である。
【0046】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図9は、本実施例に係るプラズマ表示装置を示すブロック図である。図9に示すように、本実施例に係るプラズマ表示装置21は、前述の第1の実施例と比較して、PDP12の累積使用時間を計測し、その結果を駆動制御部18に対して出力する使用時間計測手段16が設けられており、駆動制御部18が、放電特性検出手段15の検出結果及び使用時間計測手段16の計測結果の双方に基づいて、PDP12の駆動条件を選択することが異なっている。
【0047】
より具体的には、駆動制御部18は、使用時間計測手段16から入力された計測結果を、放電特性検出手段15から入力された検出結果に基づいて補正し、この補正された計測時間に基づいて、PDP12の駆動条件を変更する。即ち、図5(a)に示すように、初期状態においては、駆動制御部18は、n個のサブフィールドのうち一部のサブフィールド、例えばサブフィールドSF1及びSFnのみにおいて、プライミング期間Tpにおいて、走査電極33(図4参照)にプライミングパルスPpを印加する。
【0048】
そして、放電特性検出手段15の検出結果及び使用時間計測手段16の計測結果に基づいて、駆動制御部18が、PDP12の経年変化が所定の程度に達したと判断したときは、図5(b)に示すように、例えば全てのサブフィールドSF1乃至SFnにおいて走査電極にプライミングパルスPpを印加し、プライミング放電を発生させる。本実施例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施例と同様である。
【0049】
なお、本実施例においては、前述の第1の実施例と同様に、駆動制御部18が、プライミングパルスPpを印加するサブフィールドの数を選択する例を示したが、本発明はこれに限定されず、前述の第2の実施例と同様に、駆動制御部18はプライミングパルスPpにおける電圧の変化速度を調整してもよく、前述の第3の実施例と同様に、駆動制御部18は書込パルスPwの時間幅を調整してもよい。
【0050】
次に、本発明の第5の実施例について説明する。本実施例は、前述の第1の実施例と比較して、放電特性検出手段15がダミーセル13(図3参照)の発光特性を検出することにより、ダミーセル13の放電特性を検出する点が異なっている。即ち、放電特性検出手段15には光センサー(図示せず)が設けられており、この光センサーにより、ダミーセル13の発光特性を検出する。なお、この場合においても、前述の特許文献1の図1に示されているプラズマ表示装置のように、全てのセルをカバーするような光センサーを設ける必要はないため、プラズマ表示装置の構成は簡略である。本実施例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施例と同様である。
【0051】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。本実施例は、前述の第1の実施例と比較して、放電特性検出手段15がダミーセル13(図3参照)におけるキセノンの赤外発光を検出することにより、ダミーセル13の放電特性を検出する点が異なっている。即ち、放電特性検出手段15には赤外光センサー(図示せず)が設けられており、この赤外光センサーにより、ダミーセル13におけるキセノンの赤外発光強度を測定し、この測定結果に基づいて放電ガス中のキセノンの濃度を測定する。この結果、放電ガス中のキセノン濃度が一定値以下になった場合には、前述の第1の実施例と同様に、PDP12の駆動条件を変更する。本実施例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施例と同様である。
【0052】
なお、上述の各実施例においては、ダミーセル13がPDP12の非表示領域、即ち、表示領域14の外部に設けられている例を示したが、本発明はこれに限定されず、ダミーセル13はPDP12の表示領域14の内部に設けられていてもよい。これにより、ダミーセル13の環境条件をPDP12の表示領域14を構成する各セルの環境条件と等しくすることができる。なお、ダミーセル13を表示領域14内に設ける場合においても、ダミーセル13は表示画像に影響を与えないように遮光されていることが必要である。
【0053】
本実施例によれば、PDP12に遮光されたダミーセル13を設けているため、このダミーセル13の放電特性を検出する放電特性検出手段15を容易に設置することができる。また、放電特性検出手段15はダミーセル13のみを対象として放電特性を検出しているため、放電特性検出手段15の構成を簡略化することができる。更に、ダミーセル13の放電特性を実際に検出し、その検出結果に基づいてPDP12の駆動条件を選択しているため、PDP12の放電特性の経年変化が、プラズマ表示装置11が設置された環境等に依存しても、この経年変化をきめ細かく補償することができる。更にまた、遮光されたダミーセル13を使用して放電特性を検出しているため、この検出が表示画像に影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来のプラズマ表示装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプラズマ表示装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るプラズマ表示装置を示すブロック図である。
【図4】図3に示すPDPを示す斜視図である。
【図5】(a)及び(b)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、第1の実施例において走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)は初期状態の駆動信号を示し、(b)は変更後の駆動信号を示す。
【図6】(a)及び(b)は、横軸にPDPの累積使用時間をとり、縦軸に表示特性をとって、本実施例の効果を示すグラフ図であり、(a)は駆動制御部が駆動条件の変更を行わなかった場合であり、(b)は駆動制御部が駆動条件の変更を行った場合である。
【図7】(a)及び(b)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、第2の実施例において走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)は初期状態の駆動信号を示し、(b)は変更後の駆動信号を示す。
【図8】(a)乃至(c)は、横軸に時間をとり、縦軸に走査電極の電位をとって、第3の実施例において走査電極に印加する駆動信号を示すタイミングチャートであり、(a)はサブフィールド全体の駆動信号を示し、(b)は初期状態における走査期間の駆動信号を示し、(c)は変更後における走査期間の駆動信号を示す。
【図9】本発明の第4の実施例に係るプラズマ表示装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1;プラズマ表示装置
2;PDP
3;ダミーセル
4;表示領域
5;検出手段
6;駆動手段
11;プラズマ表示装置
12;PDP
13;ダミーセル
14;表示領域
15;放電特性検出手段
17;映像信号入力部
18;駆動制御部
19;駆動回路部
20;駆動手段
33;走査電極
35;透明誘電体層
44;白色誘電体層
101;PDP
102;映像信号入力部
103;駆動制御部
104;駆動回路部
Pp;プライミングパルス
Pw;書込パルス
Tp;プライミング期間
Ts;走査期間
Tm;維持期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルと、このプラズマディスプレイパネルに設けられその発光が表示画像に影響を与えないように遮光されているダミーセルと、このダミーセルの放電特性を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動手段と、を有することを特徴とするプラズマ表示装置。
【請求項2】
前記ダミーセルは、前記プラズマディスプレイパネルの表示領域の外部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ表示装置。
【請求項3】
前記ダミーセルは、前記プラズマディスプレイパネルの表示領域の内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ表示装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記ダミーセルにおいて発生する放電電流を測定するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記ダミーセルの発光特性を検出するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記ダミーセルにおけるキセノンの赤外発光を検出するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、少なくとも一部の前記サブフィールドにおいてセル内の電荷状態を初期化するプライミング放電を発生させるものであり、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記プライミング放電を発生させる前記サブフィールドの数を調整するものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項8】
前記駆動手段は、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、少なくとも一部の前記サブフィールドにおいて走査電極にパルスを印加してセル内の電荷状態を初期化するプライミング放電を発生させるものであり、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記パルスにおける電圧の変化速度を調整するものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項9】
前記駆動手段は、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、各前記サブフィールドに、発光させる予定のセルにパルスを印加する走査期間、及びこの走査期間において前記パルスが印加されたセルを発光させる維持期間を設けるものであり、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記走査期間における前記パルスの時間幅を調整するものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項10】
前記プラズマディスプレイパネルの累積使用時間を計測する計測手段を有し、前記駆動手段は、前記検出手段の検出結果及び前記計測手段の計測結果の双方に基づいて前記プラズマディスプレイパネルを駆動するものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプラズマ表示装置。
【請求項11】
プラズマディスプレイパネルに設けられその発光が表示画像に影響を与えないように遮光されているダミーセルの放電特性を検出する工程と、この検出結果に基づいて前記プラズマディスプレイパネルを駆動する工程と、を有することを特徴とするプラズマ表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−86294(P2007−86294A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273671(P2005−273671)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000232151)パイオニアプラズマディスプレイ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】