説明

プリンタ、ホストコンピュータ、印刷システム及び印刷システムの制御方法

【課題】遠隔地に設定されたホストコンピュータの異常状態を即座に認識することが可能なプリンタおよびそのプリンタと接続されたホストコンピュータを含んだ印刷システムを提供する。
【解決手段】異常検出部306は、コマンド解析部303によってホストコンピュータ220から送信されたコマンドが異常検出設定値設定、またはリセット/スタートコマンドであると解析され、制御コマンドバッファ304から主制御部308を介して異常検出設定値設定、またはリセット/スタートコマンドが読み出された場合に、その後の経過時間をタイマー309を用いて計測する。所定時間以内にリセット/スタートコマンド(あるいはデータ)を受信しなかった場合、ホストコンピュータ220が異常状態にあることを通知するため、印刷制御部246に、エラーメッセージを印刷するように指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタ、ホストコンピュータ、印刷システム及び印刷システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続されたオンラインシステムが知られている。一般にオンラインシステムは、ホストコンピュータと離れた場所に設置された端末機からデータを入出力するのが特徴であって、例えば遠隔地に設置された銀行のATM(現金自動預け払い機)、CD(現金自動支払い機)、販売店のPOS端末等の各種端末機からの要求に応じて、ホストコンピュータがデータの演算処理を行い、演算結果を端末機に返し、端末機側で演算結果を出力するように構成されている場合が多い。
【0003】
特許文献1は、図6に示すように、オペレータによって商品情報が入力され、清算金額を算出するPOS端末コンピュータ60と、POS端末コンピュータ60と接続されポイントが記録されているポイントカードPおよびレシートRの印刷に関する種々の処理を行うプリンタ10と、POS端末コンピュータ60とネットワーク75を介して接続されているPOSサーバ70とを備えたPOSシステム1を開示している。このPOSシステム1は、顧客の購買意欲の促進や、固定客の獲得などを目的とした顧客サービスの一環として、購入金額や来店回数に応じたポイント数を顧客が所持するポイントカードに記録していき、達成ポイント数に達すると顧客がそのポイント数に応じた特典を受ける事ができるポイント付与サービスを提供する。
【0004】
【特許文献1】特開2005−222310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなPOSシステム1においては、複数のPOS端末コンピュータ60とプリンタ10とは同一オペレータによって管理されるが、システムによってはPOS端末のようにプリンタ10を近くで管理する装置が無く、遠隔地に配置されたサーバ(ホストコンピュータ)からプリンタ10が直接制御されるような場合がある。この場合、オペレータがサーバではなくプリンタ10の側にのみ存在するようであると、システム運行時においてサーバが正常に動作しているかどうかをオペレータが把握できない。
【0006】
このような状況の例としては、POSシステム1とは異なるサブシステムが店舗内に組み込まれて、プリンタ10とは別のプリンタがオペレータの側に配置されている場合が考えられる。ここでは、サブシステムのサーバは、POSシステム1に連動してサブシステムのプリンタにチケットやクーポン券等の発券を状況に応じて指示し、サブシステムのプリンタは、指示があった場合のみチケットやクーポン券を発券する。この例の場合、オペレータは、サブシステムのプリンタからどのタイミングでチケットやクーポン券が発券されるかわからない。したがって、例えばサブシステムのサーバ内のアプリケーションやサーバ全体が暴走またはダウンしたり、サーバとプリンタとを接続する回線の一部に異常が発生していたりしても、オペレータは、即座にサーバの異常を認識することができない。よって、発券タイミングであっても適切にチケットが発券できないのみならず、それが異常として認識されないまま業務が遂行されてしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタにおいて、遠隔地に設定されたホストコンピュータの異常状態を即座に認識することが可能なプリンタ、そのプリンタと接続されるホストコンピュータ、印刷システム及び印刷システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成により達成される。
(1) ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタであって、
前記ホストコンピュータから送信される前記コマンドまたはデータを受信する受信部と、
前記コマンドまたはデータの受信後の経過時間を計測するタイマーと、
前記タイマーの計測開始後、所定時間以内に前記ホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知する異常検出部と、を有することを特徴とするプリンタ。
(2) 前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記コマンドまたはデータを受信すると、前記タイマーの経過時間をリセットし、前記経過時間の計測を再開することを特徴とする(1)に記載のプリンタ。
(3) 印刷媒体に印刷を行う印刷制御部を備え、
前記異常検出部は、前記印刷制御部に前記ホストコンピュータの異常を知らせるメッセージを印刷させることを特徴とする(1)または(2)に記載のプリンタ。
(4) 前記プリンタの状態を表示する表示部を備え、
前記異常検出部は、前記表示部に前記ホストコンピュータの異常を知らせる表示をさせることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のプリンタ。
(5) 前記プリンタの状態を音で通知する音源を備え、
前記異常検出部は、前記音源から前記ホストコンピュータの異常を知らせる音を発生させることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のプリンタ。
(6) 前記所定時間を記憶する不揮発性記憶部を備え、
前記所定時間は、前記ホストコンピュータから送信される設定コマンドに応じて設定されることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載のプリンタ。
(7) ネットワークを介して通信可能に接続されたプリンタに対してコマンドまたはデータを送信するホストコンピュータであって、
前記プリンタに設定された所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタへ送信するプリンタ制御指示生成部を備え、
前記プリンタは、前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知することを特徴とするホストコンピュータ。
(8) ホストコンピュータと、該ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタと、を備えた印刷システムであって、
前記プリンタには、前記ホストコンピュータの動作確認用の所定時間が設定されており、
前記ホストコンピュータは、前記所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタに送信するプリンタ制御指示生成部を備え、
前記プリンタは、前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータの受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知する異常検出部を備えていることを有することを特徴とする印刷システム。
(9) 前記プリンタは、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記コマンドまたはデータを受信すると、前記経過時間をリセットし、前記経過時間の計測を再開することを特徴とする請求項8に記載の印刷システム。
(10) 前記プリンタは、印刷媒体に印刷を行う印刷制御部を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記印刷制御部に前記ホストコンピュータの異常を知らせるメッセージを印刷させることを特徴とする(8)又は(9)に記載の印刷システム。
(11) 前記プリンタは、該プリンタの状態を表示する表示部を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記表示部に前記ホストコンピュータの異常を知らせる表示をさせることを特徴とする(8)〜(10)の何れかに記載の印刷システム。
(12) 前記プリンタは、該プリンタの状態を音で通知する音源を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記音源から前記ホストコンピュータの異常を知らせる音を発生させることを特徴とする(8)〜(11)の何れかに記載の印刷システム。
(13) 前記プリンタは、前記所定時間を記憶する不揮発性記憶部を備え、
前記所定時間は、前記ホストコンピュータから送信される設定コマンドに応じて設定されることを特徴とする(8)〜(12)の何れかに記載の印刷システム。
(14) ホストコンピュータと、該ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタと、を備え、前記プリンタに前記ホストコンピュータの動作確認用の所定時間が設定された印刷システムの制御方法であって、
前記ホストコンピュータから前記プリンタに前記所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタに送信し、
前記プリンタが前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータの受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを前記プリンタが受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを前記プリンタから通知することを特徴とする印刷システムの制御方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリンタは所定時間以内にホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、ホストコンピュータが異常状態にあることを通知するように設定される。したがって、ホストコンピュータが遠隔地に設置されている場合でも、プリンタのユーザは異常検出部による通知によって、ホストコンピュータの異常状態を即座に認識することが可能である。
【0010】
また、本発明によれば、所定時間はタイマーによって計測され、所定時間以内にホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信すると、タイマーがリセットされるように設定される。したがって、ホストコンピュータからコマンドまたはデータが送信される限り、所定時間以内にホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信したかを繰返し判断し、コマンドまたはデータを受信しなかった場合には即座に異常検出部による通知を行うことが可能である。
【0011】
また、本発明によれば、異常検出部は、異常を示すメッセージの印刷や異常を示す表示あるいは異常を示す音の出力によってホストコンピュータの異常状態を通知するように設定される。また、これらの通知手段を組み合わせて通知するように設定することも可能である。したがって、プリンタのユーザはホストコンピュータの異常状態を認識しやすく、また、ホストコンピュータの異常状態を視覚的に認識するのみならず聴覚的にも認識することができるので、ホストコンピュータの異常を確実に認識することが可能である。
【0012】
また、本発明によれば、所定時間は、ホストコンピュータから送信される設定コマンドに応じて設定される。したがって、ホストコンピュータから送信される設定コマンドよって、一度設定された所定時間をシステムの使用形態に応じた所定時間に変更したり、異常を検出する機能を無効にすることが可能である。
【0013】
また、本発明によれば、ホストコンピュータは、プリンタに設定された所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドをプリンタへ送信するように構成されている。そして、プリンタは、リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信後、所定時間以内にホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、ホストコンピュータが異常状態にあることを通知する。ホストコンピュータはプリンタ側で計測し判断される所定時間よりも短い時間で定期的にコマンドまたはデータを少なくとも一つは送信するように構成されているので、ホストコンピュータが異常となるまでは、プリンタに対して正常である旨を通知し続けることができる。そして、ホストコンピュータ内で何らかの異常が発生し、コマンドまたはデータの送信が不可能となると、プリンタはコマンドまたはデータを受信しなくなるため、即座にホストコンピュータの異常を察知し、ユーザに通知することが可能となる。
【0014】
なお、本発明において、ホストコンピュータとは、プリンタと通信を行いつつ制御可能なものであれば特に限定されず、複数のコンピュータ及びプリンタを制御するサーバや、一対一でプリンタを制御する汎用の端末装置やコンピュータ(いわゆるPC等)であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるプリンタ、ホストコンピュータ及びそれらを有する印刷システムの実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態のプリンタは、ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、ホストコンピュータから送信される制御コマンドまたは印刷データに応じて印刷を行うプリンタである。
【0016】
図1は、本実施形態のプリンタを示す外観斜視図であり、図2は、二つの前面カバーを開いて内部を示したプリンタの外観斜視図である。
【0017】
(プリンタの構成)
まず、本実施形態にかかるプリンタ240について説明する。
本実施形態のプリンタ240は、図1及び図2に示すように、複数種のカラーインクを使用し、記録媒体としてのロール紙に画像記録(複数色カラー印刷)を実行し、クーポン券を発券するプリンタである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のプリンタ240は、前面上部パネル2a及びケースカバー2bから構成されるプリンタケース2の前面に、左側から順に電源スイッチ3、ロール紙カバー5、装着部開閉カバー7が配置されている。また、電源スイッチ3の上方には、プリンタ240やホストコンピュータ220の状態をユーザに通知する表示部(以下、LEDランプ6という。)が設けられている。ロール紙カバー5及び装着部開閉カバー7は、下部に設けられた図示せぬヒンジを介していずれも前方に開閉可能に設けられている。
【0019】
ロール紙カバー5を開くと、図2に示すように、印刷用紙であるロール紙11を収容した用紙収容部13が開放状態となる。この状態で、ロール紙11の交換が可能になる。一方、装着部開閉カバー7を開くと、カートリッジ装着部15が開放状態になり、カートリッジ装着部15へのインクカートリッジ20の着脱が可能になる。
【0020】
インクカートリッジ20は、カートリッジケース内にイエロー、シアン及びマゼンダの3色のカラーインクパックを一つにパッケージングしたものである。本実施形態のプリンタ240の場合は、装着部開閉カバー7の開閉動作に連動して、カートリッジ装着部15内のインクカートリッジ20がカートリッジ交換位置からカートリッジ使用位置にスライド移動する。
【0021】
(ホストコンピュータとプリンタとの関係)
次に、図3及び図4を参照しながら、本発明に係る印刷システムを構成するホストコンピュータ220とプリンタ240との関係について説明する。
【0022】
図3は、ホストコンピュータ220とプリンタ240の電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ホストコンピュータ220は、主として、CPU221と、不揮発性メモリであるROM222と、揮発性メモリであるRAM223と、大規模記憶装置としてのHDD224と、入力装置225と、通信インタフェース226とを備えている。ホストコンピュータ220は、CPU221がHDD224に記憶されたオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行しながら、通信インタフェース226を介してプリンタ240に各種コマンドや印刷データを出力することにより、プリンタ240を制御する。
【0023】
プリンタ240は、主として、CPU241と、書き換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュROM242と、揮発性メモリであるRAM243と、通信インタフェース244と、インクをロール紙11に吐出させて画像記録を行う印刷制御部245と、用紙搬送機構246と、印刷ヘッド247と、ブザー249と、LEDランプ6とを備えている。
【0024】
プリンタ240は、CPU241がフラッシュROM242に記憶されたファームウェアを実行しながら、通信インタフェース244を介してホストコンピュータ220と通信を行うことにより印刷データを受信する。そして、印刷制御部245が各種コマンドや印刷データに基づき、用紙搬送機構246を介してロール紙11を搬送しつつ印刷ヘッド247を駆動してロール紙11への印刷を実行し、レシートやクーポンを発券する。また、プリンタ240は、LEDランプ6を点灯または点滅させたり、ブザー249により音を発したりすることにより、ユーザに各種情報を視覚的または聴覚的に通知する。
【0025】
(異常検出通知処理の構成)
本実施形態のプリンタ240は、ホストコンピュータ220から送信されるコマンドまたはデータをモニターし、ホストコンピュータ220が正常に動作しているかどうかを判断して、ホストコンピュータ220が異常であると判断した時には、所定の異常検出通知処理を行うように構成されている。
【0026】
以下では、本実施形態のホストコンピュータ220が異常状態であるかどうかをプリンタ240がどのように判断し、異常時にプリンタ240が行う異常検出通知処理について説明する。
図4は、ホストコンピュータ220とプリンタ240の内部処理を示した機能ブロック図である。
【0027】
まず、プリンタ240について説明する。図4に示すように、プリンタ240内には、ホストコンピュータ220から送信される各種コマンドや印刷データを受信する受信部301と、受信部301が受信した各種コマンドや印刷データを一時的に保持する受信バッファ302が設けられている。受信バッファ302によって受信されたデータは、コマンド解析部303によって解析され、制御コマンドの場合は制御コマンドバッファ304に、印刷データの場合には印刷バッファ305にDMA転送等により転送される。
【0028】
印刷バッファ305に一時保存された印刷データは、データ展開処理が行われてデータ変換され、最終的には印刷ヘッド247のノズル列に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファ305に記憶される。一方、制御コマンドバッファ304に一時保存された制御コマンドデータは、主制御部308によって読み出されて、ロール紙カットや異常検出通知設定など制御コマンドに応じた処理が実行される。
【0029】
異常検出部306は、ホストコンピュータ220が正常に動作しているかどうかを監視し、異常であると判断した場合には所定の異常通知手段を介してユーザにホストコンピュータ220の異常を通知するように指示する。具体的な異常検出方法については後ほど詳述する。
【0030】
異常検出設定値記憶部307(不揮発性記憶部)は、フラッシュROM242内に設定された領域であり、ここには異常検出処理を行うための異常検出設定値を記憶している。この異常検出設定値は、ホストコンピュータ220が異常であるかどうかを判断する基準時間となる異常検出時間(所定時間)と、ホストコンピュータ220が異常であるときに異常を通知する異常検出方法の種類を示す異常検出方法設定値とから少なくとも構成されている。これらについても後ほど詳述する。
【0031】
次に、本実施形態におけるホストコンピュータ220について説明する。
ホストコンピュータ220では、例えばHDD224に記憶されたオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行することにより様々な処理が実現可能である。プリンタ240による異常検出通知処理を実現するため、図4に示すように、送受信部321と、プリンタ制御指示生成部322と、タイマー324とを備えている。
【0032】
送受信部321は、プリンタ240との通信を行うドライバであり、プリンタ240との通信を行うためのポート(ここではLANポート)を介して、上流側のアプリケーションやAPI(Application Program Interface)の指示に応じてプリンタ240に各種コマンドを送信したり、プリンタ240から情報を受信したりする。
【0033】
プリンタ制御指示生成部322は、ホストコンピュータ220が異常状態にあるかどうかのチェックをプリンタ240に開始させるための設定コマンド、またはリセット/スタートコマンドを、図示せぬ上位のアプリケーションプログラムからの指示に応じて、送受信部321を介してプリンタ240に送信する。また、プリンタ制御指示生成部322は、プリンタ240に設定コマンド、またはリセット/スタートコマンドを送信した後には、タイマー324により時間を計測し、設定コマンドで設定された所定時間よりも短い時間で定期的に再度リセット/スタートコマンドを送信する。このリセット/スタートコマンドは、ホストコンピュータ220が正常に動作していることをプリンタ240に通知するものである。以下に説明する異常検出通知処理においては、このリセット/スタートコマンドに応じて、プリンタ240はホストコンピュータ220が異常かどうかを判断する。
【0034】
次に、プリンタ240における異常検出通知処理について詳細に説明する。
本実施形態では、プリンタ240の異常検出部306は、コマンド解析部303により受信したコマンドが設定コマンド、またはリセット/スタートコマンドであると解析されると、タイマー309を用いてその後の経過時間の計測を開始する。異常検出部306は、タイマー309の計測が開始されてからホストコンピュータ220からリセット/スタートコマンド(あるいはデータ)を受信したかを監視し、異常検出設定値記憶部307に記憶された異常検出時間以内にリセット/スタートコマンドを受信しなかったらホストコンピュータ220が異常であると判断する。一方、異常検出時間以内にリセット/スタートコマンドを受信すると、タイマー309をリセットしてカウントを0に戻し、経過時間の計測を続行する。この場合、プリンタ240はホストコンピュータ220の動作が正常であると判断している。
【0035】
ホストコンピュータ220は、正常に動作しつづける限り、プリンタ制御指示生成部322の制御の下、プリンタ240に記憶されている異常検出時間より短い時間間隔でリセット/スタートコマンドを定期的に送信し続ける。一例として、プリンタ240に設定された異常検出時間が10分である場合には、ホストコンピュータ220からは、それよりも短い時間、例えば9分毎に定期的にリセット/スタートコマンドをプリンタ240に対して送信するように設定されている。
【0036】
プリンタ240がホストコンピュータ220から異常検出時間以内にリセット/スタートコマンドを受信しなくなる場合とは、ホストコンピュータ220が異常状態となったか、または途中の回線に異常が生じてホストコンピュータ220からの指示がプリンタ240によって受信不可能となった場合と考えられる。いずれにせよ、このような状態では、ホストコンピュータ220から送られるべきデータもプリンタ240が受信不可能であり、何らかの処理を講じる必要がある。そのため、リセット/スタートコマンドを異常検出時間以内に受信できなかった場合には、プリンタ240は、異常検出設定値記憶部307に記憶された異常検出方法設定値に応じてユーザに異常を通知する。
【0037】
異常検出方法設定値によって指示される異常通知手段としては、エラーメッセージの印刷、異常を通知するLEDランプ6の表示、及びブザー249によるエラー音の出力のうちの一つまたはそれらの組み合わせが挙げられる。エラーメッセージの印刷、エラー音の出力及びLEDランプ6の表示を併用することによって、プリンタ240のユーザはホストコンピュータの異常状態を視覚的に認識するのみならず聴覚的にも認識することができるので、システムがダウンしてもその原因を確実に把握し、迅速にシステムの復旧作業を行うことが可能である。
【0038】
なお、プリンタ240に記憶された異常検出時間と異常検出方法設定値は、システム運行中でもホストコンピュータ220から設定コマンドを送信することによって、変更することが可能である。このように異常検出時間と異常検出方法設定値とが変更可能であれば、各システム運行者の運行形態を反映した適切な異常検出通知設定を行うことが可能である。
【0039】
次に、図5を参照して、異常検出通知処理の具体的な流れを説明する。
図5はホストコンピュータ220及びプリンタ240により構成される異常検出通知システム(印刷システム)における異常検出通知処理を説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、異常検出通知システムの初回稼動開始にあたり、ホストコンピュータ220のプリンタ制御指示生成部322が送受信部321を介して異常検出設定値設定コマンドをプリンタ240へ送信する(ステップS11)。ここでは、プリンタ240に対して10分以内にホストコンピュータ220からリセット/スタートコマンドが送信されない場合に、プリンタ240が行う異常通知手段として、エラーメッセージの印刷を行うように設定することとする。ホストコンピュータ220は、異常検出設定値設定コマンドを送信すると(ステップS11)、タイマー324によってその後の経過時間の計測を開始する(ステップS12)。なお、本実施形態では、異常検出設定値設定コマンドは異常検出通知システムの初回稼動時に一度だけ送信されるようにしているが、ホストコンピュータ220の電源が投入される毎に送信されるようにしたり、システム稼動中に異常検出設定値を変更したい場合には、都度、送信することも可能である。
【0041】
一方、プリンタ240は、コマンド解析部303によって、受信したコマンドが異常検出設定値設定コマンドであると判断されると、主制御部308を介して、異常検出設定値記憶部307に、異常検出時間を10分、ホストコンピュータ220が異常状態にある場合に異常検出部306によって行われる異常通知手段を「エラーメッセージ印刷」として記憶する。これによって、プリンタ240に対して異常検出通知設定が行われ(ステップS21)、ホストコンピュータ220が異常状態にある場合に、ファームウェアの実行により異常検出通知が行われる。なお、フラッシュROM242の不揮発領域に異常検出設定値が保存されている場合は、プリンタ240の電源が投入される毎に異常検出通知設定が行われる構成にすることも可能である。異常検出設定値設定、または後述するホストコンピュータ220からのリセット/スタートコマンドを受信すると、異常検出部306はタイマー309によってその後の経過時間の計測を開始する(ステップS22)。
【0042】
次に、ホストコンピュータ220は、プリンタ制御指示生成部322が異常検出時間「10分」よりも短い時間「9分」を経過したかを判断し、9分経過したと判断すると(ステップS13:Yes)、リセット/スタートコマンドをプリンタ240へ送信する(ステップS14)。リセット/スタートコマンド送信後、タイマー324がリセットされると(ステップS15)、経過時間の計測を再開し、以後9分毎にリセット/スタートコマンドを送信する。以下、繰返し処理が行われ、ホストコンピュータ220に異常が発生しない限りプリンタ240に対して定期的にリセット/スタートコマンドを送信する。
【0043】
一方、プリンタ240は、異常検出部306がステップS22での計測開始後10分以内にホストコンピュータ220からリセット/スタートコマンドを受信したか否かを判断し、受信したと判断した場合には(ステップS23:Yes)、タイマー309をリセットする(ステップS25)。リセット/スタートコマンドを受信後は経過時間の計測を再開し、以後10分以内にホストコンピュータ220からリセット/スタートコマンドを受信しているかを判断する(ステップS23)。以下、繰返し処理が行われ、ホストコンピュータ220に異常が発生しない限りプリンタ240は定期的にリセット/スタートコマンドを受信する。なお、上記では、経過時間のリセットのタイミングとしては、リセット/スタートコマンド受信時であると説明したが、何らかのコマンドまたはデータを受信したらその都度リセットするように構成しても良い。
【0044】
一方、ステップS23で10分以内にホストコンピュータ220からリセット/スタートコマンドを受信しなかったと判断した場合には(ステップS23:No)、異常検出部306は用紙搬送機構246を介してロール紙11を搬送しつつ印刷ヘッド247を駆動してロール紙11へホストコンピュータ220が異常状態にあることを知らせる異常検出通知(エラーメッセージ印刷)を実行するように印刷制御部246へ指示する(ステップS24)。
【0045】
このように、本実施形態では、ホストコンピュータ220は、異常検出設定値設定、またはリセット/スタートコマンド送信後、異常検出設定値設定コマンドで設定した異常検出通知を行うまでの異常検出時間10分よりも短い9分間隔で定期的にリセット/スタートコマンドを送信する。したがって、プリンタ240は、ホストコンピュータ220から9分間隔で定期的にリセット/スタートコマンドを受信している間はホストコンピュータ220が正常に動作していることを把握することが可能である。一方、9分を経過してもリセット/スタートコマンドを受信できなかった場合には、ホストコンピュータ220は何らかの事情によりリセット/スタートコマンドを9分以内に送信することができなかったものと判断することができる。したがって、例えばホストコンピュータ220が暴走またはダウンしたり、ホストコンピュータ220とプリンタ240とを接続する回線の一部に異常が発生した場合にはユーザは、プリンタ240の異常検出通知によって即座にホストコンピュータ220の異常を認識することが可能である。
【0046】
これにより、ホストコンピュータ220が遠隔地に設置されている場合でも、プリンタ240のユーザはプリンタ240から排出されたロール紙11に印刷されたエラーメッセージを参照するだけで、ホストコンピュータ220の異常状態を即座に認識することができ、システムの復旧作業を迅速に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態のプリンタを示す外観斜視図である。
【図2】本実施形態のプリンタの二つの前面カバーを開いて内部を示した外観斜視図である。
【図3】本実施形態のホストコンピュータとプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態のホストコンピュータとプリンタの内部処理を示した機能ブロック図である。
【図5】本実施形態のホストコンピュータ及びプリンタにより構成される異常検出通知システムにおける異常検出通知処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】従来のPOSシステムの概要を示した概略図である。
【符号の説明】
【0048】
6 LEDランプ
220 ホストコンピュータ
240 プリンタ
246 印刷制御部
249 ブザー
306 異常検出部
307 異常検出設定値記憶部
309 タイマー
321 送受信部
322 プリンタ制御指示生成部
324 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタであって、
前記ホストコンピュータから送信される前記コマンドまたはデータを受信する受信部と、
前記コマンドまたはデータの受信後の経過時間を計測するタイマーと、
前記タイマーの計測開始後、所定時間以内に前記ホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知する異常検出部と、を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記コマンドまたはデータを受信すると、前記タイマーの経過時間をリセットし、前記経過時間の計測を再開することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
印刷媒体に印刷を行う印刷制御部を備え、
前記異常検出部は、前記印刷制御部に前記ホストコンピュータの異常を知らせるメッセージを印刷させることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記プリンタの状態を表示する表示部を備え、
前記異常検出部は、前記表示部に前記ホストコンピュータの異常を知らせる表示をさせることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプリンタ。
【請求項5】
前記プリンタの状態を音で通知する音源を備え、
前記異常検出部は、前記音源から前記ホストコンピュータの異常を知らせる音を発生させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記所定時間を記憶する不揮発性記憶部を備え、
前記所定時間は、前記ホストコンピュータから送信される設定コマンドに応じて設定されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のプリンタ。
【請求項7】
ネットワークを介して通信可能に接続されたプリンタに対してコマンドまたはデータを送信するホストコンピュータであって、
前記プリンタに設定された所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタへ送信するプリンタ制御指示生成部を備え、
前記プリンタは、前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータからコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知することを特徴とするホストコンピュータ。
【請求項8】
ホストコンピュータと、該ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタと、を備えた印刷システムであって、
前記プリンタには、前記ホストコンピュータの動作確認用の所定時間が設定されており、
前記ホストコンピュータは、前記所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタに送信するプリンタ制御指示生成部を備え、
前記プリンタは、前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータの受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを通知する異常検出部を備えていることを有することを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
前記プリンタは、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記コマンドまたはデータを受信すると、前記経過時間をリセットし、前記経過時間の計測を再開することを特徴とする請求項8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記プリンタは、印刷媒体に印刷を行う印刷制御部を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記印刷制御部に前記ホストコンピュータの異常を知らせるメッセージを印刷させることを特徴とする請求項8又は9に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記プリンタは、該プリンタの状態を表示する表示部を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記表示部に前記ホストコンピュータの異常を知らせる表示をさせることを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載の印刷システム。
【請求項12】
前記プリンタは、該プリンタの状態を音で通知する音源を備え、
前記異常検出部は、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを受信しなかった場合、前記音源から前記ホストコンピュータの異常を知らせる音を発生させることを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載の印刷システム。
【請求項13】
前記プリンタは、前記所定時間を記憶する不揮発性記憶部を備え、
前記所定時間は、前記ホストコンピュータから送信される設定コマンドに応じて設定されることを特徴とする請求項8〜12の何れかに記載の印刷システム。
【請求項14】
ホストコンピュータと、該ホストコンピュータとネットワークを介して通信可能に接続され、該ホストコンピュータから送信されるコマンドまたはデータに応じて動作を行うプリンタと、を備え、前記プリンタに前記ホストコンピュータの動作確認用の所定時間が設定された印刷システムの制御方法であって、
前記ホストコンピュータから前記プリンタに前記所定時間よりも短い時間で定期的にリセット/スタートコマンドを前記プリンタに送信し、
前記プリンタが前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータの受信後、前記所定時間以内に前記ホストコンピュータから前記リセット/スタートコマンドを含むコマンドまたはデータを前記プリンタが受信しなかった場合、前記ホストコンピュータが異常状態にあることを前記プリンタから通知することを特徴とする印刷システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−196533(P2007−196533A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18243(P2006−18243)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】