説明

プランジャの表面粗さ調整装置

【課題】プランジャの径に応じて容易に製作すると共に、プランジャに迅速に設置することができるプランジャの表面粗さ調整装置の提供。
【解決手段】鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャ11に適用され、このプランジャ11の周方向の表面に摺接してプランジャ11の表面の粗さを調整する表面粗さ調整部材3と、この表面粗さ調整部材3をプランジャ11に押圧して支持する支持部材とを備えたプランジャ11の表面粗さ調整装置において、支持部材は弾性体1から成り、この弾性体1は、表面に表面粗さ調整部材3を貼付して固定する両面テープ2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ等に設置されたプランジャの表面の粗さを調整するプランジャの表面粗さ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧式のエレベータは、昇降路内に配置され、乗かごを昇降させる油圧ジャッキを備えており、この油圧ジャッキは、鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャと、このプランジャに接続されたシリンダと、このシリンダの一端に設けられ、プランジャを支持するグランド部と、このグランド部とプランジャとの間に介装されたパッキンとを有している。また、上述のエレベータには、シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプ及びタンク等の油圧機器が設けられており、油圧ポンプによって作動油をシリンダへ送ることにより、プランジャが乗かごを押し上げて昇降させ、タンクに作動油を戻すことにより、乗かごを下降させている。
【0003】
従って、プランジャの表面の仕上げが十分に行われていなければ、パッキンに対するプランジャの摺動が円滑になされず、いわゆるビビリ振動が発生する。そして、このビビリ振動が乗かごに伝わり、乗かごの固有振動と共振することにより、乗かごが昇降する際に大きく揺れるので、乗かご内で待機する乗客が不快に感じたり、あるいは不安を抱く虞があった。そこで、プランジャの表面を研磨することによってプランジャに発生するビビリ振動を抑える装置の従来技術の1つとして、作動液体の圧力により駆動されるプランジャの周面に接触して設けた研磨部材、すなわち表面粗さ調整部材と、この表面粗さ調整部材を支持し、表面粗さ調整部材をプランジャに押圧するプランジャの周囲に配設した支持部材から成るプランジャ研磨装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−146664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示された従来技術のプランジャ研磨装置は、表面粗さ調整部材を支持する支持部材が金属で構成されているので、径の異なるプランジャに適用する場合には、各プランジャの径に合わせて支持部材を製作する必要がある。例えば、1日のうちに3つの現場におけるプランジャの表面の粗さを調整する場合には、各現場に設置されたプランジャの径に合わせて支持部材の設計を行った後、鋳物等で型を取った金属材料に対して加工等を行うことにより、大きさの異なる3種類の支持部材を製作しなければならず、支持部材の製作が煩雑となっている。また、製作された3つの金属製の支持部材を現場へそれぞれ持参する必要があるが、上述したように支持部材は金属で構成されていることから重量が大きくなり易く、支持部材を各現場まで運搬するのに多大な労力を伴うので、支持部材の設置作業に時間がかかることが問題となっている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、プランジャの径に応じて容易に製作すると共に、プランジャに迅速に設置することができるプランジャの表面粗さ調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のプランジャの表面粗さ調整装置は、鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャに適用され、このプランジャの周方向の表面に摺接して前記プランジャの表面の粗さを調整する表面粗さ調整部材と、この表面粗さ調整部材を前記プランジャに押圧して支持する支持部材とを備えたプランジャの表面粗さ調整装置において、前記支持部材は弾性体から成り、この弾性体は、表面に前記表面粗さ調整部材を貼付して固定する両面テープを有することを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、表面粗さ調整部材を支持する支持部材が弾性体で構成されており、支持部材が加工し易くなっているので、プランジャの径に合わせて支持部材の弾性体を適宜加工して調整することにより、1種類の支持部材だけで各種の径のプランジャに十分対応させることができる。例えば、支持部材をプランジャに設置する際に、プランジャの径に合わせて支持部材の弾性体を切断したり、あるいは弾性体を伸縮させた後、この弾性体の表面に表面粗さ調整部材を両面テープで貼付することにより、プランジャの径に対応した装置を簡単に製作することができる。また、支持部材を構成する弾性体は金属等に比べて比較的軽く取扱い易いので、少ない労力で支持部材を現場へ運搬してプランジャに取付けることができる。このように、プランジャの径に応じて容易に製作すると共に、プランジャに迅速に設置することができる。
【0009】
また、本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置は、前記発明において、前記表面粗さ調整部材及び前記弾性体の長さは、前記プランジャの最大直径の円周寸法に設定されたことを特徴としている。このように構成すると、プランジャのうち軸方向において径が異なっていても、プランジャのうち弾性体及び表面粗さ調整部材を設置する部分の径に合わせて弾性体及び表面粗さ調整部材を切断することにより、プランジャの当該部分に合致した最適な大きさの弾性体及び表面粗さ調整部材を効率良く製作することができる。また、弾性体及び表面粗さ調整部材をプランジャに取付けて設置する際に、弾性体及び表面粗さ調整部材の長さが足りなくなることを防止することができるので、弾性体を伸ばしたり、あるいは新たに表面粗さ調整部材を用意しなくて済む。
【0010】
また、本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置は、前記発明において、前記弾性体の外周面に複数回巻き付けて前記弾性体を前記プランジャに対して挟持する粘着テープを備えたことを特徴としている。このように構成すると、粘着テープを弾性体の外周面に複数回巻き付けることにより、例えばボルトやナット等の金属部品を用いなくても弾性体をプランジャに対して強固に支持することができる。また、粘着テープを弾性体の外周面に巻き付ける回数を増減することにより、表面粗さ調整部材のプランジャの表面に対する接触圧力を適正に調整することができる。さらに、プランジャの動作中に粘着テープによって弾性体がプランジャから外れに難くなるので、プランジャの表面粗さの調整における弾性体及び表面粗さ調整部材の取付状態の安定性を高めることができる。
【0011】
また、本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置は、前記発明において、前記プランジャと、このプランジャに接続されたシリンダと、このシリンダの一端に設けられ、前記プランジャを支持するグランド部とを備えた油圧ジャッキに適用され、前記プランジャのうち前記弾性体の上方部分の周りを囲む第1の結束バンドと、前記シリンダのうち前記グランド部の下方部分の周りを囲む第2の結束バンドと、前記第1の結束バンドと前記第2の結束バンドとを結ぶ第3の結束バンドとを備え、前記第1の結束バンドを前記プランジャの外径よりも大きく、かつ前記弾性体の外径よりも小さくなるように結ぶと共に、前記第2の結束バンドを前記シリンダの外径よりも大きく、かつ前記グランド部の外径よりも小さくなるように結んだことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、プランジャがシリンダから押し出されると、弾性体に貼付された表面粗さ調整部材がプランジャから軸方向における摩擦力を受ける。このとき、この摩擦力によって弾性体がプランジャと共に移動した場合には、第1及び第2の結束バンドが第3の結束バンドによって連結されているので、弾性体が第1の結束バンドに引っ掛かると共に、第1の結束バンドに連れてプランジャの軸方向へ移動した第2の結束バンドがシリンダのグランド部に引っ掛かり、第3の結束バンドの張力によって弾性体のプランジャの軸方向への移動が規制される。これにより、弾性体に貼付された表面粗さ調整部材をプランジャの表面に確実に摺動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプランジャの表面粗さ調整装置は、鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャに適用され、このプランジャの周方向の表面に摺接してプランジャの表面の粗さを調整する表面粗さ調整部材と、この表面粗さ調整部材をプランジャに押圧して支持する支持部材とを備えている。そして、支持部材は弾性体から成り、この弾性体は、表面に表面粗さ調整部材を貼付して固定する両面テープを有しているので、支持部材及び表面粗さ調整部材をプランジャに設置する場合には、プランジャの径に合わせて支持部材の弾性体を加工し、加工した弾性体の表面に表面粗さ調整部材を両面テープで貼付することにより、1種類の支持部材だけで各種の径のプランジャに十分対応させることができる。また、支持部材を構成する弾性体は金属等に比べて比較的軽く取扱い易いので、支持部材の運搬にかかる労力を軽減することができる。このように、プランジャの径に応じて容易に製作すると共に、プランジャに迅速に設置することができるので、従来よりも生産性を高めると共に、設置作業における能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置の一実施形態における構成部品を示す図である。
【図2】図1に示す本実施形態の構成部品の取付方法を説明する図である。
【図3】図1に示す本実施形態の構成部品を油圧ジャッキに取付けた状態を示す図である。
【図4】図3に示す弾性体、表面粗さ調整部材、粘着テープ、及びプランジャの断面図である。
【図5】図3に示す第1の結束バンドにおける各第3の結束バンドの取付位置を説明する上面図である。
【図6】本実施形態の動作を説明する図であり、乗かごが上昇するときの状態を示す図である
【図7】本実施形態の動作を説明する図であり、乗かごが下降するときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置の一実施形態は、例えば油圧式のエレベータに設けられ、具体的には図3に示すように鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャ11と、このプランジャ11に接続されたシリンダ13と、このシリンダ13の一端、すなわち上端に設けられ、プランジャ11を支持するグランド部12と、このグランド部12とプランジャ11との間に介装された図示しないパッキンとを備えた油圧ジャッキ10に適用される。なお、この油圧ジャッキ10は昇降路内に配置されている。
【0017】
また、上述のエレベータは、昇降路内に配置され、プランジャ11に支持された図示しない乗かごと、シリンダ13へ作動油を供給する図示しない油圧ポンプ及びタンク等の油圧機器とを備えており、油圧ポンプによって作動油をシリンダ13へ送ることにより、プランジャ11が乗かごを押し上げて昇降させ、タンクに作動油を戻すことにより、乗かごを下降させるようになっている。
【0018】
そして、本発明に係るプランジャの表面粗さ調整装置の一実施形態は、図1、図3に示すようにプランジャ11の周方向の表面に摺接してプランジャ11の表面の粗さを調整する表面粗さ調整部材3と、この表面粗さ調整部材3をプランジャ11に押圧して支持する支持部材とを備えている。本実施形態は、支持部材は弾性体1から成り、この弾性体1は、表面に表面粗さ調整部材3を貼付して固定する両面テープ2を有している。上述した弾性体1は、例えばスポンジ素材によって直方体に形成されており、両面テープはこの直方体のうち長手方向の一側面に貼付されている。従って、本実施形態では、弾性体1の当該側面と表面粗さ調整部材3とが両面テープ2によって固着されることにより、弾性体1と表面粗さ調整部材3が一体となった表面粗さ調整装置部5が形成されている。
【0019】
本実施形態は、弾性体1及び表面粗さ調整部材3の長さは、プランジャ11の最大直径の円周寸法aに設定されている。なお、本実施形態では、弾性体1は後述するように図3に示すプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分に取付けられ、表面粗さ調整部材3は、例えば耐水性のサンドペーパー等の研磨部材から構成されている。
【0020】
本実施形態は、弾性体1の外周面に複数回巻き付けて弾性体1をプランジャ11に対して挟持する粘着テープ6と、表面粗さ調整装置部5とシリンダ13のグランド部12との間に介装させるウエス7と、プランジャ11のうち弾性体1の上方部分の周りを囲む第1の結束バンド4aと、シリンダ13のうちグランド部12の下方部分の周りを囲む第2の結束バンド4bと、結束バンド4aと結束バンド4bとを結ぶ第3の結束バンド4cとを備えている。そして、結束バンド4a,4bは、後述するように結束バンド4aをプランジャ11の外径よりも大きく、かつ弾性体1の外径よりも小さくなるように結ぶと共に、結束バンド4bをシリンダ13の外径よりも大きく、かつグランド部12の外径よりも小さくなるように結ぶのに必要な長さに設定されている。
【0021】
次に、本実施形態に備えられる図1に示す構成部品を油圧ジャッキに取付ける方法を図2〜5に基づいて説明する。
【0022】
図2は図1に示す本実施形態の構成部品の取付方法を説明する図、図3は図1に示す本実施形態の構成部品を油圧ジャッキに取付けた状態を示す図、図4は図3に示す弾性体、表面粗さ調整部材、粘着テープ、及びプランジャの断面図、図5は図3に示す第1の結束バンドにおける各第3の結束バンドの取付位置を説明する上面図である。
【0023】
本実施形態は、図2に示すようにまず支持部材の弾性体1をプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分に巻き付け、弾性体1をプランジャ11の当該部分の円周に合わせて適正な長さに切断する(ステップ(以下、Sと記す)1)。このとき、例えばプランジャ11の当該部分のプランジャ11の径が140mm、プランジャ11の最大直径が200mmである場合には、プランジャ11の当該部分の円周寸法が約440mm、プランジャ11の最大直径の円周寸法aが約628mmとなるので、弾性体1を約188mm切断する。同様に、表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分に巻き付け、表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分の外周に合わせて適正な長さに切断する。
【0024】
次に、プランジャ11の表面と表面粗さ調整部材3との間に隙間が形成されないように、切断した表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分に巻き付け、表面粗さ調整部材3の両端部に粘着テープ6を貼付して固定する(S2)。そして、弾性体1のうち両面テープ2が貼付された側面が表面粗さ調整部材3の表面に合わさるように、弾性体1を表面粗さ調整部材3に貼付することにより、図3に示すようにプランジャ11の当該部分に表面粗さ調整部材3と弾性体1とが一体となった表面粗さ調整装置部5が形成される(S3)。次に、図4に示すように表面粗さ調整装置部5の外周面、すなわち弾性体1の外周面に粘着テープ6を複数回巻き付けて弾性体1をプランジャ11に対して挟持する(S4)。
【0025】
次に、図3に示すように結束バンド4aを弾性体1の上方部分にプランジャ11の外径よりも大きく、かつ弾性体1の外径よりも小さくなるように結ぶと共に(S5)、結束バンド4bをグランド部12の下方部分にシリンダ13の外径よりも大きく、かつグランド部12の外径よりも小さくなるように結んだ後(S6)、3本の結束バンド4cを結束バンド4a,4bにそれぞれ結んで結束バンド4a,4bを鉛直方向に連結する(S7)。
【0026】
このとき、3本の結束バンド4cは、図5に示すように円形状に形成された結束バンド4aを3等分するように配置されている。従って、各結束バンド4cは結束バンド4aに沿って120°毎に配置されている。なお、各結束バンド4cは、プランジャ11の表面の粗さを調整するときに張力が加わるので、余裕を持たせて結ばれている。次に、ウエス7をプランジャ11のうち表面粗さ調整装置部5とシリンダ13のグランド部12との間に巻き付け(S8)、本実施形態に備えられる構成部品の取付を完了する。
【0027】
次に、本実施形態の動作を図6、図7に基づいて説明する。
【0028】
図6は本実施形態の動作を説明する図であり、乗かごが上昇するときの状態を示す図、図7は本実施形態の動作を説明する図であり、乗かごが下降するときの状態を示す図である。
【0029】
本実施形態は、乗かごが上昇すると、すなわち図6に示すように油圧ポンプによって作動油をシリンダ13へ送ることにより、プランジャ11が乗かごを押し上げて昇降させると、表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3はプランジャ11の表面に接触しているので、表面粗さ調整装置部5がプランジャ11から摩擦力を受けてプランジャ11と共に上昇する。
【0030】
ここで、本実施形態は、上述したように結束バンド4aがプランジャ11のうち弾性体1の上方部分の周りを囲んでいるので、表面粗さ調整装置部5が上昇することによって表面粗さ調整装置部5が結束バンド4aを押し上げる。また、結束バンド4a,4b,4cが互いに連結されているので、結束バンド4aが押し上げられると、各結束バンド4cが鉛直方向に伸びると共に、結束バンド4bが3本の結束バンド4cの張力によって押し上げられる。
【0031】
そして、結束バンド4bがシリンダ13のうちグランド部12の下方部分の周りを囲んでいるので、押し上げられた結束バンド4bはシリンダ13のグランド部12に引っ掛かり、各結束バンド4cの張力によって結束バンド4aが上昇する表面粗さ調整装置部5を下方に押さえ付ける。これにより、表面粗さ調整装置部5のプランジャ11の軸方向への移動が規制される。その後、プランジャ11はシリンダ13からさらに伸長することにより、表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3とプランジャ11の表面とが摺動し、摺動摩擦によってプランジャ11の表面の粗さが調整される。
【0032】
次に、乗かごの上昇が完了し、乗かごが下降すると、すなわち図7に示すようにシリンダ13に供給された作動油をタンクに戻すことによって乗かごを下降させると、上述したように表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3はプランジャ11の表面に接触しているので、乗かごが上昇したときに押し上げられた表面粗さ調整装置部5がプランジャ11から摩擦力を受けてプランジャ11と共に下降する。
【0033】
そして、表面粗さ調整装置部5がシリンダ13のグランド部12に当接することによって上方へ押さえ付けられるので、表面粗さ調整装置部5が下降しなくなる。その後、プランジャ11がシリンダ13内へ挿入されることにより、表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3とプランジャ11の表面とが摺動し、摺動摩擦によってプランジャ11の表面の粗さが調整される。なお、表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3とプランジャ11の表面とが摺動することによって発生した研磨粉は、プランジャ11の外周面に巻き付けられたウエス7に回収される。また、本実施形態では上述したプランジャ11の駆動は低速で行われている。
【0034】
このように構成した本実施形態によれば、表面粗さ調整部材3を支持する支持部材が弾性体1で構成され、支持部材を曲げたり、あるいはカッターナイフやはさみ等で切断し易くなっているので、手順S1においてプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分の径に合わせて支持部材の弾性体1を適宜加工して調整することにより、1種類の弾性体1だけで各種の径のプランジャ11に十分対応させることができる。従って、手順S1において表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分の外周に合わせて切断し、手順S2において表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分に巻き付けた後、手順S3において弾性体1のうち両面テープ2が貼付された側面を表面粗さ調整部材3に貼付することにより、プランジャ11の径に対応した表面粗さ調整装置部5を簡単に製作することができる。また、表面粗さ調整装置部5の弾性体1は金属等に比べて比較的軽く取扱い易いので、少ない労力で弾性体1を現場へ運搬してプランジャ11に取付けることができる。このように、プランジャ11の径に応じて容易に製作すると共に、プランジャ11に迅速に設置することができるので、生産性を高めると共に、設置作業における能率を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態は、表面粗さ調整装置部5における表面粗さ調整部材3及び弾性体1の長さが、プランジャ11の最大直径の円周寸法aに設定されているので、プランジャ11のうち軸方向において径が異なっていても、手順S1においてプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分の径に合わせて弾性体1及び表面粗さ調整部材3をそれぞれ切断することにより、プランジャ11の当該部分に合致した最適な大きさの表面粗さ調整装置部5を効率良く製作することができる。これにより、優れた経済性を確保することができる。また、手順S1、S2において弾性体1及び表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分に巻き付けた際に、弾性体1及び表面粗さ調整部材3の長さが足りなくなることを防止することができるので、弾性体1を伸ばしたり、あるいは新たに表面粗さ調整部材を用意する必要がなくなり、耐久性及び経済性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態は、手順S4において粘着テープ6を弾性体1の外周面に複数回巻き付けることにより、例えばボルトやナット等の金属部品を用いなくても弾性体1をプランジャ11に対して強固に支持することができる。また、粘着テープ6を弾性体1の外周面に巻き付ける回数を増減することにより、表面粗さ調整部材3のプランジャ11の表面に対する接触圧力を適正に調整することができる。これにより、プランジャ11を駆動させることによってプランジャ11の表面状態を高い精度で良好なものにすることができる。さらに、プランジャ11の動作中に粘着テープ6によって弾性体1がプランジャ11から外れに難くなるので、プランジャ11の表面粗さの調整における表面粗さ調整装置部5の取付状態の安定性を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態は、手順S5において結束バンド4aをプランジャ11のうち弾性体1の上方部分の周りにプランジャ11の外径よりも大きく、かつ弾性体1の外径よりも小さくなるように結ぶと共に、手順S6において結束バンド4bをシリンダ13のうちグランド部12の下方部分の周りにシリンダ13の外径よりも大きく、かつグランド部12の外径よりも小さくなるように結んだ後、手順S7において3本の結束バンド4cを結束バンド4a,4bにそれぞれ結んで結束バンド4a,4bを鉛直方向に連結することにより、乗かごが昇降する際、すなわちプランジャ11がシリンダ13から押し出される際に、3本の結束バンド4cが結束バンド4a,4bを介して表面粗さ調整装置部5及びシリンダ13のグランド部12を挟持するので、表面粗さ調整装置部5のプランジャ11の軸方向への移動を規制することができる。これにより、プランジャ11を駆動させることによって表面粗さ調整装置部5の表面粗さ調整部材3をプランジャ11の表面に確実に摺動させることができるので、プランジャ11の表面粗さの調整における高い信頼性を確保することができる。
【0038】
なお、上述した本実施形態は、弾性体1がスポンジ素材によって直方体に形成された場合について説明したが、この場合に限らず、弾性体1はスポンジ素材以外のものから成っても良いし、また弾性体1は直方体以外の形状に形成されても良い。さらに、本実施形態は、手順S1において表面粗さ調整部材3をプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分に巻き付け、表面粗さ調整部材3をプランジャ11の当該部分の外周に合わせて切断した場合について説明したが、表面粗さ調整部材3を切断しなくてもプランジャ11の表面粗さの調整における性能が影響を受けることはない。従って、表面粗さ調整部材3を切断せずにプランジャ11のうちグランド部12の近傍部分に重ねて巻き付けても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 弾性体(支持部材)
2 両面テープ
3 表面粗さ調整部材
4a 第1の結束バンド
4b 第2の結束バンド
4c 第3の結束バンド
5 表面粗さ調整装置部
6 粘着テープ
7 ウエス
10 油圧ジャッキ
11 プランジャ
12 グランド部
13 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って配置されて上下に駆動するプランジャに適用され、このプランジャの周方向の表面に摺接して前記プランジャの表面の粗さを調整する表面粗さ調整部材と、この表面粗さ調整部材を前記プランジャに押圧して支持する支持部材とを備えたプランジャの表面粗さ調整装置において、
前記支持部材は弾性体から成り、
この弾性体は、表面に前記表面粗さ調整部材を貼付して固定する両面テープを有することを特徴とするプランジャの表面粗さ調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプランジャの表面粗さ調整装置において、
前記表面粗さ調整部材及び前記弾性体の長さは、前記プランジャの最大直径の円周寸法に設定されたことを特徴とするプランジャの表面粗さ調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプランジャの表面粗さ調整装置において、
前記弾性体の外周面に複数回巻き付けて前記弾性体を前記プランジャに対して挟持する粘着テープを備えたことを特徴とするプランジャの表面粗さ調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプランジャの表面粗さ調整装置において、
前記プランジャと、このプランジャに接続されたシリンダと、このシリンダの一端に設けられ、前記プランジャを支持するグランド部とを備えた油圧ジャッキに適用され、
前記プランジャのうち前記弾性体の上方部分の周りを囲む第1の結束バンドと、
前記シリンダのうち前記グランド部の下方部分の周りを囲む第2の結束バンドと、
前記第1の結束バンドと前記第2の結束バンドとを結ぶ第3の結束バンドとを備え、
前記第1の結束バンドを前記プランジャの外径よりも大きく、かつ前記弾性体の外径よりも小さくなるように結ぶと共に、前記第2の結束バンドを前記シリンダの外径よりも大きく、かつ前記グランド部の外径よりも小さくなるように結んだことを特徴とするプランジャの表面粗さ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228759(P2012−228759A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99635(P2011−99635)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】