説明

プリントモジュールおよびプリントシステム

【課題】プリントモジュールの内部空間を有効に利用してキャップの着脱位置を設定することにより、キャップの着脱作業性が優れた小型のプリントモジュール、および複数のプリントモジュールを備えたプリントシステムを提供すること。
【解決手段】記録ヘッドを装着可能な昇降フレーム50が矢印C1,C2方向に移動し、キャップユニット30を装着可能なスライドフレーム70が矢印B1,B2方向に移動する。キャップユニット30は、矢印B方向に移動したスライドフレーム70に対して着脱可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット化されたプリントモジュール、および複数のプリントモジュールを備えたプリントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプリントモジュールとして、本出願人は先に、特許文献1に記載のものを提案した。かかるプリントモジュールには、吐出口列を形成する複数の吐出口からインクを吐出可能な記録ヘッドと、記録ヘッドの吐出口の状態を維持するための処理を行う処理部と、が組み込まれている。その処理部には、記録ヘッドの吐出口をキャップによってキャッピングするためのキャッピング機構などが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプリントモジュールは、所定の方向に搬送される記録媒体と対向する位置に配備され、その配備数および配備形態に応じて、幅広の記録媒体に対して画像を記録可能なプリントシステム、および高速記録が可能なプリントシステムを構成することができる。その場合、プリントモジュールは、その記録ヘッドの吐出口列が記録媒体の搬送方向と交差するような姿勢で配備され、さらに、記録媒体の搬送方向および幅方向に並ぶように複数配備されることになる。このようなプリントモジュールによって、特に、商業用の大量印刷装置を構成した場合には、記録ヘッドのみならず、その記録ヘッドをキャッピングするためのキャップの交換も必要となる。
【0005】
しかし、記録ヘッドの交換については考慮されているものの、キャップを交換については考慮されておらず、キャップを交換するためにはプリントモジュールを分解する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、プリントモジュールの内部空間を有効に利用してキャップの着脱位置を設定することにより、キャップの着脱作業性が優れた小型のプリントモジュール、および複数のプリントモジュールを備えたプリントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリントモジュールは、インクを吐出可能な複数の吐出口が所定の吐出口列に沿って形成された記録ヘッドを用いて、所定の搬送方向に搬送される記録媒体に画像を記録可能なプリントモジュールであって、前記吐出口列の延在方向が前記搬送方向と交差するように前記記録ヘッドの装着が可能であって、画像が記録される前記記録媒体の表面に対して近接および離間する方向に移動可能な第1のフレームと、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドの前記吐出口をキャッピング可能なキャップと、前記キャップが装着される第2のフレームと、前記キャップを前記記録ヘッドの前記吐出口と対向させるための第1の位置と、前記キャップを前記第1の位置から離すための第2の位置と、の間において前記第2のフレームを移動させる移動機構と、を備え、前記キャップは、前記第2のフレームが前記第1の位置に移動したときに、前記第2のフレームに対して所定の方向から着脱可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明のプリントシステムは、上記のプリントモジュールの複数と、前記複数のプリントモジュールを制御するための制御装置と、前記記録媒体を搬送するための搬送装置と、を備え、前記複数のプリントモジュールは、前記記録媒体の搬送方向と、当該搬送方向と交差する方向と、の内の少なくとも一方にずれて位置し、前記複数のプリントモジュールは、前記第2のフレームに対する前記キャップの着脱方向がほぼ同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録ヘッドが装着されるフレームの移動と、キャップが装着されるフレームの移動と、に関連してキャップの着脱位置を設定することにより、プリントモジュールの内部空間を有効に利用してキャップを着脱することができる。プリントモジュールの小型化を図りつつ、キャップの着脱作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)および(b)は、本発明のプリントシステムにおける複数のプリントモジュールの異なる配置例の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるプリントモジュールを前側から視た斜視図である。
【図3】図2のプリントモジュールを後側から視た斜視図である。
【図4】図2のプリントモジュールから、ヘッドユニット、クリーナ、およびキャップユニットを取り外した状態の斜視図である。
【図5】図4のヘッドユニットを後側から視た斜視図である。
【図6】(a)および(b)は、ヘッドユニットが装着される昇降フレームの動作を説明するための斜視図である。
【図7】図4のキャップユニットを後側から視た斜視図である。
【図8】(a),(b),(c)は、キャップユニットを異なる方向から視た斜視図である。
【図9】(a)および(b)は、キャップユニットが装着されるスライドフレームの動作を説明するための斜視図である。
【図10】図2のプリントモジュールに接続されるインクの供給系の概略構成図である。
【図11】(a)および(b)は、ヘッドユニットの装着の作業過程を説明するための斜視図である。
【図12】(a)および(b)は、ヘッドユニットの装着の作業過程を説明するための斜視図である。
【図13】(a)および(b)は、ヘッドユニットの装着の作業過程を説明するための斜視図である。
【図14】(a)および(b)は、ヘッドユニットの装着の作業過程を説明するための斜視図である。
【図15】(a)および(b)は、ヘッドユニットの装着の作業過程を説明するための斜視図である。
【図16】(a),(b),(c)は、ヘッドユニットとキャップユニットの関連動作の説明図である。
【図17】(a)および(b)は、クリーナの動作の説明図である。
【図18】(a),(b),(c)は、複数のプリントモジュールの異なる配置例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1(a),(b)は、本発明のプリントモジュールおよびプリントシステムの基本構成を説明するための概略平面図である。プリンモジュールMには、記録ヘッドHが装着されるヘッド部M1と、記録ヘッドHにおける吐出口の状態を良好に維持するための回復処理を行う回復処理部M2と、が備えられている。本例においては、記録ヘッドHとして、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを複数の吐出口から吐出可能なインクジェット記録ヘッドHB,HC,HM,HYが装着されている。また回復処理部M2には、後述するキャップユニットやポンプなどが備えられている。記録ヘッドHは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出することができる。例えば、電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、吐出口からインクを吐出させることができる。
【0013】
このようなプリントモジュールMは、プリントシステムに対して複数(本例の場合は、3つ)装着可能である。プリントシステムには、搬送ローラや搬送ベルトなどを用いて、記録媒体Wを矢印A方向に搬送するための搬送装置1が備えられており、その記録媒体Wと対向する位置にプリントモジュールMが配備される。記録ヘッドHにおける複数の吐出口は、搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する方向に延在するノズル列(吐出口列)に沿って形成されている。3つのプリントモジュールMは、図1(a)においては、それらのヘッド部M1が搬送方向Aにずれ、かつ搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する方向にずれるように配備されている。また、図1(b)においては、それらのヘッド部M1が搬送方向に並ぶように配備されている。
【0014】
プリントモジュールMのそれぞれは、制御装置2と電気的に接続され、かつインクタンク3Aと廃液タンク3Bを含むインク供給部3に配管接続される。インクタンク3Aとしては、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを収容する4つのインクタンクが含まれる。制御装置2には搬送装置1と検出部4が接続されており、搬送装置1は、制御装置2の制御下において記録媒体Wを搬送すると共に、ロータリーエンコーダなどを用いて、記録媒体Wを所定単位量ずつ搬送する毎にパルス信号を出力する。そのパルス信号は搬送装置1に入力される。検出部4は、搬送装置1によって搬送される記録媒体Wの先端が所定の位置に到達したときに、検出信号を出力する。
【0015】
制御装置2は、記録媒体に記録すべき画像データをプリントモジュールの配備位置に応じて分割した分割画像データを生成する。プリントモジュールが図1(a)のように配備される場合には、記録媒体に記録すべき画像をプリントモジュールの配備位置に応じて記録媒体の幅方向(同図中の上下方向)に分割して、プリントモジュール毎の分割画像データを生成する。プリントモジュールが図1(b)のように配備される場合には、記録媒体に記録すべき画像をプリントモジュールの配備位置に応じて記録媒体の搬送方向に分割して、プリントモジュール毎の分割画像データを生成する。また制御装置2は、検出部4の検出信号に基づいて、プリントモジュールM毎の記録開始タイミングを規定する記録開始信号を生成し、その記録開始信号を対応するプリントモジュールに出力する。さらに制御装置2は、搬送装置1からのパルス信号に基づいて、プリントモジュールM毎の記録ヘッドの駆動周期を規定するタイミング信号を生成する。
【0016】
プリントモジュールのそれぞれは、それらの個々に対応する分割画像データ、記録開始信号、およびタイミング信号に基づいて、記録ヘッドHからインクを吐出することにより、分割画像データに対応する画像を記録する。複数のプリントモジュールは、互いに協働して画像を記録媒体上に記録可能である。図1(a)の場合には、プリントモジュールの配備数に応じた幅広の記録媒体に対して画像を記録することができ、図1(b)の場合には、プリントモジュールの配備数に応じて画像を高速に記録することができる。また、図1(b)の場合に、記録媒体に記録すべき画像の記録データをプリントモジュール毎の記録データとして共通化することにより、同じ位置にインクのドットを形成して、高濃度の画像を記録することもできる。
【0017】
図2は、本例におけるプリントモジュールMを前側から視た斜視図である。前述したように、プリンモジュールMには、記録ヘッドHが装着されるヘッド部M1と、記録ヘッドHの記録性能を良好に維持するための回復処理部M2と、が備えられている。ヘッド部M1には、後述する昇降機構40によって上下の矢印C1,C2方向に移動される昇降フレーム50(第1のフレーム)が備えられている。この昇降フレーム50は、画像が記録される記録媒体の表面に対して近接および離間する方向(矢印C1,C2方向)に移動可能であり、記録ヘッドHが着脱可能に装着される装着部を構成する。回復処理部M2には、後述する移動機構60によって矢印B1,B2方向にスライドされるスライドフレーム70(第2のフレーム)が備えられている。矢印B1,B2方向は、搬送方向Aと交差(本例の場合は、直交)する記録ヘッドHのノズル列に沿う方向である。図3は、プリントモジュールMを後側から見た斜視図である。プリントモジュールMの後部(矢印B1側の端部)寄りの側面には、前述した制御装置2と電気的に接続される電気接続部81と、前述したインク供給部3に配管接続される配管接続部82と、が配備されている。
【0018】
本例の電気接続部81は、制御装置2側の配線用コネクタ(図示せず)がプリントモジュールMの側方から差し込まれる配線用コネクタ81Aを備えている。本例の配管接続部82には、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを収容する外部のインクタンクに接続される接続部83(83A,83B,83C,82D)と、外部の廃液タンク3Bに接続される接続部84と、が備えられている。これらの接続部83,84に対して、インク供給部3側の配管用コネクタがプリントモジュールMの側方から差し込まれる。配管接続部82には、その配管接続部82に対してインク供給部3側の配管用コネクタを位置決めするための位置決め85が備えられている。これらの電気接続部81および配管接続部82をプリントモジュールMの後部に配備して、それらに対して、制御装置2側の配線用コネクタとインク供給部3側の配管用コネクタが矢印B2方向から接続できるようにしてもよい。いずれにしても、プリントモジュールMにおいてヘッド部M1と反対側に位置する回復処理部M2の部分に、電気接続部81および配管接続部82を配備することが望ましい。本例の場合、ヘッド部M1と回復処理部M2は、記録ヘッドHのノズル列に沿う方向の一方側と他方側に位置する。ヘッド部M1に、例えば、記録ヘッドに関連する信号線および電源などの電気接続部を備えてもよい。
【0019】
ヘッド部M1の昇降フレーム50に対しては、図4のように、記録ヘッドHを含むヘッドユニット10、およびクリーナ20が矢印B1方向から装着される。それらは、昇降フレーム50から、矢印B1とは逆の矢印B2方向に取り外される。また、回復処理部M2のスライドフレーム70に対しては、キャップユニット30が矢印B1方向から装着され、矢印B2方向に取り外される。
【0020】
ヘッドユニット10には、図5のように4つのプレート11(11A,11B,11C,11D)が装着されており、それらのプレート11の下端部には、記録ヘッドH(HB,HC,HM,HY)を構成する基板(図示せず)が取り付けらている。記録ヘッドHは、図5中の下方に向かってインクを吐出可能な複数の吐出口がノズル列に沿って形成されている。記録ヘッドHが構成する基板には、電気熱変換素子などの吐出エネルギー発生素子の駆動回路が形成されており、その駆動回路はプレート11の接点部12に接続されている。ヘッドユニット10には、記録ヘッドH(HB,HC,HM,HY)のそれぞれの内部に連通する第1連通管部13(13A,13B,13C,13D)と第2連通管部14(14A,14B,14C,14D)が設けられている。ヘッド部M1の昇降フレーム50に対して、ヘッドユニット10が矢印B1方向から装着されたときに、これらの第1連通管部13および第2連通管部14は、それらに対応する昇降フレーム50側の配管接続部87,88(図10参照)に接続される。配管接続部87から第1連通管部13を通してヘッドユニット10内に導入されたインクは、記録ヘッドH内に導かれる。
【0021】
図6(a),(b)は、昇降機構40によって矢印C1,C2方向に昇降される昇降フレーム50の斜視図であり、(a)および(b)は、上昇位置および下降位置にある昇降フレーム50を表す。昇降フレーム50のスライドガイド51は、モジュールMのフレーム側(固定側)に取り付けられたスライドシャフト52に上下動自在にガイドされており、ヘッドユニット10は、図6(a)のような上昇位置にある昇降フレーム50に対して着脱自在に装着される。昇降機構40は、昇降フレーム50側のラック41に噛合するウオームギア42を、ギア43を介してモータ44によって駆動することにより、昇降フレーム50を昇降させる。53は、一端が昇降フレーム50側の配管接続部87,88(図10参照)に接続されるチューブであり、それらの他端は、後述する回復処理部M2側の配管接続部に接続される。
【0022】
昇降フレーム50には、ヘッドユニット10のプレート11(11A,11B,11C,11D)に対応する基板54(54A,54B,54C,54D)が上下動可能に備えられている。それらの基板54には、それらに対応するプレート11側の接点部12(図5参照)に接続可能な接点部(図示せず)が形成されている。昇降フレーム50には、図2および図4のように、第1レバー55が軸55Aを中心として矢印D1,D2方向に回動操作可能に備えられている。第1レバー55を図2のように矢印D1方向に回動させたときに、基板54が下動して、その基板側の接点部がプレート11側の接点部12に接続される。一方、第1レバー55を図4のように矢印D2方向に回動させたときに、基板54が上動して、その基板側の接点部がプレート11側の接点部12から離間する。本例の場合は、基板54が装着されるフレーム56を昇降フレーム50に上下動自在に備え、そのフレーム56側のラック56Aに噛合するギア57を、第1レバー55側のギア部55Bによって回動させる構成となっている。第1レバー55と昇降フレーム50との間には、引張りスプリング58が架け渡さている。この引っ張りスプリング58は、第1レバー55が図2の回動位置と図4の回動位置との間の回動途中におい一時的に強く引っ張られ、その復元力によって、第1レバー55を図2および図4の回動位置に弾性的に維持する。
【0023】
昇降フレーム50には、クリーナ20が装着されるクリーナ装着部が設けられている。昇降フレーム50には、そのクリーナ装着部にクリーナ20をロックするために、第2レバー59が軸59Aを中心として矢印E1,E2方向に回動操作可能に備えられている。クリーナ20およびクリーナ装着部の構成については後述する。
【0024】
図7は、キャップユニット30を後側から視た斜視図である。キャップユニット30には、記録ヘッドH(HB,HC,HM,HY)に対応するキャップ31(31A,31B,31C,31D)が備えられている。これらのキャップ31は、複数の吐出口が配列されるノズル列に沿って延在しており、吐出口が形成される記録ヘッドの吐出口形成面に密着することによって、それらの吐出口をキャッピング可能である。キャップユニット30には、キャップ31の内部に共通に連通する共通室R(図10参照)が形成されており、その共通室Rには配管接続部32,34が連通(配管)されている。配管接続部32は、キャップユニット30がスライドフレーム70に装着されたときに、そのスライドフレーム70側の配管接続部(図示せず)に接続される。配管接続部34は、大気開放弁86(図10参照)に接続される。キャップユニット30の端部には、吐出口が形成される記録ヘッドHの吐出口形成面をワイピング可能なブレード36,37が配備されている。
【0025】
キャップユニット30の側面30A,30Bには、図8(a),(b)のように、スライドフレーム70側の穴71A,71Bに対応するボス33A,33Bが形成されている。また、キャップユニット30の端面30Cには、図8(c)のように、スライドフレーム70側の穴71C,71Dに対応するボス33C,33Dが形成されている。スライドフレーム70に対して、キャップユニット30を矢印B1方向から装着することにより、ボス33(33A、33B,33C,33D)が対応する穴71(71A,71B,71C,71D)に嵌合する。図8(a),(b),(c)においては、キャップユニット30が図8(a),(b)中の距離Lだけ矢印B1方向にさらに押し込まれたときに、ボス33が対応する穴71と嵌合する。キャップユニット30の前側には、キャップユニット30をスライドフレーム70に対する装着位置にロックするためのロック機構35が備えられている。
【0026】
図9(a),(b)は、移動機構60によって矢印B1,B2方向にスライドされるスライドフレーム70の斜視図である。キャップユニット30は、図9(a)のように矢印B2方向に移動したスライドフレーム70に対して、矢印B1方向から装着可能である。スライドフレーム70は、モジュールMのフレーム側(固定側)に取り付けられたレール72によって、矢印B1,B2方向にスライド自在にガイドされている。移動機構60は、プーリ61,62の間に掛け渡されて、スライドフレーム70に連結されたベルト63を備え、プーリ61を、ギア64を介してモータ65によって駆動することにより、スライドフレーム70を移動させる。スライドフレーム70には、キャップユニット30が装着されたときに、そのキャップユニット30の配管接続部32を回復処理部M2側の配管接続部に接続するためのチューブ73が備えられている。
【0027】
回復処理部M2には、図10のように、吸引ポンプ91、供給弁92、および回復弁93が備えられている。
【0028】
図11から図15は、昇降フレーム50に対するヘッドユニット10とクリーナ20の装着手順を説明するための斜視図である。
【0029】
図11(a)は、昇降フレーム50にクリーナ20が装着され、ヘッドユニット10が装着されていない状態を示す。この状態からヘッドユニット10を装着する場合には、第1レバー55を矢印D2方向に回動させて、基板54を上昇させてから(図11(b))、第2レバー59を矢印E2方向に回動させる(図12(a))。第1レバー55が図11(a)のような矢印D1方向に回動位置にあるときは、その第1レバー55によって、第2レバー59の矢印E2方向の回動が阻止されている。その後、昇降フレーム50からクリーナ20を矢印B2方向に取り出す。クリーナ20は、ブレード36,37をクリーニングするために昇降フレーム50の定位置に装着されるものであり、その両側部20A,20Bには、昇降フレーム50の両側面に形成されたガイド溝50A,50B内に入り込む突起21が設けられている。ガイド溝50A,50Bは矢印B1,B2方向に延在する。
【0030】
その後、図13(a),(b)のように、ヘッドユニット10を矢印B1方向から昇降フレーム50内に装着する。ヘッドユニット10は、その両側部に設けられた突起15がガイド溝50A,50B内にガイドされながら、昇降フレーム50内に装着される。その後、図14(a),(b)のように、クリーナ20を矢印B1方向から昇降フレーム50内に装着する。その際、クリーナ20の突起21がガイド溝50A,50B内に入り込む。その後、第2レバー59を矢印E1方向に回動させてから(図15(a))、第1レバー55を矢印D1方向に回動させる(図15(b))。第2レバー59を矢印E1方向に回動させることにより、第2レバー59のフック部59Bが突起15とはまり合って、ヘッドユニット10およびクリーナ20が昇降フレーム50の定位置にロックされる。また、第1レバー55を矢印D1方向に回動させることにより、基板54が下降されて、それがヘッドユニット10と電気的に接続される。
【0031】
ヘッドユニット10は、このような装着手順とは逆手の手順によって昇降フレーム50から取り外すことができる。
【0032】
図16は、キャップユニット30の動作を説明するための要部の側面図である。図16(a)は、キャップユニット30を矢印B2方向のキャップ位置に移動させてから、記録ヘッドHの吐出口形成面がキャップ31に密着するまでヘッドユニット10を下降させることにより、吐出口がキャッピングされている状態を示す。この状態においては、図10中の大気開放弁86と回復弁93を閉じて、記録ヘッドの吐出口をキャップ31によって密閉することにより、非記録動作時における吐出口からのインク中の水分の蒸発を抑えることができる。また、この状態においては、回復処理部M2によって、画像の記録に寄与しないインクを記録ヘッドの吐出口からキャップ31内に吸引排出(吸引回復処理)させることができる。すなわち、図10中の大気開放弁86と供給弁92を閉じ、かつ回復弁93を開いてから、吸引ポンプ91を作動させてキャップ31内に負圧を導入することにより、記録ヘッド内のインクを吐出口からキャップ31内に吸引させることができる。記録ヘッドH(HB,HC,HM,HY)の吐出口のそれぞれからキャップ31内に吸引されたインクは、吸引ポンプ91によって、図3中の共通の接続部84を通して図10中の共通の廃液タンク3B内に排出される。
【0033】
図16(b)は、ヘッドユニット10を上昇させて、記録ヘッドをキャップ31から離間させた状態を示す。この状態において、キャップユニット30を矢印B1,B2方向に移動させることにより、ブレード36,37によって記録ヘッドHの吐出口形成面をワイピングすることができる。また、キャップユニット30を矢印B1,B2方向に移動させることにより、図17(a),(b)のように、ブレード36,37の先端をクリーナ20のクリーニング面22に接触させて、ブレード36,37に付着したインクや異物を除去することができる。また、図16(b)の状態においては、画像の記録に寄与しないインクを記録ヘッドの吐出口からキャップ内に吐出(予備吐出)させることができる。キャップ31内に吐出されたインクは、吸引ポンプ91によって廃液タンク3B内に排出される。
【0034】
また、図16(b)のように、キャップユニット30をキャップ位置に移動させ、かつヘッドユニット10を上昇させることにより、キャップユニット30とヘッドユニット10との間に空間が形成される。その状態において、前述したように、ヘッドユニット10と干渉させることなく、スライドフレーム70に対してキャップユニット30を着脱することができる。その着脱に際しては、キャップユニット30が完全にキャップ位置に移動していなくてもよく、少なくともキャップ31の一部が記録ヘッドの吐出口と対向する位置(第1の位置)であってもよい。したがって、その第1の位置はキャップ位置を含むことになる。また、ヘッドユニット10の下側に大きな空間を形成するように、その上昇量を大きくすることにより、キャップ31が図16(b)中の左側に移動して記録ヘッドの吐出口と対向しない位置にあるときに、ヘッドユニット10の着脱を可能とすることもできる。
【0035】
図16(c)は、キャップユニット30を矢印B1方向の待機位置(第2の位置)に移動させてから、ヘッドユニット10における記録ヘッドHが所定の記録位置に移動するまでヘッドユニット10を下降させた状態を示す。この状態において、ヘッドユニット10は記録ヘッドHからインクを吐出して、記録媒体W(図1参照)に画像を記録することができる。その際には、供給弁92、回復弁93、および大気開放弁86は閉じる。記録ヘッドHB,HC,HM,HYに対しては、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローのインクを個別に収容する4つのインクタンク3Aのそれぞれから、図3中の接続部83A,83B,83C,82Dを通して、それらのインクが個別に供給される。インクタンク3Aから記録ヘッドH(HB,HC,HM,HY)に対しては、水頭差を利用して、負圧を付与したインクを供給することができる。また、記録ヘッドHにインクを供給するために吸引ポンプ91を用いてもよい。記録ヘッドH内に供給されたインクは、吐出口に連通する連通路を含むノズル内に導入されて、その吐出口においてメニスカスを形成する。
【0036】
記録ヘッドHに対してインクを最初に供給する初期段階においては、吸引ポンプ91を用いて、インクタンク3Aから記録ヘッドH内にインクを供給(初期供給)する。すなわち、図10中の供給弁92を開き、かつ回復弁93を閉じてから、吸引ポンプ91を作動させて、第2連通管部14を通して記録ヘッドH内に負圧を導入することにより、第1連通管部13を通してインクタンク3A内のインクを記録ヘッドH内に吸引する。また、記録動作中に記録ヘッドH内に気泡が溜まった場合には、適時あるいは定期的に、上記のようなインクの初期供給と同様の動作を実行することによって、記録ヘッドH内の気泡を廃液タンク3B内に排出することができる。
【0037】
図18(a),(b),(c)は、複数のプリントモジュールMの異なる配置例の説明図である。図18(a)においては、3つの記録ヘッドHを備えた4つのプリントモジュールMが記録媒体の搬送方向(矢印A方向)、および記録媒体の幅方向(同図中の上下方向)にずれて配置されている。それらのプリントモジュールMのヘッド部M1は、図18(a)中の上側に位置し、それらの回復処理部M2は同図中の下側に位置する。例えば、これらのプリントモジュールMの記録ヘッドHからブラックインクを吐出することにより、幅広の記録媒体に対してブラック画像を高速に記録することができる。前述したように、これらのプリントモジュールMにおけるヘッド部M1と回復処理部M2は、記録ヘッドHにおけるノズル列の延在方向にずれて位置するため、ノズル列と交差する方向におけるプリントモジュールMの幅を小さくすることができる。したがって、記録媒体の搬送方向において、複数のプリントモジュールMを近接配備することができる。この結果、それらのプリントモジュールによる画像の記録位置のずれを抑えて、高品位の画像を記録することができる。
【0038】
図18(b)においては、8つのプリントモジュールMが2つのグループG1,G2に分けられ、それらは同一形態に配置されている。それらのグループ毎の記録ヘッドHから異なるインクを吐出することにより、2種のインクを用いて、幅広の記録媒体に対して画像を高速に記録することができる。図18(c)においては、24のプリントモジュールMが4つのグループG11,G12,G13,G14に分けられ、それらは同一形態に配置されている。それらのグループ毎の記録ヘッドHからブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出することにより、幅広の記録媒体に対してカラー画像を高速に記録することができる。
【0039】
このような複数のプリントモジュールMの配置形態において、搬送方向Aと交差して記録媒体Wを横切る軸線を想定した場合、それらのプリンのモジュールMのヘッド部M1は、その軸線の一端側、つまり記録媒体の幅方向の一方側に位置する。したがって、記録媒体の幅方向の一方側の位置において、それらのプリントモジュールMに対し、ヘッドユニット10、クリーナ20、およびキャップユニット30を着脱することができる。しかも、それらの着脱方向は、いずれも記録ヘッドのノズル列に沿う矢印B1,B2方向であるため、それらの着脱の作業性がよい。また、ブレード36,37は、キャップユニット30あるいはスライドフレーム70に対して着脱可能に取り付けてもよく、その場合には、それらブレードの着脱方向も記録ヘッドのノズル列に沿う矢印B1,B2方向としてもよい。ブレード36,37は、キャップユニット30(つまり、キャップ31側)およびスライドフレーム70の少なくとも一方に着脱可能に備えることができる。また、クリーナ20は、ヘッドユニット10(つまり、記録ヘッドH側)および昇降フレーム50の少なくとも一方に着脱可能に備えてもよい。一方、複数のプリントモジュールMにおいて、電気接続部81および配管接続部82(図3参照)が位置する回復処理部M2は、搬送方向Aと交差して記録媒体Wを横切る軸線の他端側、つまり記録媒体の幅方向の他方側に位置する。そのため、その記録媒体の幅方向の他方側の位置において、それらのプリントモジュールMに対し、制御装置2側の配線用コネクタとインク供給部3側の配管用コネクタを接続することができる。このように、ヘッドユニット10、クリーナ20、およびキャップユニット30の着脱位置と、制御装置2およびインク供給部に対する接続位置と、を記録媒体の幅方向の一方側と他方側に分けることにより、プリントモジュールMの設置および管理がしやすくなる。
【0040】
(他の実施形態)
ヘッド部M1と回復処理部M2のそれぞれをユニット化し、それらを結合することによってプリントモジュールMを構成するようにしてもよい。その場合、そらのモジュールを記録ヘッドにおけるノズル列の延在方向に並べるように結合することにより、前述した実施形態と同様のプリントモジュールMを構成することができる。また、それらのモジュールをノズル列の延在方向と交差する方向(例えば、直交する方向)に並べるように結合してもよい。その場合には、キャップユニットがノズレ列の延在方向と交差する方向(例えば、直交する方向)に移動するように、キャップユニットの移動機構を構成すればよい。
【0041】
インクタンク3Aは、複数のプリントモジュールMに対して共通あるいは個別に備えてもよい。また、インクタンクをプリントモジュールに搭載することも可能である。また、プリントモジュールMに対して、制御装置2の機能の一部をもつ制御部を搭載してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送装置
2 制御装置
10 ヘッドユニット
20 クリーナ
30 キャップユニット
50 昇降フレーム(第1のフレーム)
70 スライドフレーム(第2のフレーム)
M プリントモジュール
M1 ヘッド部
M2 回復処理部
H 記録ヘッド
W 記録媒体
A 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能な複数の吐出口が所定の吐出口列に沿って形成された記録ヘッドを用いて、所定の搬送方向に搬送される記録媒体に画像を記録可能なプリントモジュールであって、
前記吐出口列の延在方向が前記搬送方向と交差するように前記記録ヘッドの装着が可能であって、画像が記録される前記記録媒体の表面に対して近接および離間する方向に移動可能な第1のフレームと、
前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドの前記吐出口をキャッピング可能なキャップと、
前記キャップが装着される第2のフレームと、
前記キャップを前記記録ヘッドの前記吐出口と対向させるための第1の位置と、前記キャップを前記第1の位置から離すための第2の位置と、の間において前記第2のフレームを移動させる移動機構と、
を備え、
前記キャップは、前記第2のフレームが前記第1の位置に移動したときに、前記第2のフレームに対して所定の方向から着脱可能であることを特徴とするプリントモジュール。
【請求項2】
前記移動機構は、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドにおける前記吐出口列の延在方向に沿って、前記第2のフレームを移動させることを特徴とする請求項1に記載のプリントモジュール。
【請求項3】
前記キャップは、前記第2のフレームに対して、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドにおける前記吐出口列の延在方向に沿って着脱可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリントモジュール。
【請求項4】
前記第1のフレームは、前記記録ヘッドを着脱可能に装着し、
前記記録ヘッドは、前記第1のフレームに対して、前記第2のフレームに対する前記キャップの着脱方向にほぼ沿って着脱可能である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリントモジュール。
【請求項5】
前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッド内に連通する配管と、前記配管を外部のインクタンクに接続するための配管接続部と、をさらに備え、
前記配管接続部は、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドから、当該記録ヘッドにおける前記吐出口列の延在方向にずれて位置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリントモジュール。
【請求項6】
前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドと電気的に接続される配線と、前記配線を外部の制御装置と電気的に接続するための電気接続部と、をさらに備え、
前記電気接続部は、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドから、当該記録ヘッドにおける前記吐出口列の延在方向にずれて位置することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプリントモジュール。
【請求項7】
吸引ポンプと、前記吸引ポンプによって発生させた負圧を前記キャップ内に導入する配管と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプリントモジュール。
【請求項8】
前記キャップおよび前記第2のフレームの少なくとも一方は、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドにおける吐出口形成面をワイピング可能なブレードを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプリントモジュール。
【請求項9】
前記キャップおよび前記第2のフレームの少なくとも一方は、前記ブレードを着脱可能に備えることを特徴とする請求項8に記載のプリントモジュール。
【請求項10】
前記記録ヘッドおよび前記第1のフレームの少なくとも一方は、前記ブレードをクリーニングするためのクリーナを着脱可能に備えることを特徴とする請求項8または9に記載のプリントモジュール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のプリントモジュールの複数と、
前記複数のプリントモジュールを制御するための制御装置と、
前記記録媒体を搬送するための搬送装置と、
を備え、
前記複数のプリントモジュールは、前記記録媒体の搬送方向と、当該搬送方向と交差する方向と、の内の少なくとも一方にずれて位置し、
前記複数のプリントモジュールは、前記第2のフレームに対する前記キャップの着脱方向がほぼ同じであることを特徴とするプリントシステム。
【請求項12】
前記複数のプリントモジュールは、前記第2のフレームに対して、前記第1のフレームに装着された前記記録ヘッドにおける前記吐出口列の延在方向に沿って着脱可能であることを特徴とする請求項11に記載のプリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−183766(P2012−183766A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49495(P2011−49495)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】