説明

プリプレグを製造するための方法

記載した方法は、合成樹脂と強化繊維とで作られた、所定の輪郭を有しているプリプレグの製造のために用いられる。切屑及び廃棄物を最小化するために、最初に、少なくとも一層の強化繊維から成る、製造されるべきプリプレグ(10)の輪郭と同一の輪郭を有している成形した繊維部分(16)が作られる。成形した繊維部分(16)はキャリヤネット(12)上に置かれて、プリプレグ(10)に要求されたレベルの強度まで実質的に固化される樹脂に含浸される。結果的に得られる所定の輪郭を有するプリプレグ(10)は、次にそれらを取り囲むキャリヤネットの部分から迅速に分離することが可能、又は、一時的に保管して、更に処理する場所まで移送されるキャリヤネット(12)と共に初めに巻き取ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂と強化繊維とから成り、所定の形状を有しているプリプレグを製造するための方法に関している。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、多くの構造部材が繊維複合材料から成っている。ここで用いられる繊維は発生する力を吸収する機能を有している。繊維は、ロードラインに従って構造部材内に配置され、マトリクス材料としての樹脂によってその位置に維持される。マトリクス材料は硬化する前は柔軟である。したがって、硬化処理を実施し得る型が通例必要とされる。
【0003】
通常の製造工程において、繊維は金型内にばらばらに置かれ、次に手で樹脂を充満する(手動塗布処理)。手作業が大部分であるために、この方法は時間及び費用集約的であるだけでなく、作業者のラミネーション業務が非常に経験を積んでいる場合にのみ完成したラミネート内の樹脂の大きさ及び繊維割合が予め設定された値に一定に維持され得るという不利益も有している。多くの場合、これら構造部材は所望したよりも重くなるか、ラミネート内の「ドライスポット」の危険性、又は空気が混入するという危険性が生じて、明らかに安定性を弱める。数年前から、より均一なかかるラミネートの品質を作り出すための、及びそれを改良するための試みが成されてきた。この目的に対してとられた方法のうちの一つが、いわゆるプリプレグによって進んでいる。ここで、強化繊維は、材料のウェブの形態で貯蔵用ロールから巻き取られ、且つ、室温では概ね固体であって非常にゆっくりとだけ硬化する、主にエポキシ樹脂の、特殊な樹脂で満たされ(飽和され)る。プリプレグは次に、所定の剛率まで硬化した合成樹脂を備えた材料ウェブを巻き上げた形態でまず入手可能である。−18℃まで冷却されると、これらプリプレグは約18ヶ月間保存可能である。しかしながら、間もなく更に処理されると、冷却すること無しで問題なく輸送も可能である。
【0004】
処理装置において、材料ウェブ由来のプリプレグが、様々な構造要素のために必要な寸法に切り取られ、次に備えられた金型に置かれて、炉の中で中程度の温度まで加熱される。この温度で樹脂は融解して様々な層が互いに結びつく。空気の混入を避けるために、構成要素は、真空室内に通常の間隔で置かれる。次に更になお高い温度で硬化する。
【0005】
材料ウェブから所定の寸法に処理装置によってプリプレグを切断する工程において、15〜20%の廃棄物が通常作られて、次に使用可能な片を手でより分ける。残りは、費用集約的な方法で特別な廃棄物として廃棄される。
【0006】
プリプレグ製造のための、通例の設備は、巻き戻しユニット、含浸ユニット、ことによっては乾燥ユニット(溶媒を含んでいる樹脂を用いる場合)、冷却ユニット、及び巻取りユニットから構成される。
【0007】
繊維材料は、大きなロール(巻物)の形態で運搬され、且つ、巻き戻しユニットを通って機械に供給される。中間保存装置は、機械が稼動中にロール交換を可能にする。交替の工程において、含浸が効果的かつ中断することなく生じる。埃が繊維から除去され得、単位面積あたりの重量が測定され得る。
【0008】
含浸ユニットにおいて、繊維は、溶媒によって又は温度を上げることによって低い粘性にされている樹脂の浴を通って進み、そこに浸漬される。繊維間に残留する樹脂の割合は例えば、制御可能な空間を有するストリッパ又は加圧ローラによって調整される。
【0009】
存在するかもしれない溶媒は、乾燥ユニット中で加熱することによって蒸発する。乾燥ユニットの熱出力量は、用いられる溶媒の蒸発エンタルピーと、繊維が通り抜ける時の速さとの相関関係である。乾燥ユニットと含浸ユニットとは、溶媒が環境中に逃れ出ることを防ぐために被包される。
【0010】
乾燥の直次に、又は溶媒を含まない樹脂を用いる場合には各々、含浸工程に続いて、プリプレグは、加熱中に開始した反応を止めるために冷却ユニット内で冷却される。通常、プリプレグを冷やされたローラ上に進める。単位面積辺りの重量は、冷却後に測定され得る。このようにして、含浸の前と後との単位面積辺りの重量を比較することによってプリプレグの繊維含量を厳密に決定することが可能となる。
【0011】
ウェブ形状をしたプリプレグが、巻取りユニット内でロールに巻かれる。ここでも、機械が稼動中に所定の寸法にロールを切り取ることができるように、中間保存装置が備えられる。後に、各々所望の輪郭を有するプリプレグ要素は、ウェブ形状をしたプリプレグから切り取られて更に処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、トリミング及び廃棄の費用を最小にすることであって、本発明に従うと、この課題は請求項1に特徴付けられた方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、含浸工程後の樹脂の硬化中に、所定の輪郭を有する片として既に入手可能であり、且つ、もはやプリプレグウェブから切り取る必要が無く、その代わりに金型内に直接置くことが可能である、プリプレグの製造をもたらす。これまで生じてきた15〜20%の廃棄物と比較して、処理装置に直接経済的な利益が生じる。浸漬される前に繊維が切断されるので、この工程中に生じる廃棄物はもはや特別な廃棄物ではなく、原料として再販及び再利用可能となる。
【0014】
従来の含浸設備とは対照的に、ウェブの形状をした強化繊維ではなく、適切な費用効率の良い材料で作られた絡み合ったキャリヤネットが設備を通り抜ける。浸漬されるべき繊維未完成製品が、このキャリヤネットにホッチキスで又は糊でとめることによって置かれ、その補助と共に後にロールに巻かれる。適切なブランク順序によって、顧客の処理順序を考慮することが可能となる。
【0015】
本発明に従って提案された新規な方法は、以下のユニットからなる設備において実施される。つまり、繊維用巻き戻しユニット、構成繊維要素用(構造化した繊維要素用)の所定の寸法に切断するユニット、キャリヤネット用巻き戻しユニット、キャリヤネット用予備含浸ユニット、構成繊維要素とキャリヤネットとを合わせて一緒に運ぶためのユニット、キャリヤネット用乾燥ユニット、キャリヤネット用冷却ユニット、プリプレグ用含浸ユニット、プリプレグ用乾燥ユニット、プリプレグ用冷却ユニット、及び巻取りユニットである。
【0016】
図2に係る新規な含浸設備のデザインが、添付の図面における、図1に係る従来の含浸ユニットのデザインと比較された。図3及び図4は、キャリヤネット上の構成繊維要素とプリプレグの移送を表現している。上記で別々に識別された新規な設備のユニットの機能を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の含浸設備の図である。
【図2】構造化した繊維要素用含浸設備の図である。
【図3】乾燥ユニットと巻取りユニットとの間の領域にある、キャリヤネット12上の様々に形作られたプリプレグ10の移送の斜視側面図である。
【図4】製造設備を上から見た略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
強化繊維は、繊維用巻き戻しユニット内においてロールから巻き戻され、所定の寸法に切断するユニットへ運ばれる。中間保存装置が、機械が作動している間にロールを換えることができるように取り計らっている。
【0019】
所定の寸法に切断するユニットにおいて、例えば炭素又はアラミド繊維である強化繊維が、切断装置によって所定の輪郭の構成繊維要素に切断される。切断装置の種類は本発明にとって重要ではない。切断ナイフ、レーザー又はプラズマカッターが好ましくは用いられる、というのは水ジェットカッターの採用は、繊維中に湿気を残す結果となり更なる処理の前に先ず蒸発させなければならないからである。切断された構成繊維要素は、例えばイオン化された空気によって、繊維残渣が無い状態にできる。
【0020】
キャリヤネット用巻き戻しユニットは、原則的に、従来の繊維ウェブ用含浸設備の巻き戻しユニットと同様である。
【0021】
後者は、キャリヤネットを例えばエポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂のような、迅速に硬化する高い粘性の接着樹脂であるが、硬化後も永久的に弾性を有する樹脂と共に、予備含浸用ユニット内に含浸される。キャリヤネットが耐えなければならない小さい力(約50N/5cm)のために、キャリヤネットは僅かな糸厚みの大きなメッシュサイズを有するものとして作り出され得、それによって、それは構成繊維要素をほんの僅かだけ覆い、例えば多くても5%(約3%〜4%)であって後のプリプレグの結合を妨げない。
【0022】
構成繊維要素がキャリヤネットと共に運ばれる場所において、構成繊維要素は、接着樹脂に含浸され且つ連続して又はステップ式で進められたキャリヤネットに圧延によって付けられ、続いて運ばれる。
【0023】
構成繊維要素を所定の位置に固定する接着樹脂は、キャリヤネット用乾燥ユニット内で少なくとも部分的に硬化される。本発明にとって、これが熱によって又は例えばUV照射によって実施されるというは重要ではない。UV照射が用いられる場合は、典型的な実施形態において糊付けした構成繊維要素を有するキャリヤネットが室温まで冷却される、次のキャリヤネット用冷却ユニットが不要であり、それによって主要な含浸工程用の通常条件が作り出される。
【0024】
この典型的な実施形態から逸脱して、構成繊維要素は、糸輪又は糸クランプによってキャリヤネット上に固定されてもよく、それによって上記ネットの予備含浸及び乾燥が省略される。キャリヤネットの方向及び含浸工程の手段に応じて、例えば水平方向であって且つ浴びせかける又は噴霧する処理による含浸の場合には、構成繊維要素を所定の位置に固定することなくキャリヤネット上に置くことですら十分かもしれない。この可能性は、含浸が浸漬浴内で実施された場合、及び、この領域内で構成繊維要素が、キャリヤネットの上方に配置され且つ同一速度で駆動され且つ永続的に回転している絡み合った網状織物によってキャリヤネットに押し付けられた場合にも存在する。
【0025】
プリプレグ用含浸ユニット、典型的な実施形態に含まれるプリプレグ用乾燥ユニット、プリプレグ用冷却ユニット、及び巻取りユニットは、従来の設備のユニットと同様である。従来の設備内と同様の構成繊維要素の進行速さで、より少ない材料が乾燥ユニットを通り抜けるので、より少ない出力で通常運転され得る。含浸ユニットは、好ましくは、例えば溶媒によって低い粘性に調整された、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂を含有する浴であって、それを通ってキャリヤネットは、その(ネット)上の所定の位置に固定された構成繊維要素と共に引っ張られる。これに直続き、プリプレグの繊維及び樹脂含量の厳密な割合を調整するために、例えばストリッピング(剥ぎ取り)又は加圧ローラによって、構成繊維要素から過剰な樹脂を剥ぎ取ることが可能である。
【0026】
本発明に従って製造されたプリプレグは、最初から所定の輪郭を有するように形成された、個々の部品であるけれども、それらは巻取りユニット内の一つのロールに簡単な方法で且つ小さな空間で結合することが可能であって、この形態で保存することも移送することも可能である。キャリヤネットからの分離は通常、更なる処理の場所で後に実施する。例えば、切り取り、焼き切り、又は他の適切な方法で実施することが可能である。個々の場合において、特殊な手段で、例えば構成繊維要素とキャリヤネットとの間のスペーサによって、及び/又は樹脂によって濡れないキャリヤネット用材料を選択することによって、プリプレグが、それらを囲むキャリヤネットの領域からだけでなく、それらが覆われた領域からも取り除かれることが可能となるように成し遂げられる。
【0027】
図3は、乾燥ユニットと巻取りユニットとの間の領域における、キャリヤネット12上の様々に形作られたプリプレグ10の移送の、斜視側面図を表している。
【0028】
図4は、製造設備を上から見た略図である。ここで、キャリヤネット用巻き戻しユニットは14で識別されており、上記ユニット内では、個々に所望の形状をした構成繊維要素16は、参照番号18によってキャリヤネット12と共に個々に運ばれる。例えばキャリヤネット12と共に糊付けされた構成繊維要素16は、次に含浸ユニット20を通り抜け、それによって後者の下流には、キャリヤネット12上に載り且つ樹脂に含浸された構成繊維要素20が現れる。
【0029】
これは、続いて乾燥ユニット24内で乾燥されて、必要ならば冷却される、それによって、その後完成したプリプレグ10は、巻取りユニット26に移送され得てキャリヤネット12と共に巻き取られ得る。製造ユニットは上記で述べられなかったが、図2中に記載されており、明瞭化を目的として図4中には記載していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂と強化繊維で構成され、所定の輪郭を有するプリプレグを製造する方法において、
少なくとも一層の強化繊維から成る構成繊維要素(16)が、製造されるべきプリプレグ(10)の輪郭と同一の輪郭に作られ、
上記構成繊維要素(16)は、キャリヤネット(12)上に置かれて、プリプレグに対して所望の強度に実質的に硬化される樹脂で浸され、及び、
最終的に得られた且つ予め決められた輪郭を有するプリプレグ(10)が、プリプレグによって各々覆われたキャリヤネット(12)の領域と共に、それらを取り囲んでいるキャリヤネット(12)の部分から分離されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
構成繊維要素(16)がキャリヤネット上に置かれる前に、キャリヤネット(12)は、構成繊維要素(16)がその上に置かれて押し付けられた後に少なくとも部分的に硬化される樹脂で予備含浸され、それによって構成繊維要素がキャリヤネット(12)に糊付けされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
例えばエポキシ樹脂、又はポリウレタン樹脂のような、迅速に硬化され且つ硬化後に永続的に弾性を有する接着樹脂が、キャリヤネット(12)を予備含浸するために用いられることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
構成繊維要素(16)を樹脂に含浸するために、例えばエポキシ樹脂、又はポリウレタン樹脂のような、溶媒によって低い粘性を有するように調整された樹脂が用いられ、且つ、構成繊維要素(16)の含浸に続いて、加熱して溶媒を蒸発することによって乾燥され、続いて冷却されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
強化繊維とキャリヤネット(12)は連続的に又はステップ式で供給ロール(14)から引き出され、且つ、キャリヤネット(12)の予備含浸ならびに構成繊維要素(16)の含浸は、キャリヤネット(12)をその供給ロール(14)から引き出す工程又は中間保存装置から引き出す工程中に連続して行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
構成繊維要素(16)は、切断ナイフ又はビーム切断具によって、供給ロールから引き出された絡み合った繊維から切り取られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
構成繊維要素(16)は、イオン化された空気によって残渣が無い状態になることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
構成繊維要素(16)を樹脂で含浸するために、キャリヤネット(12)が、樹脂を含有している浴(20)を通って引き出されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
キャリヤネット(12)が用いられ、そのメッシュサイズと糸厚みは、構成繊維要素(16)が多くとも5%覆われるような寸法で作られることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
接着によってプリプレグ(10)を表面上に保持するキャリヤネット(12)は、保管するために、及び、プリプレグをキャリヤネット(12)から切り取って更に処理する場所まで移送するために巻き取られることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−501367(P2010−501367A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524904(P2009−524904)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001707
【国際公開番号】WO2008/022659
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(509052078)フェノテック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】