説明

プリント装置、およびインクシートの巻戻し制御方法

【課題】インクシートを巻き戻す際に、インクシートと剥離プレートとが強く擦れてインクシートにシワが発生することを抑止し、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止する。
【解決手段】インクシート1を巻取るための巻取側の巻取コア16と、インクシート1を供給するための供給側の供給コア12のそれぞれを正逆に回転駆動する手段を備え、インクシート1を供給側へ巻戻す機能を有するプリント装置において、巻取側の巻取コア16と、供給側の供給コア12のそれぞれの回転量を制御し、インクシート1に弛みを形成しつつ巻戻し処理を行う。これにより、インクシート1の巻戻し処理の際に、インクシート1と剥離プレート17との摺動によるシワの発生を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型のプリント装置(単に、「プリンタ」とも言う)、および該プリント装置におけるインクシート(インクリボン)の巻戻し制御方法に関し、特に、インクシートを有効活用するためにインクシートを巻き戻す際に、インクシートと剥離プレートとが強く擦れ、インクシートにシワが発生することを抑止し、インクシートのシワによるプリント品質の低下を抑止することができる、プリント装置、およびインクシートの巻戻し制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、昇華型プリンタのプリント部の構成例を示す図である。この昇華型プリンタのプリント部10は、サーマルヘッド14とプラテンローラ37との間に、インクシート1とプリント用紙32とを圧着し、サーマルヘッド14を発熱させプリントを行うものであり、熱転写型プリンタとも呼ばれる。
【0003】
図8に示すように、ロール紙31から巻き出されたプリント用紙32は、ピンチローラB33およびフィードローラB35に挟持され、サーマルヘッド14とプラテンローラ37の間を通過して、ピンチローラA34とフィードローラA36に挟持される。そして、フィードローラB35およびフィードローラA36を回転駆動することによりプリント用紙32が搬送される。フィードローラB35、およびフィードローラA36は、図示しないギヤ機構を介してステッピングモータ(パルスモータ)等に連結されており、このステッピングモータがフィードローラB35、およびフィードローラA36を駆動する。
【0004】
また、プリント用紙32の上面側には、巻き出し側の供給コア12に巻かれた供給インクリボン11(未使用部分)、インクシート用ガイドローラA13、サーマルヘッド14、ガイドローラB15、巻き取り側の巻取コア16(使用済み部分)が順に配置される。供給インクリボン11から巻き出されたインクシート1は、ガイドローラA13にガイドされてロール紙31から巻き出されたプリント用紙32と重ね合わせられ、サーマルヘッド14とプラテンローラ37との間を搬送された後、巻取コア16に巻き取られる。
【0005】
また、供給コア12は、電磁クラッチを備えたギア(動力伝達機構)19を介して、インクシート巻戻しモータ(以下、単に、「巻戻しモータ」とも言う)18と接続されており、インクシート1を巻き戻す場合には、供給コア12とギヤ19とを電磁クラッチにより連結し、インクシート巻戻しモータ18を駆動する。なお、インクシート巻戻しモータ18には、DCモータ(DCサーボモータ等)が使用される。
【0006】
巻取コア16は、ギヤ21を介して、インクシート巻取モータ20と接続されており、インクシート巻取りモータ(以下、単に、「巻取りモータ」とも言う)20を駆動することにより、インクシート1を巻き取る。なお、インクシート巻取モータ20には、DCモータ(DCサーボモータ等)が使用される。
【0007】
また、プリント用紙32の下面側には、サーマルヘッド14に対向する位置にプラテンローラ37が配置され、このプラテンローラ37によりプリント用紙32がサーマルヘッド14の発熱抵抗体に適度に押圧される。
【0008】
上述したように、プリント時、プリント用紙32はステッピングモータ等により回転駆動されるフィードローラB35、およびフィードローラA36で挟持搬送される。そして、インクシート1はサーマルヘッド14の下流(インクシート進行方向に対して)に設けられた剥離プレート17によりプリント用紙32から剥離され、プリント済インクシートは、インクシート巻取りモータ20で回転駆動される巻取コア16に、所定の張力が付与された状態で巻取られて行く。
【0009】
ところで、インクシート1は、図9の1画面用のインクシートの例に示すように、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の3色のインク層と、L(ラミネート)層とが周期的に配置されたカラーパッチで構成されており、各色の先頭に設けられた頭出し(位置決め)用の頭出しマーク2を反射型のセンサ等により検知して頭出しを行う。マークの無いインクシートを用いるプリンタもあるが、このようなプリンタでは、カラーセンサを使って色識別し、頭出しを行っている。
【0010】
このような構成のプリンタにおいて、プリント時間を短縮するため、図10に示すような、2画面分の長さのインクシート1を用いて2画面を同時にプリントし、プリント完了後、カッタで2画面にカットする方法がある。
【0011】
このような方法において、一連のプリント枚数が奇数の場合、インクシートが半分未使用の状態でプリント処理が終わる。前の一連プリントが奇数の場合、インクシートを巻き戻して、未使用の部分を次回プリントの一枚目に使用し、インクシートを有効活用する。
【0012】
この場合は、例えば、図11(A)に示すように、前の一連プリントが奇数枚の場合、2画面用のインクシート1は1画面目(使用済み部分)3の部分だけが使用され、残り半分は未使用の状態で、巻取コア16に巻き取られてしまう。そして、図11(B)に示すように、次プリントの前に、インクシート1の残り半分が利用できる位置までインクシート1を巻き戻す。それから、図11(C)に示すように、次プリント時に、インクシート1の残り半分を使って2画面目をプリントする。なお、1枚目のみ1画面プリント、2枚目以降は2画面プリントする。
【0013】
このようにインクシートの有効活用のためにインクシートを巻き戻す際は、図12のインクシート巻戻し時の不具合を説明するための図に示すように、インクシート1のプリントされ熱ダメージを受け、伸びた(弛んだ)部分(使用済み部分)3が剥離プレート17と摺動する(強く擦れる)ことになるため、インクシート1にシワ(折れシワ)4が起こり易い。すなわち、インクシート1の使用済み部分3はプリント時の加熱と引張力によって伸びている。この部分が、弛んだ状態で剥離プレート17の下を通過するため、シワ4が発生し易い。このシワ4は、一旦発生し始めると解消されることなく、次プリントで使用する部分にまで達してしまう。
【0014】
上記理由により発生したインクシート1のシワ4は、プリントの際に正常にインクが転写されないため、プリント結果にもインクシートのシワと同じ形状の色抜けが起こる。(プリント品質が著しく低下する)。従って、この問題を解決することが望まれていた。
【0015】
なお、従来技術の熱転写記録装置がある(例えば、特許文献1を参照)。この従来技術の熱転写記録装置は、多数回使用可能なマルチタイムインクシートを使用して記録を行う熱転写記録装置において、カット紙の自動給紙機構からプラテンまでの搬送経路中にペーパピボットと、カット紙の双方向巻チャッキング可能なペーパチャッカを設けるという簡単な構造で、双方向記録を可能としたことにより、マルチタイムインクシートの巻戻しが不要となり、記録サイクルの効率が上がるようにし、また、マルチタイムインクシートの巻戻し中の巻むら、巻ずれ及びしわの弊害をなくし、マルチタイムインクシートの使用回数に関わらず高品質な記録を行うようにしたものである。
【0016】
しかしながら、本発明のプリント装置では、インクシートの巻戻しの際に、インクシートと剥離プレートとの摺動(強く擦れること)によるシワの発生を抑止しようとするものであり、上記従来技術の熱転写記録装置とは、発明の目的と構成が異なるものである。
【特許文献1】特開平2−178072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、インクシートの有効活用のためにインクシートを巻き戻す際は、プリントされ熱ダメージを受け、伸びた(弛んだ)部分が剥離プレートと摺動することになるため、インクシートにシワが起こり易い。すなわち、使用済部分はプリント時の加熱と引張力によって伸びている。この部分が、弛んだ状態で剥離プレートの下を通過するため、シワが発生し易い。このシワは、一旦発生し始めると解消されることなく、次プリントで使用する部分にまで達してしまう。
【0018】
上記理由により発生したインクシートのシワ(折れシワ)は、プリントの際に正常にインクが正常に転写されないため、プリント結果にもインクシートのシワと同じ形状の色抜けが起こる(プリント品質が著しく低下する)という問題があった。
【0019】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、インクシートを巻き戻す際の、インクシートと剥離プレートとの摺動によるシワの発生を抑止し、インクシートのシワによるプリント品質の低下を抑止する、プリント装置、およびインクシートの巻戻し制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のプリント装置は、インクシートを巻取るための巻取側の巻取コアと、インクシートを供給するための供給側の供給コアのそれぞれを正逆に回転駆動する手段を備え、インクシートを供給側へ巻戻す機能を有するプリント装置において、前記巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行う巻戻し処理手段を備えることを特徴とする。
このような構成により、インクシートを供給側へ巻戻す際に、巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行うようにしたので、これにより、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止でき、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。
【0021】
また、本発明のプリント装置は、前記巻取側の巻取コアを巻戻し方向に逆回転させインクシートを弛ませる第1の手段と、前記巻戻側の供給コアを駆動して、前記インクシートの弛ませた分を供給コアに巻き取る第2の手段と、前記第1の手段における処理と、前記第2の手段における処理とを交互に繰り返す交互駆動手段とを備えることを特徴とする。
このような構成により、インクシートを供給側へ巻戻す際に、巻取コアを逆回転させインクシートを弛ませる第1の手順と、供給コアを駆動して、インクシートの弛ませた分を供給コアに巻き取る第2の手順を、交互に繰り返すようにしたので、これにより、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止でき、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。
【0022】
また、本発明のプリント装置は、前記インクシートの巻戻しの際に、前記供給側の供給コアを定期的に所定の時間だけ一旦停止させる供給コア定期停止手段を備えることを特徴とする。
このような構成により、インクシートを供給側へ巻戻す際に、供給側の供給コアを定期的に一旦停止させながら、巻戻し処理を行うようにしたので、これにより、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止でき、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。また、巻取コアと供給コアを交互に駆動する場合と比較して、巻戻しの処理時間を短縮でき、より実用性が高い。
【0023】
また、本発明のプリント装置は、最初に、巻取コアを巻戻し方向に逆回転させ、インクシートに所定量の弛みを持たせる初期弛み付与手段と、前記インクシートを弛ませた後に、前記供給コアおよび巻取コアの両方、あるいは、いずれかのコアの回転速度を、巻取コア、供給コアのそれぞれのインクシートのロール径に応じて制御し、常に一定量の弛みを保ったままインクシートの巻戻し処理を行う定量弛み駆動手段とを備えることを特徴とする。
このような構成により、最初に巻取コアを巻戻し方向に逆回転させ、インクシートに所定量の弛みを持たせ、その後は、供給コアおよび巻取コアの両方、あるいは、いずれかのコアの回転速度を、巻取コア、供給コアのそれぞれのインクシートのロール径に応じて制御し、常に一定量の弛みを保ったままインクシートの巻戻し処理を行うようにしたので、これにより、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止でき、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。また、巻取コアと供給コアを交互に駆動する場合や、供給コアを一旦停止させる場合と比較して、さらに、巻戻しの処理時間を短縮できる。
【0024】
また、本発明のインクシートの巻戻し制御方法は、インクシートを巻取るための巻取側の巻取コアと、インクシートを供給するための供給側の供給コアのそれぞれを正逆に回転駆動する手段を備え、インクシートを供給側へ巻戻す機能を有するプリント装置におけるインクシートの巻戻し制御方法であって、前記プリント装置内の制御部により、前記巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行う手順が行われることを特徴とする。
このような手順により、インクシートを供給側へ巻戻す際に、巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行うようにしたので、これにより、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止でき、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、インクシートを巻き戻す際に、インクシートに弛みをもたせ、インクシートと剥離プレートとが強く擦れることによるシワの発生を抑止するようにしたので、これにより、インクシートのシワの発生によるプリント品質の低下を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態について説明するための図である。図1に示すプリント装置の構成は、図8に示した構成例と基本的に同じであり、巻取コア16および供給コア12の制御方法だけが異なるものである。従って、図1に示すプリント部の構成についての説明は省略し、巻取コア16および供給コア12の制御方法について説明する。
【0028】
以下、図1を参照して、巻取コア16および供給コア12の制御手順について説明する。
第1の手順として、先ず、図1(A)に示すように、巻取り側の巻取コア16を矢印aの方向に回転させ、インクシート1を弛ませる。すなわち、インクシート1を2点鎖線で示すインクシート1が張った状態から、実線で示すインクシート1を弛ませた状態にする。
【0029】
このインクシート1を弛ませる方法としては、インクシート巻取りモータ30を所定時間(タイマ管理)逆回転させ、インクシート1を弛ませることができる。
【0030】
また、インクシート1を弛ませる他の方法として、巻取コア16と一体となって回転するエンコードプレート23B、エンコードプレート23Bの回転を監視するセンサ(フォトインタラプタ等)22Bを設け、これらを使ってインクシート1の弛ませ量を一定に制御することも可能である。なお、この場合には、インクシート1を所定距離進めた時のエンコードプレート23Bの回転量(回転角度)をセンサ22Bにより計測(スリット通過数をカウント)することで検知可能であり。インクシート1の移動量(例えば、インクシート1の頭出しマーク2等を計測することにより移動量を算出)と巻取コア16の回転量から、インクシート1のロール径を求め、該ロール径に応じて、インクシート1の弛ませ量を一定に制御することができる。
【0031】
第2の手順として、インクシート巻戻しモータ18を駆動して、供給コア12を矢印bの方向に回転させ、インクシート1の弛ませた分を供給コア12に巻き取る。この場合、供給コア12と一体となって回転するエンコードプレート23と、エンコードプレート23の回転を監視するセンサ(フォトインタラブタ)22を設けて制御を行う。そして、インクシート1の弛みが解消されるとエンコードプレート23が回転しなくなる。これを検知して巻戻しモータ18による巻戻しを停止する。
【0032】
上記、第1の手順と、第2の手順の動作(弛ませて→巻き取る)を必要回数繰返せば、剥離プレート17とインクシート1が強く擦れることがなくなり、シワが発生しない。
【0033】
なお、図1(B)は、インクシート巻戻しモータ18の機構部の構成を示す断面図であり、図1(C)は、インクシート巻戻しモータ18の機構部の上面図を示すものである。図1(B)、図1(C)に示すように、インクシート巻戻しモータ18はギヤ19を介して、コアホルダ24を回転駆動し、該コアホルダ24に装着された供給コア12を回転させる。
【0034】
コアホルダ24の回転軸にはエンコードプレート23が設けられ、該エンコードプレート23上に開けられたスリットをセンサ22により検出することにより、供給コア12の回転量(回転角度)を検出する。なお、巻取側の巻取コア16のコアホルダ(図示せず)の回転軸にエンコードプレート23Bを設け、該エンコードプレート23B上に開けられたスリットをセンサ22Bにより検出することにより、巻取コア16の回転量(回転角度)を検出するようにしてもよい。
【0035】
図2は、第1の実施の形態におけるモータ駆動シーケンスを示す図である。従来は、図2(A)に示すように、巻取りモータと、巻き戻しモータはPWM(Pulse Width Modulation)駆動されており、巻取りモータに印加されるPWMパルスはONデューティ(ON Duty)が略50%であり、巻戻しモータに印加されるPWMパルスはONデューティ(ON Duty)が略70%である。
【0036】
このように、巻取りモータ20の速度より巻戻しモータ18の回転速度を速くし、(巻取りモータによる弛ませ量)<(巻戻しモータによる巻戻し量)、となるように両モータを駆動し、インクシート1に常時一定張力がかかるようにして巻戻し処理を実施している。
【0037】
本発明の方法では、図2(B)に示すように、巻取りモータ20の駆動と、巻戻しモータ18の駆動を交互に行い、インクシートを弛ませてから、巻き取るようにし、インクシート1が剥離プレート17に強く擦れないようにして、インクシート1にシワが発生しないようにできる。
【0038】
なお、図2に示す例では、巻取りモータ20および巻戻しモータ18の回転速度をPWM制御(パルス幅で制御)する方法を用いているが、巻取りモータ20および巻戻しモータ18への印加電圧を変えて、電圧制御により回転速度を制御してもよい。
【0039】
また、図3は、本発明の第1の実施の形態における制御部の構成例を示す図であり、主に本発明に関係するインクシートの巻戻し処理の部分を示したものである。図3に例示するプリンタ6は、制御部40とプリント部10から構成される。なお、プリント部10の構成は図1(A)に示した構成と同じものである。
【0040】
制御部40内のプリント用画像データ生成部41は、外部のホストコンピュータ5から、プリント対象となる画像をYMC(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C))等の入力画像データにより受信し、このYMC入力画像データを、インクシート1に対応したプリント用画像データに変換する。このプリント用画像データは、プリント部10に送られ、サーマルヘッド14とインクシート1により、プリント用紙32にプリントされる。
【0041】
プリント処理部42は、プリントに必要な各種の処理(例えば、プリント用紙32の移動処理や、インクシート1の巻取り処理等)を行うための処理部である。
【0042】
巻戻し処理部(巻戻し処理手段)50は、インクシート1を、剥離プレート17に強く擦れないようにして巻戻しを行うために、供給コア12を駆動するインクシート巻戻しモータ18と、巻取コア16を駆動するインクシート巻取りモータ20を駆動制御するための処理部である。この巻戻し処理部50には、巻取コア及び供給コア交互駆動処理部51と、インクシート移動量測定処理部52と、巻き径演算処理部53とが含まれている。なお、インクシート移動量測定処理部52と巻き径演算処理部53は、必要に応じて設けられるものであり、省略される場合もある。
【0043】
巻取コア及び供給コア交互駆動処理部(交互駆動手段)51は、インクシート1が剥離プレート17に強く擦れないようにするために、巻取コア16と供給コア12を交互に駆動して、インクシート1を巻戻すためのモータ駆動制御を行う。
【0044】
インクシート移動量測定処理部52は、例えば、インクシート1上の頭出しマーク2等を検出してインクシート1の移動距離を測定する処理を行う。
【0045】
巻き径演算処理部53は、巻取コア16に設けられたエンコードプレート23Bとセンサ22Bにより、巻取コア16の回転量(回転角度)を測定すると共に、この回転量(回転角度)のデータと、インクシート移動量測定処理部52により測定されたインクシート1の移動量のデータを基に、巻取コア16に巻き取られたインクシート1のロール径を算出する処理を行う。また、供給コア12に設けられたエンコードプレート23とセンサ22により、供給コア12の回転量(回転角度)を測定すると共に、この回転量(回転角度)のデータと、インクシート移動量測定処理部52により測定されたインクシート1の移動量のデータを基に、供給インクリボン11のロール径を算出する処理を行う。これらのロール径の情報は、巻取コア及び供給コア交互駆動処理部51により、巻取コア16と供給コア12を交互に駆動する際の、それぞれのモータの回転速度を決めるために使用される。
【0046】
なお、この交巻き径演算処理部53では、例えば、巻取コア側のロール径のみを演算するようにしてもよいし、また、この巻き径演算処理部53とインクシート移動量測定処理部52は、必要に応じて設けられるものであり省略できる場合もある。
【0047】
また、モータ駆動部60には、インクシート巻取りモータ駆動部61とインクシート巻戻しモータ駆動部62とが含まれる。インクシート巻取りモータ駆動部61は、巻戻し処理部50からの指令信号により、インクシート巻取りモータ20の回転を制御し、巻取コア16を巻戻し方向に回転させる。インクシート巻戻しモータ駆動部62は、巻戻し処理部50からの指令信号により、インクシート巻戻しモータ18の回転を制御し、供給コア12を巻戻し方向に回転させる。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態では、インクシートに定期的に弛みを形成する方法を使用する。そのために、従来の巻戻し処理の途中に、弛み形成動作を追加する。なお、プリント部の構成は、図1に示す構成と基本的に同じであり、巻取コア16および供給コア12の制御方法だけが異なるものである。
【0049】
図4は、本発明の第2の実施の形態におけるモータ駆動シーケンスを示す図である。図4に示すように、本発明の第2の実施の形態では、インクシート巻戻しモータ18を定期的に一旦停止(Tで示す期間に一旦停止)させることにより、定期的にインクシート1を緩ませ、剥離プレート17から離すようにする。剥離プレート17からインクシート1を離すことで、仮にシワが発生したとしても次回使用部分に到達するまでにシワを解消することができる。
【0050】
このように、本発明の第2の実施の形態では、定期的にインクシート1を弛ませるようにしている。第1の実施の形態では、巻取りモータ20と巻戻しモータ18を交互に駆動するため、巻戻しの処理時間が長くなるという欠点があるが、第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも巻戻しの処理時間を短縮でき、より実用性が高い。
【0051】
また、図5は、本発明の第2の実施の形態における制御部の構成例を示す図であり、主に本発明に関係するインクシートの巻戻し処理の部分を示したものである。図5に示すプリンタ6Aは、図3に示すプリンタ6(第1の実施の形態)と比較して、制御部40内の供給コア定期停止処理部(供給コア定期停止手段)51Aの部分のみが異なるものである(図3では巻取コア及び供給コア交互駆動処理部51)。他の部分については、図3において同じ符号で示されるものと同様である。
【0052】
この供給コア定期停止処理部51Aでは、インクシート1の巻戻しの際に、供給側の供給コア12を定期的に所定の時間だけ一旦停止させるように、インクシート巻戻しモータ18を制御する。
【0053】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図6は、本発明の第3の実施の形態について説明するための図である。なお、図6(A)に示すプリント装置の構成は、図1に示す構成と基本的に同じであり、巻取コア16および供給コア12の制御方法だけが異なるものである。従って、図4(A)に示す構成についての説明は省略し、巻取コア16および供給コア12の制御方法について説明する。
【0054】
本発明の第3の実施の形態では、図6(A)に示すように、インクシート1に一定の弛みを形成したまま巻戻し処理する方法である。この場合は、図6(B)の期間Tに示すように、最初に巻取りモータ30を巻戻し方向aに逆転させ、インクシート1に所定量の弛みを持たせる。
【0055】
それ以降は、インクシート巻戻しモータ18、インクシート巻取りモータ20の両モータ、あるいは、どちらかのモータのPWMパルスのONデューティ(ON Dyty)、あるいは印加電圧を、巻取り側、供給側それぞれの径(インクシートのロール径)に応じ切替えて、常に一定の弛みを保ったまま巻戻し処理を行う。
【0056】
巻取り側の巻取コア16に巻き取られたインクシートのロール径、供給コア12の供給インクリボン11のロール径は、インクシート1を所定距離進めた時のエンコードプレート23、23Bの回転量(回転角度)をセンサ22、22Bにより計測(スリット通過数をカウント)することで検知可能である。例えば、前回プリント時に、インクシート1を所定距離進めた時に(例えば、インクシート1の頭出しマーク2等を計測して移動距離を測定する)、エンコードプレート23、23Bがどれだけ回転したかを計測し、記憶することにより、ロール径を算出することができる。
【0057】
このように、本発明の第3の実施の形態では、インクシート1に常に一定の弛みを形成したまま巻戻し処理する方法であり、第1の実施の形態および第2の実施の形態よりも処理時間を短縮できる。
【0058】
また、図7は、本発明の第2の実施の形態における制御部の構成例を示す図であり、主に本発明に直接関係する巻戻し処理の部分を示したものである。図7に示すプリンタ6Bは、図3に示すプリンタ6と比較して、制御部40内の定量弛み駆動処理部51Bの部分のみが異なるものである(図3では巻取コア及び供給コア交互駆動処理部51)。他の部分については、図3において同じ符号で示されるものと同様である。
【0059】
この定量弛み駆動処理部(定量弛み駆動手段)51Bでは、最初に、巻取コア16を巻戻し方向に逆転し、インクシート1を弛ませた後に、供給コア12および巻取コア16の両方、あるいは、いずれかのコアの回転速度を、巻取コア16、供給コア12のそれぞれのインクシートのロール径に応じて制御し、常に一定量の弛みを保ったままインクシート1の巻戻し処理を行う。なお、定量弛み駆動処理部51B内の初期弛み付与処理部(初期弛み付与手段)51Cは、最初に、巻取コア16を巻戻し方向に逆回転させ、インクシート1に所定量の弛みを持たせるための処理部である。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のプリント装置(プリンタ)は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、インクシートを巻き戻す際に、インクシートが剥離プレートに強く擦れないようにして、インクシートにおけるシワの発生を抑止し、インクシートのシワによるプリント品質の低下を抑止する効果を奏するので、本発明は、プリント装置、およびインクシートの巻戻し制御方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態について説明するための図である。
【図2】第1の実施の形態におけるモータ駆動シーケンスを示す図である。
【図3】第1の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。
【図4】第2の実施の形態におけるモータ駆動シーケンスを示す図である。
【図5】第2の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態について説明するための図である。
【図7】第3の実施の形態における制御部の構成例を示す図である。
【図8】昇華型プリンタのプリント部の構成例を示す図である。
【図9】1画面用のインクシートの例を示す図である。
【図10】2画面用のインクシートの例を示す図である。
【図11】インクシートの有効活用について説明するための図である。
【図12】インクシート巻戻し時の不具合を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1…インクシート
2…頭出しマーク
3…インクシートの使用済み部分
4…シワ
5…ホストコンピュータ
6、6A、6B…プリンタ
10…プリント部
11…供給インクリボン
12…供給コア
13…ガイドローラA
14…サーマルヘッド
15…ガイドローラB
16…巻取コア
17…剥離プレート
18…インクシート巻戻しモータ
19…ギヤ
20…インクシート巻取モータ
21…ギヤ
22、22B…センサ
23、23B…エンコードプレート
24…コアホルダ
31…ロール紙
32…プリント用紙
33…ピンチローラB
34…ピンチローラA
35…フィードローラB
36…フィードローラA
37…プラテンローラ
40…制御部
41…プリント用画像データ生成処理部
42…プリント処理部
50…巻戻し処理部
51…巻取コア及び供給コア交互駆動処理部
51A…供給コア定期停止処理部
51B…定量弛み駆動処理部
51C…初期弛み付与処理部
52…インクシート移動量測定処理部
53…巻き径演算処理部
60…モータ駆動部
61…インクシート巻取りモータ駆動部
62…インクシート巻戻しモータ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクシートを巻取るための巻取側の巻取コアと、インクシートを供給するための供給側の供給コアのそれぞれを正逆に回転駆動する手段を備え、インクシートを供給側へ巻戻す機能を有するプリント装置において、
前記巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行う巻戻し処理手段を
備えることを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記巻取側の巻取コアを巻戻し方向に逆回転させインクシートを弛ませる第1の手段と、
前記巻戻側の供給コアを駆動して、前記インクシートの弛ませた分を供給コアに巻き取る第2の手段と、
前記第1の手段における処理と、前記第2の手段における処理とを交互に繰り返す交互駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
【請求項3】
前記インクシートの巻戻しの際に、前記供給側の供給コアを定期的に所定の時間だけ一旦停止させる供給コア定期停止手段を
備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
【請求項4】
最初に、巻取コアを巻戻し方向に逆回転させ、インクシートに所定量の弛みを持たせる初期弛み付与手段と、
前記インクシートを弛ませた後に、前記供給コアおよび巻取コアの両方、あるいは、いずれかのコアの回転速度を、巻取コア、供給コアのそれぞれのインクシートのロール径に応じて制御し、常に一定量の弛みを保ったままインクシートの巻戻し処理を行う定量弛み駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
【請求項5】
インクシートを巻取るための巻取側の巻取コアと、インクシートを供給するための供給側の供給コアのそれぞれを正逆に回転駆動する手段を備え、インクシートを供給側へ巻戻す機能を有するプリント装置におけるインクシートの巻戻し制御方法であって、
前記プリント装置内の制御部により、
前記巻取側の巻取コアと、供給側の供給コアのそれぞれの回転量を制御し、インクシートに弛みを形成しつつ巻戻し処理を行う手順が
行われることを特徴とするインクシートの巻戻し制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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