説明

プレス曲げ機用金型

【課題】 簡単な段取り作業によって種々な硬さのブランク(金属板)に対して種々な高さの段曲げ加工を確実かつ曲げきずなどの不良を発生させることなく行えるようにしたプレス曲げ機用金型を提供する。
【解決手段】 プレス曲げ機用金型において、パンチ及びダイの相互に対向される先端部には雄型部分が段曲げ加工の中心線(a)から見て幅方向に所定の距離をあけて形成され、立ち上がり面(15,25)を位置決め部とした載置段部(14,24)が対向する相手方の雄型部分の方向に延びて形成され、載置段部の上面には断面長方形状の雌型ブロック(16,26)が載置されて立ち上がり面によって位置決めされ、雌型ブロックには雌型部分を構成する型面(19,29)が載置段部に対して立ち上がる方向に延びて形成されている一方、雌型ブロックの断面長方形状の4つの先端コーナーは少なくとも1つのコーナーの曲率が他のコーナーの曲率と異なるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス曲げ機用金型に関し、特に簡単な段取り作業によって種々な硬さのブランク(金属板)に対して種々な高さの段曲げ加工を確実かつ曲げきずなどの不良を発生させることなく行えるようにした金型に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス曲げ機にはプレスブレーキ等の各種の方式があるが、その加工形態は基本的にはパンチ(上型)とダイ(下型)の間にブランクをセットし、パンチの雄型部分とダイの雌型部分とを型合わせしてブランクに曲げ荷重を加え、ブランクを塑性変形させるというものである。
【0003】
プレス曲げ加工のうち、段曲げ加工はプレス製品の多くの部分に頻繁に適用されるが、製品の部分によって段差の高さ(以下、段曲げの高さともいう)が異なることが多い。従って、いわゆるV型を段曲げ加工に用いると、段曲げの高さが異なるたびに金型を交換する必要が生じ、非常に煩雑であるばかりでなく、多数の金型を必要としてコスト高となってしまう。
【0004】
そこで、パンチ及びダイの相互に対向される先端部には断面L字状の載置段部を形成し、パンチ及びダイをプレス曲げ機に取り付けたまま、パンチ及びダイの載置段部にブロックを取り換え可能にセットするとともに、載置段部の立ち上がり面によって位置決めし、取付けねじ又は磁石の磁着作用によってブロックを載置段部に保持し、ブロックに相互に直交する先端コーナー面又はブロック上面と立ち上がり面によって成型面を構成するようにしたプレス曲げ機用金型が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】実開昭55−122921号公報
【特許文献2】特開2003−117607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来公報記載のプレス曲げ機用金型では軟らかいブランクに対して段曲げ加工を行うときに、高い曲げ精度を確保するためにはブロックの直交する先端コーナー面のR(曲率)を小さくする必要があったが、そのブロックによって硬いブランクに対して段曲げ加工を行うと、曲げキズなどの不良が発生することがあり、Rの大きなブロックと交換する必要があり、交換作業が依然として煩雑であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、簡単な段取り作業によって種々な硬さのブランクに対して種々な高さの段曲げ加工を確実かつ曲げきずなどの不良を発生させることなく行えるようにしたプレス曲げ機用金型を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るプレス曲げ機用金型は、パンチ及びダイの雄型部分と雌型部分の型合わせ動作によって曲げ荷重を加えてブランクを段曲げ加工するプレス曲げ機用金型において、パンチ及びダイの相互に対向される先端部には雄型部分が段曲げ加工の中心線から見て幅方向に所定の距離をあけて形成されるとともに、立ち上がり面を位置決め部とした載置段部が上記雄型部分に連続しかつ対向する相手方の雄型部分の方向に延びて形成され、上記載置段部の上面には断面長方形状の雌型ブロックが載置されるとともに、上記載置段部の立ち上がり面によって位置決めされ、該雌型ブロックには雌型部分を構成する型面が上記載置平面に対して立ち上がる方向に延びて形成されている一方、上記雌型ブロックの断面長方形状の4つの先端コーナーは少なくとも1つのコーナーの曲率が他の3つのコーナーの曲率と異なるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の主たる特徴はパンチ及びダイの雌型部分を構成する雌型ブロックの4つの先端コーナーの少なくとも1つのコーナーの曲率を他の3つのコーナーの曲率と異ならせるようにした点にある。
【0010】
例えば、雌型ブロックの少なくとも1つの先端コーナーを硬いブランクに対応して大きなRに形成し、他の先端コーナーを軟らかいブランクに対応して小さなRに形成すると、硬いブランクに対して段曲げ加工を行う場合には大きなRの先端コーナーによって成型面を構成すると、曲げきずなどの不良を起こすことなく確実に段曲げ加工を行うことができ、軟らかいブランクに対して段曲げ加工を行う場合には小さなRの先端コーナーによって成型面を構成すると、高い精度で確実に段曲げ加工を行うことができる。
【0011】
本発明の特徴の1つはパンチ及びダイの雄型部分に連続して載置段部を形成して上面に雌型ブロックを載置し、載置段部の立ち上がり面によって雌型ブロックを位置決めするようにした点にある。
【0012】
これにより、パンチ及びダイの雄型部分と雌型部分の型合わせ動作によって曲げ荷重は雌型ブロックを経て載置段部の立ち上がり面で受けられるので、曲げ荷重によって雌型ブロックが位置ずれを起こすことはなく、所望の段曲げ加工を行うことができる。
【0013】
その結果、従来のようにボルトによって雌型ブロックを強固に固定する必要がなく、雌型ブロックを磁石によって載置平面に保持しておくことができる。従って、金型をプレス曲げ機に取り付けたままで雌ブロックを交換し、スペーサを差し込むことができるので、曲げ線の平行度を確保するための微調整も非常に簡単に、しかも短時間のうちに行うことができる。
【0014】
段曲げ高さや平行度を微調整する場合、雌型ブロックと載置段部の上面との間にはスペーサを介設してもよい。また、雌型ブロックと載置段部の立ち上がり面との間にもスペーサを介設することもできる。特に、本発明では雌型ブロックを磁石によって載置段部の上面に保持しているので、スペーサの抜き差しを非常に簡単に行える。
【0015】
磁石は雌型ブロック側に設けてもよく、載置段部の上面側に設けてもよく、両者に設けるようにしてもよいが、磁石が突出していると、雌型ブロックの載置や取外しに邪魔になることがある。そこで、雌型ブロックの裏面及び/又は載置段部の上面に凹所を形成し、凹所には磁石を面一に嵌め込むのがよい。
【0016】
雌型ブロック及びスペーサは磁石による雌型ブロックの磁着力を損なわない材料であればどのような材料で製作されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係るプレス曲げ機用金型の好ましい実施形態を示す。図において、金型はパンチ10とダイ20との組み合わせから構成されている。パンチ10では本体12はほぼ側面逆三角形状をなし、本体12の上端部にはプレス曲げ機(図示せず)への取付け部11が一体的に形成され、取付け部11はほぼ一定の厚みを長さ方向に連続させた立体形状をなしている。
【0018】
他方、ダイ20の本体22は側面ほぼ逆三角形状をなし、その底面にはプレス曲げ機(図示せず)への取付け凹部21が一体的に形成され、取付け凹部21はほぼ一定の深さを長さ方向に連続させた形状をなしている。
【0019】
また、パンチ10及びダイ20の本体12、22の対向される先端部にはほぼ直角状をなす雄型部分13、23が段曲げ加工の中心線aから見て幅方向に所定の距離をあけてかつ長手方向に連続して形成されている。
【0020】
さらに、パンチ10及びダイ20の本体12、22の対向される先端部には断面L字状の載置段部14が雄型部分13、23の一方の型面と連続しかつ該型面と同一方向に延びて形成され、載置段部14、24の終端の立ち上がり面15、25は載置段部14、24から垂直な方向、後述する雌型ブロック16、26の型面19、29に対して相互に平行をなすように立ち上がり形成されている。
【0021】
この載置段部14、24の上面中央には円形凹所17、27が形成され、該円形凹所17、27には円板状の磁石18、28が面一に嵌め込んで固定されている。
【0022】
また、載置段部14、24の上面には雌型ブロック16、26が載置されて磁石18、28によって磁着されて保持されている。この雌型ブロック16、26の後端面は載置段部14、24の立ち上がり面15、15と当接されることにより位置決めされている。
【0023】
この雌型ブロック15、25は断面長方形状に製作され、4つの先端コーナーのうち、2つは同じ0.2Rに、残りのうちの1つは0.4R、他は0.6Rに形成されており、雌形ブロック15、25のいずれの面を載置段部14、24の上面に載置させるかによって雌型部分を構成する型面19、29を選択できるようになっている。この型面15、25は載置段部14、24の上面に対して垂直な方向に延びている。
【0024】
ブランクWを段曲げ加工する場合、パンチ10とダイ20の間にブランクWをセットし、パンチ10を下降させて対向する雌雄の型部分を型合わせ動作させてブランクWに曲げ荷重を加えると、ブランクWに段部が曲げ加工される。
【0025】
その際、雄型部分13、23の下降に伴う曲げ荷重は雌型ブロック16,26を経て載置段部14、24の立ち上がり面15、25に伝わり、立ち上がり面15、25で受けられるので、雌型ブロック16,26が位置ずれを起こすことはなく、所定の段曲げ加工を行うことができる。
【0026】
また、図3の(a)に示される方式にて段曲げ加工を行う場合には段曲げの高さは雌型ブロック16、26の幅Lによって決定されるので、段曲げの高さを変更する場合には図4に示されるように、幅Lの雌型ブロック16、26を準備し、プレス曲げ機にパンチ10及びダイ20の本体12、22を取付けた状態のままで、準備した雌型ブロック16、26と交換する。
【0027】
また、段曲げ高さを微調整し、あるいは曲げ線の平行度を確保する場合には必要に応じてスペーサ30を雌型ブロック16、26と載置段面14、24の上面及び/又は立ち上がり面15、25との間に差し込んで行う。
【0028】
また、図3の(a)に示される方式に代え、図3の(b)に示される方式にてブランクWを段曲げ加工することもできる。
【0029】
ところで、硬さの異なるブランクWを段曲げ加工する場合、曲げきずなどの不良が懸念される。そこで、軟らかいブランクWを曲げ加工するときには0.2Rの先端コーナーに連続する面が型面19、29となるように雌型ブロック16、26を載置段部14、24の上面に載置する。これによって軟らかいブランクWを高い精度でもって段曲げ加工することができる。
【0030】
硬いブランクWを段曲げ加工する場合、0.4R又は0.6Rの先端コーナーに連続する面が型面19、29となるように雌型ブロック16、26を載置段部14、24の上面に載置する。これによって曲げきずなどの不良を起こすことなく硬いブランクWを確実に段曲げ加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るプレス曲げ機用金型の好ましい実施形態を示す要部拡大断面図である。
【図2】上記実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】上記実施形態における2つの段曲げ加工の方式を模式的に示す断面側面図である。
【図4】上記実施形態の段曲げの高さを変更する作業を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10 パンチ
13 雄型部分
14 載置段部
15 立ち上がり面
16 雌型ブロック
17 凹所
18 磁石
19 型面
20 ダイ
23 雄型部分
24 載置段部
25 立ち上がり面
26 雌型ブロック
27 凹所
28 磁石
29 型面
30 スペーサ
W ブランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ及びダイの雄型部分と雌型部分の型合わせ動作によって曲げ荷重を加えてブランクを段曲げ加工するプレス曲げ機用金型において、
パンチ(10)及びダイ(20)の相互に対向される先端部には雄型部分が段曲げ加工の中心線(a)から見て幅方向に所定の距離をあけて形成されるとともに、立ち上がり面(15,25)を位置決め部とした載置段部(14,24)が上記雄型部分に連続しかつ対向する相手方の雄型部分の方向に延びて形成され、
上記載置段部(14,24)の上面には断面長方形状の雌型ブロック(16,26)が載置されるとともに、上記載置段部(14,24)の立ち上がり面(15,25)によって位置決めされ、該雌型ブロック(16,26)には雌型部分を構成する型面が上記載置段部(14,24)の上面に対して立ち上がる方向に延びて形成されている一方、
上記雌型ブロック(16,26)の断面長方形状の4つの先端コーナーは少なくとも1つのコーナーの曲率が他のコーナーの曲率と異なるように形成されていることを特徴とするプレス曲げ機用金型。
【請求項2】
上記雌型ブロック(16,26)の裏面及び/又は上記載置段部(14,24)の上面には凹所(17,27)が形成され、該凹所(17,27)には磁石(18,28)が面一に嵌め込まれ、雌型ブロック(16,26)が取り換え可能に保持されている請求項1記載のプレス曲げ機用金型。
【請求項3】
上記雌型ブロック(16,26)と載置段部(14,24)の上面との間にはスペーサ(30)が介設されて段曲げ高さを微調整可能となした請求項1記載のプレス曲げ機用金型。
【請求項4】
上記雌型ブロック(16,26)と載置段部(14,24)の立ち上がり面(15,25)との間にはスペーサ(30)が介設されて雌型ブロック(14,24)の進退位置を微調整可能となした請求項1記載のプレス曲げ機用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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