説明

プリンターヘッド、画像形成装置。

【課題】プリンターヘッドの露光光量を低下させることなく、解像度を大幅に向上させることが可能なプリンターヘッド、およびこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】光学部材23は、全体が透明部材で形成された直方体状の部材であり、対角線方向に広がる互いに略直交する第一の光学面31および第二の光学面32を有する。即ち、第一の光学面31および第二の光学面32は、光学部材23の入射面23a〜23cに入射する光L1〜L3の光軸方向に対して略45°の角度でそれぞれ広がる面を成す。この第一の光学面31および第二の光学面32は、それぞれ一面側31a,32a、即ち感光ドラム3Kに向いた側から入射した光は反射させ、かつ他面側31b,32b、即ち感光ドラム3Kに背いた側から入射した光は透過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターヘッド、および画像形成装置に関し、詳しくは、感光体に対して高精細に露光可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンターとして、ラインプリンター(画像形成装置)が知られている。このラインプリンターは、被露光部となる感光体(感光体ドラム)に、帯電器、ライン状のプリンターヘッド、現像器、転写器などの装置を配置したものである。ラインプリンターは、帯電器によって帯電された感光体に、プリンターヘッドに配列された多数の発光素子の選択的な発光動作によって露光を行うことで静電潜像(結像)を形成する。
【0003】
そして、この静電潜像を現像器から供給されるトナーで現像して、そのトナー像を転写器で記録媒体(用紙)に転写するものである(例えば、特許文献1参照)。ライン状のプリンターヘッドに配列される発光素子としては、例えば、ガラスなどからなる基板上にエレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」という)のアレイが設けられた光源アレイを用いることが多い。
【0004】
近年、出力画像の高精細度化の流れに伴い、ラインプリンターの解像度の一層の向上が求められている。ラインプリンターの解像度を向上させるために、例えば、単位面積当たりの発光素子の形成数を増加させることが考えられる。また、プリンターヘッド自体のサイズを大型化して多数の発光素子を配置し、レンズ等の集光手段によって発光素子からの光を感光体に集光させることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−119882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ラインプリンターの解像度を向上させるために、単位面積当たりの発光素子の形成数を増加させると、個々の発光素子のサイズは必然的に小さくなる。このため、露光光量が低下して露光画像が不鮮明になる虞がある。
一方、プリンターヘッド自体のサイズを大型化して多数の発光素子を配置する場合、感光体が円筒形であるために、直径方向における中央部と端部とで感光体に届く光量やスポット径が大きく異なるので、これを補正する大規模な光学装置が必要となる。また、ラインプリンターが大型化するという課題もある。
【0007】
本発明にかかるいくつかの態様は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プリンターヘッドの露光光量を低下させることなく、解像度を大幅に向上させることが可能なプリンターヘッド、およびこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のようなプリンターヘッド、および画像形成装置を提供した。
すなわち、本発明のプリンターヘッドは、感光体に向けて光を照射して露光させるプリンターヘッドであって、
複数の発光素子がそれぞれ配列された第一の光源、および第二の光源と、前記第二の光源からの光を前記感光体に向けて反射させる第一の反射部、および前記第一の光源からの光を前記感光体に向けて透過させる第一の透過部が形成された第一の光学面を有する光学部材と、を少なくとも備え、前記第一の光源は前記感光体に対面する位置に配されるとともに、前記第二の光源は前記感光体に対して略直交な位置に配され、かつ、前記第一の光源と前記第二の光源とは、前記第一の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面を透過した光の光軸と、前記第二の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面で反射された光の光軸とが互い重ならない位置に配されることを特徴とする。
【0009】
このようなプリンターヘッドによれば、互いに直交するように配された第一、第二の光源からそれぞれ出射された光は、光学部材によってそれぞれの光の光軸が重ならないように感光体に向けて出射される。この時、感光体に入射する光の隣接するピッチは、それぞれの光源から出射される光よりも狭められる。これによって、それぞれの光源の形成ピッチを狭める、即ち発光光量を低下させること無く、感光体に形成(露光)させる画像の解像度を大幅に高めることが可能になる。
【0010】
前記プリンターヘッドには、複数の発光素子が配列された第三の光源が更に形成されるとともに、前記光学部材は、前記第三の光源からの光を前記感光体に向けて反射させる第二の反射部と、前記第一の光源および前記第二の光源からの光を前記感光体に向けて透過させる第二の透過部が形成され、前記第一の光学面と略直交する第二の光学面を更に備え、前記第三の光源は、前記第二の光源に対面するとともに前記感光体に対して略直交な位置に配され、かつ、前記第三の光源の発光素子から出射され前記第二の光学面で反射された光の光軸が、前記第一の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面および前記第二の光学面を透過した光の光軸、および前記第二の光源の発光素子から出射され第一の光学面で反射された光の光軸に対してそれぞれ重ならない位置に配されていればよい。
これによって、感光体に形成(露光)させる画像の解像度を更に高めることが可能になる。
【0011】
前記光学部材と前記感光体との間には、集光手段が更に形成されていればよい。
これによって、より一層鮮明な画像を感光体に露光させることができる。
【0012】
前記第一の反射部および前記第二の反射部は、透明部材に形成された反射膜であればよい。
このような構成によれば、透明部材の所定位置に反射膜を形成して直交させるだけで、比較的簡易な構成で低コストに光学部材を形成することができる。
【0013】
前記第一の透過部および前記第二の透過部は、反射部材に形成された開口であればよい。
このような構成によれば、反射部材の所定位置に開口を形成して直交させるだけで、比較的簡易な構成で低コストに光学部材を形成することができる。
【0014】
前記第一の光源、第二の光源および第三の光源は、互いに略同一の波長の光を照射すればよい。
単一の光を高解像度で感光体に照射させることが可能になる。
【0015】
本発明の画像形成装置は、前記各項記載のプリンターヘッドと、該プリンターヘッドによって露光される感光体とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図2】現像装置の構成を示す要部斜視図である。
【図3】発光装置としての発光素子アレイを示す平面図および断面図である。
【図4】本発明のプリンターヘッドを示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明のプリンターヘッドの他の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明のプリンターヘッドの他の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るプリンターヘッド、および画像形成装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
〔画像形成装置〕
図1は、本発明の一実施形態における画像形成装置の要部を示す断面図である。画像形成装置(以下、光プリンターと称する)1は、例えばフルカラー表示が可能なタンデム方式の光プリンターである。光プリンター1は、プリンターヘッドとしてのブラック用有機EL露光ヘッド2K、シアン用有機EL露光ヘッド2C、マゼンダ用有機EL露光ヘッド2M、及びイエロー用有機EL露光ヘッド2Yを備えている。
【0019】
また、光プリンター1は、各露光ヘッド(プリンターヘッド)2K,2C,2M,2Yの下方に、感光体としてのブラック用感光ドラム3K、シアン用感光ドラム3C、マゼンダ用感光ドラム3M、イエロー用感光ドラム3Yをそれぞれ備えている。更に、光プリンター1は、駆動ローラ4、従動ローラ5、テンションローラ6、及びテンションローラ6によりテンションを加えられて張架されながら図1中反時計周り方向へ循環駆動される中間転写ベルト7を備える。
【0020】
上記の各感光ドラム(感光体)3K,3C,3M,3Yは、中間転写ベルト7に対して所定間隔に配置されている。各感光ドラム3K,3C,3M,3Yは、中間転写ベルト7の駆動と同期して図1中時計周り方向へ回転駆動されるようになっている。そして、各露光ヘッド2K,2C,2M,2Yは、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの外周面を各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの回転に同期して順次ライン走査することで、描画データに応じた静電潜像を対応する感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成する。また、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの周囲には、感光ドラム3K,3C,3M,3Yの各外周面を一様に帯電させるコロナ帯電器8K,8C,8M,8Yが設けられている。
【0021】
また、光プリンター1は、ブラック用感光ドラム3Kの周囲にブラック用現像装置9Kを、シアン用感光ドラム3Cの周囲にシアン用現像装置9Cを、マゼンダ用感光ドラム3Mの周囲にマゼンダ用現像装置9Mを、イエロー用感光ドラム3Yの周囲にイエロー用現像装置9Yをそれぞれ備えている。
【0022】
これら各現像装置9K,9C,9M,9Yは、対応する各露光ヘッド2K,2C,2M,2Yによって各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成された静電潜像に対応する色の現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)を形成するものである。例えば、シアン用現像装置9Cは、シアン用有機EL露光ヘッド2Cによってシアン用感光ドラム3C上に形成された静電潜像にシアン色のトナーを付与して可視像(トナー像)を形成する。
【0023】
詳しくは、各現像装置9K,9C,9Yは、例えば、トナーとして非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を、例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着したトナーの膜厚を規制ブレードで規制する。この規制により、現像ローラを各感光ドラム3K,3C,3M,3Yに接触或いは押圧させることにより、各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成された静電潜像の電位レベルに応じて現像剤を付着させて可視像(トナー像)として現像する。
【0024】
更に、光プリンター1は、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの周囲に、各現像装置9K,9C,9Yで現像された可視像(トナー像)を一次転写対象である中間転写ベルト7に順次転写する一次転写ローラ10K,10C,10M,10Yを備えている。更にまた、光プリンター1は、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの周囲に、クリーニング装置11K,11C,11M,11Yを備えている。クリーニング装置11K,11C,11M,11Yは、一次転写の後に、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの表面に残留しているトナーを除去するためのものである。
【0025】
このような各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成されたブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各可視像(トナー像)は、一次転写ローラ10K,10C,10M,10Yによって中間転写ベルト7上に順次一次転写される。この一次転写により中間転写ベルト7上で順次重ね合わされてフルカラーとなった可視像(トナー像)は、二次転写ローラ18によって用紙等の記録媒体P上に二次転写され、一対の定着ローラ12を通ることで記録媒体P上に定着される。可視像(トナー像)が定着した記録媒体Pは、排紙ローラ13によって案内されて光プリンター1の上部に形成された排紙トレイ14上へ排出される。
【0026】
また、光プリンター1は、多数枚の記録媒体Pを保持する給紙カセット15、給紙カセット15から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ16、二次転写ローラ18の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ17を備えている。更に、光プリンター1は、中間転写ベルト7とで二次転写部を形成する二次転写ローラ18、及び二次転写後に中間転写ベルト7の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード19を備えている。
〔プリンターヘッド〕
【0027】
次に、本発明のプリンターヘッドの一例である、露光ヘッド(プリンターヘッド)2K,2C,2M,2Yの詳細について説明する。なお、ブラック用有機EL露光ヘッド2K、シアン用有機EL露光ヘッド2C、マゼンダ用有機EL露光ヘッド2M、及びイエロー用有機EL露光ヘッド2Yは、全て同じ構造をしているので、説明の便宜上、ブラック用有機EL露光ヘッド2Kについてのみ説明し、他の有機EL露光ヘッド2C,2M,2Yについては、その詳細な説明を省略する。
【0028】
図2は、露光ヘッド(プリンターヘッド)2Kを示す斜視図である。また、図4は露光ヘッド(プリンターヘッド)2Kの側断面図である。
露光ヘッド2Kは、一方向、即ち中間転写ベルト7の搬送方向に対して直交する方向に配設された断面コ字型の箱体21と、この箱体21の内面を成す3方の面21aから21cにそれぞれ配された第一発光素子アレイ(第一の光源)22a,第二発光素子アレイ(第二の光源)22b、および第三発光素子アレイ(第三の光源)22cとを備えている。また、これら第一発光素子アレイ22a,第二発光素子アレイ22b、第三発光素子アレイ22cに囲まれるように光学部材23が形成されている。
【0029】
図3は、光源としての発光素子アレイを示す図であって、(a)は発光素子アレイ22の上面図であり、(b)は(a)中のA−A線断面図である。なお、この発光素子アレイ22は、第一発光素子アレイ(第一の光源)22a,第二発光素子アレイ(第二の光源)22b、および第三発光素子アレイ(第三の光源)22cに共通の構成である。
図3(a)に示す通り、発光素子アレイ22は、基板S上に発光素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)24を複数個配列した構成である。本実施形態の発光素子アレイ22は、縦一列に等ピッチに配列された複数個(図3に示す例では8個)の有機EL素子24が3列配列されている。
【0030】
基板S上にはITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成される電極層Dが形成されており、この電極層Dの上部であって、複数の有機EL素子24の周囲には、その複数の有機EL素子24全体を囲むように隔壁としてのバンク25が形成されている。
【0031】
本実施形態におけるバンク25は、図3(a)に示す通り、複数の有機EL素子24全体を囲むように略四角形状を成している。図3(b)に示す通り、バンク25は、電極層D上に形成された親液性を有する絶縁体としての親液性バンク25aと、親液性バンク25a上に形成された撥液性バンク25bとから構成されている。親液性バンク25aの一部は、撥液性バンク25bより基板S中央側に張り出すようにして形成されている。親液性バンク25aは、元来、親液性を備えた材料であって、例えば、酸化珪素(SiO)で構成される。
【0032】
なお、親液性を備えていないものであって、通常用いられる公知の親液化処理を施すことで表面を親液化したものであってもよい。一方、撥液性バンク25bは、元来、撥液性を備えた材料、例えば、フッ素系樹脂で構成されたものであってもよい。また、撥液性を備えていないものであって、通常用いられるアクリル樹脂やポリイミド樹脂等の有機樹脂をパターン形成し、CFプラズマ処理等により表面を撥液化したものであってもよい。
【0033】
また、図3(a)に示す通り、バンク25によって基板Sの中央には有機EL素子24が配列される凹状領域26が形成されている。凹状領域26の底部であって、親液性バンク25aの開口が形成された部分の電極層Dは画素電極27とされている。本実施形態の画素電極27は平面形状が円形形状である。また、本実施形態の画素電極27は、縦一列に等ピッチに配列された複数個(図3に示す例では8個)形成されるとともに、横方向に3列配列されている。各画素電極27は、それぞれに独立した配線を介して図示しないデータ信号出力駆動回路に接続されている。このデータ信号出力駆動回路から出力された描画データ信号は画素電極27に供給される。
【0034】
また、凹状領域26の底部には、その全面を覆うようにして発光層28が形成されている。これにより、各画素電極27上にも発光層28が積層される。ここで、図3(b)を参照すると、凹部領域26に形成される発光層28は、撥液性バンク25bの近傍では盛り上がった形状であるが、それ以外の部分では、ほぼ平坦である。よって、画素電極層27上の発光層28(この発光層28は有機EL素子24の一部をなす)は、膜厚がほぼ均一に形成されている。つまり、所定の画素電極27上に形成される発光層28の膜厚と、他の画素電極27上に形成される発光層28の膜厚とはほぼ均一である。
【0035】
また、撥液性バンク25b及び発光層28上全面に渡って陰極29が形成されている。この陰極29は、データ信号出力駆動回路に接続されている。更に、陰極29上の全面には、封止部材30が形成されている。そして、前述した画素電極27と、画素電極27と相対して形成した陰極29と、画素電極27と陰極29との間に形成した発光層28とで有機EL素子24が構成される。
【0036】
再び図4を参照して、露光ヘッド2Kは、第一発光素子アレイ(第一の光源)22aの光出射面S1が感光ドラム(感光体)3Kに対面する位置に配される。また、第二発光素子アレイ(第二の光源)22bと、第三発光素子アレイ(第三の光源)22cとは、互いの光出射面S2と光出射面S3とが対面するとともに、感光ドラム(感光体)3Kに対して略直交な位置に配される。なお、図3に示した発光素子アレイ22では、有機EL素子(発光素子)24を感光ドラムの延長方向に沿って3列配列した例を示したが、図4における第一発光素子アレイ22a,第二発光素子アレイ22b、第三発光素子アレイ22cでは、それぞれの有機EL素子(発光素子)24a,24b,24cを図3の倍の6列配列した例を示している。
【0037】
第一発光素子アレイ22aの有機EL素子(発光素子)24aからは、光L1が光学部材23の入射面23aに向けて出射される。同様に、第二発光素子アレイ22bの有機EL素子(発光素子)24bからは、光L2が光学部材23の入射面23bに向けて出射され、第三発光素子アレイ22cの有機EL素子(発光素子)24cからは、光L3が光学部材23の入射面23cに向けて出射される。なお、これら光L1〜L3は、例えば略同一の波長の光であればよい。
【0038】
有機EL素子(発光素子)24a,24b,24cは、それぞれ隣接する有機EL素子どうしの形成ピッチが所定の間隔P1を保って形成される。また、互いに対面する第二発光素子アレイ22bの有機EL素子24bと、第三発光素子アレイ22cの有機EL素子24cとは、互いの光軸が重ならない位置にずらして配置されている。
【0039】
光学部材23は、全体が透明部材で形成された直方体状の部材であり、対角線方向に広がる互いに略直交する第一の光学面31および第二の光学面32を有する。即ち、第一の光学面31および第二の光学面32は、光学部材23の入射面23a〜23cに入射する光L1〜L3の光軸方向に対して略45°の角度でそれぞれ広がる面を成す。
【0040】
この第一の光学面31および第二の光学面32は、それぞれ一面側31a,32a、即ち感光ドラム3Kに向いた側から入射した光は反射させ、かつ他面側31b,32b、即ち感光ドラム3Kに背いた側から入射した光は透過させる。
【0041】
このような特性の光学部材23を実現するために、光学部材23の第一の光学面31には、第二発光素子アレイ(第二の光源)22bからの光L2を感光ドラム3Kに向けて反射させる第一の反射部34と、第一発光素子アレイ(第一の光源)22aおよび第三発光素子アレイ(第三の光源)22cからの光L1,L3を感光ドラム3Kに向けて透過させる第一の透過部35とが形成されている。
【0042】
また、第二の光学面32には、第三発光素子アレイ(第三の光源)22cからの光L3を感光ドラム3Kに向けて反射させる第二の反射部36と、第一発光素子アレイ(第一の光源)22aおよび第二発光素子アレイ(第二の光源)22bからの光L1,L2を感光ドラム3Kに向けて透過させる第二の透過部37とが形成されている。
【0043】
本実施形態おける第一の反射部34や第二の反射部36は、例えば、金属膜などの反射膜から形成されていれば良い。また、第一の透過部35や第二の透過部37は、これら反射部を成す金属膜どうしの間の光透過領域であればよい。
【0044】
第一の反射部34は、光学部材23の入射面23bから入射した第二発光素子アレイ22bの光L2の光軸と第一の光学面31とが交わる位置に選択的に形成されていれば良い。また、第二の反射部36は、光学部材23の入射面23cから入射した第三発光素子アレイ22cの光L3の光軸と第二の光学面32とが交わる位置に選択的に形成されていれば良い。
【0045】
光学部材23の出射面23d、即ち光学部材23と感光ドラム3Kとの間には、集光手段であるレンズアレイ38が形成されている。このレンズアレイ38は、光学部材23の出射面23dから出射される光L1〜L3を感光ドラム3Kに向けて集光させる。レンズアレイ38としては、例えば、微細なレンズを一面上に配列したMLA(microlens array)であればよい。代表的なものとして、例えば、SLA(セルフォック・レンズ・アレイ)がある(セルフォック;SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。
【0046】
以上のような構成の本発明の露光ヘッド(プリンターヘッド)を用いた画像形成装置の作用を説明する。
露光ヘッド(プリンターヘッド)2Kによって感光ドラム(感光体)3Kを露光させる際には、露光させる画像データに基づいて、第一発光素子アレイ(第一の光源)22a,第二発光素子アレイ(第二の光源)22b、および第三発光素子アレイ(第三の光源)22cを動作させ、有機EL素子(発光素子)24a,24b,24cを発光させる。
【0047】
第一発光素子アレイ22aの光出射面S1から出射された光L1は、入射面23aから透明な光学部材23に入射される。そして、光L1の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部35および第二の透過部37で第一の光学面31および第二の光学面32をそれぞれ透過する。そして、光学部材23の出射面23dに形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0048】
第二発光素子アレイ22bの光出射面S2から出射された光L2は、入射面23bから透明な光学部材23に入射される。そして、光L2の光軸に合致する位置に形成された第二の透過部37の透過前、または透過後に、光L2の光軸に合致する位置に形成された第一の反射部34によって、光L2は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材23の出射面23dに形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0049】
第三発光素子アレイ22cの光出射面S3から出射された光L3は、入射面23cから透明な光学部材23に入射される。そして、光L3の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部35の透過前、または透過後に、光L3の光軸に合致する位置に形成された第二の反射部36によって、光L3は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材23の出射面23dに形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0050】
このように、光出射面S1,S2,S3が互いに直交するように配された第一発光素子アレイ22a,第二発光素子アレイ22b、および第三発光素子アレイ22cからそれぞれ出射された光L1〜L3は、光学部材23によってそれぞれの光L1〜L3の光軸が重ならないように感光ドラム3Kに向けて出射される。
この時、感光ドラム3Kに入射する光L1〜L3の隣接するピッチP2は、それぞれの発光素子アレイ22a〜22cから出射される際の光L1,L2,L3のそれぞれのピッチP1の1/3となる。これによって、それぞれの発光素子アレイ22a〜22cを構成する有機EL素子(発光素子)24a〜24cの形成ピッチを狭める、即ち発光光量を低下させること無く、感光ドラム3Kに形成(露光)させる画像の解像度を大幅に高めることが可能になる。
【0051】
図5は、本発明のプリンターヘッドの別な一例を示す側断面図である。
この実施形態のプリンターヘッド40では、光学部材41として、互いに直交する2枚の透明板(透明部材)42a,42bによって第一の光学面43、および第二の光学面44をそれぞれ構成したものである。透明板42aには、例えば、金属膜などの反射膜からなる複数の第一の反射部45と、この第一の反射部45どうしの間の領域を成す第一の透過部46とが形成される。また、透明板42bには、金属膜などの反射膜からなる複数の第二の反射部47と、この第二の反射部47どうしの間の領域を成す第二の透過部48とが形成される。
【0052】
このような構成の光学部材41も、第一発光素子アレイ22aの光出射面S1から出射された光L1は、光L1の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部46および第二の透過部48で、第一の光学面43および第二の光学面44を成す透明板42a,42bをそれぞれ透過する。そして、光学部材41の出射側に形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0053】
また、第二発光素子アレイ22bの光出射面S2から出射された光L2は、光L2の光軸に合致する位置に形成された第二の透過部48の透過前、または透過後に、光L2の光軸に合致する位置に形成された第一の反射部45によって、光L2は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材41の出射側に形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0054】
更に、第三発光素子アレイ22cの光出射面S3から出射された光L3は、光L3の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部46の透過前、または透過後に、光L3の光軸に合致する位置に形成された第二の反射部47によって、光L3は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材41の出射面23dに形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0055】
このような構成の光学部材41によれば、2枚の透明板の所定位置に反射膜を形成して直交させるだけでよいので、比較的簡易な構成で低コストに光学部材41を形成することができる。
【0056】
図6は、本発明のプリンターヘッドの更に別な一例を示す側断面図である。
この実施形態のプリンターヘッド50では、光学部材51として、互いに直交する2枚の反射部材、例えば鏡面加工された金属板(反射部材)52a,52bによって第一の光学面53、および第二の光学面54をそれぞれ構成したものである。金属板52aには、この金属板52aを厚み方向に貫通する開口からなる複数の第一の透過部56と、この第一の透過部56どうしの間の領域を成す第一の反射部(反射領域)55とが形成される。また、金属板52bには、この金属板52bを厚み方向に貫通する開口からなる複数の第二の透過部58と、この第二の透過部58どうしの間の領域を成す第二の反射部(反射領域)57とが形成される。
【0057】
このような構成の光学部材51も、第一発光素子アレイ22aの光出射面S1から出射された光L1は、光L1の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部(開口)56および第二の透過部(開口)58で、第一の光学面53および第二の光学面54を成す金属板(反射部材)52a,52bをそれぞれ透過する。そして、光学部材51の出射側に形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0058】
また、第二発光素子アレイ22bの光出射面S2から出射された光L2は、光L2の光軸に合致する位置に形成された第二の透過部(開口)58の透過前、または透過後に、光L2の光軸に合致する位置に形成された第一の反射部(反射領域)55によって、光L2は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材51の出射側に形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0059】
更に、第三発光素子アレイ22cの光出射面S3から出射された光L3は、光L3の光軸に合致する位置に形成された第一の透過部(開口)56の透過前、または透過後に、光L3の光軸に合致する位置に形成された第二の反射部(反射領域)57によって、光L3は感光ドラム3Kの方向に反射される。そして、光学部材51の出射面23dに形成されたレンズアレイ38で集光され、感光ドラム3Kに入射する。
【0060】
このような構成の光学部材51によれば、2枚の反射部材、例えば金属板の所定位置に多数の開口を形成して直交させるだけでよいので、比較的簡易な構成で低コストに光学部材51を形成することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、画像形成装置(光プリンター)としてタンデム方式のフルカラー光プリンターを例示したが、これ以外にも、例えば、4サイクル方式のフルカラープリンタにも同様に適用可能である。4サイクル方式のフルカラープリンタは、感光ドラムの周囲に、本発明のプリンターヘッドと、帯電器と、回転可能なロータリ構成の現像装置とを備えて構成されている。ロータリ構成の現像装置は、例えば、イエロー現像ユニットと、シアン現像ユニットと、マゼンタ現像ユニットと、ブラック現像ユニットとが中心軸の周囲を回転可能に構成されている。また、単色のモノクロプリンターにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…画像形成装置(光プリンター)、2K,2C,2M,2Y…露光ヘッド(プリンターヘッド)、3K,3C,3M,3Y…感光ドラム(感光体)、22a…第一発光素子アレイ(第一の光源)、22b…第二発光素子アレイ(第二の光源)、22c…第三発光素子アレイ(第三の光源)、23…光学部材23、31…第一の光学面、32…第二の光学面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に向けて光を照射して露光させるプリンターヘッドであって、
複数の発光素子がそれぞれ配列された第一の光源、および第二の光源と、
前記第二の光源からの光を前記感光体に向けて反射させる第一の反射部、および前記第一の光源からの光を前記感光体に向けて透過させる第一の透過部が形成された第一の光学面を有する光学部材と、を少なくとも備え、
前記第一の光源は前記感光体に対面する位置に配されるとともに、前記第二の光源は前記感光体に対して略直交な位置に配され、かつ、前記第一の光源と前記第二の光源とは、前記第一の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面を透過した光の光軸と、前記第二の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面で反射された光の光軸とが互い重ならない位置に配されることを特徴とするプリンターヘッド。
【請求項2】
複数の発光素子が配列された第三の光源が更に形成されるとともに、
前記光学部材は、前記第三の光源からの光を前記感光体に向けて反射させる第二の反射部と、前記第一の光源および前記第二の光源からの光を前記感光体に向けて透過させる第二の透過部が形成され、前記第一の光学面と略直交する第二の光学面を更に備え、
前記第三の光源は、前記第二の光源に対面するとともに前記感光体に対して略直交な位置に配され、かつ、前記第三の光源の発光素子から出射され前記第二の光学面で反射された光の光軸が、前記第一の光源の発光素子から出射され前記第一の光学面および前記第二の光学面を透過した光の光軸、および前記第二の光源の発光素子から出射され第一の光学面で反射された光の光軸に対してそれぞれ重ならない位置に配されることを特徴とする請求項1記載のプリンターヘッド。
【請求項3】
前記光学部材と前記感光体との間には、集光手段が更に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のプリンターヘッド。
【請求項4】
前記第一の反射部および前記第二の反射部は、透明部材に形成された反射膜であることを特徴とする請求項3記載のプリンターヘッド。
【請求項5】
前記第一の透過部および前記第二の透過部は、反射部材に形成された開口であることを特徴とする請求項3記載のプリンターヘッド。
【請求項6】
前記第一の光源、第二の光源および第三の光源は、互いに略同一の波長の光を照射することを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のプリンターヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載のプリンターヘッドと、該プリンターヘッドによって露光される感光体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230459(P2011−230459A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104910(P2010−104910)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】