説明

プレス装置

【課題】本発明は、1回のプレス操作により複数の被プレス物をプレス加工可能であって、且つ、被プレス物が加圧台に対して傾斜する場合にも容易に対応可能なプレス装置を提供する。
【解決手段】加圧台29と上台11との間には、内部に圧力空気源からの圧力空気が供給される可撓性のダイアフラム31に各加圧台29が支持されることで各加圧台29が実質的に揺動可能な空気バネ24が設けられている。これにより、載置台15に被プレス物14を載置した状態で、被プレス物14の上面が加圧台29の下面に対して傾斜した形状であっても、加圧台29が揺動することで被プレス物14の上面と加圧台29の下面とが整合する。この結果、複数の加圧台29のそれぞれについて、被プレス物14に対する傾斜を微調整する必要がないから、被プレス物14が加圧台29に対して傾斜する場合にも容易に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被プレス物を載置する下台と、この下台の上方に配されて上下方向に変位可能な上台と、上台に設けられて下台及び上台を互いに接近方向に押圧する加圧シリンダとを備え、被プレス物を下台と上台との間で挟んでプレス加工するプレス装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、被プレス物の形状によっては、被プレス物を載置台に載置した状態で、被プレス物の上面が加圧台の下面に対して傾斜する場合がある。このような場合、被プレス物に対して均一に圧力を加えるためには、上台の傾斜を微調整して被プレス物の傾斜に整合させればよい。
【特許文献1】特開2004−74271公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のプレス装置に対し、下台の上面側には被プレス物を載置するための複数の載置台を設け、上台の下面側には載置台と対応して設けられると共に被プレス物を載置台との間に挟む複数の加圧台を設けることが考えられる。これにより、1回のプレス操作により複数の被プレス物をプレス加工することが可能になる。
【0005】
しかしながら上記の構成によると、載置台に載置された被プレス物の上面が加圧台の下面に対して傾斜する場合には、複数の加圧台のそれぞれについて被プレス物に対する傾斜を微調整しなければならなくなり、非常に手間がかかる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、1回のプレス操作により複数の被プレス物をプレス加工可能であって、且つ、被プレス物が加圧台に対して傾斜する場合にも容易に対応可能なプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、下台と、この下台の上方に配されて前記下台と上下方向に相対変位可能な上台と、前記下台及び前記上台の少なくとも一方に設けられて前記下台及び前記上台を互いに接近方向に押圧する加圧シリンダと、前記下台の上面側に設けられて被プレス物を載置する複数の載置台と、前記上台の下面側のうち前記載置台と対応して設けられると共に前記被プレス物を前記載置台との間で挟む複数の加圧台と、前記各加圧台と前記上台との間又は前記下台と前記各載置台との間に設けられ内部に圧力空気源からの圧力空気が供給される可撓性のダイアフラムに前記各加圧台又は前記各載置台が支持されることで前記各加圧台又は前記各載置台が実質的に揺動可能とされている複数の空気バネとを備えてなるプレス装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記加圧台又は前記載置台は、前記上台又は前記下台との間に上下方向に延びて設けられたガイドロッドと、前記加圧台又は前記載置台に形成されて前記ガイドロッドを遊挿させるための挿通孔とによって、実質的な揺動を許容されつつ上下に案内されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のものにおいて、前記加圧シリンダを作動させて前記被プレス物を加圧したときに前記各空気バネの前記ダイアフラム内の圧力空気の圧力を均一化するための均圧手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記均圧手段は、前記各空気バネの前記ダイアフラム内を連通させつつ前記圧力空気源に連結された連通配管により構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3記載のものにおいて、前記均圧手段は、前記各空気バネ毎に設けられ、それらのダイアフラム内の最大圧力が設定値に達したときに開放して内部圧力を前記設定値に維持する圧力調整弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、下台には複数の載置台が設けられ、上台には載置台に対応する位置に加圧台が形成されている。これにより、各載置台に複数の被プレス物を載置した状態で、加圧シリンダにより下台と上台とを接近方向に押圧することで、各被プレス物は各載置台と各加圧台との間に挟まれて加圧される。このように1回のプレス操作により複数の被プレス物をプレス加工できる。
【0013】
また、請求項1の発明では、加圧台と上台との間又は下台と載置台との間に空気バネが設けられており、この空気バネに支持されることで各加圧台又は各載置台は実質的に揺動可能とされている。これにより、載置台に被プレス物を載置した状態で、被プレス物の上面が加圧台の下面に対して傾斜した形状であっても、加圧シリンダにより下台と上台とを接近させて載置台と加圧台との間で被プレス物を挟むと、載置台又は加圧台が揺動することで被プレス物の上面と加圧台の下面とが整合する。この結果、複数の加圧台又は載置台のそれぞれについて、被プレス物に対する傾斜を微調整する必要がないから、被プレス物の上面が加圧台の下面に対して傾斜する場合にも容易に対応できる。
【0014】
<請求項2の発明>
複数設けられた加圧台又は載置台は空気バネにより揺動可能とされているので、振動等により加圧台又は載置台が揺動し、隣り合う加圧台同士又は隣り合う載置台同士が衝突するおそれがある。
【0015】
請求項2の発明によれば、加圧台又は載置台は、ガイドロッドにより実質的な揺動を許容されつつ上下に案内されている。これにより、ガイドロッドにより許容される範囲を越えて加圧台又は載置台は揺動しないようになっているから、振動等によっても、隣り合う加圧台同士又は隣り合う載置台同士が衝突することを防止できる。
【0016】
<請求項3の発明>
被プレス物には寸法公差が設定されており、各被プレス物の上下方向の高さ寸法にはある程度のばらつきがある。このため、各載置台に被プレス物を載置した状態において、各被プレス物の載置台の上面からの高さ寸法にはある程度のばらつきが発生する。この状態で加圧シリンダを作動させてプレス操作を行うと、被プレス物のうち載置台の上面からの高さ寸法が最も大きなものには過剰なプレス圧が加わる一方、被プレス物のうち載置台の上面からの高さ寸法が最も小さいものについてはプレス圧が不足し、各被プレス物に対して加えられる圧力が不均一になることが懸念される。
【0017】
上記の点に鑑み、請求項3の発明では、各空気バネのダイアフラム内の圧力空気の圧力を均一化するための均圧手段が設けられている。これにより、各載置台に載置された被プレス物の載置台の上面からの高さ寸法にある程度のばらつきがある状態でプレス操作を行っても、各空気バネのダイアフラム内の圧力空気の圧力は均一化される。各被プレス物に加えられる圧力は、各ダイアフラム内の圧力空気の圧力に従うから、本発明により各被プレス物に加えられる圧力を均一化することができる。
【0018】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、各空気バネのダイアフラム内は、連通配管により連通されている。これにより、各空気バネのダイアフラム内の圧力空気は、他に比べて圧力の高いものから低いものへと連通配管を通じて移動することで、各ダイアフラム内の圧力空気の圧力が均一化される。
【0019】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、各載置台に載置された被プレス物の載置台の上面からの高さ寸法にある程度のばらつきがある状態で上台と下台とを接近させてプレス操作を行うと、まず、被プレス物のうち載置台の上面からの高さ寸法が最も大きなものが載置された載置台又はこの載置台に対応する加圧台に設けられた空気バネのダイアフラム内の圧力空気の圧力が、まず設定値に達する。さらにプレス操作を続けた場合、このダイアフラム内の圧力空気は開放されて、内部圧力は規定値に維持される。同様にして、被プレス物のうち載置台の上面からの高さ寸法が大きなものから順次、ダイアフラム内の圧力空気の圧力が規定値に達し、その値に維持される。最後に、被プレス物のうち載置台の上面からの高さ寸法が最も低いものが載置された載置台又はこの載置台に対応する加圧台に設けられた空気バネのダイアフラム内の圧力空気が規定値に達し、その値に維持される。このようにして、各ダイアフラム内の圧力空気の圧力が均一化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7を参照して説明する。実施形態1に係るプレス装置は、下フレーム10(本発明に係る下台に該当)と、下フレーム10の上方に配されて上下方向に変位可能な上台11と、上台11に取付けられて下フレーム10と上台11とを互いに接近方向に押圧する加圧シリンダ12とを備えてなる。
【0021】
下フレーム10は金属製であって、その上面は略水平な平面をなす。下フレーム10は上方から見て略矩形状をなしており、詳細には図示しないが、下フレーム10の上面の四隅部には上方に向かって複数の上台側ガイドロッド13が延設されている。下フレーム10の上面には、被プレス物14を載置するための複数(図示4つ、図7参照)の載置台15が取付けられている。この載置台15は、上方から見て略矩形状をなしており、下から順に、冷却板16、断熱板17、及び、加熱板18が積層されてなる。冷却板16には水を流通させるための図示しない流水路が形成されており、この流水路に図示しない配水管が接続されて、流水により冷却可能となっている。これにより、加熱板18からの熱が下フレーム10に伝達することを防止できるようになっている。さらに、冷却板16と加熱板18との間には断熱板17が介されているから、加熱板18からの熱は一層、下フレーム10に伝達しないようになっている。また、加熱板18には図示しないヒータが接続され、図示しない温度センサにより検出された温度に基づいて所定の温度に設定可能になっている。なお、各載置台15は、個別に温度調節可能としてもよく、また、全ての載置台15を一括して温度調節する構成としてもよい。加熱板18の上面は略水平に形成されており、被プレス物14を載置可能になっている。
【0022】
上台側ガイドロッド13の上端部には、金属製の上フレーム19が固定されている。上フレーム19は上方から見て略矩形状をなしており、上フレーム19の幅方向(図1における左右方向)及び前後方向(図1における紙面を貫通する方向)の略中央付近には上下に貫通する貫通孔20が形成されており、この貫通孔20の上方には加圧シリンダ12が配設されている。この加圧シリンダ12は、例えば油等の高圧の圧縮流体によって駆動されるピストン(図示せず)を備えており、加圧シリンダ12に供給される圧縮流体の流れを切り替えることで前記ピストンが上方又は下方に駆動されるようになっている。ピストンの下方にはピストンロッド21が延設されており、このピストンロッド21は貫通孔20内を上下に貫通している。
【0023】
ピストンロッド21の下端部には金属製の上台11が配設されている。上台11は上方から見て略矩形状をなしている。上台11の四隅部には、略円筒形をなしたスリーブ22が上下方向に延びると共に、上台11を上下に貫通して配設されている。スリーブ22には上下に貫通する挿通孔23が形成されており、この挿通孔23内に上台側ガイドロッド13が挿通されている。挿通孔23の内径寸法は、上台側ガイドロッド13の外径寸法と略同じに設定されており、上台側ガイドロッド13の外周面と、挿通孔23の内周面とが摺動することで、上台11が上下方向に案内されて変位可能になっている。
【0024】
上台11の下面には、各載置台15に対応する位置に、後に詳述する複数(本実施形態では4つ)の空気バネ24が配設されている。各空気バネ24の下面には、空気バネ24と加圧台29とを接続するための接続部材25が取付けられている。上台11の下面には、各空気バネ24が配設された領域のやや外方の四隅部に、下方に延びる加圧台側ガイドロッド26が延設されている。
【0025】
接続部材25は金属製であって、上方から見て略矩形状をなしており、載置台15の外形よりもやや大きく設定されている。接続部材25の四隅部には上下に貫通する挿通孔27が形成されており、この挿通孔27内に加圧台側ガイドロッド26が挿通されるようになっている。この挿通孔27の内径寸法は、加圧台側ガイドロッド26の外径寸法よりもやや大きく設定されており、加圧台側ガイドロッド26は挿通孔27に対して遊挿状態になっている。加圧台側ガイドロッド26の下端部には、接続部材25の下面から下方に突出した状態で、挿通孔27の内径寸法よりも大きな外径寸法を有するストッパ28が配設されている。このストッパ28が下方から接続部材25に当接することで接続部材25が下支えされている。
【0026】
接続部材25の下面にはそれぞれ、加圧台29が配設されている。この加圧台29は、上から順に、冷却板16、断熱板17、及び、加熱板18が積層されてなる。これら冷却板16、断熱板17、及び、加熱板18の構造については、上述した載置台15と略同じなので重複する説明を省略する。なお、各加圧台29は、個別に温度調節可能としてもよく、また、全ての加圧台29を一括して温度調節する構成としてもよい。加熱板18の下面は、加圧シリンダ12が作動することで上台11を下方に変位させることで、載置台15に載置した被プレス物14と上方から当接するようになっている。
【0027】
さて、空気バネ24は、金属製の上側取付け部材30と、この上側取付け部材30の下方に配設されたゴム等の可撓性を有する合成樹脂からなるダイアフラム31と、ダイアフラム31の下方に配設された金属製の下側取付け部材32とを備えてなる。上側取付け部材30は、上板の下面に図示しないボルトにより螺合されている。また、下側取付け部材32は、接続部材25の上面に図示しないボルトにより螺合されている。
【0028】
ダイアフラム31は略円筒形状をなしており、上述したように上端部は上側取付け部材30に取付けられると共に、下端部は下側取付け部材32に取付けられている。ダイアフラム31と上側及び下側取付け部材32とに囲まれた空間には圧力空気が注入されるようになっており、この圧力空気により、上側取付け部材30と下側取付け部材32とが相対変位するに伴って、ダイアフラム31は弾性変形可能になっている。
【0029】
上側取付け部材30の側面には圧力空気をダイアフラム31内に供給するための空気供給口33が形成されており、この空気供給口33には空気配管34が配設されている。図2に示すように、この空気配管34は各ダイアフラム31内を連通するようになっており、連通配管(本発明に係る均圧手段に該当)35とされる。この連通配管35のうちダイアフラム31と反対側の端部は圧力調整弁36を介して圧力空気だめ37に接続されている。圧力空気だめ37は空気配管34によりポンプ38(本発明に係る圧力空気源に該当)に接続されている。このポンプ38を作動させることで、空気を大気圧以上に圧縮して圧力空気を発生させるようになっている。
【0030】
また、下側取付け部材32の側面には圧力空気をダイアフラム31外に排出するための空気排出口39が形成されており、この空気排出口39には空気配管34が配設されている。この空気配管34は、圧力調整弁36を介して大気中に開放されており、ダイアフラム31から空気排出口39を介して排出された空気を大気中に放出するようになっている。
【0031】
上述したように、ダイアフラム31は可撓性を有するから、このダイアフラム31により、加圧台29が、接続部材25等を介して支持されることで、加圧台29は実質的に揺動可能とされる。また、接続部材25に形成された挿通孔27内に挿通された加圧台側ガイドロッド26は挿通孔27に対して遊挿状態になっているから、加圧台29は実質的に揺動を許容されつつ上下に案内された状態になっている。そして、挿通孔27の内周面が加圧台側ガイドロッド26の外周面と当接することで、加圧台29が載置台15の上面に沿う方向に過剰に変位することが規制されるようになっている。
【0032】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。
まず、図3に示すように、加圧シリンダ12を作動させて上台11を上方に変位させ、載置台15と加圧台29とを離間させる。ついで、配水管に水を流通させるとともにヒータに通電することで、載置台15及び加圧板の加熱板18を所定の温度に設定する。続いて、ポンプ38を作動させて圧力空気を発生させ、連通配管35に接続された圧力調整弁36で連通配管35内の圧力空気の圧力を所定の圧力に設定する。また、空気排出口39側の空気配管34に接続された圧力調整弁36で、ダイアフラム31内に圧力空気の圧力を所定の圧力に設定する。このとき、両圧力調整弁36,36により、連通配管35及びダイアフラム31内の圧力空気の圧力が均一になるように設定する。なお、このときの連通配管35及びダイアフラム31内の圧力空気の圧力は、プレス時に被プレス物14に加えられる圧力よりも小さく設定されている。
【0033】
加熱板18の温度が所定温度に達したら、各載置台15に被プレス物14を載置し、所定時間だけ被プレス物14を予熱する。なお、例えば被プレス物14の比熱が小さい場合には予熱工程を省略することができる。その後、加圧シリンダ12を作動させて上台11を下方に変位させる。図4に示すように、加圧台29の下面が被プレス物14の上面に当接すると、加圧台29は、加圧台側ガイドロッド26により上下に案内されるようになっているから、加圧台29は被プレス物14に下方から支持されて、それ以上、下方へは変位しなくなる。一方、上台11はさらに下方に変位し、これにより空気バネ24の上側取付け部材30と下側取付け部材32との間隔が狭くなってダイアフラム31が弾性変形する。
【0034】
この状態で、連通配管35内の圧力空気の圧力を、プレス時に被プレス物14に加えられる所定の圧力に設定する。すると、ダイアフラム31内に圧力空気が供給されて、ダイアフラム31内の圧力空気の圧力が上昇し、加圧台29が下方に押圧される。これにより、被プレス物14は、載置台15と加圧台29とに挟まれた状態で、所定の圧力でプレスされる。
【0035】
被プレス物14を所定時間だけ、所定圧力でプレスした後、連通配管35及びダイアフラム31内の圧力空気を空気排出口39から排出することで、ダイアフラム31内の圧力空気の圧力を減少させる。その後、加圧シリンダ12を作動させて上台11を上方に変位させ、被プレス物14と加圧台29とを離間させる。この状態で、作業者は被プレス物14を載置台15から取り出すことができる。
【0036】
ところで、図5に示すように、被プレス物14を載置台15に載置した状態で、被プレス物14の上面が、被プレス物14と離間した状態における載置台15の下面に対して傾斜している場合には、加圧台側ガイドロッド26は、接続部材25の挿通孔27に遊挿されており、実質的な揺動を許容されていることから、加圧シリンダ12を作動させて上台11を下方に変位させ、加圧台29の下面を被プレス物14の上面と当接させると、加圧台29は被プレス物14の形状に追従して揺動し、加圧台29の下面と被プレス物14の上面とが整合して隙間なく当接するようになる。この状態で、連通配管35及びダイアフラム31内に所定の圧力の圧力空気を供給することで、被プレス物14に対して所定の圧力を加えてプレスすることができる。
【0037】
本実施形態においては、上述したように載置台15は複数設けられている。各載置台15に載置された被プレス物14の上面が被プレス物14と離間した状態における載置台15の下面に対して傾斜した場合であっても、各ダイアフラム31が上述したように揺動することで、各被プレス物14に対して各載置台15の傾斜を微調整することなく、所定の圧力を均一に加えることができる。
【0038】
なお、加圧台29は揺動可能になっているから、振動等により加圧台29が揺動し、隣り合う加圧台29同士が衝突することが懸念されるが、加圧台側ガイドロッド26の外周面と、接続部材25の挿通孔27の内周面とが当接することで、加圧台29が載置台15の上面に沿う方向に過剰に変位することが規制される。この結果、加圧台側ガイドロッド26と挿通孔27とに許容された範囲を越えて加圧台29が揺動することを防止でき、加圧台29同士が衝突することを防止できる。
【0039】
また、被プレス物14には寸法公差が設定されており、各被プレス物14の上下方向の高さ寸法にはある程度のばらつきがある。このため、各載置台15に被プレス物14を載置した状態において、各被プレス物14の載置台15の上面からの高さ寸法にはある程度のばらつきが発生する。この状態で加圧シリンダ12を作動させてプレス操作を行うと、被プレス物14のうち載置台15の上面からの高さ寸法が最も大きなものには過剰なプレス圧が加わる一方、被プレス物14のうち載置台15の上面からの高さ寸法が最も小さいものについてはプレス圧が不足し、各被プレス物14に対して加えられる圧力が不均一になることが懸念される。図9に、従来例に係るプレス装置に、複数の載置台15と、載置台15に対応する複数の加圧台29を設けたものを参考例として示す。被プレス物14に付した斜線により、被プレス物14に加えられた圧力の分布が不均一になっていることを模式的に示す。
【0040】
上記の点に鑑み、本実施形態では、各空気バネ24のダイアフラム31内を連通配管35により連通する構成とした。これにより、図4及び図6に示すように、各載置台15に載置された被プレス物14の、載置台15の上面からの高さ寸法に差がある場合でも、以下のようにして、各被プレス物14に対して均一に圧力を加えることができる。
【0041】
まず、加圧台29が被プレス物14に上面に上方から当接した状態では、被プレス物14の載置台15からの高さ寸法のばらつきに対応して、空気バネ24のダイアフラム31の撓み変形量も異なるものとなる。この状態で、連通配管35及びダイアフラム31内の圧力空気の圧力を、プレス操作時に被プレス物14に加えられる所定の圧力に設定すると、被プレス物14の載置台15からの高さ寸法が他よりも大きなものに対応する空気バネ24のダイアフラム31(例えば図4に示すもの)は他のダイアフラム31(例えば図6に示すもの)よりも大きく変形しているから、このダイアフラム31内に圧力空気の圧力は、他のものよりも高くなる。すると、各ダイアフラム31は連通配管35により連通されているから、他よりも大きく変形したダイアフラム31内の圧力空気は、他のダイアフラム31内に連通配管35を通じて流入する。これにより、各ダイアフラム31内の圧力空気の圧力を均一化することができる。各被プレス物14に加えられる圧力は、各ダイアフラム31内の圧力空気の圧力に対応するから、各被プレス物14に対して均一に圧力を加えることができる(図7参照)。
【0042】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8を参照して説明する。本実施形態は、各ダイアフラム31の空気供給口33に接続される各空気配管41に対して個別に圧力調整弁(本実施形態に係る均圧手段に該当)40を配設した。この圧力調整弁40は、空気配管41内の圧力空気の圧力が規定値に達したときに開放して、内部圧力を規定値に維持するようになっている。上記以外は実施形態1と略同じ構成なので、同一部分について同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
続いて、実施形態2に係るプレス装置の作用、効果について説明する。図4及び図6に示すように、各載置台15に載置された被プレス物14の、載置台15の上面からの高さ寸法にばらつきがある場合でも、以下のようにして、各被プレス物14に対して均一に圧力を加えることができる。
【0044】
加圧台29が被プレス物14に上面に上方から当接した状態では、被プレス物14の載置台15からの高さ寸法のばらつきに対応して、空気バネ24のダイアフラム31の撓み変形量も異なるものとなる。この状態で、空気配管41及びダイアフラム31内の圧力空気の圧力を、圧力調整弁40により、プレス操作時に被プレス物14に加えられる所定の圧力に設定する。この状態では、被プレス物14の載置台15からの高さ寸法が他よりも大きなものに対応する空気バネ24のダイアフラム31(例えば図4に示すもの)は他のダイアフラム31(例えば図6に示すもの)よりも大きく変形しているから、このダイアフラム31内の空間は他のダイアフラム31よりも狭くなっている。このため、まず、被プレス物14の載置台15からの高さ寸法が他よりも大きなものに対応する空気バネ24のダイアフラム31内の圧力空気が設定値に達する。そして、このダイアフラム31内に圧力空気がさらに流入すると、圧力調整弁40により圧力空気は開放されて内部圧力は規定値に維持される。その後、同様にして、被プレス物14のうち載置台15の上面からの高さ寸法が大きなものから順次、ダイアフラム31内の圧力空気の圧力が規定値に達し、その値に維持される。最後に、被プレス物14のうち載置台15の上面からの高さ寸法が最も低いものが載置された載置台15に対応する加圧台29に設けられた空気バネ24のダイアフラム31内の圧力空気が規定値に達し、その値に維持される。このようにして、各ダイアフラム31内の圧力空気の圧力が均一化される。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)本実施形態では、下フレーム10は上下方向に変位不能に配設され、上台11は上下方向に変位可能に配設される構成としたが、これに限られず、下フレーム10を上下方向に変位可能に配設する構成としてもよい。この場合に、上台11は、上下方向に変位不能に配設してもよいし、上下方向に変位可能に配設してもよい。
【0047】
(2)本実施形態では、下フレーム10には4つの載置台15が配設される構成としたが、これに限られず、2つないし3つ又は5つ以上の複数の載置台15が配設される構成としてもよい。
【0048】
(3)本実施形態では、上台11と加圧台29との間に空気バネ24が配される構成としたが、これに限られず、下フレーム10と載置台15との間に空気バネ24が配される構成としてもよいし、上台11と加圧台29との間及び下フレーム10と載置台15との間の双方に設ける構成としてもよい。
【0049】
(4)本実施形態では、上台11から下方に垂下する加圧台側ガイドロッド26と、接続部材25に形成されて加圧台側ガイドロッド26を遊挿するための挿通孔27とにより、加圧台29は、実質的に揺動を許容されつつ上下に案内される構成としたが、これに限られず、加圧台側ガイドロッド26は接続部材25から上方に突設されてなり、上台11には加圧台側ガイドロッド26を遊挿するための挿通孔が設けられる構成としてもよい。
【0050】
(5)下フレーム10と載置台15との間に空気バネ24が配される構成とした場合には、下フレームから上方に延びるガイドロッドと、載置台15に形成されてガイドロッドを遊挿するための挿通孔とを設ける構成としてもよい。また、ガイドロッドは載置台15から下方に垂下して形成され、下フレームにはガイドロッドを遊挿するための挿通孔が設けられる構成としてもよい。
【0051】
(6)本実施形態では圧力空気源としてポンプ38を用いたが、これに限られず、圧縮空気を封入した空気ボンベでもよい。
【0052】
(7)被プレス物14を室温でプレスする場合には、加熱板18、断熱板17、及び冷却板16を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1に係るプレス装置の構成を示す概略正面図
【図2】ポンプ、連通配管及び空気バネ等の接続構成の概略を示すブロック図
【図3】プレス操作開始前の状態を示すプレス装置の要部拡大正断面図
【図4】プレス操作中の状態を示すプレス装置の要部拡大正断面図
【図5】載置台に被プレス物を載置した状態で被プレス物の上面が加圧台に対して傾斜したものに対してプレス操作を行った状態を示すプレス装置の要部拡大正断面図
【図6】プレス操作中の状態を示すプレス装置の要部拡大正断面図
【図7】実施形態1に係るプレス装置において、各被プレス物に加えられる圧力の分布を示す概念図
【図8】実施形態2に係るプレス装置におけるポンプ、空気配管、圧力調整弁及び空気バネの接続構成の概略を示すブロック図
【図9】従来例に係るプレス装置に対して、1回のプレス操作により複数の被プレス物をプレス可能な構成を適用した場合における、各被プレス物に加えられる圧力の分布を示す概念図
【符号の説明】
【0054】
10…下フレーム(下台)
11…上台
12…加圧シリンダ
14…被プレス物
15…載置台
24…空気バネ
26…加圧台側ガイドロッド(ガイドロッド)
27…挿通孔
29…加圧台
31…ダイアフラム
34…空気配管
35…連通配管(均圧手段)
38…ポンプ(圧力空気源)
40…圧力調整弁(均圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下台と、この下台の上方に配されて前記下台と上下方向に相対変位可能な上台と、前記下台及び前記上台の少なくとも一方に設けられて前記下台及び前記上台を互いに接近方向に押圧する加圧シリンダと、前記下台の上面側に設けられて被プレス物を載置する複数の載置台と、前記上台の下面側のうち前記載置台と対応して設けられると共に前記被プレス物を前記載置台との間で挟む複数の加圧台と、前記各加圧台と前記上台との間又は前記下台と前記各載置台との間に設けられ内部に圧力空気源からの圧力空気が供給される可撓性のダイアフラムに前記各加圧台又は前記各載置台が支持されることで前記各加圧台又は前記各載置台が実質的に揺動可能とされている複数の空気バネとを備えてなるプレス装置。
【請求項2】
前記加圧台又は前記載置台は、前記上台又は前記下台との間に上下方向に延びて設けられたガイドロッドと、前記加圧台又は前記載置台に形成されて前記ガイドロッドを遊挿させるための挿通孔とによって、実質的な揺動を許容されつつ上下に案内されていることを特徴とする請求項1記載のプレス装置。
【請求項3】
前記加圧シリンダを作動させて前記被プレス物を加圧したときに前記各空気バネの前記ダイアフラム内の圧力空気の圧力を均一化するための均圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のプレス装置。
【請求項4】
前記均圧手段は、前記各空気バネの前記ダイアフラム内を連通させつつ前記圧力空気源に連結された連通配管により構成されていることを特徴とする請求項3記載のプレス装置。
【請求項5】
前記均圧手段は、前記各空気バネ毎に設けられ、それらのダイアフラム内の最大圧力が設定値に達したときに開放して内部圧力を前記設定値に維持する圧力調整弁であることを特徴とする請求項3記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−190572(P2007−190572A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9039(P2006−9039)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】