説明

プリンタ用紙

【課題】プリンタの印字障害を生じることなく、隠蔽はがき付きの印刷物を作る。
【解決手段】表面紙11、裏面紙12を一体に積層し、郵便はがき用の本体部Mと、表面紙11、裏面紙12を剥離可能に粘着するシール部Sとを区画設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、秘密情報を隠蔽し得る隠蔽はがき付きの印刷物を容易に作ることができるプリンタ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能の安価なプリンタが普及することにより、多くの宣伝用印刷物や通知用印刷物などがパーソナルコンピュータによって手軽に制作され、印刷されるようになって来ている。なお、これらの印刷物には、商品の注文情報や、通知に対する返信情報などを記載するために、はがき用紙を一体に組み込んで印刷することも少なくない。
【0003】
一方、これらの注文情報や返信情報には、個人情報に属する秘密情報が含まれることがあるから、印刷物と一体のはがき用紙も、秘密情報を隠蔽し得る隠蔽はがきとすることが好ましい。たとえば、はがき用紙の一端に粘着剤付きのシール部を連接し、粘着剤を覆うようにして保護剥離紙を貼着しておくと、印刷物の受取人は、はがき用紙に所定の情報を記入した上、保護剥離紙を剥がしたシール部をはがき用紙に貼り付けることにより、はがき用紙に記入した情報を隠蔽して郵送することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、保護剥離紙を貼着したシール部の部分は、他の部分よりも紙厚が厚くなるため、印刷物を制作する際に、プリンタ内における給紙動作の安定性が損なわれ、印字不良を生じたり、用紙にしわが発生したりして重大な印字障害が発生しがちであるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、表面紙、裏面紙を一体に積層することによって、プリンタの印字障害を生じることなく、隠蔽はがき付きの印刷物を容易に作ることができるプリンタ用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、表面紙、裏面紙を一体に積層して形成するプリンタ用紙であって、表面紙、裏面紙が剥離不能な郵便はがき用の本体部と、表面紙、裏面紙が再剥離可能なシール部とを区画設定し、シール部は、本体部に表示される秘密情報を隠蔽するために、本体部に貼着する隠蔽シールとして表面紙、裏面紙の一方を使用することをその要旨とする。ただし、ここでいう再剥離可能とは、本体部に対して、剥離可能に感圧接着し得ることをいう。
【0007】
なお、シール部は、本体部に連接して配置し、表面紙側に離型処理を施すことができ、または、本体部から分離して配置し、裏面紙側に離型処理を施すことができる。
【0008】
また、表面紙、裏面紙は、細幅の非接着部分を外周縁部に設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、本体部、シール部を包含するプリンタ用紙は、表面紙、裏面紙を一体に積層して形成され、全体の紙厚が均一であるから、プリンタにおける給紙動作が安定であり、印字障害を生じるおそれがない。なお、本体部は、郵便はがきとして使用するはがき用紙の部分であり、シール部は、表面紙、裏面紙を剥離させて分離し、その一方を粘着剤付きの隠蔽シールとして使用し、他方を粘着剤保護用の保護剥離紙として使用することができる。本体部、シール部は、それぞれ1以上の任意の枚数をプリンタ用紙内に区画設定することができる。また、本体部、シール部は、手作業による切離しを想定する場合、たとえばカット部2.5mm、タイ部1.0mmの切離し用のミシン線を介して区画することが好ましいが、表面紙、裏面紙の紙質や、プリンタの性能などにより適宜変更してもよい。なお、裁断機などの使用を想定する場合は、単なる区画位置の表示のみとしてもよい。
【0010】
表面紙、裏面紙は、郵便はがきの重量制限2〜6gを考慮すると、合計重量125〜212g/m2 の上質紙を使用するのがよく、たとえばマットコート紙81g/m2 を両者に使用するのが好適である。表面紙、裏面紙は、たとえば天然ゴム主成分の水性エマルジョン感圧性接着剤3g/m2 を使用して接着する。ただし、シール部以外は、感圧性接着剤を塗布した後、接着剤の固化を待たずに表面紙、裏面紙を積層して接着し、表面紙、裏面紙の層間破壊を生じる強接着を実現する。シール部は、表面紙、裏面紙の一方に離型処理することにより接着剤を投錨させず、他方のみに接着剤を投錨させることにより再剥離可能な本来の粘着性を維持することができる。なお、表面紙、裏面紙は、再剥離可能なシール部と、剥離不能なシール部以外とについて、異なる粘着剤、接着剤を使い分けて接着してもよい。
【0011】
シール部は、本体部に連接して配置することにより、シール部の裏面紙を粘着剤付きの隠蔽シールとして使用し、表面紙を粘着剤保護用の保護剥離紙として使用することができる。そこで、シール部の表面紙は、裏面紙側の粘着剤から剥離し易いように、たとえばシリコーン系の透明インキによる離型処理を施すことが好ましい。シール部の裏面紙は、本体部の裏面紙と連続しているから、本体部の表面紙上に折り重ねるようにして貼着することにより、本体部上の秘密情報を隠蔽することができる。
【0012】
なお、シール部の裏面紙には、隠蔽性を向上させるために、細かな連続文様をあらかじめ印刷しておくことが好ましい。また、本体部、シール部の境界部において、表面紙は、連続的なカット線を介して区画することが好ましく、裏面紙は、たとえばカット部2.0mm、タイ部1.5mmの折返し用のミシン線を介して区画することが好ましい。ただし、表面紙のカット線は、プリンタの給紙性能を考慮して必要最少限のタイ部を設け、たとえばタイ部1.0mm以下、カット部に対するタイ部の比0.1以下の切離し用のミシン線としてもよい。また、裏面紙の折返し用のミシン線は、単なる折返し用の小溝状の罫線に代えてもよく、これらの双方を省略して格別な区画を設けなくてもよい。
【0013】
シール部は、本体部と分離して配置することにより、シール部の表面紙を粘着剤付きの隠蔽シールとして使用し、裏面紙を粘着剤保護用の保護剥離紙として使用することができる。したがって、シール部の裏面紙側には、表面紙を剥離し易いように、離型処理を施すことが好ましく、表面紙には、隠蔽性を向上させるための連続文様を印刷しておくことが好ましい。シール部の表面紙は、四周を連続的なカット線、または必要最少限のタイ部を設ける切離し用のミシン線によって区画し、裏面紙から剥離して本体部に貼着し、本体部上の秘密情報を隠蔽する。
【0014】
表面紙、裏面紙は、感圧性接着剤を配置しない細幅の非接着部分を外周縁部に設けることにより、感圧性接着剤が周囲にはみ出したり、それによってプリンタの給紙性能が損なわれたりするおそれがない。なお、非接着部分の幅は、0.5mm程度に設定することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
プリンタ用紙10は、表面紙11、裏面紙12を一体に積層してなる(図1)。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれ全体平面図、同図(A)のX−X線矢視相当模式断面図である。
【0017】
プリンタ用紙10は、たとえばプリンタによって自動給紙可能なA5〜A3などの規格サイズに裁断されている。プリンタ用紙10は、区画線AB、CD、EF、GH、JKを介して区画することにより、郵便はがき用の本体部Mと、隠蔽シール用のシール部Sとが区画設定されている。ただし、図1において、シール部Sは、本体部Mに連接して配置されている。
【0018】
区画線AB、CD、EF、JKは、それぞれ表面紙11、裏面紙12に共通の切離し用のミシン線13である。また、区画線GHは、表面紙11側が連続的なカット線14であり、裏面紙12側が折返し用のミシン線15となっている。表面紙11、裏面紙12は、感圧性接着剤16を介して一体に接着されている。ただし、表面紙11、裏面紙12は、シール部Sにおいて、感圧性接着剤16と同質または異質の粘着剤16aを介して再剥離可能に粘着されており、本体部Mを含むシール部S以外において、剥離不能に接着されている。粘着剤16aは、感圧性接着剤16と同質の水性エマルジョン系であってもよく、異質であってもよい。
【0019】
なお、シール部Sの表面紙11には、離型処理17が施され、シール部Sの裏面紙12には、裏面紙12の透光性を少なくして隠蔽性を向上させるために、図示しない細かな連続文様が印刷されている。また、表面紙11、裏面紙12の外周縁部には、感圧性接着剤16を配置しない細幅の非接着部分16b、16b…が連続して残されている。なお、表面紙11の離型処理17は、シール部Sの外部に僅かにはみ出ていても構わない。連続文様は、隠蔽性を高めると同時に、粘着剤16aの投錨性を適切に維持するために、少なくとも紙面の50%以上が均一に分散して露出するような細密な文様を表面紙11、裏面紙12の接着に先き立って裏面紙12の粘着剤16a側に印刷しておくものとする。
【0020】
かかるプリンタ用紙10は、そのまま図示しないプリンタに給紙し、任意の宣伝情報や通知情報などを片面または両面に印刷することにより、隠蔽はがき付きの印刷物を作ることができる。すなわち、本体部Mは、区画線AB、CD、EF、JKの切離し用のミシン線13、13…を介してシール部Sとともにプリンタ用紙10から切り離し、郵便はがきとして使用することができる(図2)。ただし、図2(A)は、シール部Sの表面紙11を除去した状態の本体部M、シール部Sの平面図、同図(B)は、同図(A)のY−Y線矢視相当模式断面図、同図(C)は、隠蔽はがきとして完成させた状態の模式断面図である。なお、本体部Mの表面には、印刷物を作る際に、郵便はがきの宛名を宛名表示部21に印刷し、シール部Sの裏面紙12を折り重ねて隠蔽し得る範囲内に、注文情報や返信情報などの秘密情報を記入する情報記入部22を印刷するものとする。
【0021】
そこで、情報記入部22に所定の秘密情報を記入したら、シール部Sの表面紙11を剥離して裏面紙12上の粘着剤16aを露出させる(図2(A)、同図(B)の矢印方向)。すなわち、シール部Sの表面紙11は、裏面紙12側の粘着剤16aを保護する保護剥離紙23となっており、保護剥離紙23は、離型処理17を施してあるため、本体部Mの表面紙11との間のカット線14を介して容易に剥離することができる。
【0022】
つづいて、折返し用のミシン線15を介してシール部Sの裏面紙12を本体部M上に折り返し、粘着剤16aを介して本体部Mに貼着することにより(図2(C)の二点鎖線)、裏面紙12は、本体部Mの表面紙11上の秘密情報を隠蔽する隠蔽シール24として使用することができる。そこで、このようにして完成した隠蔽はがきをそのまま投函して郵送すればよい。隠蔽はがきの受取人は、隠蔽シール24を剥離して秘密情報を開封することができる。
【0023】
以上の説明において、本体部Mと、それに連接するシール部Sは、それぞれの1辺または2辺がプリンタ用紙10の外縁に一致するようにして配置してもよく(図3(A))、1枚のプリンタ用紙10内に複数組を区画設定してもよい(同図(B)、(C))。また、シール部Sは、本体部Mより小さくするに代えて、本体部Mと同形同大にしてもよい(同図(C))。さらに、シール部Sは、本体部Mの短辺側、長辺側のいずれに連接させてもよい。ただし、図3(A)〜(C)は、それぞれ別の実施の形態を示す図1(A)相当図である。なお、本体部M、シール部Sを区画する表面紙11側のカット線14は、プリンタ内においてシール部Sの表面紙11が不用意に剥離することがないように、必要最少限のタイ部を設けてもよく、このようなタイ部は、少なくともカット線14の両端を含むように設けることが好ましい。
【他の実施の形態】
【0024】
プリンタ用紙10には、本体部Mから分離してシール部Sを配置することができる(図4)。ただし、図4(A)、(B)は、それぞれ図1(A)相当図、図4(A)のZ−Z線矢視相当模式断面図である。
【0025】
本体部Mは、表面紙11、裏面紙12に共通の切離し用のミシン線13を介して区画されており、シール部Sは、表面紙11のみに形成する四周のカット線14を介して区画されている。また、シール部Sの裏面紙12には、粘着剤16aの下に離型処理17が施されており、表面紙11の粘着剤16a側には、隠蔽性を高めるための連続文様が印刷されている。そこで、シール部Sの表面紙11を剥離すると、粘着剤16a付きの隠蔽シール24として、本体部Mに貼着して本体部M上の秘密情報を隠蔽することができる。秘密情報が本体部Mの表面紙11側ではなく、裏面紙12側に記入される場合にも対応することができる。なお、このときのカット線14も、必要最少限のタイ部を設けることが好ましい。
【0026】
図4において、シール部Sは、1枚の本体部Mに対して複数枚を区画設定してもよく、それぞれの大きさを揃えてもよく、互いに異ならせてもよい。本体部Mに記入される秘密情報の量に応じて最適の隠蔽シール24を選択することができる。また、本体部M、シール部Sは、それぞれ複数枚を区画設定してもよく、プリンタ用紙10内における配置位置も、任意に設定することができる。
【0027】
また、以上の各実施の形態において、プリンタ用紙10は、A5〜A3などの規格サイズにするに代えて、プリンタの給紙機構が許容する限り、規格外のサイズであってもよい。また、プリンタ用紙10は、たとえばA4サイズごとに折畳み用のミシン線を介して連接させ、いわゆる連続フォーム形式としてもよく、折畳み用のミシン線を用いない連続ロール紙としてもよい。
【0028】
なお、表面紙11、裏面紙12を接着するに先き立ってシール部Sの裏面紙12または表面紙11に印刷する連続文様は、表面紙11、裏面紙12の接着後、プリンタ用紙としてプリンタに給紙して、所定の宣伝情報や通知情報などとともにプリンタによってシール部Sの裏面紙12または表面紙11の外面側に印刷することも可能である。この場合の連続文様は、粘着剤16aの投錨性を考慮する必要がないから、隠蔽性のみに着目して、任意のイラストや文字列としてもよく、一様な全面印刷(ベタ塗り)としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全体構成説明図
【図2】使用状態説明図
【図3】他の実施の形態を示す平面説明図
【図4】他の実施の形態を示す構成説明図
【符号の説明】
【0030】
M…本体部
S…シール部
10…プリンタ用紙
11…表面紙
12…裏面紙
16b…非接着部分
17…離型処理
24…隠蔽シール

特許出願人 福島印刷株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面紙、裏面紙を一体に積層して形成するプリンタ用紙であって、前記表面紙、裏面紙が剥離不能な郵便はがき用の本体部と、前記表面紙、裏面紙が再剥離可能なシール部とを区画設定し、該シール部は、前記本体部に表示される秘密情報を隠蔽するために、前記本体部に貼着する隠蔽シールとして前記表面紙、裏面紙の一方を使用することを特徴とするプリンタ用紙。
【請求項2】
前記シール部は、前記本体部に連接して配置し、前記表面紙側に離型処理を施すことを特徴とする請求項1記載のプリンタ用紙。
【請求項3】
前記シール部は、前記本体部から分離して配置し、前記裏面紙側に離型処理を施すことを特徴とする請求項1記載のプリンタ用紙。
【請求項4】
前記表面紙、裏面紙は、細幅の非接着部分を外周縁部に設けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のプリンタ用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−289806(P2006−289806A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114122(P2005−114122)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(591211205)福島印刷株式会社 (14)
【Fターム(参考)】