説明

プレスピン、電力半導体モジュール、複数の電力半導体モジュールを備えた半導体モジュール・アセンブリ

【課題】良好な電気的及び機械的な安定性をもたらし、アーク放電が存在する中であっても長い寿命を有する電力半導体モジュールを提供する。
【解決手段】脚部8を備えた第一のプレスピン6を提供する。脚部8のベース12は、電力半導体デバイス3の接触要素4a,4bに接触するために設けられ、この接触要素は、ベース・プレート2の上に配置されている。絶縁手段13が、脚部8の外側の表面14を電気的に絶縁するために設けられている。更に、電力半導体モジュール1を提供する。また、複数の電力半導体モジュール1を有する電力半導体モジュール・アセンブリを提供し、ここで、電力半導体モジュール1は、隣接する電力半導体モジュール1の間に電気的な接続を有して、互いに並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部を備えた第一のプレスピンに係り、ここで、脚部のベースは、電力半導体デバイスの、特に、ベース・プレート及び少なくとも一つの電力半導体デバイスを有する電力半導体モジュールの中の、接触要素と接触するために設けられ、この電力半導体デバイスは、ベース・プレートの上に配置され、且つ、少なくとも一つの第二のプレスピンにより接触されている。本発明は更に、ベース・プレートと、ベース・プレートの上に配置された少なくとも一つの電力半導体デバイスと、少なくとも一つの電力半導体デバイスの少なくとも一つの接触要素と接触するための少なくとも一つの第一のプレスピンと、を有する電力半導体モジュールに係る。本発明はまた、複数の電力半導体モジュールを有する電力半導体モジュール・アセンブリに係る。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の第一のプレスピンは、説明を簡潔にするために、プレスピンとも呼ばれ、従来技術の中で良く知られていて、電力半導体デバイス、特に、大電力の半導体デバイスに接触する領域の中で使用されている。この領域において、通常の運転モードに対して少なくとも30Aの、また故障の場合には2,000Aの範囲内の、大電流が、好ましくは、その完全性に影響を及ぼすことなく、プレスピンの中を通過する。各プレスピンは、脚部及びヘッド部を有していて、それらは、プレスピンの長手方向軸に沿って互いに対して移動可能であり、またそれらは、例えば電流バイパスにより電気的に相互に接続されている。脚部とヘッド部との間に、スプリング要素が配置され、このスプリング要素は、外側に向かう力を脚部及びヘッド部に、それらを電力半導体デバイスの接触要素及び反対側のコンタクト(例えば、ハウジングの蓋)に対して押付けるために、作用させて、それらの間の電気的な接続を維持する。スプリング要素は、スプリング・ワッシャ・パックであっても良いが、しかし、他のスプリング要素が同様に使用されても良い。脚部とそれぞれの接触要素との間のコンタクトが、脚部のベースを介して、設けられる。典型的に、そのようなプレスピンは、ゲートまたはコンロール・コンタクト、コレクタ・コンタクトおよび/またはエミッタ・コンタクトに接触するために使用される。
【0003】
接触要素は、上述のように、例えば、その装置に依存して、電力半導体デバイスの上面または底面であることが可能であり、または、ベース・プレートの上に設けられている別個の接触要素、特に、電力半導体デバイスのコントロール電極と接触するための接触要素、であることが可能である。コントロール電極は、典型的に、ゲート電極であって、このゲート電極は、ワイヤなどにより、この別個の接触要素に電気的に接続される。電力半導体デバイスのコントロール電極は、典型的に、その上面側に配置されている。
【0004】
例えば、半導体チップの底面またはコレクタ側は、導電性のベース・プレートに、ハンダ付け、焼結などにより取り付けられることが可能であり、それにより、表面コンタクトを形成する。電力半導体デバイスの上面またはエミッタ側は、プレスピンにより接触されることが可能である。ゲート電極に接続された別個の接触要素が、ベース・プレートの上に配置され且つそれから電気的に隔離され、そしてまた、プレスピンにより接触される。
【0005】
これらの電力半導体デバイスは、約1.7kV以上の電圧を取り扱っても良い。電力半導体デバイスとベース・プレートと間の表面コンタクトは、更に、半導体から外部への熱伝達を可能にし、即ち、半導体デバイスは、ベース・プレートに熱的及び電気的に結合されている。この分野において使用される典型的な電力半導体デバイスは、電力用トランジスタであって、例えば、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、逆伝導性絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(逆伝導性IGBT)、バイ・モード絶縁ゲート・トランジスタ(BIGT)、または(電力用)ダイオードなどである。
【0006】
電力半導体デバイスは、例えば、電力半導体モジュールを形成するために、しばしば結合され、この電力半導体モジュールは、100A以上までの電流を取り扱うことが可能である。電力半導体デバイスは、ベース・プレートの上に並列に配置され、このベース・プレートは、通常、電力半導体モジュールの導電性のベースを形成する。電力半導体モジュールは、通常、導電性の蓋により覆われ、この蓋は、電力半導体デバイスのための更なるコンタクトをもたらす。電力半導体デバイスは、通常、プレスピンにより、導電性の蓋に接続される。電力用トランジスタの場合には、コンロール・コンタクトもまた、蓋に接続され、ここで、蓋は、コンロール・コンタクトから隔離される。
【0007】
複数の電力半導体モジュールが、更に結合されて、電力半導体モジュール・アセンブリを形成することが可能である。電力半導体モジュールは、共通のハウジングの中に、機械的に及び電気的に、互いに対して並列に配置される。電力半導体モジュールのベース・プレートは、モジュール・アセンブリの導電性のベースを形成する。更に、電力半導体モジュール・アセンブリのハウジングはまた、導電性の蓋により覆われ、この蓋は、その中に配置された電力半導体モジュールの蓋と接触する状態にある。電力半導体モジュール・アセンブリは、例えば、電力用トランジスタを有する電力半導体モジュールのような、同一の電力半導体モジュールを有していることが可能であり、または、例えば、電力用トランジスタ及びダイオードを有する少なくとも一つの電力半導体モジュールを有する電力半導体モジュールのセットのような、異なる電力半導体モジュールを有していることも可能である。
【0008】
そのような電力半導体モジュール・アセンブリは、例えば、“Stakpak”との名称で本願の出願人から提供されていて、例えば、数百KVまでを取り扱うHVDCへの適用において使用されているように、積み重ねられた装置を形成するために、使用されることが可能である。従って、電力半導体モジュール・アセンブリの機械的なデザインは、長いスタックの中での締付けを容易にするために最適化される。これらの積み重ねられた装置において、単一の電力半導体モジュール・アセンブリの機械的な及び電気的な安定性は、積み重ねられた装置全体の故障を防止するために不可欠である。
【0009】
電力半導体モジュールを、電力半導体モジュール・アセンブリ及び電力半導体モジュール・アセンブリの積み重ねの中にを配置する代わりに、電力半導体モジュールが、直接に積み重ねられることも可能である。
【0010】
この文脈において、個々の電力半導体デバイスの短絡故障モード(SCFM)の支持は、不可欠な特徴である。電力半導体デバイスの内の一つが故障した場合、それは、短絡をもたらすことにより故障して、ベース・プレートから蓋への伝導を可能にする。これは、電力半導体モジュール並びに電力半導体モジュール・アセンブリに当てはまり、これらは、SCFMにおいて動作不能になる。複数の電力半導体モジュールまたは電力半導体モジュール・アセンブリが直列に接続されて、例えば、上述の積み重ねられた装置を形成するとき、単一の電力半導体デバイスの故障は、一連の電力半導体モジュールまたは電力半導体モジュール・アセンブリの故障をもたらすことがない。
【0011】
特に、この短絡故障モードにおいて、2,000Aまでの非常に高い電流が、単一の電力半導体デバイス及び故障した電力半導体デバイスと接触する状態にあるそれぞれのプレスピンの中を通って流れることが可能であり、その理由は、短絡が、全ての並列の電力半導体デバイスを橋渡しするからである。これらの電力半導体デバイスの高い寿命を実現するために、従って、電力半導体モジュール及び電力半導体モジュール・アセンブリの高い寿命を実現するために、短絡故障モードが一年以上の間、維持されることが可能であることが好ましい。
【0012】
SCFMにおける高い電流に起因して、電気的な接続の質が、接触要素とプレスピンの脚部との間で、長い期間に亘って減少する可能性がある。アーク放電が、SCFMにおいて電力半導体デバイスと接触する状態にあるプレスピンと他のプレスピンとの間で、発生する可能性がある。従って、接触要素及びプレスピンの脚部には、磨耗に起因して及び酸化が生じ、それにより、それらの間の電気的な接続の抵抗を増大させ、それは、SCFMにおける、短絡の容量を減少させる。アーク放電は、SCFMにおいて電力半導体デバイスと接触する状態にある全プレスピンの消耗をもたらす可能性さえもある。アーク放電はまた、それらのすべてが完全に消耗されまたは換言すれば破壊されるまで、他のプレスピンに伝播する可能性がある。これは、電力半導体モジュールの故障を、従って、SCFMにある電力半導体デバイスを有する電力半導体モジュール・アセンブリの故障を、をもたらすことになる。プレスピンが消耗したとき、そのスプリング・ワッシャ・パックは、電力半導体モジュールの動作のために要求されるような、接触要素と蓋との間の電気的な接触を維持することができない。
【0013】
アーク放電及びピンの消耗の問題はまた、プレスピンにも当て嵌まり、それらのプレスピンは、負荷電流を運ばず、そしてそれ故に、電力半導体モジュール及び電力半導体モジュール・アセンブリの機械的な安定性を維持するために適切であると考えられる。これは、特に、電力半導体デバイスのゲート・コンタクトに当てはまり、それらのゲート・コンタクトは、SCFMの間に負荷電流を運ばず、それ故に、電力半導体モジュールの中で使用されて、その機械的な安定性を維持する。従って、ゲートに接触するプレスピンは、決して消耗してはならない。それ故に、これらのプレスピンで、特に、短絡故障モードにおいて、アーク放電を防止することは非常に重要である。
【0014】
従来技術では、アーク放電の伝播の問題は、電力半導体モジュールの適切なデザインにより解決されることが意図されている。それにもかかわらず、個々のプレスピンを互いから大きな距離を隔てて配置したときであっても、アーク放電及びプレスピンの消耗が、信頼性高く防止されることが可能でないと言うことが判明している。コンロール・コンタクトに接触するプレスピンさえも、依然として、アーク放電により影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、第一のプレスピンを有する電力半導体モジュールを提供することであり、この第一のプレスピンは、良好な電気的な及び機械的な安定性をもたらし、アーク放電が存在する中であっても長い寿命を有している。本発明の更なる目的は、電力半導体モジュール装置を提供することであり、この電力半導体モジュール装置は、特に、短絡故障モードにおいて動作するとき、増大された寿命を有している。
【0016】
この目的は、独立請求項により実現される。好ましい実施形態は、従属請求項の中で与えられ。
【0017】
特に、本発明は、脚部を備えた第一のプレスピンを有する電力半導体モジュールを提供し、ここで、脚部のベースが、電力半導体デバイスの接触要素と接触するために、特に、ベース・プレート及び少なくとも一つの電力半導体デバイスを有する電力半導体モジュールの中の接触要素と接触するために設けられ、この電力半導体デバイスは、ベース・プレートの上に配置され、ここで、絶縁手段が、脚部の外側の表面を電気的に絶縁するために設けられる。電力半導体デバイスは、少なくとも一つの更なるプレスピンにより接触されても良い。
【0018】
本発明はまた、先に規定された複数の電力半導体モジュールを有する、電力半導体モジュール・アセンブリを提供し、ここで、電力半導体モジュールは、隣接する電力半導体モジュールの間に電気的な接続を有して、互いに並んで配置される。
【0019】
本発明の基本的なアイディアは、隔離手段を用いて、プレスピンの脚部の外側の表面を電気的に隔離して保護することである。一方では、絶縁手段は、第一のプレスピンでのアーク放電の出現を防止し、このアーク放電は、例えば、短絡故障モード(SCFM)において、高い負荷電流を運ぶことがある。もう一方では、絶縁手段は、高い負荷電流を運ばない第一のプレスピンが、更なるプレスピンで発生したアーク放電に起因して、消耗されることをを防止する。更なるプレスピンは、もう一つの第一のプレスピン即ち第二のプレスピンであることが可能であり、この第二のプレスピンは、従来技術において知られている従来のプレスピンである。
【0020】
隔離手段は、良好な電気的な隔離能力を要求し、それによって、その隔離手段は、アーク放電の出現、及びアーク放電に起因する第一のプレスピンの消耗を効果的に減少させることが可能になる。その理由は、アーク放電が完全に取り除かれることが決して可能でないからであり、また、絶縁手段が高い溶融温度を有していて、それによって、それが、長時間の間、絶縁能力を維持することも、要求される。その理由は、アーク放電の周りの温度が、摂氏数百度に到達する可能性があり、絶縁手段の溶融温度が、アーク放電により引き起こされる温度と比べて高いことが好ましいからである。
【0021】
少なくとも一つの第一のプレスピンを有する電力半導体モジュールは、増大された寿命を有することになる。その理由は、絶縁手段が、第一のプレスピンの消耗を減少させ、電力半導体モジュールが、短絡故障モードにおいて、長期間に亘って運転されることが可能であるからである。また、電力半導体モジュールの機械的な安定性が、長期間に亘って維持されることにもなる。その理由は、第一のプレスピンの消耗が減少するからである。例えば、SCFMにおいて、高い負荷電流を運ぶ第一のプレスピンでのアーク放電を減少させることにより、電力半導体モジュールの中の他の第一及び第二のプレスピンの寿命もまた、増大される。従って、電力半導体モジュール並びに電力半導体モジュール・アセンブリが、故障が生じて交換が要求される前に、長い時間に亘って、運転されることが可能である。これははまた、寿命を増大させ、電力半導体モジュール並びに電力半導体モジュール・アセンブリの積み重ねられた装置のメンテナンスのインターバルを減少させる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、絶縁手段が環状のボディを有して設けられ、この環状のボディは、脚部の周りを取り囲むように配置される。環状のボディの断面形状は、好ましくは、脚部の断面形状に適合される。円形の断面形状が、好ましい。環状のボディは、第一のプレスピンの脚部に容易に取り付けられることが可能であって、その周囲の全てに亘る絶縁をもたらす。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、環状のボディは、5.0mmから2.0mmまでの厚さを有している。この厚さは、今日の共通の第一のプレスピンのために最も適切である。第一のプレスピン及び関係する電流の特定のデザインに依存して、その厚さもまた、より大きくてもまたはより小さくても良い。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、絶縁手段は、脚部の全高さの上方に伸びている。このやり方で、脚部の全体が絶縁され、アーク放電が最良に防止される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、絶縁手段は、セラミックのベース材料を有している。好ましくは、絶縁手段は、全てがセラミックのベース材料で作られる。セラミックのベース材料は、良好な絶縁能力をもたらし、且つ、高い溶融温度を有している。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、セラミックのベース材料は、Alであって、これは、アルミナとも呼ばれている。アルミナは、良く知られたセラミック材料であって、それは、その良好な絶縁能力及びその高い溶融温度の故に、好ましい。
【0027】
本発明の電力半導体モジュールの好ましい実施形態において、少なくとも一つの第二のプレスピンが、一つまたは複数の電力半導体デバイスの少なくとも一つの接触要素と接触するために設けられる。従って、第一及び第二のプレスピンは、電力半導体モジュールの中で結合されることが可能であり、それにより、そのシンプルさ及び安価さを維持する。電力半導体モジュールの機械的な安定性を維持するために、プレスピンの一部を、即ち第一のプレスピンを、保護することのみが要求される。
【0028】
本発明の電力半導体モジュールの変形された実施形態によれば、少なくとも一つの電力半導体デバイスは、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ、逆伝導性絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ、バイ・モード絶縁ゲート・トランジスタ、またはダイオードである。これらの電力半導体デバイスは、大きな電力の条件で運転されるために適切であり、また、大きな電圧及び電流を取り扱うことが可能である。好ましくは、複数の同一の電力半導体デバイスが、単一の電力半導体モジュールの中で結合される。その代わりに、先に列挙された電力半導体デバイスからの任意のセットが、単一の電力半導体モジュールの中で結合される。
【0029】
本発明の電力半導体モジュールの変形された実施形態によれば、電力半導体モジュールは、少なくとも一つの接触要素を備えた複数の電力半導体デバイスを有していて、この接触要素は、複数の電力半導体デバイスの共通のコンロール・コンタクトとして設けられ、第一のプレスピンは、共通のコンロール・コンタクトとして設けられた前記少なくとも一つの接触要素と接触する状態にある。コンロール・コンタクトは、比較的小さい電流を取り扱うのみで良く、それによって、それらは容易に結合されることが可能になる。これは、標準的な第一のまたは第二のプレスピンにより接触されるために十分に大きい表面を備えた接触要素をもたらすことを可能にし、ベース・プレートの上で大き過ぎるスペースを占めることがない。これは、電力半導体モジュールの効果的なデザインを可能にする。また、ユニークな寸法を備えた第一のまたは第二のプレスピンが、全ての電力半導体デバイスの接触要素と接触するために、使用されることも可能である。共通のコンロール・コンタクトは、ベース・プレートの上に置かれるが、しかし、ベース・プレートと電気的に接触する状態にはない。好ましくは、絶縁レイヤが、共通のコンロール・コンタクトとベース・プレートとの間に設けられる。
【0030】
本発明の電力半導体モジュールの変形された実施形態によれば、電力半導体モジュールは、ハウジングを有していて、ここで、導電性の蓋が、ハウジングの上面側を形成して、電力半導体モジュールの第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレートは、ハウジングのベースを形成して、電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらし、少なくとも一つの電力半導体デバイスの第一のコンタクトは、第一のまたは第二のプレスピンを介して蓋と電気的に接触する状態にあり、少なくとも一つの電力半導体デバイスのコンロール・コンタクトは、第一のプレスピンを介して蓋と接触する状態にある。
【0031】
好ましくは、第一のまたは第二のプレスピンが、電気的なコンタクトをもたらすために、電力半導体デバイスと蓋との間に設けられる。一般的に、この蓋は、電力半導体デバイスの第一のコンタクトと接触するための、電力半導体モジュールの共通の第一のコンタクトをもたらし、ベース・プレートは、電力半導体モジュールの第二のコンタクトをもたらす。電力半導体モジュールの第一及び第二のコンタクトは、積み重ねられた装置の場合には、他の電力半導体モジュールにより接触されることが可能であり、または、電力半導体モジュール・アセンブリのそれぞれのコンタクトにより接触されることが可能である。
【0032】
IGBTのような、電力用トランジスタの場合、第一のコンタクトは、エミッタ・コンタクトに当てはまり、第二のコンタクトは、コレクタ・コンタクトに当て嵌まり、コンロール・コンタクトは、ゲート・コンタクトに当て嵌る。コンロール・コンタクトは、電力半導体モジュールの蓋と電気的に接触する状態になく、例えば、蓋の中の間隙の中を通って、または、電力半導体モジュールの横方向のコンタクトにより、接触されることが可能である。
【0033】
本発明の電力半導体モジュール・アセンブリの好ましい実施形態によれば、電力半導体モジュールのベース・プレートは、互いに対して電気的に接続される。接続は、配線により、または、電力半導体モジュールのベース・プレートおよび/または蓋と接触するためのコンタクト・プレートを設けることにより、なされることが可能である。第一のコンタクトおよび/または電力半導体モジュールの第二のコンタクトは、従って、電力半導体モジュール・アセンブリの共通の第一のおよび/または第二のコンタクトを形成する。少なくとも一つの電力用トランジスタを含む電力半導体モジュールの場合には、コンロール・コンタクトが電気的に接続されることが可能である。
【0034】
本発明の電力半導体モジュール・アセンブリの好ましい実施形態によれば、電力半導体モジュール・アセンブリは、ハウジングを有していて、ここで、導電性の蓋は、ハウジングの上面側を形成して、電力半導体モジュールの第一のコンタクト・アセンブリをもたらし、この第一のコンタクト・アセンブリは、電力半導体モジュールの第一のコンタクトと接触する状態にあり、電力半導体モジュールのベース・プレートは、ハウジングのベースの中を通って伸びている。積み重ねられた装置の場合には、電力半導体モジュール・アセンブリの第一及び第二のコンタクトは、他の電力半導体モジュール・アセンブリにより接触されることが可能である。一般的に、電力半導体モジュールの蓋アセンブリは、電力半導体モジュールの第一のコンタクトと接触するための、第一のコンタクトをもたらし、電力半導体モジュールのベース・プレートは、電力半導体モジュールの共通の第二のコンタクトをもたらす。
【0035】
電力半導体モジュールがコンロール・コンタクトを有している場合、それらが、電力半導体モジュール・アセンブリの中で電気的に接続されることも可能である。電力半導体モジュール・アセンブリは、電力半導体モジュールの接続されたコンロール・コンタクトと接触するための、横方向のコンタクトを有することが可能であり、または、電力半導体モジュールの接続されたコンロール・コンタクトが、蓋の中の間隙を通って接触されることが可能である。積み重ねられた装置の場合には、電力半導体モジュールの第一及び第二のコンタクト・アセンブリは、他の電力半導体モジュール・アセンブリにより接触されることが可能である。IGBTのような、電力用トランジスタの場合、第一のコンタクトは、エミッタ・コンタクトに当てはまり、第二のコンタクトは、コレクタ・コンタクトに当てはまり、コンロール・コンタクトは、ゲート・コンタクトに当て嵌る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、電力半導体デバイス及び電力半導体デバイスの接触要素に接触する第一及び第二のプレスピンを備えた電力半導体モジュールの部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のこれらの及び他のアスペクトは、以下に記載された実施形態を参照することにより、明らかになりまた明らかにされる。
【0038】
図1は、本発明に基づく電力半導体モジュール1の一部を示している。電力半導体モジュール1は、導電性のベース・プレート2、及び、このベース・プレート2の上に配置された電力半導体デバイス3を有している。半導体デバイス3の上面側4aは、その第一のコンタクトを形成し、これが、本発明に基づく第一の接触要素である。電力半導体デバイス3の第二のコンタクトは、その底面側に形成され、底面側は、ベース・プレート2と電気的に接触する状態にある。電力半導体デバイス3のコンロール・コンタクトは、別個の接触要素4bに接続され、この接触要素は、本発明に基づく電力半導体デバイス3のためのもう一つの接触要素である。この別個の接触要素4bは、コンロール・コンタクトとも呼ばれている。別個の接触要素4bには、ベース・プレート2上で、平板状の形状が与えられているが、絶縁レイヤ(図面の中に示されていない)により、ベース・プレート2から電気的に絶縁されている。
【0039】
本発明のこの実施形態において、電力半導体デバイス3は、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)であり、第一のコンタクトは、エミッタ・コンタクトであり、第二のコンタクトは、コレクタ・コンタクトであり、そして、コンロール・コンタクトは、ゲート・コンタクトである。従って、別個の接触要素4bは、ゲート・コンタクトに接続され、それらはまた、ゲート・ランナーとも呼ばれている。
【0040】
ゲート・ランナー4bは、ゲート・ピン6により接触され、このゲート・ピンは、本発明に基づく第一のプレスピンである。電力半導体デバイス3の上面側4aは、チップ・ピン7により接触され、このチップ・ピンは、本発明に基づく第二のプレスピンである。ゲート・ピン6並びにチップ・ピン7は、それぞれ、脚部8及びヘッド部9を有していて、それらは、例えば電流バイパス10により、電気的に接触する状態にあり、スプリング・ワッシャ・パック11が、脚部8及びヘッド部9に外側に向かう力を作用させる。スプリング・ワッシャ・パックの代わりに、もう一つのスプリング要素が使用されても良い。
【0041】
次に第一のプレスピン6、即ちゲート・ピン6に関しては、その脚部8は、ベース12として、端面を有していて、このベースは、ゲート・ランナー4bと電気的に接触する状態にある。本発明によれば、絶縁手段13は、電気的な隔離をもたらすために、脚部8の外側の表面14の周りに設けられる。絶縁手段13は、環状のボディを有していて、この環状のボディは、脚部8の周りを取り囲むように配置されている。絶縁手段13の環状のボディは、脚部の全高さ8の上方に伸びている。本発明のこの実施形態において、環状のボディは、約1.0mmの厚さを有しているが、本発明の異なる実施形態において、その厚さは、好ましくは、0.5mmと2.0mmとの間で変わることが可能である。絶縁手段13は、セラミックのベース材料で作られ、このベース材料は、本発明のこの実施形態において、アルミナであり、これはまた、Alとも呼ばれている。
【0042】
図1の中に明示的に示されていないが、電力半導体モジュール1は、複数の上述の電力半導体デバイス3を有している。各電力半導体デバイス3の上面側4は、それぞれのチップ・ピン7により接触されている。電力半導体デバイス3のコントロール電極は、一つまたは一つ以上の共通の接触要素に、即ち、上述のように、ゲート・ランナー4bに接続され、この接触要素は、上述のように、ゲート・ピン6により接触されている。一つよりも多い共通の接触要素が使用される場合には、各接触要素が、それぞれのゲート・ピン6により接触される。従って、電力半導体モジュール1は、互いに対して並列に配置された複数の電力半導体デバイス3で形成される。コントロール可能な電力半導体デバイス3に加えて、ダイオードが使用される場合には、それらは、非並列に配置される。
【0043】
電力半導体モジュール1は、ハウジング15を有していて、ここで、ベース・プレート2が、ハウジング15のベースを形成する。導電性の蓋(図面の中に明示的に示されていない)が、ハウジング15の上面側を形成する。この蓋は、電力半導体モジュールの第一のコンタクト1をもたらし、ベース・プレート2は、電力半導体モジュールの第二のコンタクト1をもたらす。電力半導体デバイス3は、第一及び第二のプレスピン6,7により、蓋と電気的に接触する状態にあり、これらのプレスピンは、電力半導体デバイス3の接触要素4a,4bと蓋との間に設けられている。ベース・プレート2は、電力半導体デバイス3のコレクタに接続され、電力半導体モジュールの第二のコンタクト1を形成し、電力半導体デバイス3のエミッタは、蓋に接続される。電力半導体デバイス3のゲートは、蓋の中の間隙の中を通って、電力半導体モジュール1の中で共通に接触されることが可能である。
【0044】
電力半導体モジュール・アセンブリ(図面の中に明示的に示されていない)は、上述のように、複数の電力半導体モジュールを有している。電力半導体モジュール1は、ハウジングの中に互いに並んで配置され、ここで、電力半導体モジュール1のベース・プレート2は、ハウジングのベースの中を通って伸びている。導電性の蓋が、ハウジングの上面側を形成して、電力半導体モジュール1のための、隣接する電力半導体モジュール1の間の電気的な接続を有する共通のコンタクトをもたらす。この蓋は、電力半導体モジュール1の第一のコンタクトと接触するための、電力半導体モジュールの第一のコンタクト・アセンブリをもたらし、ベース・プレート2は、電力半導体モジュールの第二のコンタクト・アセンブリを共通にもたらす。電力半導体モジュール1のコンロール・コンタクトは、電力半導体モジュール・アセンブリの中で互いに対して接続され、且つ、電力半導体モジュール・アセンブリの横方向の電気的なコンタクトに接続される。
【0045】
電力半導体モジュール・アセンブリは、様々な半導体モジュールを有していて、本発明のこの代表的な実施形態において、電力用トランジスタを有する電力半導体モジュールのセット1、及び、ダイオードを有する少なくとも一つの電力半導体モジュールを有している。
【0046】
電力半導体モジュール1並びに電力半導体モジュール・アセンブリは、積み重ねられることが可能である。
【0047】
本発明に関して、図面及び上述の説明の中で、図示され且つ詳細に説明されたが、そのような図及び説明は、例示的なものまたは代表的なものであって、限定的なものではないと考えられるべきであり; 本発明は、開示された実施形態のみに限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態も、請求項に記載された発明を実施する中で、図面、開示、及び添付された請求項の学習から、理解され、当業者により実現されることが可能である。請求項の中で、“〜を有する/comprising”と言う言葉は、他の要素またはステップを排除することがなく、また、、不定冠詞“a”または“an”は、複数を排除することがない。特定の手段が互いに異なる従属請求項の中で挙げられていると言う単なる事実は、これらの手段の組合わせが良い結果を伴って使用されることが可能でないと言うことを示唆していない。請求項の中の何れの参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0048】
1・・・電力半導体モジュール、2・・・ベース・プレート、3・・・電力半導体デバイス、4a・・・接触要素、電力半導体デバイスの上面側、4b・・・接触要素、ゲート・ランナー、共通のコンロール・コンタクト、6・・・第一のプレスピン、ゲート・ピン、7・・・第二のプレスピン、チップ・ピン、8・・・脚部、9・・・ヘッド部、10・・・電流バイパス、11・・・スプリング・ワッシャ・パック、12・・・ベース、端面、13・・・絶縁手段、14・・・外側の表面、15・・・ハウジング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力半導体モジュール(1)であって、
ベース・プレート(2)と、
このベース・プレート(2)の上に配置された、少なくとも一つの電力半導体デバイス(3)と、
脚部及びヘッド部を有する少なくとも一つの第一のプレスピン(6)と、を有し、
脚部及びヘッド部は、プレスピンの長手方向軸に沿って互いに対して移動可能であり、脚部及びヘッド部は、電気的に相互に接続され、
スプリング要素が、脚部とヘッド部との間に配置されて、脚部及びヘッド部に外側に向かう力を作用させ、
前記少なくとも一つの第一のプレスピン(6)は、脚部(8)のベース(12)で、少なくとも一つの接触要素(4a,4b)と接触するために設けられていて、
この少なくとも一つの第一のプレスピン(6)に、第一のプレスピン(6)の脚部(8)の外側の表面(14)を電気的に絶縁するための、環状のボディを有する絶縁手段(13)が設けられていること、
を特徴とする電力半導体モジュール。
【請求項2】
下記特徴を備えた請求項1に記載の電力半導体モジュール、
前記絶縁手段(13)は、前記脚部(8)の周りを取り囲むように配置されている。
【請求項3】
下記特徴を備えた請求項1または2に記載の電力半導体モジュール、
前記環状のボディは、5.0mmから2.0mmまでの厚さを有している。
【請求項4】
下記特徴を備えた請求項1から3の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
前記絶縁手段(13)は、前記脚部(8)の全ての高さの上方に伸びている。
【請求項5】
下記特徴を備えた請求項1から4の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
前記絶縁手段(13)は、セラミックのベース材料を有している。
【請求項6】
下記特徴を備えた請求項5に記載の電力半導体モジュール、
前記セラミックのベース材料は、Alである。
【請求項7】
下記特徴を備えた請求項1から6の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
少なくとも一つの第二のプレスピン(7)が、前記一つまたは複数の電力半導体デバイス(3)の少なくとも一つの接触要素(4a,4b)と接触するために設けられ、
前記第二のプレスピン(7)は、脚部及びヘッド部を有していて、
前記脚部及び前記ヘッド部は、前記プレスピンの長手方向軸に沿って互いに対して移動可能であり、前記脚部及び前記ヘッド部は、電気的に相互に接続され、
スプリング要素が、前記脚部と前記ヘッド部との間に配置され、前記脚部及び前記ヘッド部に外側に向かう力を作用させる。
【請求項8】
下記特徴を備えた請求項1から7の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
前記少なくとも一つの電力半導体デバイス(3)は、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ、逆伝導性絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ、バイ・モード絶縁ゲート・トランジスタ、または、ダイオードである。
【請求項9】
下記特徴を備えた請求項1から8の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
、前記電力半導体モジュール(1)は、前記複数の電力半導体デバイス(3)の共通のコンロール・コンタクト(4b)として設けられた少なくとも一つの接触要素を備えた、複数の電力半導体デバイス(3)を有していて、
前記少なくとも一つの第一のプレスピン(6)は、前記共通のコンロール・コンタクト(4b)として設けられた前記少なくとも一つの接触要素と接触する状態にある。
【請求項10】
下記特徴を備えた請求項9に記載の電力半導体モジュール、
前記共通のコンロール・コンタクト(4b)は、前記ベース・プレート(2)の上に設けられている。
【請求項11】
下記特徴を備えた請求項1から10の何れか1項に記載の電力半導体モジュール、
前記電力半導体モジュール(1)は、ハウジング(15)を有していて、ここで、導電性の蓋が、前記ハウジング(15)の上面側を形成して、前記電力半導体モジュール(1)の第一のコンタクトをもたらし、
前記ベース・プレート(2)は、前記ハウジングのベース(15)を形成して、前記電力半導体モジュール(1)の第二のコンタクトをもたらし、
前記少なくとも一つの電力半導体デバイス(3)の第一のコンタクトは、第一のまたは第二のプレスピン(6,7)を介して、前記蓋と電気的に接触する状態にあり、
前記少なくとも一つの電力半導体デバイス(3)のコンロール・コンタクト(4b)は、第一のプレスピン(6)を介して、前記蓋と接触する状態にある。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の複数の電力半導体モジュール(1)を有する電力半導体モジュール・アセンブリであって、
前記電力半導体モジュール(1)は、隣接する電力半導体モジュール(1)の間に電気的な接続を有して、互いに並んで配置されていることを特徴とする電力半導体モジュール・アセンブリ。
【請求項13】
下記特徴を備えた請求項12に記載の電力半導体モジュール・アセンブリ、
前記電力半導体モジュール(1)の前記ベース・プレート(2)は、互いに対して電気的に接続されている。
【請求項14】
下記特徴を備えた請求項12または13に記載の電力半導体モジュール・アセンブリ、
前記電力半導体モジュール・アセンブリは、ハウジングを有していて、ここで、導電性の蓋が、前記ハウジングの上面側を形成して、前記電力半導体モジュール・アセンブリの第一のコンタクトをもたらし、
この第一のコンタクトは、前記電力半導体モジュール(1)の前記第一のコンタクトと接触する状態にあり、
前記電力半導体モジュール(1)の前記ベース・プレート(2)は、前記ハウジングのベースの中を通って伸びている。

【図1】
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