説明

プリンタ

【課題】簡単な構成を採用して、キャリブレーションパターンをセンシングする処理と、ロール紙を切断する処理とを同時に行うことが可能なプリンタを提供する。
【解決手段】用紙Sを用紙幅方向Bに切断可能な切断部5として、回転しながら用紙幅方向Bに移動可能な回転刃51及び回転刃51を保持するスライダ54を備えたものを適用し、このスライダ54に、用紙Sのうち印刷部によってプリントしたキャリブレーションパターンCPを計測可能なセンサ6を付帯させ、センサ6によるキャリブレーションパターンCPの計測処理と切断部5による用紙Sの切断処理を同時に行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、特に、給紙部から供給されるロール紙(ロール状の用紙)に対してプリントしたキャリブレーションパターンを利用してキャリブレーション処理可能なプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻回した用紙を給紙部から印刷部に供給し、印刷部により用紙に対してプリント処理を施し、プリント処理済みの用紙を用紙幅方向に切断して排出口から排出できるように構成された種々のプリンタが知られている。また、プリンタは、通常、装置単体毎に個体差があり、基準となる濃度階調値(基準濃度)と、プリンタで実際に出力されるプリント結果の濃度との関係もプリンタ単体毎に相違する。そこで、プリンタの出荷時に、実際に用紙にプリントされる画像の濃度を基準濃度に対応付けて修正するキャリブレーション処理(色味補正処理)が行われる。また、使用環境(温度や湿度等)や一定期間の継続使用(経年変化)、インクの交換などによってもプリント結果の濃度特性(色味特性)が変化してしまうことがあり、このような変化を修正するためにキャリブレーション処理が行われることもある。
【0003】
特許文献1には、ロール紙に対してプリント処理可能なプリンタにおいて、ロール紙を供給する給紙部と印刷部との間に配置した切断部によってロール紙を所定サイズに切断し、その切断した用紙に印刷部でキャリブレーションパターンをプリントした後に、そのキャリブレーションパターンを印刷部と排出口との間に配置したセンサによって計測(測色)し、そのまま排出口から用紙を排出する技術が開示されている。なお、キャリブレーション処理自体は、センサよるキャリブレーションパターンの測定濃度と基準濃度との差分を自動で算出し、この差分算出結果に基づいて印刷部によりプリントされる画像の濃度の較正を行うことによって完了する。
【0004】
また、特許文献1記載のプリンタとは異なるプリンタ内の機器レイアウトを採用してキャリブレーション処理を行う態様としては、ロール紙の所定領域に対して印刷部によりキャリブレーションパターンをプリントした後に、そのキャリブレーションパターンの濃度を印刷部と排出口との間に配置したセンサによって計測し、印刷部と排出口との間であって且つセンサとも所定距離離間した位置(センサよりも搬送方向上流側又は搬送方向下流側の何れであっても構わない)に配置した切断部によって用紙幅方向に切断した用紙を排出口から排出する態様が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−001049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の何れの態様においても、センサでキャリブレーションパターンを計測する処理と、ロール紙を切断する処理とを別々のタイミングで行うものであり、また、センサを走査方向に移動させる機構と、切断部を構成する回転刃を用紙幅方向に移動させる機構とを限られたプリンタ内の空間に個別に配置する必要があった。
【0007】
このような事象に対して改善する試みはこれまでなされていなかったが、本発明者は、センサによってキャリブレーションパターンを計測する際の走査方向と、切断部によるロール紙の切断方向が同一方向である点に着目し、キャリブレーションパターンを計測する処理と、ロール紙を切断する処理とを同時に行うことが可能なプリンタを案出するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、ロール状に巻回された用紙を収容し得る給紙部と、給紙部から用紙搬送路に沿って供給された用紙にプリント処理を行う印刷部と、用紙を用紙幅方向に切断可能な切断部と、排出口を有する排出部とを備えたプリンタに関するものである。ここで、本発明のプリンタは、熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、レーザプリンタなどの各種プリンタを包含し、印刷部によるプリント処理方式を特に限定するものではない。
【0009】
そして、本発明のプリンタは、切断部として、用紙幅方向に移動可能な刃と、刃を保持した状態で用紙幅方向に移動可能な移動体とを備えたものを適用し、移動体に、印刷部によって用紙にプリントしたキャリブレーションパターンを計測可能なセンサを付帯させ、切断部による用紙の切断処理とセンサによるキャリブレーションパターンの計測処理を同時に行うように構成したことを特徴としている。ここで、「刃」は回転刃であってもよいし、回転しない刃であってもよい。
【0010】
このようなプリンタであれば、刃を用紙幅方向に移動させることで、刃を保持した状態用紙幅方向に移動する移動体に付帯させたセンサを走査方向である用紙幅方向に移動させることができ、切断部による用紙の切断処理と、センサによるキャリブレーションパターンの計測処理(測色処理)とをワンアクションで同時に行うことができる。さらに、刃を用紙幅方向に移動させれば、刃を保持する移動体に付帯させたセンサも移動させることができるため、センサを走査方向に移動させる専用の機構が不要になり、その分だけプリンタ内における配置スペースを単純に広げることができたり、また他の部材や機構の配置スペースとして有効活用することができる。
【0011】
また、本発明では、切断部よりも用紙搬送方向上流側(印刷部側)に配置され且つ少なくとも切断処理時において用紙を厚さ方向に押圧又は挟持して切断部に向かう用紙に張力を付与する張力付与部を備えたプリンタを構成することもできる。ここで、切断処理時において、用紙のうち切断部に切断される部分は用紙幅方向に移動する刃に接触して支持されている状態と捉えることができる。したがって、切断部よりも用紙搬送方向上流側において用紙を厚さ方向に押圧又は把持すれば切断部に向かう用紙に張力を付与することができる。そして、張力付与部によって切断部に向かう用紙に張力を付与することによって、少なくとも張力付与部と切断部との間を搬送する用紙を真っ直ぐに伸ばして緩みなく張った状態に保持することができ、切断処理時に用紙が刃の移動方向にずれたり、皺が生じることを防止して切断面の直線性を確保することができるとともに、センサによる計測処理時にも、用紙とセンサとの相対距離を一定に保つことができ、用紙とセンサとの相対距離の変化に伴う計測精度の低下を防止・抑制することができる。なお、張力付与部によって用紙に張力を付与するタイミングは、少なくとも切断処理及び計測処理を行うタイミングと同期していればよく、切断処理及び計測処理を行わずに用紙を用紙搬送方向下流側に搬送する処理中は、張力付与部による張力付与状態を解除するように設定してもよいし、張力付与部による張力付与状態を維持するように設定しても構わない。
【0012】
特に、本発明のプリンタにおいて、刃をセンサよりも相対的に搬送方向下流側(排出部側)に配置すれば、センサで計測する部分が、ロール紙に連続している部分となる。したがって、センサで計測する部分が、切断部の切断処理によってロール紙から切り離された用紙片である態様と比較して、ロール紙から切り離された用紙片が自重でセンサから離れる方向に移動することを防止するために、切り離された用紙片を所定位置にとどめておく専用のバックアップ機構が不要になり、部品点数削除及び構造の簡略化の点で有利である。さらに、センサを刃よりも排出口から離れた位置に配置することにより、センサに排出口からの外乱光が入らないか、少なくとも入り難い機器レイアウトを実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、刃を保持した状態で用紙幅方向に移動可能な移動体にセンサを付帯させているため、センサによるキャリブレーションパターンの計測処理と、刃を備えた切断部による用紙の切断処理とを同時に行うことができ、センサを用紙幅方向に走査させる専用の機構が不要になり、部品点数の削減及び内部レイアウトの単純化を図ることができる斬新なプリンタプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタにおける用紙パスラインを模式的に示す図。。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】同実施形態に係るプリンタにおいて切断計測処理直前の切断部及びセンサを用紙搬送方向下流側(排出口側)から見た模式図。
【図4】同実施形態に係るプリンタにおいて切断計測処理中の切断部及びセンサを用紙搬送方向下流側(排出口側)から見た模式図
【図5】同実施形態に係るプリンタにおける切断計測処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係るプリンタPは、図1に示すように、用紙Sに対してインクリボンのインクを熱転写によって昇華プリント処理を行う昇華型プリンタである。この昇華型プリンタPは、給紙部1と、給紙部1から供給された用紙Sの表面に対して昇華プリント処理を施す印刷部2と、排出口31を有する排出部3と、用紙Sを給紙部1と排出部3との間に形成される用紙搬送路L(用紙パスライン)に沿って搬送する用紙搬送機構4と、用紙搬送路L上において印刷部2よりも排出口31側に配置され且つ用紙Sを用紙幅方向Bに切断可能な切断部5とを備えたものである。なお、この昇華型プリンタPは、少なくとも給紙部1、印刷部2、用紙搬送機構4、及び切断部5を共通の筐体C内に設け、排出部3を構成する排出口31や図示しない排出トレイを筐体C外へ露出可能に構成している。また、給紙部1、印刷部2、排出部3、用紙搬送機構4、切断部5の作動は図示しないプリンタP内の適宜箇所に設けた制御部によって制御している。
【0017】
給紙部1は、ロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。図1では用紙Sを外部に露出させた状態を示しているが、図示しない適宜のカバー部材を筐体Cに装着することによって用紙Sの収容空間を外部空間から隔離した空間にすることができる。なお、図1は、本実施形態のプリンタPにおける用紙パスラインLを説明する図であり、用紙パスラインL沿いに配置した部品や機構のみを模式的に示し、他の部品や機構は省略している。また、同図では、筐体Cのうち切断部5の下方領域及びロール紙Sを収容する領域のみを断面模式図で示している。
【0018】
給紙部1と排出部3との間で用紙Sを搬送する用紙搬送機構4は、図1に示すように、例えば給紙部1側から排出部3側に向かって順に配置された給紙送りローラ40と、給紙側送りローラ41と第1ピンチローラ42との組、フィードローラ43と第2ピンチローラ44との組、排出側送りローラ45と第3ピンチローラ46との組を用いて構成したものである。なお、ローラ自体の数、或いはローラとピンチローラとの組数や配置箇所は仕様等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
印刷部2は、サーマルヘッド21と、このサーマルヘッド21と対向する位置に配置され且つサーマルヘッド21との間で用紙Sを挟み用紙搬送機構4の機能の一部を担うプラテンローラ22とを備え、サーマルヘッド21とプラテンローラ22との間に搬送された図示しないインクリボンのインクを用紙Sに熱転写プリント可能な周知のものである。
【0020】
排出部3は、図1に示すように、印刷部2により所望のプリント処理が施された用紙Sを所定サイズに切断したカット紙として排出口31から筐体C外に排出し、図示しない排出トレイ上に積み重ねた状態で載置し得るものである。また、排出部3は、排出口31よりも印刷部2側に、用紙Sを排出口31に向かって搬送する排出ローラ32と排出用ピンチローラ33との組を配置している(図1参照)。なお、排出ローラ32及び排出用ピンチローラ33は、排出部3の機能の一部を担うとともに、用紙搬送機構4の機能の一部も担っている。
【0021】
切断部5は、図1及び図2に示すように、用紙Sの印刷面(オモテ面)側に配置した回転刃51(本発明の「刃」に相当)と、用紙Sの背面(ウラ面)側において用紙幅方向Bに延出する姿勢で固定配置した固定刃52とを備え、制御部の制御に従って回転刃51を固定刃52に摺動させて用紙幅方向Bに走査させることで、用紙Sを用紙幅方向Bに切断するものである。回転刃51は、外周部に刃を形成した概略円盤状をなすものである。また、図に示すように、回転刃51の外周縁に形成した刃が、固定刃52と用紙搬送方向Aにほぼ隙間無く重なり得るように、回転刃51と固定刃52との相対位置を設定している。本実施形態の切断部5は、用紙Sの厚さ方向に固定刃52と対面する位置に配置したレール53と、回転刃51を回転可能に保持した状態でレール53に沿って用紙幅方向Bに往復動可能なスライダ54(本発明の「移動体」に相当)とを備え、レール53に沿ってスライダ54を移動させることによって、回転刃51も用紙幅方向Bに移動するように構成している。
【0022】
そして、本実施計形態のプリンタPは、切断部5にセンサ6を付帯させて、回転刃51の用紙幅方向Bの移動とセンサ6の走査方向(用紙幅方向B)の移動とを同時に行うことができるように構成している。本実施形態では、スライダ54として、レール53のうち排出部3側を向く面と対峙する位置に配置され且つ回転刃51を保持する回転刃保持部541と、レール53のうち印刷部2側を向く面と対峙する位置に配置され且つセンサ6を保持するセンサ保持部542とを備えたものを適用している。回転刃保持部541は、回転刃51の厚み分だけ開口して回転刃の回転を許容する窓部(図示省略)を底壁に形成した箱状のものである。回転刃51は、このような回転刃保持部541によって、窓部から下端側領域を外部に露出させた状態で回転軸511を中心に回転可能に保持されている。
【0023】
センサ6は、所定の波長の光を用紙Sに向かって照射する光源61(投光手段)と、用紙Sからの反射光を検出する受光素子62(受光手段)とを備えたものである。本実施形態では、光源61としてLEDを適用し、受光素子62としてカラーセンサ素子又はフォトセンサ素子を適用している。印刷部2によるプリント処理がカラープリントである場合には、センサとして、カラーセンサ素子を有するカラーセンサを適用することが好ましく、印刷部2によるプリント処理がモノクロプリントである場合には、センサとして、フォトセンサ素子を有するフォトセンサを適用することが好ましい。光源61と受光素子62の組み合わせとしては、白色の光源とカラーセンサ素子との組み合わせや、カラーフィルタを一体的に備えた白色の光源とフォトセンサとの組み合わせ、或いは所定の色付き光源とフォトセンサとの組み合わせ等を挙げることができる。なお、複数種類のセンサ6を備え、出力するプリント態様(カラープリントであるかモノクロプリントであるか)に応じて使用するセンサ6の種類を適宜の切替機構によって切替可能に構成することもできる。
【0024】
そして、本実施形態に係るプリンタPは、図2に示すように、光源61及び受光素子62を共通の基板63に実装したセンサ6を、スライダ54のうち、下方に開口したボックス状に形成したセンサ保持部542内に収容している。また、光源61の光が受光素子62に直接入光することを防止・抑制するための仕切り板64を光源61と受光素子62との間に配置している。ここで、センサ保持部542内にセンサ6を収容したものをセンサユニット6Uとして捉えることができ、このセンサユニット6Uを回転刃51と同時に用紙幅方向Bに移動できるように構成している。また、回転刃51の回転中心軸511、光源61及び受光素子62は、用紙搬送方向Aに沿って同一直線上に並ぶ位置に配置している。なお、センサ6のうち光源61や受光素子62はそれぞれ個別に交換することもでき、またセンサユニット6Uごと交換することも可能である。
【0025】
切断部5及びセンサ6は電気的に接続されて同時に駆動可能なものであるが、駆動源自体はそれぞれ個別に設けてもよいし、共通であってもよい。また、本実施形態では、図3に示すように、レール53の長手寸法(用紙幅方向Bの寸法)を用紙Sの幅寸法よりも大きく設定し、回転刃51及びセンサ6を保持するスライダ54をレール53の端部または端部近傍に位置付けることによって、回転刃51及びセンサ6を、用紙搬送路L(用紙パスライン)に沿って搬送される用紙Sに干渉し得ない退避位置に位置付けることができる。特に、本実施形態では、レール53の長手寸法を用紙幅寸法よりも大きく設定し、レール53の両端部をそれぞれ用紙Sの側縁よりも用紙幅方向B中心から離れた位置(用紙Sには重ならない位置)に配置している。したがって、スライダ54をレール53の一端部または一端部近傍に位置付けた場合及び他端部または他端部近傍に位置付けた場合にも、回転刃51及びセンサ6は退避位置となる。以下の説明において、スライダ54をレール53の一端部または一端部近傍に位置付けた場合における回転刃51及びセンサ6の位置を「第1退避位置」と称し、スライダ54をレール53の他端部または他端部近傍に位置付けた場合における回転刃51及びセンサ6の位置を「第二退避位置」と称する。
【0026】
また、本実施形態のプリンタPは、切断部5及びセンサ6よりも用紙搬送方向A上流側に配置され且つ少なくとも切断処理時において用紙Sを厚さ方向に押圧又は挟持して切断部5に向かう用紙Sに張力を付与する張力付与部7を備えている。本実施形態では、用紙Sを上方から押さえる用紙押さえローラ71と、この用紙押さえローラ71との間で用紙Sを保持可能な用紙保持プレート72とを用いて張力付与部7を構成している。本実施形態のプリンタPでは、回転刃51と固定刃52との間に用紙Sを挟んで切断する構成であり、この切断処理時において用紙Sのうち回転刃51に接触して切断される箇所は、切断される直前まで回転刃51と固定刃52とに挟持された状態である。したがって、用紙Sのうち回転刃51及び固定刃52に挟持される(切断部5に支持される)箇所よりも用紙搬送方向A上流側の箇所を張力付与部7によって用紙厚さ方向に押圧又は挟持することにより、切断部5に向かう用紙Sを真っ直ぐに伸ばした姿勢に矯正することができる。
【0027】
次に、このような構成を有する本実施形態のプリンタPの動作及び作用を通常プリント処理時とキャリブレーション処理時とに場合分けして説明する。以下では、通常のプリント処理から先に説明する。
【0028】
本実施形態に係るプリンタPは、まず、ユーザの操作などによって入力された印刷データに基づいて、給紙部1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラ41と第1ピンチローラ42との間、フィードローラ43と第2ピンチローラ44との間を順次通過させて印刷部2まで搬送する。そして、印刷部2によって用紙Sの印刷面(オモテ面)における印刷設定領域(プリント画面)に熱転写プリント処理を行う。本実施形態における印刷部2は、サーマルヘッド21の熱によりイエロー・マゼンタ・シアンの各色インク及びオーバープリント用のインク又は特色インクを昇華させることで用紙Sの印刷面にカラー画像を印刷する(形成する)。この際、制御部に入力された印刷データに従って、サーマルヘッド21の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sの印刷面におけるプリント画面に高品質なカラー画像を印刷することが可能である。
【0029】
次いで、本実施形態に係るプリンタPは、印刷部2による熱転写プリント処理を終えた用紙Sを排出部3側へ順次搬送し、切断部5によって切断処理を行う。なお、本実施形態のプリンタPは、切断処理時を除いて用紙搬送機構4により用紙Sを用紙搬送路L(用紙パスライン)に沿って搬送し続けており、用紙Sの搬送処理時には切断部5及びセンサ6を第1退避位置又は第2退避位置に位置付けて、用紙Sのスムーズな搬送処理を妨げないようにしている。本実施形態のプリンタPにおける切断処理は、熱転写プリント処理を終えた用紙Sに対して、制御部の制御に従い、第1退避位置又は第2退避位置の何れか一方の退避位置にある回転刃51を他方の退避位置まで移動させて、この回転刃51と固定刃52との間で挟む用紙Sを用紙幅方向Bに切断する処理である。本実施形態のプリンタPは、制御部の制御に従って、切断部5よる用紙Sの分割数や分割ピッチを変更することにより、用紙搬送方向Aに沿ったプリント画面の大きさを適宜調整することができる。
【0030】
特に、本実施形態のプリンタPは、切断処理時に用紙Sのうち回転刃51及び固定刃52に挟まれて切断される(切断部5で切断される)箇所よりも用紙搬送方向A上流側の箇所を張力付与部7によって用紙厚さ方向に押圧又は挟持して切断部5に向かう用紙Sに張力を付与しているため、切断処理時に用紙Sが用紙幅方向Bにずれたり、回転刃51の移動方向に皺寄ることを防止して、切断部5による切断処理をスムーズ且つ適切に行うことができ、用紙Sの切断面を綺麗な直線状にすることができる。なお、このような通常のプリント処理時には、センサ6による計測処理を停止させておくことで、無用な電力使用を回避することができる。
【0031】
最後に、本実施形態のプリンタPは、所定のサイズに切断した用紙S(プリント処理済みカット紙)を用紙搬送路L上において排出ローラ32及び排出用ピンチローラ33により排出口31に向かって搬送し、排出口31から排出した用紙S(プリント処理済みカット紙)を排出トレイ上に積み重ねた状態で収容する。
【0032】
次に、本実施形態のプリンタPにおけるキャリブレーション処理について説明する。なお、インクリボンを使用して熱転写プリント処理を行う本実施形態のプリンタPにおいて、キャリブレーション処理を行うタイミングとしては、プリンタPの出荷時、インクリボンの装填時、インクリボンの交換時、使用する環境条件や一定の使用期間が経過したことなどによって実際に出力するプリント結果の色味特性が変化した場合などを挙げることができる。
【0033】
本実施形態のプリンタPは、ユーザの操作又は一定期間毎に行う自動操作などによって入力されたキャリブレーション指令信号に基づいて、給紙部1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラ41と第1ピンチローラ42との間、フィードローラ43と第2ピンチローラ44との間を順次通過させて印刷部2まで搬送し、印刷部2によって用紙Sの印刷面(オモテ面)にキャリブレーションパターンCPをプリントする。
【0034】
本実施形態のプリンタPでは、イエロー・マゼンタ・シアンの各色インクを用紙幅方向Bに仕切られた3つの領域に印刷するとともに、用紙搬送方向Aに均等に仕切られた各パッチCPaの印刷濃度を搬送方向に沿って徐々に変化(例えば搬送方向上流側に向かって段階的に濃度を薄く)させたカラー画像のキャリブレーションパターンCPを印刷する。なお、図3では各パッチCPaの枠を実線で示す一方でパッチCPa内における印刷濃度は特に示していない。
【0035】
ここで、用紙幅方向Bに並ぶパッチCPaの列を「パッチ列」とすると、キャリブレーションパターンCPは、それぞれ印刷濃度が異なる複数のパッチ列を用紙搬送方向Aに形成したものであるといえる。なお、パッチ列数や用紙搬送方向Aに沿った各パッチ列の寸法に関する情報(パッチ情報)は制御部に予め入力されている。
【0036】
そして、本実施形態に係るプリンタPは、用紙SにプリントしたキャリブレーションパターンCPをセンサ6で計測可能な位置まで用紙Sを用紙搬送機構4によって排出部3側へ搬送し、用紙搬送機構4による用紙搬送処理を停止させた状態(図3参照)で、切断部5による切断処理とセンサ6によるキャリブレーションパターンCPの計測処理とを同時に行う(切断計測処理)。具体的には、図4に示すように、印刷部2によるキャリブレーションパターンCPのプリント処理を終えた用紙Sを、キャリブレーションパターンCPにおけるパッチ列のうち最前列(用紙搬送方向Aにおける最下流のパッチ列)である1列目のパッチ列をセンサ6によって計測可能な位置(パッチ列計測位置)まで搬送する。ここで、計測対象のパッチ列を「N列目のパッチ列」とした場合、本実施形態では、「N列目のパッチ列計測位置」を、N列目のパッチ列をセンサ6で計測可能な位置であって且つN列目のパッチ列と「N−1」列目のパッチ列との境界または境界近傍を切断部5で切断可能な位置に設定している。なお、1列目のパッチ列計測位置は、1列目のパッチ列と、「1−1」列目、すなわち0列目に相当する「キャリブレーションパターンCPが印刷された部分よりも用紙搬送方向A下流側の領域」との境界または境界近傍を切断部5で切断可能な位置である。用紙Sの搬送処理時には、切断部5の回転刃51及びセンサ6は用紙Sに干渉しない第1退避位置又は第2退避位置の何れかの退避位置(例えば第1退避位置)に位置付けておく。
【0037】
本実施形態のプリンタPは、用紙Sを1列目のパッチ列計測位置まで搬送し、その位置で搬送処理を停止した状態で、回転刃51及びセンサ6を一方の退避位置(例えば第1退避位置)から他方の退避位置(第2退避位置)に向かって移動させる。本実施形態では、回転刃51及びセンサ6を一体的に保持するスライダ54をレール53に沿って用紙幅方向Bに移動させることによって、回転刃51及びセンサ6を第1退避位置と第2退避位置との間で同時に移動させることができる。そして、回転刃51及びセンサ6を第1退避位置から第2退避位置に向かって同時に移動させることによって、図4に示すように、用紙Sのうち回転刃51と固定刃52との間で挟み込む1列目のパッチ列と、キャリブレーションパターンCPが印刷されていない領域との境界または境界近傍を切断することができるとともに、1列目のパッチ列をセンサ6によって計測することができる。特に、本実施形態では、この切断計測処理時に、切断部5の近傍に配置した張力付与部(用紙押さえローラ71及び用紙保持プレート72)で用紙Sを厚さ方向に押圧して張力を付与しているため、用紙Sが回転刃51に引っ張られて幅方向Bへずれたり、皺が生じることを防止して、用紙Sを用紙幅方向Bに平行な切断面で切断することができるとともに、計測処理中(用紙幅方向Bに走査中)のセンサ6と用紙SのうちキャリブレーションパターンCPをプリントした面である側色面との相対距離を一定に保つことができ、高精度の計測処理結果を得ることができる。また、スライダ54のうち下方に開口にしたボックス状のセンサ保持部542内に配置した光源61及び受光素子62と用紙S(具体的には側色面)との距離を近く設定することが可能であり、外乱光の入射を防止した状態でキャリブレーションパターンCPの計測を効率良く行うことができる。さらに高精度の計測処理結果を得られるように、センサ保持部542の内向き面に反射光を防止する表面処理を行ってもよい。
【0038】
以上の手順によって用紙Sに対する切断計測処理を同時に終了すると、用紙Sのうち切断面よりも搬送方向下流側の領域であって且つ給紙部1に収容されているロール紙Sとの連続性が遮断された短冊状(用紙幅方向Bに長尺)の部分(以下、「用紙片S1」と称する)は、排出ローラ32及び排出用ピンチローラ33に保持されることなく、自重で落下する。そこで、本実施形態のプリンタPは、ロール紙Sとの連続性が遮断された短冊状の用紙片S1を受け入れる用紙片受入部8を備えている(図1参照)。本実施形態では、筐体Cの内部空間のち、切断部5の下方空間内に例えばスライドさせて配置可能な受入箱81を用いて用紙片受入部8を構成している。この受入箱81は、少なくとも上方に開口した用紙片受入口を有したものであり、切断部5でロール紙Sから切り離されて自重で落下する用紙片S1を用紙片受入口を通じて受入箱81内に収容することができる。なお、受入箱81内に溜まった用紙片S1を廃棄する処理は、筐体Cから取り出した受入箱81内に手を入れたり、受入箱81を逆さまにすることで簡単に行うことができる。このように、用紙片S1を、通常のプリント処理を施した用紙S(プリント処理済みカット紙)の受入場所(排出トレイ)とは異なる場所に溜めることによって、排出トレイ上で通常のプリント処理が施された用紙S(プリント処理済みカット紙)と、他に使途がなく廃棄対象となる用紙片S1とが混在してしまう事態を回避することができるとともに、ユーザに対して用紙片S1が不要物であることを明示できる。なお、図1には、用紙片S1が落下しながら受入箱81内の収容される軌跡を一点鎖線で模式的に示している。
【0039】
本実施形態のプリンタPは、用紙Sに印刷したキャリブレーションパターンCPのパッチ列数に応じて切断計測処理を繰り返す。具体的には、制御部が図5に示す動作フローに基づいて各部の作動を制御する。すなわち、本実施形態に係るプリンタPは、まず計測対象のパッチ列を意味する「N」に1を代入する工程(図5におけるS1)を経て、N列目のパッチ列計測位置まで用紙Sを搬送して一旦停止させる(同図におけるS2)。次いで、回転刃51及びセンサ6を第1退避位置又は第2退避位置のうち何れか一方の退避位置から他方の退避位置へ移動させる(同図におけるS3)。これにより、N列目のパッチ列をセンサ6で計測することができるとともに、用紙SにおけるN列目のパッチ列と「N−1」列目のパッチ列との境界近傍を切断部5で切断することができる。引き続いて、制御部において、さきほどNに代入した値、つまり計測対象のパッチ列が、予め制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数(パッチ列の総数)を越えているか否かを判定する(同図におけるS4)。そして、その判定が「NO」の場合は、その時点におけるNに1を足した値を新たな「N」とし(同図におけるS5)、同図に示すS2乃至S5を、「N」が制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数を越えるまで繰り返し、同図に示すS4で「N」が制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数を越えたと判定した場合(同図におけるS4:YES)に、切断計測処理を終了する。なお、図3に示すS3において、回転刃51及びセンサ6を第1退避位置又は第2退避位置のうち何れか一方の退避位置から他方の退避位置へ移動させる処理について言及すると、奇数列のパッチ列を計測する際に回転刃51及びセンサ6が移動する方向(例えば第1退避位置から第2退避位置へ移動する方向)と、偶数列のパッチ列を計測する際に回転刃51及びセンサ6が移動する方向(例えば第2退避位置から第1退避位置へ移動する方向)とは逆になる。
【0040】
以上の手順を経た後、本実施形態のプリンタPは、計測した各パッチ列の情報に基づいて、制御部において、キャリブレーションパターンCPの測定濃度と予め制御部に入力されている基準濃度との差分を自動で算出し、この差分算出結果に基づいて印刷部2の濃度の較正を行い、キャリブレーション処理を終了する。
【0041】
なお、最後列のパッチ列(用紙搬送方向Aにおける最上流のパッチ列)に対する計測処理を終えた時点では、この最後列のパッチ列は給紙部1に収容されているロール紙Sと連続している。したがって、このパッチ列をロール紙Sから切り離す必要がある場合は、用紙Sを搬送方向にパッチ列の1列分だけ搬送し、その位置で停止させている用紙Sに対して切断部5を一方の退避位置から他方の退避位置へ移動させる。その結果、最後列のパッチ列とキャリブレーションパターンCPがプリントされていない領域との境界または境界近傍で用紙Sを切断することができ、最後列のパッチ列がプリントされた用紙片S1を用紙片受入部8に収容することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係るプリンタPは、用紙Sを用紙幅方向Bに切断する切断部5の一部であるスライダ54に、印刷部2によって用紙SにプリントしたキャリブレーションパターンCPを計測可能なセンサ6を付帯させ、センサ6によるキャリブレーションパターンCPの計測処理と切断部5による切断処理を同時に行うように構成しているため、計測処理と切断処理とを時間差で行う従来のプリンタPと比較して、ワンアクションでキャリブレーションパターンCPの計測処理及び用紙Sの切断処理を同時に行うことが可能であり、作業効率が向上するとともに、センサ6を用紙幅方向Bである走査方向に移動させる機構を、回転刃51を用紙幅方向Bに移動させる機構とは別に設ける必要がなく、部品点数の削減及び構造の簡略化を有効に図ることができる。
【0043】
特に、本実施形態のプリンタPは、センサ6を回転刃51よりも排出口31から遠い位置に配置することによって、排出口31からの外乱光がセンサ6に入らない(入り難い)構成を実現している。さらに、切断計測処理時にセンサ6で計測する部分が、切断部5の切断処理によってロール紙Sから切り離された用紙片S1であれば、この切り離された用紙片S1が自重でセンサ6から離れる方向に移動することを防止すべく、切り離された用紙片S1を所定位置にとどめておく専用のバックアップ機構が必要になるが、本実施形態のプリンタPは、センサ6を回転刃51よりも相対的に搬送方向A上流側に配置し、切断計測処理時にセンサ6で計測する部分が、ロール紙Sに連続している部分となるように設定しているため、切断部5で切り離された用紙片S1が自重で落下する事態を防止する専用のバックパップ部材は不要である。このような点もプリンタPの部品点数削除及び構造の簡略化に大きく貢献している。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、切断部の移動体(上述した実施形態ではスライダ54)に2つ以上のセンサを付帯させることもできる。また、切断部のうち用紙幅方向に移動可能な刃として、回転しない固定刃を適用しても構わない。
【0045】
また、上述した実施形態では、切断部を、刃(回転刃)と、用紙幅方向に延出させた姿勢で配置した固定刃との組み合わせで実現した態様を例示したが、用紙を厚さ方向に挟む一対の刃(回転刃であるか否かは不問)の組み合わせで切断部を実現してもよい。この場合、センサを付帯する移動体は、一対の回転刃のうち用紙の印刷面(プリント面)側に配置した回転刃を保持する移動体になる。
【0046】
また、張力付与部を、用紙を厚さ方向に挟持し得る一対のローラ又は一対のプレートによって構成したり、或いは用紙を厚さ方向の一方からのみ押圧するローラ又はプレートによって構成することもできる。また、張力付与部は、用紙の幅方向全域において用紙に接触するものや、用紙の幅方向における所定箇所(1箇所であってもよいし複数箇所でもよい)に部分的に接触するものであっても構わない。
【0047】
また、本発明に係るプリンタは、インクを昇華させるタイプの熱転写型プリンタの他、インクを溶融させるタイプのサーマルプリンタや、或いはサーマルプリンタ以外の種々のプリンタ、例えばインクジェットプリンタやレーザプリンタ、或いは同じ印刷対象物に対して繰り返し書き換え可能なリライタブルプリンタ等であってもよい。また、両面印刷可能なプリンタに対しても本発明の技術的特徴である回転刃にセンサを付帯させる構成を適用することができる。
【0048】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…給紙部
2…印刷部
3…排出部
31…排出口
5…切断部
51…刃(回転刃)
54…移動体(スライダ)
6…センサ
7…張力付与部
L…用紙搬送路
S…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された用紙を収容し得る給紙部と、前記給紙部から用紙搬送路に沿って供給された用紙にプリント処理を行う印刷部と、用紙を用紙幅方向に切断可能な切断部と、排出口を有する排出部とを備えたプリンタであって、
前記切断部が、用紙幅方向に移動可能な刃と、前記刃を保持した状態で用紙幅方向に移動可能な移動体とを備えたものであり、
前記移動体に、前記印刷部によって用紙にプリントしたキャリブレーションパターンを計測可能なセンサを付帯させ、
前記切断部による切断処理と前記センサによるキャリブレーションパターンの計測処理を同時に行うように構成したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記切断部よりも用紙搬送方向上流側に配置され且つ少なくとも前記切断処理及び前記計測処理を同時に行う際に用紙を厚さ方向に押圧又は挟持して前記切断部に向かう用紙に張力を付与する張力付与部を備えている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記刃を前記センサよりも相対的に用紙搬送方向下流側に配置している請求項1又は2に記載のプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82093(P2013−82093A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222187(P2011−222187)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】