説明

プレスロール装置およびプレス方法

【課題】
本発明は、装置が大型になるのを避けることができると共に、熱変動に起因するロール間距離の変動を容易に抑制することができるプレスロール装置およびプレス方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係るプレスロール装置10は、所定の距離で対向配置され、等速で反対方向に回転する2つのローラー20a、20bと、ローラーを回転可能に支持するベアリング30と、所定位置に保持され、ベアリング30を支持するハウジング40と、ハウジング40と熱的に接続され、ベアリング30で生成される熱量を取得し、取得した熱量との合計熱量が一定となる熱量を生成する熱量制御手段50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の部材をプレスするプレスロール装置およびプレス方法に関し、特に、リチウムイオン電池用電極の製造において電極部材をプレスするプレスロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や携帯電話機等にリチウムイオン二次電池を搭載する機会が増えている。リチウムイオン二次電池は、例えば、帯状の金属箔にスラリー化した電極材料を塗布して乾燥させた電極を、セパレータを介して巻回すことによって形成される。高性能のリチウムイオン二次電池を形成するには、均一厚さの電極を形成する必要がある。
【0003】
均一厚さの電極の形成には、プレスロール装置を用いるのが一般的である。プレスロール装置を用いて帯状電極を形成する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の加圧処理装置の側面図を図4に示す。
【0004】
図4において、特許文献1の加圧処理装置900は、加圧処理部910と予備加熱部920とを備え、予め予備加熱部920で電極材料を十分加熱した後、加圧処理部910で電極材料をロール間に挟み込み、加熱しながら均一厚さにプレスする。予備加熱部920で電極材料を加熱することにより、加圧処理部910が電極材料により冷却されてロール間距離が熱変動するのを抑制することができる。加圧処理部910のロール間の距離が変動した場合、帯状電極の厚さが変動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−233298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、加圧処理部910に加えて予備加熱部920を備える必要があり、加圧処理装置900が大型になる。さらに、室温や材料の性質や巻き回し速度等により、予備加熱の条件が変化するため、電極材料を所望の温度に維持した状態で加圧処理部910に搬入するための事前調整に手間がかかる。
【0007】
本発明の目的は、上述した問題点を解決することであり、装置が大型になるのを避けることができると共に、熱変動に起因するロール間距離の変動を容易に抑制することができるプレスロール装置およびプレス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係るプレスロール装置は、所定の距離で対向配置され、等速で反対方向に回転する2つのローラーと、ローラーを回転可能に支持するベアリングと、所定位置に保持され、ベアリングを支持するハウジングと、ハウジングと熱的に接続され、ベアリングで生成される熱量を取得し、取得した熱量との合計熱量が一定となる熱量を生成する熱量制御手段と、を備える。
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係るプレス方法は、所定位置に保持されたハウジングによって支持されたベアリングを用いて、所定の距離で対向配置された2つのローラーを等速で反対方向に回転させ、ベアリングで生成される熱量を取得し、取得した熱量との合計熱量が一定となる熱量を生成し、ハウジングへ供給する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置が大型になるのを避けることができると共に、熱変動に起因するプレスロール間距離の変動を容易に抑制することができるプレスロール装置およびプレス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプレスロール装置10の正面図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るプレスロール装置100の正面図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るプレスロール装置100の部分断面図の一例である。
【図4】関連技術に係る加圧処理装置900の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態に係るプレスロール装置の正面図の一例を図1に示す。図1において、本実施形態に係るプレスロール装置10は、2つのローラー20a、20b、ベアリング30、ハウジング40および熱量制御手段50を備える。
【0013】
2つのローラー20a、20bは、所定の距離で対向配置され、該ローラー20a、20b間に被プレス部材90が挟み込まれる。ローラー20a、20bの間に被プレス部材90が挟み込まれた状態で、ローラー20a、20bが等速で反対方向に回転することにより、被プレス部材90が所定厚さにプレスされる。
【0014】
ベアリング30は、所定位置に保持されているハウジング40により支持され、ローラー20a、20bを等速で反対方向に回転させる。
【0015】
熱量制御手段50は、熱を生成して、生成した熱を主にハウジング40へ供給する。この時、熱量制御手段50は、ベアリング30で生成される熱量と自手段で生成した熱量との合計熱量が、常に一定になるように、熱量を生成する。本実施形態において、熱量制御手段50は、予めベアリング30で生成される熱量の最大値Zを保持している。そして、実際にベアリング30で生成された熱量Xを取得し、熱量Y=熱量Z−熱量Xを演算する。そして、演算した熱量Yに相当する熱を生成して、ハウジング40へ供給する。また、本実施形態において、熱量制御手段50は、ベアリング30で生成された熱量Xを、ベアリング30の近傍に配置された温度センサの計測結果に基づいて演算する。なお、ベアリング30で生成された熱量Xは、ローラー20a、20bの回転速度の計測結果や、ベアリング30の回転量に基づいて演算することもできる。
【0016】
以上のように、本実施形態に係るプレスロール装置10は、ベアリング30で生成される熱量(熱量X)と自手段で生成した熱量(熱量Y)との合計熱量(熱量Z)が常に一定になるように熱を生成し、ハウジング40へ供給する。ハウジング40には、常に一定の熱量Zが供給されるため、ハウジング40の温度は一定に保たれる。従って、ハウジング40が温度変化して伸縮することを抑制することができる。
【0017】
また、熱量制御手段50は、ベアリング30で生成された熱量Xを取得し、該熱量Xに応じた熱量Yの熱を生成してハウジング40へ供給できればよく、小型の単純な熱生成回路を適用することができる。
【0018】
従って、装置が大型になるのを避けることができると共に、熱変動に起因するプレスロール間距離の変動を容易に抑制することができるプレスロール装置10を提供することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態では、プレスロール装置として、帯状の電極材料を高精度に圧縮するリチウムイオン電池用電極のプレスロール装置を適用する。
【0020】
本実施形態に係るプレスロール装置の正面図の一例を図2に示す。図2において、プレスロール装置100は、プレスロール110、ベアリング120、ハウジング130、動力140、圧下スクリュー150、ヒーター160およびフレーム170を備える。なお、本実施形態では特に使用しないが、プレスロールの形状を修正するためのベンドシリンダを備えていても良い。
【0021】
プレスロール110は電極材料200をプレスするプレス部111と動力(図示せず)からの回転力を受けてプレス部111を回転させる軸部112とを備える。なお、上側のプレスロール110を上側プレスロール110a(プレス部111aと軸部112aとを備える。)、下側のプレスロール110を下側プレスロール110bと記載する(プレス部111bと軸部112bとを備える。)。
【0022】
図2において、上側プレスロール110aと下側プレスロール110bとは平行に配置され、2つのプレスロール110a、110bのプレス部111a、111b間に帯状の電極材料200が挟み込まれる。プレスロール110a、110bが等速で逆方向に回転することによって、均一厚さの電極材料200が連続的に生成される。
【0023】
上側プレスロール110aの軸部112aは、ベアリング120およびハウジング130を介して圧下スクリュー150に支持されている。圧下スクリュー150が動力140から動力を得て上下方向に移動することにより、上側プレスロール110aが上下に移動する。そして、上側プレスロール110aのプレス部111aは、所望の高さにおいて回転する。
【0024】
一方、下側プレスロール110bは、軸部112bがベアリング120およびハウジング130を介してフレーム170に固定されることにより、一定高さに保持された状態でプレス部111bが回転する。
【0025】
すなわち、圧下スクリュー150を制御して上側プレスロール110aの高さを調整することにより、プレス部111a、111b間の間隔を所望の距離Gに調整し、電極材料の厚さを所望の厚さGにプレスする。
【0026】
ここで、一般的にハウジング130は金属で形成されることから、温度変化に伴ってハウジング130が伸縮する。例えば、軸部112aが回転してベアリング120内部で摩擦熱が発生することにより、ハウジング130の温度が上昇し、ハウジング130が膨張する。一方、軸部112aの回転が停止した場合、ハウジング130の温度が降下し、ハウジング130が収縮する。
【0027】
図2において、上側プレスロール110aを支持しているハウジング130は、圧下スクリュー150を介してフレーム170に固定されていることから、ハウジング130が膨張した場合、ハウジング130の中心は下方に移動する。ハウジング130の中心が下方に移動することにより、上側プレスロール110aが下方に移動する。
【0028】
同様に、下側プレスロール110bを支持しているハウジング130も、下側プレスロール110bの回転に伴い、温度が上昇して膨張する。ハウジング130はフレーム170に固定されていることから、ハウジング130の中心が上方に移動し、下側プレスロール110bが上方に移動する。
【0029】
上側プレスロール110aが下方に移動し、下側プレスロール110bが上方に移動することにより、上側プレスロール110aと下側プレスロール110bとの距離Gが小さくなる。電極材料200を連続的にプレスしている場合、時間の経過と共に摩擦熱によってハウジング130が膨張して距離Gが小さくなり、電極材料200の厚さが薄くなっていく。
【0030】
そこで、本実施形態に係るプレスロール装置100は、ベアリング120の近傍にヒーター160を配置する。本実施形態において、プレスロール装置100は、プレスロール110a、110bの回転速度に応じてヒーター160を稼働させ、ハウジング130を一定の温度に維持する。
【0031】
次に、プレスロール110a、110bの回転に伴ってヒーター160が発熱する機構について説明する。上側プレスロール110aの軸部112a周辺の断面図の一例を図3に示す。
【0032】
図3において、ベアリング120は、アウターレース121、コロ122およびインナーレース123で構成される。上側プレスロール110aが回転すると、転がり摩擦によって、インナーレース123とコロ122、さらに、コロ122とアウターレース121の接触部分から摩擦熱が発生する。この摩擦熱は、アウターレース121からハウジング130へ伝熱してハウジング130の温度が上昇する。
【0033】
一方、ヒーター160は、アウターヒーター161、インナーヒーター162および図示しない給電制御部163で構成される。本実施形態において、アウターヒーター161およびインナーヒーター162は環状に形成されたヒーターであり、アウターヒーター161はアウターレース121とハウジング130との間に、インナーヒーター162は、インナーレース123と上側プレスロール110aの軸部112aとの間に、配置される。そして、アウターヒーター161およびインナーヒーター162は、給電制御部163から供給される電力量に比例した熱を発する。
【0034】
給電制御部163はアウターヒーター161およびインナーヒーター162の近傍に配置され、プレスロール110a、110bの回転速度に応じて、アウターヒーター161およびインナーヒーター162へ電力量を供給する。給電制御部163は、プレスロール110が停止している期間は、アウターヒーター161およびインナーヒーター162に給電して、プレスロール110a、110bの回転によって発生する摩擦熱と等しい熱量を発生させる。一方、給電制御部163は、プレスロール110a、110bが回転している期間は、プレスロール110の回転速度に応じてアウターヒーター161およびインナーヒーター162へ供給する電力量を制御する。すなわち、プレスロール110の回転速度が大きくなるのに伴って、供給する電力量を小さくする。
【0035】
本実施形態において、給電制御部163は、ベアリング120で発生する熱量(熱量X)とアウターヒーター161およびインナーヒーター162で生成される熱量(熱量Y)との合計の熱量が一定値(熱量Z=熱量X+熱量Y)になるように、アウターヒーター161およびインナーヒーター162へ供給する電力を制御する。ベアリング120からハウジング130へ伝達される熱量とヒーター160からハウジング130へ伝達される熱量との合計を一定に保つことにより、ハウジング130の温度変化を抑制する。従って、ハウジング130が温度変化することによって伸縮し、上側プレスロール110aのプレス部111aと下側プレスロール110bのプレス部111bとの距離Gが変化することを抑制することができる。
【0036】
以上のように構成したプレスロール装置100は、ハウジング130の伸縮を抑制できるため、帯状の電極材料200を一定厚さGで精度良くプレスすることができる。また、電極材料200を予め予備加熱するための予備加熱部等を備える必要がないため、装置が大型になることを抑制することができる。さらに、ハウジング130を一定温度に維持できればよく、高度な調整は不要である。
【0037】
ここで、本実施形態では、環状のアウターヒーター161およびインナーヒーター162を用いてハウジング130を一定の温度に保持したが、これに限定されない。例えば、アウターヒーター161およびインナーヒーター162の形状は、ベアリング130に隣接した位置に配置できれば、種々の形状を適用することができる。また、ヒーター160の代わりに、ベアリング120の近傍に渦電流を発生させる渦電流発生装置を配置し、ベアリング120の周辺に渦電流を発生させて、発熱させることもできる。なお、摩擦熱はベアリング120のコロ122の周辺で最も多く発生することから、できる限りコロ122の近傍の熱量を調整することが可能な熱量調整手段を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0038】
10 プレスロール装置
20a、20b ローラー
30 ベアリング
40 ハウジング
50 熱量制御手段
90 被プレス部材
100 プレスロール装置
110 プレスロール
110a 上側プレスロール
110b 下側プレスロール
111、111a、111b プレス部
112、112a、112b 軸部
120 ベアリング
121 アウターレース
122 コロ
123 インナーレース
130 ハウジング
140 動力
150 圧下スクリュー
160 ヒーター
161 アウターヒーター
162 インナーヒーター
170 フレーム
200 電極材料
900 加圧処理装置
910 加圧処理部
920 予備加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離で対向配置され、等速で反対方向に回転する2つのローラーと、
前記ローラーを回転可能に支持するベアリングと、
所定位置に保持され、前記ベアリングを支持するハウジングと、
前記ハウジングと熱的に接続され、前記ベアリングで生成される熱量を取得し、前記取得した熱量との合計熱量が一定となる熱量を生成する熱量制御手段と、
を備える、プレスロール装置。
【請求項2】
前記熱量制御手段は、前記ローラーの回転速度を取得する回転速度取得部を備え、前記取得した回転速度に基づいて前記ベアリングで生成される熱量を取得する、請求項1記載のプレスロール装置。
【請求項3】
前記2つのローラー間の距離を調整する距離調整手段を備え、
一方の前記ローラーは、前記ベアリングおよび前記ハウジングを介して前記距離調整手段と接続される、請求項1または2記載のプレスロール装置。
【請求項4】
前記熱量制御手段は、前記ベアリングの近傍に配置される、請求項1乃至3のいずれか1項記載のプレスロール装置。
【請求項5】
前記熱量制御手段は、給電されて発熱することによって前記熱量を生成するヒーターを備える、請求項1乃至4のいずれか1項記載のプレスロール装置。
【請求項6】
前記ヒーターは、前記ローラーと前記ベアリングとの間に配置されるインナーヒーターと、前記ベアリングと前記ハウジングとの間に配置されるアウターヒーターとを備える、請求項5記載のプレスロール装置。
【請求項7】
前記熱量制御手段は、渦電流を生成させることによって前記熱量を生成する渦電流発生器を備える、請求項1乃至4のいずれか1項記載のプレスロール装置。
【請求項8】
前記渦電流発生器は、前記ベアリングの周辺に渦電流を発生させる、請求項7記載のプレスロール装置。
【請求項9】
所定位置に保持されたハウジングによって支持されたベアリングを用いて、所定の距離で対向配置された2つのローラーを等速で反対方向に回転させ、
前記ベアリングで生成される熱量を取得し、前記取得した熱量との合計熱量が一定となる熱量を生成し、前記ハウジングへ供給する、
プレス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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