説明

プリント配線板設計製造支援システム及び方法

【課題】プリント配線板の設計作業を簡略化して、低コストかつ短時間で所望のプリント配線板を得ることを課題とする。
【解決手段】予め既製化されて用意された複数種のプリント配線板モジュールがライブラリーとしてデータベース4に保存登録され、データベース4に登録保存されたプリント配線板モジュールは顧客1に提示され、顧客1は提示された複数種のプリント配線板モジュールの中から1または複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択した複数のプリント配線板モジュールを組み合わせて1つのプリント配線板を設計構成し、設計構成されたプリント配線板の設計データは、顧客1から事業者2に送付され、送付された設計データに基づいてプリント配線板を製造する際のマスクフィルムが作画され、作画されたマスクフィルムに基づいてプリント配線板製造工場3でプリント配線板が製造されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め用意されたプリント配線板モジュールを組み合わせてプリント配線板を設計するプリント配線板設計製造支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来 電子回路用のプリント配線板を設計する場合には、プリント配線板を設計する際の専用のツールとなるプリント配線板設計用CAD(Computer Aided Design)を用いてアートワーク設計と呼ばれる作業を行い、プリント配線板に形成される回路パターン(導電パターン)を設計していた。この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献に記載された技術では、顧客はプリント配線板の設計段階から基板製造会社が使用している設計パラメータデータを用い、製造能力や部品情報などの製造ルールを考慮して設計CADデータを作成している。
【0003】
回路パターンが設計されたプリント配線板の設計データは、例えば従来公知のGerber(ガーバ)ファイルという形式のファイルでプリント配線板製造会社に提出されて発注される。プリント配線板製造会社は、このガーバファイルに基づいてマスクフィルムを作画し、作画したマスクフィルムを用いて顧客が設計したプリント配線板を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−163311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路を開発設計する技術者が、回路の動作を確認する目的で回路を試作する場合に、プリント配線板を用いずに手配線でブレッドボードと呼ばれる性能確認用の基板を製作する場合がある。しかしこの場合には、近年の電子デバイスの外囲器(パッケージ)の小型化により手配線での作業が困難になってきている。また、近年の電子デバイスにおける動作速度の高速化にともなって、ブレッドボードでは所望の性能が得られないといった問題があった。
【0006】
そこで、回路を開発設計する技術者は、プリント配線板を試作することが必要となり、この際にアートワーク設計を専門に行うCADオペレータもしくは外部業者に依頼することなく、技術者自身がアートワーク設計を行うことがある。しかし、アートワーク設計は、多くの時間が必要になる上に、専用のCADを操作する方法を熟知する必要がある。回路の開発設計を行う技術者は、アートワーク設計が本来の業務ではないので、その操作方法を熟知していない者が多い。このため、回路の開発設計を行う技術者が、アートワーク設計を行うと、アートワーク設計に労力や時間をとられてしまい、本来行うべき回路設計や評価業務に遅延が生じ、回路の開発設計を行う本来の作業に支障をきたすおそれがあった。
【0007】
また、アナログ回路のプリント配線板におけるアートワーク設計は、多くの設計ノウハウがあるので、熟知していない者が作業を行うと、適切な設計を行うことができず、プリント配線板に実装する回路の性能を十分に発揮できないといった問題を招くおそれもあった。
【0008】
そこで、アートワーク設計を専門に行うCADオペレータに依頼したり、もしくは外部の専門の業者に委託する場合がある。しかし、このような場合には、納期に時間がかかったり、開発設計者が意図している所望のプリント配線板が得られなかったり、開発コストが増大するといった不具合を招くおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プリント配線板の設計作業を簡略化して、低コストかつ短時間で所望のプリント配線板を得ることが可能なプリント配線板設計製造支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、予め既製化されて用意された複数種のプリント配線板モジュールの中から1または複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択した複数のプリント配線板モジュールを組み合わせて1つのプリント配線板を設計構成し、プリント配線板を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予め用意された複数種の中から選択構成手段によってプリント配線板モジュールが選択され、選択されたプリント配線板モジュールが組み合わされて1つのプリント配線板が設計構成されるので、プリント配線板の設計作業を簡略化することが可能となり、プリント配線板の設計労力を格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るプリント配線板設計製造支援システムの構成を示す図である。
【図2】プリント配線板モジュールの規格化されたサイズの一例を示す図である。
【図3】プリント配線板モジュールの構成を示す図である。
【図4】複数のプリント配線板モジュールの組み合わせ例を示す図である。
【図5】顧客によって設計構成されたプリント配線板の設計データの一例を示す図である。
【図6】プリント配線板の設計構成から製造までの一連の流れを示す図である。
【図7】ガーバファイルにおけるオフセット情報の書き換えの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係るプリント配線板設計製造支援システムの構成を示す図である。図1に示す実施形態1のシステムでは、プリント配線板を設計しようとする回路設計技術者等の顧客1に、プリント配線板の設計製造支援サービスを提供する事業者2が設計製造支援サービスを提供し、顧客1は事業者2から提供された設計製造支援サービスを利用して所望のプリント配線板を設計し、その後設計したプリント配線板の設計データを事業者2に送付し、事業者2は顧客1から送付された設計データに基づいてプリント配線板を製造する際のマスクフィルムを作画し、作画したマスクフィルムに基づいてプリント配線板製造工場3で顧客1が設計したプリント配線板が製造される。
【0015】
顧客1は、事業者2がプリント配線板の設計製造支援サービスで提供する複数種のプリント配線板モジュールの中から、選択構成手段により顧客1が所望するプリント配線板を設計する際に必要となる1つもしくは複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択した複数のプリント配線板モジュールを組み合わせてレイアウトし、1つのプリント配線板として設計構成する。顧客1は、送付手段により設計構成したプリント配線板の設計データを電子データとして事業者2に送付する。
【0016】
上記選択構成手段としては、事業者2から提供されてパーソナルコンピュータ等のコンピュータ端末で動作し複数種のプリント配線板モジュールを組み合わせたり表示させたりする機能を備えた簡易的なCAD(Computer Aided Design)や、主に表計算等を行うアプリケーションソフトウェア、事業者2がインターネット上で提供するWebページなどで構成され、複数種のプリント配線板モジュールを選択して組み合わせレイアウトする機能を有するものである。
【0017】
上記送付手段としては、インターネットや電子メール等の電気通信回線もしくは郵送といった、電子データ化した設計データを事業者2に送付できる機能を備えたものである。
【0018】
事業者2は、設計製造支援サービスにより顧客1に提供するプリント配線板モジュールを多数種予め既製品として用意し、用意した多数種のプリント配線板モジュールをライブラリーとしてガーバファイルという形式のファイルで保存登録したデータベース(事業者DB)4を有している。このデータベース4に保存登録されたプリント配線板モジュールは、上記設計製造支援サービスの使用方法とともに提示手段により顧客1に提供される。提示手段としては、インターネットのWeb上や、電子データ・プログラムの配布、紙面等で構成される。
【0019】
プリント配線板モジュールは、組み合わせて使用できることを考慮してプリント配線板をモジュール化したものであり、縦横のサイズが規格化されている。プリント配線板モジュールの横方向のサイズをX、縦方向のサイズをYとすると、最小サイズ(基準サイズ=1ユニット)に対して縦横のサイズが倍率化されている。すなわち、X=1ユニット×n(n=1(基準サイズ),2,4…)、Y=1ユニット×n(n=1(基準サイズ),2,4,…)として規格化されている。これにより、複数のプリント配線板モジュールを組み合わせた際に、組み合わせ後に構成されるプリント配線板の形状を容易に矩形状に形成することが可能となる。
【0020】
例えば、図2(a)に示すように基準サイズ(X=1ユニット,Y=1ユニット、1×1サイズ)のプリント配線板モジュール21に対して、同図(b)に示すようにX=2ユニット,Y=2ユニット(2×2サイズ)のプリント配線板モジュール22、同図(c)に示すようにX=4ユニット,Y=4ユニット(4×4サイズ)のプリント配線板モジュール23等で構成される。
【0021】
各サイズのプリント配線板モジュールは、そのサイズに応じて構築される回路の規模や機能、実装されるIC(集積回路)のサイズや個数が予め設定されている。例えば図2(a)に示す1×1サイズのプリント配線板モジュール21は、例えばOPアンプ等のピン数が少なく比較的小さなサイズのICを実装したり、小さな規模の回路を構築する際のモジュールとして用意される。図2(b)に示す2×2サイズのプリント配線板モジュール22は、例えばA/DコンバータやD/Aコンバータ等といった中規模なサイズのIC(基準サイズのプリント配線板モジュール21に実装されるICより大きなサイズのIC)を実装したり、中規模な回路を構築する際のモジュールとして用意される。図2(c)に示す4×4サイズのプリント配線板モジュール23は、例えばCPU、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等といった上記図2(a)、(b)に実装されるICよりもピン数が多く比較的大きなサイズのICを実装したり、大きな規模の回路を構築する際のモジュールとして用意される。ここで、回路の規模の大小は、例えば実装される実装部品の個数で判別され、小規模、中規模、大規模の回路の順に実装される実装部品の個数が増える。
【0022】
なお、各サイズのプリント配線板モジュールは、実装する電子デバイスを特定しない汎用性のユニバーサルタイプのものが主として用意されている。
【0023】
このようにサイズが規格化されたプリント配線板モジュールは、例えば図3に示すように構成されている。図3(a)は単層構造のプリント配線板モジュールの表面側を示し、同図(b)は同モジュールの裏面側を示す図であり、同図に示すプリント配線板モジュール31は、ICの両側にリードピン(端子)が並列して配置されているSOP(small outline package) タイプで8ピンのIC32を表面実装できるモジュールである。プリント配線板モジュール31は、その表面側に実装するIC32を載置する箇所にIC32のリードピンが半田付けされるパッド33が形成され、その周囲には複数のスルーホール(貫通ビア)34が配置形成されている。各パッド33は導体パターン35を介してスルーホール34の表面周囲に形成された円形や四角形の半田付け用の銅箔からなるランド36に接続されている。
【0024】
スルーホール34には、必要に応じて抵抗やコンデンサなどのアキシャル部品やラジアル部品のリード端子が挿入され半田付けされて実装されたり、ランド36にはチップ抵抗やチップコンデンサといった表面実装部品が半田付けされて実装されたり、リード線等の配線部材が半田付けにより接続される。導体パターン35は、必要に応じて適宜切断可能となるように構成され、また隣接するランド36は、必要に応じて半田付けにより相互に電気的に接続可能となるようにその間隔が設定されて配置構成されている。また、プリント配線板モジュール31の比較的外周辺に配置されたスルーホール34は、リード線等の配線部材が接続可能であり、この配線部材を介してプリント配線板モジュール31は、周辺のモジュールや外部と電気的に接続可能に構成されている。
【0025】
一方、プリント配線板モジュール31の裏面側には、グラウンド(接地電位)となる導体パターン(グラウンドパターン)37が形成されている。このグラウンドパターン37は、スルーホール34の裏面周囲に設けられたランド36との半田付けにより電気的に接続可能となるようにスルーホール34の周辺を囲むようにパターンレイアウトされている。また、グラウンドパターン37には、プリント配線板モジュール31の外周辺において外周端側に向かって凸状の接続部38が複数形成されている。これにより、プリント配線板モジュール31を他のプリント配線板モジュールと隣接して組み合わせた際に、隣接した双方のモジュールのグラウンドパターン37間の距離はこの接続部38の箇所で他の箇所に比べて半田付けが可能になる程度に接近することになる。したがって、双方のモジュールの接続部38の箇所を半田39により電気的に接続することで、プリント配線板モジュールを組み合わせた際に隣接するモジュール間のグラウンドパターン37を電気的に接続することが可能となる。
【0026】
さらに、図示されていないが、アナログ回路を構築する場合には、アナログ回路の性能が十分に発揮されるようなアートワーク設計がなされ、アナログ回路とデジタル回路が混載している場合には、モジュール間のグラウンドパターンを電気的に接続しないことによりアナログ回路用のグラウンドパターンとデジタル回路用のグラウンドパターンとが分離可能となるように、グラウンドパターンがレイアウト設計可能である。また、各種回路が構築実装された標準的な各種マザーボードのコネクタと接続可能となるようにマザーボード接続用のコネクタが配置形成されているモジュールも用意する。
【0027】
なお、図3では単層のプリント配線基板モジュールの構成を説明したが、ウェハース状に絶縁体と導電パターンを積層して多層化されたプリント配線板モジュールであっても同様に構成することができる。
【0028】
このようなプリント配線板モジュールは、型番等で指定された特定の集積回路に対応して用意しておくのではなく、QFP(quad flat package)やPGA(pin grid array)といった例えば実装するICのモールド形態、ピン構造や、ICのサイズ、ピン数、ピン配置、ならびに様々な機能(例えば増幅機能や演算機能等)や用途別(例えばコンピュータ関連や画像処理装置等)毎に多数種用意される。したがって、機能が異なっていても同一のピン配置で同サイズのICであれば同一のプリント配線板モジュールを共通して使用することができるようにプリント配線板モジュールは構成されている。
【0029】
顧客1は、上述したようにして用意されたプリント配線板モジュールの中から所望のプリント配線板を設計するのに必要となる最適なプリント配線板モジュールを選択し、選択したプリント配線板モジュールを組み合わせる。例えば、図4に示すように、図2(a)に示す基準サイズ(1×1サイズ)の4つのプリント配線板モジュールItem1−1,Item1−2,Item1−3,Item1−1と、図2(b)に示す2×2サイズのプリント配線板モジュールItem2−87と、図2(c)に示す4×4サイズのプリント配線板モジュールItem3−112とを選択し、各プリント配線板モジュールを図4に示すようにレイアウトして組み合わせ、これを1枚のプリント配線板として設計構成する。
【0030】
プリント配線板モジュールのItemに続く数字は、一例としてあるもので、各プリント配線板モジュールを他と識別する識別記号であり、例えばその先頭の数字がプリント配線板モジュールの上記サイズを表し、次に続く数字が登録されたガーバファイル名の一連の番号を表している。
【0031】
なお、これ以外にも、顧客1により本規格に合致するように自らアートワーク設計構成されたガーバファイルも、顧客1から事業者2に設計データが送付さた際に、同一フィルム上に作画できるものとし、必要に応じて事業者2のデータベース4のライブラリーに新規なプリント配線板モジュールとして登録可能とし、他の顧客1に提供することが可能に構成されている。
【0032】
このように設計構成されたプリント配線板の設計データは、電子データとして上述した送付手段を介して顧客1から事業者2に送付される。顧客1から事業者2に送付された設計データは、ここまで説明してきたデータベース4に保存登録されたガーバファイルのファイルを識別する識別記号とオフセット情報で構成されている。オフセット情報は、選択したプリント配線板モジュールを組み合わせた際の各プリント配線板モジュールの作画位置決めを示す座標情報(Xオフセット、 Yオフセット)である。
【0033】
例えば、図4に示すプリント配線板の設計データとなる各プリント配線板モジュールの識別記号となるItem#とオフセット情報は、オフセット情報の原点を完成後のプリント配線板の左隅とすると、図5に示すように構成される。
【0034】
事業者2は、識別記号とオフセット情報で構成された設計データを顧客1から受領すると、図6に示すように、顧客1から送付された設計データからオフセット情報を取得し、また同設計データに基づいて、データベース4を参照して選択されたプリント配線板モジュールのガーバファイルを取得する。取得したガーバファイルのオフセット情報は、プリント配線板製造時のマスクとなるマスクフィルムの作画時の実際の値に書き換えられて変換される。このような処理を、選択されたプリント配線板モジュールの数(各プリント配線板モジュールのガーバフィルの数)だけ繰り返し行い、選択されたすべてのプリント配線板モジュールのガーバファイルを形成する。その後、従来周知の手法によりガーバファイルに基づいてマスクフィルムを作画する。
【0035】
なお、ここでは、必要に応じて顧客1により本規格に合致するように自らアートワーク設計構成されたガーバファイルも合わせて作画される。
【0036】
作画されたマスクフィルムは、プリント配線板製造工場3に送られ、従来周知の手法でこの作画フィルムに基づいてプリント配線板が製造される。製造されたプリント配線板は、プリント配線板製造工場3から顧客1に納品される。
【0037】
例えば、図5に示す設計データにおいて、例えばindex4のプリント配線板モジュールItem1−1ならびにindex5のItem2−87のガーバファイルにおけるオフセット情報は、図7に示すように書き換えられる。図7において、上述した1ユニットの実際の値を例えば20mmとすると、設計データにおけるindex4のプリント配線板モジュールItem1−1のXオフセット=1は1×20、Yオフセット=1は1×20に変換され、index4のプリント配線板モジュールItem1−1のマスクファイルを作成する際の制御コマンドが記述されたガーバファイルにおいてXオフセットを示すAの値は0から20に書き換えられ、同様にYオフセットを示すBの値は0から20に書き換えられる。これにより、index4のプリント配線板モジュールItem1−1のマスクフィルムは、X=1U(1ユニット)、Y=1U(1ユニット)の位置に作画される。
【0038】
一方、設計データにおけるindex5のプリント配線板モジュールItem2−87のXオフセット=0は0×20、Yオフセット=1は2×20に変換され、index5のプリント配線板モジュールItem2−87のマスクファイルを作成する際の制御コマンドが記述されたガーバファイルにおいてXオフセットを示すAの値は0のままとなり、Yオフセットを示すBの値は0から40に書き換えられる。これにより、index5のプリント配線板モジュールItem2−87のマスクフィルムは、X=0U(1ユニット)、Y=2U(1ユニット)の位置に作画される。
【0039】
以上説明したように、上記実施形態においては、予め既成化された複数種のプリント配線板モジュールの中から1または複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択したプリント配線板モジュールを組み合わせることで、1つのプリント配線板を設計構成することが可能となる。
【0040】
これにより、アートワーク設計に不慣れな技術者が複雑なCAD操作を習得することなく、簡便かつ短時間に所望のプリント配線板を設計構成することが可能となる。また、小型の外囲器(パッケージ)のICであっても容易に半田付けが可能となり、ICを確実に実装することができる。アナログ回路用のプリント配線板モジュールを選択して組み合わせることで、アナログ回路を実装した後の性能評価時にノイズ等のアナログ回路特有の不具合の発生を低減することが可能となる。またこれにより、リード線を介してユニバーサルプリント配線板と呼ばれる穴明き汎用基板上で電気的に接続して1つの電子回路を構成する場合に比べて、機械的ならびに電気的に安定した回路動作を実現することが可能となる。
【0041】
プリント配線板モジュールは、そのサイズが基準サイズに対して倍率化されて用意されているので、複数のプリント配線板モジュールを組み合わせて1つのプリント配線板を設計構成した際に、プリント配線板を矩形状に形成することが容易となる。
【0042】
プリント配線板モジュールは、実装されるICのサイズ、ピン構造、ピン数やピン配置に応じて用意されており、同構成の複数のICに対して共通して使用することが可能であり、汎用性を向上することができる。
【0043】
プリント配線板モジュールは、他のプリント配線板モジュールと組み合わせた際に双方のプリント配線板モジュールのグラウンドパターンを半田付けにより接続する接続部を備えているので、隣接するプリント配線板モジュールの双方の接続部を半田により電気的に接合することで、双方のプリント配線板モジュールのグラウンドパターンを容易に電気的に接続することが可能となる。
【0044】
複数種のプリント配線板モジュールは、他と区別するためのそれぞれ固有の識別記号が与えられて保存登録されているので、この識別記号により容易に各プリント配線板モジュールを区別して選択することが可能となる。また、識別記号には、識別記号が与えられたプリント配線板モジュールのサイズを示す情報が含まれているので、プリント配線板モジュールを選択する際にこの識別記号を参照しただけでモジュールのサイズを認識することが可能となる。
【0045】
プリント配線板の設計データは、選択したプリント配線板モジュールの識別記号と、選択された複数のプリント配線板モジュールを組み合わせた際のそれぞれのプリント配線板モジュールの配置位置を示すオフセット情報とで構成されているので、本願発明を採用していない従来に比べて設計データ量を格段に削減することが可能となり、設計データの伝達を容易に行うことができる。また、設計データからマスクフィルムを作画する際に、識別記号に基づいてプリント配線板モジュールのガーバファイルを参照し、そのガーバファイルのオフセット情報を設計データに基づいて書き換えるだけで、マスクフィルムを作画する際のガーバファイルを形成することが可能となる。これにより、マスクフィルムの作画作業が簡単化でき作業時間を短縮することができる。
【0046】
顧客1が本規格に合致するように自らアートワーク設計構成したガーバファイルも、新規なプリント配線板モジュールのガーバファイルとしてデータベース4に登録可能とすることで、事業者2がプリント配線板モジュールのライブラリーを多様化して提示することが可能となり、本実施形態のシステムで提供するプリント配線板設計製造のサービスを向上することができる。
【0047】
インターネット等の電気通信回線を介して複数種のプリント配線板モジュールを提示することで、広範囲の顧客1に対して迅速かつ確実に複数種のプリント配線板モジュールを提示することが可能となる。
【0048】
インターネット等の電気通信回線を介して電子データ化したプリント配線板の設計データを伝達することで、迅速、確実かつ簡便にプリント配線板の設計データを伝達することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…顧客
2…事業者
3…プリント配線板製造工場
4…データベース
21,22,23,31…プリント配線板モジュール
32…IC
33…パッド
34…スルーホール
35…導体パターン
36…ランド
37…グラウンドパターン
38…凸部
39…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め既製化されて用意された複数種のプリント配線板モジュールがライブラリーとして保存登録されているデータベースと、
前記データベースに保存登録されたプリント配線板モジュールを提示する提示手段と、
前記提示手段により提示された複数種のプリント配線板モジュールの中から1または複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択した複数のプリント配線板モジュールを組み合わせて1つのプリント配線板を設計構成する選択構成手段と、
前記選択構成手段で設計構成されたプリント配線板の設計データを送付する送付手段と、
前記送付手段により送付されたプリント配線板の設計データを受けて、この設計データに基づいてプリント配線板を製造する際のマスクフィルムを作画する作画データを形成するフィルム作画手段と
を有することを特徴とするプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項2】
前記プリント配線板モジュールは、そのサイズが基準サイズに対して倍率化されて用意されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項3】
前記プリント配線板モジュールは、実装される集積回路のサイズ、ピン数やピン配置に応じて用意されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項4】
前記プリント配線板モジュールは、他のプリント配線板モジュールと組み合わせた際に双方のプリント配線板モジュールのグラウンドパターンを半田付けにより接続する接続部を備えている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項5】
前記複数種のプリント配線板モジュールは、他と区別するためのそれぞれ固有の識別記号が与えられて保存登録されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項6】
前記識別記号には、該識別記号が与えられたプリント配線板モジュールのサイズを示す情報が含まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項7】
前記選択構成手段は、前記識別記号に基づいてプリント配線板モジュールを選択する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項8】
前記プリント配線板の設計データは、選択したプリント配線板モジュールの前記識別記号と、選択された複数のプリント配線板モジュールを組み合わせた際のそれぞれのプリント配線板モジュールの配置位置を示すオフセット情報とで構成されている
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項9】
前記選択構成手段で設計されたプリント配線板内に、前記プリント配線板モジュールの規格に合致するように顧客により自らアートワーク設計構成されたガーバファイルも、1つのプリント配線板を構成する設計データとして作画データを形成する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項10】
前記選択構成手段で設計されたプリント配線板内に、前記プリント配線板モジュールの規格に合致するように顧客により自らアートワーク設計構成されたガーバファイルは、新規なプリント配線板モジュールとして前記データベースに登録される
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項11】
提示手段は、電子データ化した複数種のプリント配線板モジュールを提示する電気通信回線を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項12】
前記送付手段は、電子データ化したプリント配線板の設計データを送付する電気通信回線を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のプリント配線板設計製造支援システム。
【請求項13】
予め既製化されて用意された複数種のプリント配線板モジュールをライブラリーとしてデータベースに保存登録し、
前記データベースに保存登録されたプリント配線板モジュールを提示し、
提示された複数種のプリント配線板モジュールの中から1または複数のプリント配線板モジュールを選択し、選択した複数のプリント配線板モジュールを組み合わせて1つのプリント配線板を設計構成し、
設計構成されたプリント配線板の設計データを送付し、
送付されたプリント配線板の設計データを受けて、この設計データに基づいてプリント配線板を製造する際のマスクフィルムを作画する作画データを形成する
ことを特徴とするプリント配線板設計製造支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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