説明

プリント配線板の耐マイグレーション性予測法および予測装置

【課題】プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する方法及び装置を提供する。
【解決手段】加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加して、Cole−Coleプロットを得ること、および得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンス(Fw)の存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測することを含む、プリント配線板の耐マイグレーション性予測法とする。また、加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加してCole−Coleプロットを得る加速劣化試験部、および得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンス(Fw)の存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する計算手段を具備している、プリント配線板の耐マイグレーション性予測装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の耐マイグレーション性予測法および予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピューター等のデジタル電子機器では、高機能化・多機能化の流れが、近年ますます加速している。高機能化・多機能化のためには半導体の高密度実装が必須であるため、半導体を搭載するプリント配線板のライン/スペースも精細化の一途をたどっている。そのため、プリント配線板においては耐マイグレーション性に優れ、高い絶縁信頼性を確保するための研究開発が活発に実施されている。ところが、耐マイグレーション性を評価するには、長期間に及ぶ絶縁信頼性試験を行う必要があり研究開発効率の点で障害となっている。
【0003】
耐マイグレーション性予測を目的とした研究はあまり先例がないが、類似な研究としてプリント配線板のマイグレーションの機構解明を目的に、交流インピーダンスを指標にマイグレーション発生を追跡した研究が、吉原らによって行なわれている(非特許文献1〜3)。
【0004】
非特許文献1〜3には、交流インピーダンスのCole−Coleプロットに基づいて、電荷移動抵抗(Rct)、界面容量(C)および溶液抵抗(Rsol)から構成される等価回路を作成した場合、マイグレーション発生に伴って、Rctが徐々に減少していくことが記載されている。また非特許文献1〜3には、マイグレーションの発生が、交流インピーダンスのCole−Coleプロットにおいては、半円の縮小によって表されることが記載されている。
【0005】
【非特許文献1】佐藤 誠、吉原 佐知雄、白樫 高史:エレクトロニクス実装学会誌, 7, 271−275 (2004)
【非特許文献2】吉原 佐知雄:表面技術, 56, 565−571 (2005)
【非特許文献3】吉原 佐知雄:第20回エレクトロニクス実装学会講演大会講演要旨集, p.153−p.156 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、等価回路におけるRctの低下、またはCole−Coleプロットにおける半円の縮小は、実質的なマイグレーションが発生するまでは観察されないと考えられる。また、これらのRctの低下または半円の縮小は、プリント配線板のインピーダンスを複数回にわたって得なければ観察することができない。従って耐マイグレーション性の予測という観点からは、非特許文献1〜3に記載の方法は十分とはいえない。よって、マイグレーションが実質的に発生する前に、かつ/または一回のインピーダンス測定によって、マイグレーションの発生を予想する方法及び装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明は、下記のようなものである:
【0008】
(1)加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加して、Cole−Coleプロットを得ること、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測すること、
を含む、プリント配線板の耐マイグレーション性予測法。
【0009】
(2)交流電圧の振幅が、1.0V〜10Vの範囲から選択される、上記(1)に記載の耐マイグレーション性予測法。
【0010】
(3)加速劣化試験環境が、80℃〜100℃の範囲から選択される温度および80%〜100%の範囲から選択される湿度を含む、上記(1)又は(2)に記載の耐マイグレーション性予測法。
【0011】
(4)加速劣化試験環境が、プリント配線板に印加される直流電圧を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐マイグレーション性予測法。
【0012】
(5)交流電圧の周波数を、少なくとも0.1Hz〜100kHzを含む範囲で変化させて、Cole−Coleプロットを得る、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐マイグレーション性予測法。
【0013】
(6)加速劣化試験環境においてプリント配線板を劣化させ、且つプリント配線板に交流電圧を印加してCole−Coleプロットを得る、加速劣化試験部、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する、計算手段、
を具備している、プリント配線板の耐マイグレーション性予測装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるプリント配線板の耐マイグレーション性予測法および予測装置によれば、長期間に及ぶ絶縁信頼性試験を行わずに、かつ/または一回のインピーダンス測定で、プリント配線板の絶縁信頼性を予測評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(耐マイグレーション性予測法)
プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する本発明の方法は、下記の工程を含む:
加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加して、Cole−Coleプロットを得ること、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測すること。
【0016】
ここで、Cole−Coleプロットは、プリント配線板に交流電圧を印加し、応答するインピーダンスを測定し、このインピーダンスの実数成分({Z}/Ω)および虚数成分({Z}/Ω)をそれぞれ、横軸および縦軸にプロットして得られるものである。
【0017】
ワールブルグインピーダンス(Fw)は、電気化学的酸化還元反応系の拡散によって発現するインピーダンスであり、電気抵抗成分と電気容量成分を含む。すなわち、プリント配線板の絶縁信頼性試験におけるワールブルグインピーダンスは、陽極から溶け出した銅イオンが電子を受け取って析出するという酸化還元反応拡散の指標として考えることができる。そのため、ワールブルグインピーダンスの出現は耐マイグレーション性を予測するパラメーターになり得るものと考えられる。尚、ワールブルグインピーダンスは、半円状となるCole−Coleプロット上に、正の傾きを持った角状直線となって現される。
【0018】
ワールブルグインピーダンス(Fw)に基づく耐マイグレーション性の具体的な予想に関して、同じ加速劣化試験環境では、ワールブルグインピーダンスが早期に発生するプリント配線板は、耐マイグレーション性が比較的低いと予想され、またワールブルグインピーダンスの発生が遅いプリント配線板は、耐マイグレーション性が比較的大きいと予測される。また当然に、ワールブルグインピーダンスの発生は一般に、加速劣化試験環境に依存する。すなわち、同じプリント配線板では、過酷な加速劣化試験環境においてワールブルグインピーダンスが比較的早期に発生し、また穏やかな加速劣化試験環境においてワールブルグインピーダンスが比較的長期間にわたって発生しない。
【0019】
(耐マイグレーション性予測法−加速劣化試験環境)
プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する本発明の方法では、加速劣化試験環境において任意の温度、湿度および直流電圧を用いることができる。加速劣化試験環境において用いる温度、湿度および直流電圧は、試験対象となるプリント配線板に求められる耐マイグレーション性の程度、インピーダンス測定の前にプリント配線板を加速劣化試験環境に保持する期間等に基づいて決定することができる。
【0020】
例えば加速劣化試験環境は、80℃〜100℃の範囲から選択される温度を含むことができる。ここで、80℃以上の温度は、マイグレーションを比較的短時間で発生させ、従って本発明の予測法を迅速に行うために好ましい。また、100℃以下の温度は、試験を行う試験槽を耐圧構造にする必要等の、設備上の制約を少なくするために好ましい。
【0021】
また例えば加速劣化試験環境は、80%〜100%の範囲から選択される湿度を含むことができる。
【0022】
加速劣化試験環境は、プリント配線板に印加される直流電圧を含むことができる。この直流電圧は例えば、30V〜130Vの範囲から選択することができる。ここで、30V以上の直流電圧は、マイグレーションを比較的短時間で発生させ、従って本発明の予測法を迅速に行うために好ましい。また、130V以下の直流電圧は、過剰に激しい加速劣化試験環境を防ぐために好ましい。
【0023】
加速劣化試験環境においてプリント配線板を劣化させる期間は、試験対象となるプリント配線板に求められる耐マイグレーション性の程度、使用する加速劣化試験環境等に基づいて決定することができる。この期間は、例えば10分〜100時間の範囲から選択される時間、特に10分〜50時間の範囲から選択される時間、より特に30分〜5時間の範囲から選択される時間にすることができる。
【0024】
(耐マイグレーション性予測法−インピーダンス測定)
プリント配線板のインピーダンス測定のために用いる交流電圧、特に正弦波交流電圧は、Cole−Coleプロットにおいてワールブルグインピーダンス(Fw)出現を検出できるように選択することができる。ここでこの交流電圧は、加速劣化のための直流電圧に重畳させて印加すること、または加速劣化のための直流電圧の印加を止めて、単独の交流電圧として印加することができる。但し、試験を容易にするためには、交流電圧は、加速劣化のための直流電圧に重畳させて印加することできる。
【0025】
例えば正弦波交流電圧の振幅は、0.1V〜10V、特に1.0V〜10V又は0.1V〜0.5Vの範囲から選択することができる。また例えば交流電圧の周波数は、少なくとも0.1Hz〜100kHzを含む範囲、好ましくは少なくとも0.05Hz〜200kHzを含む範囲、より好ましくは少なくとも0.01Hz〜1,000kHを含む範囲で変化させて、Cole−Coleプロットを得ることができる。1.0V〜10Vの範囲から選択される振幅、および/または少なくとも0.1Hz〜100kHzを含む範囲の周波数は、Cole−Coleプロット時のワールブルグインピーダンス(Fw)出現を感度良く検出するために好ましい。
【0026】
(耐マイグレーション性予測装置)
プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する本発明の装置は、下記の構成要素を有する:
加速劣化試験環境においてプリント配線板を劣化させ、且つ前記プリント配線板に交流電圧を印加してCole−Coleプロットを得る、加速劣化試験部、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する、計算手段。
【0027】
プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する本発明の装置では、本発明の方法に関して説明した加速劣化試験環境、交流電圧の振幅および周波数等を用いることができる。加速劣化試験環境を作るための加速劣化試験部は、任意の構成を有することができ、例えば加速劣化試験で用いる温度および湿度を維持できる恒温恒湿槽とすることができる。また、本発明の予測装置において用いられる計算手段としては、専用または汎用のコンピューターチップ、専用または汎用のパーソナルコンピューターを用いることができる。本発明の予測装置は、計算手段によって得られる予測の結果を表示する表示装置を更に有することができる。
【0028】
例えば、本発明の予測装置において用いられる計算手段は、Cole−Coleプロットに実質的なワールブルグインピーダンスが観察されなかったときに、プリント配線板の耐マイグレーション性が良好であることを表示装置に表示させ、また実質的なワールブルグインピーダンスが観察されたときに、プリント配線板の耐マイグレーション性が不良であることを表示装置に表示させることができる。
【0029】
(プリント配線板)
本発明の予測法および予測装置よって耐マイグレーション性を予測されるプリント配線板としては、ポリイミド基板上に銅箔を積層したフレキシブル銅張り積層板(FCCL)上に、エッチング等で回路形成後、ポリイミドフィルムの片面に接着剤層を設けたカバーレイを加熱圧着して回路保護を行なったフレキシブルプリント配線板(FPC)、およびガラス繊維織布にエポキシ樹脂を含浸した基板(ガラエポ基板)上に銅箔を積層したリジッド銅張り積層板(RCCL)上にエッチング等で回路形成後、ソルダーレジストを塗工して回路保護を行なったリジッドプリント配線板(RPC)を挙げることができる。
【0030】
回路保護のために用いられるカバーレイの接着剤層は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および可とう性付与剤で構成されている。ここで一般的には、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が用いられ、硬化剤としては、フェノール樹脂やアミン等の活性水素を有する化合物が用いられ、硬化促進剤としては、イミダゾール系化合物等が用いられ、また可とう性付与剤としては、ニトリルブタジエン系エラストマー等が用いられる。尚、可とう性付与剤として用いられるニトリルブタジエン系エラストマーは、耐マイグレーション性に悪影響を及ぼすことが知られている。すなわち、ニトリルブタジエン系エラストマーは配合量が増えるにつれ、硬化系のTg低下や不純物イオン濃度の増加をもたらし、試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の耐マイグレーション性を低下させることが、一般的に知られている。
【0031】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
膜厚25μmのポリイミド層と箔厚18μmの銅箔から成る2層フレキシブル銅張り積層板(FCCL)(新日鐵化学(株)製エスパネックス)の銅箔面上に、エッチングによってライン幅/スペース幅が、100μm/200μmの櫛形銅回路を形成した。次にこの回路面上に、カバーレイを170℃で1時間熱圧着後、190℃で2時間後硬化して試料フレキシブルプリント配線板(FPC)を調製した。ここでこのカバーレイは、エポキシ樹脂としてのビスフェノールAジグリシジルエーテル(東都化成(株)製YD−128)60.4重量%、硬化剤としてのp−クレゾールノボラックトリマー(昭和高分子(株)製PCP−1009P)39.0重量%および硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)2E4MZ)0.6重量%の成分組成を有する膜厚25μmの接着剤層と、膜厚25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトンH)とからなっていた。
【0033】
次に、この試料フレキシブルプリント配線板(FPC)を、温度85℃および湿度85%の恒温恒湿槽内に挿入し、ポテンショスタット(北斗電工(株)製品)により直流電圧50Vを印加した。この直流印加開始時点をもって試験開始とした。試験開始後5時間までは10分毎、20時間までは30分毎、その後は1時間毎に試験開始後100時間まで、NF回路(株)製FRA(Frequency Response Analyzer)により、振幅7V、周波数領域100kHz〜0.1Hzの正弦波交流電流を重畳して、応答する交流インピーダンスを測定し、得られたインピーダンスデータからCole−Coleプロットを得た。ワールブルグインピーダンス(Fw)が出現するか否かを、試験開始後10時間まで観測した。
【0034】
試験開始後10時間までの観測では、Cole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンスの出現は観察されなかった。このことにより、この試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で加速劣化試験を終了し、試料フレキシブルプリント配線板(FPC)を恒温恒湿槽から取り出し、表面をキーエンス(株)製デジタルマイクロスコープでデンドライト発生の有無を観察した。この観察によれば、デンドライトの発生は認められず、耐マイグレーション性は良好であるとした予測の妥当性が証明された。この実施例1についてのCole−Coleプロットを、図1に示す。
【0035】
(実施例2)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂56.8重量%、上記硬化剤36.1重量%、上記硬化促進剤0.6重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)6.6重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0036】
(実施例3)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂56.8重量%、上記硬化剤36.1重量%、上記硬化促進剤0.6重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)13.7重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0037】
(実施例4)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂48.6重量%、上記硬化剤29.5重量%、上記硬化促進剤0.5重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)21.4重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0038】
(実施例5)
恒温恒湿槽の温湿度条件を、温度95℃、湿度95%、印加する直流電流100Vに変化した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0039】
(実施例6)
恒温恒湿槽の温湿度条件を温度95℃および湿度95%、ならびに印加する直流電流を100Vにした以外は、実施例2と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0040】
(実施例7)
恒温恒湿槽の温湿度条件を温度95℃および湿度95%、ならびに印加する直流電流を100Vにした以外は、実施例3と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現は観測されず、耐マイグレーション性は良好であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められず、予測の妥当性が証明された。
【0041】
(実施例8)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂44.0重量%、上記硬化剤25.8重量%、上記硬化促進剤0.4重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)29.7重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現が観測され、耐マイグレーション性は不良であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生が認められ、予測の妥当性が証明された。この実施例8についてのCole−Coleプロットを、図2に示す。
【0042】
(実施例9)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂39.0重量%、上記硬化剤21.8重量%、上記硬化促進剤0.4重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)38.8重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現が観測され、耐マイグレーション性は不良であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生が認められ、予測の妥当性が証明された。
【0043】
(実施例10)
試料フレキシブルプリント配線板(FPC)作製に用いるカバーレイの接着剤組成を、上記エポキシ樹脂33.5重量%、上記硬化剤17.4重量%、上記硬化促進剤0.3重量%、可とう性付与剤としてのカルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴム((株)JSR製PNR−1H)48.8重量%に変更した以外は、実施例1と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現が観測され、耐マイグレーション性は不良であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生が認められ、予測の妥当性が証明された。
【0044】
(実施例11)
恒温恒湿槽の温湿度条件を温度95℃および湿度95%、ならびに印加する直流電流を100Vにした以外は、実施例8と同様の手順および条件で、耐マイグレーション性の予測と検証を行なった。その結果、試験開始後10時間までのCole−Coleプロット上にワールブルグインピーダンス(Fw)の出現が観測され、耐マイグレーション性は不良であると予測された。試験開始後500時間で取り出した試料フレキシブルプリント配線板(FPC)の回路表面にはデンドライト発生は認められ、予測の妥当性が証明できた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ワールブルグインピーダンス(Fw)が観察されない実施例1に関するCole−Coleプロットである。
【図2】ワールブルグインピーダンス(Fw)が観察された実施例8に関するCole−Coleプロットである。
【符号の説明】
【0046】
Fw ワールブルグインピーダンスを示す部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速劣化試験環境において劣化させたプリント配線板に交流電圧を印加して、Cole−Coleプロットを得ること、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、前記プリント配線板の耐マイグレーション性を予測すること、
を含む、プリント配線板の耐マイグレーション性予測法。
【請求項2】
前記交流電圧の振幅が、1.0V〜10Vの範囲から選択される、請求項1に記載の耐マイグレーション性予測法。
【請求項3】
前記加速劣化試験環境が、80℃〜100℃の範囲から選択される温度および80%〜100%の範囲から選択される湿度を含む、請求項1又は2に記載の耐マイグレーション性予測法。
【請求項4】
前記加速劣化試験環境が、前記プリント配線板に印加される直流電圧を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の耐マイグレーション性予測法。
【請求項5】
前記交流電圧の周波数を、少なくとも0.1Hz〜100kHzを含む範囲で変化させて、Cole−Coleプロットを得る、請求項1〜4のいずれかに記載の耐マイグレーション性予測法。
【請求項6】
加速劣化試験環境においてプリント配線板を劣化させ、且つ前記プリント配線板に交流電圧を印加してCole−Coleプロットを得る、加速劣化試験部、および
得られたCole−Coleプロット上のワールブルグインピーダンスの存在に基づいて、前記プリント配線板の耐マイグレーション性を予測する、計算手段、
を具備している、プリント配線板の耐マイグレーション性予測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−80094(P2009−80094A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14758(P2008−14758)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り MES2007 第17回マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集(発行所:社団法人エレクトロニクス実装学会 発行日:平成19年9月13日)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】