説明

プログラム調節計

【課題】複数台のプログラム調節計を並列運転するのにあたり、比較的安価な構成で、プログラムパターンの進行についてセグメント単位で同期をとることができるプログラム調節計を提供すること。
【解決手段】複数のセグメントに分割された時間の経過に応じて目標設定値が変化するように作成された所定の制御プログラムパターンに基づき制御対象を制御するプログラム調節計において、他のプログラム調節計の運転状態を監視する監視手段を設け、いずれかのプログラム調節計がセグメントにおける目標設定値の変化に追従できない場合には次のセグメントへの移行を遅らせることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム調節計に関し、詳しくは、複数台のプログラム調節計を並列運転する場合における同期動作の改善に関するものである。
【0002】
プログラム調節計のプログラムパターンは、たとえば図7に示すように、目標設定値を時間経過に連動して変化させる複数のセグメントよりなる折れ線パターンとして設定されていて、1セグメントから順にたとえば最大99セグメントまで動作して、1つのパターンが終了する。
【0003】
各セグメントには、到達目標値と、到達目標値になるまでのセグメント時間が設定されている。各セグメントにおいて、スタートした目標値から設定されたセグメント時間をかけて到達目標値へ目標値が変化することにより1セグメントが終了し、次のセグメントの到達目標値に向かう動作に移行する。
【0004】
図8は、3台のプログラム調節計No1〜No3の並列運転動作の一例を示す説明図である。図8において、各調節計は別々の温度プログラムパターンをもち、それぞれの測定温度入力に基づいて、それぞれのヒータをそれぞれのサイリスタにより個別に駆動制御して製品を加熱処理するように構成されている。
【0005】
図8の構成によれば、いずれかの調節計の測定温度入力が目標設定値の変化に追従できない場合、各調節計で温度プログラムパターンの進行を停止できるが、各調節計は個々に動作しているので、温度プログラムパターンの進行状態の同期をとることはできない。
【0006】
図9は、3台のプログラム調節計No1〜No3の並列運転動作の他の例を示す説明図である。図9において、調節計No1のみが温度プログラムパターン情報をもっている。そして、調節計No1は、通信手段を介して他の調節計No2、No3に、温度プログラムパターン情報を送信している。
【0007】
図9の構成によれば、3台のプログラム調節計No1〜No3は、調節計No1から送信される共通の温度プログラムパターン情報とそれぞれの温度測定入力に基づき、それぞれのヒータをそれぞれのサイリスタにより個別に駆動制御して製品を加熱処理することができるので、温度プログラムパターンの動作については同期をとることができる。
【0008】
調節計No1は、測定温度入力が目標設定値の変化に追従できているか否かの動作を確認できるので、測定温度入力が目標設定値の変化に追従できない場合に温度プログラムパターンの進行を停止できる。
【0009】
ところが、他の調節計No2、No3は、調節計No1に測定温度入力に基づく目標設定値変化追従情報を送信できないので、測定温度入力が目標設定値の変化に追従できなくなっても温度プログラムパターンの進行を停止させることができない。
【0010】
図10は、3系統No1〜No3の制御対象を、1台のプログラム制御装置で所定の温度プログラムパターンに基づいて並列運転する例を示す説明図である。図10の構成によれば、温度プログラムパターンの進行の同期をとることができるが、コストが高くなってしまう。
【0011】
特許文献1には、1台のループコントローラで複数のプログラムを同時に実行させることにより、複数の熱源を同期運転制御する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−048184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、複数台のプログラム調節計を並列運転するのにあたり、比較的安価な構成で、プログラムパターンの進行についてセグメント単位で同期をとることができるプログラム調節計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
複数のセグメントに分割された時間の経過に応じて目標設定値が変化するように作成された所定の制御プログラムパターンに基づき制御対象を制御するプログラム調節計において、
他のプログラム調節計の運転状態を監視する監視手段を設け、
いずれかのプログラム調節計がセグメントにおける目標設定値の変化に追従できない場合には次のセグメントへの移行を遅らせることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプログラム調節計において、
前記監視手段は、
前記目標設定値が各セグメントの到達目標値に到達しかつその時点の測定値が所定の設定偏差内のときに次のセグメントへの移行を許可する信号を出力する移行許可信号出力手段と、他のプログラム調節計から出力される前記移行許可信号が入力される移行許可信号入力手段とで構成され、
これら出力移行許可信号と入力移行許可信号のレベルが一致することにより次のセグメントへの移行を実行することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2に記載のプログラム調節計において、
前記移行許可信号は接点信号であることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項3に記載のプログラム調節計において、
前記接点信号のレベルは、所定の遅延時間後に変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
これらにより、複数台のプログラム調節計を並列運転するのにあたり、比較的安価な構成で、プログラムパターンの進行についてセグメント単位で同期をとることができ、プログラムパターンの進行のばらつきを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るプログラム調節計を用いた制御システムの一実施例を示す説明図である。
【図2】図1の接続状態の説明図である。
【図3】次セグメント移行判断部13の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】次セグメント移行判断部13の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図5】並列接続された3台のプログラム調節計No1〜No3の同期運転の動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】次セグメント移行判断部13の全体の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図7】プログラム調節計のプログラムパターンの説明図である。
【図8】3台のプログラム調節計No1〜No3の並列運転動作の一例を示す説明図である。
【図9】3台のプログラム調節計No1〜No3の並列運転動作の他の例を示す説明図である。
【図10】1台のプログラム制御装置で所定の温度プログラムパターンに基づいて並列運転する例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。
本発明のプログラム調節計は、他のプログラム調節計の運転状態を監視する監視手段を設け、複数台のプログラム調節計を並列運転するのにあたり、いずれかのプログラム調節計がセグメントにおける目標設定値の変化に追従できない場合には、次のセグメントへの移行を遅らせるようにしたものである。
【0021】
図1は本発明に係るプログラム調節計を用いた制御システムの一実施例を示す説明図であり、3台のプログラム調節計No1〜No3を並列運転する例を示している。図1において、各プログラム調節計No1〜No3はそれぞれ同一に構成されていて、図7〜10と同様に、それぞれのヒータをそれぞれのサイリスタにより個別に駆動制御して製品を加熱処理する電気炉を制御対象としているものとする。
【0022】
たとえばプログラム調節計No1において、プログラムパターン生成部11は、複数のセグメントに分割された時間の経過に応じて、目標設定値SPが折れ線グラフのように変化する所定の温度制御プログラムパターンを生成する。このプログラムパターン生成部11で生成されたプログラムパターンはPID演算部12に出力されるとともに、プログラムパターンの各セグメントの到達目標値は次セグメント移行判断部13に出力される。
【0023】
PID演算部12は、プログラムパターン生成部11で生成された温度制御プログラムパターンの目標設定値SPと制御対象20の温度測定値PVに基づいて所定のPID演算を行い、その演算結果を、制御対象20の内部温度が温度制御プログラムパターンにしたがって変化するように制御対象20のヒータを駆動するための出力値として制御対象20に出力する。
【0024】
次セグメント移行判断部13には、制御対象20で測定された温度測定値PVも入力されている。次セグメント移行判断部13は、温度制御プログラムパターンの現在のセグメントn−1において、
a)目標値SPがセグメントの到達目標値に到達している
b)制御対象20の測定値PVがあらかじめ設定されている偏差(到達目標値からの上下限幅)内に入っている
の2点の条件を満たしているか否かを確認し、これらの条件に応じたON/OFFの接点信号を出力端子14に出力する。
【0025】
出力端子14は、3台のプログラム調節計No1〜No3に共通している信号線30を介して、入力端子15と接続されている。すなわち、3台のプログラム調節計No1〜No3の出力端子14と入力端子15は、図2に示すように共通の信号線30を介して並列に接続されている。
【0026】
入力端子15には、プログラムパターン生成部11に次セグメントへの移行の可否をON/OFFで指示する次セグメント移行スイッチ16が接続されている。
【0027】
次セグメント移行スイッチ16は、共通の信号線30から入力端子15に入力される接点信号のレベルがたとえばONの状態では次セグメントnへ移行しないで待機する命令を出力し、OFFになると次セグメントnへの移行を許可する命令を出力する。
【0028】
なお、次セグメント移行スイッチ16としては、たとえば機械的接点を有するリレーを用いる。そこで、次のセグメントに移行した後、接点信号がOFFからONに切り替わるのにあたっては、機械的な接点が安定化するのに十分な遅延時間(たとえば1秒)を付加している。
【0029】
図3は、このような次セグメント移行判断部13の動作を説明するタイミングチャートである。図3において、目標値SPがセグメントn−1の到達目標値に到達していても、制御対象20の測定値PVがあらかじめ設定されている1点鎖線で示す(±)の警報設定値と点線で示す(±)警報ヒステリシスよりなる所定の偏差内に入っていない場合には出力端子14に出力される接点信号はONの状態にあり、次セグメントnへ移行しないで待機する「待機中」になる。その後、制御対象20の測定値PVがあらかじめ設定された偏差内に入ると、出力端子14に出力される接点信号はOFFになり、温度制御プログラムパターンは次のセグメントnへ移行可能な状態になる。
【0030】
図4は、次セグメント移行判断部13の動作の流れを説明するフローチャートである。図4において、セグメントn−1の目標値SPがセグメントn−1の到達目標値に到達しているか否かを判断する(ステップS1)。セグメントn−1の目標値SPがセグメントn−1の到達目標値に到達していると、接点信号がONか否かを判断する(ステップS2)。接点信号がONでない、すなわちOFFの場合には次のセグメントnに移行し(ステップS3)、接点信号がONの場合にはセグメントn−1の到達目標値で停止して「待機中」になる(ステップS4)。
【0031】
図5は、図1および図2に示すように共通の信号線30を介して並列接続された3台のプログラム調節計No1〜No3の同期運転の動作について説明するタイミングチャートである。
【0032】
図5において、プログラム調節計No1のセグメントn−1の目標値SPは到達目標値となっているが、測定値PVが所定の偏差範囲内に到達していないので警報が発生して警報出力はONになり、接点信号レベルはONになっている。
【0033】
このとき、他のプログラム調節計No2,No3の目標値SPはいずれもセグメントn−1の到達目標値に到達し、測定値PVも所定の設定偏差内に入っていて、これらプログラム調節計No2,No3の警報出力はOFFになり、接点信号レベルはOFFになっている。
【0034】
この状態では、プログラム調節計No1の接点信号レベルがONになっているので、プログラム調節計No1〜No3の出力端子14と入力端子15を並列接続している信号線30の信号レベルはONになる。
【0035】
これらにより、各プログラム調節計No1〜No3の次セグメント移行判断部13は、信号線30の信号レベルがONであることを認識して次セグメントnへは移行せず、「待機状態」になる。
【0036】
その後、プログラム調節計No1の測定値PVが所定の偏差範囲内に到達して警報出力がOFFになると、各プログラム調節計No1〜No3すべての接点信号レベルはOFFになり、プログラム調節計No1〜No3の出力端子14と入力端子15を並列接続している信号線30の信号レベルもOFFになる。
【0037】
この結果、各プログラム調節計No1〜No3の次セグメント移行判断部13は、信号線30の信号レベルがOFFであることを認識し、プログラムパターン生成部11に次セグメントnへの移行を許可する命令を出力する。
【0038】
図6は次セグメント移行判断部13の全体の動作の流れを説明するフローチャートであり、図4のフローチャートにセグメント移行許可を出す動作の流れを付加したものであって、図4と共通するステップには同一のステップ番号を付けている。
【0039】
図6において、ステップS3でセグメントnへ移行した後、目標値SPがセグメントnの到達目標値に到達しているか否かを判断する(ステップS5)。セグメントnの目標値SPがセグメントnの到達目標値に到達していると、測定値PVが所定の偏差範囲内に入っているか否かを判断する(ステップS6)。測定値PVが所定の偏差範囲内に入っていれば、警報出力がOFFになるので接点信号レベルもOFFになり(ステップS7)、次のセグメントへの移行可能状態になる。
【0040】
ステップS5においてセグメントnの目標値SPがセグメントnの到達目標値に到達していなければ、接点信号がOFFか否かを判断する(ステップS8)。接点信号がOFFでなければ接点信号はONである(ステップS9)。
【0041】
ステップS8において接点信号がOFFであれば、OFF時間があらかじめ設定されている時間(本実施例では1秒)以上か否かを判断する(ステップS10)。1秒以上であればステップS9に遷移し、1秒以上でなければステップS7に遷移して次のセグメントへの移行可能状態になる。
【0042】
このように構成することにより、各プログラム調節計No1〜No3は、比較的安価な構成で、同時に次セグメントに移行することになり、プログラムパターンの進行についてセグメント単位で同期をとることができ、プログラムパターンの進行のばらつきを防止できる。
【0043】
また、並列運転されている各プログラム調節計No1〜No3間にはマスター/スレーブの関係はなく、各プログラム調節計No1〜No3はそれぞれが個別に次セグメントへの移行の可否を判断している。したがって、4台以上の多数のプログラム調節計を接続して並列運転する場合においても、セグメント単位での同期運転が実現できる。
【0044】
さらに、複数のプログラム調節計によるセグメント単位での同期運転が実現できることにより、ランプ点灯などによるセグメント単位でのイベント動作表示が1系統のみで行うことができ、システム構成の簡略化が図れる。
【0045】
なお、上記実施例では、3台のプログラム調節計No1〜No3を並列運転する例について説明したが、並列運転台数は2台であってもよいし4台以上であってもよい。
【0046】
また、上記実施例では、次セグメント移行判断部13および次セグメント移行スイッチ16が他のプログラム調節計の運転状態を監視する監視手段として機能する例について説明したが、監視手段はこれらに限るものではなく、これらと同等な動作をするものであればよい。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、複数台のプログラム調節計を並列運転するのにあたり、比較的安価な構成で、プログラムパターンの進行についてセグメント単位で同期をとることができ、プログラムパターンの進行のばらつきを防ぐことができるプログラム調節計を実現できる。
【符号の説明】
【0048】
11 プログラムパターン生成部
12 PID演算部
13 次セグメント移行判断部
14 出力端子
15 入力端子
16 次セグメント移行スイッチ
20 制御対象
30 共通信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントに分割された時間の経過に応じて目標設定値が変化するように作成された所定の制御プログラムパターンに基づき制御対象を制御するプログラム調節計において、
他のプログラム調節計の運転状態を監視する監視手段を設け、
いずれかのプログラム調節計がセグメントにおける目標設定値の変化に追従できない場合には次のセグメントへの移行を遅らせることを特徴とするプログラム調節計。
【請求項2】
前記監視手段は、
前記目標設定値が各セグメントの到達目標値に到達しかつその時点の測定値が所定の設定偏差内のときに次のセグメントへの移行を許可する信号を出力する移行許可信号出力手段と、他のプログラム調節計から出力される前記移行許可信号が入力される移行許可信号入力手段とで構成され、
これら出力移行許可信号と入力移行許可信号のレベルが一致することにより次のセグメントへの移行を実行することを特徴とする請求項1に記載のプログラム調節計。
【請求項3】
前記移行許可信号は接点信号であることを特徴とする請求項2に記載のプログラム調節計。
【請求項4】
前記接点信号のレベルは、所定の遅延時間後に変化することを特徴とする請求項3に記載のプログラム調節計。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−232923(P2011−232923A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101967(P2010−101967)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】