説明

プランジャポンプ、及び、プランジャポンプを有している燃料電池発電システム

【課題】プランジャとシリンダの磨耗による性能低下を防ぐこと。
【解決手段】円筒状の空間を有するシリンダ室と、前記シリンダ室に吸入経路及び吐出経路を介しそれぞれ連通している吸入口及び吐出口と、を有するシリンダと、前記シリンダ室に対して進退しながら回転する円柱状の軸部を有するプランジャと、を有し、前記プランジャの回転により前記吸入口及び前記吐出口を交互に前記シリンダ室に連通させるためのカット部が、前記軸部の先端部外周に形成されており、前記軸部の先端の周囲と前記カット部の周囲とは、曲面で形成されていることにより、プランジャとシリンダの磨耗を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内のプランジャを回転させながら往復動させ、吸込口と吐出口を交互にシリンダ室に連通させることにより液体の移送を行うプランジャポンプと、上記プランジャポンプを有している燃料電池発電システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高効率な小規模発電が可能である燃料電池発電システムは、発電の際に発生する熱エネルギーを利用するためのシステムの構築が容易であるため、高いエネルギー利用効率を実現可能な分散型の発電システムとして開発が進められている。
【0003】
燃料電池発電システムは、その発電部の本体として、燃料電池を備えている。この燃料電池の発電のための燃料は、通常、水素(水素ガス)が用いられる。燃料となる水素は、改質器において天然ガス等が改質されて生成される。
【0004】
上記の改質反応は一般的に水蒸気改質反応である。この水蒸気改質反応において、化石燃料が水蒸気と反応して改質されることにより、化石燃料から燃料ガス(水素)が生成される。したがって、燃料電池発電システムが発電を行い水素が消費されているとき、消費される水素を改質器で生成するために、水蒸気を発生させるための水が改質器に供給される。つまり、燃料電池発電システムが所定の電力を発電するためには、発電量に合わせて改質器への水の供給を精密に制御する必要がある。改質器への精密な水の供給のために、プランジャポンプが用いられていた(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、プランジャポンプは、耐久性があり改質水への成分溶出が無いセラミック製のシリンダとプランジャによって構成されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
従来のプランジャポンプは、シリンダの先端部に相対向してシリンダ室につながるバルブレスの吸入口と吐出口が設けられ、先端部外周にカット部が形成されたプランジャ101をシリンダ内を回転させながら往復動させて吸入口及び吐出口を交互にシリンダ室に連通させることにより、流体の移送を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−276544号公報
【特許文献2】特開2010−43618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構成においてはシリンダとプランジャの間は回転および往復運動を行うための数十ミクロンの隙間があり、プランジャがシリンダに対してこの隙間の範囲で傾くとシリンダとプランジャの間で偏った局部的な磨耗が発生する。
【0009】
特に、従来のプランジャポンプにおいて、プランジャの先端の周囲とカット部の周囲のエッジとがシリンダ(図示せず)の内面に接触すると接触圧が上昇し、プランジャがシリンダ内面を引っかくようにシリンダ内を回転運動と往復運動とを行うことになる。
【0010】
上記従来技術のプランジャポンプは、これによって、シリンダ内面の平滑度は低下し、
ポンプの吐出性能が悪化するという課題を有していた。
【0011】
また、上記従来技術のプランジャポンプは、シリンダとプランジャの摩擦によって生じ磨耗粉が生じ、この磨耗粉がシリンダとプランジャの隙間に咬みこむと、ポンプの動作停止が引き起こる、という課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プランジャとシリンダの磨耗による性能低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るプランジャポンプは、シリンダ先端部に相対向してシリンダ室につながるバルブレスの吸込口と吐出口が設けシリンダ室に対して進退しながら回転動作する円柱状の軸部を有するプランジャとを有し、軸部は、先端部外周に、前記プランジャの回転動作により前記吸入口及び前記吐出口を交互に前記シリンダ室に連通させるためのカット部を有し、前記軸部の先端の周囲と前記カット部の周囲とは、曲面で形成されている。
【0014】
これにより、エッジでシリンダ内面を引っかくことが抑制され、シリンダとプランジャとの磨耗を低減させ、円滑な往復運動と回転運動が実現でき、ポンプ寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプランジャポンプは、シリンダとプランジャとの磨耗を低減させ、吐出量の低下を抑制することができ、長寿命で信頼性が高いプランジャポンプを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプランジャポンプ断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1におけるプランジャポンプのプランジャ斜視図、(b)(a)のプランジャポンプのX軸の直角方向の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成を示すブロック図
【図4】従来例のプランジャポンプのプランジャ斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
先ず、本発明の実施の形態に係るプランジャポンプの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態におけるプランジャポンプ断面図を示すものである。図2(a)本発明の実施の形態1におけるプランジャポンプのプランジャ斜視図、図2(b)は図2(a)のプランジャポンプのX軸の直角方向の断面図である。図3は本発明の第2の実施形態における燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1〜図3において、燃料電池システム11は、天然ガス等の化石燃料の原料ガス17と不純物が除去された改質水18から水素リッチな燃料ガス12を生成する改質器15と、燃料ガス12と酸化剤ガス13を用いて発電を行う燃料電池14と、改質水18を貯水する水タンク16と、この水タンク16に蓄えられた改質水18を改質器15へ送出するプランジャポンプ10と、を有している。
【0020】
プランジャポンプ10は、シリンダ4とプランジャ6とを有している。シリンダ4は、
円筒状の空間を有するセラミック製のシリンダ室1と、シリンダ室に吸入経路21及び吐出経路22を介しそれぞれ連通している吸入口2及び吐出口3と、を有している。プランジャ6は、シリンダ室に対して進退しながら回転する円柱状でセラミック製の軸部5を有している。また、プランジャ6の回転により吸入口2及び吐出口3を交互にシリンダ室1に連通させるためのカット部8が、軸部5の先端部外周に形成されている。カット部8は、軸部5の先端を軸部5の中心軸と平行にカットするとともに、軸部5の中心軸と垂直にカットされて、形成される。軸部5の先端の周囲7とカット部8の周囲9とは、全ての角部が曲面で形成されている。よって、プランジャ6の先端部から、エッジを有する角部は存在しなくなる。
【0021】
以上のように構成されたプランジャポンプ10とそれを搭載した燃料電池システム11について、以下その動作と作用を説明する。
【0022】
おおよそ燃料電池システム11の発電量は300Wから1000Wの間で運転され、家庭などの需要家の電力の需要に応じて制御され、燃料電池システム11は約10年間ほど運転される。さらに燃料電池システム11の発電量に応じて燃料ガス12の供給量が制御され、その燃料ガス12の供給量に応じて改質器15へ供給される改質水18の量は10mL/分程度の少量が安定して供給されなければならない。
【0023】
また燃料ガス12は純度の高い水素ガスが必要とされるため、燃料ガス12の水素純度を低下させる成分がプランジャポンプ10を含む改質水18の経路から溶出することを、避けなければならない。このためシリンダ4とプランジャ6の摺動面に潤滑油等を使用することはできず、セラミック製の内面を持つシリンダ4とプランジャ6とは、表面がきわめて平滑に仕上げられており、シリンダ4とプランジャ6との間の空間は数ミクロンになるように形成されている。プランジャポンプ10はシリンダ4の先端部の相対向してシリンダ室1につながる吸入口2および吐出口3に対し、プランジャ6が回転しながら進退運動をする。プランジャ6の軸部5の先端部にあるカット部8が吸入口2と吐出口3とをシリンダ室1と交互に連通することになり改質水18の吸い込み、吐き出しが交互に行われる。
【0024】
本実施の形態のプランジャ6の軸部5の先端の周囲7とカット部の周囲9とは、鋭利なエッジではなく曲面で形成されているので、シリンダ4の中心軸とプランジャ6の回転軸の不一致によって生じる相互の接触圧力は分散され、接触圧を低減することができる。
【0025】
このような構成において、安定して原料ガス17と改質水18が改質器15に導かれ、水素リッチな燃料ガス12が生成され、この燃料ガス12と酸化剤ガス13により燃料電池14で発電が安定的に行われる。
【0026】
この実施の形態のプランジャポンプ10によると、プランジャ6の軸部5でシリンダ内面を傷つけて磨耗することが抑制され、円滑な往復運動と回転運動が実現することができ、ポンプ寿命が長くすることができる。したがって、上記プランジャポンプを搭載した燃料電池システムは水素ガスの精製を安定的に維持し、長期間にわたって運転を継続することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のプランジャポンプによれば、プランジャとシリンダの磨耗を低減し長寿命で信頼性を高くすることができる。そのため本発明のプランジャポンプは、燃料電池システムなどに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 シリンダ室
2 吸入口
3 吐出口
4 シリンダ
5 軸部
6 プランジャ
7 軸部の先端の周囲
8 カット部
9 カット部の周囲
10 プランジャポンプ
11 燃料電池システム
12 燃料ガス
13 酸化剤ガス
14 燃料電池
15 改質器
16 水タンク
21 吸入経路
22 吐出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の空間を有するシリンダ室と、前記シリンダ室に吸入経路及び吐出経路を介しそれぞれ連通している吸入口及び吐出口と、を有するシリンダと、
前記シリンダ室に対して進退しながら回転する円柱状の軸部を有するプランジャと、
を有し、
前記プランジャの回転により前記吸入口及び前記吐出口を交互に前記シリンダ室に連通させるためのカット部が、前記軸部の先端部外周に形成されており、
前記軸部の先端の周囲と前記カット部の周囲とは、曲面で形成されている、
プランジャポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のプランジャポンプと、
燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応させて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する改質器と、
前記改質器に供給する水を貯める水タンクと、
を有し、前記プランジャポンプは、前記水タンクの水を前記改質器に供給する、
燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−31805(P2012−31805A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173349(P2010−173349)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】