説明

プリント配線板

【課題】基板の両面にソルダーマスクが被覆されたプリント配線板において、プリント配線板の厚みが小さくても外部接続端子やボンドフィンガーの部分において凹みの発生を防止できるプリント配線板を提供する。
【解決手段】半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、この半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられた基板を有し、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆され、基板の裏面には少なくとも外部接続端子を除いた部分にソルダーマスクが被覆されたプリント配線板であって、基板の表面および裏面のそれぞれのソルダーマスクのDMA法によるガラス転移温度が70℃以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関するものであり、さらに詳しくは、半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられた基板を有し、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆された、メモリカード等に用いられるプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SD(登録商標)メモリカード(Secure Digital Memory Card)等のメモリカードは、小型の携帯可能なデータ保存装置であり、携帯電話、パソコン、デジタルカメラ等の各種の電子機器に用いることができる。
【0003】
このようなメモリカードは、フラッシュメモリ等のICメモリチップのような半導体素子を基板に搭載することによって作製されている。
【0004】
この基板には、プリント配線板が用いられており、このプリント配線板は、半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられている。
【0005】
そしてプリント配線板には一般に、回路保護のためにソルダーマスクが被覆されるが(特許文献1、2参照)、メモリカード等の場合には、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆される。具体的には、基板の裏面には少なくとも外部接続端子を除いた部分に、この部分を開口した形態でソルダーマスクが被覆される。また、ワイヤにより半導体素子と基板とを電気接続する場合には、素子搭載部が設けられた基板の表面にはワイヤボンディング用のボンドフィンガーが設けられ、基板の表面には少なくともボンドフィンガーを除いた部分に、この部分を開口した形態でソルダーマスクが被覆される。
【0006】
従来、メモリカード等に用いられるプリント配線板のソルダーマスクには、ガラス転移温度(Tg、DMA法)が100℃程度のものが一般に用いられている。
【0007】
メモリカードは大きさや厚みが規格化されているが、メモリカードを用いる携帯電話等の電子機器の小型化に伴い、近年ではメモリカードはより小型化、薄型化する傾向にある。
【0008】
そしてこのように小型化、薄型化したメモリカードに用いられるプリント配線板は、近年の容量向上や薄型化の要求に伴い基板の厚みが130μmから100μmまで小さくなり、さらに厚みの小さい基板も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−208812号公報
【特許文献2】特開平06−037428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このように基板の厚みが小さくなると、ソルダーマスクを形成するためのソルダーレジストを基板に塗布、硬化した後、外部接続端子やボンドフィンガーの部分で基板に部分的な凹みが発生するようになった。
【0011】
すなわち、ソルダーマスクには硬化性樹脂が用いられているが、その硬化時に収縮するため基板には応力が発生する。そして外部接続端子やボンドフィンガーの部分では、この部分を開口してソルダーマスクを被覆しているため、これらの部分では、厚み方向において片面のみにソルダーマスクが被覆されることになる。
【0012】
そのため、基板の片面のみにソルダーマスクが被覆されたこれらの部分では、表面と裏面での応力の差により、ソルダーマスクが被覆されていない面側に基板を押し出す力が働き基板を変形させ、基板に凹みが発生する。
【0013】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、基板の両面にソルダーマスクが被覆されたプリント配線板において、プリント配線板の厚みが小さくても外部接続端子やボンドフィンガーの部分において凹みの発生を防止できるプリント配線板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のプリント配線板は、半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、この半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられた基板を有し、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆され、基板の裏面には少なくとも外部接続端子を除いた部分にソルダーマスクが被覆されたプリント配線板であって、基板の表面および裏面のそれぞれのソルダーマスクのDMA法によるガラス転移温度が70℃以下であることを特徴とする。
【0015】
このプリント配線板において、素子搭載部が設けられた基板の表面にワイヤボンディング用のボンドフィンガーが設けられ、基板の表面には少なくともボンドフィンガーを除いた部分にソルダーマスクが被覆されていることが好ましい。
【0016】
このプリント配線板において、基板の絶縁層を構成する樹脂のDMA法によるガラス転移温度が180〜400℃であることが好ましい。
【0017】
このプリント配線板において、基板の曲げ弾性率が20〜40GPaであることが好ましい。
【0018】
このプリント配線板において、基板の表面および裏面に被覆されたソルダーマスクの厚みがそれぞれ10〜40μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の表面および裏面のそれぞれのソルダーマスクのガラス転移温度を70℃以下とすることで、ソルダーマスクを形成するためのソルダーレジストを塗布、硬化した後、硬化時の収縮による基板への応力発生を抑制することができる。そのため、基板の厚み方向において片面にのみソルダーマスクが被覆された外部接続端子やボンドフィンガー等の部分においても、表面と裏面での応力の差による基板の変形が抑制され、基板に部分的な凹みを発生させることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のプリント配線板は、半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられた基板を有し、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆されたものである。
【0022】
この基板は、絶縁樹脂基板の内部や表面に、絶縁層を介して導体回路を設けたものであり、各層の導体回路は、スルーホールやビアホールにより接続されている。例えば、いわゆる両面プリント配線板、多層プリント配線板を用いることができ、より具体的には、例えば、ガラス−エポキシ樹脂やBT樹脂(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)等を絶縁材料として用いたプリント配線板を用いることができる。
【0023】
本発明では、絶縁層を構成する樹脂のDMA法によるガラス転移温度が180〜400℃である基板を用いることが好ましい。また、曲げ弾性率が20〜40GPaの基板を用いることが好ましい。このような基板を用いた場合に、ソルダーマスクのガラス転移温度を70℃以下とすることで、外部接続端子やボンドフィンガーの部分において基板に部分的な凹みを発生させることを特に抑制することができる。また、ガラス転移温度や曲げ弾性率が上記の範囲外であると、プリント配線板に要求される高密度化や信頼性等を確保できなくなる場合がある。
【0024】
基板のガラス転移温度を上記の範囲とすることや、その他の特性を改善する目的で、例えば、ガラス粉末、ガラス繊維、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等の無機充填材を基板に含有させることもできる。
【0025】
この基板の表面および裏面には、ソルダーマスクが被覆される。ソルダーマスクは、導体回路を保護する目的で被覆される絶縁材料であり、耐熱性、電気絶縁性、密着性、耐水溶性、耐薬品性等を考慮した各種のものが知られている。例えば、熱硬化性樹脂を用いた熱硬化型のソルダーレジストや、感光性樹脂を用いた光硬化型のソルダーレジストをソルダーマスクの形成に用いることができる。また、ソルダーレジストとして一般に用いられている液状のソルダーレジストや、あるいは感光性フィルムの形状のドライフィルム型のソルダーレジストをソルダーマスクの形成に用いることができる。
【0026】
液状のソルダーレジストを基板に塗布する方法は、特に限定されないが、例えばスクリーン印刷法を用いることができる。スクリーン印刷法では、所定のマスクパターンを形成したメッシュ状のスクリーンを用いてスクリーン印刷機により基板にソルダーレジストインクを印刷し、これを硬化することにより所定のパターンを有するソルダーマスクを形成する。
【0027】
基板上に塗布されたソルダーレジストは、通常は塗布後に加熱処理することにより硬化を進行させ、耐熱性等を高めている。また、例えばソルダーレジストとして光硬化型のものを用いた場合には、基板に塗布し、乾燥した後、所定のマスクパターンを介して紫外線等の光を露光する。次いで、有機溶剤現像液やアルカリ現像液で現像処理し、未露光部を除去してパターンを作成し、必要に応じて後硬化を行うことによりソルダーマスクを被覆することができる。
【0028】
本発明では、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆される。具体的には、基板の裏面には少なくとも外部接続端子を除いた部分に、この部分を開口した形態でソルダーマスクが被覆される。また、ワイヤにより半導体素子と基板とを電気接続する場合には、基板の表面にはワイヤボンディング用のボンドフィンガーが設けられるが、この場合には基板の表面には少なくともボンドフィンガーを除いた部分に、この部分を開口した形態でソルダーマスクが被覆される。基板の表面には、ボンドフィンガーの形成部分を除く部分にも導体回路が設けられる場合があるが、この部分の導体回路は通常はソルダーマスクで被覆される。
【0029】
基板の裏面には、外部接続端子の形成部分を除く部分にも導体回路が設けられる場合があるが、この部分の導体回路は通常はソルダーマスクで被覆される。
【0030】
本発明では、ソルダーマスクは、DMA法によるガラス転移温度が70℃以下、好ましくは30〜70℃である。ソルダーマスクのガラス転移温度をこの範囲内とすることで、ソルダーマスクを形成するためのソルダーレジストを塗布、硬化した後、硬化時の収縮による基板への応力発生を抑制することができる。そのため、基板の厚み方向において片面にのみソルダーマスクが被覆された外部接続端子やボンドフィンガーの部分においても、表面と裏面での応力の差による基板の変形が抑制され、基板に部分的な凹みを発生させることを抑制することができる。また、ソルダーマスクに要求されるその他の特性も満足することができる。
【0031】
ソルダーマスクの厚みは、10〜40μmの範囲が好ましい。このような厚みとすることで、ソルダーマスクのガラス転移温度を70℃以下とした際に、外部接続端子やボンドフィンガーの部分において基板に部分的な凹みを発生させることを特に抑制することができる。また、ソルダーマスクの厚みが小さ過ぎる場合や、あるいは大き過ぎる場合には、所要の耐熱性、密着性等が得られなくなる場合がある。
【0032】
以上のようにして得られた本発明のプリント配線板には、表面の素子搭載部に半導体素子が搭載される。例えば、電極パッドを備えた半導体素子を、電極パッドを有する面を上に向けて、基板の素子搭載部にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を主成分とするダイアタッチフィルム等の接着層を介して接着する。そして半導体素子の電極パッドと基板の表面のボンドフィンガーとをワイヤでボンディングする。
【0033】
半導体素子が搭載された基板の表面には、例えば、エポキシ樹脂等の封止樹脂をモールド成形するようにし、半導体素子やワイヤ等とともに封止樹脂で一体に封止するようにしてもよい。また、メモリカード等の場合には、その外形を形成するケース本体に収納するようにしてもよい。
【0034】
このようにして、プリント配線板に半導体素子が搭載された半導体装置を得ることができる。
【0035】
なお、本発明では、半導体素子として、メモリ素子やコントローラ素子等の各種の素子を用いることができ、また、複数の半導体素子を積層して搭載する態様であってもよい。また、半導体素子としてベアチップ等を用いることもできる。そして半導体素子の他に、チップ状コンデンサ、チップ状インダクタ等のチップ状の電気部品を同時に搭載することもできる。
【0036】
本発明のプリント配線板は、例えば、フラッシュメモリカード等のメモリカードに好ましく適用できるが、これに限定されるものではなく、各種の半導体装置に適用できる。
【0037】
本発明のプリント配線板は、外部接続端子やボンドフィンガーの部分において基板の変形を有効に抑制できる点から、例えば、プリント配線板の基板(ソルダーマスクを除く)の厚みが40〜130μmの範囲のものに適している。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
両面銅張積層板(パナソニック電工(株)製「R−1766T」(厚み60μm、樹脂材料のTg170℃(DMA法)、曲げ弾性率23GPa)、および「R−1515B」(厚み60μm、樹脂材料のTg205℃(DMA法)、曲げ弾性率27GPa))の両面に回路を形成し、スルーホールにより層間を接続して、半導体素子が搭載される素子搭載部と、ボンドフィンガーを含む導体回路が表面に設けられ、半導体素子と電気的に接続される外部接続端子を含む導体回路が裏面に設けられた基板を作製した。なお、外部接続端子はSDHC規格に準じて作製した。
【0040】
この基板の両面の導体回路層を含む領域に、スクリーン印刷でソルダーレジストを塗布、硬化し、厚み20μmのソルダーマスクを被覆した。
【0041】
このとき、裏面には外部接続端子を除いた部分にソルダーマスクを被覆し、表面にはボンドフィンガーを除いた部分にソルダーマスクを被覆した。
【0042】
ソルダーマスク用のソルダーレジストとして、実施例1、2では太陽インキ製造(株)製「LDI−Comatible」(Tg 60℃)を、比較例1、2では太陽インキ製造(株)製「AUS320」(Tg 115℃)を用いた。なお、ここでガラス転移温度(Tg)は、IPC TM‐650に準拠して昇温速度5℃/分、引張りモードの条件でDMA法により測定した。
[基板の凹みの評価]
ソルダーレジスト硬化後の基板の凹みについて、アクロメトリックス社製シャドーモアレにより、サブストレートの状態で測定し、外部接続端子部分の凹み量をN=10で測定し、平均値を求めて評価を行った。
【0043】
評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1より、ガラス転移温度が70℃以下のソルダーマスクを用いた実施例1、2では、外部接続端子部分の凹み量は非常に小さいものであった。
【0046】
これに対して、ガラス転移温度が70℃を超えるソルダーマスクを用いた比較例1、2では、外部接続端子部分において大きな凹みが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載される素子搭載部が表面に設けられ、この半導体素子と電気的に接続される外部接続端子が裏面に設けられた基板を有し、基板の表面および裏面のそれぞれにソルダーマスクが被覆され、基板の裏面には少なくとも外部接続端子を除いた部分にソルダーマスクが被覆されたプリント配線板であって、基板の表面および裏面のそれぞれのソルダーマスクのDMA法によるガラス転移温度が70℃以下であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
素子搭載部が設けられた基板の表面にワイヤボンディング用のボンドフィンガーが設けられ、基板の表面には少なくともボンドフィンガーを除いた部分にソルダーマスクが被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
基板の絶縁層を構成する樹脂のDMA法によるガラス転移温度が180〜400℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
基板の曲げ弾性率が20〜40GPaであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
基板の表面および裏面に被覆されたソルダーマスクの厚みがそれぞれ10〜40μmであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載のプリント配線板。