説明

プリントメディア用スプールの製造方法およびプリントメディア用スプール

【課題】その胴部の直径が細く、樹脂の肉厚が小さくなった場合であっても、金型から外す際に伸びたり切れたりすることがない、プリントメディア用スプールの製造方法を提供すること。
【解決手段】リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールの製造方法において、プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用い、これらの金型で形成される間隙中に樹脂を射出し、これを硬化させ、第1の金型に設けられた凸部により完成したスプールを押さえつつ、第2の金型を引き抜き、その後、第1の金型からスプールを取り出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント用リボンカートリッジのリボン供給用スプールやリボン巻取用スプールなどとして使用されるプリントメディア用スプールの製造方法、およびプリントメディア用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばカラープリンタ等に用いられるリボンカートリッジには、昇華転写式インクリボン等を巻き付けたプリントメディア用スプールが、リボン供給用スプールやリボン巻取用スプールなどとして使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図5は、従来のプリントメディア用スプールの正面図である。
【0004】
図5に示すように、従来のプリントメディア用スプール40は、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部41と、この胴部の両側に位置するフランジ42とから構成されており、リボン(図示せず)は、両フランジ42、42の間に巻き付けられる。両フランジ42、42の外側には、プリンタの駆動部などと接合するためのリブ43や、プリンタの軸受部と接合するための軸などが設けられているのが通常である。
【0005】
このようなプリントメディア用スプール40は、金型を用いた樹脂の射出成形により製造されている。
【0006】
図6は、金型を用いた樹脂の射出成形によりプリントメディア用スプールを製造する際の工程図である。
【0007】
図6(a)に示すように、プリントメディア用スプールの外形を形作るための第1の金型(左右2つ)51a、51bと、スプールの胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型(上下2つ)52a、52bとを組み合わせ、これらの金型により形成される間隙中に樹脂を射出し、その後硬化させる。
【0008】
次いで、図6(b)に示すように、樹脂が硬化した後、第1の金型の一方(図6(b)においては右側51b)を外す。
【0009】
次いで、図6(c)に示すように、第1の金型の一方(51b)が外れた状態で、第2の金型52a、52bを外す。
【0010】
そして最後に、図6(d)に示すように、第1の金型の他方(図6(d)においては左側51a)を外すことにより、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部41と、この胴部の両側に位置するフランジ42を有するプリントメディア用スプール40が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−133603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図6に示すような金型を用いた樹脂の射出成形法は非常に一般的であるが、図6(c)に示す段階、つまり、第1の金型の一方(51b)が外れた状態で、第2の金型52a、52bを外す際に、スプールの胴部41と第2の金型(特に52a)とが解離せず、第2の金型52aにくっついて(図6においては上方に向かって)引っ張られることが生じ得る。
【0013】
ここで、多少引っ張られた後、直ぐにスプールの胴部41と第2の金型52aとが解離すれば大きな問題とはならないが、これらが解離せずにくっついたままだと、スプールのフランジの一方(図6においては下側のフランジ)42は、未だ第1の金型51aにより固定されている状態であるため外れることはなく、従って、最終的には、図6(c)の符号Tのあたりで胴部41が伸びでしまったり、場合によっては切れてしまうことがあった。
【0014】
近年、カラープリンタの小型・軽量化の要請に伴い、プリントメディア用スプール40自体も小型・軽量化されており、従来に比べてプリントメディア用スプールの胴部41の直径や樹脂の肉厚が小さくなってきており、この問題が顕著化しつつある。
【0015】
本願発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、その胴部の直径が細く、樹脂の肉厚が小さくなった場合であっても、金型から外す際に伸びたり切れたりすることがない、プリントメディア用スプールの製造方法を提供すると共に、このような問題が生じ得ないプリントメディア用スプール自体を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本願発明は、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールの製造方法であって、プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用い、これらの金型で形成される間隙中に樹脂を射出し、これを硬化させ、第1の金型に設けられた凸部により完成したスプールを押さえつつ、第2の金型を引き抜き、その後、第1の金型からスプールを取り出すことを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するための本願発明は、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールであって、プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用いて製造されることにより、両フランジの内側に前記第1の金型が有する凸部に対応した凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法によれば、第1の金型における、スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成されているため、完成されたスプールが第2の金型とくっついて引っ張られた場合に、当該凸部によってスプールを固定しておくことができ、その結果、スプールが伸びたり切れたりすることを防止することができる。
【0019】
また、本願発明のプリントメディア用スプールは、上記本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法によって製造されているため、その両フランジの内側に、第1の金型が有する凸部に対応した凹部が形成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法を示す工程図である。
【図2】図1(b)において、製造されるプリントメディア用スプール100のフランジ2周辺(図1(b)の符号Aの部分)の拡大図である。
【図3】本願発明のプリントメディア用スプール100の正面図である。
【図4】本願発明のプリントメディア用スプール100の別の態様の正面図である。
【図5】従来のプリントメディア用スプールの正面図である。
【図6】金型を用いた樹脂の射出成形によりプリントメディア用スプールを製造する際の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法、およびプリントメディア用スプールについて、図面を用いて説明する。
【0022】
まず、本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法は、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールの製造方法であって、プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用い、これらの金型で形成される間隙中に樹脂を射出し、これを硬化させ、第1の金型に設けられた凸部により完成したスプールを押さえつつ、第2の金型を引き抜き、その後、第1の金型からスプールを取り出すことを特徴とする。
【0023】
図1は、本願発明のプリントメディア用スプールの製造方法を示す工程図である。
【0024】
図1と図5を見比べれば分かるように、本願発明の方法の基本的な工程順は、従来の方法と同一である。
【0025】
具体的には、図1(a)に示すように、プリントメディア用スプールの外形を形作るための第1の金型(左右2つ)11a、11bと、スプールの胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型(上下2つ)12a、12bとを組み合わせ、これらの金型により形成される間隙中に樹脂を射出し、その後硬化させる。
【0026】
次いで、図1(b)に示すように、樹脂が硬化した後、第1の金型の一方(図1(b)においては右側11b)を外す。
【0027】
次いで、図1(c)に示すように、第1の金型の一方(11b)が外れた状態で、第2の金型12a、12bを外す。
【0028】
最後に、図1(d)に示すように、第1の金型の他方(図1(d)においては左側11a)を外すことにより、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジを有するプリントメディア用スプール100を製造する。
【0029】
そして、このような本願発明の製造方法における特徴点は、所定の凸部を有する第1の金型11a、11bを用いることにある。
【0030】
図2は、図1(b)において、製造されるプリントメディア用スプール100のフランジ2周辺(図1(b)の符号Aの部分)の拡大図である。
【0031】
図2に示すように、本願発明の方法において用いられる第1の金型11a、11bには、製造されるプリントメディア用スプール100の上側のフランジ2(図2においては、上側のフランジのみが描かれている)の内側に位置する位置に、当該スプール100の胴部1に食い込むように突出する凸部20が形成されている。このような凸部20を第1の金型11a、11bに設けておくことにより、図2に示した状態の後で、第2の金型12aを上方に引き抜く際に(つまり、図1(c)の状態となった場合に、)スプール100が第2の金型12aとくっついて上方に引っ張られることがあるが、そうなっても当該凸部20によってスプール100の胴部1をしっかりと固定しておくことができ、その結果、スプール100が伸びたり切れたりすることを防止することが可能となる。
【0032】
ここで、本願発明において、凸部20が形成される位置については、上記の効果を発揮させるために、製造されるプリントメディア用スプール100の両フランジ2の少なくとも何れか一方の内側(つまり図1において上下にある両フランジ2、2に挟まれている部分)に位置する位置にあればよい。しかしながら、図2に示すように、特にフランジ2の近傍、より具体的には、胴部1にリボンが巻き付けられた場合であっても、当該リボンと接触しない位置に設けることが好ましい。これは、リボンが巻き付けられる位置に対応する位置に凸部20を設けると、当該金型により形成されたスプールの胴部の対応する位置には凹部が存在することとなり、当該凹部によってリボンが傷つけられる虞があるからである。
【0033】
また、凸部20の具体的な形状や大きさについては、本願発明は特に限定することはなく、上記の作用効果を発揮する形状や大きさを適宜設計することができる。しかしながら、凸部20の高さhは、製造されたプリントメディア用スプール100においては、凹部の深さとなるため、高さhをあまり大きくすると、当該部分のプリントメディア用スプール100の胴部1の肉厚が薄くなってしまい、破損等の原因となってしまう。したがって、完成されるプリントメディア用スプール100の胴部1の肉厚の半分程度の高さとすることが好ましい。また、凸部20の幅wも同様の観点からあまり大きくする必要はなく、例えば0.5〜2.0mm程度とすることが好ましい。
【0034】
さらに、凸部20の数についても、本願発明は特に限定することはなく、上記の作用効果を発揮することが可能であれば適宜設計可能である。例えば、全周に亘って2〜6個程度設けてもよい。また、凸部20の全周に対する面積率が20〜80%となるように設計することが好ましい。凸部20の全周に対する面積率が20%より小さいと引っかかり効果が小さくなってしまい、一方で80%を超えると、当該部分のスプールの胴部の耐久性が低下してしまうからである。また、当該面積率が同じであっても、凸部20の数を多くした方が引っかかり効果が向上する。
【0035】
また、上記と同様の観点から、図1や図2に示すように、凸部20は、上下にあるフランジの何れか一方のみの内側に設けることが好ましく、一方のみの凸部では充分に効果が発揮できない場合には、両方のフランジの内側に設けることが好ましい。
【0036】
ここで、一方にのみ凸部20を設ける場合には、図1や2に示すように、スプールの胴部を筒状とするための「ピン型」の金型12aに近い側のフランジの内側に設けることが好ましい。当該金型12aが引き抜かれる際にスプールが伸びる不具合が発生するからである。
【0037】
図3は、本願発明のプリントメディア用スプール100の正面図である。
【0038】
本願発明のプリントメディア用スプール100は、上記で説明した本願発明の方法によって形成されており、したがって、リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部1と、この胴部の両側に位置するフランジ2、2とを有し、かつ、両フランジ2の内側に前記第1の金型が有する凸部に対応した凹部20'が形成されていることを特徴としている。
【0039】
図4は、本願発明のプリントメディア用スプール100の別の態様の正面図である。
【0040】
図4に示すように、凸部に対応した凹部20'が、胴部の両側に位置するフランジ2、2それぞれの内側に設けられてもよい。当該態様は、図3に示すように一方のフランジ(上側のフランジ)の内側のみに凹部20'が形成されているのみでは、引っかかり効果が小さい場合に有用である。
【符号の説明】
【0041】
100 プリントメディア用スプール
1 胴部
2 フランジ
11a 第1の金型
11b 第1の金型
12a 第2の金型
12b 第2の金型
20 凸部
20' 凸部に対応した凹部
h 凸部の高さ
w 凸部の幅
40 プリントメディア用スプール
41 胴部
42 フランジ
43 リブ
44 軸
51a 第1の金型
51b 第1の金型
52a 第2の金型
52b 第2の金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールの製造方法であって、
プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用い、
これらの金型で形成される間隙中に樹脂を射出し、これを硬化させ、
第1の金型に設けられた凸部により完成したスプールを押さえつつ、第2の金型を引き抜き、その後、第1の金型からスプールを取り出すことを特徴とするプリントメディア用スプールの製造方法。
【請求項2】
リボンをその外周に巻き付けるための筒状の胴部と、この胴部の両側に位置するフランジとを有するプリントメディア用スプールであって、
プリントメディア用スプールの外形を形作るとともに、当該スプールの両フランジの少なくとも何れか一方の内側に位置する位置に、当該スプールの胴部に食い込むように突出する凸部が形成された第1の金型と、その胴部を筒状とするために胴部内に挿入される第2の金型と、を用いて製造されることにより、
両フランジの内側に前記第1の金型が有する凸部に対応した凹部が形成されていることを特徴とするプリントメディア用スプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212972(P2011−212972A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83144(P2010−83144)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】