説明

プログラムの品質管理装置、及びプログラムの品質管理レポートの生成方法

【課題】プログラムの設計工程から製造、テスト工程までを一貫して管理するためのプログラムの品質管理のための技術を提供する。
【解決手段】設計工程において、プログラム単位に記述された設計書のレビューを行ったときの議事録を入力するための議事録入力画面100と、テスト工程において、設計書に基づいて製造されたプログラムコードのテストを実行したテスト結果の入力を受け付ける品質入力画面200と、議事録データ記憶部10と、品質データ記憶部20と、設計工程及びテスト工程の品質管理レポート500を生成し、生成された品質管理レポート500を出力する品質管理レポート生成部80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラムの品質管理のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアの開発において、予め定められている開発計画と品質基準に基づいて、プロジェクトを管理するためのシステムが、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−55993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ソフトウェアの品質を管理するためには、製造されたプログラムコードのテスト結果を管理するだけでなく、そのプログラムの設計書の段階での品質管理を行い、これらを組み合わせることがより好ましい。
【0004】
また、ある業務要件に係る機能を実現するためには、複数のプログラムを組み合わせて実現されることも多い。このため、プログラム単体の品質管理に加え、複数のプログラムをグループ化して品質管理を行う必要もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、プログラムの設計工程から製造、テスト工程までを一貫して管理するためのプログラムの品質管理のための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に従うプログラムの品質管理装置は、設計工程において、プログラム単位に記述された設計書のレビューを行ったときのレビュー結果の入力を受け付ける手段と、テスト工程において、前記設計書に基づいて製造されたプログラムコードのテストを実行したテスト結果の入力を受け付ける手段と、前記レビュー結果、及び前記テスト結果を関連づけて記憶する記憶手段と、前記記憶手段を参照して、設計工程及びテスト工程の品質管理レポートを生成し、生成された品質管理レポートを出力するレポート手段と、を備える。
【0007】
好適な実施形態では、プログラムを識別するためのプログラム識別情報と、複数のプログラムをグループ化して管理するための管理識別情報とを対応付けて記憶する手段を更に備え、前記管理識別情報には、複数のプログラム識別情報が対応付けられていて、前記レポート手段は、前記管理識別情報単位に前記品質管理レポートの生成、及び出力をするようにしてもよい。
【0008】
好適な実施形態では、設計工程及びテスト工程の品質管理指標の基準値を記憶する手段と、前記レビュー結果、及び前記テスト結果に基づいて、品質管理指標を算出する手段と、前記算出された品質管理指標と前記品質指標の基準値とを対比する手段と、を更に備えてもよい。そして、この場合、前記レポート手段は、前記対比手段の対比結果に基づいて、前記品質管理レポートを生成するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るプログラムの品質管理システムについて、図面を参照して説明する。本システムでは、プログラムの設計(外部設計、内部設計、詳細設計)から製造及びテストまでの各工程における品質管理を行う。
【0010】
本実施形態に係るプログラムの品質管理システムは、例えば汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する本システム内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0011】
図1は、本実施形態に係るプログラムの品質管理システムの機能構成を示す図である。
【0012】
本システムは、議事録入力画面100と、議事録入力画面100に入力された情報を記憶する議事録データ記憶部10と、品質入力画面200と、品質入力画面200に入力された情報を記憶する品質データ記憶部20と、案件登録画面300と、案件登録画面300に入力された情報に基づいて生成される案件テーブル30と、議事録データ記憶部10に記憶されている議事録データ、及び品質データ記憶部20に記憶されている品質データを統合するデータ編集部60と、データ編集部60が統合したデータを記憶する統合データ記憶部40と、品質管理のための管理指標を記憶した管理指標記憶部50と、品質管理レポートを生成する生成部80とを備える。
【0013】
本実施形態に係る品質管理システムでは、一つのプログラムを最小の管理単位として、複数のプログラムを管理することができる。このとき、各プログラムは、プログラムIDにより識別される。プログラムは、設計工程において設計書が作成され、この設計書に基づいて、製造工程においてプログラムコードが製造される。従って、ある一つの機能を実現するためのプログラムには、全工程に渡って共通のプログラムIDが割り当てられる。
【0014】
本実施形態に係るシステムは、さらに、複数のプログラムをまとめて、一つのグループとして管理することができる。この管理対象となるグループを案件と呼び、各案件は案件IDで識別される。これは、グループ化することで、ある業務要件に係る機能を実現するための複数のプログラムをまとめて管理するためである。
【0015】
案件登録画面300は、本システムにおける一つの管理単位である案件を登録するための画面である。つまり、ユーザは、案件登録画面300を用いて、一つの案件IDと複数のプログラムIDとの対応関係を定義することができる。そして、定義された対応関係は、案件テーブル30に登録される。これにより、案件IDが特定されれば、その案件に含まれる複数のプログラムIDを特定できる。
【0016】
図2は、議事録入力画面100の一例を示す。
【0017】
議事録入力画面100は、プログラムの設計工程において作成される設計書のレビューを行ったときに、そのレビューの議事録を入力するための画面である。
【0018】
議事録入力画面100は、同図に示すように、基本情報入力画面110と、明細情報入力画面130とを有する。
【0019】
基本情報入力画面110は、レビューに関する基本情報の入力を受け付ける。すなわち、基本情報入力画面110には、案件ID111、プログラムID112、レビューの出席者113、レビュー実施日114、この議事録の回覧者115、このプログラムの担当者116、レビュー区分117、レビューテーマ118、レビューを行った設計書のページ数119について入力を受け付ける各入力領域と、入力された内容を登録するための議事録更新ボタン120とを有する。
【0020】
レビュー対象となる設計書は、プログラムIDにより一意に識別される。プログラムID112の入力を行うときは、案件ID111と関連づけられているプログラムIDを案件テーブル30から取得し、その中から選択可能としてもよい。
【0021】
設計書のページ数119は、設計書作成の難易度別にページ数の入力を行うようになっている。
【0022】
議事録更新ボタン120が押されると、基本情報入力画面110で入力された情報が、後述する基本情報15(図3参照)として議事録データ記憶部10へ格納される。
【0023】
明細情報入力画面130は、レビューにおける具体的な議事内容等の入力を受け付ける。すなわち、明細情報入力画面130は、議事内容131、対策132、議事区分133、対策予定日134、対策完了日135、対策担当者136の各入力領域を有する。
【0024】
議事内容131には、レビューでの具体的な議事内容(例えば、問題点、今後の課題及びコメントなど)がテキストで記述される。
【0025】
対策132には、議事内容131で記述された議事に関連し、対策が必要なときはその対策が具体的に記述される。特に対策が必要ないときは、対策132の記載を省略することも可能である。
【0026】
議事区分133は、議事の内容を分類するためのものである。議事区分133には、例えば、「指摘事項」、「コメント」などが予め設定されていて、ユーザはその中から選択することができる。
【0027】
一般に議事録では、議事内容を項目別に箇条書きにすることが多い。そこで、本システムでは、議事内容を複数の項目について記述する場合は、明細情報入力画面130に対して一つの項目に関する記述をした後に、明細追加ボタン137を押すことにより、項目別に記述が可能となる。つまり、明細追加ボタン137を押されると、明細情報入力画面130に既に記述された内容が、後述する明細情報17(図3参照)として議事録データ記憶部10に格納され、その後、明細情報入力画面130がクリアされて次の議事内容に関する記述が可能となる。このようにして、議事録入力画面100では、基本情報入力画面110で入力された基本情報に対して、複数項目の議事内容を登録可能である。
【0028】
図3は、議事録データ記憶部10のデータ構造を示す。
【0029】
議事録データ記憶部10に記憶される議事録データは、図3Aに示すように、一つの基本情報15に対して、複数の明細情報17が対応付けられて登録されている。基本情報15は、基本情報入力画面110で入力された情報である。明細情報17は、明細情報入力画面130で入力された情報である。
【0030】
基本情報15には、図3Bに示すように、案件ID151と、プログラムID152と、レビュー実施日153と、レビュー区分154と、レビューテーマ155と、出席者156と、回覧者157と、担当者158とが含まれる。これらは、いずれも基本情報入力画面110で入力された情報である。
【0031】
明細情報17には、図3Cに示すように、議事内容171と、対策172と、議事区分173と、対策予定日174と、対策完了日175と、対策担当者176とが含まれる。これらは、いずれも明細情報入力画面130で入力された情報である。
【0032】
図4は、品質入力画面200の一例を示す。品質入力画面200は、プログラムのテスト工程(単体テスト工程)において実施したテストの内容及びその結果を入力するための画面である。
【0033】
品質入力画面200は、案件ID211、プログラムID212、難易度213、レビュー指摘数214、ページ数215、ステップ数216、テストケース数217、バグ発生数218、カバレッジ率219の各入力領域を有する。
【0034】
品質入力画面200は、プログラム単位に入力を受け付ける。プログラムID212の入力を行うときは、案件ID111と関連づけられているプログラムIDを案件テーブル30から取得し、その中から選択可能としてもよい。
【0035】
ページ数215は、設計書ページ数である。
【0036】
ステップ数216には、母数、最終規模、追加、修正、削除及び自動生成のそれぞれのステップ数を入力する。
【0037】
図5は、品質データ記憶部20のデータ構造を示す。品質データ記憶部20には、品質入力画面200で入力された情報が格納される。
【0038】
品質データ記憶部20に記憶される品質データは、同図に示すように、案件ID21と、プログラムID22と、難易度23と、レビュー指摘数24と、ページ数25と、ステップ数26と、テストケース数27と、バグ発生数28と、カバレッジ率29とが含まれる。
【0039】
データ編集部60は、議事録データ記憶部10に記憶されている議事録データ及び品質データ記憶部20に記憶されている品質データを読み出して、編集を行う。例えば、データ編集部60は、次に説明する品質管理指標を算出する。そして、データ編集部60は、プログラムIDをキーにして、議事録データ、品質データ、及び算出された管理指標をマージして、統合データ記憶部40に格納する。
【0040】
管理指標記憶部50には、種々の管理指標について、工程別の基準値が記憶されている。この管理指標は、設計書及びプログラムコードの品質を担保するために、予め定められている指標であって、例えば、設計工程での設計書レビューの際のページあたりの指摘事項数(指摘事項率)、テスト工程での単位ステップあたりのテストケース数(テスト密度)、あるいはテスト工程での単位ステップあたりのバグの検出率(バグ密度)などがある。そして、これらの指標について、達成すべき基準値が管理指標記憶部50に登録されている。
【0041】
データ編集部60は、議事録データ記憶部10及び品質データ記憶部20から読み出したデータに基づいて、プログラムIDごとに上記のような品質指標を算出する。そして、データ編集部60は、算出された各管理指標値を、プログラムIDをキーにして統合データ記憶部40に格納する。
【0042】
品質管理レポート生成部80は、統合データ記憶部40を参照して、プログラム別の品質管理レポート500を生成する。例えば、品質管理レポート生成部80は、プログラムIDをキーにして統合データ記憶部40に格納されているデータを取得して、プログラム単位に、各プログラムの品質を示すレポートを生成する。また、品質管理レポート生成部80は、案件IDをキーにして統合データ記憶部40に格納されているデータを取得して、その案件IDと対応付けられている複数のプログラムに関する品質管理レポート500を生成することもできる。さらには、品質管理レポート生成部80は、管理指標記憶部50に記憶されている管理指標の基準値と、各プログラムの算出された管理指標値とを対比し、その対比結果に基づいて品質管理レポート500を生成することもできる。
【0043】
図6は、品質管理レポート出力画面700の一例を示す。この画面700で、品質管理レポート作成時の検索条件を設定することができる。
【0044】
品質管理レポート出力画面700は、基本情報、設計工程品質及びテスト工程品質について、それぞれ、検索条件入力領域710、720、730を有する。そして、ユーザによって、これらの検索条件入力領域710、720、730に検索条件が入力されると、品質管理レポート生成部80は、その条件に従ったデータを統合データ記憶部40から取得して、所定の品質管理レポート500を生成する。
【0045】
例えば、設計書のレビューにおける議事区分別に検索を行い(例えば、「指摘事項」のみを抽出して)、品質管理レポートを生成したり、所定の管理指標について基準値に満たないプログラムIDのみを抽出したりすることが可能である。
【0046】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るプログラムの品質管理システムの機能構成図である。
【図2】議事録入力画面100の一例を示す。
【図3】議事録データ記憶部10のデータ構造を示す。
【図4】品質入力画面200の一例を示す。
【図5】品質データ記憶部20のデータ構造を示す。
【図6】品質管理レポート出力画面700の一例を示す。
【符号の説明】
【0048】
10 議事録データ記憶部
20 品質データ記憶部
30 案件テーブル
40 統合データ記憶部
50 管理指標記憶部
60 データ編集部
80 品質管理レポート生成部
100 議事録入力画面
110 基本情報入力画面
130 明細情報入力画面
200 品質入力画面
300 案件登録画面
500 品質管理レポート
700 品質管理レポート出力画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムの品質管理装置であって、
設計工程において、プログラム単位に記述された設計書のレビューを行ったときのレビュー結果の入力を受け付ける手段と、
テスト工程において、前記設計書に基づいて製造されたプログラムコードのテストを実行したテスト結果の入力を受け付ける手段と、
前記レビュー結果、及び前記テスト結果を関連づけて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段を参照して、設計工程及びテスト工程の品質管理レポートを生成し、生成された品質管理レポートを出力するレポート手段と、を備えるプログラムの品質管理装置。
【請求項2】
プログラムを識別するためのプログラム識別情報と、複数のプログラムをグループ化して管理するための管理識別情報とを対応付けて記憶する手段を更に備え、
前記管理識別情報には、複数のプログラム識別情報が対応付けられていて、
前記レポート手段は、前記管理識別情報単位に前記品質管理レポートの生成、及び出力をすることを特徴とする請求項1記載のプログラムの品質管理装置。
【請求項3】
設計工程及びテスト工程の品質管理指標の基準値を記憶する手段と、
前記レビュー結果、及び前記テスト結果に基づいて、品質管理指標を算出する手段と、
前記算出された品質管理指標と前記品質指標の基準値とを対比する手段と、を更に備え、
前記レポート手段は、前記対比手段の対比結果に基づいて、前記品質管理レポートを生成することを特徴とする請求項1記載のプログラムの品質管理装置。
【請求項4】
設計工程において、プログラム単位に記述された設計書のレビューを行ったときのレビュー結果の入力を受け付けるステップと、
テスト工程において、前記設計書に基づいて製造されたプログラムコードのテストを実行したテスト結果の入力を受け付けるステップと、
前記レビュー結果、及び前記テスト結果を関連づけて記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段を参照して、設計工程及びテスト工程の品質管理レポートを生成し、生成された品質管理レポートを出力するステップと、を有するプログラムの品質管理レポートの生成方法。
【請求項5】
コンピュータに実行されると、
設計工程において、プログラム単位に記述された設計書のレビューを行ったときのレビュー結果の入力を受け付けるステップと、
テスト工程において、前記設計書に基づいて製造されたプログラムコードのテストを実行したテスト結果の入力を受け付けるステップと、
前記レビュー結果、及び前記テスト結果を関連づけて記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段を参照して、設計工程及びテスト工程の品質管理レポートを生成し、生成された品質管理レポートを出力するステップと、が行われるプログラムの品質管理レポートの生成のためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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