説明

プロジェクタの照明光学系

【課題】照明効率の高いプロジェクタの照明光学系を提供する。
【解決手段】液晶パネル108a〜108cを有するプロジェクタの照明光学系であって、光源100からの光束の進行方向にインテグレータ101a、101b、偏光変換素子102、フィールドレンズ103、折り返しミラー111が順次配置され、折り返しミラー111で反射された光束の進行方向にコンデンサレンズ106、ダイクロイックミラー104a、104bが順次配置されている。ダイクロイックミラー104aで反射されたB光の進行方向にミラー105が配置されている。フィールドレンズ103およびコンデンサレンズ106により、インテグレータ101b上に形成される光源100の矩形像が表示パネル108a、108b上に拡大して結像される。コンデンサレンズ106は、フィールドレンズ103の主光線を平行光線に戻すように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタに代表されるプロジェクタの照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタの照明光学系として、光源からの光束の光強度を均一化するインテグレータを備えるものが知られている(特許文献1、2参照)。この照明光学系の光学要素の配置は様々であるが、光学要素の代表的な配置として、光学要素をL字、U字、S字といった形状に配置したものが知られている。図11、図12、図13に、L字配置、U字配置、S字配置の例をそれぞれ示す。
【0003】
図11に示す照明光学系は、RGBの各色光で液晶パネル108a〜108cをそれぞれ照明する3板式の液晶プロジェクタの照明光学系であって、光源100、インテグレータ101a、101b、偏光変換素子102、フィールドレンズ103、ダイクロイックミラー104a、104b、ミラー105a〜105c、コンデンサレンズ106a〜106cおよびリレーレンズ107a、107bを有する。
【0004】
光源100は、超高圧水銀灯などに代表されるランプおよびリフレクタを備え、ランプからの光が直接またはリフレクタで反射されて略平行光束として出射される。光源100から出射された光束の進行方向にインテグレータ101a、101b、偏光変換素子102、フィールドレンズ103およびダイクロイックミラー104aが順次配置されている。インテグレータ101a、101bは、光源100からの光束の光強度を均一化するものであって、マトリクス状に配置された複数のレンズセルを備える。偏光変換素子102は、インテグレータ101a、101bからの光束の偏光方向を揃えるものであって、偏光ビームスプリッタや位相板などより構成される。ダイクロイックミラー104aは、フィールドレンズ103からの光束のB(青)光を反射し、残りのR(赤)光およびG(緑)光を透過する。
【0005】
ダイクロイックミラー104aで反射されたB光の進行方向にミラー105aが配置され、このミラー105aで反射された光(B光)の進行方向にコンデンサレンズ106aおよび液晶パネル108aが順次配置されている。
【0006】
ダイクロイックミラー104aを透過したR・G光の進行方向にダイクロイックミラー104bが配置されている。ダイクロイックミラー104bは、G光を反射し、R光を透過する。ダイクロイックミラー104bで反射された光(G光)の進行方向にコンデンサレンズ106bおよび液晶パネル108bが順次配置されている。ダイクロイックミラー104bを透過した光(R光)の進行方向にリレーレンズ107aおよびミラー105bが順次配置され、このミラー105bで反射された光の進行方向にリレーレンズ107bおよびミラー105cが順次配置され、このミラー105cで反射された光の進行方向にコンデンサレンズ106cおよび液晶パネル108cが順次配置されている。
【0007】
上記の照明光学系では、光源100から出射された光束は、インテグレータ101a、101bによってその光強度が均一化され、偏光変換素子102によって偏光方向が揃えられた後、フィールドレンズ103に入射する。フィールドレンズ103を通過した光束は、ダイクロイックミラー104a、104bによってR・G・Bの各色光に分離される。そして、R光により液晶パネル108cが、G光により液晶パネル108bが、B光により液晶パネル108aがそれぞれ照明される。
【0008】
液晶パネル108a〜108cで生成されたR・G・B画像光は、クロスダイクロイックプリズム109によって色合成された後、投写レンズ110によってスクリーン上に投写される。
【0009】
図12に示すU字配置の照明光学系も、3板式の液晶プロジェクタの照明光学系であるが、フィールドレンズ103とダイクロイックミラー104aの間に折り返しミラー111が配置されている点が、図11に示す光学系と異なる。フィールドレンズ103からの光束が折り返しミラー111で略90度反射されてダイクロイックミラー104aに入射するようになっており、各光学要素はU字状に配置されている。
【0010】
図13に示すS字配置の照明光学系も、3板式の液晶プロジェクタのものであるが、図12に示す光学系と比較すると、ダイクロイックミラー104a、104b、ミラー105a〜105c、コンデンサレンズ106a〜106cおよびリレーレンズ107a、107bの部分が左右逆の配置になっている。この光学系では、ダイクロイックミラー104aが折り返しミラー111からの光束のR・G光を反射し、残りのB光を透過する。ダイクロイックミラー104aを透過したB光の進行方向にミラー105aが配置され、このミラー105aで反射されたB光がコンデンサレンズ106aを介して液晶パネル108aに照射される。ダイクロイックミラー104bは、R・G光の進行方向に配置されており、G光を反射し、R光を透過する。ダイクロイックミラー104bで反射されたG光は、コンデンサレンズ106bを介して液晶パネル108bに照射される。ダイクロイックミラー104bを透過したR光は、リレーレンズ107a、ミラー105b、リレーレンズ107b、ミラー105c、コンデンサレンズ106cを順次通過して液晶パネル108cに照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−228440号公報
【特許文献2】特開2004−045907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
偏光変換素子は、インテグレータの各レンズセル光軸上近傍に投影される光源のアーク像の間隔に対応して設けられた複数の偏光変換部を有し、各偏光変換部にて、レンズセルからの光束の偏光方向が揃えるようになっている。このような偏光変換素子では、入射する光のうち、各偏光変換部の有効開口(偏光変換が可能な範囲を規定した開口)から外れた光は、偏光変換に寄与しないため、その分だけ、偏光変換効率が低下することになる。
【0013】
光源側に配置された第1のインテグレータの各レンズセルを通過した光束を液晶パネル面上に重畳させる照明光学系において、偏光変換効率の向上を図るためには、第2のインテグレータ上に形成される光源のアーク像の大きさを可能な限り小さくして、偏光変換素子の有効開口から外れる光の量を低減する必要がある。しかし、上述したL字配置、U字配置、S字配置の各照明光学系においては、フィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離が長いため、必然的に第1のインテグレータの焦点距離が長くなる。このため、光源のアークの大きさと第2のインテグレータ上に結像するアーク像の大きさの比(倍率)が大きくなって、第2のインテグレータ上に結像するアーク像が大きくなってしまう。特に、フィールドレンズとコンデンサレンズの間に折り返しミラーを含むU字配置やS字配置の照明光学系では、どうしてもフィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離がL字配置のものより長くなるため、偏光変換効率が悪いものになってしまう。
【0014】
なお、フィールドレンズとコンデンサレンズの間に新たなレンズを挿入することで、フィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離を短くし、第2のインテグレータ上に形成されるアーク像を小さくすることが可能である。しかし、この場合は、新たなレンズを追加する分だけ、透過率が低下し、コストも高くなる。
【0015】
本発明の目的は、上記問題を解決し、照明効率の高いプロジェクタの照明光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の照明光学系は、
光源と、複数の表示パネルを有するプロジェクタの照明光学系であって、
前記光源から出射された光束を複数の部分光束に分割するとともに、該複数の部分光束をそれぞれ集光させる複数のレンズセルを備えた第1のインテグレータと、
前記複数の部分光束が入射する複数のレンズセルを備えた第2のインテグレータと、
前記第2のインテグレータの各レンズセルを通過した光束の偏光方向を揃える偏光変換素子と、
前記偏光変換素子からの光束の、第1の色光を反射し、該第1の色光とは波長領域の異なる第2および第3の色光を透過する第1のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーを透過した光束の、前記第2の色光を反射し、前記第3の色光を透過する第2のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーで反射された前記第1の色光を反射する反射ミラーと、
前記偏光変換素子と前記第1のダイクロイックミラーの間に配置されたフィールドレンズと、
前記第1のダイクロイックミラーと前記反射ミラーの間に配置された第1のコンデンサレンズと、
前記第1および第2のダイクロイックミラーの間に配置された第2のコンデンサレンズと、を備え、
前記フィールドレンズは、前記第1のインテグレータの各レンズセルを通過した光束を前記複数の表示パネル上に重畳させるように構成されており、
前記第1のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの第1の間隔は、前記第1のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの合成焦点距離と等しく、
前記第2のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの第2の間隔は、前記第2のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの合成焦点距離と等しい、ことを特徴とする。
【0017】
上述した本発明の照明光学系は、フィールドレンズとコンデンサレンズとによって、第1のインテグレータの各レンズセルを通過した光束を複数の表示パネルに略平行に入射させ、かつ、複数の表示パネル上に重畳させるようになっている。この構成の場合、フィールドレンズおよびコンデンサレンズの間隔(各レンズ中心を通る光線上における間隔)は、そのフィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離に等しくなる。本発明の照明光学系は、図11〜図13に示した従来の照明光学系に比べて、フィールドレンズおよびコンデンサレンズとして合成焦点距離が短いものを使用することによりこれらの間隔を短くすることができる。フィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離を短くすることで、第1のインテグレータの焦点距離の短い光学系を実現することが可能であることから、本発明の照明光学系は、従来の照明光学系に比べて、フィールドレンズおよびコンデンサレンズの合成焦点距離が短い分、第2のインテグレータ上に形成する光源のアーク像を小さくすることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の照明光学系に比べて、第1のインテグレータの各レンズセルによって第2のインテグレータ上に形成される光源のアーク像を小さくすることができ、偏光変換素子の各偏光変換部の有効開口から外れる光の量を低減することができるので、照明効率が向上する、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態である液晶プロジェクタの照明光学系の構成を示す模式図である。
【図2】本発明のプロジェクタの照明光学系の光学要素配置の原理説明図である。
【図3】インテグレータによるアーク像の形成を説明するための図である。
【図4】フィールドレンズとコンデンサレンズの間隔と、フィールドレンズとコンデンサレンズの合成焦点距離との関係を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態である液晶プロジェクタの照明光学系の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施例である照明光学系の設計データを示す図である。
【図7】比較例である照明光学系の設計データを示す図である。
【図8】図6に示す設計データに基づく照明光学系におけるインテグレータ上に形成されるアーク像を示す模式図である。
【図9】図7に示す設計データに基づく照明光学系におけるインテグレータ上に形成されるアーク像を示す模式図である。
【図10】実施例の照明光学系と従来例の照明光学系の照明効率の差を示した図である。
【図11】従来のL字配置の照明光学系の構成を示す模式図である。
【図12】従来のU字配置の照明光学系の構成を示す模式図である。
【図13】従来のS字配置の照明光学系の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
まず、本発明の原理について説明する。図2は、本発明のプロジェクタの照明光学系の光学要素配置を説明するための図である。
【0022】
図2を参照すると、本発明のプロジェクタの照明光学系は、液晶パネルLCDを照明する光学系であって、光源側からインテグレータIT1、IT2、偏光変換素子PBS、フィールドレンズFL、コンデンサレンズCLが順次配置されており、インテグレータIT1によってインテグレータIT2上に形成された光源のアーク像(矩形像)を、フィールドレンズFLおよびコンデンサレンズCLにより拡大させながら液晶パネルLCD上に結像するように構成されている。インテグレータIT1と液晶パネルLCDの間には、以下の式1、2のような結像倍率関係が成り立つ。
【0023】
【数1】

【0024】
【数2】

【0025】
ここで、MはIT1とLCDの横倍率、lIT1はIT1を構成するレンズセルの大きさ(外径)、lLCDはLCDの長辺の長さ、fIT1はIT1のレンズセルの焦点距離、fFLCLはFL・CL合成焦点距離である。式2から、図12に示したU字配置や図13に示したS字配置のように、FL・CL合成焦点距離fFLCLが比較的長い光学系の場合は、IT1の焦点距離fIT1も比較的に長くなることがわかる。
【0026】
図3は、アーク像の形成を説明するための図である。インテグレータIT1によってインテグレータIT2上に光源のアーク像が形成される。このIT2上に形成されたアーク像の大きさは、以下の式3で与えられる。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、larcはIT2上に形成するアーク像の有効口径、lLAMPは光源アークの有効口径、NAは光源の開口数、NA'はIT1の開口数である。IT1の開口数NA'は、以下の式4で表すことができる。
【0029】
【数4】

【0030】
ここで、θiはIT1の集光角である。
【0031】
式3に式4を代入すると、
【0032】
【数5】

【0033】
を得る。
【0034】
また、IT1の集光角θiは、以下の式6で表すことができる。
【0035】
【数6】

【0036】
式5に式6を代入すると、
【0037】
【数7】

【0038】
を得る。さらに、式7に式1および式2を代入すると、
【0039】
【数8】

【0040】
を得る。この式8から、U字配置やS字配置のようなFL・CL合成焦点距離fFLCLが比較的に長い光学系の場合は、アーク像larcが大きくなることがわかる。
【0041】
図4は、FLとCLの間隔と、FL・CL合成焦点距離fFLCLとの関係を説明するための図である。FL・CL合成焦点距離fFLCLは、以下の式9により与えられる。
【0042】
【数9】

【0043】
ここで、fFLはフィールドレンズの焦点距離、fCLはコンデンサレンズの焦点距離、dはFLとCLの間隔(レンズ中心間の距離)である。
【0044】
CLがFLの主光線を平行光にするように構成した光学系において、FL−CL間隔dは、以下の式で表すことができる。
【0045】
【数10】

【0046】
式10を式9に代入すると、
【0047】
【数11】

【0048】
を得る。式11から、FL−CL間隔dとFL・CL合成焦点距離fFLCLは等しい関係にあるので、FL−CL間隔dを短くすることにより、IT2上に形成されるアーク像larcを小さくすることができることが分かる。この知見によれば、U字配置やS字配置といったFL・CL合成焦点距離fFLCLが比較的に長い光学系においても、CLがFLの主光線を略平行光にするように構成されていれば、FL−CL間隔dを短くすることで、FL・CL合成焦点距離fFLCLをより短いものとし、アーク像larcを小さくすることができる。アーク像larcを小さくすることで、偏光変換効率が向上し、照明効率が向上する。
【0049】
なお、FL−CL間隔dを短くした場合は、FL・CL合成焦点距離fFLCLとFLおよびCLの主点位置が変化するため、焦点位置が移動してLCD上にフォーカスが合わなくなってしまう。そこで、FL−CL間隔dを変化させた場合は、FLの焦点距離fFLとCLの焦点距離fCLも同時に調整してLCD上にフォーカスを合わせる必要がある。
【0050】
FL−CL間隔dを変化させた場合におけるFLの焦点距離fFLとCLの焦点距離fCLは、以下のようにして求めることができる。
【0051】
変化後のFLとCLの間隔をLとした場合、間隔Lは以下の式12で与えられる。
【0052】
【数12】

【0053】
式11を式12に代入すると、
【0054】
【数13】

【0055】
を得る。したがって、FLとCLの間隔をΔdだけ短くした場合は、
【0056】
【数14】

【0057】
【数15】

【0058】
の関係式を満たすよう、FLの焦点距離fFLとCLの焦点距離fCLを定める。
【0059】
また、偏光変換素子PBSでは、入射する光のうち、各偏光変換部の有効開口から外れた光は、偏光変換に寄与しない。偏光変換効率を向上するためには、インテグレータIT1の各レンズセルによってインテグレータIT2上に形成される光源のアーク像(矩形像)の大きさが、偏光変換素子の各偏光変換部の有効開口の範囲内に収まるように、FL−CL間隔dを設定することが望ましい。以下に、FL−CL間隔dの望ましい範囲を説明する。
【0060】
偏光変換素子PBSの開口ピッチ(偏光変換部の有効開口に同じ)をlPBSとした場合、
【0061】
【数16】

【0062】
が成り立てば、計算上、インテグレータIT2上に形成される光源のアーク像(矩形像)の大きさは、偏光変換素子の各偏光変換部の有効開口の範囲内に収まることになり、偏光変換効率のロスをなくすことができる。
【0063】
ここで、式16に式8を代入すると、
【0064】
【数17】

【0065】
を得る。FL−CL間隔dが式17の条件を満たすように光学系を設計すれば、インテグレータIT2上に結像するアーク像の大きさが、偏光変換素子PBSの有効開口の大きさ以下になるので、偏光変換効率のロスを低減することができる。なお、FL−CL間隔dの下限は、設計に応じて適宜設定することが可能である。
【0066】
本発明では、以上説明した原理を利用し、U字配置やS字配置などの光学系において、CLがFLの主光線を平行光にするように構成した場合は、FL−CL間隔dとFL・CL合成焦点距離fFLCLは等しい関係にある、という知見に基づき、FL−CL間隔dを短くすることで、FL・CL合成焦点距離fFLCLのより短い光学系を実現する。こうして実現された光学系によれば、IT2上に形成されるアーク像larcを小さくすることができるため、照明効率を向上させることができる。
【0067】
また、FL−CL間隔dが式17の条件を満たすように照明光学系を設計する。これにより、より偏光変換効率の高い照明光学系を実現することができる。
【0068】
以下に、本発明の実施の形態として、上述した原理を適用し、FL−CL間隔dを短くしてIT2上に形成されるアーク像larcを小さくしたU字配置の光学系を挙げる。
【0069】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態である液晶プロジェクタの照明光学系の構成を示す。図1を参照すると、本実施形態の照明光学系は、図12に示した光学系において、コンデンサレンズ106a、106bを削除し、ダイクロイックミラー104aと折り返しミラー111との間にコンデンサレンズ106を配置したものであって、インテグレータ101aによって分割された光源100からの光束を、フィールドレンズ103により液晶パネル108a、108b上に重畳かつ照射するように構成されている。また、光源100のアーク像は、インテグレータ101aによってインテグレータ101b上およびその近傍に形成される。
【0070】
コンデンサレンズ106は、偏光変換素子102と折り返しミラー111の間に配置されたフィールドレンズ103を通過した光束の主光線を互いに略平行にするように構成されており、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の間隔は、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の合成焦点距離と等しい関係にある。したがって、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の間隔を小さくすることで、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の合成焦点距離が短い光学系を提供することができる。
【0071】
本実施形態の照明光学系では、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の間隔は、図12に示したU字配置の光学系におけるフィールドレンズ103とコンデンサレンズ106a(またはコンデンサレンズ106b)の間隔よりも小さくなっているので、フィールドレンズとコンデンサレンズの合成焦点距離は図12に示した光学系よりも小さくなる。よって、図12に示した光学系に比べて、インテグレータ101b上およびその近傍に形成されるアーク像を小さくすることができ、その分、偏光変換素子102におけるケラレの量が低減されて、偏光変換効率が向上する。
【0072】
また、本実施形態の照明光学系では、図12に示した光学系に比べて、コンデンサレンズの数が少ない分、コストを下げることができる。
【0073】
なお、リレーレンズ107a、107bを有する光路においては、他の光路よりもインテグレータ101aから液晶パネル108cまでの光路長が長いので、その補正をする必要がある。そのため、リレーレンズ107a、107b、コンデンサレンズ107cで光路長の補正を行っている。具体的には、リレーレンズ107a、とリレーレンズ107bで像を一度反転させ、その反転した像をコンデンサレンズ107cでその主光線が略平行になるようにして液晶パネル108cに照射している。
【0074】
また、本実施形態において、より偏光変換効率の高い照明光学系を実現するために、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ106の間隔は、上述の式17を満たすように設定することが望ましい。
【0075】
(第2の実施形態)
図5に、本発明の第2の実施形態である液晶プロジェクタの照明光学系の構成を示す。図5を参照すると、本実施形態の照明光学系は、図12に示した照明光学系において、コンデンサレンズ106a、106bを削除し、ダイクロイックミラー104aとミラー105aの間にコンデンサレンズ116aを、ダイクロイックミラー104a、104bの間にコンデンサレンズ116bをそれぞれ配置したものであって、インテグレータ101aによって分割された光源100からの光束は、フィールドレンズ103およびコンデンサレンズ116a、116bを通過し、液晶パネル108a、108b上に重畳かつ照射するように構成されている。
【0076】
コンデンサレンズ116a、116bのそれぞれは、偏光変換素子102と折り返しミラー111の間に配置されたフィールドレンズ103を通過した光束の主光線を互いに略平行にするように構成されている。フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116aの間隔は、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116aの合成焦点距離と等しい関係にあるので、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116aの間隔を小さくすることで、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116aの合成焦点距離が短い光学系を提供することができる。同様に、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116bの間隔は、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116bの合成焦点距離と等しい関係にあるので、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116bの間隔を小さくすることで、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116bの合成焦点距離が短い光学系を提供することができる。
【0077】
本実施形態の照明光学系では、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116a、116bとの各間隔はいずれも、図12に示したU字配置の光学系におけるフィールドレンズ103とコンデンサレンズ106a、106bとの各間隔よりも小さくなっているので、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116aの合成焦点距離およびフィールドレンズ103とコンデンサレンズ116bの合成焦点距離はいずれも、図12に示した光学系の場合よりも小さくなる。このように、本実施形態においても、フィールドレンズとコンデンサレンズの間隔を小さくして、フィールドレンズとコンデンサレンズの合成焦点距離を小さくした配置とされているので、インテグレータ101b上に形成されるアーク像を小さくすることができ、その分、偏光変換素子102におけるケラレの量が低減されて、偏光変換効率が向上する。
【0078】
本実施形態においても、より偏光変換効率の高い照明光学系を実現するために、フィールドレンズ103とコンデンサレンズ116a、116bとの各間隔は、上述の式17を満たすように設定することが望ましい。
【0079】
(実施例)
図6に、図5に示した照明光学系における光学要素の設計データを示す。この設計データは、既存の光学シミュレーションソフトを用いて計算したものである。図6中、「IT1」はインテグレータ101a、「IT2」はインテグレータ101b、「PBS」は偏光変換素子102、「FL」はフィールドレンズ103、「CL」はコンデンサレンズ116a(または116b)、「LCD」は液晶パネル108a(または108b)にそれぞれ対応する。「Radius」欄には、配置されている光学要素(IT1、IT2、PBS、FL、CL、LCD)のそれぞれの面の曲率半径がmm値で示されている。この「Radius」欄中の「∞」は平面を示す。「Thickness」欄には、光学要素の厚み又は間隔がmm値で示されている。「Index」欄には、光学要素の屈折率が示されている。なお、光学要素の間隔は直線距離換算値である。
【0080】
本実施例の照明光学系では、インテグレータIT1は、入射面(各レンズセルの入射面)の曲率半径が14.9mm、出射面が平面、厚さが3.16mm、屈折率が1.474とされている。インテグレータIT1とインテグレータIT2の間隔は26.9mmである。
【0081】
インテグレータIT2は、入射面が平面、出射面(各レンズセルの出射面)の曲率半径が14.9mm、厚さが3.16mm、屈折率が1.474とされている。インテグレータIT2と偏光変換素子PBSの間隔は2.44mmである。ここで、図6中で曲率半径にマイナス符号がついているのは、光の進行方向に向かって凸になっていることを示している。
【0082】
偏光変換素子PBSは、入出射面がともに平面、厚さが4mm、屈折率が1.523とされている。偏光変換素子PBSとフィールドレンズ(FL)の間隔は2mmである。よって、偏光変換部(偏光変換素子PBS)の有効開口lPBSは4mmとなる。
【0083】
フィールドレンズ(FL)は、入射面の曲率半径が257mm、出射面が平面、厚さが5mm、屈折率が1.624とされている。フィールドレンズ(FL)とコンデンサレンズ(CL)の間隔は158.3mmである。
【0084】
コンデンサレンズ(CL)は、入射面の曲率半径が101mm、出射面が平面、厚さが7mm、屈折率が1.624とされている。コンデンサレンズ(CL)と液晶パネル(LCD)との間隔は92.7mmである。
【0085】
液晶パネル(LCD)は、大きさが1インチのXGAパネル(4:3)であり、その長辺の長さは20.32mmである(大きさは不図示)。
【0086】
光源アークの有効口径(lLAMP)は1.1mm、光源の開口数(NA)は0.766である(不図示)。
【0087】
(比較例)
図7に、図12に示したU字配置の照明光学系における光学要素の設計データを示す。この設計データも、既存の光学シミュレーションソフトを用いて計算したものである。図7中、「IT1」はインテグレータ101a、「IT2」はインテグレータ101b、「PBS」は偏光変換素子102、「FL」はフィールドレンズ103、「CL」はコンデンサレンズ106a(または106b)、「LCD」は液晶パネル108a(または108b)にそれぞれ対応する。「Radius」欄には、配置されている光学要素(IT1、IT2、PBS、FL、CL、LCD)のそれぞれの面の曲率半径がmm値で示されている。この「Radius」欄中の「∞」は平面を示す。「Thickness」欄には、光学要素の厚み又は間隔がmm値で示されている。「Index」欄には、光学要素の屈折率が示されている。なお、光学要素の間隔は直線距離換算値である。
【0088】
本比較例の照明光学系では、インテグレータIT1は、入射面(各レンズセルの入射面)の曲率半径が22.8mm、出射面が平面、厚さが3.16mm、屈折率が1.474とされている。インテグレータIT1とインテグレータIT2の間隔は43.6mmである。
【0089】
インテグレータIT2は、入射面が平面、出射面(各レンズセルの出射面)の曲率半径が22.8mm、厚さが3.16mm、屈折率が1.474とされている。インテグレータIT2と偏光変換素子PBSの間隔は2.44mmである。
【0090】
ここで、図7中で曲率半径にマイナス符号がついているのは、光の進行方向に向かって凸になっていることを示しており、先の実施例と同じ定義である。
【0091】
偏光変換素子PBSは、入出射面がともに平面、厚さが4mm、屈折率が1.523とされている。偏光変換素子PBSとフィールドレンズ(FL)の間隔は2mmである。よって、偏光変換部(偏光変換素子PBS)の有効開口lPBSは、4mmとなる。
【0092】
フィールドレンズ(FL)は、入射面の曲率半径が163mm、出射面が平面、厚さが5mm、屈折率が1.624とされている。フィールドレンズ(FL)とコンデンサレンズ(CL)の間隔は244mmである。
【0093】
コンデンサレンズ(CL)は、入射面の曲率半径が154.3mm、出射面が平面、厚さが7mm、屈折率が1.624とされている。コンデンサレンズ(CL)と液晶パネル(LCD)との間隔は6.9mmである。
【0094】
液晶パネル(LCD)は、大きさが1インチのXGAパネル(4:3)であり、その長辺の長さは20.32mmである(大きさは不図示)。
【0095】
光源アークの有効口径(lLAMP)は1.1mm、光源の開口数(NA)は0.766である(不図示)。
【0096】
ここで、式17より、FL−CL間隔の限界値を求めると190.8mmとなる。上記の比較例の照明光学系では、FL−CL間隔が244mmであるのに対し、上記の実施例の照明光学系ではFL−CL間隔は158.3であり、これは比較例よりも短い。また、実施例では、式17の条件を満たしており、インテグレータIT2上に結像するアーク像の大きさが、偏光変換素子PBSの有効開口の大きさ以下になり、偏光変換効率のロスを低減することが期待できる。
【0097】
図8に、図6に示した設計データに基づく照明光学系におけるIT2上に形成されるアーク像を模式的に示し、図9に、図7に示した設計データに基づく照明光学系におけるIT2上に形成されるアーク像を模式的に示す。
【0098】
図8および図9に示すように、IT1の各レンズセルによってIT2上に形成されるアーク像は、IT2の中心部から外周方向に放射状に広がったものとなる。偏光変換素子PBSでは、各偏光変換部が各レンズセルによって形成されたアーク像の間隔に対応して配置されており、アーク像の大きさが偏光変換部の有効開口より大きくなると、偏光変換効率の低下を招く。図8に示した各アーク像の大きさは、図9に示したものに比べて小さいことから、図6に示した設計データに基づく照明光学系は、図7に示した設計データに基づく照明光学系に比べて偏光変換効率が高いことが分かる。
【0099】
図10に、実施例(図6)の照明光学系の各光学要素における照明効率と従来例(図7)の照明光学系の各光学要素における照明効率の差を示す。この数値が正の場合に実施例が従来例よりも、その分照明効率が改善していることを示している。図10から分かるように、実施例の照明光学系は、従来例の照明光学系に比べて、偏光変換素子PBSにて、照明効率が約8ポイント向上し、最終的に、約13ポイントの照明効率向上を実現した。ここで、照明効率が13ポイント向上とは、例えば、照明効率が60%から73%になることを意味する。
【0100】
以上、U字配置の照明光学系を例に本発明の実施形態を説明したが、本発明はU字配置に限定されるものではない。例えば、図13に示したS字配置の照明光学系において、図1や図5に示したようなフィールドレンズおよびコンデンサレンズの配置を適用することで、第1および第2の実施形態の照明光学系と同等の効果を奏する。同様に、図11に示したL字配置の照明光学系においても、図1や図5に示したようなフィールドレンズおよびコンデンサレンズの配置を適用することで、第1および第2の実施形態の照明光学系と同等の効果を奏する。
【0101】
なお、以上説明した照明光学系において、ダイクロイックミラー104a、104bによって分離される光路をどの色成分の光路にするかは、設計に応じて適宜決定することができる。
【符号の説明】
【0102】
100 光源
101a、101b インテグレータ
102 偏光変換素子
103 フィールドレンズ
104a、104b ダイクロイックミラー
105a〜105c ミラー
106、106c コンデンサレンズ
107a、107b リレーレンズ
108a〜108c 液晶パネル
109 クロスダイクロイックプリズム
110 投写レンズ
111 折り返しミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、複数の表示パネルを有するプロジェクタの照明光学系であって、
前記光源から出射された光束を複数の部分光束に分割するとともに、該複数の部分光束をそれぞれ集光させる複数のレンズセルを備えた第1のインテグレータと、
前記複数の部分光束が入射する複数のレンズセルを備えた第2のインテグレータと、
前記第2のインテグレータの各レンズセルを通過した光束の偏光方向を揃える偏光変換素子と、
前記偏光変換素子からの光束の、第1の色光を反射し、該第1の色光とは波長領域の異なる第2および第3の色光を透過する第1のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーを透過した光束の、前記第2の色光を反射し、前記第3の色光を透過する第2のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーで反射された前記第1の色光を反射する反射ミラーと、
前記偏光変換素子と前記第1のダイクロイックミラーの間に配置されたフィールドレンズと、
前記第1のダイクロイックミラーと前記反射ミラーの間に配置された第1のコンデンサレンズと、
前記第1および第2のダイクロイックミラーの間に配置された第2のコンデンサレンズと、を備え、
前記フィールドレンズは、前記第1のインテグレータの各レンズセルを通過した光束を前記複数の表示パネル上に重畳させるように構成されており、
前記第1のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの第1の間隔は、前記第1のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの合成焦点距離と等しく、
前記第2のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの第2の間隔は、前記第2のコンデンサレンズと前記フィールドレンズの合成焦点距離と等しい、プロジェクタの照明光学系。
【請求項2】
前記フィールドレンズと前記第1のダイクロイックミラーの間に配置され、前記フィールドレンズからの光束を前記第1のダイクロイックミラーの方向に反射するミラーをさらに有する、請求項1に記載のプロジェクタの照明光学系。
【請求項3】
前記第1の間隔が前記第2の間隔と等しい、請求項1または2に記載の照明光学系。
【請求項4】
前記偏光変換素子は、前記第2のインテグレータ上に形成される前記光源のアーク像の間隔に対応して配置される複数の偏光変換部を備え、
前記第1のインテグレータの各レンズセルによって前記第2のインテグレータ上に形成される前記光源のアーク像の有効口径をlarc、前記光源のアークの有効口径をlLAMP、前記光源の開口数をNA、前記複数の表示パネルの長辺の長さをlLCD、前記複数の偏光変換部のそれぞれの有効開口をlPBS、前記フィールドレンズおよび第1のコンデンサレンズの前記第1の間隔をdとするとき、該間隔dが
【数1】

の条件を満たすように設定される、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロジェクタの照明光学系。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の照明光学系と、
前記照明光学系からの光束で照明される複数の表示パネルとを有するプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−155344(P2012−155344A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108575(P2012−108575)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2005−242940(P2005−242940)の分割
【原出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】