説明

プレス曲げ加工用工具

【課題】曲げ加工し得る加工物の長さの拡大を図り、加工物にキズをつきにくくする。
【解決手段】各矢弦1、2(刃先の角度は例えば90°に設定)の刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度(例えば55°に設定)を、刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度(例えば35°に設定)よりも大きくして、各矢弦1、2は、一方の矢弦1又は2の刃先分割線L1又はL2が他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1と加工ブロック26又は16の内側端縁との間の中心位置よりも他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1に寄せた位置を取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンディングマシン(他に、プレスブレーキとも呼ばれる。)に取り付けられて、金属板などの機械品の曲げ加工を行うプレス曲げ加工用工具(以下、曲げ工具という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従前、この種の曲げ工具が本願出願人により提案され、これが特許文献1に開示されている。この文献1の曲げ工具は、2つの矢弦からなり、各矢弦は、矢弦本体と、この矢弦本体の端部に設けられ、垂直方向に延びる刃先分割線(中心線)によって二等分割された略90°の刃先を有するブレードと、このブレードから調節可能な間隔をあけて備え付けられ、ブレードとの間に当該ブレードの刃先面から略垂直に切り込んだ隙間を形成する曲げ加工用ブロックとを備え、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックのブレード側の内側端縁との間の中心位置に入るようにして互いに対向されるようになっている。この曲げ工具でプレス作業を行う場合、下側矢弦の上に加工物(一般には金属板)を載せてプレスを行う。上側矢弦のブレードは刃先が加工物の接触部を下側矢弦のブレードに隣接した隙間に押し込むようにして直角に折り曲げた後、刃先の(長寸法の)断面外側のエッジ辺と加工ブロックの面取り部との支持作用によって停止する。これと同時に、下側矢弦のブレードは、加工物の接触部を上側矢弦のブレードに隣接した隙間に押し込むようにして直角に折り曲げた後、刃先の(長寸法の)断面外側のエッジ辺と加工ブロックの面取り部との間の支持作用によって停止する。これにより、Z形金具が出来上る。
【0003】
また、この曲げ工具では特に、ブレードと、曲げ加工用ブロックとの何れか一方の部材が矢弦本体と一体的に設けられ、他方の部材が矢弦本体とは別体となし、この他方の部材が、一方の部材との間にスペーサ部材を介在され、このスペーサ部材を挟んだ状態で、一方の部材とねじ締め結合され、矢弦本体に着脱可能に取り付けられる。このようにして、矢弦本体の加工に際して、プレス曲げ加工用の部材であるブレード又は加工ブロックの支持面を正確に形成することができ、曲げ工具の精度を向上させることができる。また、ブレード又は加工ブロックについても、前側又は後側部分が矢弦本体加工時に開放状態となるため、この矢弦本体の加工に当たって、加工用の工具が矢弦本体の凹凸部分によって邪魔されることがなく、加工作業の能率を向上することができる。さらに、ブレード又は加工ブロックの刃が欠けたときにも、それが着脱部品であれば、これのみを取り外して修理を行え、また代わりの部品を用意しておけばよいので、メンテナンスの上でも好都合であるなど、種々の効果がある。
【特許文献1】特許第1707773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の曲げ工具においては、上記のとおりの優れた効果を有する一方で、次のような課題がある。
(1)この曲げ工具では、各矢弦のブレードに略90°の刃先を有し、この刃先が刃先分割線によって2等分割されて、各矢弦の刃先分割線とこの刃先分割線に対して断面外側のエッジ辺とのなす角度と、当該刃先分割線と当該刃先分割線に対して断面内側のエッジ辺とのなす角度が等しく、各矢弦は、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックのブレード側の内側端縁との間の中心位置にくるように、対向配置されるため、曲げ加工される加工物が、特に下側の矢弦の折り曲げ点から水平方向に対して下方に向け略45°の角度で曲げられる。このため、加工物が(通常の標準的な長さの加工材料に比べて)長いと、加工物の特に下端側が機械の一部やその直近周囲に衝接して曲げ加工することができないことがある。一般にこの種の加工機械で加工される加工物は長いものが多く、このような場合、加工物(の下端側)が加工機械(の一部)に当たらないように、障害物を取り除かなければならず、このため作業性は低下せざるを得ない。
(2)この曲げ工具では、各矢弦の2等分割された刃先で加工物の接触部を下側矢弦のブレードに隣接した隙間に押し込み、直角に折り曲げて押えるので、加工物に対する曲げの過程が急激で、加工物にキズがつきやすい。また、この曲げ加工の場合、曲げの過程で、特に加工物の下端側は水平方向に対して下方45°に向けて急激に降下されるため、この加工に関わる作業者が安全に作業を行うことができないおそれがある。
(3)この曲げ工具では、上側矢弦と下側矢弦の相対運動により、各矢弦の刃先がずれた位置で加工物を加圧するので、加圧時に、各矢弦に位置ずれが生じやすく、特に下側矢弦は、テーブルにねじ止めされるだけなので、位置ずれが生じやすくい。また、矢弦がずれやすいために、金型の長さを延ばしたり、長さを延ばすために金型をつないだりすることが難しく、曲げ長さを拡大することができない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、この種の曲げ工具において、曲げ加工し得る加工物の長さを拡大することができ、(通常の標準的な長さの加工材料に比べて)長い加工物でも加工機械やその直近周囲に衝突することなしに、確実に曲げ加工すること、加工物にキズをつきにくくすること、加工に関わる作業者にとって安全な曲げ加工を実現すること、(矢弦の)位置ずれを少なくして曲げ加工精度を高め、併せて金型長さを拡大して曲げ長さの拡大を図ること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の曲げ工具は、矢弦本体と、矢弦本体の端部に設けられ、垂直方向に延びる刃先分割線によって2つに分割された所定の角度の刃先を有するブレードと、矢弦本体の端部に当該ブレードとの間に調節可能な間隔で、当該ブレードの刃先面から略垂直に切り込んだ隙間を介して設けられた曲げ加工用ブロックとを備えて成る二つの矢弦を、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックのブレード側の内側端縁との間に位置設定されて互いに対向させるプレス曲げ加工用工具において、各矢弦の刃先分割線とこの刃先分割線に対して断面外側のエッジ辺とのなす角度を、当該刃先分割線と当該刃先分割線に対して断面内側のエッジ辺とのなす角度よりも大きくして、各矢弦は、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックの内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦の刃先分割線に寄せた位置を取ることを要旨とする。この場合、各矢弦において、曲げ加工用ブロックの内側端縁が面取りされ、ブレードの断面内側のエッジ辺は曲げ加工用ブロックの面取り部よりも短く形成されることが好ましい。各矢弦において、一方の矢弦の加工ブロックの内側端縁が他方の矢弦の断面外側のエッジ辺に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレードと曲げ加工用ブロックとの間の隙間が拡開されることが好ましい。そして、各矢弦において、ブレードは略90°の刃先を有し、刃先分割線と断面外側のエッジ辺とのなす角度は55°に設定され、刃先分割線と断面内側のエッジ辺とのなす角度は35°に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の曲げ工具は、上記各構成により、次のような効果を奏する。
(1)各矢弦(刃先の角度は例えば90°に設定)の刃先分割線と断面外側のエッジ辺とのなす角度(例えば55°に設定)を、刃先分割線と断面内側のエッジ辺とのなす角度(例えば35°に設定)よりも大きくして、各矢弦は、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックの内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦の刃先分割線に寄せた位置を取るようにしたので、加工物を折り曲げたときに、加工物の両端を加工物の折り曲げ点から水平方向に対して可及的に小さい角度で延ばすことができる。この場合、各矢弦において、一方の矢弦の加工用ブロックの内側端縁が他方の矢弦の断面外側のエッジ辺に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレードと曲げ加工用ブロックとの間の隙間が拡開されることによって、その効果はさらに増大する。したがって、曲げ加工し得る加工物の長さを拡大することができ、(通常の標準的な長さの加工材料に比べて)長い加工物でも加工機械やその直近周囲に衝突することなしに、確実に曲げ加工することができる。
(2)各矢弦の刃先分割線と断面外側のエッジ辺とのなす角度を刃先分割線と断面内側のエッジ辺とのなす角度よりも大きくした刃先で、加工物の接触部を各矢弦のブレードに隣接した隙間に押し入れ、折り曲げて押えるので、加工物に対する曲げの過程が緩やかで、加工物にキズがつきにくい。また、この曲げ加工の場合、曲げの過程で、特に加工物の下端側は(緩やかな動きで)水平方向に対して下方に向け緩やかな角度に降下されるため、この加工に関わる作業者が作業を安全に行うことができる。したがって、作業者にとっても安全な曲げ加工を実現することができる。この場合、各矢弦において、一方の矢弦の曲げ加工用ブロックの内側端縁が他方の矢弦の断面外側のエッジ辺に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレードと曲げ加工用ブロックとの間の隙間が拡開されることで、その効果はさらに増大する。
(3)各矢弦の相対運動に際して、各矢弦の刃先が相互に寄せられた位置で加工物を加圧するので、加圧時に、各矢弦に位置ずれが生じにくく、特に下側矢弦が、テーブルにねじ止めされているだけでも、位置ずれが生じにくい。また、このように矢弦の位置がずれにくいため、金型の長さを延ばしたり、長さを延ばすために金型をつないだりすることができ、曲げ長さを拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の一実施の形態について図を用いて説明する。図1に示すように、この曲げ工具は、上側矢弦1と下側矢弦2とより構成される。
【0009】
上側矢弦1はその上端部分における矢弦取付部P1をベンディングマシン本体にボルト又は他の適宜な締結部材によって固定される。この上側矢弦1は、矢弦本体10と、この矢弦本体10の端部(この場合、下端部)に設けられ、下方に向けて突出するブレード11及び曲げ加工用ブロック16(以下、単に加工ブロック16という。)とを備える。この上側矢弦1の場合、矢弦本体10と加工ブロック16が一体的に形成される。ブレード11は矢弦本体10と別体のブロック体として形成され、加工ブロック16(の横方向)に着脱可能に取り付けられて、ブレード11と加工ブロック16との間に間隔が調節可能で、ブレード11の刃先12面から略垂直に切り込んだ隙間が設けられる。
【0010】
この上側矢弦1において、加工ブロック16は断面が略矩形状を有し、図1において紙面に垂直の方向に延びる棒状体で、また、この加工ブロック16の内側端縁(内側端面の下端縁部)は、後述する下側矢弦2の刃先分割線L2に対して断面外側のエッジ辺23に対向する2面接合部で、当該断面外側のエッジ辺23と平行に面取りされ、この面取り部16Cは55°の角度に設定される。この加工ブロック16以外の、矢弦本体10の下端面10Uは、加工ブロック16の根元部分から矢弦本体10の側端まで延びる、平坦な面として形成される。ブレード11は、垂直方向に延びる刃先分割線L1によって2つに分割された所定の角度の刃先12を有し、刃先分割線L1に対して断面外側に長寸法のエッジ辺13、断面内側に短寸法のエッジ辺14を有する。この場合、ブレード11は略90°の刃先12を有し、この上側矢弦1の刃先分割線L1とこの刃先分割線L1に対して断面外側のエッジ辺13とのなす角度は55°に設定され、当該刃先分割線L1と当該刃先分割線L1に対して断面内側のエッジ辺14とのなす角度は35°に設定される。また、刃先分割線L1に対して断面内側のエッジ辺14は加工ブロック16の面取り部16Cよりも短く形成される。このブレード11の矢弦本体10の下端面10Uに当接固定された場合の、ブレード11の先端位置は加工ブロック16の下端面16Uの位置と略同一平面上になるように寸法設定される。このブレード11は加工ブロック16の横方向位置に調節可能に間隔をあけて設けられる。この場合、ブレード11と加工ブロック16との間にスペーサ17が複数枚挿入される。複数のスペーサ17はその高さ方向寸法が、加工ブロック16の高さ方向寸法よりも小さく、これらのスペーサ17が矢弦本体10の下端面10Uに当接固定された場合の、各スペーサ17の下端部17Uの位置はブレード11の先端位置よりも上方となるように寸法設定される。これらブレード11、スペーサ17、及び加工ブロック16間にわたって横方向に延びるねじ通し孔18が形成され、このねじ通し孔18にボルトB2が一方から通されて、ねじにより締結される。このようにしてブレード11が加工ブロック16に固定結合され、ブレード11の内側端面と加工ブロック16の内側端面との間で、スペーサ17の下方部分に隙間が形成される。この場合、上側矢弦1の加工ブロック16の内側端縁が下側矢弦2の断面外側のエッジ辺23に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード11と加工ブロック16との間の隙間が拡開されることが好ましい。
【0011】
他方、下側矢弦2についてみると、下側矢弦2は、ベンディングマシン本体の上に設けられたテーブルの上に載置され、このテーブルにボルトにより固定される。この下側矢弦2もまた、上側矢弦1と略同様の構造を有し、矢弦本体20と、この矢弦本体20の端部(この場合、上端部)に設けられ、上方に向けて突出するブレード21及び加工ブロック26とを備える。この下側矢弦2の場合も、矢弦本体20と加工ブロック26が一体的に形成される。ブレード21は矢弦本体20と別体のブロック体として形成され、加工ブロック26(の横方向)に着脱可能に取り付けられて、ブレード21と加工ブロック26との間に間隔が調節可能で、ブレード21の刃先22面から略垂直に切り込んだ隙間が設けられる。
【0012】
この下側矢弦2において、加工ブロック26は断面が略矩形状を有し、図1において紙面に垂直の方向に延びる棒状体で、また、この加工ブロック26の内側端縁(内側端面の上端縁部)は、上側矢弦1の刃先分割線L1に対して断面外側のエッジ辺13に対向する2面接合部で、当該断面外側のエッジ辺13と平行に面取りされ、この面取り部26Cは55°の角度に設定される。この加工ブロック26以外の、矢弦本体20の上端面20Тは、加工ブロック26の根元部分から矢弦本体20の側端まで延びる、平坦な面として形成される。ブレード21は、垂直方向に延びる刃先分割線L2によって2つに分割された所定の角度の刃先22を有し、刃先分割線L2に対して断面外側に長寸法のエッジ辺23、断面内側に短寸法のエッジ辺24を有する。この場合、ブレード21は略90°の刃先22を有し、この下側矢弦2の刃先分割線L2とこの刃先分割線L2に対して断面外側のエッジ辺23とのなす角度は55°に設定され、当該刃先分割線L2と当該刃先分割線L2に対して断面内側のエッジ辺24とのなす角度は35°に設定される。また、刃先分割線L2に対して断面内側のエッジ辺24は加工ブロック26の面取り部26Cよりも短く形成される。このブレード21の矢弦本体20の上端面20Тに当接固定された場合の、ブレード21の先端位置は加工ブロック26の上端面26Тの位置と略同一平面上になるように寸法設定される。このブレード21は加工ブロック26の横方向位置に調節可能に間隔をあけて設けられる。この場合、ブレード21と加工ブロック26との間にスペーサ27が複数枚挿入される。複数のスペーサ27はその高さ方向寸法が、加工ブロック26の高さ方向寸法よりも小さく、これらのスペーサ27が矢弦本体20の上端面20Тに当接固定された場合の、各スペーサ27の上端部27Тの位置はブレード21の先端位置よりも下方となるように寸法設定される。これらブレード21、スペーサ27、及び加工ブロック26間にわたって横方向に延びるねじ通し孔28が形成され、このねじ通し孔28にボルトB4が一方から通されて、ねじにより締結される。このようにしてブレード21が加工ブロック26に固定結合され、ブレード21の内側端面と加工ブロック26の内側端面との間で、スペーサ27の上方部分に隙間が形成される。この場合、下側矢弦2の加工ブロック26の内側端縁が上側矢弦1の断面外側のエッジ辺13に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード21と加工ブロック26との間の隙間が拡開されることが好ましい。
【0013】
この曲げ工具の上側矢弦1と下側矢弦2は相互に対向してベンディングマシン本体に取り付けられる。この曲げ工具の場合、各矢弦1、2の刃先分割線L1、L2は、一方の矢弦1又は2の刃先分割線L1又はL2が他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1と加工ブロック26又は16のブレード21又は11側の内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1に寄せた所定の位置に位置設定される。この場合、上側矢弦1のブレード11及び加工ブロック16の位置関係と、下側矢弦2のブレード21及び加工ブロック26の位置関係とは左右対称になっているため、一方の矢弦1又は2のブレード11又は21について位置決めすれば、他方の矢弦2又は1のブレード21又は11についても位置決めすることができる。
【0014】
このようにして上側及び下側の各矢弦1、2を位置設定した後、下側矢弦2の上に加工物(一般には金属板)を載せてプレス作業を行うと、上側矢弦1のブレード11は加工物の接触部を下側矢弦2のブレード21に隣接する隙間に押し入れるようにして直角に折り曲げた後、ブレード11の断面外側のエッジ辺13と加工ブロック26の面取り部26Cとの支持作用によって停止する。これと同時に、下側矢弦2のブレード21は、加工物の接触部を上側矢弦1のブレード11に隣接する隙間に押し入れるようにして直角に折り曲げた後、ブレード21の断面外側のエッジ辺23と加工ブロック16の面取り部16Cとの間の支持作用によって停止する。
【0015】
そして、このとき、各矢弦1、2(刃先12、22の角度は例えば90°に設定)の刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度(例えば55°に設定)を、刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度(例えば35°に設定)よりも大きくして、各矢弦1、2は、一方の矢弦1又は2の刃先分割線L1又はL2が他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1と加工ブロック26又は16の内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1に寄せた位置を取るようにしたので、加工物を折り曲げたときに、加工物の両端を加工物の折り曲げ点から水平方向に対して可及的に小さい角度で延ばすことができる。この場合、各矢弦1、2において、一方の矢弦1又は2の加工ブロック16又は26の内側端縁が他方の矢弦2又は1の断面外側のエッジ辺23又は13に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード11又は21と加工ブロック16又は26との間の隙間が拡開されることによって、その効果はさらに増大する。したがって、通常の標準的な長さの加工材料に比べて長い加工物でも加工機械やその直近周囲に衝突することがない。また、この場合、各矢弦1、2の刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度を刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度よりも大きくし、加工物の接触部を各矢弦1、2のブレード11、21に隣接する隙間に押し入れ、折り曲げて押えるので、加工物に対する曲げの過程が緩やかで、加工物にキズがつきにくい。さらに、この曲げ加工の場合、曲げの過程で、特に加工物の下端側は(緩やかな動きで)水平方向に対して下方に向け緩やかな角度に降下されるため、この加工に関わる作業者が作業を安全に行うことができる。これらの場合でも、各矢弦1、2において、一方の矢弦1又は2の加工ブロック16又は26の内側端縁が他方の矢弦2又は1の断面外側のエッジ辺23又は13に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード11又は21と加工ブロック16又は26との間の隙間が拡開されることで、その効果はさらに増大する。またさらに、各矢弦1、2の相対運動に際して、各矢弦1、2の刃先12、22が相互に寄せられた位置で加工物を加圧するので、加圧時に、各矢弦1、2に位置ずれが生じにくく、特に下側矢弦2が、テーブルにねじ止めされているだけでも、位置ずれが生じにくい。このようにして、例えば図2に示すようなZ形金具3が出来上る。
【0016】
なお、このZ形金具3の段差寸法(図1中、Hで示す)は、各矢弦1、2のそれぞれのブレード11、21と加工ブロック16、26との間の寸法を調節することにより種々の寸法に変更することができる。すなわち、上側矢弦1においてスペーサ17を増減させることにより、ブレード11は、その位置を加工ブロック16に対して遠近方向に移動することができ、これによって、ブレード11と加工ブロック16との間に形成される隙間の寸法を変更することができる。下側矢弦21についても同様にスペーサ27を増減させることにより、ブレード21を加工ブロック26に対して遠近方向に移動させることができ、このブレード21と加工ブロック26との間に形成された隙間の寸法を変更することができる。これにより、種々の段差寸法をもったZ形金具3を形成することができる。因みに、スペーサ17、27をすべて取り去れば、ブレード11、21の断面内側のエッジ辺14、24と加工ブロック16、26の面取り部16C、26Cが直接対接し、最も小さなZ形金具の段差寸法に設定される。
【0017】
以上説明したように、この曲げ工具においては、各矢弦1、2は90°の刃先12、22を有し、刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度を55°に設定し、刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度を35°に設定して、前者の角度を後者の角度よりも大きくして、各矢弦1、2は、一方の矢弦1又は2の刃先分割線L1又はL2が他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1と加工ブロック26又は16の内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦2又は1の刃先分割線L2又はL1に寄せた位置を取るようにしたので、加工物を折り曲げたときに、加工物の両端を加工物の折り曲げ点から水平方向に対して可及的に小さい角度で延ばすことができる。したがって、曲げ加工し得る加工物の長さを拡大することができ、(通常の標準的な長さの加工材料に比べて)長い加工物でも加工機械やその直近周囲に衝突することなしに、確実に曲げ加工することができる。そして、この場合、各矢弦1、2において、一方の矢弦1又は2の加工ブロック16又は26の内側端縁を他方の矢弦2又は1の断面外側のエッジ辺23又は13に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード11又は21と加工ブロック16又は26との間の隙間を拡開することによって、その効果をさらに増大させることができる。また、各矢弦1、2の刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度を刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度よりも大きくした刃先12、22で、加工物の接触部を各矢弦2、1のブレード21、11に隣接した隙間に押し入れ、折り曲げて押えるので、加工物に対する曲げの過程が緩やかで、加工物にキズをつきにくくすることができる。また、この曲げ加工の場合、曲げの過程で、特に加工物の下端側は(緩やかな動きで)水平方向に対して下方に向け緩やかな角度に降下されるため、この加工に関わる作業者が作業を安全に行うことができる。そして、これらの場合も、各矢弦1、2において、一方の矢弦1又は2の加工ブロック16又は26の内側端縁を他方の矢弦2又は1の断面外側のエッジ辺23又は13に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレード11又は21と加工ブロック16又は26との間の隙間を拡開することで、その効果をさらに増大させることができる。さらに、各矢弦1、2の相対運動に際して、各矢弦1、2の刃先12、22が相互に寄せられた位置で加工物を加圧するので、加圧時に、各矢弦1、2に位置ずれが生じにくく、特に下側矢弦2が、テーブルにねじ止めされているだけでも、位置ずれを生じにくくすることができる。また、このように矢弦1、2の位置がずれにくいことで、金型の長さを延ばしたり、長さを延ばすために金型をつないだりすることができ、曲げ長さを拡大することができる。
【0018】
なお、この実施の形態では、刃先12、22の角度が90°で、刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度は55°に設定され、刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度は35°に設定されているが、この刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度、及び刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度はこれに限定されるものではなく、刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度を刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度よりも大きくしていれば、適宜の値に変更することができる。また、刃先12、22の角度は90°に設定されているが、この角度は90°の前後で種々に変更できる。そして、この刃先12、22の角度の範囲内で、刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度、及び刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度は、刃先分割線L1、L2と断面外側のエッジ辺13、23とのなす角度が刃先分割線L1、L2と断面内側のエッジ辺14、24とのなす角度よりも大きく、それぞれに最適な値が設定される。
【0019】
また、この実施の形態では、上側矢弦1及び下側矢弦2において、加工ブロック16、26がそれぞれの矢弦本体10、20に一体的に設けられ、ブレード11、21がそれぞれの矢弦本体10、20に着脱可能に取り付けられているが、既述の特許文献1に開示されているように、上側矢弦1及び下側矢弦2において、ブレード11、21がそれぞれの矢弦本体10、20に一体的に設けられ、加工ブロック16、26がそれぞれの矢弦本体10、20に着脱可能に取り付けられてもよい。また、上側矢弦1においては、加工ブロック16を着脱自在にする一方、下側矢弦2については、ブレード21を着脱自在の構成とし、加工ブロック26を、矢弦本体20に一体的に設けるような構成にしてもよく、上側矢弦1又は下側矢弦2のうち一方については、加工ブロック16又は26を矢弦本体10又は20に一体的に設け、他方については、これとは逆に、ブレード21又は11を矢弦本体20又は10と一体的に設けても勿論かまわない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態におけるプレス曲げ加工用工具を示す側面図
【図2】同曲げ加工用工具によってZ形に曲げ加工された加工物を示す図
【符号の説明】
【0021】
1 上側矢弦
P1 矢弦取付部
10 矢弦本体
10U 下端面
11 ブレード
12 刃先
L1 刃先分割線
13 (断面外側の)エッジ辺
14 (断面内側の)エッジ辺
16 加工ブロック
16U 下端面
16C 面取り部
17 スペーサ
17U 下端部
18 ねじ通し孔
2 下側矢弦
20 矢弦本体
20Т 上端面
21 ブレード
22 刃先
L2 刃先分割線
23 (断面外側の)エッジ辺
24 (断面内側の)エッジ辺
26 加工ブロック
26Т 下端面
26C 面取り部
27 スペーサ
27Т 上端部
28 ねじ通し孔
3 Z形金具
B2 ボルト
B4 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矢弦本体と、矢弦本体の端部に設けられ、垂直方向に延びる刃先分割線によって2つに分割された所定の角度の刃先を有するブレードと、矢弦本体の端部に当該ブレードとの間に調節可能な間隔で、当該ブレードの刃先面から略垂直に切り込んだ隙間を介して設けられた曲げ加工用ブロックとを備えて成る二つの矢弦を、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックのブレード側の内側端縁との間に位置設定されて互いに対向させるプレス曲げ加工用工具において、
各矢弦の刃先分割線とこの刃先分割線に対して断面外側のエッジ辺とのなす角度を、当該刃先分割線と当該刃先分割線に対して断面内側のエッジ辺とのなす角度よりも大きくして、
各矢弦は、一方の矢弦の刃先分割線が他方の矢弦の刃先分割線と曲げ加工用ブロックの内側端縁との間の中心位置よりも前記他方の矢弦の刃先分割線に寄せた位置を取ることを特徴とするプレス曲げ加工用工具。
【請求項2】
各矢弦において、曲げ加工用ブロックの内側端縁が面取りされ、ブレードの断面内側のエッジ辺は曲げ加工用ブロックの面取り部よりも短く形成される請求項1に記載のプレス曲げ加工用工具。
【請求項3】
各矢弦において、一方の矢弦の加工用ブロックの内側端縁が他方の矢弦の断面外側のエッジ辺に対してその中心位置よりも外側に位置するように、ブレードと曲げ加工用ブロックとの間の隙間が拡開される請求項1又は2に記載のプレス曲げ加工用工具。
【請求項4】
各矢弦において、ブレードは略90°の刃先を有し、刃先分割線と断面外側のエッジ辺とのなす角度は55°に設定され、刃先分割線と断面内側のエッジ辺とのなす角度は35°に設定される請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス曲げ加工用工具。

【図1】
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【図2】
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