説明

プランジャポンプ、及びこれを用いた分注装置並びに検体検査装置

【課題】シール性を高め寿命を延ばすことができるプランジャポンプ、及びこれを用いた分注装置並びに検体検査装置を提供する。
【解決手段】プランジャポンプ10は、ポンプヘッド13内に往復動自在に挿入されたピストン14と、このピストン14を往復動作させるための駆動部15とを備えている。ピストン14とポンプヘッド13との間には、ポンプヘッド13内部側と駆動部15側とを仕切り且つピストン14の往復動に沿って伸縮する隔壁部24が掛け渡されるように設けられている。この隔壁部24によって、ピストンの摺動によるシール材の摩耗の問題を解消することができ、寿命を延ばすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の吸引と吐出を行うプランジャポンプ、及びこれを用いた分注装置並びに検体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プランジャポンプには、ポンプヘッド内でピストンを往復動させることで送液するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプランジャポンプにおいて、プランジャ(ピストン)は、駆動源によりピストン運動を与えられ、2つのプランジャシールで摺動しつつポンプヘッド内のポンプ室を往復動する。この場合、ポンプ室の容積がピストンの往復動により変化することでポンプ作用が生じ、ポンプヘッド内への流体の吸引とポンプヘッド外への流体の吐出とが行われるようになっている。また、このプランジャポンプでは、摺動部におけるシールの耐摩耗性を向上させるべく、プランジャシールの材料として母材であるPTFEにカーボンをファイバ状(繊維状)に混入したものを用いている。
【特許文献1】特開平11−152571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記プランジャシールは、ポンプ室の液体を封止する役割を担うが、ピストンとの潤滑の目的から完全に液体を止めるものではない。即ち、特許文献1のプランジャポンプでは、ポンプ室の液体の幾分かはピストンの表面を濡らすような形で当該シール後方(つまりポンプ室外方)へ漏出するのである。また、上記の材料を用いたプランジャシールによれば耐摩耗性を向上させることができるが、その内周部はピストンが摺動する以上、摩耗は不可避であり何れはシール性が低下して液体の流出を招く事態が生じうる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シール性を高め寿命を延ばすことができるプランジャポンプ、及びこれを用いた分注装置並びに検体検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1のプランジャポンプは、ポンプヘッドと、前記ポンプヘッド内に往復動自在に挿入され、前記往復動によって前記ポンプヘッド内の容積を変化させることにより、前記ポンプヘッド内への流体の吸引と前記ポンプヘッド外への流体の吐出を行うピストンと、前記ピストンを往復動作させるための駆動部と、前記ピストンと前記ポンプヘッドとの間に掛け渡されるように設けられ、前記ポンプヘッド内部側と前記駆動部側とを仕切り且つ前記ピストンの往復動に沿って伸縮する隔壁部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項6の発明は、前記プランジャポンプを用いて液体収容容器から別容器に液体を移す分注装置であって、前記プランジャポンプは、前記ポンプヘッドにノズルを有し、前記駆動部により前記ピストンを駆動して、前記ノズルから前記ポンプヘッド内へ前記液体収容容器の液体を吸引し、当該ノズルから前記別容器へ液体を吐出するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項7の発明は、前記プランジャポンプを用いて検体と試薬とを移し、前記検体と試薬とを反応させて前記検体を分析する検体検査装置であって、前記検体及び試薬は、複数の液体収容容器に各別に収容され、前記プランジャポンプは、前記ポンプヘッドにノズルを有し、前記駆動部により前記ピストンを駆動して、前記ノズルから前記ポンプヘッド内へ前記液体収容容器の検体あるいは試薬を吸引し、前記ノズルから反応容器へその吸引した検体あるいは試薬を吐出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のプランジャポンプによれば、ピストンの往復動に沿って伸縮する隔壁部により、ポンプヘッド内部側と駆動部側とを仕切るため、従来のプランジャシール(パッキン)のようなピストンに対する摺動部を不要とすることができる。このように、隔壁部は、ピストンの摺動によるシール材の摩耗の問題が生じず且つピストンとの潤滑を考慮する必要がないので、流体を漏出させることなくそのシール性を維持することができ、寿命を延ばすことができる。
【0009】
請求項6の分注装置によれば、ポンプヘッド内でシール材の摩耗粉が流体に混入することがないので、別容器へ吐出される流体を汚染する不具合がない。また、シール材としての隔壁部の長寿命化を図ることができるので、分注装置全体のメンテナンス費用を抑制することができる。更には、隔壁部により液体の流出を防止して、液体の吸引および吐出を安定して行うことができるので、分注の精度を向上させることができる。
【0010】
請求項7の検体検査装置によれば、反応容器へ吐出される検体や試薬をシール材の摩耗粉により汚染する不具合がなく、又、隔壁部により液体の流出防止を図ることができるので測定精度や信頼性の高いサンプリングを実現できる。更に、隔壁部の長寿命化を図ることができるので、検体検査装置全体のメンテナンス費用を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<第1実施例>
以下、本発明を分注装置に適用した第1実施例について、図1〜図6を参照しながら説明する。図1は分注装置を模式的に示しており、この分注装置は、プランジャポンプにより複数(例えば2つ)の液体収容容器から別容器に流体(液体)を移送するようになっている。即ち、同図に示すように、分注装置は、液体収容容器たる第1容器1に収容された第1液1aと、第2容器2に収容された第2液2aとを、別容器たる混合容器3に分注するように構成されていて、これらの液体の吸引及び吐出が可能なプランジャポンプ10と、このプランジャポンプ10を水平移動および上下移動させる移動装置(移動手段)11とを備えている。
【0012】
ここで、図2はプランジャポンプ10の概略的な斜視図で、図3ではこれを一部破断して示している。このプランジャポンプ10は、ノズル12を有するポンプヘッド13と、ポンプヘッド13内に往復動自在に挿入されたピストン14と、このピストン14を往復動作させるための駆動部15とを備えている。
【0013】
ポンプヘッド13は略円筒状をなし、内部に液体を収容するポンプ室13aが形成されている。このポンプヘッド13には先端側(図2中、左側)へ突出する比較的径小なパイプ状のノズル12が一体的に設けられている。このノズル12は、ポンプ室13aへ液体を吸引するための吸引口、及びポンプ室13a外へ液体を吐出するための吐出口として機能する。ポンプヘッド13の基端側には、ポンプヘッド13に連なるようにハウジング16が設けられている。
前記駆動部15は、例えば、ステッピングモータからなるモータ17と、このモータ17の回転運動をピストン14の往復運動(直線運動)に変換して伝達する伝達機構としての直交変換機構18とを有する。
【0014】
詳しい図示は省略するが、直交変換機構18は例えば、ハウジング16内に収容されたボールねじから構成されている。このボールねじは、モータ17の回転軸17aにおいて先端部外周面に形成されたボールねじ溝19a(以下、図3参照)を有するねじ軸部19と、このねじ軸部19の外周面と対向する内周面にボールねじ溝20aを有するナット20と、このナット20とねじ軸部19の両ボールねじ溝19a,20a間に配設された多数のボール(図示略)とを備えている。尚、モータ17の回転軸17a先端部にボールねじ溝19aを設けたが、回転軸17aとねじ軸部19は別部材であってもよい。また、直交変換機構18は、モータ17の回転運動をピストン14の直線運動に変換して伝達するものであればよく、回転軸17aに連結されたリードスクリューを用いる等、適宜変更してもよい
ハウジング16の内部には軸方向に延びるガイド部16a,16a(図2にのみ図示)が設けられており、前記ナット20はその後端部のフランジ部20bにおいて、当該ガイド部16a,16aにより軸方向へ移動可能に支持されている。ここで、直交変換機構18は、モータ17の正転により回転軸17a(ねじ軸部19)が回転すると、ナット20とその先端部に一体的に設けられたピストン14とを、軸方向に沿って往路を移動(図3中、右方に移動)させ、モータ17の逆転によりねじ軸部19が回転すると、ナット20とピストン14を、軸方向に沿って復路を移動(図3中、左方に移動)させる。
【0015】
ピストン14は、詳細には図3に示すように、ナット20の先端部から軸方向に延びるピストンロッド21と、このロッド21の先端部に設けられたピストン本体22とを有する。ピストン本体22は、その径寸法がピストンロッド21よりも径大で且つポンプ室13aよりも若干、径小となるように設定された円柱状をなしている。このピストン本体22(ピストン14)はポンプ室13aに挿入され、前記駆動部15によって、ポンプヘッド13の内周面と非接触状態で軸方向に往復動自在に移動する。ここで、図4はピストン本体22の基端部側からの斜視図を示しており、ピストン本体22の基端面には、ロッド用嵌合部23aと隔壁用嵌合部23bとが、軸方向内側へ窪むように設けられている。ロッド用嵌合部23aは、ピストンロッド21の先端部が嵌り込むことでピストンロッド21に対しピストン本体22が嵌合保持されるようになっている。隔壁用嵌合部23bは、ロッド用嵌合部23aの外周側においてこれと同心の溝状に形成されており、後述する隔壁部24の端部が嵌合するようになっている。
【0016】
ハウジング16の先端側の壁部25には、中心部に位置してピストンロッド21が貫通する孔部25a(図6参照)が形成されている。他方、ポンプヘッド13の基端部には、ポンプ室13aの周りに隔壁用段部26(図6参照)が設けられており、この隔壁用段部26に、隔壁部24の他方の端部が配置されている。
【0017】
図5はこの隔壁部24を拡大して示す断面図であり、同図に示されるように隔壁部24は円筒蛇腹(所謂ベローズ)状をなす蛇腹部24aと、その両端部に設けられた鍔部24b,24cとを有する。隔壁部24は、例えばニトリルゴム(NBR)等の可撓性材料からなり、射出成型により蛇腹部24aと鍔部24b,24cとが一体成形されている。このうち一方の鍔部24bは、円筒状に形成されており、ピストン本体22の隔壁用嵌合部23bに差し込まれて嵌合した状態で、ピストン本体22基端部で外側からかしめることにより圧潰される。このかしめによって、鍔部24bがピストン本体22から抜け止め固定されると共に、鍔部24bの全周にわたって水密性及び気密性が確保されている。
【0018】
他方の鍔部24cは、径方向外側に張り出す中空円板状をなし、隔壁用段部26において、ポンプヘッド13の基端部とハウジング16先端側の壁部25との間に挟まれて固定されることで、その全周にわたって水密性及び気密性が確保されている。また、これにより、隔壁部24は、ピストン本体22とポンプヘッド13との間に掛け渡されるように設けられ、ポンプヘッド13の内部側と駆動部15側(ハウジング16側)とを仕切り且つピストン本体22の往復動に沿って伸縮するようになっている。
【0019】
図1に示す分注装置の制御回路28は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、CPU、ROM、RAM(何れも図示せず)等を有している。この制御回路28には、前記移動装置11、ステッピングモータ17を夫々駆動する駆動回路29,30等が接続されている。制御回路28のROMには、第1液1aと第2液2aを移送するための一連の分注プログラム等が記憶されており、制御回路28は、当該プログラムに従って移動装置11、ステッピングモータ17等を制御するようになっている。
【0020】
続いて、本実施例の分注装置の作用を、図6も参照しながら説明する。ここで、図6(a)及び(b)は、吐出時及び吸引時におけるプランジャポンプ10の動作を説明するための図で、ポンプ室13a近傍部を拡大して示す断面図である。また、プランジャポンプ10は、移動装置11により水平および上下方向へ移動されるものとする。
【0021】
先ず、プランジャポンプ10は、第1容器1の上方へ移動して、ノズル12が第1容器1中の第1液1aに浸るように下降する。この状態で、モータ17を正転させると、直交変換機構18を介してピストン14が往路を移動(つまりポンプ室13aの容積を広げる方向へ移動)することで、第1容器1中の第1液1aがノズル12からポンプ室13a内へ吸引される。この場合、ピストン本体22が先端部側(図6(a)参照)から基端部側(図6(b)参照)へ移動することに伴い、隔壁部24の蛇腹部24aが折り畳まれるようにして収縮する。また、ポンプ室13aにおいて、ピストン本体22より右側(図6で右側)の空間Sに第1液1aが満たされても、この第1液1aは隔壁部24によって封止されることとなる。
【0022】
ポンプ室13a内に所定量の第1液1aが吸引されモータ17が停止されると、プランジャポンプ10が上昇し、第2容器2の上方へ移動してノズル12が第2容器2中の第2液2aに浸るように下降する。この状態で、モータ17を再度正転させることにより、直交変換機構18を介してピストン14が往路を移動して、第2容器2中の第2液2aがノズル12からポンプ室13a内へ吸引される。この場合、ピストン本体22の移動に伴い、隔壁部24の蛇腹部24aがより収縮しポンプ室13a内でコンパクトに折り畳まれる状態となる。
【0023】
ポンプ室13a内に所定量の第2液2aが吸引されモータ17が停止されると、プランジャポンプ10は上昇して第2容器2から離間した後、混合容器3の上方へ移動して下降する。この状態で、モータ17を逆転させると、直交変換機構18を介してピストン14が復路を移動(つまりポンプ室13aの容積を狭める方向へ移動)することで、ポンプ室13a内の両液1a,2aがノズル12から混合容器3側へ吐出される。このとき、ピストン本体22が図6中、左方に移動することに伴い(a)に示すように蛇腹部24aが伸長する。そして、プランジャポンプ10は、モータ17が停止されることにより、その吐出を終える。尚、本実施例の分注装置では、上記した一連の動作を1サイクルとし、プランジャポンプ10によって複数回の分注及び混合を連続的に行うことができる。また、上記構成によれば、3種類(第3液)以上の液体の移送が可能であり、図示外の多数の液体収容容器から液体を連続して吸引して移送し、或は、吸引及び移送を液体ごとに各別に行うこともできるが、図示及び詳しい説明を省略する。
【0024】
以上のように本実施例では、隔壁部24を、ピストン14とポンプヘッド13との間に掛け渡されるように設け、ポンプヘッド13内部側と駆動部15側とを仕切り且つピストン14の往復動に沿って伸縮するように構成した。この隔壁部24によれば、従来のプランジャシール(パッキン)のようなピストンに対する摺動部を不要としながらも、ポンプヘッド13内部側と駆動部15側とを仕切るため、ピストンの摺動によるシール材の摩耗の問題を解消することができる。また、従来のプランジャシールとは異なり、そのシール材の摺動部における潤滑を考慮する必要がないので、流体を漏出させることなくシール性を維持することができ、寿命を延ばすことができる。
【0025】
また、隔壁部24は可撓性材料からなり、ピストン14の移動により折り畳まれる円筒蛇腹状に形成されているので、比較的簡単な構成で隔壁部24をピストン14の往復動に沿って伸縮させることができる。また、吸引時には蛇腹部24aをポンプ室13a内でコンパクトに折り畳むことができると共に、吐出時には蛇腹部24aが充分に伸長するためピストン14のストロークひいては送液量を充分に確保することができる。
【0026】
隔壁部24の両端部に夫々鍔部24b,24cを設け、これら鍔部24b,24cのうち一方の鍔部24bをピストン14に固定し、他方の鍔部24cをポンプヘッド13の駆動部15側の端部に固定した。これによれば、鍔部24b,24cを利用してピストン14とポンプヘッド13の端部とにわたって隔壁部24を取付け固定することができ、ポンプヘッド13内の容積を充分に確保しつつシール性を得ることができる。
【0027】
プランジャポンプ10は、駆動部15の一部を収容し且つポンプヘッド13に連なるハウジング16を備え、一方の鍔部24bを、ピストン14に設けられた嵌合部に嵌合させた状態でかしめにより固定し、他方の鍔部24cを、ポンプヘッド13とハウジング16との間に挟み込むようにして固定した。これによれば、比較的簡単な構成でプランジャポンプ10に対し隔壁部24を確実に固定することができると共に、夫々の鍔部24b,24cにおけるシール性を極力高めることができ、ポンプ室13aから駆動部15側への液体の漏出を極力防止することができる。
【0028】
駆動部15を、ステッピングモータ17とこのモータ17の回転運動をピストン14の往復運動に変換して伝達する直交変換機構18とから構成したので、比較的簡単な構成でピストン14の正確な位置決め制御を実現でき、液体の吸引および吐出を精度良く安定して行うことができる。
【0029】
本実施例の分注装置では、隔壁部24により液体の漏出を防止して、液体の吸引と吐出とを安定して行うことができるので、分注の精度を向上させることができる。また、ポンプヘッド13内でシール材の摩耗粉が液体に混入することがないので、混合容器3へ吐出される流体を汚染する不具合がない。更には、シール材としての隔壁部24の長寿命化を図ることができるので、シール材の取替え(或はポンプの取替え)頻度を極力少なくして分注装置全体のメンテナンス費用を抑制することができる。
【0030】
隔壁部24は、耐久性や弾性に優れたニトリルゴムから構成されているので、プランジャポンプ10に好適なものとすることができる。この隔壁部24の材料は、例えば耐薬品性を有する合成樹脂でもよく、移送する液体の性質等に応じて適宜変更してもよい。
【0031】
<第2実施例>
図7及び図8は、本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と異なるところを説明する。図7は検体検査装置を模式的に示しており、第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
【0032】
この検体検査装置は、検体(例えば血液(血清)や尿)と試薬とを反応させて当該検体を分析するようになっており、検体容器(液体収容容器)31に収容された検体31aと試薬容器(液体収容容器)32に収容された試薬32aとを、別容器たる反応容器33に分注するように構成されている。また、検体検査装置は、反応容器33内で検体31aと試薬32aを攪拌により反応させる攪拌機構34と、プランジャポンプ10の洗浄を行う洗浄機構35と、反応容器33内の検体31aの分析を行う分析部36とを備えている。詳細な説明は省略するが、洗浄機構35は、例えば洗浄槽内で洗浄液によりプランジャポンプ10を洗浄することで前の検体と後の検体との間の汚染(つまりキャリーオーバ乃至コンタミネーション)等を防止する。また、分析機構としての分析部36は、検体31aを検査項目別に測定するものであり、所謂生化学分析等の分析を行うようになっている。
【0033】
ここで、制御回路28には、攪拌機構34,洗浄機構35を夫々駆動する駆動回路37,38が接続されると共に分析部36等が接続されている。制御回路28のROMには、検体31aと試薬32aを分注し反応させて検体31aを分析する一連の検査プログラム等が記憶されている。制御回路28は、当該検査プログラムに従って移動装置11、ステッピングモータ17、攪拌機構34、洗浄機構35、分析部36等を制御する。
【0034】
続いて、本実施例の検体検査装置の作用を、図8も参照しながら説明する。図8のフローチャートは、検体検査において制御回路28が実行する処理手順を示している。
即ち、上記のように試験管たる検体容器31(図7では模式的に図示)には採取された検体31aが収容されており、プランジャポンプ10は、検体容器31の上方へ移動して、ノズル12が検体容器31中の検体31aに浸るように下降する。この状態で、モータ17の正転により、直交変換機構18を介してピストン14が駆動されることで、検体容器31中の検体31aがノズル12からポンプ室13a内へ吸引される(ステップS11)。この場合、ピストン本体22が往路を移動することに伴い、隔壁部24の蛇腹部24aが折り畳まれるようにして収縮する。ポンプ室13a内に所定量の検体31aが吸引されモータ17が停止されると、プランジャポンプ10が上昇し、反応容器33の上方へ移動した後、下降する。そして、モータ17の逆転により、直交変換機構18を介してピストン14が駆動され、ポンプ室13a内の検体31aがノズル12から反応セルたる反応容器33に吐出される(ステップS12)。このとき、ピストン本体22が復路を移動することに伴い蛇腹部24aが伸長する。
【0035】
次いで、プランジャポンプ10は洗浄機構35へ移動し、その洗浄槽において洗浄液によりポンプ室13a及びノズル12が洗浄される(ステップS13)。その後、プランジャポンプ10は、試験管たる試薬容器32の上方へ移動して、ノズル12が試薬容器32中の試薬32aに浸るように下降する。この状態で、モータ17の正転により、直交変換機構18を介してピストン14が駆動されることで、試薬容器32中の試薬32aがノズル12からポンプ室13a内へ吸引される(ステップS14)。この場合、上記と同様にピストン本体22が往路を移動することに伴い、隔壁部24の蛇腹部24aが折り畳まれるようにして収縮する。
【0036】
ポンプ室13a内に所定量の試薬32aが吸引されモータ17が停止されると、プランジャポンプ10が上昇し、反応容器33の上方へ移動した後、下降する。そして、モータ17の逆転により、直交変換機構18を介してピストン14が駆動されることで、反応容器33中の検体31aに試薬32aが添加される(ステップS15)。このとき、上記と同様にピストン本体22が復路を移動することに伴い蛇腹部24aが伸長する。反応容器33内の検体31aと試薬32aは、攪拌機構34により攪拌され混合することで反応する(ステップS16)。ここで、試薬32aと反応させた検体31aは、分析部36において例えば生化学分析等の分析が行われる(ステップS17)。
【0037】
他方、プランジャポンプ10は、ステップS15で反応容器33へ試薬32aを吐出した後、ステップS18において、洗浄機構35によりポンプ室13a及びノズル12が洗浄され、ステップS11に戻る。本実施例の検体検査装置は、上記ステップS11からステップS18までの一連の動作を1サイクルとし、複数の検体31a(図6では1つのみ図示)について分注及び検査の連続的な実行が可能に構成されている。尚、コンタミネーションの問題が生じない場合には、ノズル12から検体31a及び試薬32aの双方を連続的に吸引することが可能である。
【0038】
本実施例の検体検査装置によれば、ポンプヘッド13内でシール材の摩耗粉が検体31aや試薬32aに混入することがないので反応容器33へ吐出される検体31aや試薬32aを汚染する不具合がなく、又、隔壁部24によりこれら液体31a,32aの流出防止を図ることができるので測定精度や信頼性の高いサンプリングを実現できる。更には、隔壁部24の長寿命化を図ることができるので、検体検査装置全体のメンテナンス費用を抑制することができる。この他、本実施例によれば、隔壁部24を円筒蛇腹状に形成することにより、ピストン14のストロークひいては液体(検体31a及び試薬32a)の吸引量(吐出量)を充分に確保することができる等、第1実施例と同様の効果を奏する。
【0039】
本発明は、検体検査装置に限られず、プランジャポンプを用いて液体を移す分注装置全般に適用できるものである。本発明のピストン14は、その往復動によってポンプヘッド13内の容積を変化させるものあればよく、ピストンロッド21とピストン本体22を一つの部材で構成してもよいし、ピストンロッド21とピストン本体22を同一の径寸法に設定して全体が棒状をなすように構成してもよい。この棒状のピストンの場合、隔壁部24の一方の鍔部を、径方向内側に突出するように形成することで当該ピストンに嵌合させることが可能となる。このように、隔壁部24は、ポンプヘッド13内部側と駆動部15側とを仕切り且つピストンの往復動に沿って伸縮するものであればよく、その形状は上記のものに限定されるものではない。また、蛇腹部24aはピストンロッド21の周りに配設されるため、ピストンロッド21外周面とポンプヘッド13内周面と間の隙間を、蛇腹部24aのピッチや、ピストン14の移動量、液体の吸引量(吐出量)に応じて所望の大きさに設定してもよい。
【0040】
また、ハウジング16は、駆動部15の少なくとも一部を収容するものであればよく、直交変換機構18とモータ17の双方を収容するように構成してもよい。上記実施例では、ノズル12を、吸引口と吐出口を兼ねるように構成したが、ノズル12に代えてポンプヘッド13に吸引口と吐出口を別個に設けるようにしてもよい。即ち、これら吸引口および吐出口に夫々逆止弁を配設し、ピストン14の往復動によってポンプヘッド13内の容積を変化させることで、液体を吸引口から吸引すると共にこの吸引口とは別の吐出口から吐出するように構成してもよい。このほか、本発明は、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例を示すものであり、分注装置全体の模式図
【図2】プランジャポンプの概観斜視図
【図3】プランジャポンプを一部破断して示す概略的な断面図
【図4】ピストン本体の基端部側からの斜視図
【図5】隔壁部を拡大して示す断面図
【図6】(a)及び(b)は、吐出時及び吸引時におけるプランジャポンプの動作を説明するための図で、ポンプ室近傍部を拡大して示す断面図
【図7】本発明の第2実施例を示すものであり、検体検査装置全体の模式図
【図8】検体検査装置における検査プログラムのフローチャート
【符号の説明】
【0042】
図面中、1は第1容器(液体収容容器)、1aは第1液(液体)、2は第2容器(液体収容容器)、2aは第2液(液体)、3は混合容器(別容器)、10はプランジャポンプ、12はノズル、13はポンプヘッド、14はピストン、15は駆動部、16はハウジング、17はモータ、18は直交変換機構(伝達機構)、23bは隔壁用嵌合部(嵌合部)、24は隔壁部、24bは一方の鍔部、24cは他方の鍔部、31は検体容器(液体収容容器)、31aは検体(液体)、32は試薬容器(液体収容容器)、32aは試薬(液体)、33は反応容器(別容器)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプヘッドと、
前記ポンプヘッド内に往復動自在に挿入され、前記往復動によって前記ポンプヘッド内の容積を変化させることにより、前記ポンプヘッド内への流体の吸引と前記ポンプヘッド外への流体の吐出を行うピストンと、
前記ピストンを往復動作させるための駆動部と、
前記ピストンと前記ポンプヘッドとの間に掛け渡されるように設けられ、前記ポンプヘッド内部側と前記駆動部側とを仕切り且つ前記ピストンの往復動に沿って伸縮する隔壁部とを備えたことを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
前記隔壁部は、可撓性材料からなり、前記ピストンの移動により折り畳まれる円筒蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
前記隔壁部の両端部に夫々鍔部を設け、これら鍔部のうち一方の鍔部を前記ピストンに固定し、他方の鍔部を前記ポンプヘッドの前記駆動部側の端部に固定したことを特徴とする請求項1または2記載のプランジャポンプ。
【請求項4】
前記駆動部の少なくとも一部を収容し前記ポンプヘッドに連なるハウジングを備え、
前記一方の鍔部を、前記ピストンに設けられた嵌合部に嵌合させた状態でかしめにより固定し、
前記他方の鍔部を、前記ポンプヘッドと前記ハウジングとの間に挟み込むようにして固定したことを特徴とする請求項3記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
前記駆動部を、モータとこのモータの回転運動を前記ピストンの往復運動に変換して伝達する伝達機構とから構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のプランジャポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のプランジャポンプを用いて液体収容容器から別容器に液体を移す分注装置であって、
前記プランジャポンプは、前記ポンプヘッドにノズルを有し、前記駆動部により前記ピストンを駆動して、前記ノズルから前記ポンプヘッド内へ前記液体収容容器の液体を吸引し、当該ノズルから前記別容器へ液体を吐出するように構成されていることを特徴とする分注装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載のプランジャポンプを用いて検体と試薬とを移し、前記検体と試薬とを反応させて前記検体を分析する検体検査装置であって、
前記検体及び試薬は、複数の液体収容容器に各別に収容され、
前記プランジャポンプは、前記ポンプヘッドにノズルを有し、前記駆動部により前記ピストンを駆動して、前記ノズルから前記ポンプヘッド内へ前記液体収容容器の検体あるいは試薬を吸引し、前記ノズルから反応容器へその吸引した検体あるいは試薬を吐出するように構成されていることを特徴とする検体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−275581(P2009−275581A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127178(P2008−127178)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】