説明

プリント基板保持装置

【課題】カバー部を強固にチャックすることができ、高速移動、高精度位置決めが可能なカバー部を有するプリント基板保持装置を提供する。
【解決手段】このプリント基板保持装置31は、プリント基板Pを保持する保持部33と、プリント基板Pを覆い、このプリント基板Pを保持部33とともに閉空間Sに閉じ込めるカバー55と、このカバー55内に配設され前記プリント基板Pに所定の気体を供給するノズル体45とを備え、カバー55の側面でこのカバー55の重心より上方の近傍に、カバー55の幅又はそれ以上の長さを有するガイドバー61を設け、このガイドバー61は位置決め穴63を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部とカバー部とによって覆われる閉空間にプリント基板を配置し、この空間を所定の環境に設定してプリント基板に対して種々の試験を行うプリント基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプリント基板保持装置としては、図4および図5に示すようなものが知られている。このプリント基板保持装置11は、図6に示すような種々の素子Dが搭載されたプリント基板Pを所定の温度条件で検査するためのものである。このプリント基板保持装置11は平面視矩形状の保持部13を有している。この保持部13上面には、被検査プリント基板Pが垂直に保持されている。また、保持部13上でプリント基板Pの横には、プリント基板Pに所定温度の空気を供給するノズル体15が設けられている。そして、カバー部内に所定温度の空気を供給してプリント基板を加熱又は冷却し、種々の試験を行うようになっている。
【0003】
保持部13の上面には、プリント基板Pを覆う箱状のカバー部17が設けられている。このカバー部17は、その開口縁を保持部13上面の外周に気密に保持されている。このカバー部17の上面にはチャック係合部19が設けられている。
【0004】
そして、このチャック係合部19に、ロボットハンド等の先端に設けられたチャック21を係合させて、カバー部17を把持、搬送するようになっている。
【0005】
しかしながら、このプリント基板保持装置11にあっては、チャック係合部19がプリント基板保持装置11の重心よりかなり上方にあるため、チャック21でチャック係合部19を把持して移動する際、装置の下部が大きく振れてしまう。このため、急激な加速、減速ができず、高速での搬送が難しいという問題点があった。また、一旦、装置下部が振れてしまうと、静止するまでに時間がかかり、装置の位置決めが難しいという問題点があった。
【0006】
また、このカバー部17自体、薄板で構成されているため、カバー部全体が歪やすく、位置決め精度を出しにくいという問題点もあった。
【0007】
一方、チャック21によりカバー部17を直接把持することによって、把持位置を下げ、重心との距離を小さくすることも考えられる。しかしながら、カバー部自体が薄板からなり剛性が低いため、把持によってカバー自体が歪んでしまい強固に保持できず、高速移動が難しいという問題点があった。
【0008】
なお、プリント基板保持装置としては特許文献1に示すようなものが知られている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−354341
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、カバー部を強固にチャックすることができ、高速移動、高精度位置決めが可能なカバー部を有するプリント基板保持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、プリント基板(P)を保持する保持部(33)と、プリント基板(P)を覆い、このプリント基板(P)を保持部(33)とともに閉空間(S)に閉じ込めるカバー部(55)と、このカバー部(55)内に配設されプリント基板(P)に所定の気体を供給するノズル体(45)とを備え、カバー部(55)の側面で前記プリント基板保持装置の重心より上方の近傍に、カバー部(55)の幅又はそれ以上の長さを有するガイドバー(61)を設け、このガイドバー(61)は係止部(63)を有する手段を採用することができる。
【0012】
この手段によると、ガイドバーを保持するチャックとプリント基板保持装置の重心との距離を短くすることができ、したがって、装置を移動する際、装置の下部が大きく振れるのを防止することができ、急激な加速、減速が可能で、高速での輸送も容易に行うことができる。また、ガイドバーによってカバー部の剛性が増すから、カバー部を強固にチャックすることができ、高速移動、高精度位置決めが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、係止部(63)は、穴又はピンであり、ガイドバー(61)に2箇所以上設けられている手段を採用することができる。したがって、チャックとガイドバーとの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0014】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0016】
図1中符号31は、本発明の一実施の形態であるプリント基板保持装置を示す。このプリント基板保持装置31は、保持部33を有しており、この保持部33はその下部に平面視矩形状で厚板の保持部ベース35を有している。
【0017】
この保持部ベース35の中央には、プリント基板のコネクタが挿入されるコネクタ挿入穴37が上下に貫通して形成されている。また、保持部ベース35上面には、この平面視矩形状の保持部ベース35の短辺方向に延在し、コネクタ挿入穴37に向かって離接する方向に形成されたガイド溝39が形成されている。このガイド溝39には可動爪41が摺動可能にガイドされており、コネクタ挿入穴37に対して突出する突出位置とコネクタ挿入穴37から後退する後退位置を取り得るようになされている。ガイド溝39内の可動爪41の背後には弾性体43が装着されている。この弾性体43は、可動爪41をコネクタ挿入穴37内に向かって常時押圧するようになされている。可動爪41の下面には係止凹部41aが形成されており、保持部ベース35の係止凹部41aに対向する部分には、この係止凹部41aから保持部ベース35下面に到る開口部(図示せず)が形成されている。この開口部(図示せず)は、ここから冶具等を挿入して係止凹部41aに係合させ、可動爪41を操作するためのものである。
【0018】
このような保持部33の保持部ベース35の上面には、保持部ベース35と同様に矩形薄板状のベーク材からなる覆い板51が固定されている。この覆い板51の中央には、コネクタが貫通する貫通孔51bが形成されている。この貫通孔51bには、プリント基板Pに設けられたコネクタCのスリーブ3が挿入されている。このスリーブ3の下端両側には係止突起3a,3aが形成されている。そして、可動爪41、41が突出位置のときこの係止突起3a,3aと係合してコネクタCを保持するようになっている。このようにして、コネクタCが固定されたプリント基板Pは、矩形状の保持部ベース35および覆い板51の長手方向に沿って配設されるとともに、覆い板51に対して垂直に保持される。
【0019】
プリント基板Pの表面側には、ノズル体45が設けられている。このノズル体45は、加熱空気供給部(図示せず)、冷却空気供給部(図示せず)に接続されており、所定の温度の空気を供給できるようになっている。
【0020】
また、覆い板51には、例えばステンレス等の薄板から構成された箱型のカバー55が設けられている。このカバー55は、平面視矩形状で有底筒状に形成されるとともに、その開口縁を覆い板51の外周部に気密に当接して装着され、その内部に閉空間Sを形成している。このカバー55の内側には、断熱材57が貼り付けられている。
【0021】
この平面視矩形状のカバー55の側壁のうち短辺側の外側壁には、ガイドバー61が設けられている。このガイドバー61は、図1および図2に示すように、カバー55の上端から所定距離下方に離間した位置に水平方向に外側壁の幅一杯に延在して配設されている。このガイドバー55は、例えばステンレスの角材等から加工されており、所定の剛性を維持するため厚板状に形成されている。そして、カバー55に、ねじ止めや溶接等で固定されている。このガイドバー55は、プリント基板を搭載したプリント基板保持装置31の重心位置より上方に配設されている。このガイドバー61の両端部には、位置決め穴63が形成されており、後述するチャックのピンによって係止されるようになっている。
【0022】
図3は、このようなプリント基板保持装置31を保持して搬送するチャック装置71を示している。このチャック装置71は、チャック装置本体73を有しており、このチャック装置本体73には、互いに離接する一対のチャック75,75が設けられている。このチャック75、75には、断面厚板状のガイドバー61に係合する断面凹状の係合部77.77が形成されている。この凹状の係合部77は、ガイドバー61との係合状態においてガイドバー61の下側面に対向する上方を向く上側面77aと、ガイドバー61の上側面に対向する下方を向く下側面77bとを有しており、ガイドバー61を上下方向に規制するようになっている。この係合部77の中央部には位置決めピン79が設けられている。この位置決めピン79は、ガイドバー61の位置決め穴63に係合することによって、チャック75とガイドバー61との水平方向の位置決めを行うようになっている。この位置決めピン79の先端外周には、テーパー部79aが設けられており、位置決めピン79を位置決め穴63に挿入する際、軸心をガイドするようになっている。
【0023】
このような構成においてプリント基板の作動試験を行う手順について説明する。
【0024】
まず、覆い板51が固定された保持部33を所定位置に位置決めする。
【0025】
ついで、冶具等を係止凹部41aに係止させ、可動爪41を弾性体43の押圧力に抗して後退位置に移動させる。すなわち、可動爪41を開状態にする。
【0026】
次に、コネクタCのスリーブ3を覆い板51の貫通孔51bに挿入する。
【0027】
その後、冶具等による可動爪41の係止を解除すると、可動爪41が弾性体43の押圧力によって突出位置に移動する。そして、可動爪41がスリーブ3に設けられた係止突起3aと係合して、コネクタCが固定される。
【0028】
次に、チャック装置71をカバー55の上方に移動させ、その位置決めピン79の軸線がガイド穴63の軸線に一致するように移動させる。
【0029】
次いで、チャック装置71を作動させて、チャック装置71の位置決めピン79をガイドバー61のガイド穴63に挿入するとともに、チャック装置71の係合部77をガイドバー61に係合させる。この際、位置決めピン79にはテーパー部79aが形成されているので、位置決めピン79をスムーズにガイド穴63に嵌入させることができる。そして、チャック装置71でガイドバー61が設けられたカバー55を強固に高精度に位置決め保持する。
【0030】
その後、カバー55を保持したチャック装置71をプリント基板Pの取り付けられた保持部33の上方に移動させて下降させ、カバー55を保持部33に取り付ける。そして、プリント基板Pを装置内の閉空間Sに閉じ込め、プリント基板検査装置31の組立を完了する。
【0031】
次いで、チャック装置71を駆動して、プリント基板検査装置31を検査位置に移動して位置決めする。この際、プリント基板検査装置31は、チャック装置71によって高精度に確実に保持されているので、検査位置への位置決めをスムーズかつ正確に行うことができる。
【0032】
その後、接続端子をコネクタCのスリーブ3に接続する。
【0033】
次いで、ノズル体45を加熱空気供給部(図示せず)に接続し、加熱空気をカバー部55内の閉空間Sに供給する。例えば85℃の低露点エアーを例えば2分と8分供給する。このようにして、プリント基板Pおよびこれに搭載された素子Dを所定の温度に加熱する。
【0034】
この状態で、接続端子61を通してプリント基板Pに通電し、素子、基板等の特性を検査する。
【0035】
次に、ノズル体45を冷却空気供給部(図示せず)に接続し、冷却空気をカバー部55内の閉空間Sに供給する。例えばマイナス25℃以下の低露点エアーを例えば135秒供給する。そして、プリント基板Pおよびこれに搭載された素子Dを所定の温度に冷却する。
【0036】
この状態で、接続端子を通してプリント基板に通電し、素子、基板等の特性を検査する。
【0037】
このような試験によってプリント基板の温度を−29℃から96℃まで変化させ特性を測定する。
【0038】
その後、接続端子をコネクタCのスリーブ3から取り外す。
【0039】
次いで、チャック装置71を作動させ、プリント基板保持装置31を検査位置から取り出し位置に移動して位置決めする。
【0040】
次に、チャック装置71を上方に移動させ、カバー部55を保持部33から取り外す。
【0041】
その後、冶具等を係止凹部41aに係合して可動爪41を弾性体43の押圧力に抗して後退させて開状態にし、可動爪41とスリーブ3の係止突起3aとの係合を解除する。
【0042】
そして、プリント基板Pが固定されたコネクタCを取り外す。
【0043】
分離したカバー部55と保持部33とは、それぞれリターンコンベアに載せて回収する。
【0044】
以上説明したように、このプリント基板保持装置31にあっては、プリント基板Pを保持する保持部33と、プリント基板Pを覆い、このプリント基板Pを保持部33とともに閉空間Sに閉じ込めるカバー55と、このカバー55内に配設されプリント基板Pに所定の気体を供給するノズル体45とを備え、カバー55の側面でこのプリント基板保持装置31の重心より上方の近傍に、カバー55の幅にわたって延在するガイドバー61を設けこのガイドバー61は係止部63を有しているから、ガイドバー61を保持するチャック75とプリント基板保持装置31の重心との距離を短くすることができる。したがって、装置を移動する際、装置の下部が大きく振れるのを防止することができ、急激な加速、減速が可能で、高速での輸送も容易に行うことができる。また、たとえ、装置下部が振れてしまっても、短時間で振れを鎮めることができ、装置の位置決めを容易に行うことができる。また、薄板からなるカバー55に厚板からなるガイドバー61を設けているから、カバー55全体の剛性を向上させて歪みを防止することができる。したがって、位置決め精度を向上させることができるとともに、強固な把持が可能となり、高速移動が容易となる。
【0045】
また、ガイドバー61の位置決め穴63にチャック75の位置決めピン79を嵌合するようにし、嵌合部を2箇所設けているから、チャックとガイドバーとの位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0046】
上記実施の形態においては、ガイドバー61に位置決め穴63を設け、チャック75に位置決めピン79が設けられているが、これに限る必要はなく、ガイドバー61に位置決めピンを設け、チャック75に位置決め穴を設けてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態においては、ガイドバー61をカバー55の外側壁の幅一杯に設けているが、これに限る必要はなくカバー55の外側壁の幅より長くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態であるプリント基板保持装置を示す概略断面図。
【図2】図1に示すプリント基板保持装置を示す斜視部。
【図3】図1に示すプリント基板保持装置に使用するチャック装置を示す概略断面図。
【図4】従来のプリント基板保持装置とこれに使用するチャック装置を示す概略正断面図。
【図5】図4に示すプリント基板保持装置とこれに使用するチャック装置を示す概略側断面図。
【図6】図4に示すプリント基板保持装置で保持されるプリント基板を示す斜視図。
【符号の説明】
【0049】
31 プリント基板保持装置
33 保持部
55 カバー
61 ガイドバー
63 位置決め穴
P プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板(P)を保持する保持部(33)と、
前記プリント基板(P)を覆い、このプリント基板(P)を前記保持部(33)とともに閉空間(S)に閉じ込めるカバー部(55)と、
このカバー部(55)内に配設され前記プリント基板(P)に所定の気体を供給するノズル体(45)と、
を備えたプリント基板保持装置において、
前記カバー部(55)の側面で前記プリント基板保持装置の重心より上方の近傍に、前記カバー部(55)の幅又はそれ以上の長さを有するガイドバー(61)を設け、このガイドバー(61)は係止部(63)を有することを特徴とするプリント基板保持装置。
【請求項2】
前記係止部(63)は、穴又はピンであり、前記ガイドバー(61)に2箇所以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−170373(P2008−170373A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5846(P2007−5846)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】