説明

プラテンおよび記録装置

【課題】撓みを防止して各記録素子を均一な圧接力によって圧接させることができるとともに、小型化を図り、さらには、記録媒体の搬送力を小さくすることができるとともに、記録媒体を円滑に搬送する。
【解決手段】サーマルヘッド5に並列配置された複数の記録素子10と、各記録素子10に対向して配設される固定型のプラテン6とを有してなり、プラテン6のうち各記録素子10の圧接部分に、断面形状が半円形状の凸15部を、圧接部分に対応するように直線形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラテンおよび記録装置に係り、特に、回転せず、記録素子に対向する頂面が平面状または略平面状とされている固定型のプラテンおよびこのプラテンを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ等の記録装置においては、記録ヘッドに並列配置された各記録素子を記録媒体を介して圧接させるプラテンとして、回転可能に配設された円筒形状のプラテンが、圧接された各記録素子とプラテンとの間隙において記録媒体を円滑に搬送することができる等の観点から多用されている。
【0003】
一方、近年、プリンタの小型化、薄型化の開発が進められており、このようなプリンタの小型化、薄型化を実現するため、プリンタの各部品の小型化が図られている。そこで、前記円筒形状の回転可能なプラテンについても、径寸法を短くすることにより小型化を図ることが考えられている。
【0004】
しかし、前述のように、円筒形状のプラテンの径寸法を短くすると、前記プラテンの剛性が低下してしまい、プラテンの長さ方向における中央部分が広範囲に撓んでしまうというおそれがあった。このようにプラテンが広範囲に撓んでしまう場合には、各記録素子をプラテンに対して均一な圧接力をもって圧接させることができず、この結果、記録媒体上に均一な濃度の良好な画像を記録することができないおそれがあった。また、このようなプラテンの中央部の撓みを解消するためには、追加の部品等が必要となってしまい、この結果、記録装置の製造コストが上昇してしまうこととなる。
【0005】
そこで、前述の問題を解消してプリンタの小型化、薄型化を図るべく、断面形状が略半楕円形状であって記録ヘッドに対向する表面が平面形状に形成された固定型のプラテンを利用することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−293917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述のような従来の固定型のプラテンにおいては、断面形状が略半楕円形状であり表面が平面形状であるので、プラテンと記録ヘッドにおける各記録素子との間隙に記録媒体が搬送される際に、記録媒体がプラテンと各記録素子との間隙に進入する直前のプラテンと各記録ヘッドとの間隙寸法が短い。このため、圧接状態のプラテンと各記録素子との間隙に対する記録媒体の進入性が悪く、この結果、記録媒体を円滑に搬送することができないおそれがあるという問題を有していた。
【0008】
また、前述の固定型のプラテンにおいては、表面が平面形状に形成され、表面における記録媒体の搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法が各記録素子における記録媒体の搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法よりも長く形成されている。このため、円筒形状の回転型のプラテンと比較して、各記録素子とプラテンとの当接面積が広くなってしまうこととなる。この結果、圧接された各記録素子とプラテンとに挟持される記録媒体に加わる負荷が大きくなり、さらには、固定型のプラテンは回転型のプラテンと異なり記録媒体の搬送のための回転動作を行わないので、記録媒体を搬送するためにより大きな動力が必要となってしまうこととなる。
【0009】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、撓みを防止して各記録ヘッドを均一な圧接力によって圧接させることができるとともに、小型化を図り、さらには、記録媒体を円滑に搬送することができるとともに、記録媒体の搬送力を小さくすることができるプラテンおよびこのプラテンを備えた記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係るプラテンの特徴は、記録ヘッドに圧接可能に対向して配置され、記録装置の内部に固定して設けられる固定型のプラテンであって、前記記録ヘッドとの圧接部分に、前記圧接部分に対応する線状に形成された凸部を有する点にある。
【0011】
この本発明に係るプラテンによれば、記録ヘッドとの圧接部分に凸部が形成されているので、凸部と記録ヘッドとの間隙に進入する直前における前記凸部を支持する台座と記録ヘッドとの間隙に所定の寸法を確保することができ、これにより、圧接状態の記録ヘッドとプラテンとの間隙への記録媒体の進入性を向上させることができる。また、凸部は記録ヘッドとの圧接部分に形成されているので、記録媒体に記録を行うにあたり、頂面が平面状に形成された従来の固定型のプラテンを用いる場合と比較して、記録ヘッドとプラテンとの当接面積を狭くすることができる。さらに、プラテンは、サーマルプリンタの内部において固定して設けられているので、プラテンの長さ方向における中央部分が撓んでしまうのを防止することができる。
【0012】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記凸部の突出寸法を、10μm以上であって、前記記録ヘッドとの圧接状態において、前記記録ヘッドと前記凸部との間隙に記録媒体が進入する直前の前記台座における前記記録ヘッドに対向する表面と前記記録ヘッドにおける前記台座に対向する表面との間隙寸法を、前記記録媒体の厚さ寸法より短い寸法に設定する点にある。
【0013】
この本発明に係る他のプラテンによれば、凸部の突出寸法を10μm以上とすることにより、記録媒体がプラテンと記録ヘッドとの間隙に進入する直前のプラテンと記録ヘッドとの間隙に所定の寸法を確保することができる。これにより、プラテンの凸部の頂面と記録ヘッドの表面との間隙への記録媒体の進入性を向上させることができるので、記録媒体を円滑に搬送することができる。
【0014】
一方、凸部の突出寸法を、記録ヘッドとの圧接状態において記録ヘッドと凸部との間隙に記録媒体が進入する直前の前記凸部の表面と記録ヘッドの表面との間隙寸法を、記録媒体の厚さ寸法より短い寸法に設定することにより、記録ヘッドと凸部との間隙に記録媒体が進入する直前に、記録媒体に適当な圧力を加えることができる。これにより、記録媒体の先端部を凸部に沿って揃えて、凸部と記録ヘッドの間隙に進入させることができる。
【0015】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記凸部を、断面形状において半円形状に形成する点にある。
【0016】
この本発明に係る他のプラテンによれば、凸部の断面形状が半円形状に形成され、頂面が曲面状に形成されているので、従来の固定型のプラテンと比較して記録ヘッドとプラテンとの当接面積を狭くすることができる。
【0017】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記凸部を、断面形状において台形状に形成し、前記凸部における前記記録ヘッドに対向する頂面のうち、記録が行われる記録媒体の搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法を、前記各記録ヘッドに備えた記録素子における前記搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法に対応して形成する点にある。
【0018】
この本発明に係る他のプラテンによれば、断面形状が台形状に形成された凸部の頂面の幅寸法が、記録素子の幅寸法に対応して形成されているので、従来の固定型のプラテンと比較して記録素子とプラテンとの当接面積を狭くすることができる。
【0019】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記凸部を支持する台座を有し、前記台座は、プラテン側基台と、前記プラテン側基台における前記記録ヘッドに対向する表面に配設されたプラテン側圧接体とを備え、前記凸部を、前記プラテン側圧接体における前記記録ヘッドに対向する表面に形成する点にある。
【0020】
この本発明に係る他のプラテンによれば、記録ヘッドとの圧接部分に凸部が形成されているので、凸部と記録ヘッドとの間隙に進入する直前に、プラテン側圧接体と記録ヘッドとの間隙に所定の寸法を確保することができ、これにより、記録ヘッドとプラテンとの間隙への記録媒体の進入性を向上させることができる。
【0021】
この本発明に係る他のプラテンによれば、記録ヘッドとの圧接部分に凸部が形成されているので、凸部と記録ヘッドとの間隙に進入する直前に、プラテン側基台と記録ヘッドとの間隙に所定の寸法を確保することができ、これにより、記録ヘッドとプラテンとの間隙への記録媒体の進入性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記凸部を支持する台座を有し、前記台座は、プラテン側基台とを備え、前記凸部を、前記プラテン側基台における前記記録ヘッドに対向する表面に形成する点にある。
【0023】
本発明に係る他のプラテンの特徴は、前記記録ヘッドに対向する表面のうち、前記記録媒体の搬送時において少なくとも前記記録媒体が当接する部分に、前記記録媒体と前記表面との摩擦係数を低下させる薄膜を形成する点にある。
【0024】
この本発明に係る他のプラテンによれば、プラテンと記録ヘッドとによって挟持された記録媒体に対するプラテンと記録素子とによる引っ張り力を低下させることができ、より円滑に記録媒体を搬送することができる。
【0025】
本発明に係る記録装置の特徴は、記録ヘッドに並列配置された記録素子と、
前記記録素子に圧接可能に対向して配置され、固定して設けられる固定型のプラテンとを有してなり、前記記録素子との圧接部分に、前記圧接部分に対応する線状に形成された凸部とを有する点にある。
【0026】
この本発明に係る他の記録装置によれば、記録ヘッドとの圧接部分に凸部が形成されているので、凸部と記録ヘッドとの間隙に進入する直前における前記凸部を支持する台座と記録ヘッドとの間隙に所定の寸法を確保することができ、これにより、記録ヘッドとプラテンとの間隙への記録媒体の進入性を向上させることができる。また、凸部は記録ヘッドとの圧接部分に形成されているので、記録媒体に記録を行うにあたり、表面が平面状に形成された従来の固定型のプラテンを用いる場合と比較して、記録素子とプラテンとの当接面積を狭くすることができる。さらに、プラテンは、サーマルプリンタの内部において固定して設けられているので、プラテンの長さ方向における中央部分が撓んでしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明に係るプラテンおよび記録装置によれば、従来と比較して、記録ヘッドとプラテンとの当接面積を狭くすることができるので、記録媒体が記録ヘッドとプラテンとの間隙に搬送される際に、圧接された記録ヘッドとプラテンとに挟持されることによって記録媒体に加わる負荷を小さくすることができる。また、各記録ヘッドとプラテンとの圧接力を調整することにより、記録媒体に加わる負荷を調整することができる。これにより、記録媒体を円滑に搬送することができるとともに、より少ない動力によって搬送ローラにより記録媒体を搬送することができる。
【0028】
また、プラテンが撓んでしまうのを防止することができ、記録ヘッドをプラテンに均一な圧接力により圧接させることができるので、均一な濃度の良好な画像を記録することができる。これとともに、この固定型のプラテンを用いることにより、プラテンの小型化を図ることができ、ひいてはプリンタの小型化、薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るプラテンを備えた記録装置の一実施形態を図1から図4を参照して説明する。ここで、本実施形態においては、記録装置として、記録ヘッドとしてのサーマルヘッドを備えたサーマルプリンタを用いて説明するが、本発明はこれに限定されず、種々の記録装置に適用することができる。
【0030】
図1は、本実施形態に係るサーマルプリンタ1記録装置を示す概略断面図であり、図1に示すように、本実施形態に係るサーマルプリンタ1においては、記録媒体2が複数の搬送ローラ3によって所定の搬送経路を搬送されるようになっている。
【0031】
また、サーマルプリンタ1においては、サーマルヘッド5とプラテン6とが記録媒体2を介して対向して配設されており、サーマルヘッド5はプラテン6に対して圧接動作可能に設けられている。
【0032】
図2に示すように、サーマルヘッド5は、ヘッド側基台8を有し、ヘッド側基台8におけるプラテン6に対向する表面には、断面形状が略半円形状のヘッド側圧接体9が配設されている。ヘッド側圧接体9の高さ寸法は、例えば50〜100μm程度に形成されており、ヘッド側圧接体9におけるプラテン6に対向する表面には、複数の記録素子10が、記録媒体2の搬送方向に直交する方向の幅寸法に対応してライン状に並列配置して設けられている。これにより、各記録素子10におけるプラテン6に対向する表面は、曲面状に形成されている。
【0033】
プラテン6は、台座7を有し、台座7は、記録媒体2の幅寸法に対応する長さ寸法の平板状のプラテン側基台12と、プラテン側基台12におけるサーマルヘッド5に対向する表面に設けられた、樹脂材料等からなる断面形状が略半円形状のプラテン側圧接体13とを備えている。プラテン側圧接体13におけるサーマルヘッド5に対向する部分は、略平面形状に形成されており、プラテン側圧接体13は、焼き付け等の手段によってプラテン側基台12に接着されている。
【0034】
図3に示すように、プラテン6におけるプラテン側圧接体13の表面であってサーマルヘッド5における各記録素子10との圧接部分には、サーマルヘッド5の方向に突出する凸部15がプラテン側圧接体13と一体に形成されている。凸部15は、断面形状が半円形状に形成され、凸部15における各記録素子10に対向する表面が曲面状に形成されているとともに、各記録素子10の圧接部分に対応して直線形状に形成されている。これにより、サーマルヘッド5における各記録素子10は、記録媒体2を介してプラテン6における凸部15の頂面に圧接されるようになっている。
【0035】
凸部15における基部から頂部までの突出寸法は、各記録素子10との圧接状態において各記録素子10と凸部15との間隙に記録媒体2が進入する直前のプラテン側圧接体13の表面とサーマルヘッド5の表面との間隙寸法が、記録媒体2の厚さ寸法より短い寸法に設定されていることが好ましい。また、凸部15の突出寸法は、少なくとも凸部15の基部と各記録素子10の基部との間隙寸法が10μm以上となるように設定されるとよく、さらには、凸部15自体の突出寸法が10μm以上であることが好ましい。
【0036】
プラテン6におけるプラテン側圧接体13の頂面には、プラテン6に対する記録媒体2の摩擦係数を低下させるための薄膜16が配設されており、薄膜16は、ホットメルトシート等の接着材(図示せず)を用いてプラテン側圧接体13の表面に接着されている。薄膜16の構成材料としては、記録媒体2との摩擦係数を低下させることができるものであればよく、例えば、4フッ化エチレン樹脂の他、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))等を例示することができる。薄膜16の形成領域としては、凸部15を含むプラテン側圧接体13の表面全体の他、少なくとも、プラテン6と各記録素子10との圧接状態において、記録媒体2が、プラテン6とサーマルヘッド5との間隙に進入する際にプラテン6の表面に当接する部分に形成されていればよい。例えば、厚み寸法が最も厚くて200μmの記録媒体2に記録を行うことが可能なサーマルプリンタ1においては、プラテン6の表面のうち、プラテン6とサーマルヘッド5との間隙寸法が200μm以下の部分に薄膜16を形成すればよい。
【0037】
そして、このプラテン6は、プラテン側基台12がサーマルプリンタ1のフレーム18に取り付けられて、サーマルプリンタ1の内部において固定して配設されている。
【0038】
また、サーマルプリンタ1は、一対のリボンローラ20に巻回された長尺のインクリボン21を有し、インクリボン21は、複数のガイドローラ22に案内されながら、インクの塗布面が記録媒体2に対向して搬送されるように設けられている。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0040】
本実施形態によれば、サーマルヘッド5の各記録素子10との圧接部分に凸部15が形成されているので、記録媒体2が凸部15と各記録素子10との間隙に進入する直前のプラテン6と各サーマルヘッド5との間隙に、所定の寸法を確保することができ、これにより、圧接状態の各記録素子10とプラテン6との間隙への記録媒体2の進入性を向上させることができる。
【0041】
また、サーマルヘッド5の各記録素子10が圧接されるプラテン6の凸部15は断面形状が半円形状に形成されているので、表面が平面状に形成された従来の固定型のプラテン6を用いる場合と比較して、各記録素子10とプラテン6との当接面積を狭くすることができる。
【0042】
さらに、プラテン6は、サーマルプリンタ1の内部において固定して設けられているので、プラテン6の長さ方向における中央部分が撓んでしまうのを防止することができる。
【0043】
したがって、記録媒体2が凸部15と各記録素子10との間隙に進入する直前のプラテン6とサーマルヘッド5とが対向する間隙に所定の寸法を確保することにより、凸部15と各記録素子10との間隙への記録媒体2の進入性を向上させることができるので、記録媒体2を円滑に搬送することができる。また、圧接状態の各記録素子10と凸部15との間隙への記録媒体2の進入性が向上することにより、記録媒体2の先端部分から記録を行うことができるので、縁なし印刷を行う場合にも好適となる。
【0044】
また、各記録素子10とプラテン6との当接面積を狭くすることができるので、圧接された各記録素子10とプラテン6とに挟持されることによって記録媒体2に加わる負荷を小さくすることができる。また、各記録素子10とプラテン6との圧接力を調整することにより、記録媒体2に加わる負荷を調整することができる。これにより、記録媒体2を円滑に、かつより少ない動力によって、記録媒体2を搬送することができる。
【0045】
さらには、プラテン6が撓んでしまうのを防止することができるので、各記録素子10をプラテン6に均一な圧接力により圧接させることができるので、均一な濃度の良好な画像を記録することができる。これとともに、この固定型のプラテン6を用いることにより、プラテン6の小型化を図ることができ、ひいてはプリンタの小型化、薄型化を図ることができる。
【0046】
また、凸部15の突出寸法を、少なくとも凸部15の基部と各発熱素子の基部との間隙寸法が10μm以上となるように設定し、さらには凸部15の突出寸法自体を10μm以上とすることにより、凸部15と各記録素子10との間隙に進入する直前に、プラテン6と各記録素子10との間隙に所定の寸法を確実に確保することができる。これにより、プラテン6の凸部15と記録素子10との間隙への記録媒体2の進入性を向上させることができるので、記録媒体2を円滑に搬送することができる。
【0047】
一方、凸部15の突出寸法を、各記録素子10との圧接状態において各記録素子10と凸部15との間隙に記録媒体2が進入する直前の各記録素子10に対向する表面とサーマルヘッド5の表面との間隙寸法が、記録媒体2の厚さ寸法より短い寸法となるように設定することにより、記録素子10と凸部15との間隙に記録媒体2が進入する直前に、記録媒体2に適当な圧力を加えることができる。これにより、記録媒体2の先端部分を凸部15に沿って揃えて、凸部と記録ヘッドの間隙に進入させることができる。
【0048】
さらに、プラテン6におけるプラテン側圧接体13の表面のうち、少なくとも、プラテン6と各記録素子10との圧接状態において、記録媒体2がプラテン6と各記録素子10との間隙に進入する際にプラテン6の表面に当接する部分に、プラテン6と記録媒体2との摩擦係数を低下させるための薄膜16が形成されている。これにより、プラテン6と各記録素子10とによって挟持された記録媒体2に対するプラテン6と各記録素子10とによる引っ張り力を低下させることができ、より円滑に記録媒体2を搬送することができる。また、プラテン6と各記録素子10との間隙に記録媒体2が位置しておらず、インクリボンを介してプラテン6と各記録素子10とが圧接している状態のときに、インクリボンがプラテン6に貼り付いてしまうのを防止することができる。
【0049】
続いて、本発明に係るプラテン6を用いた記録装置の第2の実施形態について説明する。ここで、第2の記録装置において第1の記録装置と同一の構成については、詳説を省略し、第1の実施形態と同一の符号を用いて説明する。
【0050】
図4は、第2の実施形態に係る記録装置を示す概略断面図であり、図4に示すように、第2の実施形態に係る記録装置におけるプラテン6は、平板状のプラテン側基台12を備えた台座7を有する。
【0051】
プラテン側基台12の表面のうちサーマルヘッド5の各記録素子10との圧接部分には、サーマルヘッド5の方向に突出する樹脂材料等からなる凸部15が形成されている。凸部15は、断面形状が台形状に形成されているとともに、各記録素子10の圧接部分に対応して直線形状に形成されている。凸部15における各記録素子10に対向する頂面のうち記録媒体2の搬送方向と同一方向の幅寸法は、各記録素子10の配置位置における記録媒体2の搬送方向と同一方向の幅寸法に対応して形成されている。詳しくは、凸部15の頂面の幅寸法は、各記録素子10の幅寸法以下とすることが好ましく、100〜200μmに形成されているとよい。
【0052】
そして、プラテン6の表面、すなわち凸部15およびプラテン側基台12の表面には、プラテン6に対する記録媒体2の摩擦係数を低下させるための薄膜16が配設されている。
【0053】
そして、このプラテン6は、プラテン側基台12がサーマルプリンタ1のフレーム18に取り付けられて、サーマルプリンタ1の内部において固定して配設されている。
【0054】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0055】
第2の実施形態によれば、サーマルヘッド5の各記録素子10との圧接部分に凸部15が形成されているので、凸部15と各記録素子10との間隙に進入する直前に、プラテン6とサーマルヘッド5との間隙に所定の寸法を確保することができ、これにより、圧接状態の各記録素子10とプラテン6との間隙への記録媒体2の進入性を向上させることができる。
【0056】
また、記録媒体2に記録を行う際に、サーマルヘッド5の各記録素子10がプラテン6の凸部15に圧接されており、凸部15は断面形状が台形状に形成され、凸部15の頂面の幅寸法が100〜200μmに形成されているので、凸部15が形成されていない従来の固定型のプラテン6を用いる場合と比較して、各記録素子10とプラテン6との当接面積を狭くすることができる。
【0057】
さらに、プラテン6は、サーマルプリンタ1の内部において固定して設けられているので、プラテン6の長さ方向における中央部分が撓んでしまうのを防止することができる。
【0058】
したがって、記録媒体2が凸部15と各記録素子10との間隙に進入する直前のプラテン6とサーマルヘッド5とが対向する間隙に所定の寸法を確保することにより、凸部15と各記録素子10との間隙への記録媒体2の進入性を向上させることができるので、記録媒体2を円滑に搬送することができる。また、圧接状態の各記録素子10と凸部15との間隙への記録媒体2の進入性が向上することにより、記録媒体2の先端部分から記録を行うことができるので、縁なし印刷を行う場合にも好適となる。
【0059】
また、各記録素子10とプラテン6との当接面積を狭くすることができるので、圧接された各記録素子10とプラテン6とに挟持されることによって記録媒体2に加わる負荷を小さくすることができる。これにより、記録媒体2を円滑に搬送することができるとともに、より少ない動力によって搬送ローラ3により記録媒体2を搬送することができる。
【0060】
また、プラテン6が撓んでしまうのを防止することができるので、各記録素子10をプラテン6に均一な圧接力により圧接させることができるので、均一な濃度の良好な画像を記録することができる。これとともに、この固定型のプラテン6を用いることにより、プラテン6の小型化を図ることができ、ひいてはプリンタの小型化、薄型化を図ることができる。
【0061】
さらに、第2の実施形態に係るプラテン6によれば、プラテン側基台12の表面に直接凸部15が形成されているので、よりプラテン6の薄型化、小型化を図ることができるとともに、プラテン6の形成材料を省略することができ、プラテン6の製造コストの低廉化を図ることができる。
【0062】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0063】
例えば、各実施形態においては各記録素子10の表面が曲面状に形成されているが、これに限定されず、平面形状に形成してもよい。すなわち、各記録素子10の表面が平面形状であっても、本発明に係るプラテン6を用いることにより、プラテン6に凸部15が形成されているので、各記録素子10とプラテン6との当接面積を狭くすることができる。これにより、各記録素子10の表面を曲面状に形成するためのヘッド側圧接体9を設けなくてもよいので、プラテン6の製造コストの低廉化、製造工程の軽減化を図ることができるとともに、サーマルヘッド5の小型化、薄型化を図ることができ、ひいてはサーマルプリンタ1の小型化、薄型化を図ることができる。さらに、各記録素子10の表面を平面形状に形成することにより、各記録素子10とプラテン6との圧接によってプラテン6に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0064】
また、プラテン6の形状は前記各実施形態に限定されるものではなく、例えば、プラテン6について、断面形状が略半円形状のプラテン側圧接体13の表面に断面形状が台形状の凸部15を形成してもよく、さらには、プラテン側基台12の表面に断面形状が半円形状の凸部15を形成してもよい。
【0065】
また、各実施形態においては、記録装置として、複数の記録素子10が記録媒体2の幅寸法に対応してライン状に配置されたラインサーマルプリンタ1を用いて説明したが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るプラテンを用いた記録装置の一実施形態を示す概略断面図
【図2】図1のプラテンを示す拡大した概略断面図
【図3】図1のプラテンを示す概略斜視図
【図4】本発明に係るプラテンを用いた記録装置の他の実施形態を示す概略断面図
【符号の説明】
【0067】
1 サーマルプリンタ
2 記録媒体
3 搬送ローラ
5 サーマルヘッド
6 プラテン
7 台座
8 ヘッド側基台
9 ヘッド側圧接体
10 記録素子
12 プラテン側基台
13 プラテン側圧接体
15 凸部
16 薄膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに圧接可能に対向して配置され、記録装置の内部に固定して設けられる固定型のプラテンであって、
前記記録ヘッドとの圧接部分に、前記圧接部分に対応する線状に形成された凸部を有することを特徴とするプラテン。
【請求項2】
前記凸部の突出寸法を、10μm以上であって、前記記録ヘッドとの圧接状態において、前記記録ヘッドと前記凸部との間隙に記録媒体が進入する直前の前記台座における前記記録ヘッドに対向する表面と前記記録ヘッドにおける前記台座に対向する表面との間隙寸法を、前記記録媒体の厚さ寸法より短い寸法に設定することを特徴とする請求項1に記載のプラテン。
【請求項3】
前記凸部を、断面形状において半円形状に形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラテン。
【請求項4】
前記凸部を、断面形状において台形状に形成し、前記凸部における前記記録ヘッドに対向する頂面のうち、記録が行われる記録媒体の搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法を、前記各記録ヘッドに備えた記録素子における前記搬送方向と同一方向の幅方向の幅寸法に対応して形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラテン。
【請求項5】
前記凸部を支持する台座を有し、前記台座は、プラテン側基台と、前記プラテン側基台における前記記録ヘッドに対向する表面に配設されたプラテン側圧接体とを備え、前記凸部を、前記プラテン側圧接体における前記記録ヘッドに対向する表面に形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラテン。
【請求項6】
前記凸部を支持する台座を有し、前記台座は、プラテン側基台とを備え、前記凸部を、前記プラテン側基台における前記記録ヘッドに対向する表面に形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラテン。
【請求項7】
前記記録ヘッドに対向する表面のうち、前記記録媒体の搬送時において少なくとも前記記録媒体が当接する部分に、前記記録媒体と前記表面との摩擦係数を低下させる薄膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラテン。
【請求項8】
記録ヘッドに並列配置された記録素子と、
前記記録素子に圧接可能に対向して配置され、固定して設けられる固定型のプラテンとを有してなり、
前記記録素子との圧接部分に、前記圧接部分に対応する線状に形成された凸部とを有することを特徴とする記録装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−331202(P2007−331202A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164864(P2006−164864)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】