説明

プレス構成

【課題】特にセラミック歯科補綴材のプレスおよび焼結に際してクラックおよび空洞形成の傾向を著しく低減することができるマッフルならびにセラミック歯科補綴材の製造方法を提供する。
【解決手段】プレス用未加工材を収容するために機能するプレス管路と少なくとも1つの接続管路を介して前記プレス管路と結合された少なくとも1つの型空洞部を備えてなるマッフルを提案する。その際プレス圧力を高めるとともに未加工材物質のより良好な混合を実施するために、前記プレス管路(12)内に少なくとも2つのプレス用未加工材(18)を互いに並列させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載のマッフルならびに請求項9前段に記載のセラミック歯科補綴材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック歯科補綴材を製造するためのマッフルは例えば独国特許出願公開第102004013668号A1明細書によって知られており、通常1つのプレス管路と少なくとも1つの接続管路を介して前記プレス管路と接続された少なくとも1つの型空洞部を有し、前記プレス管路内に挿入されたプレス用未加工材を加熱しながらのプレス圧力の付加に際してそのプレス用未加工材の材料物質が前記型空洞部内に充填され、その結果焼結されたセラミック歯科補綴材が製造される。
【0003】
しかしながら実用上においてセラミック歯科補綴材は常にクラックを示すか場合によっては空洞が形成され、それがセラミック歯科補綴材の強度ならびに品質に影響を与える。
【0004】
マッフル内に特殊な断面形を有するプレス空間を形成し、その中に未加工材物質を塊状材料として充填してセラミック歯科補綴材にプレスすることが提案されている。しかしながらここでも気泡が残留する可能性があり、それは焼結工程中のプレスピストンによる圧力によっても完全に解消することが出来ない。
【0005】
提案されている解決方式において型空洞部内に作用するプレス圧力はプレス管路の形状によって(壁摩擦のためであり得る)比較的小さくなる。さらに、プレス管路内に挿入されたプレスピストンが前記特殊な断面形のため容易に角が引っかかる危険性もある。
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004013668号A1明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、特にセラミック歯科補綴材のプレスおよび焼結に際してクラックおよび空洞形成の傾向を著しく低減することができる、請求項1前段に記載のマッフルならびに請求項9前段に記載のセラミック歯科補綴材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、大きなプレス管路の断面をそれに対して比較的小さな接続管路の断面と組み合わせるために少なくとも2つのプレス用未加工材を並べてプレス管路内に収容し得るようにプレス管路が形成される。
【0009】
前記の比較的小さな接続管路は明らかに未加工材物質の結晶粒界の溶融が開始する際で未加工材物質がまだ極めて高粘性である場合に接続管路内への未加工材物質の流入が当初は未だ発生しないように作用する。未加工材物質がさらなる溶融によって極めて流動性になった際に接続管路口の“閉塞”を上回り、従って気泡発生の危険を伴うことなく型空洞部の微細な枝部内まで流動的に浸入することが可能となる。
【0010】
従って前記のあるいは全ての接続管路が0.8mmないし1mm、また特に0.6ないし0.7mmの直径を有することが好適であり、その際粘性材料の閉塞効果に影響を与えることなく別の接続管路をマッフル内に設けることも容易に可能であることが理解される。
【0011】
複数のプレス用未加工材を並列に収容することによって極めて大きなプレス管路の断面が形成され、その際プレス管路と接続管路の間の移行部がさらに急激に変化する。プレス用未加工材から溶融した未加工材物質をプレスする際に接続管路への流入口上のエッジによって剪断力に曝される。プレス管路の断面積が接続管路の断面積に比べて大きくなるほど前記の剪断力が大きくなる。大きな剪断力は、溶融した未加工材物質中の気泡が材料の結晶粒界上での圧縮によって移動しその結果材料から押し出されることを可能にする。従ってプレス管路と接続管路の間の急激な移行によって気泡および空洞を溶融した未加工材物質から押し出すことが可能となり、その結果完成した製品の品質をさらに改善することができる。
【0012】
さらに、本発明によればプレス管路と接続管路の間の急激な移行によってプレス用未加工材から溶融された材料をより良好に渦流化しそれによってより良好に混合することができる。大きなプレス管路断面と小さな接続管路断面との組み合わせによって移行部上に強い剪断力が生成され、それが気泡をある程度押し出す。
【0013】
前記の渦流化は接続管路の壁部の特殊な表面処理によってさらに高めることができる。加えて、突出した角および縁部の無い内側から見て実質的に凹面のプレス管路の構成によってプレス管路の壁部上におけるプレスピストンの摩擦が低減される。従ってプレスピストンはそれ程容易に角が引っ掛からず、その際プレス管路は完全に凹面状に形成する必要はない。
【0014】
その断面形が互いに平面状に隣接した未加工材の複数構成の外形に適合する本発明に係るプレス管路の構成は、さらに大きな未加工材容積に対してより大きな収容空間を提供し、同時にマッフルのコンパクトな構成を可能にする。プレス管路の大きな断面積によってプレスピストンの小さな行程によって多くの未加工材物質をプレスすることができる。
【0015】
同時に本発明に係るマッフルは、それによって小さなセラミック歯科補綴材ならびに大きなセラミック歯科補綴材の両方を容易に製造することができるため、柔軟に使用可能である。ここで製造のために必要とされる歯科補綴材料の分量はプレス管路内に配置されるプレス用未加工材の数および大きさによって調節することができる。
【0016】
さらに、プレス管路と接続管路の間の大きな断面積差によって接続管路内における横流速が高まる。それによってより高い摩擦とその結果さらに良好な未加工材物質の混合がもたらされる。
【0017】
また、本発明の効果は本発明に係る大きなプレス管路内に挿入される唯一の未加工材によって達成することもできる。それが溶融に際して本発明に係る大きなプレス管路の総低床面積を満たし、それによって前述した利点がもたらされる。
【0018】
接続管路の直径がプレス管路から型空洞部に向かって少なくとも部分的に増加すれば未加工材物質の混合をさらに改善することができ、その際接続管路の不均一の表面が渦流化をさらに強化することができる。
【0019】
接続管路内への未加工材物質の流入を容易化するために、接続管路の流入口を漏斗形状に形成することができる。このことは、ベベル、丸み付け、あるいはその他の技法によって達成することができる。
【0020】
マッフルの最適な利用のために、プレス管路の周囲の輪郭を未加工材の配列に適合させることが必要である。プレス管路内において未加工材が互いに支承し合うだけでなく壁部に固定的に接合すれば、最良の結果を達成することができる。このことは2つの丸形の未加工材の場合例えば楕円形のプレス管路断面によって達成される。そのようなプレス管路内には小さな間隙部を設けることが好適であり、それによって溶融工程に際して接続管路の流入口上に作用する対抗圧力の形成が比較的迅速に開始する。
【0021】
マッフルの最適な安定性を保証するために、マッフルの壁厚を前プレス室の直径の半分ないし1.5倍、特に1倍とすることができる。
【0022】
プレス管路は周囲方向に見て前方を向いたエッジ部が無いようにすることができる。プレス管路が周囲方向に見て全体的にエッジ無に湾曲している場合、プレス管路内におけるプレスピストンの角の引っ掛かりの危険性が最小化される。
【0023】
マッフル内において第2の未加工材が第1の未加工材上ならびにプレス管路の軸に平行に延在する線に沿ってプレス管路の壁部上に少なくとも線形に接合することができ、また第2の未加工材は第1の未加工材上ならびにプレス管路の軸に対して交差方向に特に湾曲して延在する壁部の面上に平面的に接合することができる。
【0024】
接続管路はプレス管路からの流入口を鋭角状に形成することができる。接続管路の直径のプレス管路の直径に対する比率は10%未満、特に2%未満とすることができ、マッフルの壁厚はその直径の10%ないし50%、特にその直径の約1/3の壁厚を有するものとすることができ、マッフルの低床厚はその全高の25%ないし75%、特にその全高の50%の低床厚を有するものとすることができる。マッフルはそのプレス管路側の外側にその高さの10%超、特にその高さの20%超にわたって延在しその部分でマッフルを弾力的にする面取り部を備えることができる。
【0025】
プレス用未加工材の処理に際して未加工材の容積の合計を接続管路および型空洞部の容積の合計と実質的に等しいものとし、未加工材が実質的に円形、楕円形、長円形および/または多角形の断面を有することができる。
【0026】
別の好適な構成形態によれば、プレス管路内に3つのプレス用未加工材を収容することができる。
【0027】
別の好適な構成形態によれば、各プレス用未加工材が互いに線形に接合する。
【0028】
別の好適な構成形態によれば、プレス管路の断面を実質的に円形、楕円形、長円形または多角形とすることができる。
【0029】
別の好適な構成形態によれば、各プレス用未加工材が集合でプレス管路を実質的に完全に満たす。
【0030】
別の好適な構成形態によれば、プレス管路内に並列して存在するプレス用未加工材によって形成された未加工材輪郭がプレス管路の断面形に適合する。
【0031】
別の好適な構成形態によれば、プレス管路内において2つの階層がいずれも少なくとも2つ、特にいずれも3つのプレス用未加工材を収容可能である。
【0032】
別の好適な構成形態によれば、プレス管路内において2つの階層がそれぞれ異なった数のそれぞれ異なった大きさの未加工材を収容可能である。
【0033】
別の好適な構成形態によれば、プレス工程の前に少なくとも2つのプレス用未加工材が互いに並列しかつ好適には互いに接合してマッフルのプレス管路内に挿入される。
【0034】
別の好適な構成形態によれば、プレス工程の前に3つの未加工材が互いに並列しかつ互いに接合してプレス管路内に挿入される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
その他の詳細、特徴、ならびに種々の利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【0036】
図1において本発明に係るマッフル10はプレス管路12と複数の接続管路14と複数の型空洞部16を備えている。マッフル12のプレス管路12内には3つのプレス用未加工材18が互いに並列して配置され、プレスピストン20による圧力がかけられている。
【0037】
図1に明確に示されているように、互いに並列して配置された複数のプレス用未加工材18がマッフル10の大きな低床面26を占めている。それに対して接続管路14への流入口22は著しく小さくなっており、例えば20分の1または50分の1となる。従ってプレスピストン20はプレス管路12内においてプレス用未加工材18に対して高い圧力を生成し、それによってプレス用未加工材18から溶融した未加工材物質を接続管路14内へ押し出し、変形に対する未加工材物質の抵抗を克服する。接続管路14は狭い流入口によって不充分に流動性ならびに場合によって未だ気泡を含んでいる未加工材物質に対する閉鎖器のように作用する。材料がその流動性のため良好に混合されるとともに気泡が溶融された未加工材物質から排出されると、接続管路14内に流入し得るほど流動的なものとなる。結果として型空洞部16内に流入する溶融した未加工材物質がより均質になり、従ってセラミック歯科補綴材の硬化に際してクラックの発生が低減する。
【0038】
接続管路14の適宜な構成によって未加工材18から溶融した材料の混合をさらに改善することができる。約1:100の接続管路14対プレス管路12の断面積比によって既に効果的な結果を達成することができるが;最良の結果は約1:2500の断面積比によって達成することができる。
【0039】
図2には、未加工材物質の渦流化にどのように流入口22によって影響を与え得るかの処置が示されている。
【0040】
プレス管路12と接続管路14の間の急激な移行は流入口22上の鋭角なエッジ32によって形成され、それによって強力な剪断効果が生成される。
【0041】
それに代えてプレス管路12と接続管路14の間の流入口22が丸み付けられたエッジ28あるいは傾斜付けされたエッジ30を有することができる。それによって各接続管路14の流入口が溶融した未加工材物質をさらに圧縮する漏斗のように作用する。それによって材料中の気泡が接続管路14内への流入に際して可能な限り排出される。
【0042】
図3には、本発明に係るマッフル10の別の実施例が示されているが、忠実な縮尺で図示したものではない。既に図1に関して説明した構成要素は同じ参照符号で示し、再度の説明は省略する。マッフル10は低床領域40と壁部42を有している。低床領域40の厚みはプレス管路12の深さH1の約0.5ないし1.5倍となるように選択される。マッフル10の壁部42も同様に、プレス管路12の幅の0.5ないし1.5倍となるように形成される。低床領域40はプレス管路12の深さと全く同じ厚みを有することが好適である。同様に、壁部42もプレス管路12の幅と全く同じ厚みを有する。
【0043】
この実施例においてマッフル10は傾斜部46を有し、その高さHAはマッフル10の全高の10%超、特に20%超に相当し、それによってマッフル10が弾力的になり、従ってプレス用未加工材18のプレスに際して発生した負荷をマッフル材料上でより良好に受容することができる。
【0044】
図4に示されているように、マッフル10のプレス管路12は原則的に楕円形に形成することができ、従って2つのプレス用未加工材18を互いに並列させて収容することができる。そのようなマッフルによりプレス管路12内に比較的多量の未加工材物質を収容することができる。
【0045】
それにもかかわらず、プレスされる未加工材物質を加工するため必要な行程は比較的小さくなり、従ってプレス用未加工材18の材料は本発明に係るマッフル10を容易に標準プレス窯内で使用することを可能にする。
【0046】
図4によればマッフル10のプレス管路12は凹面状かつ不連続点無で形成されているため、それは比較的小さな周囲長を有する。それがプレスピストン20に対して少ない接触面を与えるものとなり、従ってプレスピストン20とプレス管路12の壁部の間の摩擦が少なくなり、プレスピストン20は比較的大きな圧力を溶融した未加工材物質に対して付加することができる。
【0047】
個別のプレス用未加工材18の間の間隙部44を可能な限り小さく維持するために、図5に示されているように異なった大きさを有する複数のプレス用未加工材18を使用することができる。そのことがマッフル10内における未加工材物質の処理時間を短縮し、完成した歯科補綴材の品質を向上させる。プレスピストン20によるプレス用未加工材18の変形がまず各プレス用未加工材18の間の間隙部44を充満するように作用する。プレス用未加工材18が四角形の断面を有しまたプレス管路12も同様に四角形に形成されていれば、間隙部44は極めて小さな容積を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】3つの収容された未加工材とプレスピストンを含んだ本発明に係るマッフルの第1の実施例を示した断面図である。
【図2】マッフル内の接続管路の第1ないし第3の実施例を示した断面図である。
【図3】本発明に係るマッフルの第2の実施例を示した断面図である。
【図4】3つの収容された未加工材を含んだ本発明に係るマッフルの第3の実施例を部分的に切断して選択的に示した立体図である。
【図5】3つの収容された未加工材を含んだ本発明に係るマッフルの第4の実施例を部分的に切断して選択的に示した立体図である。
【図6】3つの収容された未加工材を含んだ本発明に係るマッフルの第5の実施例を部分的に切断して示した立体図である。
【符号の説明】
【0049】
10 マッフル
12 プレス管路
14 接続管路14
16 型空洞部
18 プレス用未加工材
20 プレスピストン
22 流入口
26 低床面
28,30,32 エッジ
40 低床領域
42 壁部
44 間隙部
46 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス用未加工材を収容するために機能するプレス管路と少なくとも1つの接続管路を介して前記プレス管路と結合された少なくとも1つの型空洞部を備えてなる、特にセラミック歯科補綴材を製造するためのマッフルであり、前記プレス管路(12)内に少なくとも2つのプレス用未加工材(18)を互いに並列させまた特に互いに接合させて収容可能であることを特徴とするマッフル。
【請求項2】
プレス管路(12)内に3つのプレス用未加工材(18)を収容可能であることを特徴とする請求項1記載のマッフル。
【請求項3】
各プレス用未加工材(18)が互いに線形に接合することを特徴とする請求項1または2記載のマッフル。
【請求項4】
プレス管路(12)の断面を実質的に円形、楕円形、長円形または多角形とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマッフル。
【請求項5】
各プレス用未加工材(18)が集合でプレス管路(12)を実質的に完全に充満することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のマッフル。
【請求項6】
プレス管路(12)内に並列して存在するプレス用未加工材(18)によって形成された未加工材輪郭がプレス管路(12)の断面形に適合することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のマッフル。
【請求項7】
プレス管路(12)内において2つの階層がいずれも少なくとも2つ、特にいずれも3つのプレス用未加工材(18)を収容可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のマッフル。
【請求項8】
プレス管路(12)内において2つの階層がそれぞれ異なった数のそれぞれ異なった大きさの未加工材を収容可能であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のマッフル。
【請求項9】
プレス工程の前に少なくとも2つのプレス用未加工材(18)が互いに並列しかつ好適には互いに接合してマッフル(10)のプレス管路(12)内に挿入されることを特徴とする請求1ないし8のいずれかに記載のマッフルを使用したセラミック歯科補綴材の製造方法。
【請求項10】
プレス工程の前に3つの未加工材が互いに並列しかつ互いに接合してプレス管路(12)内に挿入されることを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−112818(P2009−112818A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283796(P2008−283796)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)
【Fターム(参考)】