説明

プロジェクションナットの停止位置決め部材および供給装置

【課題】プロジェクションナットを安定した姿勢で一時係止し、保護板の耐久性を向上させることのできるプロジェクションナットの停止位置決め部材および供給装置の提供。
【解決手段】少なくとも2つの溶着用突起4を有するプロジェクションナット1を対象とするものであり、ナット1を吸引して所定の箇所に受け止める停止面28が形成され、この停止面28にナット1の横側面2Aに密着する受け面31が停止面28から浮上した状態で形成され、この受け面31はナット1の押出し方向に延びている停止位置決め部材9である。また、この部材9を組み付けた供給装置である。ナット1の横側面2Aが受け面31に面当たりで受止められるので、ナット1の一時係止が安定した状態で実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移送されてきたプロジェクションナットを受け止めるとともに、吸引手段で吸引してプロジェクションナットの停止位置を設定する停止位置決め部材と、このような停止位置決め部材を用いたプロジェクションナット供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
パーツフィーダ等から移送されてきたプロジェクションナットをストッパ面に当てて所定の位置に停止させ、その後、供給ロッドで電気抵抗溶接の電極に供給し、そこで相手方の鋼板部品にプロジェクション溶接をすることが一般的に知られている。その一例として特許第3985237号公報に記載されたプロジェクションナット供給装置がある。これは、図3(A)に示され、移送されるプロジェクションナットは、図2(A)、(B)に示されている。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。なお、図3(A)は本願発明の実施例であるが、この図を用いて本願発明の課題の説明を行っている。
【0003】
プロジェクションナットについて説明する。
【0004】
図2(A)、(B)に示したプロジェクションナット1は鉄製で、本体部2は真上から見ると正方形であり、その中央にねじ孔3が設けてある。本体部2の片側の四隅に溶着用突起4が形成されている。この溶着用突起4は図2(A)、(B)から明らかなように、ねじ孔3の軸線方向に突出しているとともに、ねじ孔3の直径方向にも本体部2から突き出ている。したがって、本体部2の横側面2Aから突出しており、この突出寸法は符号Lで示されている。換言すると、図3(A)におけるナット1の移動状態から明らかなように、本体部2すなわち横側面2Aからナット1の搬送方向に突き出た突起が形成されている。前記横側面2Aは、平面である。
【0005】
ナット1の各部の寸法は、本体部2の縦横寸法は13mm、ねじ孔3の中心線方向の高さ寸法は4.5mm、ねじ孔3の内径は6mm、突出寸法Lは0.5mmである。
【0006】
つぎに、プロジェクションナット供給装置について説明する。
【0007】
図3(A)に示したプロジェクションナット供給装置5は、所定の位置に一時係止されたナット1を供給ロッドで串刺しにして目的箇所へ供給する形式のものである。パーツフィーダ(図示していない)から送出されたナット1は、断面矩形の供給管6によって仮止室7に到達する。供給管6の端部に断面円形のガイド管8が溶接されて、供給管6とガイド管8は直交した位置関係とされ、ナット1の進出方向の端部に停止位置決め部材9が配置してある。つまり、ナット1の搬送方向の終端部に停止位置決め部材9が配置してある。そして、前述の突出寸法Lは、この搬送方向に向かって形成されている。このようにして供給管6とガイド管8と位置決め部材9によって形成された空間が、仮止室7とされている。仮止室7には、ナット1が送出される出口開口10が設けてある。
【0008】
前記ガイド管8内に、供給ロッド12が進退可能な状態で収容されている。この供給ロッド12は断面が円形であり、ガイド管8内を摺動する大径の摺動部13と、これよりも小径でナット1のねじ孔3を貫通するガイドロッド14によって構成されている。摺動部13とガイドロッド14の境界部に、ナット1の上面に密着する押出し面18が形成されている。ガイド管8にエアシリンダ11が取り付けられ、そのピストンロッドが供給ロッド12に結合されている。
【0009】
つぎに、停止位置決め部材について説明する。
【0010】
この停止位置決め部材9は、仮止室7の内壁面の一部を構成するもので、ガイド管8に溶接された押さえ金具15に固定ボルト16をねじ込んで固定されている。この固定は、ガイド管8の端部外周部に形成した平坦な受け面17に停止位置決め部材9が押し付けられることによってなされている。
【0011】
停止位置決め部材9は3層構造になっていて、厚い鋼板で形成された主部材19に円形の貫通孔をあけ、そこに円形の磁石(永久磁石)20をはめ込み、仮止室7側に保護板21が貼り付けられ、その反対側に背板22が貼り付けられている。つまり、主部材19の厚さと磁石20の厚さが同じに設定され、その両側に保護板21と背板22が部分溶接により貼り付けてある。そして、保護板21の表面がナット1の停止面28とされている。この停止面28は、平面である。
【0012】
仮止室7に入ってきたナット1は、矢線26で示す方向に作用する磁石20の吸引力によって勢いよく保護板21に受け止められ、そのねじ孔3とガイドロッド14がほぼ同軸になった状態で停止する。このように、ナット1が保護板21に受け止められるときに、溶着用突起4の突出寸法Lの部分が高速で保護板21に衝突する。
【0013】
一方、ナット1が供給される箇所は電気抵抗溶接の電極である。固定電極23上に鋼板部品24が載置され、この鋼板部品24を貫通して突き出ているガイドピン25に、2点鎖線図示のようにナット1が供給される。この供給動作は、供給ロッド12の進出によってガイドロッド14がねじ孔3を貫通し、押出し面18でナット1を押し出してガイドロッド14の先端部がガイドピン25の直近で停止すると、ナット1はガイドロッド14を滑動してガイドピン25に合致する。その後、供給ロッド12が後退し可動電極36が進出して、ナット1が鋼板部品24に溶接される。
【0014】
そして、供給ロッド12が進出している間は、2番目のナット1は摺動部13によって移動が禁止されているが、供給ロッド12が図3(A)に示す位置まで戻ると、2番目のナット1が磁石20に吸引されて勢いよく保護板21に衝突し、位置決めがなされて次の供給ロッド12の進出に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3985237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のような先行技術であると、図3(B)および(C)に示す問題がある。
【0017】
図3(B)に示されている問題は、突出寸法Lが存在するために、磁石20によって吸引されたナット1が傾いた状態で停止面28に一時係止され、このような傾きのために、供給ロッド12の軸線X−Xとねじ孔3の軸線Y−Yが交差することである。通常はこのような軸線Y−Yの傾きが発生してもガイドロッド14がねじ孔3内を貫通できる余裕寸法が、ガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等を選定することによって付与されているので、ガイドロッド14の先端部でナット1が弾き飛ばされるような現象は発生しない。
【0018】
しかし、上記のガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等の選定に狂いが発生すると、ねじ孔3の開口縁にガイドロッド14の先端部が衝突して、ガイドロッド14がねじ孔3を貫通することなく、ナット1が弾き飛ばされる。したがって、ガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等の寸法設定を、著しく高精度のもとで製作する必要があり、生産性の面で好ましくない。同時に、停止面28に摩耗等の経時変化が発生してくると、同様な問題が発生する。
【0019】
一方、図3(C)に示されている問題は、溶着用突起4が停止面28の一箇所に集中して当たるため、その箇所が摩耗して窪み29ができ、その深さが突出寸法Lに達すると、供給ロッド12の軸線X−Xとねじ孔3の軸線Y−Yは平行ではあるが、距離L1のオフセットが生じることである。なお、窪み29が形成された状態が図3(D)に図示してある。このようにオフセットL1が形成されると、軸線Y−Yが軸線X−Xからずれるのである。通常はこのようなオフセットが発生してもガイドロッド14がねじ孔3内を貫通できる余裕寸法が、ガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等を選定することによって付与されているので、ガイドロッド14の先端部でナット1が弾き飛ばされるような現象は発生しない。
【0020】
しかし、上記のガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等の選定に狂いが発生すると、ねじ孔3の開口縁にガイドロッド14の先端部が衝突して、ガイドロッド14がねじ孔3を貫通することなく、ナット1が弾き飛ばされる。したがって、ガイドロッド14の太さや軸線X−Xと停止面28の間隔等の寸法設定を、著しく高精度のもとで製作する必要があり、生産性の面で好ましくない。同時に、このような窪み29が形成されると、早期の内に停止位置決め部材9の交換が必要となり、不経済である。
【0021】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、プロジェクションナットを安定した姿勢で一時係止し、保護板の耐久性を向上させることのできるプロジェクションナットの停止位置決め部材および供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1記載の発明は、停止位置決め部材の発明であり、移送されてきた少なくとも2つの溶着用突起を有するプロジェクションナットを停止位置決めの対象とするものであり、プロジェクションナットを吸引して所定の箇所に受け止める停止面が形成され、この停止面に移送されてきたプロジェクションナットの横側面に密着する受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びていることを特徴とするプロジェクションナットの停止位置決め部材である。
【発明の効果】
【0023】
移送されてきたプロジェクションナットの横側面が前記受け面に密着した状態で受止められるので、横側面と受け面との平面同士の面当たり状態となる。したがって、ナットは安定した正しい姿勢で受け止められ、供給ロッド等の押出し手段との相対位置が正確に維持でき、ナットが不用意に弾き飛ばされることがない。横側面と受け面との平面同士の面当たり状態であるから、単位面積当たりの面圧が小さくなり、受け面の摩耗等の経時的変形が最小化される。また、ナットの横側面が受け面により面当たり状態で受止められるので、ナットが弾性的に弾む(バウンド)ことが実質的に実害のないわずかなレベルとなり、ナットの停止位置が正確に設定される。さらに、前述の窪みのような局部的な摩耗や変形が発生することがなく、停止位置決め部材の耐久性が向上する。受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びているから、ナットを押し出すときに受け面がガイド機能を果たして、安定したナット送出が実現する。
【0024】
請求項2記載の発明は、前記受け面の幅寸法は、溶着用突起の間隔寸法よりも小さく設定されている請求項1記載のプロジェクションナットの停止位置決め部材である。
【0025】
したがって、溶着用突起は受け面の両側に受け面を跨いだ状態になるので、上述のような作用効果が確保できる。
【0026】
請求項3記載の発明は、前記受け面の浮上高さは、プロジェクションナットの横側面からプロジェクションナットの移送方向に溶着用突起が突出している寸法とほぼ同じかまたはそれよりも高く設定されている請求項1または請求項2記載のプロジェクションナットの停止位置決め部材である。
【0027】
前記浮上高さと溶着用突起が突出している寸法との大小関係が、上述のように設定されているので、溶着用突起先端部が停止面に摺動するか、あるいは停止面との間にわずかな空隙をあけた状態でナット送出がなされ、前述のナット受け止めや円滑な送出が確実になされる。
【0028】
請求項4記載の発明は、供給装置の発明であり、移送されてきた少なくとも2つの溶着用突起を有するプロジェクションナットを仮止室の内面の一部を形成する停止位置決め部材で一時係止し、このプロジェクションナットを進退式の供給ロッドで押し出して目的箇所へ供給する形式のものであり、前記停止位置決め部材にプロジェクションナットを吸引して所定の箇所に受け止める停止面が形成され、この停止面に移送されてきたプロジェクションナットの横側面に密着する受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置である。
【0029】
移送されてきたプロジェクションナットの横側面が前記受け面に密着した状態で受止められるので、横側面と受け面との平面同士の面当たり状態となる。したがって、ナットは安定した正しい姿勢で受け止められ、供給ロッドとの相対位置が正確に維持でき、ナットが不用意に弾き飛ばされることがない。横側面と受け面との平面同士の面当たり状態であるから、単位面積当たりの面圧が小さくなり、受け面の摩耗等の経時的変形が最小化される。また、ナットの横側面が受け面により面当たり状態で受止められるので、ナットが弾性的に弾む(バウンド)ことが実質的に実害のないわずかなレベルとなり、ナットの停止位置が正確に設定される。さらに、前述の窪みのような局部的な摩耗や変形が発生することがなく、停止位置決め部材の耐久性が向上し、ひいては耐久性の優れた供給装置がえられる。受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びているから、供給ロッドの進出によりナットを押し出すときに受け面がガイド機能を果たして、安定したナット供給が実現する。
【0030】
前記請求項2および請求項3の発明による停止位置決め部材の作用効果は、プロジェクションナットの供給装置における作用効果として掲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】停止位置決め部材の平面図や断面図である。
【図2】プロジェクションナットの斜視図と側面図である。
【図3】供給装置の断面図と部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
つぎに、本発明のプロジェクションナットの停止位置決め部材および供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0033】
図1、図2および図3(A)は、実施例1を示す。
【0034】
図3(A)に関する説明は、先に記載した内容と同じなので、省略する。また、この実施例で対象とされる鉄製のプロジェクションナット1は、図2に記載したものと同じである。よって、図2に関する説明も省略してある。
【0035】
図1に記載した各部の構成で先に記載したものと同じ部材については、先のものと同じ符号を記載して詳細な説明は省略してある。
【0036】
主部材19、保護板21および背板22の一体化は、符号32で示された部分溶接によってなされている。
【0037】
受け面について説明する。
【0038】
前記停止面28の中央部に、細長い受け部材30がナット1の押出し方向に延びた状態で形成されている。この受け部材30の頂面が平面とされた受け面31であり、停止面28から浮上した状態で形成されている。この浮上高さHは、前記突出寸法Lと同じかまたは浮上高さHの方が大きく設定されている。そして、受け面31と停止面28は、平行な位置関係になっている。受け部材30が上述のような形状であるから、受け面31もナット1の押出し方向に延びている。
【0039】
突出寸法Lは、前述のように0.5mmであり、浮上高さHは0.6mmである。
【0040】
前記受け部材30は、保護板21に切削加工を施して形成してもよく、あるいは短冊状の板材を接着や部分溶接で保護板21の表面に固定してもよい。
【0041】
図1(A)、(B)から明らかなように、前記受け面31の幅寸法は、溶着用突起の間隔寸法よりも小さく設定されている。
【0042】
供給装置5としては、上記のような形状の停止位置決め部材9が組み付けられたものであり、受け面31は供給ロッド12の進退方向と同じ方向に延びた状態とされている。
【0043】
つぎに、ナットが吸着される動作について説明する。
【0044】
供給ロッド12が後退位置にあるとき、前記供給管6を移動してきたナット1は磁石20によって仮止室7内へ吸引され、ナット1の横側面2Aが受け面31に密着した状態で受止められる。このときには溶着用突起4が受け面31(受け部材30)を跨いだ状態になり、横側面2Aが受け面31に密着する。それから供給ロッド12が進出して、ナット1は横側面2Aが受け面31を摺動した後、ガイドピン25に供給される。
【0045】
つぎに、他の変形例について説明する。
【0046】
図1(C)に2点鎖線で示したように、受け部材31を停止位置決め部材9の全長にわたって形成することも可能である。このようにすると、停止位置決め部材9の上下方向の方向性が自由になるので、誤組み付けの防止になり、しかも受け部材31が摩耗してきたら反転して再使用することができる、という効果がある。
【0047】
前述の吸引手段は永久磁石20であるが、これに換えて図1(D)に示すように、バキュームを利用することも可能である。ここでは保護板21の板厚を大きくし、保護板21自体が停止位置決め部材9を形成するようにしている。そこにあけられた吸気通路33が受け面31に開口しており、この吸気通路33は空気ホース34を経てバキュームポンプ(図示していない)に接続してある。それ以外の構成は、図示されていない部分も含めて先の例と同じであり、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0048】
仮止室7に接近してきたナット1は、吸気通路33からの吸気で形成される低圧によって受け面31に吸引され、横側面2Aが受け面31に密着すると、ナット1に対する吸引力が強化され、ナット1の一時係止がなされる。それ以外の作用効果は、先の例と同じである。
【0049】
なお、上記エアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0050】
図示のような四角いプロジェクションナットは、溶着用突起が四隅に4個配置されているのが通常であるが、相手方の鋼板部品の形状等の事情により2つの溶着用突起でナット溶接がなされることもある。したがって、本願発明における溶着用突起の個数は、少なくとも2個と表現してある。
【0051】
前記浮上高さHは、突出寸法Lと同じかまたはそれよりも大きく設定されているが、これが逆になって浮上高さHの方がわずかに突出寸法Lよりも小さくなっても、前述の軸線X−XとY−Yの交差やオフセットL1は微小なものであるから、実用上は問題にならない。
【0052】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0053】
移送されてきたプロジェクションナット1の横側面2Aが前記受け面31に密着した状態で受止められるので、横側面2Aと受け面31との平面同士の面当たり状態となる。したがって、ナット1は安定した正しい姿勢で受け止められ、供給ロッド12との相対位置が正確に維持でき、図3(B)や(C)に示すような状態になってナット1が不用意に弾き飛ばされることがない。横側面2Aと受け面31との平面同士の面当たり状態であるから、単位面積当たりの面圧が小さくなり、受け面31の摩耗等の経時的変形が最小化される。また、ナット1の横側面2Aが受け面31により面当たり状態で受止められるので、ナット1が弾性的に弾む(バウンド)ことが実質的に実害のないわずかなレベルとなり、ナット1の停止位置が正確に設定される。さらに、前述の窪み29のような局部的な摩耗や変形が発生することがなく、停止位置決め部材9の耐久性が向上する。受け面31が前記停止面28から浮上した状態で形成され、この受け面31はナット1の押出し方向に延びているから、ナット1を押し出すときに受け面31がガイド機能を果たして、安定したナット送出が実現する。
【0054】
前記受け面31の幅寸法は、溶着用突起4の間隔寸法よりも小さく設定されている。
【0055】
したがって、溶着用突起4は受け面31の両側に受け面31を跨いだ状態になるので、上述のような作用効果が確保できる。
【0056】
前記受け面31の浮上高さHは、ナット1の横側面2Aからナット1の移送方向に溶着用突起4が突出している突出寸法Lとほぼ同じかまたはそれよりも高く設定されている。
【0057】
前記浮上高さHと溶着用突起4が突出している寸法Lとの大小関係が、上述のように設定されているので、溶着用突起先端部が停止面28に摺動するか、あるいは停止面28との間にわずかな空隙をあけた状態でナット送出がなされ、前述の平面密着によるナット受け止めや、摺動抵抗が最小化された円滑な送出が確実になされる。
【0058】
供給装置としては、移送されてきた少なくとも2つの溶着用突起4を有するナット1を仮止室7の内面の一部を形成する停止位置決め部材9で一時係止し、このナット1を進退式の供給ロッド12で押し出して目的箇所へ供給する形式のものであり、前記停止位置決め部材9にナット1を吸引して所定の箇所に受け止める停止面28が形成され、この停止面28に移送されてきたナット1の横側面2Aに密着する受け面31が前記停止面28から浮上した状態で形成され、この受け面31はナット1の押出し方向に延びているものである。
【0059】
移送されてきたナット1の横側面2Aが前記受け面31に密着した状態で受止められるので、横側面2Aと受け面31との平面同士の面当たり状態となる。したがって、ナット1は安定した正しい姿勢で受け止められ、供給ロッド12との相対位置が正確に維持でき、図3(B)や(C)に示したように、ナット1が不用意に弾き飛ばされることがない。横側面2Aと受け面31との平面同士の面当たり状態であるから、単位面積当たりの面圧が小さくなり、受け面31の摩耗等の経時的変形が最小化される。また、ナット1の横側面2Aが受け面31により面当たり状態で受止められるので、ナット1が弾性的に弾む(バウンド)ことが実質的に実害のないわずかなレベルとなり、ナット1の停止位置が正確に設定される。さらに、前述の窪み29のような局部的な摩耗や変形が発生することがなく、停止位置決め部材9の耐久性が向上し、ひいては耐久性の優れた供給装置5がえられる。受け面31が前記停止面28から浮上した状態で形成され、この受け面31はナットの押出し方向に延びているから、供給ロッド12の進出によりナット1を押し出すときに受け面31がガイド機能を果たして、安定したナット供給が実現する。
【0060】
前記請求項2および請求項3の発明による停止位置決め部材の作用効果は、プロジェクションナットの供給装置における作用効果として掲げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上述のように、本発明によれば、プロジェクションナットを安定した姿勢で一時係止し、保護板の耐久性を向上させることのできるプロジェクションナットの停止位置決め部材および供給装置であるから、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 プロジェクションナット
2 本体部
2A 横側面
3 ねじ孔
4 溶着用突起
5 プロジェクションナット供給装置
9 停止位置決め部材
12 供給ロッド
14 ガイドロッド
18 押出し面
19 主部材
20 磁石(永久磁石)
21 保護板
22 背板
25 ガイドピン
26 矢線
28 停止面
30 受け部材
31 受け面
L 突出寸法
L1 オフセット寸法
H 浮上高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送されてきた少なくとも2つの溶着用突起を有するプロジェクションナットを停止位置決めの対象とするものであり、プロジェクションナットを吸引して所定の箇所に受け止める停止面が形成され、この停止面に移送されてきたプロジェクションナットの横側面に密着する受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びていることを特徴とするプロジェクションナットの停止位置決め部材。
【請求項2】
前記受け面の幅寸法は、溶着用突起の間隔寸法よりも小さく設定されている請求項1記載のプロジェクションナットの停止位置決め部材。
【請求項3】
前記受け面の浮上高さは、プロジェクションナットの横側面からプロジェクションナットの移送方向に溶着用突起が突出している寸法とほぼ同じかまたはそれよりも高く設定されている請求項1または請求項2記載のプロジェクションナットの停止位置決め部材。
【請求項4】
移送されてきた少なくとも2つの溶着用突起を有するプロジェクションナットを仮止室の内面の一部を形成する停止位置決め部材で一時係止し、このプロジェクションナットを進退式の供給ロッドで押し出して目的箇所へ供給する形式のものであり、前記停止位置決め部材にプロジェクションナットを吸引して所定の箇所に受け止める停止面が形成され、この停止面に移送されてきたプロジェクションナットの横側面に密着する受け面が前記停止面から浮上した状態で形成され、この受け面はプロジェクションナットの押出し方向に延びていることを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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