説明

プレス装置

【課題】 アルミニウム製のブロックの線膨張を利用することによって、粉塵等を生じることなく省電力でプレス成形を行うことができるプレス装置を提供する。
【解決手段】 上金型2が固定された上型ダイプレート4と、下金型3を前記上金型2に対して接近離反するように昇降移動させる昇降移動手段5と、該昇降移動手段5によって下金型3が上金型2に対して接近するように上昇した際に下金型3の下方へと移動可能な内部に複数のヒーター7を有するアルミニウム製のブロック6と、該ブロック6を支持するための支持板8と、を備えるプレス装置であって、ブロック6は、昇降移動手段5によって下金型3が上昇した際に該下金型3の下方へと移動し、複数のヒーター7によって加熱されて線膨張することにより下金型3を下方から押圧して成形材料のプレス成形を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を押圧することによりプレス成形を行うプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上金型と下金型を用いて軟化する温度に加熱したプラスチック等の成形材料を押圧することによりプレス成形を行うプレス装置が種々提案されている。このようなプレス装置としては、例えば、油圧シリンダを用いて金型を押圧することによりプレス成形を行うもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のプレス装置では、上型を低負荷で高速動作を可能とするサーボモータを用いて高速に降下させ、下金型を短ストロークで高荷重の負荷をかけることができる油圧シリンダによって上昇させることによってプレス成形を行っているので、型締荷重の大きな油圧シリンダを用いた油圧式タイプのプレス装置に比べて高速作動性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−026637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のプレス装置では、油圧シリンダを用いたプレス成形を行っているため、粉塵等が生じる。そのため、人工骨等の成形品のようにクリーンルームでプレス成形を行うようなものには衛生上の問題から使用が制限される。また、最終的な型締めの段階では、油圧シリンダによって高い圧力を所定時間掛けておく必要があるため、その動作時間に応じて多くの電力が消費される。
【0006】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みてなされたものであって、アルミニウム製のブロックの線膨張を利用することによって、粉塵等を生じることなく省電力でプレス成形を行うことができるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載のプレス装置は、上金型が取り付けられる上型ダイプレートと、下金型を前記上金型に対して接近離反するように昇降移動させる昇降移動手段と、該昇降移動手段によって前記下金型が前記上金型に対して接近するように上昇した際に前記下金型の下方へ移動可能な内部に複数のヒーターを有するアルミニウム製のブロックと、該ブロックを支持するための支持板と、を備えるプレス装置であって、前記ブロックは、前記昇降移動手段によって前記下金型が上昇した際に該下金型の下方へと移動し、前記複数のヒーターによって加熱されて線膨張することにより前記下金型を下方から押圧して成形材料のプレス成形を行うことを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のプレス装置は、前記昇降移動としてエアシリンダを用いることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載のプレス装置は、前記ブロックの上面は、前記下金型の底面と同等又はそれ以上に形成されていることを特徴している。
【0010】
請求項4記載のプレス装置は、前記ブロックは、左右に移動可能な2つの分割ブロックから構成されており、前記下金型が下降状態の場合には、前記分割ブロックは、それぞれ前記下金型の左右に移動して待機させられ、前記下金型を前記昇降移動手段によって上昇させた場合には、前記分割ブロックを接近密着するよう移動することによって前記下金型の下方に前記分割ブロックが位置することを特徴としている。
【0011】
請求項5記載のプレス装置は、前記下金型は、上部材と下部材の上下に分割されており、前記上部材の下面中央部には、半球状に形成された凸部が設けられ、前記下部材の上面中央部には、前記半球状に形成された凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項6記載のプレス装置は、前記上金型の底面中央部には、半球状に形成された凸部が設けられ、前記上金型が取り付けられる前記上型ダイプレートの取付面中央部には、前記半球状に形成された凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のプレス装置によれば、下金型を上昇させて上金型と下金型により成形材料を挟んだ状態で、アルミニウム製のブロックを加熱して線膨張させることによって下金型を押圧するので、粉塵等を生じることなく、プレス成形を行うことができる。また、ブロックの加熱温度が上昇して線膨張した後は、所定の間、電力を供給しなくてもプレス成形の作業を続けることができるので、省電力化を図ることができる。
【0014】
請求項2記載のプレス装置によれば、下金型をエアシリンダを用いて上金型に対して接近するように上昇させるので、優れた高速作動性を得ることができる。
【0015】
請求項3記載のプレス装置によれば、ブロックの上面は、下金型の底面と同等又はそれ以上に形成されているので、ブロックを加熱して線膨張させる際に、下金型の底面全体に対して均等に圧力を加えることができるので、成形プレスの精度を向上させることができる。
【0016】
請求項4記載のプレス装置によれば、ブロックは、2つの分割ブロックから形成されており、下金型を上昇させた際に、分割ブロックをそれぞれ左右から接近密着するよう移動させることができるので、下金型の下方へと移動させる時間を短縮することができる。
【0017】
請求項5記載のプレス装置によれば、下金型が、上部材と下部材の上下に分割されており、下部材の上面中央部には、上部材の下面中央部に形成された凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられているので、上部材の下面と下部材の上面は若干の隙間が生じることになる。これにより、下金型を下方から押圧した場合には、上金型が若干傾いていたとしても、その上金型と平行になるように下金型の上部材は追随するので、平行度を保つことができる。
【0018】
請求項6記載のプレス装置によれば、上金型の底面中央部には、半球状に形成された凸部が設けられており、上金型が取り付けられる前記上型ダイプレートの取付面には、前記凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられているので、上金型の底面と上型ダイプレートの取付面は若干の隙間が生じることになる。これにより、ブロックによって押圧される下金型が若干傾いていたとしても、その下金型と平行になるように上金型は追随するので、平行度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るプレス装置の一例を示す概略模式図。
【図2】分割ブロックの一例を示す概略斜視図。
【図3】分割ブロックの一部拡大図。
【図4】本発明に係るプレス装置における下金型の上昇時の様子を示す概略模式図。
【図5】本発明に係るプレス装置のプレス成形時の様子を示す概略模式図。
【図6】本発明に係るプレス装置の他の一例を示す概略模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るプレス装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明に係るプレス装置1は、上金型2と下金型3を用いて成形材料Xを押圧することによってプレス成形を行うものである。図1に示すように、プレス装置1は、上金型2が取り付けられる上型ダイプレート4と、下金型3を上金型2に対して接近離反するように昇降移動させるエアシリンダ(昇降移動手段)5と、左右に分割された2つの分割ブロック6aからなるアルミニウム製のブロック6と、該ブロック6に設けられた複数の挿入孔61に挿入されるヒーター7と、ブロック6を支持するための支持板8とを備えている。
【0021】
上金型2は、例えば、上型ダイプレート4の取付面41に不図示のねじ等によって締結固定される。上型ダイプレート4は、所定の耐圧性を有する金属板からなるものであり、支持板5に支持された柱9に取り付けられている。
【0022】
下金型3は、エアシリンダ5によって昇降移動可能に構成されている。また、下金型3は、上部材31と下部材32の上下に分割されて形成されている。上部材31の下面中央部には、略半球状に形成された凸部31aが設けられており、下部材32の上面中央部には、凸部31aの高さよりも若干低く(浅く)形成された略半球状の凹部32aが設けられている。凸部31aは、少なくともブロック6から受ける圧力に耐え得る程度の耐圧性を有する厚さに形成されている。上部材31は、この下部材32の凹部32aに凸部31aが嵌め込まれた状態で載置されており、凹部32aの深さは凸部31aの高さよりも若干低く形成されているため、上部材31の下面と下部材32の上面は若干の隙間が生じている。従って、下金型3を下方から押圧した場合には、上金型2が若干傾いていたとしても、その上金型2と平行になるように下金型3の上部材31は追随するので、平行度を保つことができる。
【0023】
エアシリンダ5は、下金型3を上金型2に対して接近離反するように昇降移動可能にするためのものであって、上型ダイプレート4上に設けられており、不図示の給排気装置によって駆動される。また、エアシリンダ5のシリンダ軸5aは、例えば、上型ダイプレート4、上金型2、及び上部材31に設けられた貫通孔(不図示)を通って、その先端部分が下金型3の下部材32に取り付けられている。従って、シリンダ軸5aを上方へと動作させることに伴って下金型3は上昇する。尚、下金型3を昇降移動可能にするための構成は、これに限定されるものではなく、下金型3にボールネジ機構を用いてサーボモータの駆動力によって昇降移動可能に構成しても良い。
【0024】
ブロック6は、左右に分割された2つの略直方体の分割ブロック6aからなるものであり、材質としては線膨張用の強度の強いアルミニウムが用いられている。この2つの分割ブロック6aは、それぞれエアシリンダ(不図示)等によって支持板8上を左右に移動させることができる。また、分割ブロック6aでは、図2に示すように、ヒーター7を挿入するための挿入孔61が前後左右に等間隔で複数設けられている。
【0025】
この挿入孔61は、図3に示すように、分割ブロック6aの下面62から上面63方向に向かって非貫通に設けられている。また、下面62には、ヒーター7の配線71を通すための配線溝64が形成されている。そのため、図1に示すように、分割ブロック6aを支持板8上に載置されている状態の場合でも、配線71が分割ブロック6aと支持板8に挟まれて断線するのを防止することができる。また、図5に示すように、2つの分割ブロック6aからなるブロック6の上面65は、下金型3の底面32bよりも若干大きく形成されている。従って、ブロック6によって下金型3の底面32b全体を下方から押圧することができる。
【0026】
ヒーター7は、分割ブロック6aを加熱して線膨張させるためのものであって、電熱式ヒーター、パイプヒーター、バンドヒーター等種々のものを用いることができる。ヒーター7には、当該ヒーター7の温度を測定するために、半導体の温度特性を利用したサーミスタ等の周知の温度センサ(不図示)が設置されている。また、ヒーター7の配線71及び温度センサは、それぞれ配線溝64を通って制御部10へと接続されている。この制御部10は、予め設定された設定温度にヒーター7の温度を制御するためのものであり、温度センサから得られた測定温度をフィードバック制御可能な周知の温度コントローラ等を用いることができる。尚、図3では、ヒーター7の配線71が1つの制御部10に接続されている例を示しているが、1台又は数台のヒーター7毎に制御部10に接続するよう構成しても良い。
【0027】
支持板8は、ブロック6を支持するためのものであり、所定の耐圧性を有する金属板からなるものである。また、この支持板8は、上金型2を取り付ける上型ダイプレート4を固定するための複数の柱9を支持している。
【0028】
以下、プレス装置1の動作について図1,4,5を参照しつつ説明する。プレス装置1では、プレス成形が行われる前は、図1に示すように、下金型3は下降した状態であり、分割ブロック6aはそれぞれ左右に開放状態で待機している。
【0029】
そして、この図1に示す状態から、プレス成形を行う場合には、まず下金型3に加熱軟化させたプラスチック材料等の成形材料Xを供給した後、エアシリンダ5を用いて下金型3を矢印A方向へと上昇させ、図4に示すように、下金型3と上金型2で成形材料Xを挟んだ状態にする。
【0030】
次に、図4の開放状態から、2つの分割ブロック6aが、接近密着するようにエアシリンダ(不図示)等によって、それぞれ閉鎖方向Bへと支持板8上を移動させ、図5に示すように、下金型3の下面に分割ブロック6aの上面が近接するように配置する。また、この際の下金型3の下面と分割ブロック6aの上面との間隔は、約1〜数mm程度になるよう予め分割ブロック6aの高さは調節されている。この状態からヒーター7を用いて分割ブロック6aを加熱して線膨張させることにより、図5に示すように、分割ブロック6aの矢印Cで示す上向きの圧力によって下金型3が上方へと押圧される。この際、分割ブロック6aでは、等間隔にヒーター7が設けられているので、分割ブロック6aの上方への線膨張を均等に調節することができ、下金型3に対して略均等に圧力を加えることができる。また、アルミニウムの線膨張率は、およそ23×10のマイナス6乗/℃と他の金属に比べて比較的高いので、効率良く下金型3を押圧することができる。
【0031】
また、下金型3からプレス成形された成形部材を取り出す場合には、分割ブロック6aを閉鎖状態から再び開放状態になるよう移動させた後、下金型3をエアシリンダ5を用いて下降させることにより、下金型3から成形部材を取り出すことができる。
【0032】
以上、図1,4,5に示すプレス装置1では、ブロック6として左右に分割された2つの分割ブロック6aからなるものを利用した場合について説明したが、ブロック6は、これに限定されるものではなく、1つのブロック6を支持板8上を移動させて下金型の下方へと配置させるように構成しても良い。
【0033】
また、図6に示すように、本発明の他の実施形態に係るプレス装置1aでは、上金型2の底面21の中央部に略半球状に形成された凸部22が設けられ、この上金型2が取り付けられる上型ダイプレート4の取付面41の中央部には、凸部22の高さよりも若干低く形成された略半球状の凹部42を設けられている。凸部22は、少なくとも下金型3を介してブロック6から受ける圧力に耐え得る程度の耐圧性を有する厚さに形成されている。プレス装置1aでは、このように上型ダイプレート4の取付面41に設けられる凹部42の深さが、凸部22の高さよりも若干低く形成されているため、上金型2が上型ダイプレート4に取り付けられた状態において、上金型2の底面21と上型ダイプレート4の取付面41は若干の隙間が生じている。従って、ブロック6によって押圧される下金型3が若干傾いていたとしても、その下金型2と平行になるように上金型3は追随するので、平行度を保つことができる。
【0034】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るプレス装置は、金型を押圧することにより成形材料をプレス成形するための装置として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1、1a プレス装置
2 上金型
21 底面
22 凸部
3 下金型
31 上部材
31a 凸部
32 下部材
32a 凹部
4 上型ダイプレート
41 取付面
42 凹部
5 エアシリンダ
6 ブロック
6a 分割ブロック
61 挿入孔
7 ヒーター
8 支持板
X 成形材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型が取り付けられる上型ダイプレートと、
下金型を前記上金型に対して接近離反するように昇降移動させる昇降移動手段と、
該昇降移動手段によって前記下金型が前記上金型に対して接近するように上昇した際に前記下金型の下方へ移動可能な内部に複数のヒーターを有するアルミニウム製のブロックと、
該ブロックを支持するための支持板と、を備えるプレス装置であって、
前記ブロックは、前記昇降移動手段によって前記下金型が上昇した際に該下金型の下方へと移動し、前記複数のヒーターによって加熱されて線膨張することにより前記下金型を下方から押圧して成形材料のプレス成形を行うことを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記昇降移動としてエアシリンダを用いることを特徴とする請求項1記載のプレス装置。
【請求項3】
前記ブロックの上面は、前記下金型の底面と同等又はそれ以上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記ブロックは、左右に移動可能な2つの分割ブロックから構成されており、
前記下金型が下降状態の場合には、前記分割ブロックは、それぞれ前記下金型の左右に移動して待機させられ、
前記下金型を前記昇降移動手段によって上昇させた場合には、前記分割ブロックを接近密着するよう移動することによって前記下金型の下方に前記分割ブロックが位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス装置。
【請求項5】
前記下金型は、上部材と下部材の上下に分割されており、
前記上部材の下面中央部には、半球状に形成された凸部が設けられ、
前記下部材の上面中央部には、前記半球状に形成された凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプレス装置。
【請求項6】
前記上金型の底面中央部には、半球状に形成された凸部が設けられ、
前記上金型が取り付けられる前記上型ダイプレートの取付面中央部には、前記半球状に形成された凸部の高さより低く形成された半球状の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206149(P2012−206149A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75207(P2011−75207)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(511082296)
【Fターム(参考)】