説明

プランター

【課題】 保水剤の植物を生育するための保水能力と給水能力を十分発揮できるプランターおよび該プランターを用いて植物を生育させる方法を提供することである。
【解決手段】 植物を生育するプランターであって、植物の根が通過できる複数の孔を有しプランターの内部を上下に分割する分離板が固定して設けられ、且つプランターの側面には分離板の高さの位置に排水穴が設けられており、さらに該分離板の高さの位置に設けられた排水穴よりも下にはさらに排水穴が設けられていないプランター;ならびに該プランターにおいて、分離板の下側に保水剤を入れ、上側に土壌を入れた後、植物を該土壌に植えて植物を生育する、プランターで植物を生育する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランターに関する。さらに詳しくは特定の構造のプランターおよび該プランターを用いて植物を育生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプランターで植物を生育させる場合に、植物の生育を助長するために、土壌の保水性を向上させる保水剤が広く利用されている。ピートモスなどの天然素材(たとえば、特許文献1)、粘土熱処理粒状物などの無機物(たとえば、特許文献2)、吸水性樹脂粒子(たとえば、特許文献3、4、5)などの保水剤を土壌に混ぜて、また植物の根の周辺に埋め込んで、植物の根の周辺の土壌の保水性を向上させて、植物の生育を助長するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−160161号公報
【特許文献2】特開2007−161745号公報
【特許文献3】特開2003−281915号公報
【特許文献4】特開平6−88074号公報
【特許文献6】特願2008−185932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の保水剤では、土壌の保水性をある程度向上させることができるものの、土壌に圧迫されて保水剤が自ら保有する保水・給水能力を十分に発揮できない場合があった。また土壌と混ぜると保水剤が偏在したりして効果にもばらつきがあるため、多くの保水剤を用いたり且つ十分混合することが必要であり、コスト面、効率面に問題があった。
【0005】
本発明の目的は、保水剤の植物を生育するための保水能力と給水能力を十分発揮できるプランターおよび該プランターを用いて植物を生育させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、特定の構造のプランターを用いれば保水剤の保水および給水能力を十分発揮でき、散水が不十分であっても植物が生き生きと生育することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、植物を生育するプランターであって、植物の根が通過できる複数の孔を有しプランターの内部を上下に分割する分離板が固定して設けられ、且つプランターの側面には分離板の高さの位置に排水穴が設けられてなるプランターである。
さらに本発明のプランターは、前記分離板の高さの位置に設けられた排水穴よりも下にはさらに排水穴が設けられていないことを特徴とする。
また、本発明は上記プランターの分離板の下側に保水剤を入れ、上側に土壌を入れた後、植物を該土壌に植えて植物を生育する、プランターで植物を生育する方法である。
さらに本発明の方法は、前記保水剤が下記吸水性樹脂であることを特徴とする。
吸水性樹脂: 吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍である
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プランターの内部を上下に分割する分離板が固定して設けられるので、分離板の下側に保水剤を入れ上側に土壌を入れれば、上にある土壌が保水剤を圧迫しないので、保水剤が有する飽和吸水量まで吸水ができ、保水能力が十分に発揮できる。また、分離板には植物の根が通り抜ける孔を有するので、植物がその孔を通り分離板の下側の保水剤にまで根をのばして吸水するので、散水が不十分なときでも植物が十分に吸水することができる。すなわち、保水剤が有する給水能力を十分発揮できる。また、プランターの側面に分離板の高さの位置に排水穴が設けられているので、この排水穴よりも上には水が溜まることがなく、土壌が水びたしになることがない。
【0009】
本発明によれば、前記分離板の高さの位置に設けられた排水穴よりも下にはさらに排水穴が設けられていないので、排水穴より下には常に水があり、分離板の下に入れた保水剤は場所に関係がなく満遍なく保水することができる。その結果プランターのどの位置に植えてある植物でもその根が吸水することができる。また、排水穴よりも下には水があっても保水剤があるため、植物の根が水枯れしにくい。
【0010】
本発明の方法によれば、分離板の下側に保水剤、上側に土壌を入れて散水すれば、土壌が保水剤を圧迫しないので、保水剤の保水能力が十分に発揮され、散水が不十分のときでも植物の根が分離板の孔を通り抜け、水が豊富に蓄えられた保水剤の水を吸水するので、植物を生き生きと生育させることができる。しかも下側には保水剤があるので植物は水枯れしない。
【0011】
さらに本発明の方法によれば、保水剤が下記の吸水性樹脂であるので、分離板の下には吸水性樹脂が土壌に圧迫されず飽和吸水量まで吸水することができ、その結果植物が十分に吸水することができる。従来は該吸水性樹脂は土壌の圧力のために土壌に該吸水性樹脂の粉末を混ぜても保水能力が十分に発揮できない場合があり、植物への給水が常に十分とはいかなかった。本発明の方法によれば、十分に保水および給水能力を発揮でき、散水が不十分のときでも植物を生き生きと生育させることができる。また、水だけだと根がある植物は水枯れする場合があるが、保水剤があると植物の根が水枯れしにくく、該吸水性樹脂はさらに従来の保水剤よりも植物の根を水枯れさせない。
吸水性樹脂: 吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍である
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における実施の一形態のプランターである。(a)は斜視図を示し、(b)はX−Y軸の切断面における断面図を示す。
【図2】本発明のプランターにおいて植物を植えたときの概念的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき、図を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0014】
図1は本発明の一実施形態におけるプランターであり、(a)はプランターの斜視図を示し、(b)は(a)におけるX−Y軸の方向の切断面における断面図を示す。
プランター1には上下に分離する分離板2がプランター1の中間より下に固定して設けられている。ここで「固定」とは、分離板2の上側に土壌を入れたときに土壌が下側の保水剤を圧迫しないようにプランターに保持されていることをいう。プランターに付着して一部が動かないようにしてもよいし、取り外し可能に設けられてもよい。分離板の下側に保水剤を入れるので、開口部を有するように少なくとも一部は可動であるのが好ましい。たとえば、プランター1を固定する位置に凹凸を設けて、またはプランター1の両方の側面を跨ぐ棒を設けて、分離板2が落ちないようにしてもよいし、分離板2の一つの側面をプランターに可動的に付けてもよいし、分離板2が一定の高さになるように分離板2に脚を設けてもよく、固定する方法は特に限定されない。
【0015】
分離板2には植物の根が通過する複数の孔3が設けられている。図1においては、メッシュ状の分離板2が設けられている。孔3の大きさは植物の根が通ればよいが、土壌が分離板2の下に落ちにくいのが好ましい。孔が小さすぎれば土壌が落ちにくいが植物の根が通りにくい。孔3が大きすぎれば根はよく通るが、土壌が下に落ちやすくなる。土壌が少々落ちるぐらいであれば保水剤を圧迫することはないが、土壌が下に多く落ちれば保水剤を圧迫することになるので、そのバランスで構成するのがよい。分離板2の上の土壌の粒子との関係も考慮して孔の大きさが決められるのがより好ましい。孔3の形状は丸型、角型など特に限定はない。孔3の数も限定はないが、数が多い程好ましく、分離板の全面に設けられるのがより好ましい。分離板2はメッシュ状のように全面に孔があるものが生産上も特に好ましい。分離板2の材質は、プラスチック、金属、セラミック。陶器、木などが用いられ、特に限定されない。
分離板の厚さも特に限定はなく、上の土壌を支え、下のゲル層と分離できるものならよく、たとえば、通常の板などの他に多孔質シート(フィルムを含む)であってもよい。また、分離板は一枚であっても二枚以上であってもよい。たとえば、下の板を荒い目の格子状にしておいてその上に多孔質シートをおけば根や土壌の粒子(砂粒など)が目をつぶすのを防止することができる。
【0016】
また、プランター1には分離板2の高さの位置に排水穴4が設けられている。分離板2の高さの位置は分離板2と略同じ高さの位置を含み、プランター1の大きさ、高さの位置によって高さの位置の範囲が異なる。通常の市販のプランターでは、たとえば、分離板2の位置より±5cm以内の位置が好ましく、±2cm以内の位置がより好ましく、±1cm以内の位置が特に好ましい。図1では排水穴4は分離板2よりやや下目に設けられている。排水穴4より水が排水されるので、それより上の土壌には余分の水が溜まることがない。すなわち、土壌が保有できる水分より多くの水を保有することがない。分離板2の下側には水が溜まり保水剤が自ら有する飽和吸水量まで十分に吸水することができる。分離板2の下に保水剤がなければ根が水枯れしてしまうが、保水剤があるので水枯れしない。散水が不十分で土壌中の水分が少なくなっても、植物の根は分離板2の孔3を通過して伸び、分離板2の下の保水剤中の水分を十分吸収することができる。
【0017】
排水穴4の形状は限定されず、土壌中の過剰の水が排出できればよい。排水穴4の数も限定はなく、プランター1の側面の全周にわたってもうけられてもよい。また、排水穴4から土壌がでないようにするためには穴の大きさや高さを考慮するのがよい。分離板2の位置と同じまたは下の位置であれば土壌は出にくいので好ましい。
【0018】
また、排水穴4よりも下にはさらに排水穴がないのが好ましい。図1(b)のプランターの底には排水穴がない。下に排水穴がないとプランター1の底から排水穴4の位置まで水が溜まり、分離板2より下側にある保水剤の保水量にはばらつきがなくなり、プランター中の植物の位置に関係なく分離板よりも上側の植物の根に満遍なく吸水させることができる。
【0019】
プランターはその生産時において、上記のような構成に形成してもよく、市販されているプランターの側面に排水穴を開けてその穴の位置に分離板を固定させるように形成してもよい。また、二つのプランターを用いて構成することもできる。たとえば、一つは市販されているプランターの底に排水穴があり、その上にメッシュ状の板があるプランターを用い、別のプランターとして排水穴が全くないものを用いる。前者のプランターを後者のプランターに嵌め込み、内側のプランターのメッシュ状の板の高さにおいて、外側のプランターの側面に排水穴を設ければよい。このようにすれば二つのプランターにより本発明の構成のプランターができる。
【0020】
分離板の上側にある土壌は、通常プランターで花類や野菜などの植物に用いられる土壌であれば限定はない。また、この土壌には上記の保水剤、特に本発明において上記の好適に用いられる吸水性樹脂を分散してもよい。このようにすれば、下層のゲル層に届かない植物の根の吸水を補充できるので好ましい。
【0021】
本発明に用いる保水剤は、限定はなく従来公知の保水剤が使用できる。保水剤としては、たとえば、パーライト、バーミキュライト、珪藻土、バーク、ゼオライト、ロックウール、軽石などの多孔質鉱物、モンモリロナイト系の粘土系鉱物;ピートモス、クリプトモス、鋸維、籾殻、バガス、ヤシ殻、間伐材、水苔粉末、パルプ繊維、種子リンターなどの植物質天然有機物;古紙成分;ポリエチレンオキサイド、吸水性樹脂などが挙げられる。これらの内で好ましいものは少量で保水が可能な吸水性樹脂であり、より好ましいものは膨潤性吸水性樹脂であり、特に好ましいものは、下記吸水性樹脂である。
吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍である
【0022】
電気伝導率が2.0mS/cmを超えると植物の根が吸水することができず、枯れてしまう。好ましくは、0〜1.8mS/cmであり、より好ましくは0〜1.6mS/cmである。この吸水性樹脂は、植物の根が吸水することを阻害しないので、植物を生育することができる。上記数値範囲は、特開2007−319029号公報の記載に準じている。
【0023】
電気伝導率は下記の方法で測定した。
〔電気伝導率の測定法〕
25℃のイオン交換水100重量部に吸水性樹脂1重量部を入れ、25℃で8時間、恒温槽中で放置して、前記吸水性樹脂を膨潤させ吸水体を作成する。吸水体の温度が25℃であることを温度計で確認し、比伝導度測定装置の電極を吸水体に差し込み値を読み取る。なお、吸水性樹脂の吸水倍率が小さい場合には、吸水性樹脂の吸水体とイオン交換水が分離して二相になるので、撹拌して均一にした後、比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。撹拌・均一化してもすぐに二相に再び分離する場合は、撹拌下に比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。
【0024】
吸水性樹脂の25℃イオン交換水に対する吸水倍率は、通常80〜1000倍、好ましくは100〜1000倍であり、より好ましくは120〜1000倍である。吸水倍率が80倍未満であると膨潤度が低く保水能力が低くなり、多量に使用する必要が生じ、コストアップとなるし、水の補給が頻繁に必要になる。吸水倍率は大きい方が少量の使用で済むので好ましいが、吸水倍率が1000倍を超える吸水性樹脂は、その製造工程において重合後の含水ゲルの密着性が高くなりすぎ、製造装置内の取り扱いやその後の乾燥が非常に困難であり、製造上の問題点があり現実的でない。
吸水倍率は下記の方法で測定した。
【0025】
[イオン交換水中の吸水倍率の測定法]
ナイロン製の網袋(250メッシュ)に吸水性樹脂の試料L(g)を入れ、これを袋ごと過剰のイオン交換水に浸した。浸漬60分後に袋ごと空中に引き上げ、静置して15分間水切りした後、質量M(g)を測定して下式より吸水倍率を求めた。
なお、網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の質量N(g)をブランクとして差し引いた。
イオン交換水の吸水倍率=(M−N)/L
【0026】
本発明の吸水性樹脂としては、ノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)単独からなる重合体(X)、アニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(C)単独からなる重合体(Y)、およびノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)とアニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)を構成単位とする共重合体(Z)が挙げられる。(X)、(Y)、(Z)のみで使用することも可能であり、(X)、(Y)、(Z)を2種類以上混合して使用することも可能である。これらの内、(Y)または(Z)のアニオン性の重合体からなる吸水性樹脂が特に植物の根が水を吸収するのを阻害しないので、植物が枯れない。
【0027】
本発明において、重合体(X)の構成単位であるノニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(A)としては、水酸基含有ラジカル重合性水溶性単量体[アルキル基の炭素数が2〜3個のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートなど]、アミド基含有ラジカル重合性水溶性単量体[(メタ)アクリルアミドな、N−ビニルアセトアミドなど]、3級アミノ基含有ラジカル重合性水溶性単量体[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど]、エポキシ基含有ラジカル重合性水溶性単量体[グリシジル(メタ)アクリレートなど]、およびその他ラジカル重合性水溶性単量体(4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなど)が挙げられる。これらの内、好ましいものとしては、重合性が良好である(メタ)アクリルアミド及び/又はアルキル基の炭素数が2〜3のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートである。
【0028】
本発明に使用するアニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するラジカル重合性水溶性単量体[(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸など]及び/又はそれらを加水分解することにより水溶性となる単量体(酢酸ビニルなど);またはその塩が挙げられる。特に好ましくは(メタ)アクリル酸およびその塩である。
【0029】
塩としては、上記カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を含有する水溶性単量体の塩[たとえば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アミン塩もしくはアンモニウム塩など]などが挙げられる。これらの内、好ましいものとしては、重合性が良好である(メタ)アクリル酸(塩)を挙げることができる。
【0030】
本発明において、アニオン性水溶性エチレン性不飽和単量体(B)が(メタ)アクリル酸(塩)であるとき、カルボキシル基の中和時に必要なイオンとして、また、重合体(Y)(Z)中のカルボキシル基の中和時に必要なイオンとしては、アルカリ金属イオン、周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオン及びアンモニウムイオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、Na+、K+が好ましく、周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオンとしては、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、B3+、Al3+等が好ましい。
【0031】
ここでアルカリ金属イオン及びアンモニウムイオンの合計による中和度が10当量%未満では、保水性を向上させる能力が低くなり、多量に使用する必要が生じ、50当量%を超えると電気伝導率が2.0mS/cmを超えるため植物の根の生長を阻害する。周期律表第2族又は13族に属する多価金属イオンによる中和度は、好ましくは、0〜50当量%であり、さらに好ましくは、10〜40当量%である。ここで、第2族又は13族に属する多価金属イオンによる中和度が50当量%を超えると吸水性樹脂の架橋度が高くなりすぎるため製造しにくくなる。
【0032】
本発明において、該吸水性樹脂は実質的にノニオン性、アニオン性であり、この性質を阻害しない範囲内でカチオン性重合性単量体(C)(アクリル酸トリメチルアンモニウムエチル・クロライドなど)や他のモノエチレン性不飽和単量体(D)(たとえば、スチレン、アクリル酸n−ブチルなど)を、たとえば、(A)と(B)の合計質量に対して10モル%を超えない範囲で共重合してもよい。
【0033】
本発明において、吸水前の状態での、吸水性樹脂粒子の平均粒径は、粒状物であれば、特に限定するものではないが、好ましくは20μm〜5mm、より好ましくは100μm〜3.5mm程度である。平均粒径が20μm以上であると、吸水時にママコ(継粉)を形成しにくくなるため保水能力の向上が阻害されない。一方、平均粒径が5mm以下であると、吸水速度が速くなり、粒子中心部まで水が浸透しやすくなるためゲル層の保水能力、根への給水能力が向上する。吸水前の乾燥状態での、吸水性樹脂の平均粒径は、「レーザー回折散乱法」(たとえば、具体的には、日機装社製、商品名:マイクロトラックFRA粒度分析計を使用)や篩い振とう法で測定できる。
【0034】
本発明における吸水性樹脂の製造方法は、上記の重合性単量体を重合する公知の吸水性樹脂の製造法で製造できる。重合体(X)、(Y)、(Z)については、たとえば、特開平8−266895公報、特開平10−191777公報、特開2007−319029号公報に記載されている方法が適用できる。
【0035】
本発明における吸水性樹脂は吸水してゲルとなり、分離板の下側の空間をゲルで満たすことができる。分離板の下側には使用時保水剤で満たすのが、根が水枯れしないので好ましい。分離板の下側にある空間の内分離板に近い側にのみ保水剤を入れるように空間を作ってそこにのみ保水剤を入れてもよい。たとえば、図2に示すように内側のプランターの分離板の下側に保水剤を入れ、外側のプランターと内側のプランターで形成される空間には保水剤を入れなくてもよい。
【0036】
ゲルにおける吸水性樹脂と水の割合は、吸水性樹脂の吸水倍率、植物の種類により異なるが、重量比で好ましくは1:10〜1:1000であり、より好ましくは1:20〜1:500である。
好ましいのは粉末を吸水させたゲルであるが、ゲルは吸水シートのゲルであってもよく、吸水シートのシートが破れ中にある吸水性樹脂が出て膨潤するのが好ましい。
ゲルには、肥料、植物生長ホルモン、抗菌剤、微量要素、防カビ剤などの当分野で公知の成分を含有させてもよい。
【0037】
上記のように構成されたプランターにおいて、まずプランターの底に保水剤を入れる。分離板の高さの位置を考慮して、膨潤しない保水剤の場合は分離板より下側の空間を保水剤で満たすのが好ましい。こうすることによって根の水枯れを防止することができる。また、保水剤が膨潤性吸水性樹脂などであって膨潤する場合、膨潤して体積が増えても分離板を押し上げることのないように考慮して入れられる。先に水を入れて保水させてもよいし、水を入れなくても後で散水によって保水剤に吸水させてもよい。上述したように分離板があるので、土壌が保水剤を圧迫せず保水剤の有する飽和吸水量まで吸水して保水することができる。
そして、その上に土壌をいれ植物を植えるか種を播く。本発明のプランターは植物の根が大きくなってからより効果を奏しやすい。根が分離板の近くにあるのが、根が分離板の孔を通過して吸水することができる。図2に本発明のプランターにおいて植物を植えたときの概念的断面図を示す。土壌5に植えてある植物6の根7が分離板2の孔3を通過して保水剤8の水9を吸水していることがわかる。
【実施例】
【0038】
1Lのビーカーに、アクリル酸230.4g(3.2mol)、架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル1.0g、及び水636gを添加し10℃に冷却した。この溶液を、断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素を0.1ppm(オリエント電気社製、商品名溶存酸素計
DO220PBで測定)とした後、重合開始剤として、35%の過酸化水素水0.023g、L−アスコルビン酸0.00575g、および過硫酸カリウム0.23gを添加した。約30分後、重合反応が開始し、約2時間後に最高温度72℃に到達した。更に、この温度で5時間熟成させて重合を完結させた。得られた重合体(重合体(Y)に該当)は、含水ゲル状を有していた。この重合体をニーダー(入江商会社製、商品名BENCH
KNEADER PNV−1;回転数70rpm)で約2時間撹拌して細断し、更に50%の水酸化カルシウム分散液61.6g、48%の水酸化ナトリウム水溶液64.0gを配合し、ニーダーで約2時間撹拌して混合した。その後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて110℃で加熱乾燥し、粉砕して吸水倍率300g/g、電気伝導率1.0mS/cm、平均粒径370μm(日機装社製、商品名:マイクロトラックFRA粒度分析計で測定)の吸水性樹脂の粉末(1)を得た。
【0039】
(実施例1)
上側62cm×17cm、下側54cm×13cm、高さ22cmの逆台形状のプランターにおいて、底から7cmの位置のところに厚みが1cmのメッシュ状のポリプロピレン製の四角形状の分離板を置いた。分離板の高さの位置に直径1cmの穴をプランターの側面の長辺に4個、短辺に2個均等間隔で排水穴を設けた。この排水穴より下には排水穴を設けなかった。このようにして本発明のプランターAを作製した。
【0040】
(実施例2)
プランターAの分離板の下に保水剤として籾殻を一杯に入れて、水を排水穴から出るまで入れた。分離板の上に土壌を満たし、植物が植えられる状態とした。
【0041】
(実施例3)
実施例2において、籾殻に替えて製造例1で製造した吸水性樹脂の粉末(1)250gを用いる以外は実施例2と同様にして土壌の入ったプランターとした。
【0042】
(比較例1)
プランターAと同じ大きさ、形状の市販のプランターに土壌を満たし、植物が植えられる状態とした。
【0043】
(比較例2)
比較例1において、製造例1で製造した吸水性樹脂の粉末(1)100gを土壌に混合して、植物が植えられる状態とした。
【0044】
(比較例3)
実施例2において、保水剤を入れずに水のみを満たし、植物が植えられる状態とした。
【0045】
土壌の入った上記のプランターに、植物としてベコニアを分離板の所まで穴を堀り植えて土を被せた。合計各5本植えた。植物に十分散水した後、屋外において散水せずに1ケ月間放置した。その間3回ほど雨が降った。1ケ月後の植物の生育状況は表1の通りであった。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明の吸水シートを用いる方法は、植物を育生するための保水と給水能力を備え、混合するなどの面倒な作業をすることなく容易に土壌の保水性を向上させる方法であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のプランターおよび該プランターを用いて植物を生育させる方法は野菜や花きなどの植物を育成するのに好適である。
【符号の説明】
【0049】
1 プランター
2 分離板
3 孔
4 排水穴
5 土壌
6 植物
7 根
8 保水剤
9 水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を生育するプランターであって、植物の根が通過できる複数の孔を有しプランターの内部を上下に分割する分離板が固定して設けられ、且つプランターの側面には分離板の高さの位置に排水穴が設けられてなるプランター。
【請求項2】
前記分離板の高さの位置に設けられた排水穴よりも下にはさらに排水穴が設けられていないことを特徴とする請求項1記載のプランター。
【請求項3】
請求項1または2記載のプランターにおいて、分離板の下側に保水剤を入れ、上側に土壌を入れた後、植物を該土壌に植えて植物を生育する、プランターで植物を生育する方法。
【請求項4】
前記保水剤が下記吸水性樹脂であることを特徴とする請求項3記載のプランターで植物を生育する方法。
吸水性樹脂: 吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmであり、且つ25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍である


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78365(P2011−78365A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234211(P2009−234211)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(507277103)株式会社アイ・イー・ジェー (32)
【Fターム(参考)】