説明

プレストレス導入装置およびそのアンカー構造

【課題】小口径対応型のプレストレス導入装置およびそのアンカー構造を提供すること。
【解決手段】中空PC鋼棒内に反力PC鋼材を配置すると共に中空PC鋼棒の前端部にアンカー部材を備えたプレストレス導入装置において、前記アンカー部材は、前記中空PC鋼棒6よりもその軸方向前部側において突起4が位置するように設けられた突起付きアンカー部材2が用いられ、その突起付きアンカー部材2の後端部の雄ねじ軸部3が、前記中空PC鋼棒6の前端部の雌ねじ孔1にねじ込まれている小口径削孔対応型のプレストレス導入装置。プレストレス導入装置の突起付きアンカー部材2を無収縮モルタルまたはコンクリートに埋め込むように固定するプレストレス導入装置のアンカー構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築で多く使われているPC鋼材を備えたプレストレス力導入装置に関し、特に、小口径削孔対応型のプレストレス導入装置およびそのアンカー構造に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、中空PC鋼棒6内に、中実の反力PC鋼棒7を配置し、その反力PC鋼棒7を前記中空PC鋼棒6に緊張力を付与するための反力体とし、コンクリートにプレストレスを導入するための中空PC鋼棒を備えたプレストレス導入装置8aのアンカー構造は、(1)図5(a)(b)に示すように、中空PC鋼棒6の前端部の雄ねじ部20にねじ込まれたアンカー材32と雄ねじ部材41からなるエンドホルダーと中空PC鋼棒6前端部の雄ねじ部20で定着させる場合と、図6に示すように、中空PC鋼棒6の前端部の雄ねじ部20だけで定着させる方法とがあった(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
図5(a)(b)に示すプレストレス導入装置8の構造について簡単に説明すると、鋼製中空PC鋼棒本体6aの長手方向の一端部(前端部)外側に雄ねじ部20を有すると共に、他端部(後端部)外側に雄ねじ部21を有する中空PC鋼棒6における前記雄ねじ部21に、前後両端部に雌ねじ孔22、23を有すると共に多角形の回動工具係合用外面24を有する支承筒25における前端部の雌ねじ孔22が螺合連結されている。
【0004】
前記支承筒25の後端部の雌ねじ孔23に、鋼製筒状の環状係止片からなるストッパ26の前部雄ねじ部27が螺合され、前記ストッパ26の後端部外側には、回動工具係合用外面28が形成されている。
【0005】
前記ストッパ26の前端部は、前記支承筒25の内部に配置され、前端部に凹部29を有する押圧係止片30の後端面が係合され、前記押圧係止片30の前端部の凹部29には、中空PC鋼棒6内に他端側を除くほぼ全体が挿入され、かつ他端側が前記中空PC鋼棒6の他端部から突出するように配置された押込み用反力PC鋼棒(ノンプル用反力PC鋼棒)7の後端部が嵌合されている。なお、前記のノンプルとは、引き抜かない方式で、換言すると据え置き方式の意味である。
【0006】
前記中空PC鋼棒6の前端部外側の雄ねじ部20に、雌ねじ部31を有するナットからなるアンカー材32が着脱自在に螺合固定され、前記押込み用反力PC鋼棒7の先端部は前記雌ねじ部31に連結されている。前記アンカー材32には雄ねじ部材41が螺合固定され、前記雄ねじ部材41により反力PC鋼棒7の先端部が支承されている。
【0007】
図5に示す現在使用されているプレストレス導入装置8aは、標準タイプで、20T(中空PC鋼棒の外径29mm)、30T(中空PC鋼棒の外径32mm)、40T(中空PC鋼棒の外径40mm)、60T(中空PC鋼棒の外径43mm)で、アンカー材32の外径は、それぞれ、62.4mm、67mm、86.5mm,あるいは92.3mmの組み合わせなどがあり、また、図7に示す中空PC鋼棒6の前端部を内雌ねじとする内ねじタイプでは、20S(雄ねじ部材41のねじがM24相当で、その長さ25mm)、40S(雄ねじ部材41のねじがM35相当で、その長さ35mm)が使われ、雄ねじ部20にアンカーナット(支圧部材)42を装着して使用されている。このようなプレストレス導入装置8は、コンクリートに初めから埋め込まれる場合、充分な長さが埋め込まれる場合などは、いずれのタイプのプレストレス導入装置8aを使っても充分な付着が取れるので、定着強度上の問題が生じることはない。
【0008】
しかし、既設コンクリート構造物に削孔して、プレストレス導入装置8aを埋め込む場合で、削孔した孔に充分な長さが取れない場合、また既設コンクリート構造物におけるコンクリートが低強度の場合、プレストレス導入装置8aと孔内に充填される充填材、充填材と既設コンクリート構造物のコンクリートが確実に力を伝えて行かなければならない。
そのために、エンドホルダーとしての雄ねじ部材41が重要な役目を果たし、他の形態として、中空PC鋼棒6の前端部外側にダブルナットにする事も開発されてきた。また、充填材とコンクリート構造物に力を伝える為には、削孔した孔にさらに溝を形成する事も開発されてきた。
このようにエンドホルダーの外径は大きく、それを埋め込むためにφ90mm、φ110mm程度の削孔を明けている。
【0009】
また、新設コンクリート構造物の連結用孔または溝に、前記のようなプレストレス導入装置8aの前端側を配置して使用する場合、コンクリートも必要に応じて高強度のものを使い、プレストレス導入装置8aの前端側の外周を埋め込む無収縮モルタル等の充填材も高強度のものを使えば、プレストレス導入装置8aにより導入されるプレストレス力は、充填材との付着力を介してコンクリート構造物に伝わっていた。
【特許文献1】特開平07−139173号公報
【特許文献2】特開平2001−207590号公報
【特許文献3】特開平2005−90124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、既存構造物に他部材を圧着させる需要が増えたが、既存構造物の中には低強度のコンクリート構造物のものもあり、プレストレス導入装置8aをコンクリート構造物に定着させるこれまでの構造では、定着する事が難しいものも出てきた。すなわちコンクリート構造物のコンクリートが低強度コンクリートであれば、プレストレス導入装置8aを定着させる充填材を高強度にしても、充填材と低強度コンクリートの付着で、低強度コンクリートが持たないので、充填材のみ高強度にしてプレストレス導入装置8aとの付着力を確保しても、低強度コンクリートにはプレストレス導入装置8aのプレストレスはコンクリートに伝わらない事になる。
【0011】
すなわち、一方のコンクリート構造物に設けるアンカー孔が袋孔の場合のプレストレス力導入装置8aを使用した接合構造では、中空PC鋼棒6はプレストレスが導入され接合しているので、構造物に引張りが作用した場合、中空PC鋼棒(PC鋼材)8aの強度そのままに影響されるのでなく、低強度コンクリートは圧縮された状態から引張りに変わりその強度まで引張りに抵抗するようになり、したがって、PC鋼材と充填材(グラウト)5の付着力は充分であっても、充填材5と一方のコンクリート構造物との付着が充分期待できない場合には、多数のプレストレス力導入装置8aを設けて対応することになり経済的でなくなる。
【0012】
また、コンクリート構造物の中には鉄筋が密に配置されているものもあり、その場合、プレストレス導入装置8aを定着させるための削孔の孔径が、中空PC鋼棒よりも格段に外径の大きいエンドホルダーの外径より大きくしなければならず、鉄筋を切断する事も出来ず、鉄筋探査に労力を要していた。
【0013】
通常、削孔しようとする対象が鉄筋コンクリート構造物の場合、コンクリート構造物に埋め込み配置されている鉄筋の配置が問題となる。埋め込み配置されている鉄筋を切断することなく削孔しなければならない。コンクリートに埋め込み配置されている鉄筋の配置は、建築の場合、フープ筋、スタラップ筋は、100mm間隔、150mm間隔、200mm間隔というようなピッチで配筋されている。コンクリートに埋め込まれる主筋相互の間隔は、前記の間隔よりもっと近い位置に配筋されることがある。
【0014】
コンクリートに埋め込み配置される鉄筋の間隔は、日本建築学会発行の建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事 2003年(第11次)版では、下記(1)から(3)うち大きい数値の間隔となるように決められている。
異形鉄筋の場合、(1)鉄筋呼び径の数値の1.5倍、(2)粗骨材最大寸法の1.25倍
(3)25mm、となっている。このような間隔では、削孔は無理であるが、通常、構造計算で、鉄筋の本数を決め均等に配置している。したがって、削孔径が小さくなれば、コンクリートに埋め込み配置されているフープ筋、スタラップ筋を、鉄筋探査して、これらの埋め込まれている鉄筋をかわすように削孔する事はできる。また、コンクリートに埋め込まれている主筋をかわすように削孔する事は、従来より容易になる。また、削孔径および奥行きも含めた削孔自体小さくなれば、その分、削孔に要する労力、削孔時間は大幅に削減される。
本発明は、中空PC鋼棒よりも格段に外径の大きいエンドホルダーを使用することなく、削孔径を小さくすることが可能で、プレストレス力導入装置の前端部の定着力を高めることができるようにした小口径に対応可能な小口径対応型のプレストレス導入装置およびそのアンカー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のプレストレス導入装置においては、中空PC鋼棒内に反力PC鋼材を配置すると共に中空PC鋼棒の前端部にアンカー部材を備えたプレストレス導入装置において、前記アンカー部材は、前記中空PC鋼棒よりもその軸方向前部側において突起が位置するように設けられた突起付きアンカー部材が用いられ、その突起付きアンカー部材の後端部の雄ねじ軸部が、前記中空PC鋼棒の前端部の雌ねじ孔にねじ込まれていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明のプレストレス導入装置において、突起付きアンカー部材の軸方向に間隔をおいて複数の突起が設けられていることを特徴とする。
第3発明では、第1発明または第2発明のプレストレス導入装置において、突起の外径が、中空PC鋼棒の外径以下とされていることを特徴とする。
また、第4発明のプレストレス導入装置のアンカー構造では、第1発明から第3発明のプレストレス導入装置の突起付きアンカー部材を無収縮モルタルまたはコンクリートに埋め込むように固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によると、プレストレス導入装置における中空PC鋼棒よりもその軸方向前部側において、突起が位置するように設けられた突起付きアンカー部材の後端部の雄ねじ軸部が、前記中空PC鋼棒の前端部の雌ねじ孔にねじ込まれているので、中空PC鋼棒の前端部よりも前方の位置において、突起付きアンカー部材と充填材との定着を図ることが可能で、突起付きアンカー部材の外径を小さくすることができ、小口径削孔にも対応可能なプレストレス導入装置とすることができる。また、突起付きアンカー部材としているので、確実に充填材などとの確実な定着を図ることができる小口径削孔対応型のプレストレス導入装置とすることができる。
第2発明によると、突起付きアンカー部材は、その軸方向に間隔をおいて複数の突起が設けられているので、複数の突起に応力を分散させて応力の伝達を図ることができ、既設コンクリート構造物の一箇所に伝達応力が集中することがなくなるので、既設コンクリート構造物が低強度コンクリートの構造物である場合にも、低強度コンクリートの構造物に無理な応力集中させることなく応力を分散低減させて伝達させることができ、既設コンクリート構造物が損傷する恐れがなく、確実な定着を図ることができる。
第3発明によると、突起の外径が、中空PC鋼棒の外径寸法以下とされているので、中空既設コンクリート構造物に設ける削孔径を、小さくした上、既存のコンクリート構造物との確実な定着を図ることができる。
第4発明によると、プレストレス導入装置の突起付きアンカー部材を無収縮モルタルまたはコンクリートに埋め込むように固定するので、簡単なアンカー構造とすることができ、また、突起数も少なくてよいので、設計が容易であり、確実な係止効果を図るようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1および図2は、本発明の一実施形態の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8を示すものであって、図1(a)は、小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8の1ユニットの一部切欠側面図を示し、(b)はその縦断側面図を示す。鋼製中空PC鋼棒本体6aの長手方向の一端部(前端部)外側に雄ねじ部20を有すると共に、他端部(後端部)外側に雄ねじ部21を有する中空PC鋼棒6における前記雄ねじ部21に、前後両端部に雌ねじ孔22、23を有すると共に多角形の回動工具係合用外面24を有する支承筒25における前端部の雌ねじ孔22が螺合連結されている。
【0019】
前記支承筒25の後端部の雌ねじ孔23に、鋼製筒状の環状係止片からなるストッパ26の前部雄ねじ部27が螺合され、前記ストッパ26の後端部外側には、回動工具係合用外面28が形成されている。
【0020】
前記ストッパ26の前端部は、前記支承筒25の内部に配置され、前端部に凹部29を有する押圧係止片30の後端面が係合され、前記押圧係止片30の前端部の凹部29には、中空PC鋼棒6内に他端側を除くほぼ全体が挿入され、かつ他端側が前記中空PC鋼棒6の他端部から突出するように配置された押込み用反力PC鋼棒(ノンプル用反力PC鋼棒)7の後端部が嵌合されている。
【0021】
この実施形態においては、1本ものの押込み用反力PC鋼棒7により押込み鋼棒を構成しているが、他端側に短尺の撤去用反力PC鋼棒と前記押込み用反力PC鋼棒7よりも若干短尺な押込み用反力PC鋼棒との2本により押し込み用反力PC鋼棒7を構成することも可能である。
【0022】
前記中空PC鋼棒6の前端部内側に雌ねじ孔1が設けられ、その雌ねじ孔1に、突起付きアンカー部材2の後端部の雄ねじ軸部3が着脱自在に螺合固定され、その突起付きアンカー部材2は、その後端部の雄ねじ軸部3により反力PC鋼棒7の後端部を支承するエンドホルダーの機能を有している。
【0023】
そして、本発明の実施形態においては、前記の突起付きアンカー部材2は、前記雄ねじ軸部3に一体に、中空PC鋼棒6から離れた位置において、前記雄ねじ軸部3よりも大径で、中空PC鋼棒6の外径とほぼ同径の大径環状軸部4aと、前記大径環状軸部4aと一体に連設された小径軸部4bとが、突起付きアンカー部材2の軸方向に間隔をおいて交互に連設されている。この形態では、前記の大径環状軸部4aにより環状の突起4が形成されている。
前記の小径軸部4bの外径寸法は、反力PC鋼棒7の外径とほぼ同様な外径にされ、反力PC鋼材7と同様な材質により製作される。
【0024】
前記の突起付きアンカー部材2の突起4は、少なくとも1つ必要で、図3,4に示すように、その突起4を埋め込むように充填される充填材5を介して、既設コンクリート構造物9側との一体化が図られる。前記の突起付きアンカー部材2を備えたプレストレス導入装置8aでは、プレストレス導入装置8aの前端部の定着を、前記の突起付きアンカー部材2単独で図ることも可能であると共に中空PC鋼棒6の外周面と共同して図ることができ、特段、中空PC鋼棒6の前端部外周に、従来のような雄ねじを設けなくてもよい。
【0025】
前記の環状突起4は、円環状突起4が好ましいが、楕円環状の突起でもよく、多角形状の突起でもよい。前記の環状突起4は、その軸方向に一体に連設された小径軸部4bと交互に一体に連設され、3つの環状突起4と2つの小径軸部4bを備えた突起付きアンカー部材2とされている。また、前記の突起付きアンカー部材2の外径寸法は、ほぼ中空PC鋼棒6の外径寸法と同様な寸法で、中空PC鋼棒6の外径寸法よりも小さい寸法とされている。
【0026】
前記のように中空PC鋼棒6の外径寸法よりも小さい寸法とすることにより、小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8の前端部の突起付きアンカー部材2を既設コンクリート構造物9内に配置する場合に、既設コンクリート構造物9に穿設するアンカー孔10を小さくすることができる。また、前記の突起付きアンカー部材2には、環状突起4を備えているので、図6に示す従来のプレストレス導入装置8の前端部の外周側雄ねじ部と充填材との定着力に比べて、軸方向の単位長さ当たりの充填材5との定着力を格段に高めることができる。
【0027】
また、前記実施形態では、中空PC鋼棒6の前端部外周面に複数の環状突起4を軸方向に間隔をおいて複数設けられているので、定着力を複数の環状突起4に分散することができ、複数に分散された環状突起の定着力を介して既設コンクリート構造物に分散伝達させることができ、突起付きアンカー部材2の軸方向に既設コンクリート構造物の負担応力を低減させことができる。
【0028】
軸方向に間隔をおいて複数の突起4を設ける場合、各突起4の外径寸法を異なる寸法とし、各突起4の定着力を制御するようにしてもよい。例えば、突起付きアンカー部材2の後部(基端側)から前部に向かって各突起4の外径が、小、中、大と、徐々に大きくなるようにしてもよい。外径を大きくした場合でも、中空PC鋼棒6の外径とほぼ同じ外径とするとよい。突起4は、その軸方向の幅寸法内において、外周面が、後部側から前部側に向かって漸次拡径する截頭円錐状の外周面(テーパー状)として半径方向外側に向かって押圧するような楔効果を持たせるようにしもよく、また周方向外周面、軸方向の前面および後面の表面を粗面としてコンクリートとの付着を高めるようにしてもよい。
【0029】
なお、図3に示すように、既設コンクリート構造物9等のコンクリート構造物9に穿設される小径アンカー孔10に、その軸方向に間隔をおいて大径の環状溝11が複数設けられていると、小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8の前端部の突起付きアンカー部材2との定着強度を高めることができる。
【0030】
具体的には、図3に示すように、小径アンカー孔10の内周面を周方向に均一に切削して、小径アンカー孔10と同心状に大径の環状溝11を小径アンカー孔軸方向に間隔をおいて複数設けた大径環状係止溝部12を備えた大径環状係止溝部付アンカー孔13を形成した構造とすることができる。前記小径アンカー孔10は、アンカー孔軸方向に伸びる小径アンカー孔と、前記小径アンカー孔10に接続し小径アンカー孔10と同心状にかつ小径アンカー孔10軸方向の先端側に向かって拡径する截頭円錐状溝とを備えた截頭円錐状溝付アンカ−孔としてもよい。
【0031】
小径アンカー孔10の全周に連続した大径環状係止溝11を備えているので、充填材5と大径環状係止溝部界面の付着強度を高めることができ、また、小径アンカー孔10周りの全周に形成した大径環状係止溝11による周方向の係止効果に方向性がないため、全周の係止効果を利用してプレストレス力を高めて定着でき、しかも、かつ前記プレストレス力導入装置8の先端側の定着部がアンカー孔軸方向の大径環状係止溝部12の領域または大径環状係止溝部12より奥部の領域に位置するように配置されているため、プレストレス力導入装置8の先端側を確実に定着することができ、一本あたりのプレストレス力導入装置8のプレストレス力を高めて、全体の使用本数を少なくすることができる。また、大径環状係止溝付アンカー孔13の構造も簡単な構造であり、そのため定着構造も簡単な構造とすることができる。
【0032】
既設コンクリート構造物9に隣接して構築される新設のコンクリート構造物14、現場打ちコンクリート構造物でもよく、プレキャストコンクリート構造物でもよく、プレキャストコンクリート構造物である場合には、そのプレキャストコンクリート構造物に、予め本発明の小口径対応型のプレストレス導入装置8を配置するための、貫通孔、横孔あるいは上向き開口溝等を設けるようにして配置するようにし、既設コンクリート構造物9と新設のコンクリート構造物14の孔または溝に渡って、無収縮モルタルなどの充填材5を充填するようにすればよい。なお、符号40は、充填材5の硬化後に硬化し、中空PC鋼棒6と反力PC鋼棒7との一体化をはかり終局耐力の向上を図るための遅延硬化型の接着兼防錆材である。
【0033】
なお、図1に示す状態は、例えば、小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8を、図示を省略するが、前部フレームおよび後部フレームを複数の連結ロッドで平行に結合し、後部フレーム側に油圧ジャッキを備えた枠形フレームに配置して、液圧ジャッキを利用して、その可動ピストンの先端部に係合され、ストッパ26の中央中空部に挿入される押し込み鋼棒により押圧係止片30を前記中空PC鋼棒6に向かって移動するように押圧し、前記押込み用反力PC鋼棒7を中空PC鋼棒6内に押し込むように圧縮力を導入した後、その状態においてフリーになっている前記支承筒25またはストッパ26を前記押圧係止片30に向かって接近する方向に回転させて、前記ストッパ26を前進移動して、ストッパ26の前端部を押し込み係止片30に係合させ、枠形フレームから分離させた状態を示した図である。なお、前記のストッパ26あるいは支承筒25を回動工具により回転して、反力PC鋼棒7を圧縮するように押圧して中空PC鋼棒6を緊張したり、ストッパ26あるいは支承筒25を逆回転させて、前記反力PC鋼棒7の圧縮力を開放して中空PC鋼棒6を介してコンクリート構造物にプレストレスを導入してもよい。
【0034】
小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8の後端部の構造は、特開2001−207590号公報等により公知であり、押込み用反力PC鋼棒および中空PC鋼棒を備えた各種の形態の装置を使用することもできる。
なお、本発明の小口径対応型のプレストレス導入装置8も、充填材5が硬化されアンカー部材37と突起付きアンカー部材2が埋め込み固定された後、プレストレス導入装置8が開放されて、新設コンクリート構造物14と既設コンクリート構造物9とは、突起付きアンカー部材2とアンカー部材37が接近する方向に充填材5を介してコンクリート構造物相互を接近させるように作用し、緊張状態の中空PC鋼棒6の短縮が充填材5との付着により阻止される。
【0035】
なお、本発明の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置8を、既設コンクリート構造物9と、新設のコンクリート構造物14との連結以外にも、新設のコンクリート構造物14内あるいは引張力がコンクリート部材端部に発生する箇所に、その引張力を打ち消す目的で使用すること等、既存の中空PC鋼棒6を備えたプレストレス導入装置と同様な使用形態もかのうである。
【0036】
突起付きアンカー部材2の材質としては、PC鋼材を使用するようにするとよい。なお、本発明のプレストレス導入装置8は、小口径の削孔以外の孔に使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)縦断側面図である。
【図2】本発明の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置に使用されている先端側の突起付きアンカー部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置における突起付きアンカー部材を既設コンクリート構造物に削孔した大径環状溝付き孔内に配置し、コンクリート構造物相互にプレストレスを導入して一体化する直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【図4】本発明の小口径削孔対応型のプレストレス導入装置における突起付きアンカー部材を既設コンクリート構造物に削孔した孔内に配置し、コンクリート構造物相互にプレストレスを導入して一体化する直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【図5】従来のプレストレス導入装置を示すものであって、(a)は正面図、(b)縦断側面図である。
【図6】従来のプレストレス導入装置の先端部を既設コンクリート構造物に削孔した孔内に配置し、コンクリート構造物相互にプレストレスを導入して一体化する直前の状態を示す一部縦断側面図である。
【図7】従来のプレストレス導入装置における先端部の他の形態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 雌ねじ孔
2 突起付きアンカー部材
3 雄ねじ軸部
4 突起
4a 大径環状軸部
4b 小径軸部
5 充填材
6 中空PC鋼棒
6a 中空PC鋼棒本体
7 押込み用反力PC鋼棒
8 小口径削孔対応型のプレストレス導入装置
8a プレストレス導入装置
9 既設コンクリート構造物
10 大径の環状溝
11 大径の環状溝
12 大径環状係止溝部
13 大径環状係止溝部付アンカー孔
14 新設のコンクリート構造物
20 雄ねじ部
21 雄ねじ部
22 雌ねじ孔
23 雌ねじ孔
24 回動工具係合用外面
25 支承筒
26 ストッパ
27 前部雄ねじ部
28 回動工具係合用外面
29 凹部
30 押圧係止片
31 雌ねじ部
32 アンカー材
37 アンカー材
40 接着兼用防錆材
41 雄ねじ部材
42 アンカーナット(支圧部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空PC鋼棒内に反力PC鋼材を配置すると共に中空PC鋼棒の前端部にアンカー部材を備えたプレストレス導入装置において、前記アンカー部材は、前記中空PC鋼棒よりもその軸方向前部側において突起が位置するように設けられた突起付きアンカー部材が用いられ、その突起付きアンカー部材の後端部の雄ねじ軸部が、前記中空PC鋼棒の前端部の雌ねじ孔にねじ込まれていることを特徴とするプレストレス導入装置。
【請求項2】
突起付きアンカー部材の軸方向に間隔をおいて複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプレストレス導入装置。
【請求項3】
突起の外径が、中空PC鋼棒の外径以下とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のプレストレス導入装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のプレストレス導入装置の突起付きアンカー部材を無収縮モルタルまたはコンクリートに埋め込むように固定することを特徴とするプレストレス導入装置のアンカー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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