説明

プレキャストコンクリート部材の建て込み方法及びプレキャストコンクリート柱梁架構

【課題】 プレキャストコンクリート部材の建て込みに要する手間を削減する。
【解決手段】 第1及び前記第2のプレキャストコンクリート部材1−1〜1−5、2−0〜2−6を、本来の建て込み位置からずらした状態で、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材の何れか一方のプレキャストコンクリート部材1−1〜1−5から突出する鉄筋7の先端を、他方のプレキャストコンクリート部材2−0〜2−6に埋設された継手部材8に挿入し、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材1−1〜1−5を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、鉄筋7を継手部材8に挿入していくことにより、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材1−1〜1−5、2−0〜2−6を本来の建て込み位置に建て込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の建て込み方法及びプレキャストコンクリート柱梁架構に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート部材の建て込み方法の一例として、図9(h)に示すように、複数本のプレキャストコンクリート柱(PC柱1−1〜1−6)を複数箇所(6箇所)に建て込み、これらPC柱1−1〜1−6間、にそれぞれプレキャストコンクリート梁(PC梁2−1〜2−7)を建て込んだプレキャストコンクリート柱梁架構(PC柱梁架構)がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような構成のPC柱梁架構は、例えば、図9(a)に示すように、図中左上のPC柱1−1の上部に仕口部3−1を配置し、この仕口部3−1の図中右方に、PC梁2−1、仕口部3−2、PC梁2−2、及び仕口部3−3をそれらの順に配置し、それらの部材を図中左方に水平移動させて、各仕口部3−1〜3−3の梁主筋継手(図示せず)内に各PC梁2−1〜2−2の梁主筋を挿入することにより、各仕口部3−1〜3−3と各PC梁2−1〜2−2とを接続する。
【0004】
また、この際に、各仕口部3−1〜3−3の貫通孔(図示せず)内に上方から中継筋(図示せず)を挿入し、この中継筋を各PC柱1−1〜1−3の柱主筋継手(図示せず)内に挿入することにより、各仕口部3−1〜3−3を各PC柱1−1〜1−3に接続する。
【0005】
次に、図9(b)に示すように、各PC柱1−1〜1−3上に設けられた3つの仕口部3−1〜3−3の図中下方にそれぞれPC梁2−3〜2−5を配置し、これらのPC梁2−3〜2−5を図中上方に水平移動させ、各PC梁2−3〜2−5の梁主筋を各仕口部3−1〜3−3の梁主筋継手内に挿入することにより、各仕口部3−1〜3−3に各PC梁2−3〜2−5を接続する。
【0006】
次に、図9(b)に示すように、PC梁2−3及びPC梁2−4の図中下方にそれぞれ仕口部3−4、3−5を配置し、各仕口部3−4、3−5を図中上方に水平移動させ、各仕口部3−4、3−5の梁主筋継手内に各PC梁2−3、2−4の梁主筋を挿入することにより、各PC梁2−3、2−4に各仕口部3−4、3−5を接続する。
【0007】
次に、図9(c)及び図9(d)に示すように、仕口部3−4と仕口部3−5との間に、両端部に梁主筋継手が埋設されたPC梁2−6を上方から落とし込み、図中左側の仕口部3−4の貫通孔内に左方から定着具を備えた中継筋(図示せず)を挿入し、この中継筋をPC梁2−6の梁主筋継手内に挿入することにより、PC梁2−6を仕口部3−4に接続する。
【0008】
次に、図9(e)に示すように、仕口部3−5の図中右方にPC梁2−7を配置し、このPC梁2−7を図中左方へ水平移動させ、このPC梁2−7の梁主筋を仕口部3−5の梁主筋継手内に挿入することにより、仕口部3−5にPC梁2−7を接続する。
【0009】
そして、最後に、図9(f)〜図9(h)に示すように、PC梁2−5とPC梁2−7との間に仕口部3−6を配置し、図中右方から仕口部3−6の貫通孔内に定着具を備えた中継筋(図示せず)を挿入し、この中継筋をPC梁2−7の梁主筋継手内に挿入し、図中下方から仕口部3−6の貫通孔内に定着具を備えた中継筋(図示せず)を挿入し、この中継筋をPC梁2−5の梁主筋継手内に挿入することにより、仕口部3−6とPC梁2−7及びPC梁2−5とを接続する。
【0010】
このようにして、既に建て込んである複数本のPC柱1−1〜1−6の隣接するPC柱間1−1〜1−2、……、1−5〜1−6にそれぞれPC梁2−1〜2−7を建て込むことができ、格子状のPC柱梁架構1を構築することができる。
【0011】
ところで、上記のような構成のPC柱梁架構1にあっては、最後のコーナー部において、PC梁2−5及びPC梁2−7と仕口部3−6とを相互に接続する際に、仕口部3−6の貫通孔内に定着具を備えた中継筋を二方向(図中左右、上下方向)から挿入し、その中継筋をPC梁2−5及びPC梁2−7の梁主筋継手内に挿入する作業が必要になる。
【0012】
このため、重量物である仕口部3−6を、中継筋のPC梁2−5及びPC梁2−7の梁主筋継手内への挿入が完了するまで、仕口部3−6の貫通孔とPC梁2−5及びPC梁2−7の梁主筋継手とを合わせた状態に支持し続けなければならず、非常に手間のかかる作業となる。
【0013】
また、仕口部3−6の貫通孔内に定着具を備えた中継筋を二方向(図中左右、上下方向)から挿入した後に、その外側にコンクリートを打設して仕口部3−6と一体化しなければならず、その作業に非常に手間がかかる。
【0014】
さらに、仕口部3−6、PC梁2−5、又はPC梁2−7梁の何れかを、施工上の問題から現場打ち工法によって製作することもあり、そのような場合には、型枠の設置、配筋、コンクリートの打設、型枠の撤去等の作業が必要になり、その作業に非常に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−22494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、建て込みに要する手間を大幅に削減することができるプレキャストコンクリート部材の建て込み方法及びプレキャストコンクリート柱梁架構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、プレキャストコンクリート柱梁架構において、第1のプレキャストコンクリート部材に対して第2のプレキャストコンクリート部材を、一方のプレキャストコンクリート部材から突出する鉄筋を他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された継手部材に挿入するプレキャストコンクリート部材の建て込み方法であって、前記第1及び前記第2のプレキャストコンクリート部材を、本来の建て込み位置からずらした状態で、前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材の何れか一方のプレキャストコンクリート部材から突出する前記鉄筋の先端を、他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された前記継手部材に挿入し、前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、前記鉄筋を前記継手部材に挿入していくことにより、前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込むことを特徴とする。
【0018】
本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法によれば、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本来の建て込み位置からずらした状態とし、この状態で、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材の何れか一方のプレキャストコンクリート部材から突出する鉄筋の先端を、他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された継手部材に挿入する。そして、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、鉄筋を継手部材に挿入していき、鉄筋を継手部材に完全に挿入することにより、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込むことができる。
【0019】
また、本発明において、複数建て込まれる第1プレキャストコンクリート部材のうち、最後に建て込まれるものの一つ手前のものを、本来の建て込み位置からずらしたこととしてもよい。
【0020】
本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法によれば、複数建て込まれる第1プレキャストコンクリートのうち、最後に建て込まれるものの一つ手前のものを本来の建て込み位置からずらした状態とする。そして、この状態で、第1プレキャストコンクリート部材又は第2プレキャストコンクリート部材の何れか一方の部材から突出する鉄筋の先端を、何れか他方の部材に埋設された継手部材に挿入する。そして、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、鉄筋を継手部材に挿入していき、鉄筋を継手部材に完全に挿入することにより、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込むことができる。
【0021】
さらに、本発明において、請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法であって、前記第1のプレキャストコンクリート部材は、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁であり、前記第2のプレキャストコンクリート部材は、梁、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁であることとしてもよい。
【0022】
本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法によれば、第1のプレキャストコンクリート部材を、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁とし、第2のプレキャストコンクリート部材を、梁、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁とし、これらを任意に組み合わせたプレキャストコンクリート柱梁架構に適用することができる。
但し、柱梁架構を構成することができない組み合せ(例えば、第1プレキャストコンクリート部材が仕口部を含む柱、第2プレキャストコンクリート部材が仕口部を含む柱の組み合わせ)には適用することはできない
【0023】
さらに、本発明のプレキャストコンクリート柱梁架構は、請求項1〜3の何れか1項に記載のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法により構築されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように、本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法及びプレキャストコンクリート柱梁架構によれば、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本来の建て込み位置からずらした状態とし、この状態で、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材の何れか一方のプレキャストコンクリート部材から突出する鉄筋の先端を、他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された継手部材に挿入する。そして、第1、及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、鉄筋を継手部材に挿入していき、鉄筋を継手部材に完全に挿入することにより、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込むことができる。従って、現場打ち工法によって建て込む必要がないので、型枠の設置、コンクリートの打設、型枠の撤去等の工事が不要となり、プレキャストコンクリート部材の建て込みに要する手間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるプレキャストコンクリート部材の建て込み方法の一実施の形態を示した説明図であって、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置から上方にずらした状態(傾けた状態)に配置した説明図である。
【図2】第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込んだ状態を示した説明図である。
【図3】図1及び図2の平面図である。
【図4】図1〜図3の梁主筋と梁主筋継手との関係を示した説明図である。
【図5】梁主筋継手内への梁主筋の挿入初期の状態を示した説明図である。
【図6】本発明によるプレキャストコンクリート部材の建て込み方法の変形例を示した説明図である。
【図7】本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法が適用される第1のプレキャストコンクリート部材の具体例を示した説明図である。
【図8】本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法が適用される第2のプレキャストコンクリート部材の具体例を示した説明図である。
【図9】従来のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1〜図5には、本発明によるプレキャストコンクリート部材の建て込み方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法は、図1〜図3に示すように、複数のプレキャストコンクリート柱(PC柱1−1〜1−4)間にプレキャストコンクリート梁(PC梁2−2〜2−3)を建て込むのに有効なものである。
【0027】
本実施の形態では、例えば、PC柱として、上端から柱主筋5が突出し、下端部に鉛直方向を向く柱主筋継手6が埋設された柱本体1aと、柱本体1aの上端部に水平に、かつ両端が柱本体1aから外方に突出した状態で一体に設けられるPC梁2−1とからなり、PC梁2−1の両端部から梁主筋7が突出したタイプのPC柱1−1と、上端から柱主筋5が突出し、下端部に鉛直方向を向く柱主筋継手6が埋設された柱本体1aと、柱本体1aの上端部に水平に、かつ、両端が柱本体1aから外方に突出した状態で一体に設けられる仕口部1bとからなり、仕口部1bの両端部に水平方向を向く梁主筋継手8が埋設されたタイプのPC柱1−2、1−3と、上端から柱主筋5が突出し、下端部に鉛直方向を向く柱主筋継手6が埋設された柱本体1aと、柱本体1aの上端部に水平に、かつ、一端部が柱本体1aから外方に突出した状態で一体に設けられる仕口部1bとからなり、仕口1b部の端部に水平方向を向く梁主筋継手8が埋設されたタイプのPC柱1−4とを用いる。なお、PC柱1−1の柱本体1aの下端からPC梁2−1までの高さ、PC柱1−2〜1−4の柱本体1aの下端から仕口部1bまでの高さは同じに設定されている。
【0028】
また、PC梁として、両端から梁主筋7が突出したH1タイプのPC梁2−2と、両端から梁主筋7が突出し、かつ、PC梁2−2よりも全長が短いH2タイプのPC梁2−3とを用いる。
【0029】
そして、図1〜図3に示すように、第1のプレキャスト部材としてのPC柱1−1〜1−4を、既に建て込まれている下階のPC柱(上端から柱主筋5が突出したタイプのPC柱1−01〜1−04)の上部に落とし込み、各PC柱1−1〜1−4の下端部の柱主筋継手6内に、各PC柱1−01〜1−04の上端の柱梁主筋5を挿入し、各PC柱1−01〜1−04の上部にそれぞれ各PC柱1−1〜1−4を接続する。
【0030】
この場合、図1に示すように、PC柱1−1は、柱主筋継手6内にPC柱1−01の柱梁主筋5が完全に挿入された状態とし、PC柱1−2、PC柱1−3、及びPC柱1−4は、PC柱1−02、PC柱1−03、及びPC柱1−04から上方に所定の距離a〜c浮いた状態とし、かつ、PC柱1−02、PC柱1−03、及びPC柱1−04の順に、柱主筋継手6内への柱主筋5の挿入量が深くなるように調整する。つまり、本来の建て込み位置よりも鉛直方向上方にPC柱1−2、PC柱1−3、及びPC柱1−4の仕口部1bが、それらの順に位置するように、それらのPC柱1−2〜1−4を配置する。なお、PC柱1−2、PC柱1−3、及びPC柱1−4の仕口部1bを多少斜め上方に配置してもよい。
【0031】
そして、PC柱1−2とPC柱1−3との間に、第2のプレキャストコンクリート部材としての両端から梁主筋7が突出したタイプのH1タイプのPC梁2−2を配置し、PC柱1−3とPC柱1−4との間に、第2のプレキャストコンクリート部材としての両端から梁主筋7が突出し、かつPC梁2−2よりも全長が短いH2タイプのPC梁2−3を配置する。
【0032】
この場合、PC梁2−2及びPC梁2−3は、本来の建て込み位置に対して鉛直方向上方にずれた状態(所定の角度傾斜した状態)となるように配置する。つまり、図5に示すように、PC柱1−2の仕口部1bの梁主筋継手8の軸線、及びPC梁1−3の仕口部1bの梁主筋継手8の軸線に対して、PC梁2−2の梁主筋7の軸線が所定の角度傾き、PC柱1−3の梁主筋継手8、及びPC梁1−4の梁主筋継手8の軸線に対して、PC梁2−3の梁主筋7が所定の角度傾くように、PC梁1−2とPC梁1−3との間、及びPC梁1−3とPC梁1−4との間に、PC梁2−2及びPC梁2−3を配置する。なお、PC梁2−2及びPC梁2−3は、多少斜め上方にずらした状態に配置してもよい。
【0033】
また、PC柱1−2の仕口部1bの左端の梁主筋継手8の入口に、PC柱1−1のPC梁2−1の右端の梁主筋7の先端が僅かにかかり、PC柱1−2の仕口部1bの右端の梁主筋継手8の入口に、PC梁2−2の左端の梁主筋7の先端が僅かにかかり、PC梁1−3の仕口部1bの左端の梁主筋継手8の入口にPC梁2−2の右端の梁主筋7の先端が僅かにかかり、PC梁1−3の仕口部1bの右端の梁主筋継手8にPC梁2−3の左端の梁主筋8の先端が僅かにかかり、PC柱1−4の仕口部1bの左端の梁主筋継手8にPC梁2−3の右端の梁主筋7の先端が僅かにかかるように、PC柱1−2、1−3、1−4の高さ、及びPC梁2−2、2−3の角度を調整する。
【0034】
そして、この状態で、PC柱1−2、PC柱1−3、及びPC柱1−4を、下方に向けて(本来の建て込み位置に向けて)に徐々に落とし込むことにより、梁主筋継手8と梁主筋7との間のクリアランスa(図4参照)を利用して、PC梁2−2の両端の梁主筋7がPC柱1−2の仕口部1bの右端の梁主筋継手8内、及びPC柱1−3の仕口部1bの左端の梁主筋継手8内に徐々に挿入され、PC梁2−3の両端の梁主筋7がPC柱1−3の仕口部1bの右端の梁主筋継手8内、及びPC柱1−4の仕口部1bの左端の梁主筋継手8内に徐々に挿入されていく。この場合、必要に応じてPC梁2−3及びPC梁2−4をPC柱1−2〜1−4の仕口部1bの方向にスライドさせる。
【0035】
そして、PC柱1−2を本来の建て込み位置のPC柱1−02の上部に落とし込み、PC柱1−3を本来の建て込み位置のPC柱1−03の上部に落とし込み、PC柱1−4を本来の建て込み位置のPC柱1−04の上部に落とし込むことにより、図2に示すように、PC柱1−2の仕口部1bの両端の梁主筋継手8内に、PC柱1−1のPC梁2−1の右端の梁主筋7及びPC梁2−2の左端の梁主筋7が完全に挿入され、PC柱1−3の仕口部1bの両端の梁主筋継手8内に、PC梁2−2の右端の梁主筋7、及びPC梁2−3の左端の梁主筋7が完全に挿入され、PC柱1−4の仕口部1bの左端の梁主筋継手8内にPC梁2−3の右端の梁主筋7が完全に挿入され、PC梁2−2及びPC梁2−3が本来の建て込み位置に建て込まれる。
【0036】
そして、PC梁2−2及びPC梁2−3を本来の建て込み位置に建て込んだ後に、PC柱1−1のPC梁2−1とPC柱1−2の仕口部1bとの接続部、PC柱1−2の仕口部1bとPC梁2−2との接続部、PC梁2−2とPC柱1−3の仕口部1bとの接続部、PC柱1−3の仕口部1bとPC梁2−3との接続部、PC梁2−3とPC柱1−4の仕口部1bとの接続部にそれぞれグラウトを注入することにより、それらを一体化することができる。
【0037】
なお、最後のPC柱1−4にPC梁2−3を接続する場合に、図示はしないが、PC柱1−4として、上端部に柱主筋継手が埋設されたタイプのものを用いるとともに、PC梁2−3として、一端に仕口部が設けられ、仕口部に鉛直方向を向く貫通孔が設けられたタイプのものを用い、このPC梁2−3の仕口部をPC柱1−4の上部に載置させ、PC梁2−3の仕口部の貫通孔内に上方から中継筋を挿通させ、この中継筋をPC柱1−4の上端部の柱主筋継手内に挿入させことにより、PC柱1−4とPC梁2−3とを接続するように構成してもよい。
【0038】
上記のように構成した本実施の形態のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法にあっては、隣接するPC柱1−2〜1−3、1−3〜1−4間にPC梁2−2、2−3を建て込む場合に、PC柱1−2〜1−4を本来の建て込み位置から鉛直方向上方に浮かした状態とするとともに、PC柱1−2〜1−3間、及びPC柱1−3〜1−4間に、PC梁2−2、及びPC梁2−3を本来の建て込み位置に対して鉛直方向上方に所定の角度傾けた状態で配置し、PC梁2−2、及びPC梁2−3の両端の梁主筋7の先端をPC柱1−1〜1−4側の梁主筋継手8の入口に僅かに挿入し、この状態で、各PC柱1−2〜1−4を本来の建て込み位置の方向に落とし込むことにより、PC梁2−2、及びPC梁2−3を本来の建て込み位置に建て込むことができる。
【0039】
従って、従来のように、重量物である仕口部を、中継筋の2つのPC梁の梁主筋継手内への挿入が完了するまで、仕口部の貫通孔と2つのPC梁の梁主筋継手とを合わせた状態に支持し続けるような煩雑な作業が不要となり、仕口部の接合に要する手間を大幅に削減することができる。
【0040】
また、現場打ち工法により、PC柱1−1のPC梁2−1とPC柱1−2の仕口部1bとの間、PC柱1−2の仕口部1bとPC柱1−3の仕口部1bとの間、PC柱1−3の仕口部1bとPC柱1−4の仕口部1bとの間を接合する必要がないので、型枠工事、コンクリート打設工事等が不要となり、仕口部の接合に要する手間を大幅に削減することができる。
【0041】
なお、前記の説明においては、PC柱1−2の仕口部1bの両端、PC柱1−3の仕口部1bの両端、PC柱1−3の仕口部1bの左端にそれぞれ梁主筋継手8を設け、PC梁2−2、2−3の両端から梁主筋7を突出させたが、PC柱1−2の仕口部1bの両端、PC柱1−3の仕口部1bの両端、PC柱1−3の仕口部1bの左端からそれぞれ梁主筋を突出させ、PC梁2−2、2−3の両端にそれぞれ梁主筋継手を設け、PC柱1−2、PC柱1−3の仕口部1bの梁主筋を、PC梁2−2、2−3の梁主筋継手内に挿入するように構成してもよい。
【0042】
また、上記の場合、PC梁2−1、2−2、2−3のスパンを長くする程、PC梁2−2、2−3のPC柱1−2〜1−3の仕口部1bの方向へのスライド量を小さくすることができる。
【0043】
さらに、前記の説明においては、本発明をPC梁2−1、2−2、2−3が一直線上に配置される場合に適用したが、図6に示すように、PC柱1−4に対して、PC梁2−3と異なる方向からPC梁2−6を接合する場合に本発明を適用してもよい。この場合、PC梁2−3の梁主筋7をPC柱1−4の仕口部1bの梁主筋継手8に挿入するのと同時に、PC梁2−6の梁主筋7をPC柱1−4の仕口部1bの梁主筋継手8に挿入するようにすればよい。
【0044】
さらに、上記の場合、PC梁1−01〜1−04は、プレキャストコンクリート造に限らず、現場打ち工法によって製造されたコンクリート柱であってもよい。また、1階のスラブ床の場合には、スラブ床と一体に製造されたコンクリート柱であってもよい。
【0045】
なお、本発明のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法は、前記各実施の形態において説明したように、第1のプレキャストコンクリート部材に対して、第2のプレキャストコンクリート部材を建て込む場合に、一方の部材又は他方の部材から鉄筋を突出させ、他方の部材又は一方の部材に継手部材を埋設し、一方の部材又は他方の部材の鉄筋を、他方の部材又は一方の部材の継手部材に挿入すればよい。
【0046】
また、第1のプレキャストコンクリート部材に対して、第2のプレキャストコンクリート部材を建て込む場合に、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を鉛直方向上方にずらした状態に配置し、その位置から本来の建て込み位置に向けて移動させたが、第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を斜め上方にずらした状態に配置し、その位置から本来の建て込み位置に向けて移動させてもよい。
【0047】
さらに、図7及び図8に示すように、第1のプレキャストコンクリート部材を、仕口部10、仕口部を含む梁12、仕口部を含む柱13、又は仕口部を含む柱梁14とし、第2のプレキャストコンクリート部材を、仕口部20、中間梁21、仕口部を含む梁22、仕口部を含む柱23、又は仕口部を含む柱梁24とし、それらを任意に組み合せることによって構築されるプレキャストコンクリート柱梁架構に本発明を適用してもよい。
但し、柱梁架構を構成することができない組み合せ(例えば、第1プレキャストコンクリート部材が仕口部を含む柱13、第2プレキャストコンクリート部材が仕口部を含む柱23等の組み合わせ)には適用することはできない
【0048】
さらに、前記実施の形態の各PC梁の仕口部は、仕口部とPC柱とが一体に形成されていてもよいし、仕口部とPC梁とが一体に形成されていてもよいし、仕口部だけであってもよい。
【0049】
さらに、前記各実施の形態においては、本発明をPC梁の仕口部への建て込みに適用したが、PC柱の仕口部への建て込みに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 PC柱梁架構
1−01〜1−04 PC柱
1−1〜1−5、 PC柱
1a 柱本体
1b 仕口部
2−0〜2−6 PC梁
5 柱主筋
6 柱主筋継手
7 梁主筋
8 梁主筋継手
10、20 仕口部
12、22 仕口部を含む梁
13、23 仕口部を含む柱
14、24 仕口部を含む柱梁
21 中間梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート柱梁架構において、第1のプレキャストコンクリート部材に対して第2のプレキャストコンクリート部材を、一方のプレキャストコンクリート部材から突出する鉄筋を他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された継手部材に挿入するプレキャストコンクリート部材の建て込み方法であって、
前記第1及び前記第2のプレキャストコンクリート部材を、本来の建て込み位置からずらした状態で、前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材の何れか一方のプレキャストコンクリート部材から突出する前記鉄筋の先端を、他方のプレキャストコンクリート部材に埋設された前記継手部材に挿入し、
前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を、本体の建て込み位置に向けて移動させながら、前記鉄筋を前記継手部材に挿入していくことにより、前記第1及び第2のプレキャストコンクリート部材を本来の建て込み位置に建て込むことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の建て込み方法。
【請求項2】
複数建て込まれる第1プレキャストコンクリート部材のうち、最後に建て込まれるものの一つ手前のものを、本来の建て込み位置からずらしたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法であって、
前記第1のプレキャストコンクリート部材は、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁であり、前記第2のプレキャストコンクリート部材は、梁、仕口部、仕口部を含む梁、仕口部を含む柱、又は仕口部を含む柱梁であることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の建て込み方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のプレキャストコンクリート部材の建て込み方法により構築されることを特徴とするプレキャストコンクリート柱梁架構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−220041(P2011−220041A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92451(P2010−92451)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】