説明

プリント配線板およびその製造方法

【課題】 より定数少ない工程で配線や微細化、高密度化が可能なプリント配線板の製造方法及びプリント基板を提供する。
【解決手段】 絶縁性基材1と、前記絶縁性基材1の両面にそれぞれ設けられた配線層と、前記一方の配線層及び前記絶縁性基材を貫通するビアホール3と、前記ビアホール3内に充填され、前記配線層同士を導通する接続導体と、前記接続導体と一体に形成され、前記一方の配線層の表面に沿って前記接続導体の表面及びその近傍の配線層の表面を所定範囲覆うランド6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板およびその製造方法に関するものであり、特に、絶縁材層の表裏に配線層を形成したプリント配線板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板においては、電気的なノイズの低減や配線のさらなる高密度化を図るため配線層の多層化が試みられており、多層化を実現する一般的な手法として、絶縁層を挟んで多層に設けられた配線層(導電層(グランド層、電源層を含む))同士を微細なスルーホールまたはビアホールを通じて電気的に接続する技術が検討されている。
【0003】
図5は、この種、従来のプリント配線板の製造方法の一例を示す工程図である。
この方法では、プリント配線板の材料として、図5(a)に示すように、薄いポリイミドフィルムから成る絶縁性基材101の表裏両面に銅箔102a,102bを貼り合せたCCL基材100が用いられる。なお、CCLはCopper Clad Laminateの略称である。
プリント配線板を製造する際は、図5(b)に示すように、CCL基材100の表裏両面に、液体状の感光性フォトレジストまたはフィルム状の感光性ドライフィルム(DF)を、レジスト膜(図示せず)としてCCL基材100の片面、すなわち、一方の銅箔102bの表面に着膜させ、露光・現像工程を経てビアホールのパターンを形成する。現像には、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液などを使用し、ビアホールのパターンに相当する部分のレジスト膜を溶解する。
【0004】
続いて、塩化第二鉄溶液等をエッチャントとして用い、レジスト膜で覆われておらずレジストパターンの開口(図示せず)を通して露出している部分の銅箔を、ウェットエッチングで除去し、図5(b)に示すように、銅箔102bにビアホールの開口103を形成する。
【0005】
次に、開口103より露出した部分の絶縁性基材101の表面に、例えば炭酸ガスレーザビームを照射し、図5(c)に示すように、一方の銅箔102bのビアホールの開口103に連続するビアホール104を形成する。銅箔102b及び絶縁性基材101にビアホール104を形成した後は、例えば過マンガン酸ナトリウム溶液等を用いたデスミア処理によりレーザビームによるスミアを除去し、ビアホール104の壁面および銅箔102aの表面に導電性付与のための無電解めっきによる下地処理を施して導電性皮膜105を形成する。
【0006】
続いて、図5(d)に示すように、導電性皮膜105を電解めっき用電極とする電解銅めっき処理を施して、ビアホール104内および開口103内に銅めっき膜106を充填する。ここで銅めっき膜106が銅箔102aと銅箔102bとを接続する接続導体、すなわち、ビア109となる。
【0007】
次に、銅箔102aの表面に沿って銅めっき膜106の表面、すなわち、ビア109の表面および銅箔102aの表面に、レジスト膜またはドライフィルムを塗布またはラミネートした後、露光・現像によってパターニングして、図5(e)に示すように、所定のパターンのレジストパターン107a,107bを形成する。
【0008】
続いて、ウェットエッチング工程により、図5(f)に示すように、銅めっき膜106と銅箔102bとの積層物をエッチング加工して、所定のパターンの配線108bとする。また、ウェットエッチング工程で銅箔102aにもエッチング加工して所定のパターンの配線108aを形成する。
この後、レジストパターン107a,107bを剥離すると、図5(g)に示すように、所望の配線108a,108bおよびそれら両配線を層間接続したプリント配線板が得られる。
【0009】
図6は図5で説明したプリント配線板とは別の構造のプリント基板の要部詳細断面図である。
このプリント配線基板では、絶縁層(絶縁性基材)130上に、無電解めっき層140が形成された後、無電解めっき層140上にランド160が形成され、ランド160上にビア充填用の電解めっき層170が形成される(特許文献1)。
無電解めっき層140は、絶縁層130の下面に配置された配線131の表面に直接接触しており、その上に、ランド160、電解めっき層170がこの順で積層されている。
このプリント基板では、ビアに相当する電解めっき層170がランド160のみに接触しており、絶縁層130で隔てられて異なった層に配置されているランド160と配線131とは、電解めっき層170によって接続されているのではなく、無電解めっき層140を介して接続されている。
このような構造においても、ランド160の上に電解めっき層170が重ねて配置されるので、その分、ランド160の付近の厚さが厚くなり、表面の凹凸が大きくなってしまう傾向にある。
【0010】
なお、プリント配線板ではなく、セラミック基板を利用する半導体装置の分野では、図7に示すように、セラミック基板111上に絶縁体層120aを設け、絶縁体層120aに擂り鉢状の貫通孔121を設け、貫通孔121の空所および絶縁体層120aに囲まれた空所に、銅めっきを充填して接続導体としてのビア112cを形成し、ビア112cにより絶縁体層120aの表裏に設けられたパッド112a,112b同士を導通することがなされている(特許文献2)。
【0011】
【特許文献1】特開2001−284810号公報
【特許文献2】特開平8−204113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このようにプリント配線板では、配線密度を向上するために、より微細な配線を形成することがなされており、配線108a,108bを形成する材料の膜厚または層厚を薄くすることが必要とされている。
しかし、無電解めっき法によりビア109を形成すると、銅箔102bの表面にも銅めっきが成長してしまい、銅箔102bの厚さと銅めっき膜106の厚さとが重なって、配線108b全体の厚さが厚くなり、配線108bのアスペクトレシオが大きくなってしまう問題がある。
【0013】
そこで、ウェットエッチングで配線108bをパターン形成する前に、銅箔102bまたは銅めっき膜106を化学研磨して、配線108b全体の厚さを薄くするという対策も考えられる。
しかし、このような化学研磨の工程を追加することは、製造プロセス全体の工程が増加し、また、流れを煩雑化してしまう不都合がある。
例えば、図5の場合で説明すると、配線108a,108bのライン幅/スペース幅を、30/30μm(いわゆるレンジ60μmピッチ)とする場合、配線108aを形成するための銅箔102aの厚さが12μm以下であることが必要となる。ところが、銅箔102bの表面上に銅めっき膜106が着膜した積層構造の配線108bは、銅箔102bの厚さに銅めっき膜106の厚さが加えられているので、配線108b全体の厚さは、元の銅箔102bの厚さよりも厚くなる。つまり、銅めっき膜106の厚さを、例えば、5μmとすると、配線108b全体の厚さは、銅箔102bの厚さ12μmに5μmを加算した17μmとなり、60μmピッチの形成は不可能となってしまう。なお、銅めっき膜106を、例えば5μm未満に薄く着膜させることも考えられるが、この場合には耐温度サイクル特性に対する信頼性が低下する虞がある。
【0014】
そこで、これらを克服するため次のような対策が想定される。
(1)銅箔102bに、銅めっき膜106の着膜を見込んだ薄い銅箔102bを使用する。例えば、銅箔102bには、12μmの厚さの銅箔が用いられているが、この場合には、12μmから5μmを引いた厚さ7μmの銅箔を用いる。
(2)銅箔102bをあらかじめ化学研磨や機械的研磨などによって研削して、銅めっき膜106の厚さ分薄くしておく。
例えば、銅箔102bの厚さが12μmの場合は、銅箔102bの化学研磨や機械的研磨により、厚さを7μmとする。
(3)ビア部分以外の銅めっき膜106を化学研磨や機械的研磨などによって研削除去してからウェットエッチング加工を行う。
しかし、(1)の場合は、要求されるような厚みの極薄の銅箔を単体で作製することが困難であることや、その取り扱いが煩雑なものとなる傾向にあるなど、技術的な制約が多く、また、これに起因した高コスト化、収率の低下が発生する虞がある。
また、(2),(3)の場合は、十分な面内均一性を達成することが困難であり、化学研磨等の研磨プロセスが追加されるので製造工程全体が煩雑化する不都合がある。
【0015】
このように、従来の技術では、配線の厚さが厚くなり、その断面のアスペクトレシオが大きくなって、絶縁性基材の表裏両面の配線や導電層のさらなる微細加工を達成することが困難である。
また、上記のように一つの配線層における配線の厚さやランドの厚さが厚いと、それを多数積層してなる多層配線板では、その厚さに起因した凹凸が累積されることとなるので、微細な配線やビアの精確な形成が、さらに困難になる。
【0016】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、化学研磨や機械研磨のようなプロセスを追加することなく製造工程を簡易なものに保ったままで、配線やビアの微細化を可能とするプリント配線板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の発明は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材の両面にそれぞれ設けられた配線層と、前記一方の配線層及び前記絶縁性基材を貫通するビアホールと、前記ビアホール内に充填され、前記配線層同士を導通する接続導体と、前記接続導体と一体に形成され、前記一方の配線層の表面に沿って前記接続導体の表面及びその近傍の配線層の表面を所定範囲覆うランドと、を備えたものである。
このようにするとランドを含めた接続導体のアスペクトレシオが小さくなる。また、接続導体とランドとの接続構造の信頼性を犠牲にすることなくランドの厚みを薄くすることも可能になる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記接続導体がフィルドビア用銅めっきからなるものである。
これによって、接続導体の形成が容易になる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ビアホールの直径が20μm以上とするものである。
前記接続導体を簡便且つ廉価形成するには、電解銅めっき(ビアフィル銅めっき)を用いるのが好ましいが、現状の加工技術には量産上の限界があり、ビアホールの直径が20μm未満では、電解銅めっきによっても安定的な量産は困難である。ビアホールの直径が20μm以上であると、現状の技術でも接続導体の安定的な形成が可能になる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3いずれかに記載の発明において、前記絶縁性基材が厚さ12.5μm以上、50μm以下のポリイミドフィルムから形成され、前記配線層が厚さ18μm以下の銅箔から形成されたものである。
前記接続導体を形成するには電解銅めっきを用いるのが好ましい。絶縁性基材(例えば、ポリイミド)の厚みは、電解銅めっきを行う上でも、薄ければ薄いほどめっき時間が少なくて済み、加工時間の短縮による安価な形成が可能になる。
一方、絶縁性基材は、厚みが薄すぎると搬送時の絶縁性基材の変形が発生しやすくなり、量産適用は困難である。
従ってこれらの点を勘案すると、量産できる基材の厚みの範囲は12.5〜50μmとなる。
また、ポリイミドを絶縁性基材とするプリント配線板、すなわち、フレキシブル基板(ガラスエポキシを用いるリジット基板ではない)の配線ピッチ(配線の幅+配線間スペース)は、一般に、配線幅50μm+配線間スペース50μm=100μmが最大レベルであり、微細化のためには、極力、配線ピッチを小さくすることが重要である。このため、銅箔等の配線層を形成する導電性金属箔の厚みを18μmより厚いものを用いることは、配線ピッチの粗い(大きい)基板しか製造することができなくなり、フレキシブル基板の薄型化や微細化に対して逆行してしまうことになる。
また、配線層の厚みは、エッチング法(サブトラクティブ法)で配線パターンを作製する方法では製作可能な配線ピッチの下限値を決定する。
例えば、厚み18μmの銅箔を用いれば100μmピッチがその下限値となり、厚み12μmの銅箔を用いれば60μmピッチがその下限値となる。
このように、配線層の厚みは、配線ピッチの微細化と、エッチング法で作製可能な配線ピッチとに基づいて18μm以下に決定される。
【0021】
請求項5記載の発明は、表裏両面にそれぞれ配線層が設けられた絶縁性基材に、一方の配線層及び絶縁性基材を貫通するビアホールを形成する工程と、前記一方の配線層の表面に沿って前記ビアホールの開口及びその近傍の配線層の表面を所定範囲覆うランドを形成するためのパターンを有するレジストパターンを前記一方の配線層の表面に形成すると共に、他方の配線層の表面にこれを覆うレジスト膜を形成する工程と、電解銅めっき法により、前記ビアホール内に接続導体を充填して前記絶縁性基材両面の前記配線層同士を接続すると共に、電解銅めっき法により前記接続導体をさらに成長させて前記レジストパターンに即した前記ランドを前記接続導体と一体に形成する工程と、を含むものである。
このようにすると、ランド以外には電解銅めっきが積層されことが回避される。また、配線断面のアスペクトレシオを小さくすることが可能となり、高密度配線、微細配線が可能となる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記接続導体を形成するための材料としてフィルドビア用銅めっき材料を用いるものである。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の発明において、前記ビアホールをレーザビームにより形成するものである。レーザビームは高密度のエネルギーのビームであり、直線性が高いので、精度の高いビアホールが形成される。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項5〜7いずれかに記載の発明において、前記ビアホールの直径を20μm以上とするものである。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項5〜8いずれかに記載の発明において、前記絶縁性基材として厚さ50μm以下のポリイミドフィルムを用いると共に、前記配線層の形成材料として厚さ18μm以下の銅箔を用いるものである。
【0026】
請求項10記載の発明は、請求項5〜9いずれかに記載の発明において、前記レジストパターンの形成の際にドライフィルムを用い、当該ドライフィルムの露光・現像により前記レジストパターンを形成するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、配線層の表面上におけるビアホールの開口上を含む所定の範囲内のみに、ビアホール内に充填する接続導体と一体にランドを形成し、その他の部分には接続導体が重なって形成されることがない。このため、化学研磨等の工程はランドだけで済み、精度よく形成することができる。また、配線断面のアスペクトレシオを小さくすることができるので、高密度配線や微細配線が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るプリント配線板の製造方法を示す工程図であり、図2は、図1の工程により製造したプリント配線板を示し、図2(a)はビアおよびランド付近を拡大して示した平面図、図2(b)は図1(a)のA−A断面図である。
【0029】
図1(a)を参照して本発明の一実施の形態に係るプリント配線板の製造方法を説明する。
図1(a)に示すように、まず、絶縁性基材1の表裏両面にそれぞれ銅箔2a,2bが貼り合わされたCCL基材10を用意する。このCCL基材10としては、この他にも、銅箔102a,102bの代りに無電解銅めっき膜を絶縁性基材1の表面に着膜してなるものなどを用いてもよい。
ここで、絶縁性基材1は厚さ50μmのポリイミドフィルムで構成されており、銅箔102a,102bはそれぞれ18μmの厚さであるが、絶縁性基材1には、厚さTsが50μm以下のポリイミドフィルムを用いると共に、配線21a,21bの形成材料としては厚さTcが18μm以下の銅箔を用いることが望ましい。
【0030】
本実施の形態に係る製造工程では、一般的なドライフィルムの露光・現像によってCCL基材10の銅箔102a,102bの表面上にドライフィルムレジストパターンをそれぞれ形成し、ウェットエッチングによってそれぞれ銅箔102a,102bを蝕刻加工して、図1(b)に示すように配線21a,21bを形成する。
【0031】
続いて、図1(c)に示すように、絶縁性基材1を貫通するビアホール3を形成する。ビアホール3は、例えばレーザビームでも、また、穿孔でも形成することが可能であるが、より微細に且つ精確よく形成するには、レーザビームによる穿孔が好ましい。ビアホール3を形成した後は、ビアホール3にデスミア処理を施し、スミアを除去する。
【0032】
続いて、銅箔102b,102aの表面にドライフィルム4a,4bをラミネートし、次に、図1(d)に示すように、ビアホール3が穿設された方の銅箔102bの表面にラミネートしたドライフィルム4bに対する露光・現像を行って、銅箔2bの表面に沿って前記ビアホール3の開口上及びその近傍の配線21bの表面を所定範囲覆うランドを形成するためのドライフィルムパターンを形成する。このとき、ビアホール3が穿設されていない方のドライフィルム4aはパターニングせず、そのままドライフィルム4aで配線21aのほぼ全面を覆った状態とする。
【0033】
続いて、図1(e)に示すように、配線21aに電解めっきに必要な所定の電圧を印加(電解電流を通電)しながらCCL基材10を電解めっき液(図示省略)に浸潤させる。この電解銅めっき工程によって、ビアホール3の開口103から外部に向かって露出している部分の配線21aが電解めっき用電極として働いて電解銅が成長して行く。これにより、電解銅からなる接続導体がビアホール3内の底側からビアホール3の開口側に向かって成長していき、絶縁性基材1の表裏両面の配線21a,21b同士が接続導体としてのビア5によって接続され、電気的な導通が可能となる。この工程で形成される接続導体の材料としては、フィルドビア用銅めっき材料を用いることが好ましいが、出来上がりのビア5に要求される性能や仕様によっては電解めっき可能な他の電解めっき材料を用いることも可能である。
【0034】
電解銅めっきは、ビアホール3内に接続導体が完全に充填され、ビア5が形成された後も継続し、電解銅がビアホール3の外側へと成長(堆積)してドライフィルム4bのパターンに即した形状にランド6が形成された時点で終了する。このように、電解めっきよりランド6とビア5とを連続して一体に形成すると、ビア5とランド6との間は、デマケーションラインのような境界線が全く観察されない断面構造となり、耐熱サイクル性に対する信頼性が大幅に向上する。
ビア5およびランド6を形成した後は、図1(f)に示すように、ドライフィルム4a,4bを剥離し、プリント配線板の主要部の製造を終了する。
【0035】
このように、本実施の形態では、電解銅めっきによって成長する電解銅からなる接続導体がビアホール3内に充填されてビア5が形成される。
そして、ビアホール3の開口の上方を含む所定の範囲内のみに複数の配線21bからなる層に沿ったランド6がビア5と一体に形成され、ランド6以外の配線21b上には、電解銅からなる接続導体は形成されない。この結果、配線21a,21bの厚さが厚くなることが回避される。
このため、配線21,21bの断面のアスペクトレシオを小さくり、高密度配線、微細配線が達成される。
【0036】
なお、このような電解銅めっきによる接続導体、即ち、ビア5の成長は、通電時間(めっき処理時間)にほぼ比例して増減するので、製品に要求される仕様に対応して適宜、調節することにより、ランド6を所望の厚さに形成することが可能である。
【0037】
また、ビアホール3の直径は、20μm以上とすることが望ましい。但し、これは20μm以下の直径のビアホールには本発明を適用できないということを意味するものではない。
【0038】
さらに、本実施の形態では絶縁性基材1の表裏両面には、配線層として配線21a,21bを設ける場合について説明したが、一方の面に配線を設け、他方の面にグランド層や電源層のような導電層を配線層として設けるようにしてもよい。また、ランド6のパターンは、図2に一例を示したような円形のみには限定されず、例えば矩形や多角形などのパターンとすることも可能である。
【0039】
また、本発明の実施の形態では、配線21a、絶縁性基材1、配線21aの三層構造のプリント配線板を一例として説明をしたが、本発明は、プリント配線板全体の平坦化や微細配線化・高密度配線化を簡易かつ確実に達成することが可能であるという点で、多層化すればするほど、大きな効果を得ることが期待できるものである。従って、本発明は、フレキシブルなプリント配線板以外にも、リジッドプリント配線板などの製造方法や構成は適用可能であり、3層、4層あるいはさらにそれ以上の多層配線板にも適用が可能である。
【実施例】
【0040】
上記の実施の形態で述べたような工程に従って、図4に示したような断面構造のフレキシブルプリント配線板を製造した。
【0041】
本実施例では、図1(a)に示したCCL基材10として、厚さTs=25μmのポリイミドフィルムからなる絶縁性基材1の表裏両面にそれぞれ厚さTc=12μmの銅箔2a,2bを貼り合せた、いわゆるフレキシブル基板を用いた。その外形寸法は70mm×100mの帯状(図示省略)とした。
図1(b)に示した工程では、厚さ15μmのドライフィルム4a,4bを、ロールラミネータ(図示省略)によって、絶縁性基材1の表裏両面に同時に貼り付けた。そしてガラス基板に所望の配線21a,21b、ランド6、ビアホール3の開口等のパターンを描画してなる露光マスクを用いた露光装置によってドライフィルム(図示省略)を露光しこれを1wt%炭酸ナトリウム溶液を用いて現像し、ドライフィルムパターンを形成した。
【0042】
続いて、塩化第二鉄溶液をエッチャントとして用いたウェットエッチングを行い、配線21a,21bを蝕刻形成した後、水酸化ナトリウム溶液を用いてドライフィルムを剥離除去した。このエッチングを完了した時点でのビアホール3の位置における銅箔2bに設けられる開口の直径は60μmとした。開口を取り囲むように設けるランド6の直径Drは350μmとした。ビアホール3の個数は、幅70mm×長さ35mmの面積あたり700個とし、これを1単位として、上述のCCL基材10の長さ100mに亘って形成した。
【0043】
図1(c)に示した工程では、炭酸ガスレーザ加工機を用いて絶縁性基材1に炭酸ガスレーザビームを照射し、ビアホール3を穿設した。そしてCCL基材10全体を過マンガン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液に浸漬して溶解・除去するデスミア処理を行った後、洗浄した。なお、炭酸ガスレーザ以外にも、エキシマレーザやYAGレーザ等を用いて、さらに微細な直径のビアホールを形成するできも可能であることも確認した。
【0044】
図1(d)に示した工程では、厚さ20μmのドライフィルム4a,4bを、CCL基材10の表裏両面それぞれにロールラミネータ(図示せず)で同時にラミネートした後に、ドライフィルム4aの全面に紫外線を露光させ、ドライフィルム4bには現像上りの段階でビアホール3の部分のみが露出するようなドライフィルムパターンを形成した。
本実施例では、図4に示すようにランド6の直径Drを350μmとし、ビアホール3の開口径Dvを100μmとした。
このときドライフィルム4a,4bのパターンの開口径は、主として、使用するドライフィルム4a,4bの解像度等の性能と厚さとに比例するが、今回使用した厚さ20μmのドライフィルム4a,4bは、開口径20μmまで保証できるものである。また、工程に使用するドライフィルムは、正確なパターニングを保証することが可能な開口径とフィルム厚との関係等に基づいて、要求される開口径に対応する厚さのものを選択した。
【0045】
図1(e)に示した工程では、電解銅めっき液として、フィルドビア用電解銅めっき液を用いた。この電解銅めっき作業では、電流密度3.5A/dmで通電しながらめっき浴を行って、電解銅をビアホール3の空所内に成長・充填させてビア5を形成し、これと連続して配線21bの表面上に厚さTr=5μmまで電解銅を成長させることで、厚さTrが約5μmで直径Drが350μmのランド6を形成した。
電解銅めっきの完了後、図1(f)に示した工程で、水酸化ナトリウム溶液にCCL基材10全体を浸潤させてドライフィルム4a,4bを剥離除去し、図4に示したような構造のプリント配線板の主要部を完成させた。
この結果、ランド6との重なり部を除く配線21bの面内凹凸が、実質的にその配線層における配線21bや導電層による微細な凹凸のみとすることができた。
【0046】
なお、図3に一例を示したように、上述の製造プロセスにおける電解銅めっきによる接続導体の成長を調節することで、接続導体を、配線21bの表面上におけるビアホール3の孔径の外側には広がらないようにすることも可能である。つまり、接続導体をビアホール3内に配線21bの表面の高さと比肩する高さまで充填してビア5を形成するが、ビア5の直径よりも外側へは接続導体の形成を拡げないようにすることにより、ランド6を設けないようにしてもよい。このようにすることにより、接続導体を配線21bの表面からその外側へと、その表面に対して平行方向にも垂直方向にも突出しないようにすることができるので、配線21bが設けられた配線層における面内凹凸を、実質的にその配線層における配線21bや導電層による微細な凹凸のみとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の最良の形態に係るプリント配線板の製造方法に係る工程図である。
【図2】本発明の最良の形態に係るプリント配線板を示し、図2(a)はプリント配線板におけるビアおよびランド付近を拡大して示した平面図(a)、図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。
【図3】接続導体をビアホール内に配線の表面の高さと同じ高さまで充填してビアを形成し、ランドは省略して示した断面図である。
【図4】本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板の主要部の構成および設定寸法を示した断面図である。
【図5】従来のプリント配線板の製造工程におけるビアホールの形成プロセスの流れの具体的な一例を示した工程図である。
【図6】図5に示した一例とは別の、従来のプリント配線板の構造を説明するための要部詳細程図である。
【図7】図5、図6に示した一例とは別の従来の配線板の製造工程におけるビアホールの形成プロセスの流れの具体的な一例を示した要部詳細断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 絶縁性基材
2 銅箔
3 ビアホール
4 ドライフィルム
5 ビア(接続導体)
6 ランド
10 CCL基材
21 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の両面にそれぞれ設けられた配線層と、
前記一方の配線層及び前記絶縁性基材を貫通するビアホールと、
前記ビアホール内に充填され、前記配線層同士を導通する接続導体と、
前記接続導体と一体に形成され、前記一方の配線層の表面に沿って前記接続導体の表面及びその近傍の配線層の表面を所定範囲覆うランドと、
を備えたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記接続導体がフィルドビア用銅めっきからなる請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記ビアホールの直径が20μm以上である請求項1又は2記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記絶縁性基材が厚さ12.5μm以上、50μm以下のポリイミドフィルムから形成され、前記配線層が厚さ18μm以下の銅箔から形成された請求項1〜3いずれかに記載のプリント配線板。
【請求項5】
表裏両面にそれぞれ配線層が設けられた絶縁性基材に、一方の配線層及び絶縁性基材を貫通するビアホールを形成する工程と、
前記一方の配線層の表面に沿って前記ビアホールの開口及びその近傍の配線層の表面を所定範囲覆うランドを形成するためのパターンを有するレジストパターンを前記一方の配線層の表面に形成すると共に、他方の配線層の表面にこれを覆うレジスト膜を形成する工程と、
電解銅めっき法により、前記ビアホール内に接続導体を充填して前記絶縁性基材両面の前記配線層同士を接続すると共に、電解銅めっき法により前記接続導体をさらに成長させて前記レジストパターンに即した前記ランドを前記接続導体と一体に形成する工程と、を含む
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記接続導体を形成するための材料としてフィルドビア用銅めっき材料を用いる請求項5記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
前記ビアホールをレーザビームにより形成する請求項5又は請求項6記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記ビアホールの直径を20μm以上とする請求項5〜7いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁性基材として厚さ50μm以下のポリイミドフィルムを用いると共に、前記配線層の形成材料として厚さ18μm以下の銅箔を用いる請求項5〜8いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記レジストパターンの形成の際にドライフィルムを用い、当該ドライフィルムの露光・現像により前記レジストパターンを形成する請求項5〜9いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−335817(P2007−335817A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169203(P2006−169203)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】