説明

プリント配線板

【課題】 量産ラインの稼働率向上や製造コストの低廉化の妨げとなることなく簡易に、量産品を1枚ごとあるいは1ロットごとに試験することを可能としたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 1つの連続した矩形状の絶縁性基板2上に、配線パターンを形成してなる配線領域3が互いに間隔を置いて非接続に複数配置されたプリント配線板(TABテープ1)であって、その配線領域3の外側の空き領域に、配線領域3内の配線パターンとは非接続な信頼性試験回路5を、複数の配線領域3に亘って沿うように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置などに組み込まれるTAB(Tape Automated Bonding)テープをはじめとしたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、各種電子機器や電子装置の回路基板として広く利用されているが、なかでもTABテープは、小型・薄型実装パッケージに最も好適なものとして盛んに用いられている。そのようなTABテープを含めて、その他にもフレキシブル配線板やリジット配線板など、一般に各種のプリント配線板は、製品として出荷される前に、いわゆる完成品検査工程として信頼性試験や半導体素子を接続させた状態での動作試験等が行われ、それらの検査結果が合格となった製品またはロットだけが完成品として出荷される。
【0003】
より具体的には、TABテープの場合、信頼性試験用としてそれ専用の信頼性試験用TABテープを、例えば量産テープを数ロット製造するごとにその同じ製造ラインで1本といった割合で作製している。そしてそのTABテープに半導体チップを搭載して所定の試験用電気信号を入力して、実際にその入力に対応して正しく半導体チップが機能するか否かの試験を行い、その結果に基づいて、そのときの検査対象の信頼性試験用TABテープの良/不良を、延いてはそのとき製造した量産ロット品の信頼性の如何を判定するようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−232368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の信頼性試験では、専ら信頼性試験だけのために、試験対象となる製品と同じ量産ラインに材料を流して信頼性試験用TABテープを作製せざるを得ないので、そのための余分な時間が掛かり、量産ラインの実際的な稼働率向上の妨げとなるという問題がある。また、一度使用したTABテープは再使用できず破棄されるので、そのために投入する材料や製造に余分な費用が掛かってしまい、製造コストの低廉化の妨げとなるという問題もある。
【0006】
しかも、上記のような従来の信頼性試験用TABテープによる信頼性試験は、抜き取り検査の一種類であって、全数検査ではない。また、試験用のTABテープを(試験用半導体チップの作製および接続等を含めて)短期周期で簡易に作製することは実際上困難である場合が多い。このため、信頼性試験を行う頻度が限定されてしまい、1ロットごとでの信頼性や、さらに詳細に1本のTABテープに含まれている個々の個体ごとでの信頼性を検査することが困難であるという問題がある。より具体的には、量産品のTABテープの1本ごとの条長は、上記のように100m程度と長いので、同じ1つのラインで製造されるにしても時間的経過と共にプロセス条件に揺らぎが不可避的に生じるなどして、その1条のうちの先端と中央と後端とで品質が異なってしまう場合がある。このため、上記のような従来の抜き打ち検査的な信頼性試験では、個々の量産品TABテープごと、あるいはさらに1本のTABテープ中における個々の個体ごとに、正確な信頼性試験を行うことが困難ないしは不可能となる傾向にあった。
【0007】
また、量産品では1ロットとして例えば条長100mのような長尺のTABテープを製造しているが、信頼性試験ではそのような長尺は必要ないということから、20mのような短縮した条長の信頼性試験用TABテープを作製して試験を行っている。このため、量
産品と試験用とでは、厳密にはPSR(Photo Solder Resist)パターニング後やめっ
き処理後のベークによる熱履歴など種々のプロセス条件が異なってしまい、信頼性試験用TABテープが必ずしも正確に量産品の品質と同一であるとは限らないことになり、信頼性試験自体の信頼性が損なわれる虞があるという問題もある。而して、信頼性試験用TABテープを量産品と同じ100mのような長尺で作製すると、既述したようにそのための時間的および製造コスト上の実質的な損失が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、量産ラインの稼働率向上や製造コストの低廉化の妨げとなることなく簡易に、量産品を1枚ごとあるいは1ロットごとに試験することを可能としたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1のプリント配線板は、1つの連続した矩形状の絶縁性基板上に、配線パターンを形成してなる配線領域が互いに間隔を置いて複数配置されたプリント配線板であって、前記配線領域の外側の空き領域に、前記配線パターンとは非接続な信頼性試験回路を、複数の前記配線領域に亘って沿うように設けたことを特徴としている。
【0010】
本発明の第2のプリント配線板は、上記第1のプリント配線板において、当該プリント
配線板が、2層以上の多層板であって前記配線領域内に層間接続用のビアを有しており、前記信頼性試験回路が、前記配線領域に形成されたビアの信頼性を調べるために設けられた、ビアを有するビア信頼性試験回路であることを特徴としている。
【0011】
本発明の第3のプリント配線板は、上記第2のプリント配線板において、前記ビア信頼性試験回路が、前記ビアが前記絶縁性基板の縦横4辺のうちの縦方向の辺または横方向の辺の少なくともいずれか1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って列設され、かつ全ての前記ビアを繋いで電気的に1本の連続した回路を成すように前記ビアに接続された接続パターンを有することを特徴としている。
【0012】
本発明の第4のプリント配線板は、上記第1ないし3のうちいずれかに記載のプリント
配線板において、前記信頼性試験回路が、前記配線領域に形成された配線パターンの信頼性を調べるために設けられた、パターンを有する配線信頼性試験回路であることを特徴としている。
【0013】
本発明の第5のプリント配線板は、上記第4のプリント配線板において、前記配線信頼性試験回路が、少なくとも2つの互いに近接しかつ非接続なパターンを有するものであることを特徴としている。
【0014】
本発明の第6のプリント配線板は、上記第2ないし5のうちいずれかに記載のプリント配線板において、当該プリント配線板が、フィルム状の絶縁性基板に導体箔をパターニングしてなる配線領域を有するTABテープであり、前記ビア信頼性試験回路が、前記TABテープの長手方向の少なくとも1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って設けられたものであることを特徴としている。
【0015】
本発明の第7のプリント配線板は、上記第6のプリント配線板において、前記TABテープは、長手方向の少なくとも1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って設けられた給電リードを有しており、前記ビア信頼性試験回路が、前記給電リードに沿って当該給電リードとは非接続に設けられていることを特徴としている。
【0016】
本発明の第8のプリント配線板は、上記第6または7のプリント配線板において、前記TABテープは、長手方向の2辺にそれぞれ沿って当該各辺の略全長に亘り各々設けられ
た給電リードを有しており、前記配線信頼性試験回路が、2つの互いに近接しかつ非接続なパターンを有するものであり、かつ当該2つのパターンのうち一方が前記給電リードのうちの一方に接続され他方が前記給電リードのうちの他方に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記配線領域の外側の空き領域に、前記配線パターンとは非接続な信頼性試験回路を、複数の前記配線領域に亘って沿うように設けるようにしたので、その信頼性試験回路を用いて、例えばTABテープのような量産品のプリント配線板を個々に、あるいは1ロットごとに、1枚の絶縁性基板上に設けられた複数のプリント配線板を1纏めにして、それを製造する量産ラインの稼働率向上や製造コストの低廉化の妨げとなることなく、簡易に信頼性試験を実施することが可能となる。
【0018】
特に、プリント配線板が長尺のTABテープである場合、本発明によれば、個々のTABテープごとにその長手方向に連続した一繋がりの信頼性試験回路を形成することにより、その個々のTABテープごとでの信頼性試験を簡易に、かつ従来よりもさらに正確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施の形態に係るプリント配線板について、図面を参照して説明する。
図1は本実施の形態に係るプリント配線板であるTABテープを示す平面図、図2はそのTABテープにおける信頼性試験回路の部分を特に拡大して示した平面図、そして図3は図2に示したTABテープにおけるA−A断面図である。また図4は、特にビア信頼性試験回路内のビアまたは配線領域内のビアを中心としたこのTABテープの主要な製造工程を示す図である。
【0020】
このプリント配線板(以下、主にTABテープと呼ぶ)1は、絶縁性基板2と、配線領域3と、給電リード4と、信頼性試験回路5である配線信頼性試験回路5−1およびビア信頼性試験回路5−2とから、その主要部が構成されている。
【0021】
絶縁性基板2は、例えばポリイミドフィルムからなり、1本の条長が100mのように長尺な帯状(極めて細長い矩形状)に連続したもので、その表裏両面に導体箔として銅箔6(6−1、6−2)を貼り合わせ、それらをパターン加工すると共にその表裏の間をビア15によって接続してなる配線パターン16(これらビアおよび配線パターンの具体的な図示については図1〜3では省略)が形成されている。ここで、本実施の形態に係るTABテープ1は2層構造であるため、配線領域3内に層間接続用のビア15が形成されているのである。
【0022】
配線領域3は、このTABテープ1の長手方向に多数配列形成されており、その一つ一つ(これを個々の個体とも呼ぶものとする)は、隣り合うもの同士が互いに間隔を置いて配置されている。その個々の個体の配線領域3内には、上記の配線パターン16およびビア15が、所望のパターン形状および寸法でそれぞれ形成されている。この配線領域3の個体の一つ一つが、このTABテープ1の製品としての完成後または出荷後にチップ実装工程で切り離された状態で、それぞれ半導体チップと接続されて半導体装置の実装パッケージ内に組み込まれることとなる。
【0023】
給電リード4−1、4−2は、このTABテープ1の長手方向の左右両辺にそれぞれ沿って、そのほぼ全長に亘って設けられており、一般的なTABテープの場合と同様に金めっき工程などで必要となる電解めっき用の電流を配線領域3内へと給電するために用いられるものである。
【0024】
信頼性試験回路5は、図2に示したように、配線信頼性試験回路5−1とビア信頼性試験回路5−2との2種類からなるもので、どちらも配線領域3内の配線パターン16およびビア15とは非接続で、かつそれら配線パターン16およびビア15の信頼性試験のために、その配線領域3の外側に設けられたものである。
【0025】
配線信頼性試験回路5−1は、TABテープ1の長手方向に隣り合った配線領域3同士の間の空き領域内に、互いに非接続に入り組んだ櫛型のパターン5−1a、5−1bとして設けられている。その一方のパターン5−1aは、図2において左側の給電リード4−1に接続されており、かつその接続の付け根付近にはテストパッド8aが設けられている。また他方のパターン5−1bは、右側の給電リード4−2に接続されており、かつその接続の付け根付近にはテストパッド8bが設けられている。
【0026】
この配線信頼性試験回路5−1は、個々の配線領域3ごとに各1回路ずつが対応するように、図1では個々の配線領域3の上側の空き領域内ごとに設けられていて、全ての配線信頼性試験回路5−1が等価回路的には給電リード4−1と給電リード4−2との間に並列的に配置されていることとなっている。従って、それら全ての配線信頼性試験回路5−1のうちの1つにでもパターン5−1aと5−1bとの短絡が生じるようなパターン欠陥等が存在している場合には、給電リード4−1と給電リード4−2とに電圧を印加したときに、その短絡を通って電流が流れることとなる。しかしそのような短絡が全く生じていない場合には、電圧を印加しても電流は流れない。
【0027】
この配線信頼性試験回路5−1のパターンのライン/スペースは、配線領域3内の配線パターン16のそれと同様の寸法、あるいはその平均的な寸法に設定することが望ましい。そのように設定することで、個々の配線領域3内の配線パターン16の出来上がりの信頼性(品質)を、この配線信頼性試験回路5−1のパターンによって正確に代表させることができ、延いては配線領域3内の配線パターン16についてのより正確な信頼性試験が実現可能となるからである。
【0028】
ビア信頼性試験回路5−2は、配線領域3内に形成されたビア15の信頼性を調べるために設けられたもので、その主要部は複数のビア7およびそれらの間を接続する接続パターン9からなる。ビア7は、絶縁性基板2の長手方向の1辺(図1、2では右側の1辺)に沿って設けられた給電リード4−2上に沿って、TABテープ1のほぼ全長に亘って多数個が配列形成されている。そして、図3に示したように、それら多数個のビア7を繋いで電気的に1本の回路と成すように、接続パターン9が形成されている。この接続パターン9は、従って、上層(おもて面)の銅箔6−1をパターニングしてなるものと、下層(裏面)の銅箔6−2をパターニングしてなるものとを、ビア7を挟んで交互に設けたものである。このようなビア信頼性試験回路5−2は、TABテープ1のほぼ全長に亘って一繋がりに形成された1本の回路となっている。
【0029】
従って、このビア信頼性試験回路5−2の長手方向(換言すればTABテープ1の長手方向に沿った方向)の一端と他端とに電圧を印加したときに、このビア信頼性試験回路5−2を構成している多数のビア7のうちの一つにでも接続不良や断絶が生じている場合には、電流が流れないこととなる。しかしそのような接続不良や断絶が全く生じていない場合には、このビア信頼性試験回路5−2の導通性に見合った電流が流れる。
【0030】
このビア信頼性試験回路5−2のビアの形状および寸法ならびに厚さ等の各種仕様は、配線領域3内のビアのそれと同様あるいはその平均的な仕様に設定することが望ましい。そのように設定することで、個々の配線領域3内における出来上がりのビアの信頼性(品質)を、このビア信頼性試験回路5−2のビア7によって正確に代表させることができ、
延いてはより正確なビアについての信頼性試験が実現可能となるからである。
【0031】
次に、このTABテープ1の製造工程について、特にビア信頼性試験回路5−2内のビア7および配線領域3内のビア15の部分を中心として説明する。
まず、図4(a)に示したように、例えば12μm程度の厚さの銅箔6−1、6−2を、例えば25μm程度の厚さのポリイミドからなる絶縁性基板2の表裏両面に貼り合わせた配線板基材10を用意する。
【0032】
その配線板基材10に、図4(b)に示したような絶縁性基板2を貫通するレーザビア(孔)11を、レーザ光照射によって穿ち設ける。
続いて、図4(c)に示したように、めっき法により銅めっきを例えば15μm程度の厚さに形成することで、配線領域3内のビア15およびビア信頼性試験回路5−2内のビア7の導体を形成し、そのビア7、15によって表裏両面の銅箔6−1、6−2を導通させる。
【0033】
そして、図4(d)に示したように、例えば15μm程度の厚さのフォトレジスト13をエッチングマスクとして用いて、エッチング法により銅箔6−1、6−2をパターン加工して、ビア7、15および接続パターン9ならびに給電リード4−2ならびに配線パターン16等のパターンを形成する。このパターニング完了後には、図4(e)に示したようにフォトレジスト13を剥離する。
【0034】
続いて、図4(f)に示したように、PSR(フォトソルダーレジスト)17を着膜、パターン加工して、これを実装時のはんだ保護膜とする。このPSRで各配線信頼性試験回路5−1も覆うようにする。
その後、所定の位置に電解金めっき18を施して、このTABテープ1の主要部が完成する。
【0035】
次に、本実施の形態に係るTABテープ1の作用について説明する。
配線領域3の配線パターンの信頼性を試験するためには、配線信頼性試験回路5−1を用いる。すなわち、給電リード4−1と給電リード4−2とに所定の電圧を印加する。このとき、全ての個体ごとに設けられている全ての配線信頼性試験回路5−1のうちの1つにでもパターン5−1aと5−1bとの短絡が生じるようなパターン欠陥等が存在している場合には、その短絡を通って給電リード4−1と給電リード4−2との間に電流が流れる。しかしそのような短絡が全く生じていない場合には電流は流れない。
【0036】
特に、電圧を印加したときに配線信頼性試験回路5−1を通って給電リード4−1と給電リード4−2との間に電流が流れた場合には、まずこの配線信頼性試験回路5−1のうちのどこかに短絡欠陥が発生しているものと判定される。そうすると、配線信頼性試験回路5−1は、配線領域3内の配線パターン16と同様ないしは同一の条件設定で設けられたパターンであって、かつその各配線領域3に対して極めて近接して設けられているのであるから、そのような配線信頼性試験回路5−1に短絡欠陥が発生している場合には、配線領域3内の配線パターン16にも短絡欠陥が発生している可能性が極めて高い。
従って、このように電圧を印加したときに給電リード4−1と給電リード4−2との間に配線信頼性試験回路5−1を通って電流が流れるか否かによって、そのときの試験(検査)対象である1ロットのTABテープ1全体の出来上がりの配線領域3内の配線パターンに欠陥が1つでも生じている可能性が極めて高いか否かを、簡易な操作で迅速に判定することができる。すなわち、TABテープ1の配線パターンに関しての、いわゆる1ロット検査を、従来よりも飛躍的に簡易かつ迅速に(殆ど一瞬にして)高い確度で行うことが可能となる。
【0037】
また、この配線信頼性試験回路5−1を用いて、1本のTABテープ1における個々の個体ごとの配線領域3内の配線パターン16の信頼性を試験することも可能である。
すなわち、パターン5−1aの給電リード4−1に接続される付け根の部分のパス19aを切断すると共にパターン5−1bの給電リード4−2に接続される付け根の部分のパス19bを切断して、パターン5−1aに設けられたテストパッド8aとパターン5−1bに設けられたテストパッド8bとに、例えばはんだボールを介して給電作業をさらに容易なものとしながら電圧を印加する。このとき電流が流れた場合には、その配線信頼性試験回路5−1に短絡欠陥が発生していることが判明する。従ってその配線信頼性試験回路5−1に隣接して設けられている配線領域3内の配線パターン16にも短絡欠陥やその他のパターン欠陥等が発生している可能性が極めて高いものと判定することができる。しかし電流が流れない場合には、その配線信頼性試験回路5−1に短絡欠陥が発生していないことが判明したこととなるので、その配線信頼性試験回路5−1に隣接して設けられている配線領域3内の配線パターン16に短絡欠陥やその他のパターン欠陥等が発生している可能性は極めて低いものと判定することができる。
【0038】
配線領域3内のビア15の信頼性を試験するためには、ビア信頼性試験回路5−2を用いる。すなわち、TABテープ1の長手方向に沿って長尺に伸びたビア信頼性試験回路5−2の一端と他端とに(つまり両端間に)電圧を印加する。このとき、検査対象である1本のTABテープ1内に列設された全ての配線領域3(各個体)の左右両脇に沿って並走するように列設されている全てのビア7および接続パターン9のうちの1つにでも、例えばビア7におけるバレルクラック(全周クラック)のような断絶欠陥(等価回路的には断線欠陥)等が存在している場合には、その断絶欠陥の部分での電気的断線に因って、そのビア信頼性試験回路5−2には電流は流れない。しかしそのような断絶欠陥が全く生じていない場合には電流が流れる。
特に、両端に電圧を印加したときにそのビア信頼性試験回路5−2に電流が流れない場合には、そのビア信頼性試験回路5−2におけるビア7または接続パターン9のどこかに断絶欠陥等が発生しているものと判定される。そうすると、ビア信頼性試験回路5−2は配線領域3内のビア15と同様ないしは同一の条件設定で設けられたものであって、かつ個々のTABテープ1ごとに、そのなかに含まれている各配線領域3に対して極めて近接して設けられているのであるから、そのようなビア信頼性試験回路5−2に断絶欠陥が発生しているということは、配線領域3内のビア15やそれに接続される部分の配線パターン16にも断絶欠陥が発生している可能性が極めて高いということになる。
【0039】
従って、このように電圧を印加したときにビア信頼性試験回路5−2に電流が流れるか否かによって、そのときの試験(検査)対象である1ロットのTABテープ1全体の出来上がりの配線領域3内のビア15に欠陥が1つでも生じている可能性が極めて高いか否かを、簡易な操作で迅速に判定することができる。すなわち、TABテープ1のビアに関しての、いわゆる1ロット検査を、従来よりも飛躍的に簡易かつ迅速に(殆ど一瞬にして)高い確度で行うことが可能となる。
【0040】
また、このビア信頼性試験回路5−2を用いて、1本のTABテープ1における個々の個体ごとの(TABテープ1の幅方向での)ビア15の信頼性の試験を行うようにすることも可能である。すなわち、検査対象とする配線領域3の真横の位置に配置されている一連のビア7および接続パターン9はそのままにしておき、その前後(図1では上下)の配線領域3の真横までに配置されている接続パターン9から、検査対象の配線領域3の真横に位置する一連のビア7および接続パターン9を切り離す。具体的には、その配線領域3同士の境目に存在している接続パターン9を切断する。そしてその切り離された検査対象の一連のビア7および接続パターン9のみに対して、上記の全体的な断絶欠陥検査と同様にその両端に電圧を印加して電流が流れるか否かの試験を行う。そしてその試験の結果、電流が流れなかった場合には、その検査対象の一連のビア7および接続パターン9の真横
に存在している配線領域3内のビア15やそれに接続される配線パターン16に断絶欠陥が発生している可能性が極めて高いものと判定することができる。しかし電流が流れた場合には、そのビア信頼性試験回路5−2には断絶欠陥等が発生していないことが判明したこととなるので、そのビア信頼性試験回路5−2に隣接して設けられている配線領域3内のビア15やそれに接続される部分の配線パターン16に断線欠陥やその他のパターン欠陥等が発生している可能性は極めて低いものと判定することができる。
【0041】
上記のような配線信頼性試験回路5−1およびビア信頼性試験回路5−2は、量産品であるTABテープ1自体に、配線領域3と共にその配線領域3に対して極めて近接して作り込まれるものであるから、従来のような信頼性試験用のためだけに用いられて使用後には破棄せざるを得ないような信頼性試験専用のTABテープを別途作製する必要がなくなるので、このTABテープ1を製造する量産ラインの稼働率向上や製造コストの低廉化の妨げとなることなく簡易かつ迅速・高頻度に信頼性試験を実施することが可能となる。
【0042】
また、その製造時の製造ラインにおけるプロセス条件等が不可避的に揺らいだとしても、その影響を配線領域3とほぼ同時かつ同一の影響度で信頼性試験回路5も受けるので、これら配線信頼性試験回路5−1およびビア信頼性試験回路5−2を用いた信頼性試験の正確さ(あるいは計測工学的な「確からしさ」)を、従来よりもさらに高いものとすることが可能となる。
【0043】
なお、配線信頼性試験回路5−1は、上記のようなTABテープ1の長手方向に隣り合う配線領域3同士の間に配置すること以外にも、あるいはさらにそれに加えて、TABテープ1の長手方向に沿って設けるようにしてもよい。
具体的な例としては、図1、図2を用いて概略を説明すると、給電リード4−1に沿って、その給電リード4−1とは非接続に、TABテープ1の左側の空き領域のほぼ全長に亘って伸びるように配線信頼性試験回路5−1a、5−1bを、上記同様に互いに近接しながらも非接続なパターンとして設ける。そしてその配線信頼性試験回路5−1aのテストパッド8aと配線信頼性試験回路5−1bのテストパッド8bとにプローブを接触させるなどして電圧を印加したときに、この配線信頼性試験回路5−1aと5−1bとの間に電流が流れた場合には、そのときの検査対象であるTABテープ1内の配線パターン16に短絡欠陥等が発生している確率は極めて高いものと判定することかできる。
【0044】
また、ビア信頼性試験回路5−2は、上記のようなTABテープ1の長手方向に沿って配置すること以外にも、あるいはさらにそれに加えて、TABテープ1の長手方向に隣り合う配線領域3同士の間に個々に配置するようにしてもよい。具体的な一例としては、図1、図2を用いて概略を説明すると、図1、図2で配線信頼性試験回路5−1が配置されていた位置に、その配線信頼性試験回路5−1の代りに、あるいはそれと非接続に平行して、個々の配線領域3それぞれの上辺または下辺に沿って(つまりTABテープ1の幅方向に)伸び、かつ給電リード4とは非接続なビア信頼性試験回路5−2を設ける。そしてその長手方向両端に電圧を印加したときに電流が流れなかった場合には、そのビア信頼性試験回路5−2に近接した配線領域3内のビア15やそれに接続される部分付近の配線パターン16に断絶欠陥や断線欠陥が発生している確率が極めて高いものと判定することかできる。
【0045】
また、上記実施の形態では、プリント配線板をTABテープとした場合について説明したが、本発明の適用はTABテープのみには限定されないことは勿論である。この他にも、1枚の絶縁性基板に複数の個体(配線領域)を作製してなるフレキシブル配線板やリジッド配線板などにも本発明は適用可能である。
【0046】
また、信頼性試験を行った後には、そのプリント配線板(あるいはTABテープ)を出
荷する前に、個々の配線領域3を切り離して個々の個体としてもよい。但し、TABテープの場合には、その基本的な使用方法に基づけば、一般に製品として1ロットごとに1ロールのような形態で出荷される場合が多いので、出荷段階では信頼性試験回路5が切り離されないでTABテープ1上に存在している場合が多い。また、そのように出荷段階〜納品段階で信頼性試験回路5を切り離さないでTABテープ1上に残しておくことにより、納品後の受け入れ検査等でも信頼性試験回路5を利用して、簡便に検査(信頼性試験)を実施することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の形態に係るプリント配線板であるTABテープを示す平面図である。
【図2】図1に示したTABテープにおける信頼性試験回路の部分を特に拡大して示した平面図である。
【図3】図2に示したTABテープにおけるA−A断面図である。
【図4】ビア信頼性試験回路内のビアまたは配線領域内のビアを中心とした本実施の形態に係るTABテープの主要な製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 TABテープ
2 絶縁性基板
3 配線領域
4 給電リード
5 信頼性試験回路
7 ビア
8 テストパッド
9 接続パターン
18 パス
19 金めっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの連続した矩形状の絶縁性基板上に、配線パターンを形成してなる配線領域が互いに間隔を置いて複数配置されたプリント配線板であって、
前記配線領域の外側の空き領域に、前記配線パターンとは非接続な信頼性試験回路を、複数の前記配線領域に亘って沿うように設けた
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1記載のプリント配線板において、
当該プリント配線板が、2層以上の多層板であって前記配線領域内に層間接続用のビアを有しており、
前記信頼性試験回路が、前記配線領域に形成されたビアの信頼性を調べるために設けられた、ビアを有するビア信頼性試験回路である
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項2記載のプリント配線板において、
前記ビア信頼性試験回路が、前記ビアが前記絶縁性基板の縦横4辺のうちの縦方向の辺または横方向の辺の少なくともいずれか1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って列設され、かつ全ての前記ビアを繋いで電気的に1本の連続した回路を成すように前記ビアに接続された接続パターンを有する
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のプリント配線板において、
前記信頼性試験回路が、前記配線領域に形成された配線パターンの信頼性を調べるために設けられた、パターンを有する配線信頼性試験回路である
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項4記載のプリント配線板において、
前記配線信頼性試験回路が、少なくとも2つの互いに近接しかつ非接続なパターンを有するものである
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項2ないし5のうちいずれか1項に記載のプリント配線板において、
当該プリント配線板が、フィルム状の絶縁性基板に導体箔をパターニングしてなる配線領域を有するTABテープであり、
前記ビア信頼性試験回路が、前記TABテープの長手方向の少なくとも1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って設けられたものである
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項6記載のプリント配線板において、
前記TABテープは、長手方向の少なくとも1辺に沿って当該1辺の略全長に亘って設けられた給電リードを有しており、
前記ビア信頼性試験回路が、前記給電リードに沿って当該給電リードとは非接続に設けられている
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項8】
請求項6または7記載のプリント配線板において、
前記TABテープは、長手方向の2辺にそれぞれ沿って当該各辺の略全長に亘り各々設けられた給電リードを有しており、
前記配線信頼性試験回路が、2つの互いに近接しかつ非接続なパターンを有するもので
あり、かつ当該2つのパターンのうち一方が前記給電リードのうちの一方に接続され他方が前記給電リードのうちの他方に接続されている
ことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−112885(P2008−112885A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295295(P2006−295295)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】