説明

プレス部品の欠陥検出方法

【課題】プレス加工後のプレス部品に発生した欠陥の見逃しや誤検知を抑制することが可能なプレス部品の欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】プレス部品に発生した欠陥を検出するプレス部品の欠陥検出方法であって、プレス加工後のプレス部品の表面温度分布を検出する表面温度分布検出工程と、表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち、周辺の領域から所定の温度差以上で温度が変化した温度急変領域を検出する温度急変領域検出工程と、温度急変領域に基づいてプレス部品に欠陥が発生したか否かを判定する欠陥判定工程とを含み、温度急変領域検出工程において、表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により、温度急変領域を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車体等、鋼板をプレス加工して形成するプレス部品の欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程において、特に車体(ボディ部品)を製造する工程では、材料として板厚が0.6〜3.0mm程度の薄い鋼板を用い、この薄い鋼板をプレス加工して、車体(プレス部品)を形成する場合が多い。
上記のようなプレス加工は、一対の金型(オス型、メス型)を備えるプレス装置を用い、一対の金型間に配置した鋼板を、両金型で加圧する加工方法であり、加工対象となる部品一つあたりの加工に要する時間を、五秒程度の短時間とすることが可能である。このため、車体のような同一形状の部品を大量生産する加工方法として、好適である。なお、上述した一対の金型は、互いに対向する面を、それぞれ、目的とする部品(車体等)の外形に倣う形状に形成してある。
【0003】
しかしながら、プレス加工によるプレス部品(以下、「プレス部品」と記載する)の製造においては、材料となる鋼板の素材特性に生じるばらつきや、プレス装置の加圧条件に生じる変動等の理由により、プレス部品に亀裂(割れ)等の欠陥が発生するおそれがある。近年では、素材品質の向上やプレス加工技術の進展により、プレス部品に発生する欠陥は大幅に減少しているものの、その発生を完全に防止することは困難である。
【0004】
また、プレス加工により、プレス部品を連続的に高速生産する場合等は、プレス部品や、プレス加工に用いる金型に熱(以下、「加工熱」と記載する)が発生する。加工熱が発生すると、金型や材料の表面に塗布する潤滑剤の劣化や、金型に発生する熱変形等の理由により、プレス部品に欠陥が発生する可能性が増加する。加工熱の発生要因は季節や加工条件等により変化するため、プレス部品に欠陥が発生するか否かの予測は困難である。
【0005】
ところで、自動車メーカの部品生産現場では、プレス部品に発生した欠陥が数mm程度の大きさであっても、このプレス部品を製品として使用することは不可能であるため、プレス部品に発生する欠陥は、重要な問題である。特に、材料の不具合(素材特性に生じるばらつき等)により、プレス部品に連続して欠陥が発生し、その部品がそのまま後工程の車体組み立てに使用された場合には、作業コストや材料コスト等の損失、すなわち、金額的損失が非常に大きい。
このため、プレス加工による欠陥が発生しやすいプレス部品に対しては、プレス部品に対して、検査員の目視により個別に検査する工程を実施する場合がある。
【0006】
しかしながら、プレス加工により形成するプレス部品は、一つあたりの加工に要する時間が五秒程度の短時間であるため、例えば、一時間あたり500個程度生産されるプレス部品を、全て目視で検査することは非常に困難である。また、機械化を大幅に導入することにより、作業員の減少を図っている作業現場では、検査員の人手を確保することは困難である。また、目視による検査、すなわち、人間の目によって欠陥を検査する以上、プレス部品に発生する欠陥を見逃してしまう可能性がある。
【0007】
これらの問題に対する対応策としては、例えば、以下に示すような二つの技術を参考にして、プレス部品に発生する欠陥を検出する方法が考えられる。
第一の技術は、特許文献1に記載されているように、熱伝導部材を含む接合部からなる被検査部に熱エネルギーを照射し、この被検査部から放射される赤外線を、赤外線カメラにより受光して、電子部品を検査する検査方法である。この検査方法では、熱エネルギーとしてレーザービームを使用するとともに、検査対象部にレーザービームを垂直に照射する。また、レーザーの照射径を、検査対象部全体を覆うように設定する。
【0008】
また、第二の技術は、特許文献2に記載されているように、遮蔽体と、被膜欠陥検査監視部と、コントローラと、赤外線映像信号処理部とを備える、タービン翼の被膜欠陥検査装置である。
特許文献2に記載の技術では、遮蔽体は、タービン軸に植設したままの状態のタービン翼を包囲する。また、被膜欠陥検査監視部は、タービン翼に対し、架台に回転自在に支持された回転用テーブルに載置して、X軸、Y軸、Z軸の各軸上を進退移動が可能であり、且つ傾動が可能である。さらに、コントローラは、被膜欠陥検査監視部の進退、傾動移動を制御し、赤外線映像信号処理部は、被膜欠陥検査監視部からの信号に基づいて、被膜の温度分布を画像化する。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、検査対象の部品(特許文献1では熱伝導部材を含む接合部、特許文献2ではタービン翼)に対し、外部の加熱装置から熱エネルギーを与える必要がある。このため、プレス装置を設置済みの、部品の製造ライン上に、さらに加熱装置を設置する必要があり、スペース効率が低下するという問題がある。
また、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、検査対象の部品に対する検査工程に、加熱装置を用いた加熱工程が加わるため、欠陥の検出精度を向上させることが可能であっても、部品の生産性を向上させることが困難であるという問題がある。
【0010】
一方、連続的に加工される製品に対する欠陥検出方法としては、例えば、特許文献3に記載されているシート状部材の欠陥検出方法がある。
特許文献3に記載されているシート状部材の欠陥検出方法は、連続送りされるシート状部品に光を照射し、光照射によって明るさの変化が生じている光画像を検出して、その画像を解析することにより欠陥の種類を特定するものである。
【0011】
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、検査対象部品が全面にわたって平坦であることが必須条件であり、複雑な形状を有する自動車プレス部品へ適用することは困難であるという問題がある。
また、上述した特許文献1から特許文献3に記載の技術以外に、練り歯磨き、化粧品、絵の具、食品等のゲル状物質を充填した樹脂製可撓チューブの欠陥を検出する方法として、例えば、特許文献4に記載されている方法がある。
【0012】
特許文献4に記載されている方法は、半透明の検査物に赤外線を透過して、その透過画像を画像解析することにより欠陥を検出する方法である。
また、半導体の薄板や基板の傷、異物混入、クラックなどの不具合を検査する方法として、例えば、特許文献5に記載されている技術がある。
特許文献5に記載されている技術は、被検査物を透過照明手段で照射して、被検査物を透過した照明光を透過画像として撮影し、それを画像解析することで被検査物の良否判定を行う方法である。
【0013】
しかしながら、上述した特許文献4及び特許文献5に記載の技術では、被測定物として、半透明状で赤外光を透過できるものや、半導体の基板のような光を透過できるものを対象にしている。このため、光を透過できない鋼板で製造されるプレス部品への適用は困難である。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献6に記載されているプレス部品の欠陥検出方法が提案されている。
【0014】
特許文献6に記載されているプレス部品の欠陥検出方法は、まず、プレス装置を備える部品の製造ライン内において、プレス部品に対し、部品表面上における温度分布を赤外線カメラで撮影する。そして、加工熱により変化した部品表面の温度分布を解析し、この解析した温度分布を、予め設定した参照温度分布と比較することにより、プレス部品に発生した欠陥を検出する方法である。
【0015】
具体的には、予め、良品の温度分布がヒストグラム化された参照テーブルを、メモリーに格納しておく。そして、赤外線カメラで撮像した熱画像を画像処理して、プレス部品の温度分布情報をヒストグラム化して解析し、この解析した温度分布情報を参照テーブルと比較して、プレス部品に発生した欠陥を判定する。なお、温度分布の解析に際しては、上記のヒストグラム化を用いることなく、プレス部品の表面に表した温度分布同士を直接比較してもよい。
【0016】
このようなプレス部品の欠陥検出方法であれば、プレス部品の製造ライン上に加熱装置を設置する必要がないため、スペース効率の低下を抑制することが可能となる。また、検査対象のプレス部品に対する検査工程に加熱工程を加える必要が無いため、プレス部品の生産性が低下することを抑制可能となる。
【特許文献1】特開平5−52785号公報
【特許文献2】特開2003−98134号公報
【特許文献3】特開平9−153299号公報
【特許文献4】特開2006−64389号公報
【特許文献5】特開2007−309679号公報
【特許文献6】特開2006−177892号公報
【特許文献7】特開2007−309679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献6に記載したプレス部品の欠陥検出方法では、プレス加工の状態が安定しており、加工熱が安定している場合では、解析した温度分布と参照温度分布との差異に基づく、プレス部品に発生した欠陥の検出が容易となる。
しかしながら、特許文献6に記載したプレス部品の欠陥検出方法では、以下に記載するような問題により、その実用化が困難である。
【0018】
一般的なプレス加工の作業現場では、プレス加工を実施する前に、金型の交換作業や試し打ち作業等を行う場合が多く、これらの作業を行った後に、プレス部品の連続生産を実施する場合が多い。また、連続生産の実施中においても、プレス部品の材料を供給する材料供給作業や、プレス部品を搬送手段に積載する積載作業等により、非定常的に連続生産が中断される場合がある。
【0019】
このような場合、プレス加工によって発生する加工熱は、連続生産の開始直後は周囲の気温に近い状態であり、プレス加工を繰り返す毎に上昇する。そして、このような加工熱は、ある一定数のプレス加工を実施すると、加工熱の上昇がほぼ停止し、安定することとなる。
このとき、材料供給作業や積載作業等により、連続生産が中断すると、安定していた加工熱が急激に低下する。そして、連続生産を再開すると、低下した加工熱は、再び上昇することとなる。したがって、現実的なプレス加工の作業現場においては、加工熱の変化が発生するおそれがある。
【0020】
また、加工熱は、周囲の温度に大きく影響を受けるため、特に、夏季と冬季等、周囲の温度に大きな差異がある場合、部品表面上における加工熱の温度分布には、大きな差異が発生するおそれがある。
したがって、実際にプレス加工を実施する作業現場においては、特許文献6に記載したプレス部品の欠陥検出方法のように、解析した温度分布と参照温度分布との差異に基づいて欠陥を検出すると、欠陥の見逃しや誤検知が発生するという問題が生じるおそれがある。なお、上記の誤検知とは、欠陥が発生していないのに欠陥があると判定することである。
【0021】
また、画像データから欠陥などの特徴のある部位を自動的に検出する方法としては、温度や画像データに対して、二次微分処理と呼ばれる方法を適用し、温度もしくは画像明度が変化している部位のみを抽出して、そのデータから欠陥を検出する方法が、一般に知られている。
この方法によれば、全体の温度や画像明度の影響を排除できるという利点がある。一例として、特許文献7に記載の技術では、この二次微分処理を利用して、半導体の薄板や基板の傷、異物混入、クラック等を精度良く自動判定する方法が提案されている。
【0022】
しかしながら、実際のプレス生産ラインでは、様々な外乱があり、温度変化部位の抽出だけでは誤検知が発生するという問題がある。例えば、プレスラインでは防錆油が塗布された鋼板や、プレス前に洗浄油で洗浄する工程を経てきた鋼板をプレス加工する。このとき、油が水玉状に不均一に付着している場合があり、この油膜は反射率を上げる作用があるため、赤外線カメラで撮影したときに、この部位だけ温度が高く検出される。
【0023】
この画像を上記の方法で二次微分処理すると、欠陥と判定されてしまい、誤検知が発生してしまう。また、照明や太陽光の変化によっても、ある部位のみ温度が高く検出されることにより、誤検知の原因となってしまう。
また、特許文献6に記載したプレス部品の欠陥検出方法で行う、ヒストグラム化や部品の表面に表した温度分布同士の直接比較に関しても、以下に記載するような問題により、その実用化が困難である。
【0024】
実際にプレス加工を実施する作業現場においては、プレス部品をロボット等により金型から取り出し、検査冶具やコンベア等の搬送手段に載置するが、この載置作業は、高速生産中の作業であるため、所望の位置にプレス部品を載置することが困難である。
このため、載置したプレス部品の位置が、所望の位置に対して数十ミリ程度変位する場合がある。これに対し、熱画像を撮影する赤外線カメラは所定の位置に固定するため、赤外線カメラが撮影した画像データは、所望の位置から変位したものとなるおそれがある。
したがって、載置作業後のプレス部品が所望の位置に対して変位することにより、赤外線カメラが撮影した画像データと参照画像との比較においてエラーが発生し、欠陥の見逃しや誤検知が発生するという問題が生じるおそれがある。
【0025】
被検査物の位置ズレに対して、特許文献4では、半透明の検査物に赤外線を透過して得られた検査品外観画像と、予め記録しておいた基準外観画像の特徴部位とを比較して、座標移動量を算出し、その位置ズレを補正する方法が提案されている。しかしながら、特許文献4に記載されている特徴部位の検出方法は、透過画像の濃淡を元に算出するものであり、透過画像を得ることができないプレス部品に対しては適用できない。
本発明は、上述したような問題点に着目してなされたもので、プレス部品に発生した欠陥の見逃しや誤検知を抑制することが可能な、プレス部品の欠陥検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、プレス加工後のプレス部品に発生した欠陥を検出するプレス部品の欠陥検出方法であって、
プレス加工後の前記プレス部品の表面温度分布を検出する表面温度分布検出工程と、当該表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に基づいて、前記プレス部品に発生した欠陥を検出する欠陥検出工程と、を有し、
【0027】
前記欠陥検出工程は、前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち、周辺の領域から所定の温度差以上で温度が変化した温度急変領域を検出する温度急変領域検出工程と、当該温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域に基づいて、前記プレス部品に欠陥が発生したか否かを判定する欠陥判定工程と、を含み、
前記温度急変領域検出工程において、前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により前記温度急変領域を検出することを特徴とするものである。
【0028】
本発明によると、温度急変領域検出工程において、プレス加工後のプレス部品の表面温度分布のうち、周辺の領域から所定の温度差以上で温度が変化する領域である温度急変領域を、表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により検出する。また、欠陥判定工程において、温度急変領域検出工程で検出した温度急変領域に基づいて、プレス部品に発生する欠陥を検出する。
【0029】
具体的には、温度急変領域内のプレス部品の表面温度と、温度急変領域周辺のプレス部品の表面温度との温度差を検出し、この検出した温度差が、所定の欠陥部内外温度差閾値以下であるか否かを判定する。そして、検出した温度差が、欠陥部内外温度差閾値以下である場合に、プレス部品に欠陥が発生していると判定する。なお、上記の「所定の欠陥部内外温度差閾値」は、例えば、形状や材質の異なるプレス部品毎に、固有の値に設定する。
このため、プレス部品及びプレス加工に用いる金型に発生する加工熱の変化や、プレス部品周辺の温度変化による影響を受けることなく、プレス部品に発生する欠陥を検出することが可能となる。
【0030】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち前記プレス部品に欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域を予め記憶する欠陥監視領域記憶工程を有し、
前記欠陥監視領域記憶工程を、前記欠陥判定工程の前工程とし、
前記欠陥判定工程において、前記欠陥監視領域記憶工程で記憶した前記欠陥監視領域に基づき、前記温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域が前記欠陥監視領域内に存在する場合に、前記プレス部品に欠陥が発生したと判定することを特徴とするものである。
【0031】
本発明によると、欠陥判定工程の前工程として、プレス部品に欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域を予め記憶する欠陥監視領域記憶工程を行う。また、欠陥判定工程において、プレス部品の表面温度分布のうち、プレス部品に欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域に基づいて、プレス部品に発生する欠陥を検出する。
このため、欠陥監視領域外、すなわち、プレス部品の空隙部等、欠陥が発生しない位置に温度急変領域が存在する場合に、この検出した温度急変領域を、プレス部品に発生する欠陥の判定対象から除外することが可能となる。
【0032】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明であって、前記表面温度分布検出工程において、プレス加工後に所定の表面温度分布検出位置へ載置した前記プレス部品の表面温度分布である載置表面温度分布を検出し、
前記欠陥検出工程は、前記表面温度分布検出位置へ理想的に配置した場合のプレス部品の表面温度分布である基準表面温度分布に基づいて、当該基準表面温度分布に対する前記載置表面温度分布の変位量を検出する温度分布変位量検出工程と、前記温度分布変位量検出工程で検出した変位量に基づいて、前記載置表面温度分布の欠陥監視領域が前記基準表面温度分布の欠陥監視領域と近似するように、前記載置表面温度分布の位置を補正する欠陥監視領域位置補正工程と、を含み、
前記欠陥判定工程において、前記欠陥監視領域位置補正工程で補正した前記載置表面温度分布の欠陥監視領域に基づき、前記温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域が前記欠陥監視領域内に存在する場合に、前記プレス部品に欠陥が発生したと判定することを特徴とするものである。
【0033】
本発明によると、欠陥監視領域位置補正工程において、プレス部品の位置が表面温度分布検出位置から変位している場合に、この変位量に基づいて、載置表面温度分布の欠陥監視領域の位置が基準表面温度分布の欠陥監視領域の位置と近似するように、載置表面温度分布の位置を補正する。
このため、載置表面温度分布の位置が基準表面温度分布から変位していても、この変位量に基づいて、載置表面温度分布の欠陥監視領域の位置を、基準表面温度分布の欠陥監視領域の位置に補正することが可能となる。
【0034】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項2または3に記載した発明であって、前記欠陥監視領域を、複数の欠陥監視領域に分割し、
前記プレス部品の表面を、前記複数の欠陥監視領域に応じた複数の表面温度分布検出領域に分割し、
前記表面温度分布検出工程において、前記複数の表面温度分布検出領域毎に前記プレス部品の表面温度分布を検出し、
前記温度急変領域検出工程において、前記表面温度分布検出工程で前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により、前記温度急変領域を前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出し、
前記欠陥判定工程において、前記温度急変領域検出工程で前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出した前記温度急変領域に基づいて、前記プレス部品に欠陥が発生したか否かを前記複数の表面温度分布検出領域毎に判定することを特徴とするものである。
【0035】
本発明によると、欠陥監視領域を複数の欠陥監視領域に分割し、プレス部品の表面を、複数の欠陥監視領域に応じた複数の表面温度分布検出領域に分割する。また、温度急変領域検出工程において、複数の表面温度分布検出領域毎に検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により、複数の表面温度分布検出領域毎に温度急変領域を検出する。また、欠陥判定工程において、プレス部品に欠陥が発生したか否かを、複数の表面温度分布検出領域毎に判定する。
このため、プレス部品の欠陥が発生すると予測した領域を、欠陥の発生頻度等に応じて複数の範囲に分割し、この分割した複数の領域毎に、プレス部品に発生する欠陥を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、加工熱の変化や周辺の温度変化による影響を受けることなく、プレス部品に発生する欠陥を検出することが可能となるため、プレス加工後のプレス部品に発生した欠陥の見逃しや誤検知を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態のプレス部品の欠陥検出方法(以下、「欠陥検出方法」と記載する)を適用する設備の構成を説明する。
図1は、欠陥検出方法を適用するプレス部品Pの製造ラインを示す図である。なお、本実施形態では、プレス部品Pを、自動車の車体(ボディ部品)とした場合について説明する。
【0038】
図1中に示すように、欠陥検出方法を適用するプレス部品Pの製造ラインは、表面温度分布検出手段1と、部品情報記憶手段2と、欠陥監視領域記憶手段4と、欠陥検出手段6とを備えている。
表面温度分布検出手段1は、プレス部品Pの熱画像を撮影可能な、一つもしくは複数の赤外線カメラ8を備えており、プレス部品Pの表面温度分布を検出して、欠陥監視領域記憶手段4へ出力する。なお、本実施形態では、一例として、図中に示すように、表面温度分布検出手段1が、二つの赤外線カメラ8を備えている場合を説明する。
【0039】
部品情報記憶手段2は、欠陥監視領域記憶手段4と同様、例えば、コンピュータが備えるメモリー等の記憶手段を用いて形成してある。
また、部品情報記憶手段2は、表面温度分布検出位置へ理想的に配置したプレス部品Pの形状と、後述する二値化処理に用いる閾値と、有害欠陥サイズと、所定の欠陥部内外温度差閾値を記憶している。
【0040】
なお、上記の「表面温度分布検出位置」とは、表面温度分布を検出する際に、プレス部品Pを配置する理想の位置である。表面温度分布検出位置の設定は、例えば、プレス部品Pの形状や、赤外線カメラ8の性能(撮影範囲等)に応じて行う。
また、上記の「有害欠陥サイズ」とは、プレス部品Pに固有の大きさであり、例えば、プレス部品Pの使用目的等に応じて予め設定する。
【0041】
また、上記の「所定の欠陥部内外温度差閾値」は、例えば、形状や材質の異なるプレス部品P毎に、固有の値に設定する。
欠陥監視領域記憶手段4は、例えば、コンピュータが備えるメモリー等の記憶手段を用いて形成してあり、表面温度分布検出手段1が検出した表面温度分布のうち、プレス部品Pに欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域を、予め記憶している。
【0042】
ここで、欠陥監視領域とは、同形状のプレス部品Pに特有の領域であり、例えば、プレス部品Pの形状が、空隙部を有する形状である場合は、この空隙部を、プレス部品Pに欠陥が発生しない位置として設定する。また、例えば、プレス部品Pが、絞り成形部等、平面部と比較して欠陥を発生しやすい部分を有する形状である場合は、この部分を、プレス部品Pに欠陥が発生しやすい位置として設定してもよい。
【0043】
また、欠陥監視領域は、複数の欠陥監視領域に分割してある。複数の欠陥監視領域を設定する際は、例えば、プレス部品P全体の形状に応じて設定する。
欠陥検出手段6は、例えば、メモリー等の記憶手段を備えるコンピュータを用いて形成してあり、温度分布変位量検出手段10と、欠陥監視領域位置補正手段12と、温度急変領域検出手段14と、欠陥判定手段16とを備えている。
【0044】
温度分布変位量検出手段10は、基準表面温度分布記憶部18と、変位量検出部20とを備えている。
基準表面温度分布記憶部18は、表面温度分布検出位置へ理想的に配置したプレス部品Pの表面温度分布である基準表面温度分布を、予め記憶している。
具体的には、部品情報記憶手段2から、表面温度分布検出位置へ理想的に配置したプレス部品Pの形状と、このプレス部品Pに対して表面温度分布検出手段1が検出した表面温度分布とを、予め取得する。そして、これらの取得したプレス部品Pの形状及び表面温度分布から、上述した基準表面温度分布を算出して記憶する。
【0045】
ここで、基準表面温度分布は、複数の表面温度分布検出領域に応じて、複数に分割してある。すなわち、基準表面温度分布記憶部18は、複数に分割した基準表面温度分布を記憶している。なお、以下の説明は、複数に分割した基準表面温度分布のうち、一つの基準表面温度分布のみについて説明するが、その他の基準表面温度分布も、同様の構成を有する。
変位量検出部20は、上述した基準表面温度分布に対する、表面温度分布検出位置へ向けて載置したプレス部品Pの表面温度分布である、載置表面温度分布の変位量を検出する。
【0046】
ここで、載置表面温度分布は、基準表面温度分布と同様、複数の表面温度分布検出領域に応じて、複数に分割してある。なお、以下の説明は、複数に分割した載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布について説明するが、その他の載置表面温度分布に関しても同様である。
以下、変位量検出部20が行う処理について、具体的に説明する。
まず、部品情報記憶手段2から取得したプレス部品Pの形状と、載置表面温度分布に基づき、プレス部品Pが有する空隙部、すなわち、載置表面温度分布において、空気が位置する領域である空気温度検知領域を検出する。
【0047】
空気温度検知領域を検出した後、載置表面温度分布と空気温度検知領域に基づき、載置表面温度分布の空気温度検知領域における温度、すなわち、載置表面温度分布における空気の温度(以下、「空気温度Tair」と記載する)を解析する。
空気温度Tairを解析した後、この空気温度Tairを閾値として用い、載置表面温度分布に対する二値化処理を行う。この二値化処理とは、載置表面温度分布の各画素における温度を、温度T(x,y)とした場合に、T(x,y)≧Tairの画素を「1」と変換し、T(x,y)<Tairの画素を「0」と変換する処理である。なお、上記の(x,y)は、載置表面温度分布における各画素位置である。
【0048】
また、上述した載置表面温度分布に対する二値化処理と同様の手順により、基準表面温度分布に対しても、二値化処理を行う。基準表面温度分布に対する二値化処理の手順は、上述した載置表面温度分布に対する二値化処理の手順と同様であるため、その説明を省略する。
そして、二値化処理を行った基準表面温度分布全体から、選択した一部分を抽出し、この抽出した温度分布を用いて基準形状画像を形成する。この基準形状画像には、空気温度検知領域の大部分、または角部や湾曲部等の特徴的な部分を含ませる。
【0049】
次に、二値化処理を行った載置表面温度分布全体に対して、そのX方向及びY方向へ、基準形状画像を走査させる。これにより、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と一致する領域を探索する。
載置表面温度分布全体に対する、基準形状画像と一致する領域の探索においては、載置表面温度分布に対する基準形状画像の座標(x,y)を、逐次検出して蓄積する。
【0050】
そして、蓄積した座標に基づき、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と最も一致する領域を算出して、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と最も一致する領域を検出する。さらに、この領域の基準表面温度分布における基準形状画像の領域に対する変位量を検出して、この変位量に基づき、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量を検出する。
【0051】
ここで、載置表面温度分布は、複数の基準表面温度分布に応じて分割してある。すなわち、変位量検出部20は、複数の基準表面温度分布に対する、複数の載置表面温度分布の変位量を、それぞれ検出する。
以上により、温度分布変位量検出手段10は、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量を検出する。
【0052】
欠陥監視領域位置補正手段12は、温度分布変位量検出手段10が検出した変位量に基づいて、載置表面温度分布の欠陥監視領域が基準表面温度分布の欠陥監視領域と近似するように、載置表面温度分布の位置を補正する。
具体的には、温度分布変位量検出手段10が検出した変位量に応じて、載置表面温度分布の位置を変位させることにより、載置表面温度分布の欠陥監視領域を補正して、基準表面温度分布の欠陥監視領域に近似させる。
【0053】
ここで、温度分布変位量検出手段10は、複数の載置表面温度分布の変位量を、それぞれ検出する。すなわち、欠陥監視領域位置補正手段12は、複数の載置表面温度分布の欠陥監視領域を補正する。
温度急変領域検出手段14は、空間二次微分処理部22と、判定領域抽出部24とを備える。
空間二次微分処理部22は、欠陥監視領域位置補正手段12が欠陥監視領域を補正した複数の載置表面温度分布に対し、それぞれ、以下の式(1)で示す空間二次微分処理を行い、載置表面温度分布を、温度急変領域の分布である温度急変領域分布に変換する。
W(x,y)=dT(x,y)/dx+dT(x,y)/dy…(1)
【0054】
ここで、上記の温度急変領域は、載置表面温度分布のうち、周辺の領域から所定の温度差以上で温度が変化する領域とする。所定の温度は、例えば、プレス部品Pの形状に応じて設定する。
判定領域抽出部24は、空間二次微分処理部22が載置表面温度分布から変換した複数の温度急変領域分布に対して、それぞれ、載置表面温度分布に対する二値化処理と同様の二値化処理を行う。この二値化処理に用いる閾値は、欠陥監視領域毎に設定し、部品情報記憶手段2から取得する。温度急変領域分布の二値化処理に用いる閾値の設定は、例えば、プレス部品Pの表面温度に基づいて行う。
【0055】
そして、二値化処理を行った複数の温度急変領域分布から、それぞれ、温度急変領域を検出する。さらに、二値化処理を行った複数の温度急変領域分布から、それぞれ、温度急変領域とその周辺部分を含む部分を、判定領域として抽出する。
以上により、温度急変領域検出手段14は、表面温度分布検出手段1が複数の表面温度分布検出領域毎に検出した載置表面温度分布に対する空間二次微分処理により、温度急変領域を複数の表面温度分布検出領域毎に検出する。
【0056】
欠陥判定手段16は、温度急変領域位置判定部26と、温度急変領域サイズ判定部28と、温度急変領域内外温度差判定部30とを備える。
温度急変領域位置判定部26は、判定領域抽出部24が複数の温度急変領域分布から抽出した判定領域の位置を、それぞれ、対応する複数の欠陥監視領域の位置と比較する。そして、例えば、図2中に示すように、複数の欠陥監視領域毎に、対応する温度急変領域が欠陥監視領域内に存在するか否かを判定し、温度急変領域が欠陥監視領域内に存在すると判定すると、その判定結果を温度急変領域サイズ判定部28へ出力する。なお、図2は、一つの欠陥監視領域において、温度急変領域が欠陥監視領域内に存在するか否かを判定する状態を示す図である。また、図2中では、温度急変領域を、符号Eを付して示している。
【0057】
温度急変領域サイズ判定部28は、例えば、図3中に示すように、温度急変領域の大きさと、部品情報記憶手段2から取得した有害欠陥サイズとを比較し、温度急変領域が有害欠陥サイズ以上である場合に、その判定結果を温度急変領域内外温度差判定部30へ出力する。なお、図3は、温度急変領域の大きさと有害欠陥サイズとを比較する状態を示す図である。また、図3中では、図2と同様、温度急変領域を、符号Eを付して示している。
【0058】
温度急変領域内外温度差判定部30は、温度急変領域内のプレス部品Pの表面温度と、温度急変領域周辺のプレス部品Pの表面温度との温度差を検出する。そして、例えば、図4中に示すように、この検出した温度差が、部品情報記憶手段2から取得した所定の欠陥部内外温度差閾値以下であるか否かを判定する。そして、検出した温度差が、欠陥部内外温度差閾値以下である場合に、プレス部品に欠陥が発生していると判定する。なお、図4は、検出した温度差と欠陥部内外温度差閾値とを比較する状態を示す図である。また、図4中では、図2及び図3と同様、温度急変領域を、符号Eを付して示している。
【0059】
以上により、欠陥判定手段16は、温度急変領域検出手段14が複数の表面温度分布検出領域毎に検出した温度急変領域に基づいて、プレス部品Pに欠陥が発生したか否かを、複数の表面温度分布検出領域毎に判定する。
したがって、上述した欠陥検出手段6は、表面温度分布検出手段1が検出した表面温度分布に基づいて、プレス部品Pに発生した欠陥を検出する。
【0060】
(欠陥検出方法)
次に、図1から図4を参照しつつ、図5から図8を用いて、上述した設備により行う欠陥検出方法を説明する。
欠陥検出方法は、上述した表面温度分布検出手段1が行う表面温度分布検出工程と、上述した欠陥検出手段6が行う欠陥検出工程とを有する。
【0061】
表面温度分布検出工程は、複数の表面温度分布検出領域毎に、プレス部品Pの表面温度分布を検出する工程である。
欠陥検出工程は、表面温度分布検出工程で複数の表面温度分布検出領域毎に検出した表面温度分布に基づいて、プレス部品Pに発生した欠陥を検出する工程である。
また、欠陥検出工程は、温度分布変位量検出工程と、欠陥監視領域位置補正工程と、温度急変領域検出工程と、欠陥判定工程とを含む。
【0062】
温度分布変位量検出工程は、上述した基準表面温度分布に対する、上述した載置表面温度分布の変位量を検出する工程である。
欠陥監視領域位置補正工程は、温度分布変位量検出工程で検出した変位量に基づいて、載置表面温度分布の欠陥監視領域が基準表面温度分布の欠陥監視領域と近似するように、載置表面温度分布の位置を補正する工程である。
【0063】
温度急変領域検出工程は、表面温度分布検出工程において検出した載置表面温度分布に対する空間二次微分処理により、温度急変領域を複数の表面温度分布検出領域毎に検出する工程である。
欠陥判定工程は、温度急変領域検出工程において複数の表面温度分布検出領域毎に検出した温度急変領域に基づいて、プレス部品Pに欠陥が発生したか否かを、複数の表面温度分布検出領域毎に判定する工程である。
【0064】
ここで、欠陥検出方法は、表面欠陥判定工程の前工程として、欠陥監視領域記憶工程を有する。
欠陥監視領域記憶工程は、表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち、プレス部品Pに欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域を、予め記憶する工程である。
【0065】
以下、図1を参照しつつ、図5及び図6を用いて、表面温度分布検出工程、温度分布変位量検出工程及び欠陥監視領域位置補正工程について説明する。
図5は、表面温度分布検出工程の前工程と、表面温度分布検出工程と、温度分布変位量検出工程と、欠陥監視領域位置補正工程の内容を示すフローチャートである。また、図6は、表面温度分布検出工程、温度分布変位量検出工程及び欠陥監視領域位置補正工程において、表面温度分布検出手段1及び欠陥検出手段6が行う処理の例を示す図である。
【0066】
図5中に示すように、欠陥検出方法を開始(ステップS100)する際には、まず、表面温度分布検出工程の前工程を行う。
表面温度分布検出工程の前工程では、部品情報記憶手段2から、プレス部品Pの部品情報を取得し、表面温度分布検出工程へ移行する(ステップS101)。この部品情報は、表面温度分布検出位置へ理想的に配置したプレス部品Pの形状と、このプレス部品Pに対して表面温度分布検出手段1が検出した表面温度分布とを含む。
【0067】
次に、表面温度分布検出工程について説明する。
表面温度分布検出工程では、プレス部品Pの熱画像を、各赤外線カメラ8により撮影し、この撮影した熱画像を取得する(ステップS102)。そして、取得した熱画像を、複数に分割した表面温度分布検出領域毎に載置表面温度分布に変換した後、温度分布変位量検出工程へ移行する。
【0068】
次に、温度分布変位量検出工程について説明する。
温度分布変位量検出工程では、まず、表面温度分布検出工程において、複数に分割した表面温度分布検出領域毎に検出した、複数の載置表面温度分布を取得する。取得した載置表面温度分布は、図6(a)中に示すように、表面温度が異なる領域を目視可能な画像で表す。なお、図6(a)中には、複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示す。
【0069】
図6(a)中に示すように、プレス部品Pの載置表面温度分布は、50℃程度に上昇する領域を有する。この領域は、例えば、プレス加工時に作用する応力が高い部分や、金型との摺動が激しい部分を示す領域である。
また、図6(a)中に示すように、プレス部品Pの載置表面温度分布は、他の領域と比較して低温(29℃程度)の領域を有する。この領域は、プレス部品Pの空隙部等であり、大気の温度とほぼ一致する温度の領域である。
【0070】
複数の載置表面温度分布を取得した後、これらの載置表面温度分布と、ステップS101において取得したプレス部品Pの部品情報とに基づき、複数の載置表面温度分布に対して、それぞれ、上述した空気温度検知領域を検出する。そして、この空気温度検知領域と載置表面温度分布とに基づき、上述した空気温度Tairを解析する(ステップS103)。なお、空気温度検知領域は、図6(a)中に示すように、載置表面温度分布のうち、他の領域と比較して低温の領域である。
【0071】
ステップS103において空気温度Tairを解析した後、この解析した空気温度Tairを閾値として用い、複数の載置表面温度分布に対して、それぞれ、上述した二値化処理を行う(ステップS104)。
ステップS104において二値化処理を行った載置表面温度分布は、図6(b)中に示すように、プレス部品Pの存在する領域と空気温度検知領域との、二種類の領域のみが存在する分布となる。なお、図6(b)中には、二値化処理を行った複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示す。
【0072】
ステップS104において複数の載置表面温度分布に対する二値化処理を行った後、載置表面温度分布に対する二値化処理と同様の手順により、複数の基準表面温度分布に対して二値化処理を行う。そして、二値化処理を行った複数の基準表面温度分布全体から、それぞれ、特徴的な部分を含ませた一部分を抽出し、この抽出した温度分布を用いて複数の基準形状画像を形成する(ステップS105)。
ステップS105において形成した基準形状画像は、図6(c)中に示すように、二値化処理を行った基準表面温度分布のうち、プレス部品Pの存在する領域及び空気温度検知領域を含む。なお、図6(c)中には、複数の基準形状画像のうち、一つの基準形状画像のみを示す。
【0073】
ステップS105において複数の基準形状画像を形成した後、二値化処理を行った複数の基準表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布全体(図5及び図6中では、「二値化載置表面温度分布」と記載)に対して、そのX方向及びY方向へ、対応する基準形状画像を走査させる。これにより、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と一致(マッチング)する領域を探索する(ステップS106)。なお、本実施形態では、載置表面温度分布全体に対して、そのX方向及びY方向へ、対応する基準形状画像を走査させるが、ステップS106における処理はこれに限定するものではない。すなわち、基準形状画像を任意の角度で回転させた状態で、載置表面温度分布全体に対し、X方向及びY方向へ走査させてもよい。
【0074】
ステップS106において、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像とマッチングする領域を探索する際には、図6(d)中に示すように、二値化処理を行った載置表面温度分布全体に対して、そのX方向及びY方向へ、対応する基準形状画像を走査させる。なお、図6(d)中には、複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示すとともに、この載置表面温度分布に対応する基準形状画像を示す。
【0075】
ステップS106において、載置表面温度分布全体に対し、基準形状画像とマッチングする領域を探索する際には、載置表面温度分布全体に対して、基準形状画像とマッチングする領域があるか否かを判定する(ステップS107)。
ステップS107において、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像とマッチングする領域が検出されない場合、すなわち、載置表面温度分布全体に基準形状画像とマッチングする領域が無いと判定した場合は、警報手段(図示せず)を作動させる。これにより、警報ランプの点灯、警報スピーカからの警報音の出力、ディスプレイへの判定結果の表示を行うとともに、プレス装置等に対して、動作を中断させる中断指示信号を出力する(「パネル投入不良警報」)。
【0076】
一方、ステップS107において、載置表面温度分布全体に基準形状画像とマッチングする領域があると判定した場合は、この領域の基準表面温度分布における基準形状画像の領域に対する変位量を検出する(「熱画像ズレ量解析」)。そして、この変位量に基づき、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量を検出して、欠陥監視領域位置補正工程へ移行する(ステップS108)。なお、図6(e)中には、ステップS108において、載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と最も一致する領域を判定した状態を示す。また、図6(e)中には、複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示すとともに、この載置表面温度分布に対応する基準形状画像を示す。
【0077】
次に、欠陥監視領域位置補正工程について説明する。
欠陥監視領域位置補正工程では、ステップS100において検出した、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量に応じて、載置表面温度分布の位置を変位させる。これにより、載置表面温度分布の欠陥監視領域を補正(「熱画像ズレ補正」)して、基準表面温度分布の欠陥監視領域に近似させる(ステップS109)。なお、図6(f)中には、ステップS109において、ステップS100で検出した変位量に応じて、載置表面温度分布の位置を変位させた状態を示す。また、図6(f)中には、複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示すとともに、この載置表面温度分布に対応する基準形状画像を示す。
【0078】
以下、図1を参照しつつ、図7及び図8を用いて、温度急変領域検出工程及び欠陥判定工程について説明する。
図7は、温度急変領域検出工程の前工程と、温度急変領域検出工程と、欠陥判定工程の内容を示すフローチャートである。また、図8は、温度急変領域検出工程及び欠陥判定工程において、欠陥検出手段6が行う処理の例を示す図である。
【0079】
図7中に示すように、温度急変領域検出工程を行う前に、まず、温度急変領域検出工程の前工程を開始(ステップS200)する。
温度急変領域検出工程の前工程では、欠陥監視領域記憶手段4から、上述した欠陥監視領域を取得するとともに、部品情報記憶手段2から、プレス部品Pの部品情報を取得し、温度急変領域検出工程へ移行する(ステップS201)。部品情報記憶手段2から取得する部品情報は、上述した温度急変領域分布に対する二値化処理に用いる閾値と、上述した有害欠陥サイズと、欠陥部内外温度差閾値とを含む。
【0080】
次に、温度急変領域検出工程について説明する。
温度急変領域検出工程では、欠陥監視領域位置補正手段12から、欠陥監視領域位置補正工程において欠陥監視領域の位置を補正した、複数の載置表面温度分布を取得する(ステップS202)。
ステップS202において取得した載置表面温度分布は、図8(a)中に示すように、欠陥監視領域を表示した画像である。なお、図8(a)中には、複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示す。
図8(a)中に示すように、ステップS202において取得した載置表面温度分布において、欠陥監視領域は、プレス部品Pの空隙部を含まない領域である。
【0081】
ステップS202において、欠陥監視領域の位置を補正した複数の載置表面温度分布を取得した後、各載置表面温度分布に対し、それぞれ、上記の式(1)で示す空間二次微分処理を行う(ステップS203)。これにより、複数の載置表面温度分布を、それぞれ、温度急変領域の分布である温度急変領域分布に変換する。
ステップS203において空間二次微分処理を行った載置表面温度分布は、図8(b)中に示すように、温度急変領域分布となる。なお、図8(b)中には、空間二次微分処理を行った複数の載置表面温度分布のうち、一つの載置表面温度分布のみを示す。
【0082】
ステップS203において、複数の載置表面温度分布を、それぞれ、温度急変領域分布に変換した後、複数の温度急変領域分布から、一つの温度急変領域分布を選択する(ステップS204)。
ステップS204において、複数の温度急変領域分布から一つの温度急変領域分布を選択した後、この選択した温度急変領域分布に対して、上述した二値化処理を行う(ステップS205)。ステップS205の二値化処理に用いる閾値は、ステップS201において、部品情報記憶手段2から取得した閾値である。
【0083】
ステップS205において二値化処理を行った温度急変領域分布は、図8(b)中に示すように、温度急変領域とその他の領域との、二種類の領域のみが存在する分布となる。また、図8(b)中に示すように、二値化処理を行った温度急変領域分布では、プレス部品Pに発生した欠陥Dの他に、プレス部品Pの端部32も、温度急変領域として表示される。
【0084】
ステップS205において、選択した一つの温度急変領域分布に対する二値化処理を行った後、二値化処理を行った温度急変領域分布から、温度急変領域を検出する。さらに、二値化処理を行った温度急変領域分布から、温度急変領域とその周辺部分を含む部分を、判定領域として抽出して、欠陥判定工程へ移行する(ステップS206)。
ステップS206において抽出した判定領域は、図8(c)中に示すように、プレス部品Pに発生した欠陥Dと、プレス部品Pの端部32と、両者の周辺部分とを含む。
【0085】
次に、欠陥判定工程について説明する。
欠陥判定工程では、ステップS206において抽出した判定領域の位置を、対応する欠陥監視領域の位置と比較し、判定領域が含む温度急変領域が、欠陥監視領域内に存在するか否かを判定する(ステップS207)。
図8(d)中に示すように、ステップS206において抽出した判定領域が含む、二つの温度急変領域のうち、プレス部品Pに発生した欠陥Dは、欠陥監視領域内に存在する。一方、プレス部品Pの端部32は、欠陥監視領域内に存在していない。
【0086】
したがって、二つの温度急変領域のうち、プレス部品Pに発生した欠陥Dは、プレス部品Pに発生した欠陥として判定する。また、二つの温度急変領域のうち、プレス部品Pの端部32は、プレス部品Pに発生した欠陥としては判定しない。
ステップS207において、判定領域が含む温度急変領域が、欠陥監視領域内に存在すると判定した場合、温度急変領域の大きさと、ステップS201において部品情報記憶手段2から取得した有害欠陥サイズとを比較する。そして、温度急変領域の大きさが、有害欠陥サイズ以上であるか否かを判定する(ステップS208)。
【0087】
一方、ステップS207において、判定領域が含む温度急変領域が、欠陥監視領域内に存在しないと判定した場合、複数の温度急変領域分布から、ステップS204において選択した温度急変領域分布以外の温度急変領域分布を、一つ選択する(ステップS211)。そして、上述したステップS204の処理へ移行する。
ステップS208において、温度急変領域の大きさが有害欠陥サイズ以上であると判定した場合、温度急変領域内の表面温度と、温度急変領域周辺の表面温度との温度差(領域内外温度差)を検出し、この検出した領域内外温度差と、ステップS201において部品情報記憶手段2から取得した欠陥部内外温度差閾値とを比較する(ステップS209)。そして、検出した領域内外温度差が欠陥部内外温度差閾値以下であるか否かを判定する。
【0088】
一方、ステップS208において、温度急変領域の大きさが有害欠陥サイズ未満であると判定した場合、温度急変領域の位置に欠陥が発生していないと判定し、上述したステップS211の処理へ移行する。
ステップS209において、領域内外温度差が欠陥部内外温度差閾値以下であると判定した場合、温度急変部の位置に欠陥が発生していると判定する(ステップS210)。なお、図8(e)中には、プレス部品Pに欠陥が発生している状態を示す。
【0089】
ステップS211においては、複数の温度急変領域分布から、一つの温度急変領域分布を選択する処理を繰り返す。そして、全ての温度急変領域分布に対して、ステップS207、ステップS208およびステップS209の処理を行った結果、ステップS211の処理に移行した場合、プレス部品Pに欠陥が発生していないため、プレス部品Pが良品であると判定(良品判定)して、処理を終了する(ステップS212)。
【0090】
(効果)
したがって、本実施形態の欠陥検出方法であれば、欠陥判定工程において、プレス部品Pの表面温度分布のうち、温度急変領域に基づいて、プレス部品Pに発生する欠陥を検出する。また、温度急変領域検出工程において、温度急変領域を、表面温度分布に対する空間二次微分処理により検出する。また、欠陥判定工程において、温度急変領域検出工程で検出した温度急変領域に基づいて、プレス部品Pに発生する欠陥を検出する。
【0091】
このため、プレス部品P及び金型に発生する加工熱の変化や、プレス部品P周辺の温度変化による影響を受けることなく、さらにプレス加工に用いる油の油膜等の外乱を排除して、プレス部品Pに発生する欠陥を検出することが可能となる。
その結果、プレス部品Pに発生した欠陥の見逃しや誤検知を抑制することが可能となり、プレス部品Pに発生する欠陥の検出精度を向上させることが可能となる。
【0092】
また、本実施形態の欠陥検出方法であれば、欠陥判定工程の前工程として欠陥監視領域記憶工程を行う。また、欠陥判定工程において、プレス部品Pの表面温度分布のうち、欠陥監視領域に基づいて、プレス部品Pに発生する欠陥を検出する。
このため、欠陥監視領域外、すなわち、プレス部品Pの空隙部等、欠陥が発生しない位置に温度急変領域が存在する場合に、この検出した温度急変領域を、プレス部品Pに発生する欠陥の判定対象から除外することが可能となる。
【0093】
その結果、プレス部品Pに発生した欠陥の誤検知を抑制することが可能となり、プレス部品Pに発生する欠陥の検出精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の欠陥検出方法であれば、欠陥監視領域位置補正工程において、プレス部品Pの位置が表面温度分布検出位置から変位している場合に、この変位量に基づいて、載置表面温度分布の位置を補正する。
【0094】
このため、載置表面温度分布の位置が基準表面温度分布から変位していても、この変位量に基づいて、載置表面温度分布の欠陥監視領域の位置を、基準表面温度分布の欠陥監視領域の位置に補正することが可能となる。
その結果、欠陥監視領域を適正な位置に補正することが可能となるため、プレス部品Pに発生した欠陥の誤検知を抑制することが可能となり、プレス部品Pに発生する欠陥の検出精度を向上させることが可能となる。また、プレス部品Pの製造ラインの高速化に対応することが可能となり、プレス部品Pの製造効率を向上させることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態の欠陥検出方法であれば、欠陥監視領域を複数の欠陥監視領域に分割し、プレス部品Pの表面を、複数の欠陥監視領域に応じた複数の表面温度分布検出領域に分割する。また、温度急変領域検出工程において、複数の表面温度分布検出領域毎に検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により、複数の表面温度分布検出領域毎に温度急変領域を検出する。また、欠陥判定工程において、プレス部品Pに欠陥が発生したか否かを、複数の表面温度分布検出領域毎に判定する。
【0096】
このため、プレス部品Pの欠陥が発生すると予測した領域を、欠陥の発生頻度等に応じて複数の範囲に分割し、この分割した複数の領域毎に、プレス部品Pに発生する欠陥を検出することが可能となる。
その結果、プレス部品Pの部位毎に、プレス部品Pに発生する欠陥を高精度で検出することが可能となるため、プレス部品Pに発生した欠陥の見逃しや誤検知を抑制することが可能となり、プレス部品Pに発生する欠陥の検出精度を向上させることが可能となる。
【0097】
(応用例)
また、本実施形態の欠陥検出方法では、欠陥監視領域を予め記憶する欠陥監視領域記憶工程を含んでいるが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、赤外線カメラが撮影する熱画像が、プレス部品のうち、空隙部を有していない部分である場合等、赤外線カメラが撮影する熱画像全体が欠陥監視領域に該当する場合には、欠陥監視領域記憶工程を含まない処理としてもよい。
【0098】
また、本実施形態の欠陥検出方法では、欠陥検出工程が、温度分布変位量検出工程と、欠陥監視領域位置補正工程とを含んでいるが、これに限定するものではない。すなわち、プレス加工後のプレス部品を、表面温度分布検出位置へ理想的に配置することが可能であれば、欠陥検出工程を、温度分布変位量検出工程と、欠陥監視領域位置補正工程とを含まない工程としてもよい。
【0099】
(実施例)
以下、図1から図8を参照しつつ、図9及び図10を用いて、プレス部品Pの製造ラインに設置した、本実施形態の欠陥検出方法と同様の欠陥検出方法を用いることにより、プレス部品Pに発生した欠陥を検出した例を示す。
図9は、載置表面温度分布を示す図である。
図9中に示すように、欠陥検出方法を用いることにより、プレス部品Pの載置表面温度分布全体のうち、基準形状画像と最も一致する領域(図9中に「基準画像マッチング位置」と示す範囲)を検出することが可能となっている。
【0100】
図10は、欠陥監視領域位置補正工程において、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量に応じて、載置表面温度分布の位置を変位させた状態を示す図である。
図10中に示すように、欠陥検出方法を用いることにより、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量を、画素数で、X方向に「0」であるとともにY方向に「−2」と検出している。この検出した変位量(図10中では、「パネルズレ補正量」と示す)に基づき、欠陥監視領域位置補正工程において、載置表面温度分布の位置を変位させることにより、プレス部品Pに発生した欠陥D(図10中では、「自動認識された欠陥」と示す)を、自動検出することが可能となっている。
したがって、本実施形態の欠陥検出方法と同様の欠陥検出方法を用い、プレス部品Pに発生した欠陥を検出することにより、プレス部品Pの製造ラインにおける製造効率を向上させることが可能なことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の欠陥検出方法を示す図である。
【図2】一つの欠陥監視領域において、温度急変領域が欠陥監視領域内に存在するか否かを判定する状態を示す図である。
【図3】温度急変領域の大きさと有害欠陥サイズとを比較する状態を示す図である。
【図4】検出した温度差と欠陥部内外温度差閾値とを比較する状態を示す図である。
【図5】表面温度分布検出工程の前工程と、表面温度分布検出工程と、温度分布変位量検出工程と、欠陥監視領域位置補正工程の内容を示すフローチャートである。
【図6】表面温度分布検出工程、温度分布変位量検出工程及び欠陥監視領域位置補正工程において、表面温度分布検出手段及び欠陥検出手段が行う処理の例を示す図である。
【図7】温度急変領域検出工程の前工程と、温度急変領域検出工程と、欠陥判定工程の内容を示すフローチャートである。
【図8】温度急変領域検出工程及び欠陥判定工程において、欠陥検出手段が行う処理の例を示す図である。
【図9】本発明の実施例における載置表面温度分布を示す図である。
【図10】本発明の実施例における、欠陥監視領域位置補正工程において、基準表面温度分布に対する載置表面温度分布の変位量に応じて、載置表面温度分布の位置を変位させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 表面温度分布検出手段
2 部品情報記憶手段
4 欠陥監視領域記憶手段
6 欠陥検出手段
8 赤外線カメラ
10 温度分布変位量検出手段
12 欠陥監視領域位置補正手段
14 温度急変領域検出手段
16 欠陥判定手段
18 基準表面温度分布記憶部
20 変位量検出部
22 空間二次微分処理部
24 判定領域抽出部
26 温度急変領域位置判定部
28 温度急変領域サイズ判定部
30 温度急変領域内外温度差判定部
32 プレス部品の端部
P プレス部品
E 温度急変領域
D 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工後のプレス部品に発生した欠陥を検出するプレス部品の欠陥検出方法であって、
プレス加工後の前記プレス部品の表面温度分布を検出する表面温度分布検出工程と、当該表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に基づいて、前記プレス部品に発生した欠陥を検出する欠陥検出工程と、を有し、
前記欠陥検出工程は、前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち、周辺の領域から所定の温度差以上で温度が変化した温度急変領域を検出する温度急変領域検出工程と、当該温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域に基づいて、前記プレス部品に欠陥が発生したか否かを判定する欠陥判定工程と、を含み、
前記温度急変領域検出工程において、前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により前記温度急変領域を検出することを特徴とするプレス部品の欠陥検出方法。
【請求項2】
前記表面温度分布検出工程で検出した表面温度分布のうち前記プレス部品に欠陥が発生すると予測した領域である欠陥監視領域を予め記憶する欠陥監視領域記憶工程を有し、
前記欠陥監視領域記憶工程を、前記欠陥判定工程の前工程とし、
前記欠陥判定工程において、前記欠陥監視領域記憶工程で記憶した前記欠陥監視領域に基づき、前記温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域が前記欠陥監視領域内に存在する場合に、前記プレス部品に欠陥が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記表面温度分布検出工程において、プレス加工後に所定の表面温度分布検出位置へ載置した前記プレス部品の表面温度分布である載置表面温度分布を検出し、
前記欠陥検出工程は、前記表面温度分布検出位置へ理想的に配置した場合のプレス部品の表面温度分布である基準表面温度分布に基づいて、当該基準表面温度分布に対する前記載置表面温度分布の変位量を検出する温度分布変位量検出工程と、前記温度分布変位量検出工程で検出した変位量に基づいて、前記載置表面温度分布の欠陥監視領域が前記基準表面温度分布の欠陥監視領域と近似するように、前記載置表面温度分布の位置を補正する欠陥監視領域位置補正工程と、を含み、
前記欠陥判定工程において、前記欠陥監視領域位置補正工程で補正した前記載置表面温度分布の欠陥監視領域に基づき、前記温度急変領域検出工程で検出した前記温度急変領域が前記欠陥監視領域内に存在する場合に、前記プレス部品に欠陥が発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載したプレス部品の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記欠陥監視領域を、複数の欠陥監視領域に分割し、
前記プレス部品の表面を、前記複数の欠陥監視領域に応じた複数の表面温度分布検出領域に分割し、
前記表面温度分布検出工程において、前記複数の表面温度分布検出領域毎に前記プレス部品の表面温度分布を検出し、
前記温度急変領域検出工程において、前記表面温度分布検出工程で前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出した表面温度分布に対する空間二次微分処理により、前記温度急変領域を前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出し、
前記欠陥判定工程において、前記温度急変領域検出工程で前記複数の表面温度分布検出領域毎に検出した前記温度急変領域に基づいて、前記プレス部品に欠陥が発生したか否かを前記複数の表面温度分布検出領域毎に判定することを特徴とする請求項2または3に記載したプレス部品の欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−294189(P2009−294189A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151099(P2008−151099)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(596002767)トヨタ自動車九州株式会社 (20)
【Fターム(参考)】