説明

プリンタ

【課題】間欠搬送される記録紙に対して主走査方向に走査しながら画像を印刷するプリントヘッドと、印刷処理済みの記録紙(先行する記録紙)にスイッチバック処理を実行するスイッチバック部とを備えたプリンタにおいて、記録紙への印刷処理中にプリントヘッドの走査時間間隔を変更することなく、先行する記録紙のスイッチバック処理に起因するバンディング等の発生を防止する。
【解決手段】プリント制御部において、前記記録紙への印刷処理中にスイッチバック部にて長尺サイズの記録紙に対してスイッチバック処理が実行されるか否かを予測し、実行されると予測した場合(ステップS5の判定がYESである場合)には、印刷待ち時間が発生するものと予測して、プリントヘッドの走査時間間隔を、該印刷待ち時間が実際に発生しないように、基準走査時間間隔Tkよりも長い所定時間間隔Tsに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するプリントヘッドを備えたプリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンタにおいて、装置の小型化や、プリント面の保護のために、印刷後の記録紙を搬送する搬送経路の途中にスイッチバック装置を設けるようにしたものが知られている。
【0003】
このスイッチバック装置は、例えば特許文献1に示すように、搬送経路の途中に設けられた正転・逆転可能な一対のローラを含み、プリントヘッドによって印刷されて該プリントヘッド側から搬送された記録紙を、前記一対のローラによって引き込んだ後に、排出口側に送り出すことによって、前記記録紙の搬送方向を変更する(スイッチバック処理を実行する)ように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−76672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の特許文献1に示すプリンタでは、前記プリントヘッドによる記録紙への印刷処理中に、前記スイッチバック装置において先行する記録紙のスイッチバック処理(後処理)が実行される場合がある。この場合に、例えば、該先行する記録紙のサイズが長尺サイズであったとすると、その後処理に要する時間が長くなって印刷待ち時間(印刷処理が一時的に中断する時間)が発生してしまう。この結果、印刷処理が中断する前後の印刷画像の境界位置にバンディング(縦筋)が生じて、印刷画像の画質低下を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送経路に沿って、間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するプリントヘッドと、印刷処理済みの記録紙に後処理を実行する後処理装置とを備えたプリンタにおいて、先行する記録紙の後処理に起因するバンディング等の印刷不良の発生を防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、この発明では、プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に後処理装置において先行する記録紙の後処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するか否かを予測して、印刷待ち時間が発生すると予測した場合には、プリントヘッドの走査時間間隔を、印刷待ち時間が実際に発生しないように基準走査時間間隔よりも長く設定するようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するプリントヘッドと、該プリントヘッドよりも搬送下流側に配設され、該プリントヘッドによる印刷処理が終了した記録紙に後処理を実行する後処理装置と、を備えたプリンタを対象とする。
【0009】
そして、前記プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に前記後処理装置において印刷処理済みの記録紙に対し後処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するか否かを予測する予測手段と、前記予測手段による予測結果に基づいて、前記プリントヘッドの走査時間間隔を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された走査時間間隔で前記プリントヘッドを走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行する印刷制御手段と、を備え、前記設定手段は、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生しないと予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を前記基準走査時間間隔に設定する一方、前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を、該印刷待ち時間が実際に発生しないように、前記基準走査時間間隔よりも長い所定時間間隔に設定するよう構成されているものとする。
【0010】
これによれば、前記プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に後処理装置において印刷処理済みの記録紙に対し後処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するか否かが予測手段により予測される。そして、予測手段により印刷待ち時間が発生すると予測される場合には、プリントヘッドによる実際の印刷処理実行時に印刷待ち時間が発生しないよう、前記設定手段によって、プリントヘッドの走査時間間隔が基準走査時間間隔よりも長い所定時間間隔に設定される。
【0011】
したがって、プリントヘッドによる記録紙への印刷処理中に、先行する記録紙の後処理に起因して印刷待ち時間が発生するのを防止することができ、延いては、印刷画像中にバンディングが発生するのを防止することができる。
【0012】
一方、予測手段により印刷待ち時間が発生しないと予測される場合には、前記設定手段によって、プリントヘッドの走査時間間隔が基準走査時間間隔に設定される。
【0013】
したがって、この基準走査時間間隔を、例えば、印刷画像の画質品質を維持することができる範囲の下限値とすることで、印刷処理時間の短縮化を図ることができる。
【0014】
なお、本明細書において「走査時間間隔」とは、前の走査が終了してから次の走査が開始するまでの時間であって、前の走査と次の走査との間でプリントヘッドを待機させる時間である。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記予測手段は、前記印刷待ち時間が発生するか否かの予測を、前記プリントヘッドによる前記記録紙への印刷処理の実行前に行うように構成されており、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合に、該印刷待ち時間の長さを推定する印刷待ち時間推定手段と、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合に、前記プリントヘッドによる前記記録紙への印刷処理の開始から終了までに必要なプリントヘッドの全走査回数を推定する走査回数推定手段と、をさらに備え、前記設定手段は、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を、次式の関係を満たす前記所定時間間隔に設定するように構成されているものとする。
【0016】
Ts=Tk+Tw/(N−1)
Tk:前記基準走査時間間隔
Ts:前記所定時間間隔
Tw:前記印刷待ち時間の長さ
N :前記プリントヘッドの全走査回数
これによれば、予測手段によって発生すると予測される印刷待ち時間を、プリントヘッドの各走査間での待機時間(=走査時間間隔)に均等に割り振ることができる。
【0017】
これにより、プリントヘッドHの走査時間間隔を必要以上に長くすることなく、印刷待ち時間の発生を確実に防止することができる。よって、印刷処理時間の短縮化を図りつつ、印刷画像の画像品質を可及的に向上させることができる。
【0018】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記後処理装置は、前記プリントヘッドよりも搬送下流側の搬送経路に配設されていて、前記記録紙を、その先端側から受け入れて搬送方向を変更した後に後端側から排出するスイッチバック処理を実行するように構成されているものとする。
【0019】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、前記予測手段は、前記プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に前記後処理装置において所定長さ以上の記録紙に対しスイッチバック処理が実行されるか否かを予測して、実行されると予測した場合には、前記印刷待ち時間が発生するものと予測するように構成されているものとする。
【0020】
これら請求項3及び4の発明これによれば、前記記録紙への印刷処理中に、後処理装置において長尺の記録紙(所定サイズ以上の記録紙)に対してスイッチバック処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のプリンタによると、プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に後処理装置において先行する記録紙の後処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するか否かを予測して、該印刷待ち時間が発生すると予測した場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を、該印刷待ち時間が実際に発生しないように、基準走査時間間隔よりも長く設定するようにしたので、前記記録紙への印刷処理中に、先行する記録紙の後処理に起因して、当該印刷処理が中断する印刷待ち時間が発生するのを防止することができ、延いては、印刷画像中にバンディング等の画像不良が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す、プリント前側の斜め右側から見た斜視図である。
【図2】プリンタの内部の構成を示す、プリンタ右側から見た概略図である。
【図3】印刷部及びキャップ部の構成を示す、プリンタ左側から見た図である。
【図4】マガジン開口部のシャッタローラが閉状態にあるときの開閉シャッタ機構を示す、プリンタ右側から見た側面図である。
【図5】マガジン開口部のシャッタローラが開状態にあるときの開閉シャッタ機構を示す、プリンタ右側から見た側面図である。
【図6】図2のVI-VI線断面図である。
【図7】ガイド部の構成を示す概略図であって、(a)は幅狭サイズの記録紙を搬送するために、中央ガイド部材が使用位置にある状態を示し、(b)は幅広サイズの記録紙を搬送するために、中央ガイド部材が不使用位置にある状態を示す。
【図8】記録紙保持部Dの構成を示す断面図である。
【図9】印刷部のプラテンの構成を示す平面図である。
【図10】プラテンの下側に設けられた区画室の構成を示す概略平面図であって、(a)は幅狭サイズの記録紙がプラテン上を通過している状態を示し、(b)は幅広サイズの記録紙がプラテン上を通過している状態を示す。
【図11】プラテンの凹部に収容されたインク吸収部材を示す断面図である。
【図12】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、切断後搬送ローラ対より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図13】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図12相当図である。
【図14】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図15】プリント制御部におけるプリントヘッドの走査時間間隔の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット式のプリンタAの構成を一部省略して示す斜視図である。このプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行い必要な補正処理等を行う受付ブロック200(図14参照)から通信ケーブルを介して伝送される画像データを、オーダ情報に基づいて記録紙Pに対して印刷を行うように構成されている。
【0025】
−全体構成−
図2はプリンタAの構成を示す概略図である。図2に示すように、前記プリンタ(インクジェット式プリント装置)Aは、ロール状の記録紙Pを収容するためにプリンタ下部に設けられた記録紙収容部1と、該記録紙収容部1から引き出された記録紙Pに対して画像データの記録印刷を行うようにプリンタ上部に設けられた印刷部2とを備えている。
【0026】
前記プリンタAの上部で、前記印刷部2の搬送下流側には、印刷後の記録紙Pを所定のプリントサイズに切断するカッター部4、切断後の記録紙Pをスイッチバックさせることで印刷面の向きを変更するスイッチバック部5、該記録紙Pの裏面に整理番号等を印字するための裏面印字ユニット6、記録紙Pの印刷面を乾燥させるための乾燥ユニット7、ロール状に巻かれた記録紙Pのカールを取り除いて排出するためのデカールユニット8、排出された記録紙Pをそのサイズに応じてプリンタ左右方向(図2の紙面に垂直な方向)の一側に振り分けるためのコンベア装置150、振り分けられたB5サイズやA4サイズ等の大判の記録紙Pを受け止めるための大判トレイ104(図1参照)、及びL版等の写真サイズの記録紙Pを受け止めてオーダ毎に集積するための集積装置210が配設されている。なお、前記プリンタAは、前記大判トレイ104や集積装置210以外が筐体3によって覆われており、筐体3の下面には移動用のキャスター3aが取り付けられている。
【0027】
前記記録紙収容部1は、印刷部2のほぼ真下に位置していて、記録紙Pを収容するための2つのマガジンM1,M2を収容可能になっている。マガジンM1,M2は、上下方向に並んで配設されており、各マガジンM1,M2内には、ロール状の記録紙Pが、巻芯Rにより保持された状態で収容されている。本実施形態では、マガジンM1内には、幅広サイズ(例えば幅が12インチを上回る)のロール状記録紙Pが収容されており、マガジンM2内には、幅狭サイズ(例えば幅が12インチ以下)のロール状記録紙Pが、その軸心方向に二列に並んで収容されている。
【0028】
なお、この実施形態では、プリンタAは手差し供給ユニット9を備えており、これによって、手差し供給ユニット9から供給されるシート状の記録紙Pに対しても印刷可能になっている。
【0029】
前記印刷部2は、記録紙Pに対してインクを吐出し、それによって多数のインクドットからなる画像を形成するプリントヘッドHと、プリントヘッドHの下方に設けられ記録紙Pを印刷位置に吸着保持する記録紙保持部Dとを備えている。
【0030】
前記プリントヘッドHは、主走査方向Xに延びるガイドレール10(図3参照)に沿って移動可能に構成されている。具体的に、駆動モータ11の回転力がプーリ46を介して駆動ベルト12に伝達され、駆動ベルト12の回転量に応じてプリントヘッドHが主走査方向Xに移動するようになっている。
【0031】
さらに、プリントヘッドHは、副走査方向に並ぶ2つのヘッドユニット13,13を有しており、これらのヘッドユニット13,13に設けられているインク吐出ノズルからインクを吐出することで、記録紙Pに対して所定の画像や文字等を印刷できるようになっている。
【0032】
前記インクジェットプリンタAの左右両側の下部には、それぞれ、互いに色相の異なるインクが封入された7つのインクカートリッジ(図示省略)が着脱可能に収容されている。したがって、これらのインクカートリッジをケースから着脱することにより、使用中又は使用済みのものを新しいものに交換できるようになっている。
【0033】
なお、これらのインクカートリッジには、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、レッド(R)、バイオレット(V)及びクリア(CL:透明)の各インクが封入されている。
【0034】
−記録紙搬送機構−
図2に示すように、前記プリンタAには、ロール状に巻かれた長尺の記録紙Pを収容する記録紙収容部1がプリンタ下部に設けられる一方、記録紙収容部1から記録紙Pを引き出して所定の搬送経路に沿って搬送しつつ画像の印刷や切断等の各種処理を行う記録紙搬送機構が収容された搬送機構収容部20がプリンタ上部に設けられている。
【0035】
なお、本実施形態では、前記記録紙収容部1から記録紙Pを供給する以外にも、手差しトレイ102から手差しローラ対27を介して所定サイズの記録紙を供給できるように構成された手差し供給ユニット9も備えているが、以下、主に記録紙収容部1から記録紙Pを供給する場合について説明する。なお、以下の説明において、手差しトレイ102が設けられる側をプリンタ前側と定義し、その反対側をプリンタ後側と定義する。また、プリンタ前側から見て左側をプリンタ左側と定義し、右側をプリンタ右側と定義する。
【0036】
前記記録紙収容部1には、前述の如く、2つのマガジンM1,M2が収容されており、
幅広サイズの記録紙Pに印刷を行う場合には、マガジンM1内に収容された記録紙Pが、その先端部から引き出されてガイドローラ21によりガイドされながらマガジンローラ対22によりマガジン外へと送り出される。マガジン外に送り出された記録紙Pは、上流側が2つに分岐するガイド部23のプリンタ後側の分岐部23bを通って、記録紙搬送機構をなす供給ローラ24と該供給ローラ24に対向配置された一対の圧着ローラ24a,24bとの間に挟み込まれる。
【0037】
前記供給ローラ24の回転により搬送された記録紙Pは、搬送下流側の印刷部2に供給され、プリントヘッドHによって記録紙Pに対して画像の印刷が行われる。
【0038】
幅狭サイズの記録紙Pに印刷を行う場合には、マガジンM2内に収容された2つのロール状記録紙Pの双方又は一方が、その先端部から引き出されて、引き出された記録紙Pは、ガイドローラ21によりガイドされながらマガジンローラ対22によりマガジン外へと送り出される。マガジン外に送り出された記録紙Pは、前記ガイド部23のプリンタ前側の分岐部23aを通って、前記供給ローラ24と前記一対の圧着ローラ24a,24bとの間に挟み込まれて、印刷部2へと供給され、プリントヘッドHによって記録紙Pに対して画像の印刷が行われる。
【0039】
前記ガイド部23は、記録紙Pの先端部を搬送経路からずれないように案内するとともに、各記録紙Pの幅方向の位置決めを行うためのものである。
【0040】
印刷後の記録紙Pは、印刷後搬送ローラ対25によりカッター部4に送られて所定のプリントサイズに切断される。切断後の記録紙Pは、3つの切断後搬送ローラ対26によりスイッチバック部5へと受け渡される。なお、これら3つの切断後搬送ローラ対26は、記録紙Pをスイッチバック部5へと受け渡した後に、同時に圧着解除して次に搬送されてくる記録紙Pの受け入れに備える。
【0041】
スイッチバック部5では、切断後の記録紙Pを、その先端側から受け入れてスイッチバックローラ対173により引き込んだ後に、搬送方向を水平方向から垂直方向(図2の左右方向から上下方向)に変更して後端側から排出する。
【0042】
スイッチバック部5から排出された記録紙Pは、供給ローラ対175により裏面印字ユニット6に送られて記録紙Pの裏面に整理番号等が印字された後、乾燥ユニット7へと搬送される。
【0043】
乾燥ユニット7では、記録紙Pを搬送ローラ対28によって搬送しながらその印刷面の乾燥処理が行われる。乾燥処理が終了した記録紙Pは、搬送ローラ対29によってデカールユニット8に送られる。
【0044】
前記デカールユニット8では、ロール状に巻かれた記録紙Pのカールを取り除くために、駆動搬送ローラ81とデカールローラ82とで記録紙Pを挟持搬送しながら、デカールローラ82を駆動搬送ローラ81の外周面に沿って図2の時計回り方向に移動させる。これにより、記録紙Pはそのカール方向とは反対方向に曲げられた状態でデカールされて、排出口90からコンベア装置150の搬送ベルト151上に排出される。
【0045】
−各構成要素の詳細−
以下、プリンタAの各構成要素について詳細に説明する。前記記録紙収容部1には、前記マガジンM1,M2をそれぞれ載置するためのスライド台30が設けられている。スライド台30は、筐体3内の左右両側に設けられてプリンタ前後方向に延びる図示しないリニアガイド等により、プリンタ前後方向にスライド自在に構成されている。これにより、スライド台30をスライド移動させることで、マガジンM1,M2を筐体3内から出し入れできるようになっている。このスライド台30の前面は、筐体3の一部をなすとともに開閉可能な扉部材31によって覆われており、この扉部材31を開放状態にすることで、前記記録紙Pの取り替え作業が行えるようになっている。
【0046】
なお、以下の説明において、図2(マガジンM1,M2を記録紙収容部1にセットした状態を示す図)の左側をマガジン前側と定義し、右側をマガジン後側と定義する。また、図2の紙面に垂直な方向をマガジン長さ方向(プリンタ左右方向に一致する方向)と定義する。
【0047】
前記マガジンM1,M2は、持ち運び可能に構成された略密閉状の箱型容器とされている。マガジンM1,M2の上面におけるマガジン前側の端部には、マガジンM1,M2内に収容された記録紙PをマガジンM1,M2外へと引き出すための開口部111が形成されている。開口部111は、マガジン長さ方向に延びる略矩形状をなしている。マガジンM1,M2には、この開口部111を開閉するための開閉シャッタ機構120が設けられている。
【0048】
開閉シャッタ機構120は、図4及び図5に示すように、巻芯Rから引き出された記録紙Pを開口部111まで導くガイド板114と、ガイド板114に対して圧着された状態と圧着が解除された状態とを切り換えることが可能なシャッタローラ115と、シャッタローラ115を駆動するためのカム機構116とを有している。
【0049】
前記シャッタローラ115は、マガジンM1,M2の開口部111に沿ってマガジン長さ方向に延設されている。シャッタローラ115の軸方向両端部にはそれぞれ、シャッタローラ115よりも小径の小径軸部115aが形成されている。シャッタローラ115は、この小径軸部115aを、マガジンM1,M2の長さ方向の両側壁面に形成された長孔120cに係合して支持されている。この小径軸部115aは、不図示の付勢バネによりガイド板114側に常時付勢されて前記カム機構116の一部を構成する可動プレート117に当接している。
【0050】
前記カム機構116は、前記可動プレート117と、不図示のモータによって駆動される偏心カム118とを有している。なお、図中の符号118aは、モータの出力軸を示している。
【0051】
前記可動プレート117には、マガジン前後方向に延びる2つの長孔117aが形成されている。可動プレート117は、この2つの長孔117aをマガジン側面から突出する2本の固定軸117bに係合させることで、マガジン前後方向にスライド移動可能になっている。
【0052】
可動プレート117のマガジン後側の端部には、略矩形状の穴部117cが形成されている。そして、この穴部117cの内周面が、前記偏心カム118のカム面と当接する当接面を構成している。
【0053】
偏心カム118は、モータの出力軸118aに対し偏心して取り付けられている。モータのマガジン後側には、モータの原点を検出するための近接センサ119が設けられており、モータの出力軸118aには棒状の検出用ドグ118bが取り付けられている。
【0054】
このように構成された開閉シャッタ機構120の動作について具体的に説明する。図4は、シャッタローラ115がガイド板114に対して圧着した状態を示している。この状態では、偏心カム118がモータの出力軸118aに対してマガジン後側に位置している。そして、モータを図4の時計回り方向に駆動すると、偏心カム118がモータの出力軸118aと共に時計回り方向に回動して、出力軸118aに対しマガジン前側に移動することとなる。この結果、可動プレート117のカム当接面が、偏心カム118によってマガジン前側に押圧されて、可動プレート117がマガジン前側へとスライド移動する。これにより、可動プレート117が、小径軸部115aを前記付勢バネの付勢力に抗してマガジン前側へと移動させる。これに伴い、シャッタローラ115もマガジン前側へと移動して、ガイド板114とシャッタローラ115との間に隙間が生じることにより開口部111が開かれることとなる。
【0055】
このように本実施形態では、マガジンM1,M2の開口部111に、モータ駆動式の開閉シャッタ機構120を設けるようにしたので、プリンタAを稼働させない場合には、モータによりシャッタローラ115を強制的に閉じることができる。したがって、シャッタローラ115が開いた状態でマガジンM1,M2が長期間放置されることにより、マガジンM1,M2内の空気が乾燥するのを防止して、該マガジンM1,M2内の記録紙Pをひび割れ等から保護することができる。
【0056】
マガジンM1,M2内部の記録紙収容室S1,S2に設けられたマガジンローラ対22は、マガジン駆動ローラ32及びマガジン従動ローラ33からなる圧着型ローラ対である。
【0057】
ここで、幅広サイズの記録紙Pが収容されるマガジンM1では、マガジン駆動ローラ32及びマガジン従動ローラ33とが共に、一本の円筒状ローラにより構成されている。
【0058】
一方、幅狭サイズの記録紙Pが収容されるマガジンM2では、マガジン従動ローラ33が一本の円筒状ローラにより構成されているのに対し、マガジン駆動ローラ32は、左側分割ローラ32aと右側分割ローラ32bとの2本の円筒状ローラを直列に(同軸に)配設して構成されている。このマガジン駆動ローラ32を構成する左右の分割ローラ32a,32bはそれぞれ、筐体3内に配設された左右のモータ91に接続されて独立に駆動可能になっている。この左右のモータ91,91のうちの一方(本実施形態では、左側の駆動モータ91)は、上記マガジンM1内に設けられたマガジン駆動ローラ32の駆動源としても利用される。
【0059】
上記マガジンM2内のマガジン駆動ローラ32を構成する左右の分割ローラ32a,32bは、各記録紙Pの幅に対応する長さに設定されている。そして、マガジンM2内に収容された左右二列の記録紙Pを共に引き出す場合には、左右の分割ローラ32a,32bが共にモータ91によって駆動される。また、マガジンM2内に収容された二列の記録紙Pの一方のみを引き出す場合には、該一方の記録紙Pに対応する分割ローラ32a,32bのみがモータ91によって駆動される。マガジンM1内に収容された幅広サイズの記録紙Pを引き出す場合には、該マガジンM1内に配設されたマガジン駆動ローラ32が、上記左側のモータ91により駆動される。
【0060】
ここで、図6では、左右の分割ローラ32a,32bはそれぞれ、モータ91に直結されているが、実際には、モータ91は筐体3内のモータ取付け台に固定されていて、マガジンM1が所定の位置にセットされると、左右のモータ91がそれぞれ、各分割ローラ32a,32bに対して不図示のギヤ機構を介して連結されるようになっている。また、左側のモータ91は、マガジンM2が所定の位置にセットされることで、該マガジンM2内のマガジン駆動ローラ32にも連結される。
【0061】
前記供給ローラ24は、一本の円筒状ローラで構成されている。供給ローラ24は、前記モータ91とは別の不図示のモータによって駆動され、記録紙Pを記録紙収容部1から引き出して印刷部2側へ搬送する正方向の回転と、該記録紙Pを記録紙収容部1内へ戻す逆方向の回転とが切換可能なように構成されている。これにより、前記供給ローラ24よりも搬送下流側のカッター部4で記録紙Pの印刷済みの部分を所定サイズに切断した後、長尺の記録紙Pを上流側に戻して記録紙Pの先頭から印刷を行う場合や、長尺記録紙Pではなく手差し供給ユニット9から記録紙Pを供給する場合等において、長尺の記録紙Pを記録紙収容部1内に戻すことができるようになっている。
【0062】
このように、本実施形態では、マガジンM2内のマガジン駆動ローラ32は2つの分割ローラ32a,32bで構成され、各分割ローラ32a,32bはそれぞれ異なる駆動モータ91によって独立に駆動可能になっている。したがって、前述の如く、このマガジン駆動ローラ32を構成する左右の分割ローラ32a,32bの駆動を制御することで、マガジンM2内の記録紙Pのうち必要な記録紙Pだけを選択的に引き出すことができる。尚、各ローラ24,32a,32bを駆動するモータ(駆動モータ91等)は、後述する搬送制御部202により制御される。
【0063】
ところで、本実施形態では、マガジンM2内のマガジン駆動ローラ32を分割化するようにしているが、供給ローラ24を分割化するようにしたとしても、本実施形態と同様に、左右の分割ローラを選択的に駆動することで必要な記録紙Pだけを引き出すことができる。しかしながら、供給ローラ24は、マガジン駆動ローラ32に比べて高い搬送精度が要求されるため、幅狭サイズの記録紙Pを二列同時に搬送する場合には、左右の分割ローラを高い精度で同期させる必要がある。このため、各分割ローラを駆動するモータを高精度化する必要があり、コストが増加するという問題がある。これに対して、マガジン駆動ローラ32は、供給ローラ24に比べて要求される搬送精度が低いため、本実施形態の如く、マガジン駆動ローラ32を分割化するようにすれば、幅狭サイズの記録紙Pを二列同時に搬送するときでも、両分割ローラ32a,32bの同期精度を比較的低く設定することができて、該各分割ローラ32a,32bを駆動するモータ91を高精度化することなく、要求される搬送精度を十分に確保することができる。
【0064】
ガイド部23は、図7に示すように、プリンタ左右方向に互いに所定間隔(幅広サイズの記録紙Pの幅に対応する間隔)を隔てて並ぶ左右一対のガイド部材41,42と、両ガイド部材41,42の間に配設される中央ガイド部材43とを有している。
【0065】
前記左右のガイド部材41,42は、断面コ字状をなしていて、互いのコ字開口側が対向するように配設されている。また、左右のガイド部材41,42は、プラテン45の主走査方向Xの中央を通るプリンタ中央面95に対して左右対称になるように配設されている。そして、幅広サイズの記録紙Pに印刷を行う際には、該記録紙Pの幅方向両側端部がそれぞれ両ガイド部材41,42の溝部41a,42aに嵌挿されつつその搬送が行われる。これにより、記録紙Pの幅方向位置が規制されて、記録紙Pが所定の搬送経路から幅方向にずれるのを防止することができる。
【0066】
中央ガイド部材43は、不図示の送り機構(例えばボールネジ機構)により支持されていて、記録紙Pの搬送面とほぼ同じ面上に位置する使用位置(図7(a)に示す位置)と、記録紙Pの搬送面よりもプリンタ前側に位置する不使用位置(図7(b)に示す位置)との間で移動可能に構成されている。
【0067】
中央ガイド部材43は、略直方体形状の部材からなり、該中央ガイド部材43の幅方向中央を通る面が前記プリンタ中央面95に一致している。中央ガイド部材43は、その長手方向に垂直な断面形状が略H字状に形成されており、中央ガイド部材43の左右両側面にはそれぞれコ字状の溝部43aが形成されている。
【0068】
そして、幅狭サイズの記録紙Pに印刷を行う際には、中央ガイド部材43が前記送り機構によって前記使用位置に移動される。この結果、該記録紙Pの幅方向両端部のうち前記プリンタ中央面95側に位置する端部が、中央ガイド部材43の溝部43aに嵌挿されつつその搬送が行われる。この搬送中、記録紙Pのプリンタ中央面95側とは反対側に位置する端部は、前記左右のガイド部材41,42によってガイドされる。これにより、幅狭サイズの記録紙Pの幅方向位置を規制することができる。一方、幅広サイズの記録紙Pに印刷を行う際には、中央ガイド部材43が前記送り機構により前記不使用位置に移動されて、記録紙Pの幅方向位置は前記左右のガイド部材41,42によってのみ規制されることとなる。
【0069】
前記印刷部2は、図3に示すように、前記プリントヘッドHを主走査方向X(記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)と垂直な方向)に案内する2本のガイドレール10と、2つのプーリ46(図3では1つのみ示す)に巻き掛けられ且つプリントヘッドHを該ガイドレール10に沿って往復移動させるための駆動ベルト12と、該プーリ46を回転駆動させる駆動モータ11と、プリントヘッドHにより印刷を行うことが可能な位置に吸着保持する記録紙保持部Dと、この記録紙保持部Dの下流側に配設された圧着型の印刷後搬送ローラ対25とを備えている。ここで、前記主走査方向Xは、プリンタ左右方向(記録紙Pの幅方向でもある)に相当し、副走査方向Yは、プリンタ前後方向(記録紙Pの長手方向でもある)に相当する。
【0070】
前記プリントヘッドHの底面(後述する記録紙保持部Dと対向する面)には、それぞれ複数のインク吐出ノズルが副走査方向Y(記録紙搬送方向)に列をなすように設けられた2つのヘッドユニット13が設けられており、これら2つのヘッドユニット13が互いに副走査方向Yに間隔を空けて並んでいる。
【0071】
前記各ヘッドユニット13は全て同一構成であり、それぞれ、主走査方向Xに配設された前記各インクを吐出する複数のノズルアレイから構成されている。各ノズルアレイには、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット13は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。
【0072】
ここで、前記各ヘッドユニット13の構成としては特に限定されるものではないが、本実施形態における各ヘッドユニット13は、インク吐出ノズル毎に設けられ且つ、インクの充填された圧力室の容積を、圧電素子(ピエゾ素子)によって変動させることでインクを吐出する一般的なピエゾ方式とされている。
【0073】
なお、ヘッドユニット13は2つである必要はなく、1つや3つ以上であってもよい。
【0074】
そして、記録紙保持部D上の記録紙Pは、記録紙保持部Dの上流側に設けられた供給ローラ24により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向に一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向の各位置で、各ヘッドユニット13のインク吐出ノズルからインクが吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が記録紙Pに印刷されることになる。
【0075】
また、プリントヘッドHの主走査方向Xのプリント領域外の位置には、印刷を行っていない場合にプリントヘッドHが待機するための待機位置が設定されており、この待機位置には、キャップ部52が設けられている。
【0076】
このキャップ部52は、プリントヘッドHを使用しないときに、インクの増粘を防止すべくプリントヘッドHのヘッドユニット13に密着させるものであり、ヘッドユニット13に対応して副走査方向Yに二列に並ぶ吸引キャップ14を備えている。そして、キャップ部52は、プリントヘッドHの底面に密着する位置と、プリントヘッドHの底面から離れた位置との間で昇降する。
【0077】
前記プリントヘッドHのプリンタ後側の端部には、ガイド孔55を有する軸受けホルダ部56が形成され、プリンタ前側の端部には、主走査方向に延びる板状のガイドプレート57が形成されている。そして、プリントヘッドHは、前記軸受けホルダ部56のガイド孔55にプリンタ後側のガイドレール10を嵌挿した状態で、ガイドプレート57をプリンタ前側のガイドレール10上に載置することで支持されている。この構成によれば、紙詰まり等が発生した場合には、プリントヘッドHをプリンタ後側のガイドレール10を支点として上側に回動させることで、詰まった紙を容易に取り除くことができる。
【0078】
一方、プリントヘッドHの待機位置においては、プリントヘッドHの下面にキャップ部52が密着した際に、該ヘッドHが浮き上がるのを防止する機構が設けられている。この機構は、固定部材53に回動可能に支持された押圧ローラ54を含んでいて、ガイドプレート57をこの押圧ローラ54とガイドレール10との間で挟持することで、プリントヘッドHのプリンタ前側の端部が上下方向に移動するのを規制する。これにより、プリントヘッドHにキャップ部52が密着したときの、該ヘッドHの浮き上がりを防止して、インクの増粘を確実に防止することが可能となる。
【0079】
前記記録紙保持部Dは、図8及び図9に示すように、プリントヘッドHのプリント領域に対応して表面(上面)に開口する複数の吸着孔60が形成され且つフラッシング領域に対応してフラッシング孔61が形成されたプラテン45と、プラテン45におけるプリントヘッドHのプリント領域下方に設けられ吸着孔60と連通する空間62と、該空間62内の空気を吸引排気することで吸着孔60を介してプラテン45の表面上に負圧を発生させ記録紙Pをプラテン45の表面上に吸着保持する吸引ファン(図示省略)と、を備えている。
【0080】
前記空間62の下側には、吸引ファンや後述する開閉機構64が収容される器機収容空間65が形成されている。
【0081】
前記空間62は、主走査方向Xに並ぶ隔壁によって複数(本実施形態では6つ)に区画されている(図10参照)。各区画室66の下面には、前記器機収容空間65に連通する連通孔67が形成されている。各区画室66の連通孔67にはそれぞれ開閉板67aが設けられている。各開閉板67aは、主走査方向Xに延びる支持軸68回りに回動することで各連通孔67を開閉可能に構成されている。
【0082】
開閉板67aは、不図示の付勢バネによって、支持軸68回りに図8の時計回り方向に付勢されていて、器機収容空間65内に収容された開閉機構64によって開閉駆動される。この開閉機構64は、主走査方向Xに延びるカム軸69と、カム軸69に回転一体に取り付けられた6つ(図8ではそのうちの4つのみを示す)の回転板カム70と、カム軸69を回転駆動するための不図示のカム駆動モータとを有している。
【0083】
前記6つの回転板カム70は、各開閉板67aの位置に対応して、主走査方向Xに互いに所定の間隔を隔てて配設されている。各回転板カム70には、円弧状のカム面が形成されている。各回転板カム70のカム面の形状(カムプロフィール)は、後述する開閉板67aの選択的な開閉動作を実現できるように設定されている。
【0084】
前記カム駆動モータによってカム軸69が回転駆動されると、カム軸69の回転角に応じて、所定の回転板カム70のカム面が、開閉板67aのカム当接面67bに当接し、開閉板67aを押し上げる。この結果、開閉板67aは、支持軸68を中心に上側(図8の反時計回り方向)に回動し、連通孔67の周縁部に沿って設けられたシール材71に密着する。こうして、連通孔67が開閉板67aによって閉塞される。連通孔67が閉塞された区画室66には、吸引ファンの吸引力が作用しなくなるので、当該区画室以外の区画室66に吸引ファンの吸引力が集中的に作用することとなる。
【0085】
本実施形態では、このことに着目して、記録紙Pの幅寸法に応じて、不要な吸着孔60(記録紙Pの搬送経路外に位置する吸着孔60)に吸引力が作用しないように、各連通孔67を選択的に塞ぐようにすることで、吸引ファンの吸引力を、必要な吸着孔60に集中的に作用させて、記録紙Pの平面性を確保するようにしている。
【0086】
具体的には、図10に示すように、マガジンM2内に収容された二列の記録紙Pのうちプリンタ左側の記録紙Pに印刷を行う場合には、6つの区画室66のうちプリンタ右側(つまり記録紙Pが通過する側とは反対側)に位置する3つの区画室66の連通孔67を開閉板67aによって閉塞する。同様に、プリンタ右側の記録紙Pに印刷を行う場合には、プリンタ左側に位置する3つの区画室66の連通孔67を開閉板67aによって閉塞する(図10(a)参照)。また、マガジンM1内に収容された幅広サイズの記録紙Pに印刷を行う場合には、6つの区画室66のうちプリンタ左右方向の両端に位置する区画室66の連通孔67を開閉板67aによって閉塞する(図10(b)参照)。一方、二列の記録紙Pに対し同時に印刷を行う場合には、各開閉板67aを全て開状態にして、6つの区画室66の連通孔67を全て開放する。
【0087】
このような開閉板67aの選択的な開閉動作は、後述する搬送制御部202にて前記カム駆動モータの回転位相を制御することで実現される。なお、本実施形態では、開閉板67aを支持軸68回りに回動させることで、不要な吸着孔60に吸引ファンの吸引力を作用させないようにしたが、例えば、プラテン45の下面(裏面)に主走査方向に並ぶ複数枚の開閉板67aを設けて、各開閉板67aを副走査方向Yにスライドさせるようにしてもよい。
【0088】
前記フラッシング孔61は、インクの増粘を防止するために印刷開始時にプリントヘッドHのインク吐出ノズルから吐出される少量のインクを受け止めるためのものであり、フラッシング孔61に吐出された廃インクは、廃棄管を介して不図示の廃液タンクに貯留される。
【0089】
前記プラテン45の支持面45aには、さらに、副走査方向Yに延びる凹部45cが形成されている。この凹部45cには、インク吸収部材72(図9参照)が収容されている。このインク吸収部材72は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット13)より吐出したインクの一部が支持面45a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン45の支持面45aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部45cは、支持面45aにおいて支持面45a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。
【0090】
図11に示すように、各凹部45cの底面は、副走査方向Yの一側から他側に向かって水平に延びた後に下側に傾斜している。凹部45cの副走査方向Yの一側端部には第1係合凹部45dが形成され、凹部45cの副走査方向Yの他側端部には第2係合凹部45eが形成されている。
【0091】
インク吸収部材72は、凹部45cに沿って副走査方向Yに延びる略直方体状に形成されている。そして、インク吸収部材72は、取付部材74を介して前記凹部45cに着脱可能に収容されている。インク吸収部材72が凹部45cに収容された状態では、インク吸収部材72の長手方向は副走査方向Yに一致している。
【0092】
前記取付部材74は、上面にインク吸収部材72が固定される側面視略台形状の基部74aと、基部74aの長手方向の一側端部に接続されて該一側に突出する第1係合突部74bと、基部74aの長手方向の他側端部に接続される可撓片74cとを有している。
【0093】
前記インク吸収部材72は、基部74aの上面に取付けネジ(図示省略)を介して取り外し可能に固定される。
【0094】
前記可撓片74cの下端部は、基部74aの長手方向の他側端部おける下端部に接続されている。そして、可撓片74cは、基部74aとの接続部を支点として、基部長手方向に撓むことが可能に構成されている。可撓片74cの上端部には、基部長手方向の他側に向かって略水平に延びる爪部74dが形成されている。また、可撓片74cの上下方向の中間部には、基部長手方向の他側に突出する第2係合突部74eが形成されている。
【0095】
インク吸収部材72を凹部45cに収容した状態では、基部74aに設けられた第1係合突部74bが前記第1係合凹部45dに係合し、第2係合突部74eが前記第2係合凹部45eに係合している。この凹部45cに収容されたインク吸収部材72を交換する際には、作業者は、爪部74dを指先で引っ掛けて副走査方向Yの一側に押圧しながら上側に持ち上げる。そうすると、可撓片74cが副走査方向Yの一側に撓むことで第2係合突部74eと前記第2係合凹部45eとの係合が解除され、基部74aが第1係合突部74bを支点として上側に持ち上がることとなる(図11の二点鎖線を参照)。これにより、作業者は、取付部材74をインク吸収部材72と共に凹部45cから取り外すことができる。作業者は、取付部材74を取り外した後、前記取付けネジを緩めてインク吸収部材72を新しいものに交換する。そして、交換後のインク吸収部材72を取付部材74と共に凹部45cに再度セットすることで、インク吸収部材72の交換作業が終了する。
【0096】
このように、本実施形態では、インク吸収部材72を取付部材74を介して凹部45cに収容するようにしたことで、インク吸収部材72の形状を複雑化することなく、その交換作業を容易化することができる。
【0097】
前記カッター部4は、記録紙Pの搬送経路の下側に配置された固定刃4aと、記録紙Pの搬送経路の上側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃4aに対して上下方向に移動する可動刃4bとで構成され、可動刃4bが記録紙Pの上側から下側に移動することで記録紙Pを切断する。この切断による切り屑は、筐体3の下部に配設された屑箱(図示省略)に落下して収容される。
【0098】
スイッチバック部5は、記録紙Pをスイッチバックさせて、コンベア装置150の搬送ベルト151上で記録紙Pの印刷面が上面を向くように、記録紙Pの後端側から搬送経路に排出させるものである。
【0099】
図2、図12及び図13に示すように、前記スイッチバック部5には、下側の駆動ローラ173aと上側の従動ローラ173bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対173と、このスイッチバックローラ対173の上流側において搬送路を挟むように設けられ、切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対173へ導く一対の第1ガイド部材174と、スイッチバックした記録紙Pを後述する裏面印字ユニット6へ供給する圧着型の供給ローラ対175と、スイッチバックローラ対173と供給ローラ対175との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対175へ導く一対の第2ガイド部材176とが設けられている。
【0100】
前記スイッチバックローラ対173の駆動ローラ173aは、モータ(図示省略)により、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0101】
前記スイッチバックローラ対173及び第1ガイド部材174は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対173の駆動ローラ173aの回転軸周りに一体的に移動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対173の駆動ローラ173aに対する従動ローラ173bの相対位置が、図12に示すように駆動ローラ173aに対してほぼ真上に位置して、記録紙Pをプリンタ後側へ搬送する第1の位置と、図13に示すように駆動ローラ173aに対してプリンタ後側に位置して、スイッチバックされた記録紙Pを後端側から裏面印字ユニット6へ供給する第2の位置とに切り換えられるようになっている。
【0102】
ここで、前記切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせるスイッチバック動作について説明する。スイッチバックローラ対173が、切断後搬送ローラ対26より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ173aは正回転しており、従動ローラ173bは第1の位置にある。そして、記録紙Pの後端が第1ガイド部材174に位置するような量だけスイッチバックローラ対173により記録紙Pをプリンタ後側へ搬送したところで(図12参照)、駆動ローラ173aの正回転を停止する。
【0103】
このとき、前記記録紙Pの先端部は、記録紙Pの自重により下方に湾曲して撓んでいる。なお、記録紙Pにコシがあって自重で撓まない場合には、搬送方向の下流側に設けられた湾曲ガイド板177にその先端部が当接することで、湾曲ガイド板177に沿って下方に折り曲げられるようになっている。
【0104】
続いて、前記スイッチバックローラ対173及び第1ガイド部材174を、図12で時計回り方向に回動させて従動ローラ173bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの後端側(プリンタ前側)が持ち上げられる。
【0105】
その後、前記駆動ローラ173aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側からプリンタ上側に配置された供給ローラ対175の側へ向けて搬送する。スイッチバックローラ対173によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材174及び第2ガイド部材176を通って、供給ローラ対175のところに達する。
【0106】
なお、本実施形態では、スイッチバックローラ対173の駆動ローラ173aの周りに従動ローラ173bを移動させることで、スイッチバックローラ対173の位置を第1の位置と第2の位置とに切り換えるようにしたが、この形態に限定するものではなく、例えば、駆動ローラ173aと従動ローラ173bとを両方とも移動可能な構成として、スイッチバックローラ対173全体の位置を変更することで第1の位置と第2の位置とを切り換えるようにしてもよい。
【0107】
また、本実施形態では、スイッチバックローラ対173を、記録紙Pを搬送する駆動ローラ173aと、駆動ローラ173aに従動して回転する従動ローラ173bとで構成したが、従動ローラ173bを駆動可能とすることで、スイッチバックローラ対173をなすローラを両方とも駆動ローラ173aで構成するようにしてもよい。
【0108】
スイッチバック部5の下側には、上側に開放する記録紙回収箱83が設けられている。この記録紙回収箱83は、エラー(例えば紙詰まりエラー等)が発生した場合に、搬送経路に残された記録紙Pを回収するためのものである。エラー発生時には、搬送経路に残された記録紙Pは、記録紙搬送機構によってスイッチバック部5へと搬送される。スイッチバック部5では、当該記録紙Pを受け取って回収箱83へと排出する。これにより、エラー発生時に、搬送経路に残された記録紙Pを、プリンタカバー(筐体3)の必要な箇所を開けたりすることなく容易に取り除くことができる。
【0109】
前記裏面印字ユニット6は、ドットインパクト式のサーマルプリンタからなるものであって、記録紙Pの裏面側(搬送経路に対してプリンタ後側)に配設されている。
【0110】
前記裏面印字ユニット6の搬送下流側には、裏面印字後の記録紙Pを送り出す搬送ローラ対28が配設されている。そして、該搬送ローラ対28の回転により、記録紙Pが搬送下流側の乾燥ユニット7へと搬送される。
【0111】
前記乾燥ユニット7は、乾燥装置153内に空気を取り込むための吸入ファン154と、この吸入ファン154で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ155と、加熱ヒータ155で加熱された空気を乾燥風として記録紙Pの印刷面に吹き付ける排気ノズル部156とで構成されている。
【0112】
前記デカールユニット8は、駆動搬送ローラ81と、駆動搬送ローラ81の周りに移動可能に構成されたデカールローラ82とを有している。デカールユニット8は、記録紙Pの種類(ロール紙/シート紙)に応じて、デカールローラ82の位置を搬送位置とデカール位置とに切り換える。
【0113】
前記搬送位置は、デカールローラ82が駆動搬送ローラ81の真上に存在する位置として定義される。この搬送位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされることなく搬送される。
【0114】
前記デカール位置は、デカールローラ82を前記搬送位置から駆動搬送ローラ81周りに時計回り方向に回動させた位置として定義される。このデカール位置では、記録紙Pは、両ローラ81,82によってデカールされつつ搬送される。
【0115】
デカールユニット8は、乾燥ユニット7から搬送されてきた記録紙Pが、前記手差し供給部から供給されたシート状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82を前記搬送位置に制御する一方、記録紙PがマガジンM1,M2から引き出されたロール状の記録紙Pである場合には、デカールローラ82を前記デカール位置に制御するようになっている。これにより、手差し供給部から供給された記録紙Pを不必要にカールすることなく、マガジンM1,M2から引き出された記録紙Pを確実にデカールすることができる。
【0116】
前記集積装置210は、コンベア装置150から搬送された記録紙Pを集積するためのものであり、プリンタ前側が開口した箱型の集積本体部211と、集積本体部211内の上下両端に配設されたローラ対(図示省略)に適当なテンションを有した状態で巻き掛けられた無端状の集積ベルト213と、集積ベルト213の外周面に略等間隔に設けられた集積プレート212とを備えている。ローラ対は、集積ベルト213を回転させて集積プレート212を搬送方向に移動させるための駆動モータ(図示省略)に接続されている。
【0117】
前記複数枚の集積プレート212のうち、集積本体部211外部に露出している集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して下方に移動する一方、集積本体部211内部に収容されている集積プレート212は、集積ベルト213の回転動作に追従して上方に移動するように構成されている。すなわち、集積プレート212は、集積ベルト213とともに、ローラ対の周囲を連続して回転可能に構成されている。
【0118】
前記集積プレート212は、搬送ベルト151の下流側の記録紙Pの受け渡し位置において、プレート表面が水平で且つ搬送ベルト151のベルト面と略面一になるように待機しており、所定のプリントオーダに対応した枚数が集積された後、次のオーダの記録紙Pが搬送される前に、集積ベルト213により下方に搬送される。
【0119】
−制御系の構成−
本インクジェットプリンタは、制御系として、図14に示すように、マイクロプロセッサ201(以下、CPUという)と、このCPU201とデータバスを介して接続された搬送制御部202、ヘッド制御部203、プリント制御部204、半導体メモリRAM/ROM205、通信インタフェース206とを備えている。
【0120】
前記搬送制御部202は、前記記録紙搬送機構の動作制御を行う。ヘッド制御部203は、プリントヘッドHを主走査方向に往復移動させるための駆動ベルト12を駆動させると共に、各圧電素子に所定波形の電圧を供給することによってプリントヘッドHの制御を行うものである。通信インタフェース206は、受付ブロック200との間で情報の送受信を行うためのものである。プリント制御部204は、受付ブロック200から通信インタフェース206を介して受信した画像データに基づき、記録紙Pに対して画像データの印刷を実現するための制御を行う。ここで、オーダ情報には印刷を行う記録紙Pの大きさ等を特定するためのプリントチャンネル情報と、印刷枚数等を特定するためのプリントフォーム情報とが含まれている。
−プリントヘッドの制御−
前記プリントヘッドHは、前述したように、間欠搬送される記録紙Pに対し、主走査方向Xに往走査及び復走査されながら、その各走査の最中に所定のタイミングでインクを吐出することで、記録紙Pに多数のインクドットからなる画像を印刷する。
【0121】
ここで、本実施形態の如く、スイッチバック部5を備えたプリンタAでは、スイッチバック部5におけるスイッチバック処理の時間が長くなると、スイッチバック部5の上流側において、記録紙Pの搬送を停止せざるを得なくなる。
【0122】
この結果、プリントヘッドHによる記録紙Pへの印刷処理を中断する印刷待ち時間Twが発生して、この中断を挟んだ前後の印刷画像の境界にバンディングが発生してしまうことになる。
【0123】
そこで、本プリンタAでは、プリントヘッドHを予め設定された基準走査時間間隔Tkで走査させることで前記記録紙Pへの印刷処理を実行した場合に、前記印刷待ち時間Twが発生するか否かを、当該記録紙Pへの印刷処理開始前に予測して、この予測を基に、プリントヘッドHの走査時間間隔を設定することで、印刷待ち時間Twの発生を防止するようにしている。
【0124】
こうした、印刷待ち時間Twが発生するか否かの予測は、プリントチャンネル情報に予め含まれる、記録紙Pのサイズ情報等を基に、プリント制御部204にて行われる。
【0125】
プリント制御部204は、前記印刷待ち時間Twが発生しないと予測した場合には、プリントヘッドHの走査時間間隔を前記基準走査時間間隔Tkに設定する一方、印刷待ち時間Twが発生すると予測した場合には、該印刷待ち時間Twが実際に発生しないように、プリントヘッドHの走査時間間隔を前記基準走査時間間隔Tkよりも長い所定時間間隔Tsに設定する。
【0126】
そして、プリント制御部204は、ヘッド制御部203に対して、プリントヘッドHを前記設定した走査時間間隔で駆動するように指令を出すとともに、搬送制御部202に対して、記録紙PをプリントヘッドHの走査に同期して間欠搬送するように指令を出す。
【0127】
プリント制御部204は、1つの画像の印刷を開始してから終了するまでの間は、プリントヘッドHの走査時間間隔を、該印刷開始前に設定した値に維持する。
【0128】
次に、プリント制御部204におけるプリントヘッドHの走査時間間隔の設定処理について、図15のフローチャートを基に具体的に説明する。なお、以下のステップS4の予測処理、並びに、ステップS7及びS8の推定処理は、プリントヘッドHの走査時間間隔が前記基準走査時間間隔Tkに等しいとの仮定の下で行われる。
【0129】
ステップS1では、前記記録紙Pへの印刷開始要求が有ったか否かを判定して、この判定がNOであるときにはリターンする一方、YESであるときにはステップS2に進む。
【0130】
ステップS2では、プリントチャンネル情報を基に、印刷処理済みの記録紙Pのサイズ情報、及び、印刷処理済みの記録紙Pの印刷時刻情報を読み込む。
【0131】
ステップS3では、印刷を開始しようとする記録紙Pのサイズ情報、及び、印刷する画像の画像情報を読み込む。
【0132】
ステップS4では、前記記録紙Pへの印刷処理中に先行する記録紙Pのスイッチバック処理が実行されるか否かを予測する。そして、この予測がNOである場合にはステップS11に進む一方、この予測がYESである場合にはステップS5に進む。
【0133】
ステップS5では、プリントチャンネル情報を基に、ステップS4でスイッチバック処理が実行されると予測した記録紙Pの長さ(搬送方向長さ)が所定長さ以上であるか否かを判定し、この判定がNOである場合にはステップS11に進む一方、この判定がYESである場合にはステップS6に進む。
【0134】
ステップS6では、先行する記録紙Pのスイッチバック処理に起因する印刷待ち時間Twが発生するものと予測し、この印刷待ち時間Twの長さを推定するためのプログラムを呼び出す。
【0135】
ステップS7では、呼び出したプログラムを実行することで印刷待ち時間Twの長さを推定する。具体的には、スイッチバック部5にてスイッチバック処理が実行されると予測される記録紙Pの搬送方向の長さや、印刷部2からスイッチバック部5までの搬送経路長さを基に、印刷待ち時間Twを推定する。
【0136】
ステップS8では、ステップS3で読み込んだ、印刷を開始しようとする記録紙Pのサイズ情報や、該記録紙Pに印刷しようとする画像の画像情報を基に、当該印刷の開始から終了までに要するプリントヘッドHの全走査回数Nを推定する。
【0137】
ステップS9では、プリントヘッドHの走査時間間隔を、前記基準走査時間間隔Tkよりも長い所定時間間隔Tsに設定する。具体的には、ステップS6で予測した印刷待ち時間Twと、ステップS8で推定した全走査回数Nとを基に、所定時間間隔TsをTs=Tw/(N−1)として算出する。そして、プリントヘッドHをこの設定した走査時間間隔で走査させるべく、ヘッド制御部203に対して必要な制御信号を出力する。
【0138】
ステップS10では、記録紙PをプリントヘッドHの走査に同期して間欠搬送するよう、搬送制御部202に対して必要な制御信号を出力し、しかる後にリターンする。
【0139】
ステップS4又はS5の判定がNOである場合に進むステップS11では、印刷待ち時間Twが発生しないものと予測する。
【0140】
ステップS12では、プリントヘッドHの走査時間間隔を基準走査時間間隔Tkに設定する。そして、プリントヘッドHをこの設定した走査時間間隔で走査させるべく、ヘッド制御部203に対して必要な制御信号を出力し、しかる後にステップS10に進む。
【0141】
このように、前記実施形態では、プリント制御部204は、前記仮定(プリントヘッドHの走査時間間隔が基準走査時間間隔Tkに等しいとの仮定)の基で前記記録紙Pへの印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中にスイッチバック部5にて所定長さ以上の記録紙P(以下、長尺の記録紙Pという)に対しスイッチバック処理が実行されるか否かを判定して、実行されると判定した場合には、印刷待ち時間Twが発生すると予測する。そして、プリント制御部204は、印刷待ち時間Twが発生すると予測した場合(ステップS5の判定がYESの場合)には、該印刷待ち時間Twが実際に発生しないように、前記プリントヘッドHの走査時間間隔を基準走査時間間隔Tkよりも長い所定時間間隔Tsに設定する。
【0142】
したがって、前記プリントヘッドHによる記録紙Pへの印刷処理中に、スイッチバック部5にて長尺の記録紙Pに対するスイッチバック処理が実行されたとしても、当該印刷処理が中断することなく、プリントヘッドHの走査時間間隔を一定に維持しながら印刷処理を実行することができる。したがって、印刷画像中にバンディングや色むらが発生するのを防止して、印刷画像の画質を向上させることができる。
【0143】
また、前記実施形態では、プリント制御部204は、前記所定時間間隔Tsを、Ts=Tw/(N−1)+Tk(Tw:前記印刷待ち時間の長さ、N:前記プリントヘッドの全走査回数)なる関係を満たすように設定するようになっている。
【0144】
このため、ステップS6で予測した印刷待ち時間Twを、プリントヘッドHの各走査間での待機時間(=走査時間間隔)に均等に割り振ることができる。したがって、印刷処理中におけるプリントヘッドHの走査時間間隔を必要以上に長くすることなく、印刷待ち時間Twの発生を防止することができる。よって、印刷処理時間の短縮化を図りながら印刷画像の画像品質を可及的に向上させることができる。
【0145】
また、前記実施形態では、プリント制御部204は、印刷待ち時間Twが発生しないと予測した場合(ステップS4又はS5の判定がNOである場合)には、プリントヘッドHの走査時間間隔を基準走査時間間隔Tkに設定する。したがって、この基準走査時間間隔Tkを、例えば、印刷画像の画質品質を維持することができる範囲の下限値とすることで、印刷処理時間の短縮化を図ることができる。
【0146】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、プリント制御部204は、前記所定時間間隔Tsを、Ts=Tw/(N−1)+Tk(Tw:前記印刷待ち時間の長さ、N:前記プリントヘッドの全走査回数)なる関係を満たすように設定しているが、これに限ったものではなく、所定時間間隔Tsは、Ts>Tw/(N−1)+Tkなる関係を満たす時間間隔であればよい。
【0147】
また、前記実施形態では、プリント制御部204において、印刷待ち時間Twが発生するか否かの判定を、スイッチバック部5にて処理される記録紙Pのサイズに基づいて行うようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、スイッチバック部5から乾燥ユニット7までの搬送経路長さや、乾燥ユニット7における記録紙Pの搬送速度等も考慮して、この判定を行うようにしてもよい。この場合、スイッチバック部5及び乾燥ユニット7が後処理装置を構成することとなる。
【0148】
また、前記実施形態では、プリント制御部204において、プリントヘッドHによる前記記録紙Pへの印刷処理を開始する前に印刷待ち時間Twが発生するか否かを予測して、印刷待ち時間Twが発生すると予測される場合には、プリントヘッドHの走査時間間隔を、所定時間間隔Tsに設定して該印刷処理中一定に維持するようにしているが、これに限ったものではなく、プリントヘッドHによる前記記録紙Pへの印刷処理と並行して印刷待ち時間Twの予測処理を実行することで、予測した印刷待ち時間Twの変化に応じて、プリントヘッドHの走査時間間隔を変化させるようにしてもよい。
【0149】
具体的には、例えば、プリント制御部204において、プリントヘッドHの走査時間間隔がT1,T2,T3(Tk<T1<T2<T3:Tk基準走査時間間隔)となる3つの走査パターンを予め記憶しておき、予測される印刷待ち時間Twが長くなるにしたがって、プリントヘッドHの走査時間間隔をT1→T2→T3と段階的に変化させるようにすればよい。但し、この変化幅ΔT(T1−Tk、T2−T1、T3−T2)が大きいと、走査時間間隔を変化させる前後の印刷画像の色合いが大きく変化して、印刷画像の画質が低下することとなる。したがって、走査時間間隔の変化幅ΔTは、印刷画像の色合いの変化が生じたとしても肉眼では識別できないように、予め印刷テスト等を行うことにより設定することが好ましい。
【0150】
こうすることで、先行する記録紙Pの後処理の実行状況が搬送不具合等により変化したとしても(つまりプリント制御部204にて予測される印刷待ち時間Twの長さが変化したとしても)、この変化に応じてプリントヘッドHの走査時間間隔を変更して、印刷待ち時間Twの発生を確実に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するプリントヘッドを備えたプリンタに有用であり、特に、プリントヘッドの搬送下流側にスイッチバック装置を配設したプリンタに有用である。
【符号の説明】
【0152】
A プリンタ
P 記録紙
X 主走査方向
Y 副走査方向
H プリントヘッド
Tk 基準走査時間間隔
Ts 所定時間間隔
Tw 印刷待ち時間の長さ
N プリントヘッドの全走査回数
5 スイッチバック部(後処理装置)
204 プリント制御部(予測手段,設定手段,印刷制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って間欠搬送される記録紙に向かって、その搬送停止時に該記録紙搬送方向に直交する主走査方向に走査しながらインクを吐出することで、該記録紙に画像を印刷するプリントヘッドと、該プリントヘッドよりも搬送下流側に配設され、該プリントヘッドによる印刷処理が終了した記録紙に後処理を実行する後処理装置と、を備えたプリンタであって、
前記プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に前記後処理装置において印刷処理済みの記録紙に対し後処理が実行されることにより印刷待ち時間が発生するか否かを予測する予測手段と、
前記予測手段による予測結果に基づいて、前記プリントヘッドの走査時間間隔を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された走査時間間隔で前記プリントヘッドを走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行する印刷制御手段と、を備え、
前記設定手段は、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生しないと予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を前記基準走査時間間隔に設定する一方、前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を、該印刷待ち時間が実際に発生しないように、前記基準走査時間間隔よりも長い所定時間間隔に設定するよう構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
前記予測手段は、前記印刷待ち時間が発生するか否かの予測を、前記プリントヘッドによる前記記録紙への印刷処理の実行前に行うように構成されており、
前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合に、該印刷待ち時間の長さを推定する印刷待ち時間推定手段と、
前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合に、前記プリントヘッドによる前記記録紙への印刷処理の開始から終了までに必要なプリントヘッドの全走査回数を推定する走査回数推定手段と、をさらに備え、
前記設定手段は、前記予測手段により前記印刷待ち時間が発生すると予測された場合には、前記プリントヘッドの走査時間間隔を、次式の関係を満たす前記所定時間間隔に設定するように構成されていることを特徴とするプリンタ。
Ts=Tk+Tw/(N−1)
Tk:前記基準走査時間間隔
Ts:前記所定時間間隔
Tw:前記印刷待ち時間の長さ
N :前記プリントヘッドの全走査回数
【請求項3】
請求項1又は2記載のプリンタにおいて、
前記後処理装置は、前記プリントヘッドよりも搬送下流側の搬送経路に配設されていて、前記記録紙を、その先端側から受け入れて搬送方向を変更した後に後端側から排出するスイッチバック処理を実行するように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項3記載のプリンタにおいて、
前記予測手段は、前記プリントヘッドを予め設定された基準走査時間間隔で走査させることで前記記録紙への印刷処理を実行した場合に、該印刷処理中に前記後処理装置において所定長さ以上の記録紙に対しスイッチバック処理が実行されるか否かを予測して、実行されると予測した場合には、前記印刷待ち時間が発生するものと予測するように構成されていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−84044(P2011−84044A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240739(P2009−240739)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】