説明

プレートコンパクタ

【課題】輾圧面全体が均一に効率よく加熱されると共にヒータへの悪影響が防止され、振動衝撃による構造体への負荷も軽減される、プレートコンパクタを提供する。
【解決手段】プレートコンパクタ10は、駆動エンジン12、発電機16、加振機20、輾圧板24、輾圧板24を加熱するヒータ40、輾圧板24の温度を検知する温度検知手段44、駆動エンジン12から加振機20への動力伝達を駆動エンジン12の回転数に対して任意に制御する遠心クラッチ22、輾圧板24の温度が所定の温度を超えないように発電機16の電力を制御する制御回路を備えた制御ボックス72、ヒータ40の上面を覆うようにして輾圧板24に配設される面状の第1の防振部材42、駆動エンジン12,発電機16等を含む振動部と駆動エンジン12,発電機16等を支持する支持構造体46との間に配設される複数の第2の防振部材54とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プレートコンパクタに関し、特にたとえば、アスファルト道路舗装工事に際し、加熱された輾圧板(振動板)に振動を与え、アスファルト路面を締固めて固化するプレートコンパクタに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の背景となる従来のプレートコンパクタは、概略的に言うと、エンジン、エンジンに駆動可能に接続される発電機、エンジンによって駆動される加振器、発電機に電気的に接続されるヒーター、ヒーターによって加熱されるとともに加振器によって振動してアスファルト合材を締め固める振動板、振動板の底部内面上に設けられ、ヒーターの熱を振動板に効率よく伝達するための伝熱部材、ヒーターの動作を制御し、予め、振動板の温度が所定温度範囲内になるように設定されている温度センサ、これらの機器の動作を制御する制御盤およびこれらの機器を装着するためのベースプレートを含む。
ヒーターは、複数のシーズヒーター等の棒状(管状)の電気ヒーターで構成され、電気ヒーターは、伝熱部材の上面側の凹状の溝に収容され固定されている。伝熱部材は、長板状に形成され、振動板の底部内面の前後方向に沿って延びるように且つ振動板の底部内面の左右方向に互いに間隔を隔てて配設されている。複数の電気ヒーターは、伝熱部材から起立するように上方に延び設けられ、電気ヒーターの入出力端子は、発電機に制御盤を通じて電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来のプレートコンパクタは、手動でON/OFF状態にするクラッチおよびベルト伝動機構を介して、エンジンの回転動力を加振器に伝達させることによって、加振器に振動を発生させ、その振動を振動板に伝達するものである。この場合、電気ヒーターにより加熱された振動板の温度が所定温度範囲になった後、クラッチのスイッチを手動でON状態にすると、エンジンの回転動力が加振器に伝達され、加振器が振動板を振動させるものとなる。これにより、振動板は、前後上下方向に回転して路床上のアスファルト合材を蹴るように振動する。この振動によって、プレートコンパクタは前進すると同時に、プレートコンパクタの振動板が路床上のアスファルト合材を締め固める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4000181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のプレートコンパクタでは、ヒーターが複数の棒状(管状)の電気ヒーターで構成されているため、輾圧板の裏面(輾圧面)を加熱する際に加熱ムラが発生し、当該輾圧面全体を均一に加熱することが困難であった。
また、この従来のプレートコンパクタ1では、たとえば図8,9に示すように、エンジン2,発電機3,上記した各機器の重量およびエンジン2の振動による衝撃荷重(振動衝撃)が過剰となって、当該衝撃荷重による負荷が、ベースプレート8、エンジン2を搭載・支持するエンジン台9A、発電機3,制御盤5を搭載・支持する取付台9B等の支持構造体に作用し、当該支持構造体が破断する虞があった。
さらに、この従来のプレートコンパクタでは、ヒーターの入出力端子および発電機からの配線との接続部を、塩化ビニール等の絶縁性を有する材料からなる弾力部材で固定することで当該接続部の断線を防止する工夫がされているものの、電気ヒーターの重量および上記した衝撃荷重の影響により当該電気ヒーターの断線および破損が発生する虞があった。すなわち、従来のプレートコンパクタでは、ヒーターへの振動衝撃に対する強度および耐久性に不具合の発生する虞があり、その実用性の面において改良の余地を有するものであった。
そして、この従来のプレートコンパクタでは、輾圧板の振動による騒音、プレートコンパクタの作業者が把持するハンドルへの振動伝播による当該作業者への負担等も未だ解消されえない問題として残っている。
【0005】
それゆえに、本願発明の主たる目的は、輾圧面全体が均一に効率よく加熱されると共にヒータへの悪影響が防止され、振動衝撃による構造体への負荷および作業者への負担も軽減される、プレートコンパクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1にかかる本願発明は、駆動エンジンと、第1の伝動機構を介し駆動エンジンの回転動力が伝達されて駆動可能となる発電機と、第2の伝動機構を介し駆動エンジンの回転動力が伝達されて駆動可能となる加振機と、加振機の振動によりアスファルト舗装面のアスファルト合材を締め固めるトレイ状の輾圧板と、発電機に電気的に接続されて発熱可能となり、輾圧板の内底部に装着されて輾圧板を加熱する可撓性を備えた面状のヒータと、輾圧板の温度を検知する温度検知手段と、駆動エンジンの駆動軸から加振機への回転動力の伝達を前記駆動エンジンの回転数に対して任意に制御する遠心クラッチと、温度検知手段で検知された輾圧板の温度が所定の温度を超えないように、発電機の電力を制御する制御回路を備えた制御ボックスと、耐熱性および断熱性を有すると共に弾性を有する材料で形成され、ヒータの上面を覆うようにして輾圧板に配設される面状の第1の防振部材と、ヒータと間隔を隔てて輾圧板の上部に配設され、駆動エンジン,発電機および加振機を支持する支持構造体と、加振機,駆動エンジン,発電機を含む振動部および支持構造体間に配設される複数の第2の防振部材を含むことを特徴とする、プレートコンパクタである。
請求項1にかかる本願発明では、駆動エンジン,発電機および加振機が支持構造体により支持されている。第1の伝動機構は、駆動エンジンの回転動力を発電機に伝達し、当該発電機を駆動させる。第2の伝動機構は、駆動エンジンの回転動力を加振機に伝達し、当該加振機を駆動させる。輾圧板は、加振機の振動により振動し、アスファルト舗装面のアスファルト合材を締め固める。遠心クラッチは、駆動エンジンからの加振機への回転動力の伝達を当該駆動エンジンの回転数に対して任意に制御している。制御ボックスの制御回路は、温度検知手段により検知された輾圧板の温度が所定の温度を超えないように、発電機の電力を制御している。
請求項1にかかる本願発明では、輾圧板の内底部に、発熱可能となる可撓性を備えた面状のヒータが装着されているため、ヒータからの熱は、輾圧板の内底部の裏面側のアスファルト合材と接触する輾圧面に、直接且つ均一に短時間で伝達される。つまり、輾圧板は、その輾圧面全体がヒータによって、均一に効率よく加熱されるものとなっている。この場合、ヒータは、可撓性を有しているため、加振機による輾圧板の振動に対する耐振機能も備えたものとなっている。
また、請求項1にかかる本願発明では、ヒータの上面を覆うようにして輾圧板に配設される面状の第1の防振部材が弾性を有するため、駆動エンジン,発電機等の振動部による振動および振動衝撃のヒータへの伝達が低減・緩和され、当該振動による振動衝撃によってヒータが破損するなどのヒータへの悪影響が防止される。つまり、振動衝撃に対するヒータの強度および耐久性の向上が図れる。さらに、第1の防振部材は、耐熱性および断熱性を有するため、ヒータからの熱が駆動エンジン,発電機,加振機に伝達・拡散することが防止され、当該熱による輾圧板以外の機器への悪影響も防止される。
さらに、請求項1にかかる本願発明では、駆動エンジン,発電機,加振機を含む振動部と支持構造体との間に複数の第2の防振部材が配設されているので、当該振動部の振動および振動衝撃のヒータへの伝達が低減・緩和され、加えて、当該振動部相互間(例えば、駆動エンジン,発電機,加振機相互間)での振動および振動衝撃の相互干渉も軽減されるものとなっている。
すなわち、請求項1にかかる本願発明では、第1の防振部材および第2の防振部材の相乗効果によって、振動部の振動,振動衝撃に起因する支持構造体および当該プレートコンパクタ全体への悪影響を低減することができる。そのため、プレートコンパクタは、その全体の防振性が優れたものとなり、作業者が把持するハンドルへの振動伝播による当該作業者への負担等も軽減され、作業者にとって安定した操縦性を有するものとなる。しかも、当該プレートコンパクタは、上記した第1の防振部材および第2の防振部材の相乗効果によって、良好な防音効果を有する低騒音の装置となっている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明にかかるプレートコンパクタによれば、輾圧面全体が均一に効率よく加熱されると共にヒータへの悪影響が防止され、振動衝撃による構造体への負荷および作業者への負担も軽減される、プレートコンパクタが得られる。
【0008】
本願発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の一例を示す正面図解図である。
【図2】本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の一例を示す平面図解図である。
【図3】図1および図2に示したプレートコンパクタに適用されるヒータの配置の一例を示す正面図解図である。
【図4】図1および図2に示したプレートコンパクタに適用されるヒータの配置の一例を示す平面図解図である。
【図5】図1,図2,図3および図4に示したプレートコンパクタに適用される制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の他の例を示す正面図解図である。
【図7】本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の他の例を示す側面図解図である。
【図8】従来のプレートコンパクタの一例を示す概略正面図である。
【図9】従来のプレートコンパクタの一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の一例を示す平面図解図であり、図2は、その正面図解図である。
プレートコンパクタ10は、駆動部としての駆動エンジン12、第1の伝動機構14を介し駆動エンジン12の回転動力が伝達されて駆動可能となる発電機16、第2の伝動機構18を介し駆動エンジン12の回転動力が伝達されて駆動可能となる加振機20、駆動エンジン12の駆動軸(出力軸)12aから加振機20への回転動力の伝達を駆動エンジン12の回転数に対して任意に制御する遠心クラッチ22、加振機20の振動によりアスファルト舗装面のアスファルト合材を締め固める輾圧板24、および、操向ハンドル26を含む。
【0011】
駆動エンジン12には、たとえば空冷4サイクル傾斜形単気筒OHCガソリンエンジンが用いられている。第1の伝動機構14は、図1,図2に示すように、遠心クラッチ22を介して駆動エンジン12の駆動軸(出力軸)12aに装着されたプーリ28と、発電機16の回転軸16aに装着されたプーリ30と、当該プーリ28およびプーリ30間に掛架され、駆動エンジンの回転動力を伝達するベルト32とを有する。発電機16には、たとえば3相3線式の200Vの交流発電機が用いられている。第2の伝動機構18は、遠心クラッチ22を介して駆動エンジン12の駆動軸(出力軸)12aに装着されたプーリ34と、加振機20の起振軸20aに装着されたプーリ36と、当該プーリ34およびプーリ36間に掛架され、駆動エンジンの回転動力を伝達するベルト38とを有する。
【0012】
加振機20は、偏心重量部(図示せず)を有する単一の起振軸で振動を起こす構成態様となっている。駆動エンジン12が駆動すると、その回転動力が遠心クラッチ22および第2の伝動機構18を経由して加振機20に伝達される。それによって、加振機20により振動が発生されると、当該振動が輾圧板24に伝達される。加振機20は、たとえば図1で見て、その起振軸20aを反時計方向に回転させた場合、アスファルト舗装面(路面)との非対称摩擦力により、プレートコンパクタ10が前進可能となる。アスファルト舗装面(路面)上にプレートコンパクタ10が通過することによって、当該アスファルト舗装面(路面)は、輾圧板24の振動を受けながら、且つ、当該プレートコンパクタ10自体の重量負荷も掛けられる。そのため、当該アスファルト舗装面(路面)は、締固められる。
【0013】
輾圧板24は、図1および図3等に示すように、たとえば正面視舟形トレイ状に形成され、輾圧板24の内底部には、発電機16に電気的に接続されて発熱可能となる可撓性を備えた面状のヒータ40が装着されている。ヒータ40により輾圧板24は、加熱されるものとなっている。
ヒータ40は、図4に示すように、外形がたとえば平面視方形状に形成され、且つ、複数の区画部40a,40b,40c,40d,40eを有するものとなっている。ヒータ40は、たとえば導電体を布やフイルム等のシート基材上に均一に定着させてヒータ回路を構成し、面全体を均一に発熱させるようにしたシートヒータ、あるいは、たとえばシート状のシリコンゴムに導電物質を混合させた面状ヒータ、または、ポリイミド/ステンレス積層材(商品名:「ユピセルC」)のステンレスをエッチングでパターン化した後、熱融着型ポリイミドフィルムでカバーした宇部興産株式会社製のポリイミドヒータ、その他、種々の面状ヒータが適宜用いられ得る。
【0014】
さらに、輾圧板24には、ヒータ40の上面全体を覆うようにして、面状の第1の防振部材42が配設されている。第1の防振部材42は、耐熱性および断熱性を有すると共に弾性を有する材料で形成されている。本実施形態例では、第1の防振部材42として、シリコン樹脂等が用いられている。
また、輾圧板24には、たとえば図5に示すように、温度検知手段としての温度センサ44(図1〜図4では図示せず)が配設されている。温度センサ44は、ヒータ40で加熱された輾圧板24の温度を検知するもので、サーミスタ,熱電対,抵抗温度形等が適宜用いられ得る。
【0015】
輾圧板24の内側上部には、ヒータ40と間隔を隔てた位置に、上記した駆動エンジン12,発電機16および加振機20等を支持する支持構造体46が配設されている。
支持構造体46は、図1,図2に示すように、たとえば平面視横長矩形状の第1の支持ベース48を含む。第1の支持ベース48の上には、駆動エンジン12を搭載・支持する第1の支持台50が配設されている。第1の支持台50は、たとえば断面逆凹形状に形成され、輾圧板24の前後方向に見て、第1の支持台50の中央部および後部の左右に配設されたたとえば4つの矩形状の起立支持板52に、それぞれ、第2の防止部材としてのたとえば防振ゴム54を介して接続・固定されている。4つの防振ゴム54は、それぞれ、たとえば円柱状に形成され、ボルルト・ナット等の固着手段56により固定されている。
さらに、第1の支持ベース48には、輾圧板24の前後方向に見て、当該第1の支持ベース48の前部に加振機20が搭載されている。
【0016】
また、支持構造体46は、図1,図3に示すように、たとえば平面視矩形状の第2の支持ベース58をさらに含む。第2の支持ベース58は、上記した第1の防振部材42の上側に僅かな間隔を隔てて、輾圧板24の高さ方向の中間部に配設されている。第2の支持ベース58の上には、発電機16を搭載・支持する第2の支持台60が配設されている。第2の支持台60は、たとえば断面逆凹形状に形成され、輾圧板24の前後方向に見て、第2の支持台60の前部の左右に配設されたたとえば2つの矩形状の起立支持板62に、それぞれ、第2の防止部材としてのたとえば防振ゴム64を介して接続・固定されている。2つの防振ゴム64は、それぞれ、たとえば円柱状に形成され、ボルルト・ナット等の固着手段66により固定されている。第1の防振部材42と第2の支持ベース58とは、接着剤等の固着手段により固着一体化させ、当該第2の支持ベース58の上面に発電機16を搭載する第2の支持台60を配設することがより好ましいものとなる。
【0017】
さらに、第1の支持台50および第2の支持台60間には、輾圧板24の前後方向に見て、図1,図2に示すように、第3の防振部材としてのたとえば防振ゴム68が介装されている。防振ゴム68は、円柱状に形成され、第1の支持台50および第2の支持台60の端部間に、ボルルト・ナット等の固着手段70により固定されている。
上記した各防振ゴム54,64,68は、それぞれ、たとえば軸方向に配置される弾性ゴム部と高減衰ゴム部とを含み、弾性ゴム部および高減衰ゴム部は、同心円状に配置された構成態様となっている。
【0018】
高減衰ゴム部としては、ポリノルボルネンゴムを使用したゴム、アクリルゴムやスチレンブタジエンゴム等の極性側鎖を有するゴム材料にヒンダードフェノール系化合物などの減衰性付与剤と相溶化のためのクマロン樹脂やフェノール樹脂などの非結晶性樹脂を添加したゴム、天然ゴムを主成分とするゴム材料にオレフィン系樹脂とオイル変性フェノール樹脂を添加したゴム、ポリイソプレンゴムと天然ゴムを併用したゴム材料にアビエチン酸の重合ロジンのペンタエリスリトールエステルを添加したゴム等が用いられる。それ以外にも、天然ゴム、重合ロジンなどのいわゆる粘着付与剤、充填剤、プロセスオイル等の可塑剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤を用いて高減衰性ゴムを形成するようにしてもよい。
また、弾性ゴム部としては、天然ゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム等のゴム材料が用いられる。
【0019】
すなわち、本実施形態例では、駆動エンジン12,発電機16および加振機20を含む振動部と、第1の支持ベース48,第1の支持台50,第2の支持ベース58,第2の支持台60を含む支持構造体46との間に、第2の防振部材としての複数の防振ゴム54が配設され、さらに、第1の支持台50および第2の支持台60間に、第3の防振部材としての複数の防振ゴム64が配設されている。当該各防振ゴム54,64,68は、それぞれ、主に、剪断変形またはネジレ変形によって振動および振動衝撃の伝達を低減するものであり、当該防振ゴムは、その取付け方向が限定されることがなく、どの方向の変形に関しても同様の剛性を有するものとなっている。そのため、これらの防振ゴム54,64,68によれば、安定して振動および振動衝撃の伝達が軽減することができ、当該プレートコンパクタ10の安定した操縦性を確保するものとなっている。
【0020】
なお、本実施形態例では、輾圧板24の前後方向に見て、第1の支持台50の後部に、上記した防振ゴム(図示せず)を介して、操向ハンドル26が装着されている。つまり、操向ハンドル26は、駆動エンジン12,発電機16および加振機20を含む振動部と操向ハンドル26の装着部との間に介装されている。この場合、当該防振ゴム(図示せず)の防振作用によって、作業者が把持する操向ハンドル26への上記振動部からの振動および輾圧板24からの振動衝撃などの伝達を軽減することができるため、操向ハンドル26を把持して輾圧を行いながら当該輾圧板24を操作移動させて所定の範囲の地面を輾圧するときのプレートコンパクタ10の操縦性が良好なものとなる。
【0021】
プレートコンパクタ10は、温度検知手段としての温度センサ44で検知された輾圧板24の温度が所定の温度を超えないように、発電機16の電力を制御する制御回路を備えた制御ボックス72をさらに含む。制御ボックス72は、図1,図2に示すように、第2の支持台60の上面に搭載されている。本実施形態例では、たとえば図5に示すように、制御ボックス72が制御回路74を含み、制御回路74は、デルタ結線を有するヒータ回路76を含むヒータ40に接続されている。ヒータ40の入出力端子は、制御ボックス72を介して、発電機16に電気的に接続されている。制御回路74は、温度センサ44で検知された温度情報に基づいてヒータ40の動作を制御している。
【0022】
また、制御回路74は、サイリスタ(図示せず)を含み、当該サイリスタをONさせる位相を変化させることで擬似的に電圧を制御する、所謂、サイリスタ位相制御する方法を採用している。制御ボックス72は、制御回路のON/OFFを行うスイッチ78を有し、発電機16から入力される電力量をヒータ40に供給/遮断するように構成されている。当該スイッチ78をONすることにより、発電機16からの3相電力を引き入れられ、発電機16からの電力量は、上記のサイリスタ位相制御方法によって、その増減が適宜制御されている。
【0023】
本実施形態例では、図5に示すように、通常、暖機運転の状態で、第1の伝動機構14を介し駆動エンジン12の回転動力が伝達されて発電機16が駆動されている。つまり、遠心クラッチ22を介して駆動エンジン12の駆動軸(出力軸)12aに装着されたプーリ28(図5では、主プーリとして表示している。)を常時回転させた状態となり、発電機16が駆動して、ヒータ40が作動可能となる。ヒータ40が作動すると、ヒータ40により輾圧板24は加熱される。この場合、暖機運転時での輾圧板24の温度が120℃位になると、80%程度ではあるが、輾圧板24による輾圧が可能となる。
【0024】
一方、駆動エンジン12の回転数がたとえば2000rpm〜2500rpmとなったとき、遠心クラッチ22が自動的にONとなり、駆動エンジン12の駆動軸(出力軸)12aとプーリ34(図5では、従プーリとして表示している。)とが接続され、駆動エンジン12の回転動力が加振機20に伝達される。つまり、輾圧板24による輾圧が可能となる。この場合、駆動エンジン12の回転数がたとえば2500rpm〜3500rpmの範囲で輾圧板24の温度が150℃程度となり好適な輾圧温度となる。そして、ヒータ40の温度が150℃を超えて上がり過ぎると、つまり、温度センサ44で輾圧板24の温度が設定以上の温度を検知すると、上記したサイリスタ位相制御方法によって、ヒータ40の温度が下げられる。本実施形態例では、輾圧板24の加熱温度がたとえば120℃〜150℃程度の範囲に設定されることが好ましいものとなっている。
【0025】
図6は、本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の他の例を示す正面図解図であり、図7は、本願発明にかかるプレートコンパクタの実施形態の他の例を示す側面図解図である。
図6,図7に示す実施形態例では、図1〜図5に示した上述の実施形態例と比べて、特に、支持構造体46の構成態様が相違している。すなわち、本実施形態例では、第2の支持ベース58が設けられておらず、第1の支持ベース48の上に第1の支持台50および第2の支持台60が配設されている。第1の支持台50には、駆動エンジン12が搭載され、第2の支持台60には、発電機16,制御ボックス72(図6,図7では図示せず)が搭載され、加振機20(図6,図7では図示せず)は、第1の支持ベース48に搭載されるものである。本実施形態例においても、上述した実施形態例と同様に、第1の支持台50および第2の支持台60の接続端部間に、第3の防振部材としての防振ゴム68が、ボルト・ナット等の固着手段70によって介装されている。
【0026】
本実施形態例では、プレートコンパクタ10の動作時において、第1の支持台50および第2の支持台60の接続部の金属疲労を防止することができる。すなわち、第1の支持台50には、駆動エンジン12の荷重および振動衝撃による負荷が作用し、第2の支持台60には、発電機16,加振機20,制御ボックス72等の荷重および振動衝撃による負荷が作用して、当該負荷に起因する歪により、輾圧板24の前後方向で見て、第1の支持ベース48の中央部に金属疲労が発生する虞があるため、当該金属疲労を防止するために、たとえば第1の支持台50,第2の支持台60およびその接続部の厚みを厚くする必要があった。この場合、プレートコンパクタ10の重量が大きくなるため、当該プレートコンパクタ10の軽量化が阻害される。
それに対して、本実施形態例では、上記した第3の防振部材を第1の支持台50および第2の支持台60の接続部に介装させているため、当該金属疲労が防止される。
【0027】
上述した各実施形態例では、輾圧板24の内底部に可撓性を備えた面状のヒータ40が装着されているため、ヒータ40からの熱が、輾圧板24の内底部の裏面側のアスファルト合材と接触する輾圧面に、直接且つ均一に短時間で伝達される。この場合、輾圧板24は、その輾圧面全体がヒータ40によって、均一に効率よく加熱される。そして、ヒータ40は、可撓性を有しているため、加振機20による輾圧板24の振動に対する耐振機能を発揮するものとなっている。
【0028】
また、ヒータ40の上面を覆うようにして第1の防振部材42が弾性を有するため、駆動エンジン12,発電機16等の振動部による振動および振動衝撃のヒータ40への伝達が低減・緩和される。したがって、当該振動による振動衝撃によってヒータ40が破損するなどのヒータ40への悪影響が防止される。つまり、振動衝撃に対するヒータの強度および耐久性の向上が図れる。さらに、第1の防振部材42は、耐熱性および断熱性を有するため、ヒータ40からの熱が駆動エンジン12,発電機16,加振機20に伝達・拡散することが防止され、当該熱による輾圧板24以外の機器への悪影響も防止される。
【0029】
さらに、駆動エンジン12,発電機16,加振機20を含む振動部と支持構造体46との間には、複数の第2の防振部材としての防振ゴム64が配設されているため、当該振動部の振動および振動衝撃のヒータ40への伝達が低減・緩和される。それに加えて、当該振動部相互間(例えば、駆動エンジン12,発電機16,加振機20相互間)での振動および振動衝撃の相互干渉も軽減することができる。
【0030】
すなわち、上述した各実施形態例では、第1の防振部材42および防振ゴム64(第2の防振部材)の相乗効果によって、振動部の振動,振動衝撃に起因する支持構造体46および当該プレートコンパクタ10全体への悪影響を低減することができる。すなわち、プレートコンパクタ10は、その全体の防振性が優れたものとなり、作業者が把持する操向ハンドル26への振動伝播による当該作業者への負担等も軽減されるため、作業者にとって安定した操縦性を有するものとなる。その上、当該プレートコンパクタ10は、第1の防振部材42および防振ゴム64(第2の防振部材)の相乗効果によって、良好な防音効果を有するものとなっている。
したがって、上述した各実施形態例によれば、輾圧面全体が均一に効率よく加熱されると共にヒータへの悪影響が防止され、振動衝撃による構造体への負荷および作業者への負担も軽減される、プレートコンパクタ10が得られるものとなる。
【符号の説明】
【0031】
10 プレートコンパクタ
12 駆動エンジン
14 第1の伝動機構
16 発電機
18 第2の伝動機構
20 加振機
22 遠心クラッチ
24 輾圧板
26 操向ハンドル
28,30,34,36 プーリ
32,38 ベルト
40 ヒータ
40a,40b,40c,40d,40e 区画部
42 第1の防振部材
44 温度センサ
46 支持構造体
48 第1の支持ベース
50 第1の支持台
52,62 起立支持板
54,64,68 防振ゴム
56,66,70 固着手段
58 第2の支持ベース
60 第2の支持台
72 制御ボックス
74 制御回路
76 ヒータ回路
78 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動エンジン、
第1の伝動機構を介し前記駆動エンジンの回転動力が伝達されて駆動可能となる発電機、
第2の伝動機構を介し前記駆動エンジンの回転動力が伝達されて駆動可能となる加振機、
前記加振機の振動によりアスファルト舗装面のアスファルト合材を締め固めるトレイ状の輾圧板、
前記発電機に電気的に接続されて発熱可能となり、前記輾圧板の内底部に装着されて前記輾圧板を加熱する可撓性を備えた面状のヒータ、
前記輾圧板の温度を検知する温度検知手段、
前記駆動エンジンの駆動軸から前記加振機への回転動力の伝達を前記駆動エンジンの回転数に対して任意に制御する遠心クラッチ、
前記温度検知手段で検知された前記輾圧板の温度が所定の温度を超えないように、前記発電機の電力を制御する制御回路を備えた制御ボックス、
耐熱性および断熱性を有すると共に弾性を有する材料で形成され、前記ヒータの上面を覆うようにして前記輾圧板に配設される面状の第1の防振部材、
前記ヒータと間隔を隔てて前記輾圧板の上部に配設され、前記駆動エンジン,前記発電機および前記加振機を支持する支持構造体、および
前記加振機,前記駆動エンジン,前記発電機を含む振動部と前記支持構造体との間に配設される複数の第2の防振部材を含むことを特徴とする、プレートコンパクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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