説明

プレバイオティックオリゴ糖を高含有量で有する新規なカラメル,調製方法、及び使用

本発明は、プレバイオティックオリゴ糖を高含有量で有する新規なカラメルに関する。本発明は、不均一媒質中で酸性型のゼオライト、粘土もしくはイオン交換樹脂のような固体酸触媒を使用するか、または均一媒質中で高分子可溶性ポリマーの酸触媒を使用するかのいずれかで、D−フルクトースを含む食品等級の糖類を、プレバイオティック活性を有するオリゴ糖に富むカラメルへと変換することを含み、これにより触媒をリサイクルすることができる。本発明は、不連続生産工程および連続生産工程の両方と適合性がある。結果として生じるカラメルは、有益な腸内菌叢の発達および損傷を受けた大腸の修復効果を促進するプレバイオティック特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレバイオティック活性のあるオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルを製造する新規な方法、およびそれによって製造されるカラメル生成物に関する。本発明はまた、家畜飼養のための食品またはヒトのための特定の食品の生成における原料または添加剤としてのこれらのカラメルの使用にも関する。より正確には、本発明は、不均一系条件下で、酸性型のゼオライト、粘土もしくはイオン交換樹脂のような固体酸触媒を使用することによって、または触媒として高分子量の可溶性酸性ポリマーを使用することによって、食品等級の糖類をプレバイオティック活性のあるオリゴ糖類に富むカラメルへ変換することに関する。本方法の重要な利点は、不連続生産工程および連続生産工程の両方と適合性のある触媒のリサイクルの可能性である。本発明によれば、出発の食品等級の糖は、D−フルクトース、スクロース、またはパラチノースもしくはロイクロースのようなグリコシルフルクトース類、1−ケストースもしくはニストースのようなフラクトオリゴ糖類、フルクタン類およびイヌリンを包含する構成要素としてフルクトースを含有する任意のオリゴ糖または多糖でありえる。これらの出発糖類は、単独で使用しても、異なる割合の組合せで使用しても、またはグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースもしくはラフィノースを包含する他の食品等級の糖類と組合せて使用してもよい。示された触媒によるこれらの糖の活性化の結果として生じる生成物は、フルクトースを含有するオリゴ糖類が高割合であることを示し、そして、有益な腸内菌叢(特にビフィズス菌および乳酸桿菌)の発達に有利に働き、損傷を受けた大腸の修復する効果を発揮する、プレバイオティック特性を示す。
【背景技術】
【0002】
フラクトオリゴ糖と一般的に命名され、構造中にD−フルクトースを含むオリゴ糖類は、ヒトの食餌だけでなく、動物に取り入れたときにも有益な栄養特性を有することが実証されてきた。これらのオリゴ糖は、腸内菌叢を調節し、特に腸におけるビフィズス菌属の細菌の割合の増加に有利に働く。従って、このオリゴ糖類を高割合で含むカラメルは、重要な栄養上の利点を示す。
【0003】
カラメルは、スクロース、フルクトース、グルコース等のような糖類の熱処理から生じる生成物である。この熱処理は、酸性もしくは塩基性の添加剤、塩または窒素含有化合物の非存在下または存在下で、乾燥した(または水の存在下)糖に対して行うことができる。カラメルの組成は以前に研究されており、それは、基本的には、主な成分が2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)である揮発性画分と、可変的な割合の出発糖またはその単糖の構成要素、およびカラメル化工程中にそれらから形成されるオリゴ糖類によって構成される不揮発性画分とからなる。特に、食品等級の酸の存在下においてスクロースから調製される工業用カラメルの場合については、このオリゴ糖画分の主な成分(全質量の20%にまで達することができる)は、ジフルクトース二無水物構造を有する。この一般構造を有する最大13種類の異なる異性体(2つの相互のグリコシド結合の形成によるD−フルクトースの二量体化から結果として生じる)がカラメル中で同定されている。カラメル化中にスクロースの加水分解から生じ、D−フルクトース単位またはD−グルコース単位の付加の結果としての、ジフルクトース二無水物の中心核上の高級オリゴマーならびに転化グルコオリゴ糖類もカラメル中に存在する。ジフルクトース二無水物ならびにグリコシル化された誘導体はいずれもプレバイオティック特性を有することが示されている。
【0004】
ジフルクトース二無水物およびそのフラクトオリゴ糖類に富むカラメルの調製には、フルクトースの二量体化反応およびグリコシル化反応の可逆的性質に関連した問題点がある。さらに、これらの反応は非特異的脱水反応と競合する。
【0005】
国際公開第87/07275号公報(WO87/07275)、欧州特許公開第0252837号公報(EP0252837A1)、フランス特許公開第2680788号公報(FR2680788A1)、およびフランス特許公開第2680789号公報(FR2680789A1)において、ドゥファイ(Defaye)および共同研究者は、フルクトース、スクロース、フラクトオリゴ糖類またはイヌリンからのジフルクトース二無水物およびそれらのグリコシル化された誘導体の形成に有利に働く、無水フッ化水素またはポリ(フッ化水素)ピリジニウムのようなフッ化水素に由来する酸性試薬の使用について記載した。フッ化水素の使用により、オリゴ糖類への高い転換は達成されるが、最終生成物においてはフッ化水素の毒性、腐食性および微量フッ素の除去に関連した技術的問題点がある。
【0006】
米国特許第5454874号公報(US5454874)において、リチャーズ(Richards)は、スクロースおよび食品等級の酸、好ましくはクエン酸または酒石酸(いずれの構成要素も微細に分割されている)を密に粉砕し、混合物を熱処理(130〜160℃)することからなる方法によって、フラクトオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製について記載した。このように得られた生成物は、2〜20の範囲の重合度(DP)を有するフラクトオリゴ糖類(ジフルクトース二無水物およびそれらのグリコシル化された誘導体を含む)を20〜50%含有する。
【0007】
国際公開第96/39444号公報(WO96/39444)において、同じ著者は、以前の方法を、150〜205℃での熱分解による多糖のイヌリンからのジフルクトース二無水物および高級オリゴマーに富むカラメルの調製にまで拡大した。この場合において、結果として生じる生成物の組成は詳細に研究された。特に、最終生成物中に存在する異なるジフルクトース二無水物異性体の相対的な割合が、フッ化水素による活性化によって得られる生成物と実質的に異なり、熱力学的分布に対応しないことが立証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カラメル化が均一系条件下で起こる上記に解説された方法の固有の問題は、フラクトオリゴ糖類の形成を促進させるために使用される酸触媒が、最終生成物中に存在するということである。フッ化水素を使用する場合において、その除去は追加の費用を意味し、かつかなりの危険を伴う。これに反して、食品等級の酸ははるかに弱い酸であり、食品等級の酸によるフラクトオリゴ糖類の転換は一般的に50%未満である。加えて、触媒が最終生成物中に残存するという事実は、それを使用することができる割合を限定し、結果として生じるカラメルの官能特性に著しく影響を与えることになる。
【0009】
従来の方法についてのさらなる問題は、カラメル化促進剤としての弱酸の使用が、時間と共に変化し得るジフルクトース二無水物の速度論的分布(ジフルクトース二無水物は熱力学的平衡にはないので)をもたらし、生成物の組成を改変してしまうということである。この問題は、異性化反応および非特異的脱水反応もまたカラメル化促進剤として使用される酸によって触媒されるという事実によって拍車が掛かる。一般に、熱力学的平衡に近いジフルクトース二無水物の分布においては、主な異性体はピラノース型のフルクトースを1単位含むが、速度論的分布においては、主な化合物はフラノース型のフルクトースを2単位含む。
【0010】
したがって、最終的な構成要素の明確な分布(熱力学的平衡に近い)を優先的に導き、工程の終わりで酸触媒を除去することを可能にするような、ジフルクトース二無水物に由来するプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルを調製する方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の対象は、単純な方法で(典型的には濾過、遠心分離または透析によって)、工程の最後で使用済みの酸触媒を分離させる手段による、組成中にフルクトースを含む食品等級の糖類からの、当該糖類のいくつかの混合物からの、または当該糖類と他の糖類との混合物からの、プレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの製造である。
【0012】
本発明の第2の対象は、カラメル中のジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類の含有量を最大にすることを可能にする方法であって、好ましくは熱力学的平衡に近いジフルクトース二無水物の異性体の分布に有利に働くものである。
【0013】
これらの対象および以下に言及される他の対象に従って、本発明は、プレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法を提供する。当該方法は下記のものを含む。
【0014】
(a)D−フルクトース、スクロース、またはパラチノースもしくはロイクロースのようなグリコシルフルクトース類、1−ケストースもしくはニストースのようなフラクトオリゴ糖類、フルクタン類およびイヌリンを包含する構成要素としてフルクトースを含有する任意のオリゴ糖もしくは多糖から好ましく選択される、出発物質としての食品等級の糖。これらの出発糖類は、単独で使用しても、または異なる割合で組み合わせて使用しても、またはグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースもしくはラフィノースを包含する他の食品等級の糖類と組み合わせで使用してもよい。
【0015】
(b)不均一系反応条件下での酸性型のゼオライト、ベントナイトもしくはイオン交換樹脂のような固体酸触媒、または均一系反応条件下での高分子量の可溶性酸性ポリマーの使用。
【0016】
好ましくは、本発明において、カラメル化は、水の存在下で、水中での糖分の全濃度が60〜95%(重量/体積)の範囲で、および効果的で持続的な撹拌により、60〜110℃(好ましくは、70〜90℃)の範囲の温度で、および5分〜1週間(好ましくは、出発糖がフルクトースである場合には15分〜3時間、および出発物質が異なる糖を含む場合には3〜48時間)の間で異ってもよい反応時間で、実行される。
【0017】
本発明は、ジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を、熱力学的分布に対応する組成に近いジフルクトース二無水物異性体の組成で、かつカラメル化促進剤として使用される酸触媒を含まないで、40〜85%(好ましくは50〜80%)の間の高含有量で有する新規のカラメルを提供し、また、好ましい効果の中でもとりわけ、ビフィズス菌または乳酸桿菌のような有益な腸内菌叢の発達に有利に働き、大腸における損傷に対する修復効果を示すプレバイオティクスとしての上記カラメルの使用も提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、酸性型のゼオライト、ベントナイトまたはイオン交換樹脂のような固体酸触媒の使用は、フルクトースから、スクロース、グリコシルフルクトース類、フラクトオリゴ糖類、フルクタン類もしくはイヌリンのようなフルクトースを含む食品等級の糖類から、またはこれらの混合物から、またはさらに例えば、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトースもしくはラフィノースのような他の食品等級の糖類を含む混合物から出発する、不均一系条件下でのジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を高含有量で有するカラメルの形成を促進できることが見出された。この変換は、出発糖または糖類の混合物が高濃度で(好ましくは、水中で60〜95%(重量/体積)の範囲で、効果的な撹拌と共に)、60〜110℃の間で異なる温度で(好ましくは、70〜90℃の間で)、かつ触媒に応じた反応時間で5分〜1週間(好ましくは、出発糖がフルクトースである場合には15分〜3時間、および出発物質が異なる糖を含む場合には3〜48時間)行われる。結果として生じる生成物は、濾過によって触媒から容易に分離することができ、ジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を高割合で含んでいる。ジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物の割合は、反応条件を調整することによって調節することができ、40〜85%の間で異なり、好ましくは50〜80%の範囲である。最終的なカラメルの異なるジフルクトース二無水物異性体の分布は、熱力学的分布について予想されたものに近く、触媒の分離後に、12か月の期間保存しても有意な変化はない。
【0019】
本発明によれば、高分子量の可溶性酸性ポリマーを触媒として使用した均一系条件下でもカラメル化が起こり、この場合においてもまた、プレバイオティックオリゴ糖類を、好ましくは50〜80%の間で、高含有量で有する生成物を得ることができる。最終的な生成物の触媒の分離は、この場合においては、プレバイオティックオリゴ糖類からの高分子量ポリマーの分離を可能にする膜の使用によって行われる。
【0020】
本発明において開発された方法論のさらなる利点は、分離後の酸触媒の再生およびリサイクルの可能性、ならびに不連続工程または連続工程との適合性である。
【0021】
本発明に従って得られたカラメルはプレバイオティック特性を示し、家畜飼養のための食物の生成またはヒトを意図した特定の食品の生成における原料または添加剤として使用可能である。したがって、本発明に従って得られた生成物は、有益な腸内菌叢の発達に有利に働く。特に上記生成物は、モデル動物のビフィズス菌および乳酸桿菌の割合を増加させる。加えて上記生成物は、ヒトにおけるクローン病のような疾患に対応するモデル動物における損傷を受けた大腸に対する修復効果を示す。従って、本発明に従って調製されたカラメルは、この病状ならびにヒトおよび動物における他の関連病状の治療のために有益な栄養補助食品と見なすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スクロースカラメル中に存在するジフルクトース二無水物(DAF)の構造を示した図である(化合物8を除いて、2つの単糖サブユニットはD−フルクトースに由来する;Fru=D−フルクトース;Glc=D−グルコース;f=フラノース;p=ピラノース)。
【図2】90℃で3時間、デグサ社FAU110ゼオライト(32%)により、D−フルクトース(水中で90%w/v)のカラメル化によって得られた異なるDAF異性体の相対的割合を示した図である。
【図3】90℃で2時間、Lewatit(登録商標)S2328イオン交換樹脂(20%)により、D−フルクトース(水中で90%w/v)のカラメル化によって得られた異なるDAF異性体の相対的割合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、カラメル化促進剤として酸性型のゼオライト、ベントナイトもしくはイオン交換樹脂のような固体触媒、または高分子量の可溶性酸性ポリマーを使用して、食品等級の糖類からのジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を高含有量で有するカラメルを調製することが可能であることが見出された。上記オリゴ糖類は、大腸の損傷に対して修復効果を発揮し、動物(家禽、ブタ、ウサギ)およびヒトの腸中でビフィズス菌または乳酸桿菌のような有益な細菌の割合を増加させて腸内菌叢を調節するプレバイオティック特性を示す。従って、上記オリゴ糖類を高含有量で有するカラメルは、従来のカラメルと比較して重要な栄養上の利点を示す。
【0024】
出発糖は、D−フルクトース、スクロース、またはパラチノースもしくはロイクロースのようなグリコシルフルクトース類、1−ケストースもしくはニストースのようなフラクトオリゴ糖類、フルクタン類およびイヌリンを包含する構成要素としてフルクトースを含有する任意のオリゴ糖もしくは多糖であってもよい。これらの出発糖類は、単独で使用してもよく、または異なる割合で組み合わせて使用してもよく、またはグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースもしくはラフィノースを包含する他の食品等級の糖類と組み合わせて使用してもよい。カラメルは、水中で糖分が60〜95%(重量/体積)(好ましくは、70〜90%)の間という高い全濃度を使用して、糖分の全量に対して5〜35重量%(好ましくは5〜20%)の間で異なってもよい割合の触媒の存在下において、かつ60〜110℃(好ましくは80〜90℃)の間の温度で、調製される。
【0025】
出発糖がD−フルクトースである場合においては、水の添加は、本発明の濃度範囲すべてにおいて溶液を生ずる。この場合において、好ましいカラメル化時間は5分〜3時間の間で変動する。スクロースもしくはイヌリンのような他の糖類の場合、または糖混合物を使用する場合においては、最初に懸濁液が得られ、これは、触媒の存在下におけるカラメル化の工程中に、最終的に溶液に至る。これらの場合における好ましいカラメル化時間は3時間〜48時間の範囲にわたる。いずれの場合においても、触媒からいったん分離された最終的な生成物は、琥珀色から暗いマホガニー色の均一なカラメルである。
【0026】
ゼオライト、ベントナイトまたはイオン交換樹脂のような固体触媒の場合において、反応は不均一系条件下で起こる。高分子量の可溶性酸性ポリマー触媒の場合において、出発糖と水の混合物が最初に溶液を生ずる場合、反応は均一系条件下で起こる。懸濁液が得られる場合において、その反応は、まず不均一系条件下で進行し、カラメル化の過程において均一系溶液に移行する。すべての場合において、反応は、加熱期間中、好ましくは、激しく効果的で持続的な撹拌(例えば、磁気的または機械的な)下で起こる。
【0027】
本発明において、カラメル化のために使用される触媒が酸性型のゼオライトである場合、この触媒は、市販のゼオライトの類のいずれか(好ましくは、ホージャサイト(FAU)またはベータ−ゼオライト(BEA)の類)に属しうる。使用されるゼオライトのモジュラス(Si/Al割合)は、5〜150の間で異なってもよく、好ましくは25〜120の間に含まれる。例として、デグサ社により市販されているFAU15、FAU25/5、FAU25、FAU56またはFAU110のゼオライト、およびゼオリスト社により市販されているCBV500およびBEACP814B−50のゼオライトを挙げることができる。市販の中性型のゼオライトの場合は、カラメル化触媒として使用する前にあらかじめ酸性型に変換する。この目的のためには、市販の中性型中に存在する金属カチオンをアンモニウムカチオン(NH)により交換し、続いで、アンモニア(NH)を除去させる100〜450℃の間の温度で加熱することからなる方法により、酸性型(H)のゼオライトが得られる。
【0028】
本発明の他の方法において、カラメル化中で使用される触媒は、市販の酸性型のベントナイトであってもよい。この市販の触媒が中性型である場合、この触媒は、例えば、ゼオライトの場合に関する上記方法に従って、酸性型に調整することができる。
【0029】
本発明の有利な方法において、カラメル化は、例えばスルホン酸基またはカルボン酸基を有するスチレンマトリックスまたはメタクリルマトリックスの樹脂として、市販の酸性型のイオン交換樹脂を使用することにより引き起こされ得る。一例として、市販の樹脂Lewatit(登録商標)S2328、K1131、K1469およびK2641、Amberlite(登録商標)IRC50もしくはIR120、またはDowex(登録商標)50WX2を挙げることができる。樹脂は未処理で使用することもでき、または粉砕して使用することもでき、これにより粒子サイズが調節される。樹脂は、含水した状態または乾燥した状態で使用することができる。
【0030】
本発明に従って、プレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製のために使用される触媒が、ゼオライト、ベントナイトまたはイオン交換樹脂である場合、触媒は最終的には遠心分離後の濾過によって最終生成物から分離される。カラメル化が連続工程において起こる場合、触媒は、粒子サイズに適応した多孔度を有するフィルターを備えるカラム中に充填される。不連続バッチによって調製が行われる場合、触媒の遠心分離/濾過は、加熱工程の終わりで実行される。
【0031】
本発明の他の方法において、カラメル化は、触媒として、分子量7・10および10ダルトンのシグマ社により市販されているポリ(p−トルエンスルホン酸)タイプのポリマーのような高分子量の可溶性酸性ポリマーを使用しても引き起こされ得る。市販の中性型のポリマーの場合、ポリマーはまず酸性型に調整される。この目的のためには、過剰量の酸性型のイオン交換樹脂(例えば、樹脂Amberlite(登録商標)IR120)によるポリマーの水溶液の処理からなる方法に従うことができる。いったんカラメル化工程が終了すれば、ポリマーは物理的方法により最終生成物から分離される。この目的のためには、形成されたプレバイオティックオリゴ糖類を通過させることができる、触媒の分子量に適応した多孔度の透析膜の使用からなる方法に従うことができる。
【0032】
最初の糖分の全重量に対する触媒の割合は異なってもよく、好ましくは5〜35%の範囲である。触媒は最終生成物から分離されてリサイクルすることができるので、触媒を高割合で使用することは技術的問題を呈さないが、50%を超えるジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類への転換が、3時間よりも短い反応時間で、70〜90℃のカラメル化温度で得られるように、触媒の割合を最小に調整することが好ましい。一般的に、触媒の割合は、ゼオライトまたはベントナイトの場合においては25〜35%の範囲であり、未処理のイオン交換樹脂の場合においては5〜20%の範囲であり、かつ粒子サイズ<80μmに粉砕されたイオン交換樹脂および可溶性酸性ポリマーについては5〜10%の範囲である。
【0033】
上述の考察に従って、本発明に係るジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法は、本質的には、固体酸触媒または可溶性酸性ポリマーの存在下において、持続的で効果的な撹拌と共に、60〜110℃の範囲の温度で、高濃度の食品等級の出発糖類の水溶液または水性懸濁液を加熱し、次いで、物理的方法により上記触媒を分離することからなる。
【0034】
本発明に係るプレバイオティックオリゴ糖類に富むカラメルを調製する好ましい方法は、スルホン酸基を有する酸性型のイオン交換樹脂の存在下において、出発糖に対して5〜20重量%の触媒割合を使用して、0.5〜3時間、70〜90%(重量/体積)のフルクトースの水溶液を70〜90℃で加熱し、次いで、遠心分離/濾過により樹脂を分離することからなる。
【0035】
本発明に従うプレバイオティックオリゴ糖類に富むカラメルを調製する他の好ましい方法は、スルホン酸基を有する酸性型のイオン交換樹脂の存在下において、出発糖の全量に対して10〜20重量%の触媒割合を使用して、3〜48時間、全濃度が85〜95%(重量/体積)のフルクトースとラクトースとの水溶液(1:5〜5:1で異なってもよい相対的な重量割合)を80〜90℃で加熱し、次いで、遠心分離/濾過により樹脂を分離することからなる。
【0036】
結果として生じる最終的なカラメルの組成は、ゲル濾過クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーによって、質量分析ならびにプロトンおよびカーボン−13の核磁気共鳴のような構造決定技術をさらに使用して、測定することができる。形成されたプレバイオティックオリゴ糖類の重合度(DP)は、2〜およそ25の範囲であり、出発糖がフルクトースである場合には一般的に2〜12であり、出発物質が他の糖類を含んでいる場合には一般的に2〜25まで増加する。形成されたオリゴ糖類は広範囲の様々なグリコシド結合を示す。
【0037】
本発明に従って調製されたカラメルは、10〜60%の間で異なる割合の出発糖類またはこの糖類の単糖構成要素と、40〜85%の間のジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類とを含む。最初の糖がフルクトースとは異なる単糖を含む場合には、結果として生じるカラメルは、前記単糖の自己グリコシル化反応から結果として生じる転化還元オリゴ糖類を様々な量でさらに含み得る。例えば、スクロースから得られるカラメルの場合、グルコビオース類および高級グルコオリゴ糖類の存在は、一般的には10%未満検出される。
【0038】
本発明に従って調製されたカラメルにおいて、二糖画分は主としてジフルクトース二無水物からなるが、高級オリゴ糖類は本質的にはグリコシル化されたジフルクトース二無水物の構造を有する。二糖画分中の異なるジフルクトース二無水物異性体の分布は、ガスクロマトグラフィーによって測定することができる。文献ジャーナル・オブ・クロマトグラフィーA(J.Chromatogr.a)1999年、844、283〜293中でラツィムバ(Ratsimba)らによって記載されたプロトコルに従うことができる。本発明のカラメルのサンプルから得られるクロマトグラムは、13種類のジフルクトース二無水物異性体の存在を示す。特にスクロースから得られるカラメルの場合においては、この画分においてフルクトースのサブユニットおよびグルコースのサブユニットを含む混合二無水物がさらに同定される。これらの二無水物の構造は、図1に示される、食品等級の酸の存在下でのD−フルクトースまたはスクロースの熱処理によって得られる工業用カラメルまたは自家製カラメル中で以前に同定された13および14種類の構造にそれぞれ対応し、それらはすなわち:
α−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトフラノース1,2´:2,3´−二無水物(化合物番号1)、
β−D−フルクトフラノースα−D−フルクトピラノース1,2´:2,3´−二無水物(化合物番号2)、
β−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトピラノース1,2´:2,3´−二無水物(化合物番号3)、
ジ−β−D−フルクトフラノース1,2´:2,3´−二無水物(化合物番号4)、
α−D‐フルクトピラノースβ−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号5)、
β−D−フルクトフラノースα−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号6)、
ジ−α−D−フルクトフラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号7)、
α−D−フルクトフラノースα−D−グルコピラノース1,1´:2,2´−二無水物(化合物番号8)、
α−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号9)、
α−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトフラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号10)、
α−D−フルクトフラノースα−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号11)、
ジ−β−D−フルクトフラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号12)、
β−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号13)、
ジ−β−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物(化合物番号14)である。
【0039】
本発明の重要な特徴は、結果として生じるカラメル中の異なるジフルクトース二無水物異性体の相対的な割合が、好ましくは、熱力学的平衡に近い分布に対応するということである。したがって、触媒として食品等級の酸を使用する方法によって得られるカラメル中で観察される主な異性体が常にジフルクトフラノース異性体(好ましくは化合物番号1、4または10)であるものとは対照的に、本発明に従って得られるカラメル中の主な異性体は、フルクトースの2つのサブユニットのうちの1つがピラノース型(熱力学的により安定した異性体である)である化合物番号9である。
【0040】
本発明の他の重要な特徴は、本発明の対象であるカラメルの主な構成要素であるジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物の構造を有するプレバイオティックオリゴ糖類には毒性がなく、かつ消化の際に加水分解されないかまたは部分的にのみ加水分解されるということである。この最後の場合では、加水分解の結果として生じる生成物は食品等級の糖類であり、したがって毒性はない。本発明のジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を高含有量で有するカラメルは、したがって、異なる組成の他のカラメルと比較して減少したカロリー量を示す。
【0041】
本発明に従って調製されたカラメルは、プレバイオティックオリゴ糖類(特にジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物)が高含有量であること、および以前に調製された異なる組成のカラメルと比較してジフルクトース二無水物の熱力学的平衡に近い異性体分布であることに由来した重要な栄養上の利点を示す。ヒトにおけるクローン病に類似したモデルを生じさせるように大腸中の損傷が誘導されたウィスターラットに対して行われた試験において、本発明のカラメルは重要な修復効果があること、同時に本発明のカラメルは大腸中のビフィズス菌タイプおよび乳酸桿菌タイプの有益な腸内菌叢の発達に有利に働くことを実証した。これらの結果は、プレバイオティック特性が十分に確立されている例えば化合物番号1および10のような純粋な形態のいくつかのジフルクトース二無水物よりも高い程度で本発明のカラメルがこれらの有益な効果を表すことを示す。
【0042】
本発明に従って調製されたカラメルには多数の用途があり、一般的な様式で、任意の他のカラメルの代替物として使用することができる。得られたカラメルは、追加の糖類、ビタミン、芳香剤、着色剤と、他のプレバイオティクス、プロバイオティクスまたは定義された食品の生成のために必要な任意の他の物質と混合することができる。得られたカラメルを、活性炭、または例えば樹脂Lewatit(登録商標)S6823Aのような、食品産業において色吸着について承認された市販の樹脂による、例えば水溶液の処理によって脱色することもできる。この工程は、ジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物における組成、またはジフルクトース二無水物異性体の相対的な割合に影響を与えない。
【0043】
本発明のジフルクトース二無水物およびグリコシル化されたジフルクトース二無水物を高含有量で有するカラメルは、特に動物およびヒトにおける腸管の病状の治療および予防に対し、有益な特性を有する。したがって、上記カラメルは、腸管の病状の予防および治療に有益な特定の栄養補助食品の調製においても使用することができる。一般的な方法では、本発明のカラメルは、食物用途を意図した生成物の製造において、かつ動物およびヒトにおける健康および福祉を増進するための、他のプレバイオティクスの代替物として使用することができる。これらの目的を有する任意の人に対してプレバイオティック効果を生ずることができる生成物中における本発明のプレバイオティックカラメルの最終的な割合は、広範囲にわたり異なり得、好ましくは1〜30%含まれる。
【0044】
以下の実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0045】
実施例1:
水(15mL)中のフルクトース(135g)の90%(重量/体積)溶液に、市販の乾燥ゼオライト110デグサFAU(43.2g;最初のフルクトースに対して32%)を加えた。この不均一混合物を、絶えず磁気攪拌しながら、密閉容器中で、90℃で3時間加熱し、その後この混合物を室温まで冷却し、濾過によって触媒を分離した。このようにして得られた生成物は琥珀色のカラメルである。
【0046】
文献ジャーナル・オブ・クロマトグラフィーA(J.Chromatogr.a)1999年、844、283〜293中に記載されたプロトコルに従って、固定相としてセファデックスG10を使用するゲル濾過クロマトグラフィー、および内部標準としてフェニルβ−D−グルコピラノシドを使用するガスクロマトグラフィーによってこのカラメルを分析すると、フルクトース(35%)、ジフルクトース二無水物(45%)およびDPが3〜12の高級フラクトオリゴ糖(18%)の存在が示された。残り(2%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類によって構成される。対応するガスクロマトグラムから測定された異なるジフルクトース二無水物異性体の相対的な割合を図2に示す。
【0047】
得られたカラメルまたはDPが3〜12のオリゴ糖類を含む画分のアリコートを緩やかに酸加水分解させると、もっぱらフルクトースおよびジフルクトース二無水物が得られ、これはこれらのオリゴ糖がフルクトシル化されたジフルクトース二無水物の構造を有することを示す。加水分解から生じるジフルクトース二無水物の異性体分布プロフィールは、最初のカラメルのジフルクトース二無水物画分中のものと実質的に同じであり、これを図2に示す。
【0048】
実施例2:
ゼオライトの代わりに触媒として乾燥酸性ベントナイトを使用して、実施例1の方法を正確に繰り返した。生成物は、フルクトース(31%)、ジフルクトース二無水物(46%)およびDPが3〜10の高級オリゴ糖(21%)を含むマホガニー色のカラメルである。残り(2%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類によって構成される。ジフルクトース二無水物の異性体分布プロフィールは、実施例1のものと実質的に同じである。
【0049】
実施例3:
ゼオライトの代わりに触媒として乾燥した市販のイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)S2328(27g、最初のフルクトースに対して20重量%)を使用し、90℃で2時間加熱して、実施例1の方法を繰り返した。生成物は、フルクトース(8%)、ジフルクトース二無水物(11%)およびDPが3〜25の高級フラクトオリゴ糖(78%)を含むマホガニー色のカラメルである。残り(3%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類によって構成される。異性体分布プロフィールは、実施例1および2のものと非常に類似しており、これを図3に示す。
【0050】
樹脂Lewatit(登録商標)S2328を、市販のイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)K1131、K1469もしくはK2641、Amberlite(登録商標)IR120またはDowex(登録商標)50WX2の中から選択したスルホン酸基を有する酸性型の他のイオン交換樹脂と置き換えたが、上記方法に従うと実質的に同じ結果が得られた。
【0051】
実施例4:
実施例3の方法を正確に繰り返したが、樹脂をあらかじめ80μm未満のサイズに粉砕し、最初のフルクトースに対して6重量%の割合で使用し、加熱を70℃で行った。生成物は、フルクトース(12%)、ジフルクトース二無水物(41%)およびDPが3〜25の高級フラクトオリゴ糖(44%)を含むマホガニー色のカラメルである。残り(3%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類で構成される。異性体分布のプロフィールは、図2に示されるものと実質的に同じである。
【0052】
実施例5:
実施例4の方法を正確に繰り返したが、加熱は90℃で50分間行った。生成物は、実施例3のものと同一の組成を有する暗いマホガニー色のカラメルである。
【0053】
実施例6:
実施例3の方法を正確に繰り返したが、酸性樹脂を最初のフルクトースに対して10重量%の割合で使用し、加熱を1.5時間行った。生成物は、フルクトース(14%)、ジフルクトース二無水物(26%)およびDPが3〜25の高級フラクトオリゴ糖(58%)を含む暗いマホガニー色のカラメルである。残り(2%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類で構成される。異性体分布のプロフィールは、図3に示されるものと実質的に同じである。
【0054】
実施例7:
実施例6の方法を正確に繰り返したが、樹脂を酸性型の分子量7・10ダルトンの水溶性ポリ(p−トルエンスルホン酸)ポリマーと置き換えた。この場合においては、反応は均一系条件下で進行する。5000ダルトンのカット質量に対応する多孔度を有する透析膜の使用によって、カラメル化工程の終わりで触媒を分離した。結果として生じた生成物は、フルクトース(16%)、ジフルクトース二無水物(29%)およびDPが3〜20の高級オリゴ糖(52%)を含むマホガニー色のカラメルである。残り(3%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類で構成される。異性体分布のプロフィールは、図3に示されるものと実質的に同じである。
【0055】
同じ結果が、分子量10ダルトンの水溶性ポリ(p−トルエンスルホン酸)ポリマーを使用した時に得られた。
【0056】
実施例8:
水(15mL)中のスクロース(135g)の90%(重量/体積)懸濁液を飽和するまで90℃で加熱した。市販の乾燥したイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)S2328を触媒として加えた(13.5g、最初のスクロースに対して10重量%)。この不均一混合物を、72時間、絶えず磁気撹拌しながら、密閉容器中で、90℃で加熱し、その後室温まで冷却し、触媒を濾過によって分離した。このようにして得られた生成物は、フルクトース(1%)、グルコース(23%)、ジフルクトース二無水物(11%)およびDPが2〜25の高級オリゴ糖(57%)を含む暗いマホガニー色のカラメルである。残り(8%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類によって構成される。
【0057】
得られたカラメルまたはDPが3を超えるオリゴ糖を含む画分のアリコートを緩やかに酸加水分解させると、もっぱらフルクトース、グルコースおよびジフルクトース二無水物が得られ、これは、この場合において、上記オリゴ糖がフルクトシル−ジフルクトース二無水物またはグルコシル−ジフルクトース二無水物の構造を有することを示す。転化オリゴ糖もまたこの画分中に存在する。これは質量分析のデーターとも一致している。加水分解から生じるジフルクトース二無水物の異性体分布プロフィールは、最初のカラメルにおけるジフルクトース二無水物画分のものと実質的に同じで、図3に示されるものと一致する。
【0058】
実施例9:
ラクトースおよびフルクトースの1:1(重量/重量)混合物(全質量135g)を、水(15mL;糖分全量の割合が90%重量/体積であることを意味する)中に懸濁し、結果として生じる懸濁液がほぼ完全に溶解するまで90℃で加熱した。市販の乾燥したイオン交換樹脂Lewatit(登録商標)S2328を触媒として加えた(13.5g、最初の糖材料全量に対して10重量%)。この不均一混合物を、72時間、絶えず磁気攪拌しながら、密閉容器中で、90℃で加熱し、その後室温まで冷却し、触媒を濾過によって分離した。このように得られた生成物は、フルクトース(1%)、ジフルクトース二無水物(1%)、ラクトース(1%)、グルコースおよびガラクトース(合計で25%)、ならびにDPが2〜25の高級オリゴ糖(68%)を含む、暗いマホガニー色のカラメルである。残り(4%)は、本質的には、2−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)およびメラノイジン類によって構成される。
【0059】
得られたカラメルまたはDPが3を超える高級オリゴ糖を含む画分のアリコートを緩やかに酸加水分解させると、もっぱらフルクトース、グルコース、ガラクトースおよびジフルクトース二無水物が得られ、これは、この場合において、上記オリゴ糖がフルクトシル−ジフルクトース二無水物、グルコシル−ジフルクトース二無水物、ガラクトシル−ジフルクトース二無水物およびラクトシル−ジフルクトース二無水物の構造を有することを示す。転化オリゴ糖もまたこの画分中に存在する。これは質量分析データーとも一致している。加水分解から生じるジフルクトース二無水物の異性体分布プロフィールは、最初のカラメルにおけるジフルクトース二無水物画分のものと実質的に同じで、図3に示されるものと一致する。
【0060】
実施例10:
ラットにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導された大腸炎の実験モデルにおける、実施例3および8に従って得られた本発明のカラメルの腸への抗炎症作用のインビボの評価。
【0061】
当該試験において使用された動物は、グラナダ大学(University of Granada)の動物実験サービス(Animal Experimentation Service)によって提供された200〜230gの重量のウィスターラットである。選択された実験的炎症のモデルは、飲料水中のDSS(5%重量/体積)の1週間の投与からなる。このモデルは、当該モデルで生じる組織の損傷および炎症反応に関与するメディエーターの産生に関して、ヒトにおける腸の炎症性疾患(クローン病)と多数の類似性のあるラットの大腸における炎症過程を生じることによって特徴づけられる。当該研究を行うために、異なる動物群(n=10)に、実施例のプレバイオティックカラメルを適切な割合で添加した食餌を与えた。この処理は飲料水中へのDSSの混入の2週間前に始め、さらに1週間継続した。この時点で動物を屠殺し、大腸損傷を評価した。プレバイオティックカラメルによる処理の効率を評価することができるようにするために、カラメルの代わりにセルロースを含む標準的な食餌を与えた大腸炎性の動物の対照群(n=10)を使用した。さらに、食餌の処理を全く行わず、誘導性の腸の炎症がない対照群(n=10)も使用した。
【0062】
腸の炎症工程の巨視的評価は、大腸重量/長さの相関関係(巨視的損傷指数、MDI)の測定によって行われた。従ったプロトコルは、基本的には、ジャーナル・オブ・ニュートリション(J.Nutr.)2005年、135、687〜94中でカムエスコ(D.Camuesco)らによる出版物において報告されたものであった。損傷を受けていない対照動物の大腸重量/長さの相関関係についてはMDIを0.0として規定するが、この指標は、DSSにより処理され、食餌中にプレバイオティックカラメルを与えなかった対照群においては平均値が7.5に達する。実施例3および8のカラメルを与えた動物において、この値は5.5および6.0までそれぞれ減少し、使用した炎症性大腸炎のモデルの攻撃性を考えると、大腸炎症後の保護/再生に対して非常に有意な能力を示す。
【0063】
実施例11:
ラットの細菌叢における、実施例3および8に従って得られた本発明のカラメルの効果のインビボの評価。
【0064】
DSSによる処理を行い、実施例3および8に従って調製したプレバイオティックカラメルを含む食餌を与えた動物に対して、対応する対照群も同様に、乳酸桿菌およびビフィドバクテリウムのカウントを実行した。これらの細菌の集団は、DSSにより処理した動物において、健康な処理していない動物で観察された値の30%および20%までそれぞれ減少した。実施例3および8のカラメルを有する餌を与えた動物の場合においては、対応する細菌の集団の非常に有意な回復が観察され、それは最初の値に近いカウントに達するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)D−フルクトースを含む食品等級の糖および(b)カラメル化促進剤として作用する酸触媒からの、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
触媒の存在下で出発糖材料の水溶液または濃縮水性懸濁液を加熱すること、およびその後、これにより得られたカラメルから酸触媒を工程の終わりで物理的方法によって分離することを含む調製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記出発糖が、D−フルクトース、スクロース、またはパラチノースもしくはロイクロースのようなグリコシルフルクトース類、1−ケストースもしくはニストースのようなフラクトオリゴ糖類、フルクタン類およびイヌリンを包含する構成要素としてフルクトースを含有する任意のオリゴ糖または多糖であり、前記出発糖類を、単独で使用しても、または異なる割合で組み合わせて使用しても、またはグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースもしくはラフィノースを包含する他の食品等級の糖類と組み合わせて使用してもよい調製方法。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記酸触媒が、不均一系反応条件下では酸性型のゼオライト、ベントナイトのような粘土もしくはイオン交換樹脂であるか、または均一系反応条件下では高分子量の可溶性酸性ポリマーである調製方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
水中での前記出発糖材料の全濃度が、60〜95%(重量/体積)、好ましくは70〜90%の範囲である調製方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
加熱温度が、60〜110℃、好ましくは70〜90℃の範囲である調製方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
加熱期間が、5分〜1週間、好ましくは15分〜48時間の範囲である調製方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
出発糖全量に対する前記触媒の重量割合が5〜35重量%の範囲である調製方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記カラメル化工程が、前記糖材料の濃縮溶液を通過させるカラム中に固体触媒を充填する連続方法により行われる調製方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記カラメル化工程が、加熱期間中に効果的な撹拌を用いて、バッチによる不連続方法により行われる調製方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記触媒が、5〜150、好ましくは25〜120の範囲のSi/Al率を有し、出発糖材料全量に対する重量割合が25〜35%の範囲である酸性型のゼオライトである調製方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記触媒が、前記出発糖材料全量に対する重量割合が25〜35%の範囲である酸性型のベントナイトである調製方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記触媒が、前記出発糖材料全量に対する重量割合が10〜20%の範囲である酸性型の未処理のイオン交換樹脂である調製方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記触媒が、前記出発糖材料全量に対する重量割合が5〜10%の範囲である酸性型の粉砕された、好ましくは80μm未満の粒子サイズまで粉砕されたイオン交換樹脂である調製方法。
【請求項14】
請求項13に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記樹脂が、スルホン酸タイプの酸性基またはカルボン酸タイプの酸性基を有する調製方法。
【請求項15】
請求項1〜7および9のいずれか一項に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記触媒が、高分子量、好ましくは10ダルトン以上の酸性型の可溶性酸性ポリマーであって、前記出発糖材料全量に対する重量割合が5〜10%の範囲である調製方法。
【請求項16】
請求項15に記載の、ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
前記ポリマーがスルホン酸型の酸性基を有する調製方法。
【請求項17】
ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
カラメル化工程が、スルホン酸基を有する酸性型のイオン交換樹脂の存在下において、前記出発糖に対して5〜20重量%の触媒割合を使用して、0.5〜3時間、70〜90%(重量/体積)のフルクトース水溶液を70〜90℃で加熱し、次いで、さらなる再利用のために濾過によって前記樹脂を分離することからなる調製方法。
【請求項18】
ジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類を高含有量で有するカラメルの調製方法であって、
カラメル化工程が、スルホン酸基を有する酸性型のイオン交換樹脂の存在下において、出発糖材料全量に対して10〜20重量%の触媒割合を使用して、3〜48時間、85〜95%(重量/体積)の範囲の濃度で、1:5〜5:1で異なってもよい相対的な重量割合のフルクトースとラクトースとの水溶液を80〜90℃で加熱し、次いで、さらなる再利用のために濾過によって前記樹脂を分離することからなる調製方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法に従って得られるカラメル。
【請求項20】
請求項1に記載の方法に従って得られるカラメルであって、
DPが3〜25の範囲のジフルクトース二無水物タイプおよびグリコシル化されたジフルクトース二無水物タイプのプレバイオティックオリゴ糖類の含有量が40%以上であり、ジフルクトース二無水物異性体(主な異性体はα−D−フルクトフラノースβ−D−フルクトピラノース1,2´:2,1´−二無水物である)の分布が熱力学的平衡に対応するものに近いカラメル。
【請求項21】
請求項20に記載のカラメルであって、
例えば、グルコース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトースもしくはラフィノース、またはこれらの糖類の縮合により形成される転化オリゴ糖類のような、フルクトースとは異なる他の糖類をさらに含むカラメル。
【請求項22】
請求項20および21のいずれか一項に記載のカラメルであって、
植物性の活性炭、または例えば樹脂Lewatit(登録商標)S6823Aのような着色生成物の吸着に適切な市販の樹脂による処理によって、完全にまたは部分的に脱色されたカラメル。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか一項に記載のカラメルであって、
少なくとも、ビタミン、着香料、着色剤、プレバイオティクスまたはプロバイオティクスの類から選択される構成要素をさらに含むカラメル。
【請求項24】
好ましくは1〜30重量%の範囲の割合で請求項20〜23のいずれか一項に記載のカラメルを含み、腸管のビフィズス菌または乳酸桿菌の有意な増加を誘導することができる、ヒトまたは動物の食餌を意図した生成物。
【請求項25】
好ましくは1〜30%の範囲の割合で請求項20〜23のいずれか一項に記載のカラメルを含み、プレバイオティクス効果を誘導することができる、動物またはヒトにおける病状(特に消化器系に影響を与える病状)の予防または治療を意図した生成物。
【請求項26】
請求項19〜22のいずれか一項に記載のカラメルであって、
ヒトまたは動物の腸管中の、ビフィズス菌または乳酸桿菌のような有益な細菌の集団を増加させることを意図したカラメル。
【請求項27】
請求項19〜22のいずれか一項に記載のカラメルであって、
ヒトまたは動物の消化器系の損傷の予防を意図したカラメル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519921(P2010−519921A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552225(P2009−552225)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/ES2008/000129
【国際公開番号】WO2008/107506
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509252210)ウニベルシダト・デ・セヴィラ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD DE SEVILLA
【出願人】(508157886)コンセジョ スペリオール デ インベスティガショネス シエンティフィカス (21)
【出願人】(508254576)ウニベルシダト デ グラナダ (2)
【出願人】(509252221)シェラトール・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】CHELATOR S.A.
【Fターム(参考)】