説明

プリズムユニット

【課題】接着剤がプリズムの座面上に付着しないようにしたプリズムユニットを提供する。
【解決手段】内部に少なくとも1つの反射面Ra、Rbを持つプリズム1と、プリズム1が載置されるプリズム台座2とを有するプリズムユニットであって、プリズム台座2は、プリズム1の反射面Ra、Rbに直交する面に対して当接する少なくとも3つの座面3a〜3dと、接着剤5によりプリズム1と接着される接着座面部4とを備え、座面3a〜3dと接着座面部4の間に溝部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型プロジェクタ装置等に使用するプリズムユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の色光用の反射型液晶パネルを用いて、色分解、色合成を光学系により行う反射型液晶プロジェクタにおいては、一般に偏光ビームスプリッタプリズムやダイクロイックプリズムを用いて、色分解や色合成の光学系を構成することが多い。このような光学系においては複数のプリズムを用いるため、それぞれの光が入射するプリズム面の相対位置関係は、各色光の画素の位置ずれやプリズムの倒れによるコントラストの劣化、液晶パネルへの照明光軸ずれなど直接画像品質に影響する。
【0003】
従って、それぞれのプリズムを貼り付けて一体のプリズムユニットを構成するためのプリズム台座は、それぞれのプリズムの相対位置変化を極力抑えることが可能な構造にする必要がある。通常は、プリズムはプリズム台座にUV(紫外線硬化型)接着剤等で接着固定され、本体に取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−131583号公報
【特許文献2】特開2005−208318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリズムの相対位置関係が高精度で保持でき、かつ高信頼性であるようなプリズムユニットを製造する上で、プリズムを接合するプリズム台座はガラス、金属、樹脂を用いてもよい。ガラス、金属、樹脂の何れにおいても、プリズムと異種の材料から成るプリズム台座にプリズムを接着する場合は、線膨張係数の違いによる弾性変形を考慮する必要があり、異種の材料を繋ぎ合わせる接着剤が相対的な移動を吸収する。
【0006】
プリズムとプリズム台座の接着状態によっては環境温度が変化すると、プリズムの姿勢の変化やプリズムの割れなどが起こる虞れがあり、プリズムの姿勢の変化が生じ相対位置関係が変わると、光学的性能を劣化させてしまう。偏光ビームスプリッタプリズムの場合には、偏光分離面と垂直な平面内に回転することにより光線の反射角度が2倍に変化する。また、プリズムの座面方向への倒れも、光軸が倒れるので光学的性能の劣化を引き起こすことになる。
【0007】
本発明の目的は、プリズム台座に設けた座面と接着座面部の間に溝部を設け、接着剤が座面上に付着しないようにしたプリズムユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリズムユニットは、内部に少なくとも1つの反射面を持つプリズムと、該プリズムが載置されるプリズム台座とを有するプリズムユニットであって、前記プリズム台座は、前記プリズムの前記反射面に直交する面に対して当接する少なくとも3つの座面と、接着剤により前記プリズムと接着される接着座面部とを備え、前記座面と前記接着座面部の間に溝部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプリズムユニットによれば、プリズム台座に設けた座面と接着座面部の間に溝部を設け、接着座面部からはみ出した接着剤が溝部に流れ、座面にかからないようにすることにより、座面が誤って強固な接着をされることがない。また、溝部をプリズム台座の溝部まで延長した形状とすれば、溝部に未硬化で残った余分な接着剤を吸引できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】参考例1のプリズムユニットの斜視図である。
【図2】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図3】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図4】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図5】接着座面部の形状と応力分布の説明図である。
【図6】接着座面部の形状と応力分布の説明図である。
【図7】プリズムユニットにおける接着座面部の形状と応力分布の説明図である。
【図8】参考例2のプリズムユニットの斜視図である。
【図9】平面図である。
【図10】側面図である。
【図11】一部拡大断面図である。
【図12】変形例の平面図である。
【図13】実施例1のプリズムユニットの斜視図である。
【図14】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図15】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図16】プリズムユニットの接合状態の平面図、断面図である。
【図17】変形例の平面図である。
【図18】実施例2の平面図である。
【図19】変形例の平面図である。
【図20】更に他の変形例の平面図である。
【図21】実施例3のプリズムユニットの斜視図である。
【図22】平面図である。
【図23】断面図である。
【図24】変形例の平面図である。
【図25】他の変形例の平面図である。
【図26】実施例4の分解光学系として機能するプリズムユニットの斜視図である。
【図27】分解斜視図である。
【図28】プリズムユニットを搭載した投射型画像表示装置の光学的平面図である。
【図29】光学的側面図である。
【図30】分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図示の実施例および参考例に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(参考例1)
図1はプリズムユニットの斜視図を示し、プリズム1がプリズム台座2上に接合されてプリズムユニットが形成されている。プリズム1は直角二等辺三角形を柱状にした4個のプリズム部材1a〜1dが接着され、正方形の柱状とされている。プリズム台座2上には、プリズム1の下面を載置するための少なくとも3個、参考例1においては4個の平行度が規定された円形の座面3a〜3dが設けられている。プリズム部材1aと1b、1cと1dとの接合面である反射面Ra及びプリズム部材1aと1d、1bと1cとの接合面である反射面Rbの両側に座面3が2個ずつ配置されている。
【0013】
プリズム1はこれらの座面3a〜3dと当接することにより位置決めされ、座面3a〜3dに囲まれ、離れた位置のプリズム台座2上の面上に接着座面部4が形成され、接着剤5を介してプリズム1が接合されている。座面3a〜3d上には接着剤は付着されず、温度差等でプリズム1が伸縮した場合に、座面3a〜3dとの界面で滑動する構造とされている。
【0014】
図1において、プリズム部材1aに入射した光束Laはプリズム1aを透過し内部の反射面Raで反射し、プリズム部材1dから光束Lbとして出射する。反射面Raの精度は反射面Raと直交する下面の接合面で規定されるので、プリズム台座2上にはプリズム1の接合面が精度良く貼られる必要がある。プリズム台座2に対してプリズム1が傾いたり、プリズム台座2に対してプリズム1が回転したりする場合は、光束Laが入射されても所望の方向に対して異なる方向に反射され、光学的性能が劣化する虞れがある。プリズム1は座面3a〜3dを用いると、プリズム台座2に対して精度良く接合できる。
【0015】
プリズム台座2の側面の2個所から固定部6a、6bが突出され、固定部6a、6bには孔部7a、7bが設けられている。プリズム台座2は基台8上に載置され、孔部7a、7bを通したビス9a、9bにより、固定部6a、6bが基台8に固定されている。
【0016】
図2はプリズム1とプリズム台座2が接合された状態を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。接着座面部4は座面3a〜3dとの間に隙間tが設けられており、接着座面部4の大きさに従って接着剤5の量を規定することができる。
【0017】
プリズム部材1aと1b、1cと1dとの接合面である反射面Ra、及びプリズム1aと1d、1bと1cとの接合面である反射面Rbの両側にそれぞれ距離Aをおいて座面3が2個ずつ配置されている。つまり、座面3a、3bと座面3c、3dが反射面Raに対し線対称に、更に座面3aと3dと座面3bと3cが反射面Rbに線対称に、かつ4つの座面3a〜3dがプリズム1の中心軸に対し対称に配置されている。
【0018】
このように、反射面Ra、Rbからの座面3a〜3dの距離を等しくすることにより、使用環境の変化による光学的な性能劣化を防止することができる。また、座面3a〜3dをプリズム1の周辺部に配置することで、それぞれの座面3間の距離が遠くなるので、座面3a〜3dの高さの公差が等しい場合に、プリズム1の倒れに対しては有利な構成となる。
【0019】
図3は2個のプリズム部材1e、1fが接合されて正方形とされ、反射面Rcが形成されている。プリズム台座2上の反射面Rcの両側には、座面3aと3d、座面3bと3cが対称に距離Bをおいて配置されている。なお、このように反射面Rcからの距離Bが等しければ、それぞれの座面3a〜3dはプリズム1の中心軸に対称な位置でなくともよい。
【0020】
図4においては、2個のプリズム部材1e、1fを使用し、反射面Rcに対称にプリズム1はプリズム台座2に設けた3個の座面3e〜3gによる3点保持とされている。この場合は1つの座面3fが反射面Rc上にあって、他の座面3e、3gは反射面RcからCの等距離にある。
【0021】
図2〜図4の(b)はそれぞれプリズム台座2の座面3と接着座面部4の断面形状を示し、プリズム台座2の表面に対して接着座面部4は僅かに低く規定した隙間として設定されている。接着座面部4に接着剤5を塗布することで、プリズム台座2の面積と規定した隙間量とにより、接着剤5の量、つまり接着剤5の厚さ、大きさを管理することができる。
【0022】
環境温度の変化により、プリズム1及びプリズム台座2の温度が上昇するにつれて、プリズム1とプリズム台座2の線膨張係数の差により接着剤5に引っ張り応力が発生する。図5は接着座面部4が円形の場合、図6は接着座面部4が四角形の場合であり、接着座面部4が反射面Rに対称に設けられている。矢印は引っ張りの方向であって、矢印の長さが応力の大きさを示している。
【0023】
図5の円形の場合には、接着剤5に引っ張りの応力がほぼ均等に発生するが、図6の四角形の場合の方が接着面積を大きくするには有利である。また、座面3が四角形の場合には、座面3の四隅部で応力が大きくなっており、4辺部では4隅部に対して小さな応力となっている。これは接着座面部4の中心からの距離が異なるので、線膨張による伸びも場所に従って異なるからである。
【0024】
プリズム1は光学ガラスから成り、一般的にプリズム台座2に用いられる合成樹脂、金属等と比較して線膨張係数は小さいので、接着座面部4の中心部からの変形量はプリズム1よりもプリズム台座2の方が大きい。一方で、接着剤5の弾性変形量が接着座面部4の中心からの端部までの距離でのプリズム1と座面3の伸び量の差よりも大きくなるように、接着座面部4の大きさ及び厚さを設定しておくことにより、接着剤5の弾性変形に従って線膨張の差を吸収することができる。また、接着剤5とガラスの界面に発生する引っ張り応力の値が、ガラスの許容応力を超えないようにする必要がある。
【0025】
プリズム1の反射面Rを接着座面部4の中心に配置することで、接着剤5に応力が発生しても、プリズム1の反射面Rの変化を極力抑えることが可能である。一方で、接着座面部4の中心を基準にプリズム1の変動が生ずるために、プリズム1の反射面Rがプリズム1の接着座面部4の中心になく離れている場合には、座面3の中心からの距離に比例して反射面Rの位置が変動してしまうことになる。
【0026】
更に、プリズム1とプリズム台座2が温度変化で伸びた場合には、座面3とプリズム1の間で摩擦力が発生する。従って、座面3をプリズム1の反射面Rに対して対称に配置することにより、発生する摩擦力も反射面Rに対して対称とすることができる。
【0027】
図7は3個の座面3e〜3gを有し、1つの反射面Rcを有する場合のプリズムユニットが温度上昇した場合の応力分布の説明図である。図7(a)は反射面Rcに対して2つの座面3e、3gが対称に配置され、1つの座面3fが反射面Rc上に配置されており、接着座面部4が反射面Rcの中心にある。(b)は2つの座面3e、3gが反射面Rc上に、1つの座面3fがそれ以外の位置に配置されており、接着座面部4が反射面Rcの中心にある。更に、(c)は2つの座面3e、3gが反射面Rc上で、1つの座面3fがそれ以外の個所に配置されており、接着座面部4が反射面Rcを外れて配置されている。
【0028】
図7(a)について、(b)に示す引っ張り応力Paが発生しても、座面3がその力Paを均等に受けることができる。(b)は引っ張り応力Pbが発生すると、プリズム1の反射面Rcが矢印方向に倒れてしまう。また(c)は(b)と同様に倒れが発生するのと、接着座面部4が反射面Rcから離れているため、接着座面部4から反射面Rcまでの距離dに比例して反射面Rcが移動する。以上はプリズムユニットが温度上昇した場合の例について述べたが、プリズムユニットが低温になった場合も同様の効果がある。
【0029】
従って、図7(a)のように反射面Rcに対し座面3と接着座面部4と対称に配置して貼り付けることにより、温度によるプリズム1の変形によって光学系の精度を損うことがない。
【0030】
(参考例2)
図8は参考例2のプリズムユニットの斜視図、図9は平面図、図10は側面図、図11は断面図を示している。3個のプリズム11、12、13が1個の連結プリズム台座14上に貼り付けられている。プリズム11〜13が接合する連結プリズム台座14の上面には、それぞれ3個の円形の座面15a〜15cが形成され、座面15a〜15cは互いに平行度が規定されて製作されている。従って、この3個の座面15a〜15cにプリズム11〜13の下面をそれぞれ載せることにより、互いの相対位置関係の精度が保証される。更に、連結プリズム台座14上には、3個の座面15a〜15cに対してそれぞれ僅かに低くなった接着座面部16が設けられている。
【0031】
上述の説明では、座面15a〜15c及び接着座面部16が円形の場合を説明したが、図12は座面15a’〜15c’及び接着座面部16’が四角形である変形例を示している。座面15a’〜15c’の配置は図9と同様であるが、座面15a’〜15c’の辺部、接着座面部16’の辺部は反射面Rcと平行とされている。このように、座面15a’〜15c’、接着座面部16’を四角形にすることにより、座面15a’〜15c’及び接着座面部16’の面積を大きく取ることができ、プリズム11〜13の剥離強度の向上やプリズム11〜13の姿勢がより安定する効果がある。なお、座面15a’〜15c’及び接着座面部16’の形状は、これに限られず多角形であってもよい。
【0032】
(実施例1)
図13は実施例1の斜視図を示し、図1のプリズムユニットに対し、プリズム台座2上に余分の接着剤5を収容するための溝部21が形成されている。なお、図1と同一の符号については同一の部材、部位を示している。
【0033】
参考例1の座面3と接着座面部4の配置においては、プリズム台座2よりも僅かに低い面である接着座面部4に接着剤5を塗布してUV接着する際に、接着剤5が接着座面部4からはみ出すことがある。このはみ出した接着剤5は、座面3a〜3dとプリズム1の間の僅かな隙間に入り込んで接着をしてしまうことが考えられる。
【0034】
図13において、プリズム台座2上の座面3a〜3dと接着座面部4との間の4個所には、それぞれ円形の接着座面部4が離間して隣り合い、その間を通る直線状の溝部21が形成されている。図2、図3に相当する図14、図15において、溝部21は接着座面部4よりも深く形成されている。また、図4に相当する図16においても、座面3e〜3gと接着座面部4の間に溝部21が形成されている。
【0035】
これにより、接着座面部4からはみ出た接着剤5の不要分が溝部21に流れ込み、接着剤5が周辺に広がることなく、また座面3とプリズム1の間に浸透して薄い厚さで固化してしまうことを防止することができる。
【0036】
図13〜図16においては、座面3と接着座面部4の距離が充分離れている場合の溝部21について説明した。しかし、プリズム1自体の大きさが小さくなると、座面3と接着座面部4を近接させなければならない場合がある。プリズム1が小さくなった場合に接着座面部4の面積は小さくならざるを得ないが、プリズム1の剥離強度が低下することを防止するために、接着座面部4をなるべく大きくすることが好ましい。
【0037】
図17は変形例の平面図を示し、溝部が接着座面部4内に入り込んでいる。図17(a)は座面3に対して直線的な溝部22を形成した場合、(b)は座面3に沿って円弧形の溝部23を形成した場合を示している。(c)に示すように、直線的な溝部22と円弧形の溝部23を比較すると、使用可能な接着座面部4の面積がドット部分だけ異なることが分かる。つまり、座面3に沿って円弧形の溝部23を形成した方が、接着座面部4の面積を広くすることができる。
【0038】
(実施例2)
図18は実施例2の平面図を示し、3個の台座3e〜3gと接着座面部4の間に設けられた3個の溝部21の端部がプリズム台座2の端面まで延長されている。例えば、図13に示すような形態においては、未硬化の接着剤5が大量に溝部21内に存在したままの場合がある。プリズムユニットが製品形態となった場合に、プリズム1への接着剤5の染み出しや、染み出した後に光が当たって自然固化してしまう虞れがある。
【0039】
実施例2においては、溝部21の一端をプリズム台座2の端面までそれぞれ延長して溝端部24が形成されている。かくすることによって、プリズム1をプリズム台座2にUV接着後に、プリズム台座2の側面に開口した溝端部24から未硬化の接着剤5を矢印方向に吸引することができる。これにより、余分な接着剤5を除去することができ、接着座面部4にのみ接着剤5が存在し、理想的な接着状態を実現できるので、更にプリズムユニットとしての信頼性を向上させることができる。
【0040】
上述の実施例2においては、座面3と接着座面部4の間に個別に溝部21、22、23をそれぞれ設けていたが、複数の溝部21、22、23を連続して一体に構成することもできる。図19は変形例の平面図を示し、別個の溝部21、22、23を連結することにより、接着座面部4を囲む円環形の溝部25が形成されている。更に、この円環形の溝部25の一部を単数又は複数に分岐して、プリズム台座2の端面まで延在し、溝端部24が形成されている。この場合も図18の場合と同様に、溝端部24から円形の溝部25内に溜まった接着剤5の未硬化分を吸引し、除去することができる。
【0041】
図20は更に他の変形例を示し、座面3fと接着座面部4との間に形成した直線状の溝部21、座面3e、3gに沿って形成した円弧形の溝部22がプリズム台座2の端面まで延長されて溝端部24が設けられている。
【0042】
(実施例3)
図21は図8に対応した実施例3の斜視図、図22は平面図、図23は断面図を示し、連結プリズム台座14に各プリズム11〜13ごとに円弧状の溝部23、円環状の溝部25が設けられている。
【0043】
図24は変形例であり、溝部を直線状の溝部21、22のみにより形成した例を示し、プリズム11〜13は座面15a〜15c、接着座面部16の面積が充分取れる程に大きくされている。
【0044】
図25は更に他の変形例を示し、接着座面部16の周囲に形成した溝部21、22、23は、連結プリズム台座14の端面まで延長され、溝端部24が形成されている。先の実施例と同様に溝端部24を設けることで、接着座面部16からはみ出た接着剤5の不要分が、座面15a〜15cとプリズム11〜13の間に浸透して固化することを防ぐことができる。
【0045】
(実施例4)
プリズムユニットが液晶プロジェクタ内で実際に使用される場合には、プリズム内を光が透過することで、プリズム1内に発熱が生ずる。また、プリズムに偏光板が貼られている場合には、偏光板でカットされた不要な偏光偏波成分によっても発熱が生ずる。これらの発熱体から発生した熱はプリズム内を伝播し、プリズム台座にも到達するので、これらの熱を放熱するために、プリズム台座を冷却する構成が用いられている。プリズムとプリズム台座の線膨張係数は異なるため、僅かな温度上昇でもプリズムとプリズム台座の変形量は異なるが、プリズムとプリズム台座の間にある接着剤が両者の変形を弾性体として吸収する。
【0046】
図26はプリズムベース上に載置し、色分解光学系として機能するプリズムユニットの斜視図、図27は分解斜視図である。緑色光路用プリズム31、合成プリズム32、赤青色光路用プリズム33が台座の図示を省略した1個の連結プリズム台座34に貼り付けてプリズムユニットとされている。緑色光路用プリズム31には1/4波長板を含む反射型液晶パネル35Gが取り付けられ、赤青色光路用プリズム33には反射型液晶パネル35R、35Bが取り付けられ、各液晶パネル35にはヒートシンクが設けられている。また、合成プリズム32のプリズム31側には誘電体多層膜から成る緑色光用出射側偏光板36Gが貼り付けられ、プリズム33側には青色光用出射側偏光板36Bが貼り付けられている。
【0047】
更に、プリズムベース37にも2個の開口38が設けられ、プリズムベース37の反対側からビス39を挿入し連結プリズム台座34の開口40を挿通してナット41により固定できるようになっている。パネル保持具43が液晶パネル35R〜35Bをプリズム31、33にUV接着剤で接着保持されている。
【0048】
反射型液晶パネル35R〜35Bには、ヒートシンクのために4隅に接着用の孔42が開いており、プリズム31、33にそれぞれ取り付けられたパネル保持具43から突出した突起部が、ヒートシンクの4隅の孔42に挿入されている。ヒートシンクの4隅の孔42にはUV接着剤が塗布されており、3色の液晶パネル35R〜35Bの相対位置ずれを調整した後に、相対位置を固定する。
【0049】
プリズム31〜33の連結プリズム台座34への貼り付けにおいては、プリズム31〜33の相対距離や面同士の倒れ等を冶具を用いて調整し、プリズム31〜33が連結プリズム台座34の座面に位置決めされ接着剤により接着される。
【0050】
このような構成により、プリズム31〜33の外形から取付構造がはみ出ることなく、かつプリズム31〜33を接着する座面の面積を損うことがない。即ち、プリズムユニットの外形を小さくすることができ、更に、プリズムユニットをプリズムベース37に3個所の座面に対して近い位置で締結できる。また、少ないビス止め本数でプリズム31〜33を保持できる。
【0051】
プリズムユニットの固定部をプリズム31〜33の外周部に設けると、プリズム31〜33に外力がかかった場合に、プリズムユニットにモーメントが発生し易くなるので、強度補償のためビス止め位置を増やす必要が生ずる。これにより、プリズム31〜33の周りのスペースが更に必要となる。
【0052】
連結プリズム台座34は前述したようにプリズム31〜33の相対関係を決定する部材であるため、少なくともプリズム31〜33の自重や外的な応力が加わった場合に、変形しないような剛性が必要である。特に、プリズムユニットは天吊りや天井投影、床投影等を行うことのある製品であるため、全ゆる方向に応力が加わった場合を想定しておく必要がある。
【0053】
従って、連結プリズム台座34の材質としてはガラスや金属、セラミック、硬質エンジニアリングプラスチックのような弾性係数の高い材料(縦弾性係数が5Gpa以上)を使用することが好ましい。更に、相対的な位置関係が温度よる線膨張によって変化しないためには、なるべくは線膨張係数が小さい材質(線膨張係数が3.0×10−5mm/℃以下)を使用することも好ましい。
【0054】
単なる平板と異なり、開口を有する複雑な形状の連結プリズム台座34を構成するには、材料の成形性の良さも重要となる。例えば、精密な形状の成型が可能な亜鉛ダイカストやアルミダイカスト等で製作することが好ましい。特に、亜鉛ダイカストは寸法精度の高い成形ができ、寸法精度を出すための2次的な機械加工が削減できるので、量産コスト的に有利である。
【0055】
図28は図26のプリズムユニットを使用する投射型画像表示装置の光学的平面図、図29は側面図である。発光管51とリフレクタ52から成る光源ランプ53の前方には、防爆ガラス54、第1のシリンダアレイ55a、紫外線吸収フィルタ56、第2のシリンダアレイ55b、偏光変換素子57、フロントコンプレッサ58、全反射ミラー59が配列されている。全反射ミラー59の反射方向には、第3のシリンダアレイ55c、カラーフィルタ60、第4のシリンダアレイ55d、コンデンサレンズ61、リアコンプレッサ62が配列されている。そして、このような光源ランプ53〜リアコンプレッサ62により照明光学系63が構成されている。
【0056】
この照明光学系63からの出射光束は、色分解合成光学系64に入射するようにされている。色分解合成光学系64においては、ダイクロイックミラー65の透過方向に緑色光用入射側偏光板66、前述した緑色光路用プリズム31、反射型液晶パネル35Gが配置されている。また、緑色光路用プリズム31の反射方向には、緑色光用出射側偏光板36Gを付した合成プリズム32が設けられている。更に、ダイクロイックミラー65の反射方向には、トリミングフィルタ67、入射側偏光板66a、色選択性位相差板68、赤青色光路用プリズム33、反射型液晶パネル35Bが配列されている。
【0057】
赤青色光路用プリズム33におけるダイクロイックミラー65からの光束の反射方向には、反射型液晶パネル35Rが配置されている。更に、プリズム33の出射側には青色光用出射側偏光板36Bが付された合成プリズム32が配置されている。そして、合成プリズム32からの出射光が投射レンズ鏡筒69に至っている。
【0058】
図30は投射型画像表示装置の分解斜視図を示している。照明光学系63は光源ランプ53からの光を入射し、色分解合成光学系64は照明光学系63からの出射光を入射する赤色光R、緑色光G、青色光Bの3色用の液晶パネル35G、35R、35Bを備えている。投射レンズ鏡筒69は色分解合成光学系からの出射光を入射して図示しないスクリーンに画像を投射し、投射レンズ鏡筒69内には投射レンズ光学系を収納している。
【0059】
光学ボックス70は光源ランプ53、照明光学系63、色分解合成光学系64を収納すると共に、投射レンズ鏡筒69を固定している。光学ボックス70内に照明光学系63、色分解合成光学系64を収納した状態で、光学ボックス70に蓋71を被せる。電源フィルタ72、バラスト電源73は電源74と合体し光源ランプ53に電流を供給し点灯する。回路基板35は電源74からの電力により液晶パネルの駆動、及び光源ランプ53の点灯指令を送る。光学冷却ファン76a、76bは外装筐体77の通気口78aから空気を吸い込むことで、色分解合成光学系64内の液晶パネル等の光学素子を冷却する。ダクト79は光学冷却ファン76a、76bによる風を色分解合成光学系64内の液晶パネル等の光学素子に送る。
【0060】
ランプ冷却ファン80は光源ランプ53に対して風を吹き付けて光源ランプ53を冷却し、ランプダクト81はランプ冷却ファン80を保持しながら冷却風をランプに送る。ランプダクト82はランプ冷却ファン80を押さえて、ランプダクト81と併せてダクトを構築している。電源冷却ファン83は外装筐体77に設けた通気口78bから空気を吸い込むことで、電源74とバラスト電源73内に風を流通させ、電源74及びバラスト電源73を同時に冷却する。排気ファン84はランプ冷却ファン80による光源ランプ53を通過した後の熱風を外装筐体77から排出する。
【0061】
ランプ排気ルーバ85、86は光源ランプ53からの光が装置外部に漏れないような遮光機能を有している。外装筐体77は光学ボックス70等を収納し、外装筐体蓋87は外装筐体77に光学ボックス70等を収納した状態で蓋をする。外装筐体77は側板88、89により閉止され、側板89には排気口89aが形成されている。インタフェース基板90には各種信号を取り込むコネクタが搭載され、インタフェース補強板91は側板48の内側に取り付けられている。
【0062】
ランプ排気ボックス92は光源ランプ53からの排気熱を排気ファン84まで導き、外装筐体77に排気風を放散させないためにあり、ランプ排気ルーバ85、86を保持している。ランプ蓋93は外装筐体77の底面に着脱自在に設けられており、ビスにより固定されている。また、セット調整脚94は外装筐体77に固定されており、脚部94aの高さを調整可能とされ、装置本体の傾斜角度を調整できるようにされている。
【0063】
RGBプレート95は外装筐体77の通気口78aの外側に取り付く図示しないフィルタを押さえている。RGB基板96は色分解合成光学系64内に配置され、反射型液晶表示素子からのFPCが接続され、回路基板35に接続されている。RGB基板カバー97はRGB基板96に電気ノイズが入り込まないようにしている。
【0064】
プリズムベース37は色分解合成光学系64を保持し、ボックスサイドカバー98は色分解合成光学系64の光学素子と反射型液晶表示素子を冷却するために光学冷却ファン76a、76bからの冷却風を導くダクト形状部を有する。RGBダクト99はボックスサイドカバー98と合わせることでダクトを形成している。
【符号の説明】
【0065】
1、11〜13、32〜33 プリズム
2 プリズム台座
3、15 座面
4、16 接着座面部
5 接着剤
14、34 連結プリズム台座
21、22、23、25 溝部
24 溝端部
69 投射レンズ鏡筒
Ra、Rb、Rc プリズム反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも1つの反射面を持つプリズムと、該プリズムが載置されるプリズム台座とを有するプリズムユニットであって、前記プリズム台座は、前記プリズムの前記反射面に直交する面に対して当接する少なくとも3つの座面と、接着剤により前記プリズムと接着される接着座面部とを備え、前記座面と前記接着座面部の間に溝部が形成されていることを特徴とするプリズムユニット。
【請求項2】
前記溝部は前記座面に沿った形状であることを特徴とする請求項1に記載のプリズムユニット。
【請求項3】
前記溝部は前記プリズム台座の端部まで延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリズムユニット。
【請求項4】
前記溝部は連続した1個の溝部であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリズムユニット。
【請求項5】
前記座面及び接着座面部の形状は円形であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプリズムユニット。
【請求項6】
前記座面及び接着座面部の形状は多角形であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプリズムユニット。
【請求項7】
複数個の前記プリズムが1個の前記プリズム台座上に接合されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリズムユニット。
【請求項8】
前記プリズムは、複数のプリズム部材により誘電体多層膜が挟まれて構成されたビームスプリッタプリズムであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリズムユニット。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のプリズムユニットを備えることを特徴とする投射型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−47834(P2013−47834A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232910(P2012−232910)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2007−312008(P2007−312008)の分割
【原出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】