説明

プリントヘッドの動作方法

【課題】プリンタのウォームアップ中のプリントヘッドのノズルの汚染を防止または減少させる方法を提供する。
【解決手段】本方法は、プリントヘッドを相変化インクの溶融温度未満の第1の温度から溶融温度を超える第2の温度まで加熱することを含む。プリントヘッドはインク担持体上に相変化インクを吐出するための複数のノズルを備えたノズルプレートを有する。プリントヘッドの温度が第1の温度から第2の温度に上昇する際に、第1の圧力がプリントヘッドの内部に印加される。第1の圧力は、プリントヘッドのノズルを通してプリントヘッド内に相変化インクが入るのを防止するように設定される。第1の圧力の印加は、プリントヘッドが略第2の温度になったことに応じて、プリントヘッドから解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、溶融型熱転写(phase change)インクジェットプリンタに関し、特に、溶融型熱転写インクジェットプリンタにおいて使用されるプリントヘッドアセンブリの安定した動作を維持するために、ノズルの汚染を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形インクすなわち溶融型熱転写(相変化)インクプリンタは、通常、インクを、固形インクスティックと呼ばれることもある固体の形態で受容する。固形インクスティックは一般に、プリンタのインクローダの挿入開口部を通して挿入され、供給機構および/または重力によって、ヒータプレートに向けて移動される。ヒータプレートは、プレートに当たる固形インクを液体に溶融し、その液体は記録媒体上に噴射するためにプリントヘッドアセンブリに送給される。記録媒体は、一般に、金属ドラムまたはベルトなどの中間画像形成部材によって支持される、紙または液状層である。
【0003】
溶融型熱転写インクプリンタのプリントヘッドアセンブリは、一般に、1つ以上のプリントヘッドを含み、各プリントヘッドは複数のインクジェットを有し、インクジェットからは、溶融した固形インクの液滴が記録媒体に向けて吐出される。プリントヘッドのインクジェットは、プリントヘッド内のインク供給チャンバまたはマニホルドから溶融インクを受け取り、インク供給チャンバまたはマニホルドは、溶融インクリザーバまたはインクカートリッジなどの供給源からインクを受け取る。各インクジェットは、一端がインク供給マニホルドに接続されたチャネルを含む。インクチャネルの他端には、インクの液滴を吐出するための、オリフィスまたはノズルを有する。インクジェットのノズルは、アパーチャプレート、またはインクジェットのノズルに対応する開口部を有するノズルプレート内に形成されてもよい。動作中は、インクジェットノズルから記録媒体上に流体の液滴を噴出するために、液滴吐出信号が、インクジェット内のアクチュエータを作動させる。記録媒体および/またはプリントヘッドアセンブリを相互に相対的に移動させるにつれて、液滴を吐出するためにインクジェットのアクチュエータを選択的に作動させることによって、記録媒体上に特定のテキストおよびグラフィック画像を形成するように、液滴を付着させて、正確にパターン形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体インクジェットシステムが直面する1つの問題は、インクジェットの部分的な、または完全な詰まりをもたらす、ノズルの汚染である。ノズルの汚染は、プリントヘッドのノズルプレート上に蓄積する、ほこり、紙繊維、乾燥したインクなどによってもたらされうる。溶融型熱転写インクジェットプリンタは、電源が切られた状態、またはスタンバイ状態から、動作可能状態までの、プリンタのウォームアップの間に、ノズル汚染の危険性があるということが、テストによって示されている。例えば、プリントヘッドがウォームアップされる際に、プリントヘッド内で固化または凝固した固形インクが溶融してプリントヘッド内で膨張し、溶融インクはノズルからノズルプレート上に垂れ出る。しかし、印刷動作を実行するためにプリンタが十分にウォームアップされる時までに、ノズルからノズルプレート上に垂れ出たインクは、ノズル内に吸い戻される可能性がある。プリントヘッド内に引き戻されるインクは、場合によっては、ノズルプレートからノズル内に汚染を引き込むことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
プリンタのウォームアップ中のノズルの汚染を防止するため、または減少させるための方法が開発された。具体的には、この方法は、プリントヘッドを、相変化インクの溶融温度未満の第1の温度から、溶融温度を超える第2の温度まで加熱することを含む。プリントヘッドは、インク担持体上に相変化インクを吐出するための複数のノズルを備えたノズルプレートを有する。プリントヘッドの温度が第1の温度から第2の温度に上昇する際に、第1の圧力がプリントヘッドの内部に印加される。第1の圧力は、プリントヘッドのノズルを通してプリントヘッド内に相変化インクが入るのを防止するように設定される。第1の圧力の印加は、プリントヘッドが略第2の温度になったことに応じて、プリントヘッドから解除される。
即ち、本発明の一態様はプリントヘッドの動作方法であって、インク担持体上に相変化インクを吐出するための複数のノズルを備えたノズルプレートを有するプリントヘッドを、相変化インクの溶融温度未満の第1の温度から、前記溶融温度を超えた第2の温度まで加熱し、前記プリントヘッドの温度が前記第1の温度から前記第2の温度に上昇する際に、前記プリントヘッドの内部に第1の圧力を印加し、前記第1の圧力は、前記プリントヘッドの前記ノズルを通して前記プリントヘッド内に相変化インクが入るのを防止するように設定され、前記プリントヘッドが略前記第2の温度になったことに応じて、前記プリントヘッドから前記第1の圧力を除去することを含む。
前記方法において、前記プリントヘッドの温度が略前記第2の温度に到達した後、かつ、前記第1の圧力の除去の前に、前記ノズルプレートから相変化インクを除去するために、前記プリントヘッドの内部への前記第1の圧力を維持しながら、前記プリントヘッドの前記ノズルプレートを拭き取ることをさらに含んでもよい。
前記方法において、前記ノズルプレートを拭き取った後で、パージ期間にわたって前記プリントヘッドの内部に第2の圧力を印加することによって、前記プリントヘッドをパージし、前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも大きく、パージ圧力に対応することをさらに含んでもよい。
前記の方法において、前記プリントヘッドの温度が略前記第2の温度に到達した後で、少なくとも1つの圧力パルスを前記プリントヘッドアセンブリに印加し、前記少なくとも1つの圧力パルスは、前記第1の圧力よりも大きな圧力で、パージ期間よりも短い期間に送給され、前記少なくとも1つの圧力パルスは、溶融した相変化インクが前記ノズルから放出され、前記ノズルプレートを流れ落ちるように設定されることをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】画像形成装置のプリントヘッドアセンブリに、少なくとも2つの異なる圧力を送給することが可能な、正圧パージシステムの概略図である。
【図2A】ウォームアップ中での低圧の補助圧力の印加を含む、メンテナンス手順の一実施形態における、時間の経過に伴う圧力のグラフである。
【図2B】ウォームアップ中での低圧の補助圧力の印加を含む、メンテナンス手順の別の実施形態における、時間の経過に伴う圧力のグラフである。
【図2C】ウォームアップ中での低圧の補助圧力の印加を含む、メンテナンス手順のまた別の実施形態における、時間の経過に伴う圧力のグラフである。
【図3】プリンタのウォームアップ中のノズルの汚染を防止または減少させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
プリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドを各複合カラーについて備えていてもよい。例えば、カラープリンタは、ブラックのインクを放出するための1つのプリントヘッドと、イエローのインクを放出するための別のプリントヘッドと、シアンのインクを放出するための別のプリントヘッドと、マゼンタのインクを放出するための別のプリントヘッドとを含んでもよい。本実施形態では、各色のインクスティックが別個の供給チャネルを通して溶融プレートに送給される。したがって、各チャネルは、溶融プレートとインクリザーバと、他のカラーのための対応する部品から独立したプリントヘッドとを有してもよい。それゆえ、プリントヘッドアセンブリの各プリントヘッドは、そのプリントヘッド用のインクを保持するためのリザーバを含んでもよい。しかし、他のプリントヘッドアセンブリの構成も考えられる。例えば、プリントヘッドアセンブリは、複数の搭載(オンボード)インクリザーバからインクを受け取るプリントヘッドを1つ具備してもよい。別の実施形態では、単一のリザーバが複数のプリントヘッドにインクを供給してもよい。
【0008】
プリントヘッドの動作中、プリントヘッドアセンブリの内部の溶融インクにわずかな負圧、すなわち背圧を提供することによって、溶融インクのメニスカスは、プリントヘッドアセンブリのノズルに維持される。わずかな負圧は、溶融インクがノズルから漏れ出る、または垂れ出ることを防止するように、そして、ノズルから吐出されるインク液滴のサイズが確実に実質的に一定のままであるように設定される。負圧は通常、−0.5〜−5.0水柱インチ(−124.5〜−1245Pa)の範囲内である。ノズルにインクを維持するために必要とされる、わずかな負圧を提供するために、任意の好適な方法または装置が使用されてもよい。例えば当技術分野において既知のように、プリントヘッドを基準にしたインクリザーバの位置、インクを移送するために使用される導管および通路の寸法が、必要な背圧を提供するように選択されてもよい。
【0009】
さまざまな機械機能は、電子モジュール内に実装されたシステムコントローラによって調整される。コントローラは、本明細書に記載の機械機能を制御する、マイクロプロセッサなどのプログラマブルコントローラであることが好ましい。コントローラはさらに、インタフェース部品を通して部品およびサブシステムに送給される、制御信号を生成する。これらの制御信号は、例えば、画像形成部材が回転してプリントヘッドを通過する際に、画像形成部材上に画像を形成するために、プリントヘッドアセンブリ内のインクジェットアレイからインクを噴出するように圧電素子を駆動する。
【0010】
上述のように、流体インクジェットシステムが直面する1つの問題は、ノズルの汚染である。インクジェットノズルの汚染を防止するため、または、インクジェットノズルの汚染から回復するために、プリンタは、プリントヘッドアセンブリのメンテナンス手順を定期的に実行するためのメンテナンスシステムを含んでもよい。メンテナンス手順は、一般に、プリントヘッドのノズルを通してインクをパージ(除去)することと、ノズルプレートの表面からインクおよびデブリを除去するために、ノズルプレートを拭き取ることとを含む。図1の実施形態に示すように、メンテナンスシステムは、パージシステム200と、拭き取りアセンブリ220とを含む。以下で説明するように、パージシステム200は、プリントヘッドアセンブリのチャネルとキャビティとの中のインクを、インクジェットのノズルからインクがパージされるのに十分なほど高く加圧する正圧を、プリントヘッドアセンブリの1つ以上のリザーバ内に導入するように設計される。パージされたインクは、例えば、廃棄トレイまたはスピトゥーン(spittoon)(不図示)などの、廃棄インクリザーバ内に集められることができる。拭き取りアセンブリ220は、ノズルプレート上にたまったインク残留物と、あらゆる紙、ほこり、またはその他のデブリとを除去するために、プリントヘッドアセンブリのノズルプレートに相対的に移動される、当技術分野において既知の、少なくとも1つのワイパブレード(不図示)を含む。拭き取りアセンブリ220および/またはプリントヘッドアセンブリは、拭き取り手順を実行するための動作可能な位置に相互に移動されるように構成されることができる。
【0011】
プリントヘッドアセンブリのリザーバ内に、正のパージ圧力を所定の期間、すなわちパージ期間にわたって導入することによって、インクは、プリントヘッドアセンブリのオリフィスを通してパージされることができる。パージ圧力は一般に、2〜3psi〜数psi(1psi≒6895Pa)であり、一実施形態では約4.1psi(28270Pa)である。パージの後で、プリントヘッドアセンブリのノズルプレートは、拭き取りアセンブリ220によって拭き取られてもよい。拭き取り中に、インクがノズルを介してプリントヘッド内に押し戻されるのを防止するために、パージシステム200はさらに、例示的実施形態では約0.04psi(275.8Pa)、または約1.1〜1.5水柱インチ(約274.0〜373.6Pa)の低圧の補助圧力を、プリントヘッドアセンブリに送給するように構成されてもよい。このようにパージシステム200は、プリントヘッドアセンブリに、パージ圧力と補助圧力との両方における加圧空気を送給するように構成される。
【0012】
図1を参照すると、パージシステム200は、空気ポンプ204を含む。例示的実施形態におけるポンプ204は、ロータリーダイヤフラム空気ポンプ(rotary diaphragm air pump)であるが、任意の好適なタイプの空気ポンプが使用されてよい。ポンプ204はプリントヘッドアセンブリに、そして特に、プリントヘッドアセンブリのリザーバ(図1には図示せず)に、通路208を介して流体連通している。通路208は、プラスチック管などの任意の好適な材料で形成されてよい。通路208の直径、長さ、およびその他の特性は既知であるため、ポンプ204は所定の速度で動作することで所定の圧力を、通路208を通して送給する。図1の実施形態では、ポンプ204は、プリントヘッドの所望のパージ圧力よりも高い圧力を、通路208を通して送給する速度で動作するように構成される。
【0013】
通路208は、プリントヘッドに送給される圧力を制御するための2つの開口部を含む。第1の開口部210は、通路208を通して流れる流体(例示的実施形態においては空気)の一部を抜き取る(抽気する)ために提供され、その結果、より低い圧力がプリントヘッドに送給される。第1の開口部210のサイズは、ポンプが既知の速度で動作している場合に、所望のパージ圧力がプリントヘッドに送給できるように、当技術分野において既知の方法を使用して決定される。第1の開口部210を提供することによって、所望のパージ圧力よりも高い一定の圧力を送給する市販のポンプを、パージ圧力を送給するために使用できるようになる。
【0014】
第2の開口部214は、第1の開口部210の下流に配置される。第2の開口部214は、第1の開口部210によって抜き取られなかった流体および/または圧力が、プリントヘッドに進む前に第2の開口部から流れ出させることで、システムは第2の圧力、すなわち補助圧力をプリントヘッドに送給できるようになる。第2の開口部214のサイズは、ポンプが既知の速度で動作している場合に、所望の補助圧力がプリントヘッドに送給できるように、当技術分野において既知の方法を使用して決定される。
【0015】
図1に示す例示的実施形態では、第2の開口部214は、第2の開口部214を選択的に開閉するバルブ218と連通する。例示的実施形態におけるバルブ218は、ソレノイドバルブであるが、その他の従来のバルブが使用されてもよい。バルブ218は、既知の方法で、コントローラによって制御されることができる。
【0016】
パージサイクルの間に、コントローラは開口部214を閉じるための信号をバルブ218に送給する。プリントヘッドに送給される圧力は、その後2.7秒で約4.1psi(28270Pa)まで上昇する。タイマ(不図示)を含んでいてよいコントローラは、所定の時間(例えば、2.7秒)でバルブ218を開き、空気は通路214を通して流れ出て、プリントヘッドに送給される圧力を約1.3水柱インチ(323.8Pa)まで急速に低下させる。コントローラは所定の時間においてバルブを開くものとして説明してきた。この方法を例示的実施形態において使用した理由は、これが2つの別個の圧力をプリントヘッドに送給するための最も安価な方法であることが見出されたからである。代替的な実施形態では、バルブ218は所定の圧力で自動的に開き、次のパージサイクルまで開いたままに構成されてもよい。
【0017】
コントローラ108はさらに、ポンプに供給される電力の量を制御してもよい。この代替案では、コントローラはパージサイクルの間に、電源からポンプ204へ比較的大きな量の電力の送給を許可してもよい。バルブ218が開かれたら、コントローラは、ポンプへ比較的小さな量の電力の送給を許可してもよい。しかし比較的小さな量の電力は、一定のまたはほぼ一定の圧力を、ポンプが送給できるために十分な電力でなければならない。ポンプ204は、パージサイクルの後、継続して動作し、第2の開口部214は流体を抜き取って、プリントヘッドに送給される圧力を補助圧力まで低下させる。
【0018】
プリンタの動作の前に、プリンタはウォームアップ手順を実行し、ウォームアップ手順においては、転写ドラム、インク、受け取り媒体、およびプリントヘッドアセンブリが、プリンタ内で使用される相変化インクの溶融温度よりも通常低い、比較的低い周囲温度から目標動作温度まで加熱される。図1の実施形態に示すように、プリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドアセンブリを加熱するためのヒータ224を含んでよい。当技術分野において既知のように、コントローラはプリントヘッドアセンブリのヒータ224への電力を制御することによって、プリントヘッドの温度を制御することができる。プリントヘッドアセンブリを加熱すると、プリントヘッドの内部のインクが溶融し、或いはプリントヘッドアセンブリのインク通路を通して流れるようにインクが準備される。プリンタ内で使用される相変化インクは、80℃およびそれ以上の融点を有してもよい。それらのインクの多くでは、115℃以上などの、はるかに高い温度で最適な噴射を行うことができる。したがって、印刷の前に、プリントヘッドは、そのような高い噴射温度に、またはそれ以上の温度に加熱されなければならない可能性がある。
【0019】
溶融型熱転写インクジェットプリンタは、電源が切られた状態、またはスタンバイ状態から動作可能状態までのプリンタのウォームアップの間に、ノズルの汚染の危険にさらされる場合があるということがテストによって示されている。例えば、プリントヘッドが、相変化インクの溶融温度未満の温度から、インクの溶融温度を超える目標動作温度までウォームアップされる際に、プリントヘッド内の固化または凝固した固形インクが溶融してプリントヘッド内で膨張し、溶融インクはノズルからノズルプレート上に垂れ出る。しかし、プリンタが印刷動作を実行するために十分にウォームアップされる時までにノズルからノズルプレート上に垂れ出たインクは、ノズル内に吸い戻される可能性があり、場合によってはノズルプレートからノズル内に汚染を引き込む。
【0020】
図3を参照すると、プリントヘッドのノズル内にインクが引き戻されるのを防止するために、プリントヘッドアセンブリのウォームアップ中にプリントヘッドの内部のインクに低圧の補助圧力を印加することを含む、プリンタのウォームアップ中のノズルの汚染を防止または減少させる方法のフローチャートが示されている。この方法は、相変化インクをプリントヘッド内に供給することを含む(ブロック600)。インクは例えば固形インクスティックを溶融し、そしてプリントヘッドアセンブリのインクリザーバに溶融インクを移送する等の既知の方法によって、プリントヘッドに供給されることができる。プリントヘッドは、相変化インクの溶融温度未満の第1の温度から、溶融温度を超える第2の温度まで加熱される(ブロック604)。溶融温度は約80℃であってもよいが、正確な溶融温度は、相変化インクの材料の組成によって異なる。第2の温度はプリントヘッドの動作温度であり、これは例えば約115℃以上であってもよい。ただし、第2の温度は動作温度である必要はない。いくつかの実施形態では、長時間にわたる過度の熱によって発生する可能性があるインクの劣化を最小にするために、第2の温度は例えば、プリントヘッド内でインクが液体状態に保たれる温度ではあるが、最適な噴射温度よりも低い温度であるスタンバイ温度であってもよい。
【0021】
上述のように、プリントヘッドアセンブリの内部のインクが溶融して膨張する際に、溶融インクがプリントヘッドのノズルからノズルプレート上に垂れ出る場合がある。しかし、プリンタが印刷動作を実行するために十分にウォームアップされる時までに、ノズルからノズルプレート上に垂れ出たインクはノズル内に吸い戻される可能性があり、場合によってはノズルプレートからノズル内に汚染を引き込んで、それによりノズルを汚染する。プリントヘッドのノズルから漏れたインクがウォームアップ中にプリントヘッドに再び入るのを防止するために、プリントヘッドの温度が第1の温度から第2の温度まで上昇する際に、低圧の補助圧力がプリントヘッドの内部の相変化インクに印加される(ブロック608)。低圧の補助圧力は、動作中にプリントヘッドのノズルでインクを維持する背圧よりも大きい。例えば、一実施形態では、低圧の補助圧力は、約1.1水柱インチ(274.0Pa)〜1.5水柱インチ(373.6Pa)の間(または、約0.040psi(275.8Pa)〜0.054psi(372.3Pa))であるが、低圧の補助圧力は任意の好適な圧力であってもよい。
【0022】
低圧の補助圧力は、プリントヘッドのウォームアップが始まったらすぐに印加されてもよく、所定の期間にわたって印加されてもよい。ウォームアップ中に低圧の補助圧力を印加する期間は、当業者の能力の範囲内で任意の適切な方法で決定されてもよい。代案として、低圧の補助圧力はプリントヘッドアセンブリの温度に基づいて印加されてもよい。例えば、プリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドアセンブリの温度を判定するためにコントローラによって使用されることができる、1つ以上の温度センサを含んでもよい。いずれの場合も、プリントヘッドの温度がおおよそ第2の温度に到達したら、インクジェットのノズルにおけるインクのメニスカスをプリントヘッドアセンブリ内の背圧を安定させられるように、そして、通常の印刷動作が行われることを可能にするために、プリントヘッドアセンブリの加圧は中止されてもよい。
【0023】
一実施形態では、プリントヘッドの温度が略第2の温度に到達した後、及び第1の圧力の解除の前に、相変化インクとあらゆる汚染とをノズルプレートから除去するために、メンテナンス手順がプリントヘッドアセンブリで実行されることができる(ブロック610)。メンテナンス手順は、拭き取り手順(ブロック614)を含んでもよく、拭き取り手順においては、プリントヘッドのノズルプレートが、ワイパアセンブリのワイパブレードを使用して拭き取られる。拭き取り手順の間にノズル内にインクが押し込まれるのを防止するために、プリントヘッドの内部のインクに対する低圧の補助圧力は維持される。ノズルプレートを拭き取った後は、パージシステムを作動させて、パージ期間にわたってプリントヘッド内部の相変化インクにパージ圧力を印加することによって、プリントヘッドアセンブリはパージされることができる(ブロック618)。例えば、プリントヘッドアセンブリにパージ圧力を印加するためにコントローラは空気ポンプを作動させ、開口部214を閉じるための信号をバルブ218に送給する。プリントヘッドに送給される圧力は、その後、約4.1psi(28270Pa)まで上昇する。コントローラ108は、所定の時間で、または一実施形態においては約2.7秒であってよいパージ期間が経過したら、パージシステムの作動を停止させる。
【0024】
図2Aは、パージ手順が実行される前にプリントヘッドを拭き取ることを含むウォームアップ手順の間に、プリントヘッドに印加される圧力を描くグラフを示す。同図からわかるように、プリントヘッドのウォームアップ(破線によって示される温度)が開始される際のt0で圧力は低圧の補助レベルにある。ウォームアップ段階(t0〜tA)および第1の拭き取り段階(tA〜tB)の間、圧力は低圧の補助レベルで維持される。上記で説明したように、低圧の補助圧力は、プリントヘッドの温度が動作温度まで増加させられる際に、プリントヘッド内にインクが引き込まれるのを防止する。さらに、低圧の補助圧力は、拭き取り手順の間に、拭き取りアセンブリによって、プリントヘッド内にインクが押し込まれるのを防止するためにも役立つ。第1の拭き取り段階が完了したら、パージ段階が開始され(tB〜tC)、その間では、プリントヘッドの圧力が低圧の補助圧力からパージ圧力まで所定の期間にわたって上昇され、所定の期間が経過した時点で圧力は低圧の補助圧力に戻される。tCにおいて、パージ手順によって生じた可能性があるあらゆるインクまたはデブリをプリントヘッドのノズルプレートから除去するために、第2の拭き取り手順が実行される。同図からわかるように、パージ圧力が除去された後、圧力は低圧の補助圧力に戻される。拭き取り手順の間に、拭き取りアセンブリによってプリントヘッド内にインクが押し込まれるのを防止するために役立つように、低圧の補助圧力は第2の拭き取り手順の間、プリントヘッドで維持される。第2の拭き取り段階が完了したら、tDにおいて低圧の補助圧力はプリントヘッドから解除され、その時点でプリントヘッドはウォームアップされており、印刷動作を実行する準備ができている。
【0025】
プリントヘッドアセンブリの内部のインクに対する低圧の補助圧力を維持しながら、プリントヘッドアセンブリのノズルプレートを拭き取り、そしてそれに続いて、プリントヘッドアセンブリからインクをパージすることに代わって、プリントヘッドアセンブリのノズルプレートを拭き取ることなしに、パージ手順が実行されてもよい(ブロック618)。例えばプリントヘッドアセンブリは、プリントヘッドの温度がおおよそ第2の温度に到達した後、かつ、第1の正圧を解除する前に、上述のように、パージ期間にわたってプリントヘッドの内部の相変化インクに対する圧力を、低圧の補助圧力からパージ圧力まで増加させることによってパージされてもよい。パージが完了した後は、次いでプリントヘッドアセンブリ内部のインクから正圧が解除され、インクジェットのノズルにおけるインクのメニスカスを背圧により安定させ、通常の印刷動作が行われることを可能にする。
【0026】
図2Bは、第1の拭き取り段階または手順が省かれたウォームアップ手順の間に、プリントヘッドに印加される圧力を描くグラフを示す。同図からわかるように、プリントヘッドのウォームアップ(破線によって示される温度)が開始される際のt0において、圧力は低圧の補助レベルにある。ウォームアップ段階(t0〜tA)の間、圧力は低圧の補助レベルにおいて維持される。ウォームアップ段階が完了したら、パージ段階が開始され(tA〜tB)、プリントヘッド上の圧力が低圧の補助圧力からパージ圧力まで所定の期間にわたって上昇され、所定の期間が経過すると圧力は低圧の補助圧力に戻される。tBにおいて、プリントヘッドのノズルプレートから、パージ手順によって生じた可能性があるあらゆるインクまたはデブリを除去するために、拭き取り手順が実行される。同図からわかるように、パージ圧力が解除された後は、圧力は低圧の補助圧力に戻される。拭き取り手順の間に、拭き取りアセンブリによってプリントヘッド内にインクが押し込まれるのを防止するために役立つように、拭き取り手順の間、低圧の補助圧力がプリントヘッドで維持される。拭き取り段階が完了したら、tCにおいて、プリントヘッドから低圧の補助圧力が解除され、その時点でプリントヘッドはウォームアップされており、印刷動作を実行する準備ができている。
【0027】
別の実施形態では、プリントヘッドの温度がおおよそ第2の温度に到達した後で、プリントヘッドアセンブリのノズルからのインク放出を発生させるために、少なくとも1つの高圧パルスがプリントヘッドに印加されてもよい(ブロック620)。高圧パルスの結果としてノズルから放出されたインクは、或いはノズルプレート上に蓄積していた可能性があるインクと合体して、ノズルプレートの表面に沿って流れることができる。ノズルプレートに沿ったインクの流れは、ノズルプレート上に蓄積してきた、乾燥したインクを溶かし、ほこりまたはデブリをほぐし、従ってノズルの周囲の領域から汚染を取り除くのに役立つ可能性がある。1以上の高圧パルスが印加された後は、あらゆるデブリまたは汚染をノズルプレート上に残して、ノズルの周囲のきれいなインクがプリントヘッド内に引き戻されるようにするために、プリントヘッドに印加される正圧は短い期間で解除されてもよい。次に、拭き取りおよび/またはパージなどのメンテナンス手順が、残りのデブリまたは汚染をノズルプレートから取り除くために、プリントヘッドアセンブリで実行されてもよい。高圧パルスは、プリントヘッドアセンブリのノズルからインクを吐出することが可能な、任意の好適な振幅および/または持続時間を有してもよい。一実施形態では、圧力パルスは、約0.1秒〜約1.5秒などのパージ期間よりも短い期間にわたって略パージ圧力で印加される。しかし高圧パルスは、任意の好適な圧力振幅および/または持続時間を有してもよい。
【0028】
図2Cは、上述の高圧パルスを含むウォームアップ手順の間に、プリントヘッドに印加される圧力を描くグラフを示す。同図からわかるように、プリントヘッドのウォームアップ(破線によって示される温度)が開始される際のt0において、圧力は低圧の補助レベルにある。ウォームアップ段階(t0〜tA)の間、圧力は低圧の補助レベルにおいて維持される。ウォームアップ段階が完了したら、プリントヘッドアセンブリのノズルからのインクの放出を発生させるために、tAにおいて高圧パルスがプリントヘッドに印加される。圧力パルスが印加された後は、きれいなインクがプリントヘッド内に引き戻されようにするために、tBにおいて正圧がプリントヘッドから解除される。tCにおいて、圧力は低圧の補助圧力からパージ圧力まで所定の期間にわたって上昇させられ、所定の期間が経過すると圧力は低圧の補助圧力に戻される。tDにおいて、プリントヘッドのノズルプレートからパージ手順によって生じた可能性があるあらゆるインクまたはデブリを除去するために、拭き取り手順が実行される。同図からわかるように、拭き取り手順の間、低圧の補助圧力がプリントヘッドで維持される。拭き取り段階が完了したら、tEにおいて、低圧の補助圧力はプリントヘッドから除去され、その時点でプリントヘッドはウォームアップされており、印刷動作を実行する準備ができている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク担持体上に相変化インクを吐出するための複数のノズルを備えたノズルプレートを有するプリントヘッドを、相変化インクの溶融温度未満の第1の温度から、前記溶融温度を超えた第2の温度まで加熱し、
前記プリントヘッドの温度が前記第1の温度から前記第2の温度に上昇する際に、前記プリントヘッドの内部に第1の圧力を印加し、前記第1の圧力は、前記プリントヘッドの前記ノズルを通して前記プリントヘッド内に相変化インクが入るのを防止するように設定され、
前記プリントヘッドが略前記第2の温度になったことに応じて、前記プリントヘッドから前記第1の圧力を除去すること
を含む、プリントヘッドの動作方法。
【請求項2】
前記プリントヘッドの温度が略前記第2の温度に到達した後、かつ、前記第1の圧力の除去の前に、前記ノズルプレートから相変化インクを除去するために、前記プリントヘッドの内部への前記第1の圧力を維持しながら、前記プリントヘッドの前記ノズルプレートを拭き取ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ノズルプレートを拭き取った後で、パージ期間にわたって前記プリントヘッドの内部に第2の圧力を印加することによって、前記プリントヘッドをパージし、前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも大きく、パージ圧力に対応することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プリントヘッドの温度が略前記第2の温度に到達した後で、少なくとも1つの圧力パルスを前記プリントヘッドアセンブリに印加し、前記少なくとも1つの圧力パルスは、前記第1の圧力よりも大きな圧力で、パージ期間よりも短い期間に送給され、前記少なくとも1つの圧力パルスは、溶融した相変化インクが前記ノズルから放出され、前記ノズルプレートを流れ落ちるように設定されることをさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234263(P2009−234263A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71765(P2009−71765)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】