説明

プレ空調システム

【課題】乗車前にプレ空調を確実に行うことを目的とする。
【解決手段】制御・操作部によって設定した出発時間から充電時間及びプレ空調時間を演算し(108)、充電時間及びプレ空調時間を設定する(110)。そして、充電開始時間になったところで充電を開始し(112〜116)、プレ空調に必要な充電量かつプレ空調開始トリガを検知した場合(例えば、施錠検知した場合)に、プレ空調を開始するように制御する(118〜128)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレ空調システムにかかり、特に、自動車に搭載された蓄電池を建物からの電力供給によって充電すると共に、車室内を事前に空調する機能を有するプレ空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、車室内を空調する車両用空調装置が設けられており、車室内が快適な空調状態に維持されるようになっている。また、乗員からのリモコン等を用いた指示やタイマ設定等により、予め設定された運転方法で乗員が乗車する前に車室内を予め空調する、所謂プレ空調を行う車両空調装置も提案されている。
【0003】
また、地球温暖化を防止するためにCO2削減等を目的として、蓄電池を搭載してエンジンとモータを動力源としたハイブリッド自動車が多く普及してきていると共に、蓄電池を搭載した電気自動車に関しても注目を集め始めており、このような自動車に搭載された蓄電池を住宅から電力によって充電する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の技術では、複数台の車両と外部電源とが結合されたときの蓄電池の蓄電状態を検出すると共に、複数台の車両の各々について予測消費電力量を検出して、各車両について、検出された蓄電状態と予測消費電力量とに基づいて必要な充電電力量を算出し、各車両の使用開始時刻を検出して、必要充電量と使用開始時刻から各車両の充電時間と充電電力量についての充電スケジュールを決定して充電を制御することが提案されている。また、特許文献1に記載の技術では、乗車予定時刻より前に、タイマーなどによって車両用空調装置を作動させてプレ空調を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−134450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、タイマーなどによってプレ空調を開始するようにしているため、スケジュール通りに車両を使用しない場合には、プレ空調を行うことができず、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、乗車前にプレ空調を確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車室内を乗車前に空調するプレ空調機能を備えた空調装置及び走行用の電力を蓄電する蓄電池を備えた自動車と通信を行う通信手段と、前記通信手段による通信に基づいて、前記蓄電池の充電量を求めて前記蓄電池を充電するための電力を建物から前記自動車に供給して前記蓄電池を充電する充電手段と、建物の開口部の施錠または施錠準備を検知する検知手段と、前記通信手段による前記通信を利用して、前記検知手段の検知結果に基づいて、施錠または施錠準備が検知された場合に、前記プレ空調機能の動作を開始するように前記空調装置を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、通信手段では、自動車と通信が行われる。自動車は、車室内を乗車前に空調するプレ空調機能を備えた空調装置が設けられていると共に、走行用の電力を蓄電する蓄電池を備えており、例えば、自動車としては、電気自動車やハイブリッド自動車等を適用することができる。
【0010】
充電手段では、通信手段による通信に基づいて、蓄電池の充電量を求めて建物から自動車に電力を供給して蓄電池の充電が行われる。例えば、通信手段によって蓄電池の蓄電量を建物側で取得し、予め設定された自動車の使用日時から充電スケジュールを求めて出発前に蓄電池の充電を完了するように制御するもの等を適用することができる。
【0011】
また、検知手段では、建物の玄関などの開口部の施錠または施錠準備が検知される。すなわち、検知手段によって玄関などの開口部の施錠または施錠準備が検知された場合には、住人が自動車を使用するものと判断できる。
【0012】
そして、制御手段では、通信手段による通信を利用して、検知手段の検知結果に基づいて、施錠または施錠準備が検知された場合に、プレ空調機能の動作を開始するように空調装置が制御される。すなわち、住人の外出や外出準備を検知した場合にプレ空調機能を動作開始させることができるので、スケジュール通りに自動車を使用しない場合でも、乗車前にプレ空調を確実に行うことができる。
【0013】
なお、請求項2に記載の発明のように、建物の設けられ、プレ空調機能の作動開始スケジュールの設定が可能とされて、プレ空調機能の作動開始のトリガを作動開始スケジュールまたは検知手段の検知結果に選択設定するための設定手段を更に備えて、制御手段が、設定手段によって設定されたトリガに基づいて、プレ空調機能の動作を開始するように空調装置を更に制御するようにしてもよい。すなわち、施錠または施錠準備以外に、設定手段によって設定したスケジュールに従ってプレ空調開始できるようにしてもよい。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、制御手段が、空調装置を制御する際に、自動車または建物に設けられて外気温を検出する温度検出手段によって検出された外気温が第1の所定温度より高いときは冷房として機能し、第2の所定温度より低いときは暖房として機能するように更に制御するようにしてもよい。すなわち、外気温に応じて冷房か暖房を自動的に切り換えることによって、プレ空調機能を作動させた際に、車室内を快適な温度にすることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、建物内のキッチン機器への通電を検出する通電検出手段を更に備えて、制御手段が、通電検出手段の検出結果に基づいて、通電が検出された場合に、プレ空調機能の動作を開始するように空調装置を更に制御するようにしてもよい。すなわち、キッチン機器への通電は、例えば、朝食の準備等で行われると考えられるので、朝食の準備をキッチン機器への通電によって検出して、通電を検出してから予め定めた時間後にプレ空調機能を動作開始することによっても乗車前にプレ空調を確実に行うことが可能となる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、建物の住人の外出準備を検出する外出準備検出手段を更に備えて、制御手段が、外出準備検出手段の検出結果に基づいて、外出準備が検出された場合に、プレ空調機能の動作を開始するように空調装置を更に制御するようにしてもよい。
【0017】
なお、制御手段は、請求項6に記載の発明のように、蓄電池の蓄電量が所定値以上に達しない場合に、プレ空調機能の動作開始を禁止するようにしてもよい。換言すれば、蓄電池の蓄電量が所定値以上に達したときから、プレ空調機能の動作を開始するように空調装置を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、建物の施錠または施錠準備の検知結果に基づいてプレ空調機能の動作開始を制御することにより、乗車前にプレ空調を確実に行うことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係わるプレ空調システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わるプレ空調システムで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係わるプレ空調システムで行われる蓄電池の充電と、プレ空調のタイミングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わるプレ空調システムの概略構成を示す図である。なお、図1中の各構成要素間の点線はデータの流れを示し、実線は電力の流れを示すものとして示す。
【0021】
本発明の実施の形態に係わるプレ空調システム10は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車12に住宅14等の建物から電力を供給して自動車12に搭載された車両蓄電池34を充電すると共に、乗車前に自動車12の空調装置36を事前に作動させることによってプレ空調を行う制御を行う。
【0022】
住宅14には、自動車12の車両蓄電池34を充電するための電力の供給制御や、プレ空調を行うための制御等を行うための住宅ECU(electric control unit)16が設けられている。なお、住宅ECU16は、CPUや、ROM、RAM等のマイクロコンピュータから構成されている。
【0023】
住宅ECU16には、電力供給部18、制御・操作部19、施錠検知センサ20、外出準備検出手段22、住宅通信部24、及び温度センサ26が接続されている。
【0024】
電力供給部18には、交流電力を直流電力に変換する電力変換機28が接続されており、商用電源からの電力を電力変換機28へ供給し、電力変換機28によって交流電力を直流電力に変換して住宅14に設けられた蓄電池30の充電を行う。また、電力供給部18には、自動車12がケーブル32を介して接続可能とされており、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車12に搭載された車両蓄電池34の充電が可能とされている。
【0025】
また、制御・操作部19は、操作パネルや表示部を備えており、電力供給部18に接続された自動車12の車両蓄電池34への充電を行うスケジュールの設定や、自動車12の使用スケジュールの設定(例えば、出発日時等)、自動車12を使用する前に自動車12の空調装置36を作動して車室内を空調するプレ空調を行うか否かの設定等を行うことが可能とされている。
【0026】
施錠検知センサ20は、住宅14の玄関等の鍵の施錠状態を検知し、検出結果を住宅ECU16に出力するようになっている。すなわち、住宅ECU16では、玄関等の鍵が施錠されたか否かを把握することが可能となり、住人が外出しようとしているか否かを判断することができる。
【0027】
なお、施錠を検知する代わりに施錠準備を検知するようにしてもよい。施錠準備の検知方法としては、例えば、玄関等の鍵や自動車12の鍵のホルダを設け、ホルダからの鍵の取出しを検出するセンサを適用して、当該センサによって鍵が取り出されたことを外出準備として検出するよにしてもよい。
【0028】
外出準備検出手段22は、住人が外出する準備をしているか否かを検出し、検出結果を住宅ECU16に出力する。外出準備検出手段22としては、例えば、IHヒータへ通電を検出するセンサを適用して、当該センサによってIHヒータへの通電を検出してから予め定めた時間後に外出するものとして外出準備を検出するようにしてもよいし、住宅14の電力が予め定めた待機電力になったことを検出するセンサを適用して外出準備を検出するようにしてもよい。或いは、その他に外出前に行う動作等を検出するセンサを適用して外出準備を検出するようにしてもよい。
【0029】
また、住宅通信部24は、自動車12に設けられた車両通信部44と通信が可能とされ、例えば、住宅ECU16が施錠検知センサ20によって施錠を検出したときや、外出準備検出手段22によって外出準備を検出したときに、空調装置36を作動するためのトリガ信号を出力する。なお、住宅通信部24は、狭域無線通信(例えば、Bluetooth)、広域無線通信(例えば、DCM:Data Communication Module等)の各種無線通信を適用してもよいし、PLC:Power Line Communication等の有線通信を適用してもよいし、有線通信の場合には、電力供給部18と自動車12とを接続するケーブル32にデータ通信用のケーブルを設けて有線通信を行うようにしてもよい。
【0030】
温度センサ26は、外気温を検出して検出結果を住宅ECU16に出力し、住宅通信部24及び車両通信部44を介して車両ECU(electric control unit)38に検出結果を送信する。これにより車両ECU38が空調装置36を作動する際に暖房として作動するか冷房として作動するかを判断する。
【0031】
一方、自動車12は、自動車12の空調装置36や車両蓄電池34への充電を制御するための車両ECU38が設けられている。なお、車両ECU38は、CPUや、ROM、RAM等のマイクロコンピュータから構成されている。
【0032】
車両ECU38には、電力変換機40、充電器42、空調装置36、及び車両通信部44が接続されている。
【0033】
電力変換機40は、住宅14の電力供給部18からケーブル32を介して供給される交流電力を直流電力に変換して充電器42に供給する。
【0034】
充電器42は、電力変換機40から供給される直流電力を車両蓄電池34に供給することにより、車両蓄電池34を充電する。車両蓄電池34への充電制御は、車両ECU38が充電器42を制御することによって行われ、例えば、車両蓄電池34の残量に応じて充電電力を制御したりする。
【0035】
空調装置36は、冷媒が循環する冷媒循環サイクル等を備えて自動車12の車室内の空調を行う。空調装置36は、例えば、電動コンプレッサを備えて、電動コンプレッサによって冷媒循環サイクルを循環させることによって冷房を行うことができる。また、冷媒循環サイクルを冷房とは逆に循環させてヒートポンプとして機能させて暖房を行うようにしてもよい。或いは、暖房については、電気ヒータ等の発熱手段を別に備えて暖房を行うようにしてもよい。
【0036】
なお、車両ECU38の制御によって空調装置36を作動する際、住宅14側から住宅通信部24及び車両通信部44を介して送信される温度センサ26の検出結果が第1の所定温度より高いときに冷房として作動させ、第2の所定温度より低いとき暖房として作動させる。また、外気温を住宅14側から取得するようにしたがこれに限るものではなく、自動車12に外気温センサを備える場合には自動車12に備えた外気温センサから外気温を取得するようにしてもよい。
【0037】
車両通信部44は、上述したように、住宅通信部24と通信が可能とされており、例えば、住宅14の施錠情報や、外出準備情報等を住宅14から取得して、車両ECU38に出力する。これによって車両ECU38では、住宅14から取得した情報に基づいて、プレ空調の開始制御を行うことできる。
【0038】
続いて、上述のように構成された本発明の実施の形態に係わるプレ空調システム10で行われる車両蓄電池34の充電及びプレ空調について詳細に説明する。
【0039】
本実施の形態に係わるプレ空調システム10では、自動車12の車両蓄電池34の充電制御を行うと共に、自動車12を使用する前に事前に車室内を空調するプレ空調の制御を行う。
【0040】
車両蓄電池34の充電制御としては、例えば、制御・操作部19によって自動車12を使用する日時等を予め設定することにより、設定された日時に車両蓄電池34の充電が完了するように充電を制御する(スケジュール充電)。例えば、住宅通信部24及び車両通信部44を介して通信を行うことにより車両蓄電池34の蓄電量を住宅ECU16が取得することにより充電量を算出して、深夜電力等の電力料金の安い時間帯に車両蓄電池34を充電するように制御したり、電力料金の安い時間帯に住宅14に設けられた蓄電池30を充電して、当該蓄電池30の電力を利用して車両蓄電池34を充電したりすることによって出発前に車両蓄電池34の充電を完了するように充電を制御する。なお、深夜電力を利用して住宅14側の蓄電池30を充電し、当該蓄電池30の電力を利用して自動車12の車両蓄電池34を充電するようにしてもよい。
【0041】
また、プレ空調の制御としては、例えば、制御・操作部19によって自動車12を使用する日時等のプレ空調開始スケジュールを予め設定することにより、設定された日時の予め定めた時間前に空調装置36を作動するように制御して車室内を事前に空調する。このとき、充電制御と連動してプレ空調制御を行うが、例えば、出発時間の所定時間の10分前等に充電が完了して、5分前等にプレ空調が完了するように制御する。
【0042】
また、プレ空調を開始するためのトリガとしては、上述のように制御・操作部19を操作して予め設定する以外に、本実施の形態では、施錠検知センサ20によって住宅の鍵の施錠または施錠準備を検知した場合や、外出準備検出手段22によって外出準備を検出した場合、IHヒータへの電力検知して所定時間した場合等を外出準備検出手段22が検出した場合に、プレ空調を開始するようになっている。また、これ以外のプレ空調を開始するためのトリガとしては、住宅の空調装置がオフされた場合、照明がオフされた場合、車両蓄電池34を充電するためのケーブル32が引き抜かれた場合等を適用するようにしてもよい。
【0043】
また、プレ空調を開始するためのトリガは、制御・操作部19によって選択可能とされている。
【0044】
なお、プレ空調を開始するためのトリガを設定する際には、家族構成や季節によって設定するようにしてもよい。例えば、家族構成が1人の場合には、施錠検知センサ20によって施錠を検知したときにプレ空調を開始する設定としたり、家族構成が複数かつ全員外出する場合には、施錠検知センサ20によって施錠を検知し、かつ住宅14の電力が予め定めた待機電力以下になったことを住宅ECU16が検出したときにプレ空調を開始する設定としたり、家族構成が複数かつ外出しない人がある場合には、玄関等の鍵や自動車12の鍵をかけるホルダからの鍵の取出しを検出するセンサを外出準備検出手段22として適用して当該センサによって鍵が取り出されときにプレ空調を開始する設定とすることができる。また、外出前に食事を行う場合などでは、調理するためのIHヒータへ通電を検出するセンサを外出準備検出手段22として適用して当該センサによってIHヒータの使用を検出してから予め定めた時間後にプレ空調を開始するようにしてもよい。さらに、季節に応じてプレ空調時間を変更するようにしてもよい。例えば、春季や秋季よりも夏季や冬季のプレ空調時間が長くなるように制御するようにしてもよい。
【0045】
さらに、車両蓄電池34の充電とプレ空調を行う場合におけるスケジュール充電とプレ空調の連動方法としては、電力供給部18が自動車12へ供給する電流を測定し、トータル電力量と瞬時電流値から現在の充電状態を把握して、予め定めた規定値になったところでプレ空調を開始する方法などが挙げられる。例えば、トータル電力量から充電量が98%程度で行われる押し込み充電開始を検出してプレ空調を開始するようにしてもよいし、充電完了を検出してプレ空調を開始するようにしてもよいし、充電量が99%かつ押し込み充電開始5分後のプレ空調が最適であるとすると、そのタイミングでプレ空調を開始するようにしてもよい。なお、押し込み充電開始の検出方法としては、充電時の電流値が小さくなったことを電力供給部18または充電器42が検出することによって検出することが可能である。
【0046】
また、本実施の形態では、スケジュール充電とプレ空調を連動して行うことができるため、スケジュール充電とプレ空調を合わせたエネルギの最適化も可能となる。例えば、スケジュール充電の最後の押し込み充電を完全に終了させてからプレ空調を行うと、冬季の場合などではプレ空調時間が長すぎると逆に電池の温度が下がってしまい車両蓄電池34が不活性状態となり、車両蓄電池34の効率が下がってしまう。このような場合には、押し込み充電と併行してプレ空調を行う等の制御とすることにより、車両蓄電池34の効率が下がってしまうようなことを防止することができる。なお、このような最適化の演算については、住宅14側の住宅ECU16で計算する。
【0047】
また、制御・操作部19によってプレ空調を開始するためのトリガとして、複数のトリガが設定された場合には、予め定めた優先順位に応じたトリガを利用してプレ空調を開始してもよい。例えば、プレ空調開始スケジュールと、住宅の鍵の施錠または施錠準備と、が設定された場合には、プレ空調開始スケジュールよりも住宅の鍵の施錠または施錠準備によるプレ空調を優先する。あるいは、制御・操作部19によってトリガの優先順位を設定可能として、設定された優先順位に応じたトリガを利用してプレ空調を開始するようにしてもよい。
【0048】
続いて、上述のように構成された本発明の実施の形態に係わるプレ空調システム10で行われる具体的な処理について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係わるプレ空調システム10で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、ステップ100では、充電するためのケーブル32が接続されたか否かが住宅ECU16によって判定される。該判定は、住宅14側の電力供給部18と自動車12側の電力変換機40間にケーブル32が接続されたか否かを判定し、該判定が否定された場合には処理を終了して他の処理を実行し、肯定された場合にはステップ102へ移行する。なお、ケーブル32の接続の検出は、ケーブル32の接続部にセンサを設けて検出するようにしてもよい。
【0050】
ステップ102では、スケジュール充電及びプレ空調の設定を行うか否かが住宅ECU16によって判定される。該判定は、制御・操作部19が操作されてスケジュール充電及びプレ空調を行う指示が行われたか否かが判定され、該判定が否定された場合にはステップ104へ移行し、肯定された場合にはステップ106へ移行する。
【0051】
ステップ104では、スケジュール充電及びプレ空調をしないので、電力供給部18からケーブル32を介して自動車12の電力変換機40へ電力を供給することにより、直流電力に変換されて充電器42によってそのまま車両蓄電池34の充電が開始される。なお、本実施の形態では、ステップ102の判定が否定されると、直ぐに車両蓄電池34を充電するようにしたが、制御・操作部19が操作されてスケジュール充電のみが予め設定されている場合には、スケジュールに応じて車両用蓄電池の充電を行う処理を行い、プレ空調のみが予め設定されている場合には設定されているスケジュールに応じてプレ空調を行うようにしてもよい。
【0052】
一方、ステップ106では、出発時間の設定を行ってステップ108へ移行する。すなわち、制御・操作部19を操作することによって出発時間を設定する。なお、このとき、利用者が制御・操作部19を操作して、出発時間以外の車両蓄電池34の充電に関する設定や、プレ空調に関する設定(例えば、後述するステップ122のスケジュール(設定された出発時間から求めたプレ空調開始時間)以外のトリガを利用してプレ空調を開始するか否かの設定等)を行うようにしてもよい。
【0053】
ステップ108では、充電時間及びプレ空調時間が演算されてステップ110へ移行する。充電時間及びプレ空調時間の演算は、車両ECU38から車両蓄電池34の残量を取得して、充電に必要な電力量を算出して充電時間を演算すると共に、車両ECU38から車室内の温度や外気温(外気温は、温度センサ26から取得するようにしてもよい。)を取得して予め定めた快適な車室温度になるまでの空調時間を算出する。
【0054】
ステップ110では、充電時間及びプレ空調時間が設定されてステップ112へ移行する。すなわち、出発時間、充電時間、及び空調時間に基づいて、出発までに充電が完了して車室内が快適な温度になるように、充電開始時間及びプレ空調開始時間を設定する。
【0055】
ステップ112では、現在時刻が取得されてステップ114へ移行する。現在時刻は、例えば、住宅ECU16で計時するものとし、現在の時間を読み取ることによって行う。
【0056】
ステップ114では、充電開始時間になったか否かが住宅ECU16によって判定され、該判定が否定された場合にはステップ112に戻って上述の処理が繰り返され、判定が肯定されたところでステップ116へ移行する。
【0057】
ステップ116では、電力供給部18から自動車12の電力変換機40へ電力の供給が開始されることによって車両蓄電池34の充電が開始される。すなわち、住宅14の電力供給部18から供給される交流電力が電力変換機40によって直流電力に変換されて充電器42に供給され、充電器42によって車両蓄電池34の充電が行われる。
【0058】
ステップ118では、充電量が読み取られてステップ120へ移行する。充電量の読取りは、例えば、充電器42が充電しながら車両蓄電池34の状態(電圧や電流値等)を監視することによって行われるようにしてもよいし、電流や電圧を監視するセンサを設けるようにしてもよい。
【0059】
ステップ120では、プレ空調に必要な電力になったか否かが判定される。該判定は、例えば、車両蓄電池34の蓄電量が、プレ空調を作動させるため必要な予め定めた所定値になったか否かを判定したり、プレ空調時間から演算可能なプレ空調に必要な電力量を算出して、車両蓄電池34の蓄電量が算出した電力量になったか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ118に戻って上述の処理が繰り返され、判定が肯定されたところで、ステップ122へ移行する。
【0060】
ステップ122では、スケジュール以外のプレ空調開始設定が行われているか否かが住宅ECU16によって判定される。該判定は、制御・操作部19が操作されて、設定された出発時間から求めたプレ空調開始時間以外のトリガを利用してプレ空調を開始する設定が予め設定されているか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ124へ移行し、肯定された場合にはステップ126へ移行する。
【0061】
ステップ124では、プレ空調開始時間になったか否かが住宅ECU16によって判定される。該判定は、ステップ110で設定されたプレ空調時間になったか否かを判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ128へ移行する。
【0062】
一方、ステップ126では、プレ空調開始トリガがあるか否かが住宅ECU16によって判定される。該判定は、例えば、施錠検知センサ20によって玄関等の鍵の施錠が検知されたか否かや、外出準備検出手段22によって外出準備が検出されたか否か、或いは施錠準備が検出されたか否か等を判定し、該判定が肯定されるまで待機してステップ128へ移行する。なお、プレ空調開始トリガがあるか否かの判定は、スケジュール以外のプレ空調開始する複数のトリガのうち何れか1つを制御・操作部19によって予め設定して設定されたトリガが出力されたか否かを判定するようにしてもよいし、スケジュール以外の複数のトリガを設定可能として、何れかのトリガが出力されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0063】
ステップ128では、プレ空調が開始されて一連の処理を終了する。すなわち、住宅ECU16が住宅通信部24及び車両通信部44を介して車両ECU38に対して空調装置36の作動開始を指示することにより、車両ECU38が空調装置36を制御して車室内の空調を開始する。これによって乗車前に事前に車室内を快適温度にすることができる。
【0064】
このように本実施の形態に係わるプレ空調システム10では、自動車12と住宅14間にケーブル32が接続されると、充電スケジュールを求めてスケジュールに従って充電が制御される。具体的には、図3に示すように、充電開始時間になったところでスケジュール充電が開始され、蓄電量が所定値(例えば、98%や99%)になったところで押し込み充電が行われた後に充電完了となる。このとき、プレ空調についてもスケジュールに従って行う場合には、押し込み充電開始タイミングまたは充電完了のタイミングでプレ空調を開始する。これによって乗車前にプレ空調を行って車室内を快適にすることができる。
【0065】
しかしながら、スケジュールに従ってプレ空調を行う場合、スケジュール通りに住人が自動車を使用できない場合には、プレ空調時間が長くなってしまったり、プレ空調を開始する前に乗車することになってしまう。
【0066】
そこで、本実施の形態では、スケジュール以外のトリガを利用してプレ空調を開始することが可能とされている。すなわち、図3に示すように、施錠を検知した場合や外出準備を検出した場合にプレ空調を開始するように制御する。これによって、出発時間の少し前に充電及びプレ空調が完了し、乗車前にプレ空調を確実に行って車室内を快適することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、車両蓄電池34の蓄電量が所定値以上に達しない場合には、ステップ120の判定が否定されて以降の処理へ移行しないので、プレ空調の開始が禁止されることになる。換言すれば、車両蓄電池34の充電量が所定値以上に達したときからプレ空調が開始されるので、充電量不足でプレ空調が開始できないようなことを防止することができ、確実にプレ空調を実行することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、図2のフローチャートで示すように、通常、充電の方がプレ空調より時間がかかるため、充電開始時間にになったか否かを先に判定するようにしているが、帰宅時の車両蓄電池34の残量によってはプレ空調に必要な電力量に達していることも考えられないこともないので、プレ空調に必要な電力量に達しているか否か及びプレ空調開始時間になったか否かを先に判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 プレ空調システム
12 自動車
14 住宅
16 住宅ECU
18 電力供給部
19 制御・操作部
20 施錠検知センサ
22 外出準備検出手段
24 住宅通信部
32 ケーブル
34 車両蓄電池
36 空調装置
38 車両ECU
42 充電器
44 車両通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を乗車前に空調するプレ空調機能を備えた空調装置及び走行用の電力を蓄電する蓄電池を備えた自動車と通信を行う通信手段と、
前記通信手段による通信に基づいて、前記蓄電池の充電量を求めて前記蓄電池を充電するための電力を建物から前記自動車に供給して前記蓄電池を充電する充電手段と、
建物の開口部の施錠または施錠準備を検知する検知手段と、
前記通信手段による前記通信を利用して、前記検知手段の検知結果に基づいて、施錠または施錠準備が検知された場合に、前記プレ空調機能の動作を開始するように前記空調装置を制御する制御手段と、
を備えたプレ空調システム。
【請求項2】
建物に設けられ、前記プレ空調機能の作動開始スケジュールの設定が可能とされて、前記プレ空調機能の作動開始のトリガを前記作動開始スケジュールまたは前記検知手段の検知結果に選択設定するための設定手段を更に備え、前記制御手段が、前記設定手段によって設定された前記トリガに基づいて、前記プレ空調機能の動作を開始するように前記空調装置を更に制御する請求項1に記載のプレ空調システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記空調装置を制御する際に、前記自動車または建物に設けられて外気温を検出する温度検出手段によって検出された外気温が第1の所定温度より高いときは冷房として機能し、第2の所定温度より低いときは暖房として機能するように更に制御する請求項1又は請求項2に記載のプレ空調システム。
【請求項4】
建物内のキッチン機器への通電を検出する通電検出手段を更に備え、
前記通電検出手段の検出結果に基づいて、通電が検出された場合に、前記プレ空調機能の動作を開始するように前記空調装置を更に制御する請求項1〜3の何れか1項に記載のプレ空調システム。
【請求項5】
建物の住人の外出準備を検出する外出準備検出手段を更に備え、
前記外出準備検出手段の検出結果に基づいて、前記外出準備が検出された場合に、前記プレ空調機能の動作を開始するように前記空調装置を更に制御する請求項1〜3の何れか1項に記載のプレ空調システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記蓄電池の蓄電量が所定値以上に達しない場合に、前記プレ空調機能の動作開始を禁止する請求項1〜5の何れか1項に記載のプレ空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11907(P2012−11907A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151008(P2010−151008)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
【Fターム(参考)】