説明

プリント装置

【課題】プリントシートを送り込むシート収納体が各搬送レーンに複数割り当てられているプリント装置において、複列プリントと単列プリントにおけるシート収納体の選択を効果的に行う技術を提供する。
【解決手段】第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第1シート収納体と第2搬送レーンに送り込む第2シート収納体とを装備する第1収納ステーションと、第1搬送レーンに送り込む第3シート収納体と第2搬送レーンに送り込む第4シート収納体とを装備する第2収納ステーション、シート収納体毎のプリントシート残量を算定するシート残量算定部44、搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択する使用収納体選択手段42が備えられている。使用シート収納体を選択する選択ルールが各シート収納体の残量を選択条件として設定され、複列プリントモード時と単列プリントモード時とで異なる選択ルールが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な第1搬送レーンと第2搬送レーンとを少なくとも備え、この複数の搬送レーンを通じて搬送されてくる複列のプリントシートに画像を形成する複列プリントが可能なプリント装置に関する。
なお、ここで用いられているプリントシートなる語句は、プリント用用紙やプリントフィルムなどの記録媒体であり、あらかじめ短尺にカットされたカットシートやロール状に巻かれプリント前またはプリント後にカットされる長尺シートを含むものの総称である。また、搬送レーンとは、プリントシートを搬送するローラコンベヤやベルトコンベヤなどの搬送機構及びガイド機構を含むものとして用いられている。
【背景技術】
【0002】
上記のような従来技術として、2列のレーン夫々に対してペーパーマガジンから長尺用紙(プリントシート)をインクジェット式のプリントヘッドに供給する搬送機構が備えられ、プリントヘッドで画像形成(プリント)された用紙を切断ユニットでカットするプリント装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来のプリント装置では、プリントヘッドに2つの搬送レーンで並列供給されてきた用紙に対して同時にプリントヘッドからインクを吐出させてプリントを行う複列プリントだけでなく、2つ搬送レーンのうちの一方のレーンに送り出す用紙が無くなった場合に、他方の用紙を用いて1つの搬送レーンでプリントを続行する単列プリントも可能となっている。その際、2つのペーパーマガジンに用紙が残っている場合には複列プリントを実行し、一方のペーパーマガジンにのみ用紙が残っている場合にはそのペーパーマガジンの用紙がなくなるまでそのペーパーマガジンを用いて単列プリントを実行するように、複列プリント処理と単列プリント処理が使い分けられている。しかしながら、一枚プリントや奇数枚数プリントが多い場合やその他の理由で2つのペーパーマガジンで片減りが生じて、一方のペーパーマガジンにだけかなりの残量が生じている場合、単列プリント処理が続くことになる。特に各レーンに複数の用紙供給部(ロール体やカットシートマガジンなどのシート収納体)が割り当てられているようなプリント装置では、各用紙供給部における用紙の利用を適切に選択しないと、プリント装置の効率的な利用ができないという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005‐88325号公報(〔段落番号0009−0018〕、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、複数の搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体が、各搬送レーンに複数割り当てられているようなプリント装置において、複列プリントと単列プリントにおけるシート収納体の選択を効果的に行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
互いに平行な第1搬送レーンと第2搬送レーンとを少なくとも備え、前記複数の搬送レーンを通じて搬送されてくる複列のプリントシートに画像を形成する複列プリントモードと、いずれか1つの搬送レーンを通じて搬送されてくる単列のプリントシートに画像を形成する単列プリントモードとを有するプリント装置において、上記目的を達成するため、本発明では、前記第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第1シート収納体と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第2シート収納体とを装備する第1収納ステーションと、前記第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第3シート収納体と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第4シート収納体とを装備する第2収納ステーションと、前記シート収納体毎のプリントシート残量を算定するシート残量算定部と、前記搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択する使用収納体選択手段とが備えられ、前記搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択するシート収納体選択ルールが前記各シート収納体のプリントシート残量を選択条件として前記使用収納体選択手段によって利用可能に設定されており、前記複列プリントモード時と前記単列プリントモード時とで異なるシート収納体選択ルールが用いられる。
【0006】
この構成では、各シート収納体のプリントシート残量がシート残量算定部で算定されており、この各シート収納体のプリントシート残量を1つの条件とし、プリントモードが複列であるか単列であるかということを他の条件として、使用すべきシート収納体の選択が最適となるように設定することができる。これにより、各シート収納体を構成するプリントシートがいつまでも使い残って経時劣化する不都合や、同一搬送レーンに割り当てられているシート収納体間で片減りが生じて複列プリントに支障が生じるという不都合を抑制することができる。
【0007】
前記複列プリントモード時のシート収納体選択ルールの好適なものとして、プリントシート残量が最も少ないシート収納体が属する収納ステーションのシート収納体が選択されるルールが提案される。これにより、これにより古く残っているプリントシートを早いうちに使いきってしまうことができるという利点が得られる。また、前記単列プリントモード時のシート収納体選択ルールの好適なものとして、各収納ステーションに属するシート収納体同士で均等なプリントシート残量となるようにシート収納体が選択されるルールが提案される。これにより、特定の収納ステーションにおけるシート収納体間での均等なプリントシートの使用が実現する。そして、その後の当該収納ステーションを用いた複列プリントモードでのプリントが実行される際に、両方のシート収納体が残量差を縮小した状態で消費されていくことになる。このこのことは、古くなったプリントシートがいつまでも残るという問題の解消に貢献する。
【0008】
また、本発明の好適な実施形態の1つとして、前記複列プリントモードから単列プリントモードへの移行時には特別割り込みルールが前記シート収納体選択ルールとして適用され、前記特別割り込みルールでは、直前の複列プリントモードで使用されていた収納ステーションに属するシート収納体が選択される構成が提案される。この構成により、使用する収納ステーションを切り換えるために必要な切換時間をできるだけ節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリント収納体の選択を効果的に行うために、本発明によって提案される基本的な構成を示す模式図である。
【図2】本発明によるプリント装置の実施の形態の一例を示す断面模式図である。
【図3】コントローラにおける機能ブロック図である。
【図4】複列プリントのシート収納体の選択手順を示すフローチャートである。
【図5】単列プリントのシート収納体の選択手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、複列プリントと単列プリントの両方が可能なプリント装置においてプリント収納体の選択を効果的に行うために、本発明によって提案される基本的な構成を図1の模式図を用いて説明する。
このプリント装置は、ここでは別構成となっているプリント注文受付装置とともにDP店等に配置される。よく知られているように、プリント注文受付ユニットを通じて顧客によって入力された撮影コマ画像と当該撮影コマ画像に与えられた注文指示は、例えばDPOFのような写真プリントフォーマットの形式でプリント注文情報としてデータ化され、プリント装置に転送される。このプリント注文情報には各撮影コマ画像に対するプリント枚数やプリントサイズを規定しているプリント注文データと撮影コマ画像の集合体である画像データが含まれている。
【0011】
このプリント装置は、互いに平行な第1搬送レーンと第2搬送レーンとを少なくとも備え、これらの複数の搬送レーンを通じて搬送されてくる複列のプリントシートに画像を形成する複列プリントモードと、いずれか1つの搬送レーンを通じて搬送されてくる単列のプリントシートに画像を形成する単列プリントモードとを有する。プリントシートに画像を形成するプリントヘッド15は、第1搬送レーンと第2搬送レーンとで共通化されるが、各搬送レーンにプリントヘッド15を設ける構成が本発明で排除されているわけではない。
【0012】
図1で模式的に示されているように、シート搬送方向でプリントヘッド15の上流側には、第1収納ステーションと第2収納ステーションとが配置されている。第1収納ステーションは、第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第1シート収納体(図1ではNo.1で示されている)と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第2シート収納体(図1ではNo.2で示されている)とを装備する。第2収納ステーションは第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第3シート収納体(図1ではNo.3で示されている)と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第4シート収納体(図1ではNo.4で示されている)とを装備している。収納ステーションは、一般的なプリント装置ではシートマガジンと称されるものと同等な機能を有し、ここでは、第1・第2・第3・第4シート収納体が長尺プリントシートを巻き取ったロールシート体として形成されている。このシート収納体はロールシート体に代えてカットシートを蓄積したカットシートカートリッジとして形成してもよい。
【0013】
このプリント装置における重要な機能部として、上記の4つの各シート収納体のプリントシート残量(残りペーパ長さ)を算定するシート残量算定部44と、受け取ったプリント注文を複列プリントモードと単列プリントモードとのいずれのプリントモードで実行するかを決定するプリントモード決定部41と、第1・第2搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択する使用収納体選択手段42とが備えられている。使用収納体選択手段42は、複列プリントモードでのプリント処理と単列プリントモードでのプリント処理のそれぞれにおいて、シート残量算定部44によって算定された各シート収納体のプリントシート残量を選択条件として、使用するシート収納体を決定する。つまり、第1シート収納体(No.1)のシート残量をv1、第2シート収納体(No.2)のシート残量をv2、第3シート収納体(No.3)のシート残量をv3、第4シート収納体(No.4)のシート残量をv4とすると、
複列プリントモードでの収納体選択ルール関数:Dは、
D(v1,v2,v3,v4)=“1”、“2”、“0” で表すことができ、
ここで、“1”は第1ステーションに属するシート収納体の使用、“2”は 第2ステーションに属するシート収納体の使用、“0”は複列プリント不可である。
また、単列プリントモードでの収納体選択ルール関数:Sは、
S(v1,v2,v3,v4)=“11”、“12”、“21”、“22”、“0” で表すことができ、
ここで、“11”は第1ステーションに属する第1シート収納体の使用、“11”は第1ステーションに属する第2シート収納体の使用、“21”は 第2ステーションに属する第1シート収納体の使用、“22”は 第2ステーションに属する第2シート収納体の使用、“0”は単列プリント不可、つまりプリントシートの補充要求である。
【0014】
収納体選択ルール関数:DとSは、テーブル化され、ルールテーブル43として使用収納体選択手段42に利用可能に登録されている。具体的には、収納体選択ルール関数:Dは、プリントシート残量が最も少ないシート収納体と当該シート収納体が属する収納ステーションの他のシート収納体とが選択されるように作成されている。また、収納体選択ルール関数:Sは、各収納ステーションに属するシート収納体同士が均等なプリントシート残量となるように、最もプリントシート残量差が大きな組み合わせとなっている収納ステーションに属するシート収納体のうちの最もプリントシート残量が大きなシート収納体が選択されるように作成されている。
【0015】
さらに、好ましくは、複列プリントモードから単列プリントモードへの移行時には、複列プリントから単列プリントにおいて収納ステーションを切り換えるための切換時間を節約するために、強制的に前回に使用していた収納ステーションに属するシート収納体を使用する例外ルールが適用される。つまり、この例外ルールは複列プリントモードから単列プリントモードへの移行時に優先的に適用される特別割り込みルールであり、直前の複列プリントモードで使用されていた収納ステーションに属する、プリントシート残量が大きい方のシート収納体が今回の単列プリントのシート収納体として選択される。
【0016】
使用すべきシート収納体が選択されると、その選択情報が使用収納体選択手段42からプリントモード決定部41に送られる。プリントモード決定部41は、最終的に決定された使用すべきプリントモードとシート収納体の規定した指令をプリント制御モジュール5に転送する。プリント制御モジュール5は、受け取った指令に基づいた搬送制御動作を実行し、搬送されてきたプリントシートに対してプリントヘッド15を駆動制御して画像データに基づく画像を形成する。
【0017】
以下、上述した基本的構成を採用した本発明によるプリント装置の実施の形態を説明する。
図2に示すように、プリント装置は、筐体の下部に、第1収納ステーションとしての第1シートマガジン11と第2シートマガジンとしての第2シートマガジン12が上段と下段に配置されている。図2からは理解しにくいが、図1で模式的に示されているように、第1シートマガジン11内部には、ロールシート体である第1シート収納体No.1と第2シート収納体No.2とが横並び配置されており、第2シートマガジン12内部には、ロールシート体である第3シート収納体No.3と第4シート収納体No.4とが横並び配置されている。第1シートマガジン11と第2シートマガジン12は、筐体10側面から引き出すスライド操作によって開放されるドロワー型であり、その開放状態でシート収納体の入れ換えが可能となる。なお、図示されていないが、各シート収納体にはプリントシートの送り出しと巻き取りとを行う圧着型のフィードローラが設けられている。
【0018】
第1シート収納体No.1と第3シート収納体No.3とは第1搬送レーンにプリントシートを送り出し、第2シート収納体No.2と第4シート収納体No.4は第2搬送レーンにプリントシートを送り出すことができる。従って、複列プリント時には、第1シートマガジン11を使用して第1シート収納体No.1と第2シート収納体No.2とからプリントシートを送り出すやり方と、第2シートマガジン12を使用して第3シート収納体No.3と第4シート収納体No.4とからプリントシートを送り出すやり方とを選択できる。単列プリントでは、当然、任意のシート収納体を使用することができる。
【0019】
図2では、第1搬送レーンと第2搬送レーンは共通的に二点鎖線で1つの搬送レーンとして示されており、実質的には、搬送ベルトを用いた搬送機構と搬送ローラを用いた搬送機構が搬送箇所に応じて適切に使い分けされている。シート収納体近傍の搬送レーンには、第1シートマガジン11と第2シートマガジン12からの各搬送レーンを合流させる合流レーン部13、プリントヘッド15にプリントシートを供給する供給ローラセット14が備えられている。供給ローラセット14は、手差しのプリントシートが導入される構造となっている。シート搬送方向でプリントヘッド15の下流側には、プリントシートを指定された長さで切断するカッター16、プリントシートの表裏を逆転させるスイッチバック機構17と、プリントシートの乾燥を行う乾燥ユニット18が備えられている。搬送レーンの最終部は、筐体10から筐体10の上面にプリントシートを排出する排出部19である、ここから排出されたプリントシートは、搬送ベルトによってここでは図示されていないソータのトレーにプリント注文毎に蓄積される。
【0020】
この実施形態で用いられているプリントヘッド15は、インクジェット式であり、プリントシート搬送方向に直交する主走査方向に第1搬送レーンと第2搬送レーンとにまたがってスライド移動可能に構成されている。図示されていないが、プリントヘッド15には、複数のインクカートリッジから異なる色相のインクが供給される。尚、夫々のインクの色相としては、ブラック(BK)、ライトブラック(LK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)が用いられる。なお、プリントヘッド15は、インクジェット式以外に、昇華方式、レーザプリント方式など種々の画像形成方式を採用することが可能であるが、銀塩プリント方式を採用する場合、後段に現像処理部が必要となる。
【0021】
このプリント装置におけるプリントヘッド15の駆動制御や、シート収納体から引き出されたプリントシートの搬送レーンを用いた搬送制御を行うためにコントローラ100が筐体10内部に設置されている。このコントローラ100は、図3で示すように、実質的にはコンピュータによって構成されており、プログラム又はハードウエアあるいはその両方によってプリント処理に必要な制御機能を作り出している。なお、この実施形態では、プリント装置本体と、プリント注文受付ユニットとは別体構成となっている。従って、プリント受付ユニットにおいて顧客から指示に基づいてプリント注文情報生成モジュールによって生成された画像データやプリント注文データは、無線又は有線LANを通じてコントローラ100の入出力インターフェースに送信される。もちろん、キヨスク端末のような自動注文プリント装置では、プリント装置本体とプリント注文受付ユニットとが一体化されており、プリント注文情報生成モジュールもコントローラ100に組み込むことができる。
【0022】
コントローラ100において構築される、画像処理モジュール3と、本発明に特に関する機能モジュールとして、シート選択モジュール4と、プリント制御モジュール5と、が挙げられる。画像処理モジュール3は、入力された画像データを、注文データに示された画像形成条件や予め設定されているフォトレタッチアルゴリズムに基づいて処理し、最終的なプリントデータを生成する。プリント制御モジュール5は、第1・第2搬送レーンを構成するプリントシート搬送機構の制御を行う搬送制御部51と、プリントヘッド15の駆動制御を行うプリントヘッド制御部52を有する。
【0023】
シート選択モジュール4は、プリントモード決定部41、使用収納体選択手段42、ルールテーブル43、シート残量算定部44、シート可能収納体管理部45、注文単位使用量算定部46を備えている。プリントモード決定部41は、上述したように、プリント注文を複列プリントモードで処理するか単列プリントモードで行うかどうかを決定する機能を有するが、複列プリントモードの方が処理速度が速いので、基本的には複列プリントモードを決定するように構成されているが、プリントシート切れやその他の特別な理由が生じた際に単列プリントが決定される。使用収納体選択手段42は、図1を用いた説明で述べたように、複列プリントモードでのプリント処理における第1シートマガジン11と第2シートマガジンとの間の選択、及び単列プリントでの第1シート収納体No.1、第2シート収納体No.2、第3シート収納体No.3、第4シート収納体No.4からの選択を行う。その選択の際には、ルールテーブル43に示された判定ルールが利用される。複列プリントモードで採用される判定ルールは、プリントシート残量が最も少ないシート収納体を含む収納ステーションを使用することであり、これにより古く残っているプリントシートを早いうちに使いきってしまうという意図がある。また、単列プリントモードで採用される判定ルールは、第1シート収納体No.1と第2シート収納体No.2との間の残量差と、第3シート収納体No.3と第4シート収納体No.4との間の残量差とで大きいほうの残量差となっている組み合わせの残量の大きいシート収納体を使用することである。これにより、第1シートマガジン11と第2シートマガジンのそれぞれにおけるシート収納体の残量差が縮小し、均等な消費が実現する。その結果、その後の第1シート収納体No.1と第2シート収納体No.2あるいは第3シート収納体No.3と第4シート収納体No.4とを用いた複列プリントが実行される際にも、両方のシート収納体が残量差を縮小した状態で消費することができ、古くなったプリントシートがいつまでも残るという問題は解消される。
さらに、複列プリントモードから単列プリントモードへの移行時には例外ルールが適用されるが、その例外ルールは、直前の複列プリントモードで使用されていた収納ステーションに属する、プリントシート残量が大きい方のシート収納体を使用することである。これにより、使用する収納ステーションを切り換えるために必要な切換時間をできるだけ節約することができる。
【0024】
シート残量算定部44は、シート収納体に取り付けられたそれ自体は公知なシート残量センサからの信号によりそのシート収納体の残量を算定する。なお、シート残量算定部44の別形態として、新規投入時に入力される最大プリントシール長さと、プリント制御モジュール5から送られるプリント処理情報とからソフトウエア的に演算して各シート収納体の残量を求めてもよい。
【0025】
シート可能収納体管理部45と注文単位使用量算定部46はオプション的な機能を有する。シート可能収納体管理部45は、現状で使用可能となっているシート収納体を確定して、使用収納体選択手段45に与える。例えば、第4シート収納体No.4に特殊なシートペーパを収納している場合、通常の複列プリントにおける第2収納ステーション12の使用禁止や単列プリントにおける第4シート収納体No.4の使用禁止などである。注文単位使用量算定部46は、これから処理しようとするプリント注文からそのプリント処理を可能な全てのシート収納体使用パターンで行った後のシート収納体のシート残量を演算する。注文単位使用量算定部46で演算された結果、シート残量がマイナスとなるシート収納体に対してはそのようなシート収納体使用パターンを選択しないように、使用収納体選択手段45に要求する。
【0026】
次に、上述したプリント装置における複列プリント時に使用するシート収納体の選択の流れを図4を用いて、単列プリント時に使用するシート収納体の選択の流れを図5を用いて説明する。なお、図4と図5のフローチャートでは、文字スペースを少なくするため、シート収納体を単に収納体、シートマガジンを単にマガジンというような文字の短縮化をおこなっている。
【0027】
複列プリントでは、図4に示すように、まず残量チェックが行われる(#01)。この残量チェックは、シート残量算定部44によるシート残量算定処理として行われ、第1シート収納体と第2シート収納体の少なくとも一方が空の場合、M1フラグに“1”がセットされる。第3シート収納体と第4シート収納体の少なくとも一方が空の場合、M2フラグに“1”がセットされる。なお、M1フラグとM2フラグは初期設定で“0”をセットされているとする。つまり、M1フラグに“1”がセットされていると、第1シート収納体と第2シート収納体のいずれかが空であるか、両方が空であるということを示している。M2フラグに“1”がセットされていると、第3シート収納体と第4シート収納体のいずれかが空であるか、両方が空であるということを示している。さらに、変数Minに4つのシート収納体のうちで最小のシート残量となっているシート収納体をセットしておく。
【0028】
次に、「M1フラグが“1”でなく、かつM2フラグが“1”でない」という判定条件がチェックされる(#02)。この判定条件が成立しない場合は(#02No分岐)、第1シートマガジン11と第2シートマガジンの両方が少なくともどちらかのシート収納体が空(プリントシート切れ)の状態であるため、複列プリントができないことになる。従って、複列プリント不可指令が出力される(#10)。この判定条件が成立する場合は(#02Yes分岐)、さらに、「M1フラグが“0”であり、かつM2フラグが“0”である」という判定条件がチェックされる(#03)。この判定条件が成立しない場合は(#03No分岐)、どちらかのシートマガジンだけが複列プリントが可能となるので、さらに「M1フラグが“0”である」という判定条件、つまり第1シートマガジン11に属する第1シート収納体と第2シート収納体とが共にシート残量を有するかどうかという判定条件がチェックされる(#05)。この判定条件が成立しない場合は(#05No分岐)、第1シートマガジン11による複列プリントが不可能ということになる。従って、第2シートマガジン12による複列プリント指令が出力される(#09)。この判定条件が成立する場合は(#05Yes分岐)、第1シートマガジン11による複列プリントが可能ということになる。従って、第1シートマガジン11による複列プリント指令が出力される(#08)。
【0029】
ステップ#03での判定条件が成立した場合は(#03Yes分岐)、どちらのシートマガジンでも複列プリントが可能となるので、さらに「変数Minにセットされたシート収納体が第1シートマガジンに属するかどうか」という判定条件、つまり最もシート残量が少ないシート収納体が第1シートマガジン11に属するかどうかという判定条件がチェックされる(#04)。この判定条件が成立する場合は(#04Yes分岐)、僅かしか残っていないプリントシートを早く使い切るために第1シートマガジン11による複列プリントを行うことになる。従って、第1シートマガジン11による複列プリント指令が出力される(#07)。この判定条件が成立しない場合は(#04No分岐)、先と同じ理由で第2シートマガジン12による複列プリントを行うことになる。従って、第2シートマガジン12による複列プリント指令が出力される(#06)。
【0030】
単列プリントでは、図5に示すように、初期処理として残量チェックが行われる。この残量チェックでは、まず、第1シートマガジン11の第1シート収納体と第2シート収納体との間の残量偏差ΔV1が演算される(#11)。その際、第1シート収納体と第2シート収納体の両方が「空」(プリントシート切れ)なら、第1フラグに“1”がセットされる(#12)。さらに、第2シートマガジン12の第3シート収納体と第4シート収納体との間の残量偏差ΔV2が演算される(#13)。その際、第3シート収納体と第4シート収納体の両方が「空」(プリントシート切れ)なら、第2フラグに“1”がセットされる(#14)。
【0031】
以上の残量チェックが終了すると、「第1フラグが“1”でなく、かつ第2フラグが“1”でない」という判定条件がチェックされる(#15)。この判定条件が成立しない場合は(#15No分岐)、第1シートマガジン11及び第2シートマガジンに属する両方シート収納体が空(プリントシート切れ)の状態であるため、プリントそのものができないことになる。従って、プリントを行うためにプリントシートの充填を報知するためのペーパ充填指令が出力される(#21)。この判定条件が成立する場合は(#15Yes分岐)、いずれかのシート収納体にプリント可能なプリントシートが存在していることになるので、さらに、前回のプリント処理が複列プリントであったかどうかがチェックされる(#16)。前回が複列プリントであった場合は(#16Yes分岐)、分岐レーンの切り換え時間を節約するため、前回使用したシートマガジンを選択し、その選択したシートマガジンに属するシート収納体のうちの残量の多いほうのシート収納体の使用を指令する(#18)。
【0032】
ステップ#16の判定条件が成立しない場合は(#16No分岐)、さらに第1シート収納体と第2シート収納体との間の残量偏差ΔV1と、第3シート収納体と第4シート収納体との間の残量偏差ΔV2が比較され、残量偏差ΔV1が大きい場合(#17Yes分岐)は、第1シートマガジン11におけるシート収納体の残量の違いを調整するため、第1シートマガジン11における残量の多いほうのシート収納体の使用を指令する(#9)。残量偏差ΔV1が大きくない場合(#17No分岐)は、第2シートマガジン12におけるシート収納体の残量の違いを調整するため、第2シートマガジン12における残量の多いほうのシート収納体の使用を指令する(#20)。
【0033】
なお、上述した制御ルーチンにおいて、シート収納体に処理対象のプリント注文で使用できないプリントシートが収納されている場合には、そのシート収納体は「空」扱いされる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、互いに平行な複数の搬送レーンを備え、この複数の搬送レーンを通じて搬送されてくる複列のプリントシートに画像を形成する複列プリントが可能な全ての種類のプリント装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
3:画像処理モジュール
4:シート選択モジュール
41:プリントモード決定部
42:使用収納体選択手段
43:ルールテーブル
44:シート残量算定部
45:シート可能収納体管理部
46:注文単位使用量算定部
5:プリント制御モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1搬送レーンと第2搬送レーンとを少なくとも備え、前記複数の搬送レーンを通じて搬送されてくる複列のプリントシートに画像を形成する複列プリントモードと、いずれか1つの搬送レーンを通じて搬送されてくる単列のプリントシートに画像を形成する単列プリントモードとを有するプリント装置において、
前記第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第1シート収納体と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第2シート収納体とを装備する第1収納ステーションと、前記第1搬送レーンにプリントシートを送り込む第3シート収納体と前記第2搬送レーンにプリントシートを送り込む第4シート収納体とを装備する第2収納ステーションと、前記シート収納体毎のプリントシート残量を算定するシート残量算定部と、前記搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択する使用収納体選択手段とが備えられ、
前記搬送レーンにプリントシートを送り込むシート収納体を選択するシート収納体選択ルールが前記各シート収納体のプリントシート残量を選択条件として前記使用収納体選択手段によって利用可能に設定されており、前記複列プリントモード時と前記単列プリントモード時とで異なるシート収納体選択ルールが用いられるプリント装置。
【請求項2】
前記複列プリントモード時のシート収納体選択ルールでは、プリントシート残量が最も少ないシート収納体と当該シート収納体が属する収納ステーションの他のシート収納体とが選択される請求項1に記載のプリント装置。
【請求項3】
前記単列プリントモード時のシート収納体選択ルールでは、各収納ステーションに属するシート収納体同士が均等なプリントシート残量となるように、最もプリントシート残量差が大きな組み合わせとなっている収納ステーションに属するシート収納体のうちの最もプリントシート残量が大きなシート収納体が選択される請求項1または2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記複列プリントモードから単列プリントモードへの移行時には特別割り込みルールが前記シート収納体選択ルールとして適用され、前記特別割り込みルールでは、直前の複列プリントモードで使用されていた収納ステーションに属する、プリントシート残量が大きい方のシート収納体が選択される請求項1から3のいずれか一項に記載のプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167983(P2011−167983A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35132(P2010−35132)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】