説明

プラント保守情報配信システム

【課題】複数プラントの機器の保守情報を一元管理し、各プラントに保守情報を配信する。
【解決手段】プラント1毎に各プラント機器のプロセス値および運転履歴を含むプラント運転情報を収集して格納したプラント運転情報データベース11と、前記各プラント毎にプラント機器の製品寿命を含む機器情報を格納した機器情報データベース12と、前記収集したプラント運転情報と機器情報をもとに、プラント機器毎にプラント機器の交換時期を含む保守情報を生成し、生成した保守情報を前記各プラントに配信する資源管理装置10を備え、前記資源管理装置は、複数プラントに含まれるプラント機器の交換部品を含む保守情報を一元管理し、各プラントに前記保守情報を配信する機能を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント保守情報配信システムに係り、特に複数プラントの機器の保守情報を一元管理し、各プラントに保守情報を配信する機能を備えたプラント保守情報配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントを構成する設備の故障による事故を予防し、あるいはプラントの稼働率を維持し、設備の信頼性を高める方法として、人による定期的な機器の点検作業が行われている。ここでは、異常や故障があった場合あるいは耐久年数が到来する場合に、対象設備の修理や交換を実施している。この方法は、プラントの運転員以外の人員あるいは運転員が上記点検作業を担う必要があり、設備の多いプラントの場合は特に点検作業の負担が大きい。
【0003】
また、機器の異常や故障は、点検員の判断によって発見する為、高度な機器の診断技術が必要であり、人手によらない機器の診断方法が望まれる。
【0004】
人手によらない機器の診断方法としては、プラント設備の動作データ、稼動情報、および保守管理情報などをもとに、機器の異常や故障の発生時期を予測し、定期点検推奨時期を出力する予防保全支援装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この予防保全支援装置では、プラントを構成するプラント設備のプロセスデータを時系列的に整理して記憶するプロセスデータ記憶部と、プラント設備の稼働時間または動作回数を積算した稼動データを記憶する稼動データ記憶部と、プロセスデータに基づき、プラント設備の異常を判定する為のプロセスデータの傾向値またはプロセスデータ間の相関値を演算するプロセスデータ傾向値・相関値演算部と、このプロセスデータ傾向値・相関値演算部で演算された傾向値又は相関値と稼動データによりプラント設備の一定期間後のプロセスデータ予測値を演算するプロセスデータ予測演算部と、プロセスデータ予測演算部が演算した一定期間後のプロセスデータ予測値を予防保全情報として表示する表示部とを備えている。
【0006】
この予防保全支援装置では、プラント設備の予防保全の方策を人の判断に頼ることなく実施することが可能であり、予め交換部品の準備や代替運転方法の検討ができるため、プラント設備を安定して運用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−157608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術においては、プラント単位での予防保全を支援するにとどまっており、プラントが複数ある場合の予防保全情報の一元管理方法については記述されていない。このため、あるプラントの機器が故障した場合に、その情報を元にして他のプラントが有する同様の機器に関して、故障を未然に防ぐ為の情報を配信したり、交換時期を管理することは考慮されていない。
【0009】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、複数のプラントや工場にある設備の運転情報をネットワークを通じて収集して、各プラント設備の予防保全に関する情報を一元管理することにより、プラント間で故障情報や交換時期の情報を共有利用することのできるプラント保守情報配信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0011】
プラント毎に各プラント機器のプロセス値および運転履歴を含むプラント運転情報を収集して格納したプラント運転情報データベースと、前記各プラント毎にプラント機器の製品寿命を含む機器情報を格納した機器情報データベースと、前記収集したプラント運転情報と機器情報をもとに、プラント機器毎にプラント機器の交換時期を含む保守情報を生成し、生成した保守情報を前記各プラントに配信する資源管理装置を備え、前記資源管理装置は、複数プラントに含まれるプラント機器の交換部品を含む保守情報を一元管理し、各プラントに前記保守情報を配信する機能を備えた。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、複数のプラントや工場にある設備の運転情報をネットワークを通じて収集して、各プラント設備の予防保全に関する情報を一元管理するので、プラント間で故障情報や交換時期を共有利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態にかかるプラント保守情報配信システムを説明する図である。
【図2】複数のプラント、資源管理装置、プラント運転情報データベースおよび機器情報データベース間における情報伝達の例を示す図である。
【図3】プラント運転情報データベースの例を示す図である。
【図4】機器情報データベースの例を示す図である。
【図5】保守情報の生成を説明する図である。
【図6】発注判断処理を説明する図である。
【図7】プラントを構成する機器に故障が発生した場合の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかるプラント保守情報配信システムを説明する図である。図1に示すように、保守対象としてのプラントが複数あり、各プラントの運転情報収集装置はネットワークを介して資源管理装置10に接続されている。また、資源管理装置10は、プラント運転情報データベース11および機器情報データベース12を備えている。
【0015】
図2は、複数のプラント1,13,14、資源管理装置10、プラント運転情報データベース11および機器情報データベース12間における情報伝達の例を示す図である。
【0016】
前記各プラントは、ポンプやバルブ、各種計器装備で構成されるプラント設備2を備える。これらの設備は信号の送受信に使用される電圧あるいは電流への変換を行うP(プロセス)I/0装置を介して監視制御装置4によって監視制御される。監視制御装置4は、プロセスの進行に伴って特定のバルブの開閉あるいはポンプの起動停止等を指示し、流量計、圧力計、温度計などの各種計測機器が計測するプロセス値を監視する。
【0017】
各プラントにある運転情報収集装置5は、監視制御装置4のプラント設備に対する指示、およびプラントの運転状態やプロセス値を入力として取り込み、設備毎の運転情報を生成する。なお、運転情報はバルブの開閉回数、ポンプの起動停止回数、各計測機器の計測対象となる圧力、温度、流量、回転数および運転時間の積算値、停止時間の積算値などである。これらの運転情報は資源管理装置10を介してプラント運転情報データベース11に記録される。
【0018】
図3にプラント運転情報データベース11の例を示す。プラント運転情報データベース11は、プラントにある設備一覧(プラント構成設備表15)、プラント設備の運転情報(設備表16)、設備の構成部品(構成部品表17)、部品の型式(部品表18)、制御対象プロセス値の時系列変化の記録(制御対象プロセス値表19)、および機器毎の運転履歴(運転履歴表20)を保持しており、これらの情報は資源管理装置10より参照・更新される。
【0019】
資源管理装置10は、機器情報データベース12にある機器情報と、運転情報収集装置がネットワークを介して受信した運転情報を用いて、各プラント設備の交換、修理を実施する時期を決定し、決定した保守情報を各プラント1,13,14の運転情報収集装置5に配信する。
【0020】
図4は機器情報データベース12の例を示す図である。機器情報データベース12は、例えばプラントの機器製造メーカーによって提供された、機器および部品についての製品寿命、偶発故障率、製作納期、改廃有無、改廃日が記録されている。
【0021】
図5は保守情報の生成を説明する図である。まず、プラント運転情報データベース11内にある各機器の交換実施日時(前回)から、機器情報データベース12内に格納した製品寿命に至るまでの適切な時点に交換予定日(次回)を設定する(ステップS23)。次に、前記交換予定日(次回)から機器情報データベース12内に格納された製作納期を考慮した日時を発注予定日として設定する(ステップS24)。次に、各保守対象機器について前記発注予定日が到来したときに発注を行い、交換予定日に交換指示書を作成する(ステップS25〜29)。
【0022】
図6は、発注判断処理を説明する図である。発注判断処理では、他のプラントで発注された予備品の流用が可能な場合は、予備品を発注したプラントの運転情報収集装置に対して当該予備品の予約処理を行い、対象プラントでは発注を行わないこととする。
【0023】
一方、保守対象機器について交換予定日が到来した場合は交換指示を保守情報として対象プラントの運転情報収集装置5に送信する。
【0024】
各プラントにある運転情報収集装置5は、資源管理装置10より受信した保守情報を表示する表示部7を備え、また、当該プラントの設備に関する保守情報の検索と更新を行う保守情報処理部8を備える。
【0025】
各プラントでは、受信した保守情報をもとにプラントの予防保全を実施する。保守情報処理部8は、設備の交換などで保守情報の更新を行った場合は、更新した保守情報を資源管理装置10に送信し、資源管理装置はプラント運転情報データベースが保持する運転情報データベースおよび機器情報データベースが保持する機器情報を更新する。
【0026】
資源管理装置10は複数プラントの保守情報を管理する。このため、これらのプラントにある同一型式の設備についての、要発注件数の合計(X)および予備品数の合計(Y)を算出し(ステップS30,31)、要発注件数の合計(X)が予備品数の合計(Y)に満たない場合は、プラント間の予備品流用が可能であるため、予備品の使用予約を行う(ステップS33)。発注必要数が予備品の合計を超える場合に発注処理を行う(ステップS34)。これにより予備品の保持数削減、あるいは保持期間の短縮を図ることができる。
【0027】
図7は、プラントを構成する機器に故障が発生した場合の処理を説明する図である。機器の故障が発生した場合、他プラントにある同一型式の機器にも故障が発生する可能性がある。この故障を未然に防止するため、資源管理装置10は故障の発生した機器の故障情報をもとに保守情報を生成し、生成した保守情報を、同一型式の機器が設置されたプラントの運転情報収集装置5に対して送信する。
【0028】
図7において、資源管理装置10は、各プラントから運転情報を受信すると、プラント運転情報データベース11の内容を受信した情報で更新する(ステップS35)。
【0029】
このとき、故障した機器があった場合はその故障情報(制御対象プロセス値、運転履歴、累積稼働時間、起動停止回数、交換実施日)を取得する(ステップS36,37)。次に、故障機器と同一型式の機器を検索し(ステップS38)、同一型式の機器がある場合はその運転情報(累積稼働時間、起動停止回数、交換実施日)を取得する(ステップS39,40)。
【0030】
故障した機器と、同一型式の機器の累積稼動時間、起動停止回数、交換実施日を比較し(ステップS41,42,43)、同一型式の機器の(1)累積稼働時間が長い場合、または(2)起動停止回数が多い場合、または(3)交換実施日が古い場合にそれぞれ当該同一型式の機器に対する警告度合を上げる(ステップS42,44,46)。
【0031】
例えば、3つの場合のいずれにも当てはまる場合は緊急交換要、2つが当てはまる場合は次回停止時点検要、1つが当てはまる場合は監視強化要などの警告度合いを設定する。次いで、設定した警告度合と故障が発生したプラントにおけるプロセス値、運転履歴を保守情報として各プラントの運転情報収集装置5に配信する(ステップS47)。
【0032】
なお、保守情報を受信した運転情報収集装置5は、保守情報処理部8において当該プラントの保守情報を取得し、取得した保守情報を表示部に渡す。表示部では作業員に対する保守情報の表示を行う。
【0033】
実際に保守作業を実施したとき、保守員は保守実施に伴う更新情報(交換実施日、設備コード、予備数、部品コード)を資源管理装置10に送信する。資源管理装置10は更新情報を受け取ると、機器情報データベース12および、プラント運転情報データベース11が保持する機器情報をそれぞれ更新する。
【0034】
運転情報収集装置5は機器故障を含む保守情報を取得した場合、故障した機器の制御対象プロセス値と運転履歴を用いて、同一型式の機器を診断することができる。例えば、同一型式の機器の制御対象プロセス値と運転履歴が、故障の前のそれらとある割合で類似している場合はアラームを出すなどの手段をとることができる。
【0035】
これにより、1つの機器の故障をもとに、同一型式の機器を持つプラントに対して、自動的に保守情報を配信することができる。このため、予定された交換時期に関わらず臨機応変に予防保全を実施することが可能である。なお、保守情報を受信した運転情報収集装置5は、故障予測を行うプログラムを利用するなどして予防保全を実現することができる。また、配信する情報をもとに資源管理装置が全プラントの故障予測を行うことも可能である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、各プラント毎に設置する運転情報収集装置と資源管理装置とを公衆回線等のネットワークを介して接続し、各プラントにある設備の運転情報を上記資源管理装置に集めることで、全プラントの設備を一元管理することができる。また、プラント間で機器の故障情報や保守情報を共有することができる。
【0037】
また、資源管理装置は、機器の定格寿命や偶発故障率、製作納期などの機器情報を格納した機器情報データベースを保有し、機器情報データベースに格納した機器情報と、各プラントの運転情報とから各機器の購入時期、交換時期を一括して管理し、配信することができる。
【0038】
また、各プラントにある設備の運転情報を収集、処理することで、設備毎の実際の稼動頻度等を把握することができ、機器の点検や交換等の保守業務を実施するのに適する時期を配信することができる。
【0039】
また、各プラントにある設備の運転情報を資源管理装置に収集し一元管理することで、個別のプラントで発生した機器故障の情報をもとに、他プラントにある機器の予防保全を施することができる。
【符号の説明】
【0040】
1,13,14 プラント
2 プラント設備
3 PI/0装置
4 監視制御装置
5 運転情報収集装置
6 機器情報記録部
7 表示部
8 保守情報処理部
9 ネットワーク
10 資源管理装置
11 プラント運転情報データベース
12 機器情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント毎に各プラント機器のプロセス値および運転履歴を含むプラント運転情報を収集して格納したプラント運転情報データベースと、
前記各プラント毎にプラント機器の製品寿命を含む機器情報を格納した機器情報データベースと、
前記収集したプラント運転情報と機器情報をもとに、プラント機器毎にプラント機器の交換時期を含む保守情報を生成し、生成した保守情報を前記各プラントに配信する資源管理装置を備え、
前記資源管理装置は、複数プラントに含まれるプラント機器の交換部品を含む保守情報を一元管理し、各プラントに前記保守情報を配信する機能を備えたことを特徴とするプラント保守情報配信システム。
【請求項2】
請求項1記載のプラント保守情報配信システムにおいて、
前記資源管理装置は、プラント機器の故障の際に収集したプラント機器の情報をもとに、機器情報データベースを検索して、他のプラントが備える同一形式のプラント機器の故障発生条件を予測し、予測結果を前記他のプラントに配信することを特徴とするプラント保守情報配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−39651(P2011−39651A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184474(P2009−184474)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】