説明

プロジェクター及びその制御方法

【課題】調光装置を適正に制御することが可能なプロジェクター及びその制御方法を提供する。
【解決手段】調光装置に塗布されたグリスが低温環境下で固まり、調光装置が正常に動作しない場合には、この異常がステップS104にて検出される。この場合には、時間が経過してプロジェクターの内部温度が所定温度以上になると、グリスの粘度が適切な状態となり、調光装置が正常に動作できるようになる。このため、制御部は、内部温度が所定温度以上になった後にステップS107で再び初期化して、ステップS108で検出された調光状態が正常であれば、ステップS102に戻って調光制御を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を投写するプロジェクター及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出された光を画像情報に応じて変調して投写するプロジェクターにおいて、投写される画像のダイナミックレンジを拡大してコントラスト感を向上させるために、光源から射出された光の光量を調整することが可能なプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のプロジェクターは、回動可能な遮光部材で光源光を遮光する調光装置を備えており、画像情報に応じて遮光部材を回動させることによって光源光の光量を調整する。一般に、このような調光装置には、遮光部材の回動を滑らかにするために、グリス(潤滑剤)が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成のプロジェクターを低温の環境下で使用する際には、グリスの粘度が上昇して固くなるため、遮光部材が適切に回動せず、調光が正しく機能しなくなる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源から射出された光を、画像情報に応じて変調して投写するプロジェクターであって、光を遮る遮光部材を動かして前記光源から射出された光の光量を調整する調光装置と、少なくとも前記調光装置を収容する筐体と、前記筐体の内部の温度を検出する温度検出部と、前記調光装置による前記光量の調整状態を、前記画像情報に基づいて制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度が所定温度以上になった場合に、前記調光装置の制御を開始するための初期化処理を行うことを特徴とする。
【0007】
このプロジェクターによれば、温度検出部が検出した温度が所定温度以上になった場合に、調光装置の制御を開始するための初期化処理を行うため、温度が低い状態、即ち調光装置に塗布されているグリスが固まった状態で初期化を行う場合とは異なり、適正に調光装置を制御することが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記初期化処理は、前記調光装置の前記調整状態を所定の初期状態に設定する処理であってもよい。
【0009】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記調光装置の前記調整状態を検出する状態検出部をさらに備え、前記制御部は、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記調光装置の制御が正常になされているか否かを判断し、前記調光装置の制御が正常ではないと判断された場合に前記初期化処理を行うようにしてもよい。
【0010】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記調光装置の前記調整状態を検出する状態検出部をさらに備え、前記制御部は、前記初期化処理を行った後に、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記初期化処理が正常になされたか否かを判断し、前記初期化処理が正常になされた場合に、前記調光装置の制御を開始するようにしてもよい。
【0011】
[適用例5]本適用例に係るプロジェクターの制御方法は、光源から射出された光を、画像情報に応じて変調して投写する画像投写部と、光を遮る遮光部材を動かして前記光源から射出された光の光量を調整する調光装置と、少なくとも前記調光装置を収容する筐体と、前記調光装置による前記光量の調整状態を、前記画像情報に基づいて制御する制御部と、を備えたプロジェクターの制御方法であって、前記筐体の内部の温度を検出する温度検出ステップと、前記温度検出ステップで検出された温度が所定温度以上になった場合に、前記制御部による前記調光装置の制御を開始するための初期化処理を行う初期化ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このプロジェクターの制御方法によれば、温度検出ステップで検出された温度が所定温度以上になった場合に、調光装置の制御を開始するための初期化処理を行うため、温度が低い状態、即ち調光装置に塗布されているグリスが固まった状態で初期化を行う場合とは異なり、適正に調光装置を制御することが可能となる。
【0013】
[適用例6]上記適用例に係るプロジェクターの制御方法において、前記初期化ステップでは、前記調光装置の前記調整状態を所定の初期状態に設定するようにしてもよい。
【0014】
[適用例7]上記適用例に係るプロジェクターの制御方法において、前記調光装置の制御が正常になされているか否かを判断する第1の判断ステップをさらに備え、前記初期化ステップでは、前記第1の判断ステップで前記調光装置の制御が正常ではないと判断された場合に前記初期化処理を行うようにしてもよい。
【0015】
[適用例8]上記適用例に係るプロジェクターの制御方法において、前記初期化ステップの後に、前記初期化処理が正常になされたか否かを判断する第2の判断ステップと、前記第2の判断ステップにて、前記初期化処理が正常になされたと判断された場合に、前記調光装置の制御を開始する制御開始ステップと、をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
また、上述したプロジェクター及びその制御方法がプロジェクターに備えられたコンピューターを用いて構築されている場合には、上記形態及び上記適用例は、その機能を実現するためのプログラム、或いは当該プログラムを前記コンピューターで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやハードディスク、CDやDVD等の光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性の半導体メモリーを搭載したメモリーカードやUSBメモリー、プロジェクターの内部記憶装置(RAMやROM等の半導体メモリー)等、前記コンピューターが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プロジェクターの概略構成を示すブロック図。
【図2】画像投写部の構成をより詳細に説明するための構成図。
【図3】第1実施形態における調光装置の制御に関わる動作を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態における調光装置の制御に関わる動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、光源から射出された光を変調して投写するプロジェクターの第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、画像の階調範囲を伸張する伸張処理と、光源から射出された光の光量を調整する調光処理が可能となっている。このため、例えば、全体的に暗い画像を投写する際には、階調範囲を白側(明るい側)に伸張するとともに、伸張量に応じて光量を低減させることで、画像の暗さを維持しつつ有効な階調数を増やし(ダイナミックレンジを拡大し)、コントラスト感を向上させることが可能になっている。
【0019】
図1は、プロジェクターの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、画像投写部10、制御部20、記憶部21、入力操作部22、画像入力部23、画像処理部24、伸張処理部25、液晶駆動部26、調光駆動部27、状態検出部28、画像解析部29、温度検出部30等を備えて構成される。
【0020】
画像投写部10は、光源としての光源装置11、光変調装置としての3つの液晶パネル12、投写光学系としての投写レンズ13、及び調光装置14等で構成されている。画像投写部10は、画像表示部に相当するものであり、光源装置11から射出された光を、液晶パネル12で画像光に変調し、この画像光を投写レンズ13から投写して外部のスクリーンS等に画像を表示する。
【0021】
図2は、画像投写部10の構成をより詳細に説明するための構成図であり、光源装置11から射出された光が投写レンズ13に至るまでの光路を示している。
図2に示すように、画像投写部10は、光源装置11及び調光装置14等を含む照明光学系50と、色光分離光学系60と、リレー光学系70と、液晶パネル12等を含む画像形成部80と、投写レンズ13とを備えており、これらは、プロジェクター1の外装を構成する筐体2に収容されている。
【0022】
照明光学系50は、光源装置11と、第1のレンズアレイ51と、第2のレンズアレイ52と、偏光変換素子53と、重畳レンズ54と、調光装置14とを備えて構成されている。光源装置11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、凹状の楕円面鏡等からなるリフレクター11bとを備えており、光源ランプ11aは、リフレクター11bの内側に取り付けられている。そして、光源ランプ11aから射出された放射状の光束は、リフレクター11bで反射し、第1のレンズアレイ51へと射出される。
【0023】
第1のレンズアレイ51及び第2のレンズアレイ52は、それぞれ微小なレンズ51a,52aがマトリックス状に配置された構成になっている。そして、光源装置11から入射した光束は、第1のレンズアレイ51によって複数の微小な部分光束に分割される。第2のレンズアレイ52及び重畳レンズ54は、第1のレンズアレイ51で分割された部分光束のそれぞれが、照明対象である液晶パネル12の全体に照射するように構成されている。このため、各部分光束は、液晶パネル12で重畳され、液晶パネル12の全体がほぼ均一に照明される。
【0024】
第1及び第2のレンズアレイ51,52間の光路には、開き戸(扉)式に開閉する一対のルーバー14aを備えた調光装置14が配置されている。ルーバー14aは、光を遮る遮光部材で構成されており、調光装置14は、このルーバー14aを動かして開閉状態を調整することにより、光源装置11から射出された光の光量を調整する(絞る)ことができる。つまり、調光装置14は、第1のレンズアレイ51によって分割された光束の一部を、ルーバー14aによって遮ることによって光量を制限するものであり、調光装置14で絞られた光量に応じて、液晶パネル12を照明する光量、即ち投写される画像光の光量が略一様に低減する。なお、調光装置14のルーバー14aを最も開放させた状態にすると、第1のレンズアレイ51から射出された光は、ルーバー14aに遮られることなく第2のレンズアレイ52に達する。そして、ルーバー14aを閉じていくほど、第2のレンズアレイ52に達する光量は低減していき、ルーバー14aを最も閉塞させた状態にすると、第1のレンズアレイ51から射出された光の大部分はルーバー14aによって遮られる。
【0025】
偏光変換素子53は、光源装置11からの光を液晶パネル12で効率よく利用可能とするため、特定の偏光方向を有する偏光光に揃える機能を有している。照明光学系50を射出した偏光光は、色光分離光学系60に入射する。
【0026】
色光分離光学系60は、第1のダイクロイックミラー61と、第1の反射ミラー62と、第2のダイクロイックミラー63とを備えており、照明光学系50から射出された光を、波長域の異なる3色の光に分離する。第1のダイクロイックミラー61は、略赤色の光(赤色光R)を反射するとともに、赤色光Rよりも短波長の光を透過する。第1のダイクロイックミラー61で反射した赤色光Rは、第1の反射ミラー62でさらに反射し、平行化レンズ55で平行化されて画像形成部80の赤色光用の液晶パネル12Rを照明する。
【0027】
第2のダイクロイックミラー63は、略青色の光(青色光B)を透過するとともに、透過する光よりも長波長の光を反射する。このため、第1のダイクロイックミラー61を透過した光のうち、略緑色の光(緑色光G)は、第2のダイクロイックミラー63によって反射し、平行化レンズ55で平行化されて画像形成部80の緑色光用の液晶パネル12Gを照明する。また、青色光Bは、第2のダイクロイックミラー63を透過してリレー光学系70に入射する。そして、リレー光学系70を経由した後、平行化レンズ55で平行化されて画像形成部80の青色光用の液晶パネル12Bを照明する。
【0028】
なお、リレー光学系70は、青色光Bの経路が他の色光の経路に比べて長くなってしまうことから、光束の発散による液晶パネル12Bへの照明効率の低下を抑制するために設けられている。リレー光学系70は、入射側レンズ71と、第2の反射ミラー72と、リレーレンズ73と、第3の反射ミラー74とを備えており、リレー光学系70に入射した青色光Bは、入射側レンズ71によってリレーレンズ73の近傍で収束し、平行化レンズ55に向けて発散する。
【0029】
画像形成部80は、3つの液晶パネル12(赤色光用の液晶パネル12R、緑色光用の液晶パネル12G、青色光用の液晶パネル12B)と、各液晶パネル12の入射側及び射出側にそれぞれ配置された入射側偏光板81及び射出側偏光板82と、色合成光学系としてのクロスダイクロイックプリズム83とを備えて構成されている。
【0030】
液晶パネル12は、液晶が封入された一対の透明基板を備えており、透明基板の内面には、液晶に対して微小領域(画素)毎に駆動電圧を印加可能な透明電極(画素電極)がマトリックス状に形成されている。入射側偏光板81及び射出側偏光板82は、それぞれ特定の偏光方向の偏光光のみを透過可能であり、入射側偏光板81は、偏光変換素子53によって揃えられた偏光方向の偏光光を透過可能になっている。このため、液晶パネル12に向けて照射された各色光の大部分は入射側偏光板81を透過して、液晶パネル12に入射する。
【0031】
ここで、液晶駆動部26(図1参照)によって、液晶パネル12の各画素に、外部から入力された画像情報に基づく駆動電圧が印加されると、液晶パネル12に入射した光は、駆動電圧に応じて変調され、画素毎に異なる偏光方向を有した偏光光となる。この偏光光のうち、射出側偏光板82を透過可能な偏光成分のみが射出側偏光板82から射出される。つまり、液晶パネル12及び射出側偏光板82が、画像情報に応じて画素毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって、階調を有する画像光が色光毎に形成される。射出側偏光板82から射出した各色光からなる画像光は、クロスダイクロイックプリズム83に入射する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム83には、赤色光を反射する誘電体多層膜と、青色光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に沿って略X字状に設けられており、射出側偏光板82から射出された各色の画像光は、これらの誘電体多層膜によって合成される。クロスダイクロイックプリズム83で合成された画像光は、カラーの画像光として射出面83xから射出され、投写レンズ13に入射する。
【0033】
投写レンズ13は、クロスダイクロイックプリズム83の射出面83x側に配置されており、画像形成部80で形成された画像光を拡大して投写する。投写レンズ13から射出された画像光は、外部のスクリーンS(図1参照)等に投写される。
【0034】
図1に戻って、制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられる図示しないRAM(Random Access Memory)等を備えており、記憶部21に記憶されている制御プログラムに従ってCPUが動作することによりプロジェクター1の動作を統括制御する。つまり、制御部20は、記憶部21とともにコンピューターとして機能する。
【0035】
記憶部21は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリー等の不揮発性のメモリーにより構成されている。記憶部21には、プロジェクター1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクター1の動作条件等を規定する各種データ等が記憶されている。
【0036】
入力操作部22は、ユーザーの入力操作を受け付けるものであり、ユーザーがプロジェクター1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。ユーザーが入力操作部22の各種操作キーを操作すると、入力操作部22は、この入力操作を受け付けて、ユーザーの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、入力操作部22として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザーの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しない受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0037】
画像入力部23には、パーソナルコンピューターや各種映像再生装置等、図示しない外部の画像供給装置から画像情報が入力される。画像入力部23は、入力された画像情報に対して、必要に応じてA/D変換処理等を施し、処理後の画像情報を画像処理部24に出力する。
【0038】
画像処理部24は、画像入力部23から入力される画像情報を、液晶パネル12の各画素の階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶パネル12のすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部24は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさやコントラスト等を調整するための画質調整処理等や、メニュー画像やメッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を重畳して表示するOSD処理等を必要に応じて行い、処理後の画像情報を伸張処理部25及び画像解析部29に出力する。
【0039】
伸張処理部25は、制御部20の制御に基づいて、画像処理部24から入力された画像情報の各画素値に、階調範囲を伸張するための伸張処理を施す。伸張処理部25は、処理後の画像情報を液晶駆動部26に出力する。
【0040】
液晶駆動部26は、伸張処理部25から入力される画像情報に従って液晶パネル12を駆動する。この結果、画像情報に基づく画像が画像投写部10からスクリーンSに投写される。
【0041】
調光駆動部27は、ステッピングモーター等の駆動装置によって構成されており、制御部20の制御に基づいて、調光装置14を駆動する。具体的には、調光駆動部27は、制御部20の制御に基づく角度だけルーバー14aの回転軸14b(図2参照)を回動させることによって、ルーバー14aを開閉させる。調光装置14は、ルーバー14aの開閉状態を、最も開放させた全開状態と、最も閉塞させた全閉状態との間で多段階に調整することができる。なお、調光駆動部27によるルーバー14aの開閉動作を滑らかにして動作音を低減させるために、調光装置14には、調光駆動部27から動力が伝達される部位(例えば、図示しない歯車)にグリス(潤滑剤)が塗布されている。
【0042】
状態検出部28は、調光装置14による光量の調整状態(調光状態)、即ちルーバー14aの開閉状態を検出して検出結果を制御部20に出力する。状態検出部28は、調光状態を大まかに検出可能であればよく、ルーバー14aの開閉状態に応じてオンとオフとが切り替わる押圧スイッチやフォトリフレクター等を用いて構成することもできるし、ローターリーエンコーダー等、他の検出装置を用いて構成することもできる。
【0043】
画像解析部29は、画像処理部24から入力される画像情報を解析し、画像の明るさ(各画素の画素値)に応じた特徴量を1フレーム毎に導出して、制御部20に出力する。特徴量としては、例えば、1フレーム内で最も明るい画素値である最大画素値(白ピーク値)や、1フレーム内の平均輝度を表すAPL(Average Picture Level:平均画像レベル)が導出される。制御部20は、画像解析部29から入力される特徴量に基づいて、伸張処理部25に画素値の伸張を指示するとともに、調光駆動部27に調光装置14の駆動を指示する。例えば、入力された特徴量が所定の明るさよりも暗いことを示す場合には、制御部20は、伸張処理部25に指示をして、画素値を白側に伸張する処理を行わせるとともに、調光駆動部27に指示をして、画素値を伸張させた分だけルーバー14aを閉塞させる。この結果、光量が絞られることによって画像を適切な明るさ(暗さ)で表示することができるとともに、1フレーム内で用いられる画素値の範囲(階調範囲)が拡大するため、コントラスト感が向上する。なお、本明細書では、画像解析部29の解析結果に基づいて制御部20が調光装置14の調光状態を制御することを、「調光制御」とも表記する。
【0044】
温度検出部30は、サーミスター等によって構成され、プロジェクター1の内部温度、即ち筐体2の内部の温度を検出して、検出結果を制御部20に出力する。なお、温度検出部30は、調光装置14又はその周辺の温度を検出可能な位置に設置されることが望ましい。
【0045】
次に、プロジェクター1の動作について説明する。
図3は、調光装置14の制御に関わる動作を示すフローチャートである。入力操作部22の電源キーが操作されて電源がオフからオンに切り替わると、プロジェクター1は、光源装置11を点灯させて画像の投写を開始させる。そして、制御部20は、図3に示すフローに従って動作する。
【0046】
図3に示すように、ステップS101では、制御部20は、調光制御を開始するための初期化処理を行う。具体的には、制御部20は、調光駆動部27に調光装置14を駆動させて、調光装置14の調光状態、即ちルーバー14aの開閉状態を、所定の初期状態に設定する。なお、調光装置14を初期状態にするためには、状態検出部28で調光状態を検出しながら初期状態になるように駆動すればよいが、状態検出部28が高精度に調光状態を検出できない場合には、例えば、ルーバー14aを十分に閉塞させて全閉状態にした後で、初期状態となるのに必要な量だけ開放させればよい。或いは、ルーバー14aを十分に開放させて全開状態にした後で、初期状態となるのに必要な量だけ閉塞させればよい。
【0047】
ステップS102では、制御部20は、画像解析部29の解析結果、即ち投写する画像の明暗に応じて伸張処理部25に伸張処理を行わせるとともに、調光駆動部27を用いた調光装置14の制御(調光制御)を行う。このとき、制御部20は、初期化によって設定された初期状態を基準にして、調光装置14の調光状態を制御する。つまり、制御部20は、調光装置14の調整状態(ルーバー14aの開閉状態)を、設定された初期状態からの差分(例えば、回転軸14bの回転角の差)を用いて制御する。
【0048】
ステップS103では、制御部20は、状態検出部28に調光装置14の調光状態を検出させ、ステップS104では、制御部20は、状態検出部28の検出結果に基づいて、調光装置14の制御が正常になされているか否かを判断する。即ち、制御部20は、状態検出部28によって検出された調光装置14の調光状態が、制御通りの正常な調光状態になっているか否かを判断する。そして、制御が正常である場合にはステップS102に戻り、調光制御(ステップS102)と、調光状態の検出(ステップS103)と、正常な制御がなされているかの判断(ステップS104)とを周期的に繰り返す。この間、画像投写部10から正しい調光制御がなされた状態で画像が投写される。一方、制御が正常でない場合、即ち状態検出部28によって検出された調光状態が、制御に反する異常な調光状態になっている場合には、ステップS105に移行する。
【0049】
ステップS105では、制御部20は、温度検出部30にプロジェクター1の内部温度を検出させ、ステップS106では、検出された温度が所定温度以上であるか否かを判断する。そして、検出された温度が所定温度以上である場合にはステップS107に移行する。また、検出された温度が所定温度より低い場合には、ステップS105に戻り、内部温度の検出(ステップS105)と、検出した内部温度が所定温度以上か否かの判断(ステップS106)とを周期的に繰り返す。なお、上記の所定温度は、プロジェクター1の内部温度がそれ以上であれば、調光装置14に塗布されているグリスが適切に作用するように設定されており、所定温度より低い場合には、グリスが固まり(粘度が高まって流動性が低下し)、調光装置14の開閉動作に支障をきたす恐れがある。また、低温環境下でプロジェクター1を使用する場合には、プロジェクター1の内部温度は、起動直後(電源をオンにした直後)において所定温度より低くなりやすいが、点灯する光源装置11や各部の動作によって次第に上昇するため、時間の経過に伴って所定温度以上となる。
【0050】
プロジェクター1の内部温度が所定温度以上であってステップS107に移行した場合には、制御部20は、ステップS101と同様、調光装置14を初期化して、調光装置14の調光状態を初期状態にする。
【0051】
ステップS108では、制御部20は、状態検出部28に調光装置14の調光状態を検出させ、ステップS109では、制御部20は、状態検出部28の検出結果に基づいて、調光装置14が正常に初期化されたか否かを判断する。即ち、制御部20は、状態検出部28によって検出された調光装置14の調光状態が、初期状態の調光状態になっているか否かを判断する。そして、正常に初期化された場合にはステップS102に戻り、伸張処理を再開するとともに、調光装置14の制御(駆動)を再開する。この結果、画像投写部10から正しい調光制御がなされた状態で画像が投写される。一方、初期化に失敗した場合にはステップS110に移行する。
【0052】
ステップS110に移行した場合には、制御部20は、ユーザーに異常の発生を報知する。具体的には、制御部20は、画像処理部24に指示をして、調光装置14に異常がある旨のメッセージ(エラーメッセージ)を含むOSD画像を重畳表示させる。そして、このエラーメッセージを所定時間表示させた後で、プロジェクター1の電源をオフにして、フローを終了する。
【0053】
本実施形態のプロジェクター1は、上記のように動作するため、調光装置14に塗布されたグリスが低温環境下で固まり、調光装置14が正常に動作しない場合には、この異常がステップS104にて検出される。この場合でも、時間が経過してプロジェクター1の内部温度が所定温度以上になると、グリスの粘度が適切な状態となり、調光装置14が正常に動作できるようになる。このため、制御部20は、内部温度が所定温度以上になった後にステップS107で再び初期化して、ステップS108で検出された調光状態が正常であれば、ステップS102に戻って調光制御を再開する。一方、プロジェクター1の内部温度が所定温度以上になっても調光状態が正常でない場合には、グリスが固まることに起因する異常以外の他の異常が生じていることが考えられるため、エラーメッセージによって異常の発生をユーザーに報知した後でプロジェクター1の電源をオフにする。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0055】
(1)本実施形態のプロジェクター1によれば、温度検出部30が検出した温度が所定温度以上になった場合に、調光装置14の制御を開始するための初期化処理を行うため、温度が低い状態、即ち調光装置14に塗布されているグリスが固まった状態で初期化を行う場合とは異なり、適正に調光装置14を制御することが可能となる。
【0056】
(2)本実施形態のプロジェクター1によれば、プロジェクター1の起動後は、内部温度に拘らずに調光装置14を初期化して調光制御を開始している。そして、制御に異常が生じた場合に内部温度を検出して、内部温度が所定温度以上になった後で初期化をやり直している。つまり、起動直後に内部温度を検出しないことから、低温環境下で利用される頻度が低い場合には、即座に適正な調光制御を開始することが可能となる。
【0057】
(3)本実施形態のプロジェクター1によれば、調光装置14の制御が正常でない場合に、内部温度が所定温度以上になってから調光装置14の初期化を行っているため、低温環境下で無駄な初期化を繰り返す必要がない。ここで、初期化の際に全開状態や全閉状態にする構成では、初期化のたびに画像の明るさが変化して、ユーザーに不快感を与えてしまうが、本実施形態のプロジェクター1によれば、その頻度を低減することが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態において、ステップS105が温度検出ステップに相当し、ステップS107が初期化ステップに相当し、ステップS104が第1の判断ステップに相当し、ステップS109が第2の判断ステップに相当し、ステップS102が制御開始ステップに相当する。
【0059】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態のプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクター1は、第1実施形態と同一の構成を有しているが、調光装置14の制御に関わる動作が第1実施形態とは異なっている。
【0060】
図4は、本実施形態における調光装置14の制御に関わる動作を示すフローチャートである。入力操作部22の電源キーが操作されて電源がオフからオンに切り替わると、プロジェクター1は、光源装置11を点灯させて画像の投写を開始させる。そして、制御部20は、図4に示すフローに従って動作する。
【0061】
図4に示すように、ステップS201では、制御部20は、温度検出部30にプロジェクター1の内部温度を検出させ、ステップS202では、検出された温度が所定温度以上であるか否かを判断する。そして、検出された温度が所定温度以上である場合にはステップS203に移行する。また、検出された温度が所定温度より低い場合には、ステップS201に戻り、内部温度の検出(ステップS201)と、検出した内部温度が所定温度以上か否かの判断(ステップS202)とを周期的に繰り返す。
【0062】
内部温度が所定温度以上であってステップS203に移行した場合には、制御部20は、調光駆動部27に調光装置14を駆動させて、調光装置14の調光状態、即ちルーバー14aの開閉状態を、所定の初期状態に初期化する。
【0063】
ステップS204では、制御部20は、画像解析部29の解析結果、即ち投写する画像の明暗に応じて伸張処理部25に伸張処理を行わせるとともに、調光駆動部27を用いた調光装置14の制御(調光制御)を行う。これ以降、プロジェクター1から、コントラスト感が向上した良好な画質で画像が投写される。
【0064】
ステップS205では、制御部20は、状態検出部28に調光装置14の調光状態を検出させ、ステップS206では、制御部20は、状態検出部28の検出結果に基づいて、調光装置14の制御が正常になされているか否かを判断する。即ち、制御部20は、状態検出部28によって検出された調光装置14の調光状態が、制御通りの調光状態になっているか否かを判断する。そして、制御が正常である場合にはステップS204に戻り、調光制御(ステップS204)と、調光状態の検出(ステップS205)と、正常な制御がなされているかの判断(ステップS206)とを周期的に繰り返す。この間、画像投写部10から正しい調光制御がなされた状態で画像が投写される。一方、制御が正常でない場合、即ち状態検出部28によって検出された調光状態が、制御に反する異常な調光状態になっている場合には、ステップS207に移行する。
【0065】
ステップS207では、制御部20は、ユーザーに異常の発生を報知する。具体的には、制御部20は、画像処理部24に指示をして、調光装置14に異常がある旨のメッセージ(エラーメッセージ)を含むOSD画像を重畳表示させる。そして、このエラーメッセージを所定時間表示させた後で、プロジェクター1の電源をオフにして、フローを終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0067】
(1)本実施形態のプロジェクター1によれば、プロジェクター1の起動時に内部温度を検出し、内部温度が所定温度以上になってから初期化処理を行って調光制御を開始するため、低温環境下で調光装置14のグリスが固まってしまうことに起因する制御異常の発生を抑制することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態において、ステップS201が温度検出ステップに相当し、ステップS203が初期化ステップに相当する。
【0069】
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0070】
上記実施形態では、調光装置14は、開き戸(扉)式に開閉するルーバー14aを備えた構成になっているが、調光装置14の構成は上記に限定されない。例えば、引き戸(スライド)式に開閉する構成であってもよいし、カメラで用いられる絞り機構のように、複数の絞り羽根で開口の大きさを調整する構成を採用してもよい。
【0071】
上記第1実施形態では、調光装置14を制御する前に調光装置14を初期化しているが、初期化を省略して調光装置14を制御してもよい。上記実施形態のように、調光装置14の状態検出部28が高精度に調光状態を検出できない場合は、調光装置14を初期化して初期状態にする必要がある。しかし、状態検出部28が高精度にルーバー14aの現在位置を検出できる場合は、初期化処理を省略し、調光装置14の制御量に基づいて調光装置14を制御し、状態検出部18が検出したルーバー14aの位置(調光状態)に基づいて正常に調光制御が行われているか否かを判断することができる。そして、調光制御が正常に行われていないと判断された場合は、内部温度が所定の温度以上になるまで調光制御を行わないようにしてもよい。同様に、第2実施形態においても、内部温度が所定の温度以上になったら、初期化処理を行わずに調光制御を開始するようにしてもよい。
【0072】
上記第1実施形態では、ステップS107で調光装置14の初期化を行った後に、ステップS109で調光装置14が正常に初期化されたか否かを判断し、正常に初期化されなかった場合にはエラーメッセージを表示して電源をオフにするようにしているが、エラーメッセージを表示する前に、何回か初期化を繰り返すようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、3つの液晶パネル12を用いた3板式のプロジェクター1について説明したが、これに限定されない。例えば、1つの液晶パネルでR光、G光、B光を変調可能な単板式のプロジェクター1に適用することも可能である。
【0074】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶パネル12を用いているが、反射型の液晶パネル等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【0075】
上記実施形態では、光源装置11は、放電型の光源ランプ11aを備えて構成されているが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源等の固体光源や、その他の光源を用いることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1…プロジェクター、2…筐体、10…画像投写部、11…光源装置、11a…光源ランプ、11b…リフレクター、12,12R,12G,12B…液晶パネル、13…投写レンズ、14…調光装置、14a…ルーバー、14b…回転軸、20…制御部、21…記憶部、22…入力操作部、23…画像入力部、24…画像処理部、25…伸張処理部、26…液晶駆動部、27…調光駆動部、28…状態検出部、29…画像解析部、30…温度検出部、50…照明光学系、51…第1のレンズアレイ、52…第2のレンズアレイ、51a,52a…レンズ、53…偏光変換素子、54…重畳レンズ、55…平行化レンズ、60…色光分離光学系、61…第1のダイクロイックミラー、62…第1の反射ミラー、63…第2のダイクロイックミラー、70…リレー光学系、71…入射側レンズ、72…第2の反射ミラー、73…リレーレンズ、74…第3の反射ミラー、80…画像形成部、81…入射側偏光板、82…射出側偏光板、83…クロスダイクロイックプリズム、83x…射出面、S…スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光を、画像情報に応じて変調して投写するプロジェクターであって、
光を遮る遮光部材を動かして前記光源から射出された光の光量を調整する調光装置と、
少なくとも前記調光装置を収容する筐体と、
前記筐体の内部の温度を検出する温度検出部と、
前記調光装置による前記光量の調整状態を、前記画像情報に基づいて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度が所定温度以上になった場合に、前記調光装置の制御を開始するための初期化処理を行うことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記初期化処理は、前記調光装置の前記調整状態を所定の初期状態に設定する処理であることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターであって、
前記調光装置の前記調整状態を検出する状態検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記調光装置の制御が正常になされているか否かを判断し、前記調光装置の制御が正常ではないと判断された場合に前記初期化処理を行うことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記調光装置の前記調整状態を検出する状態検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記初期化処理を行った後に、前記状態検出部の検出結果に基づいて前記初期化処理が正常になされたか否かを判断し、前記初期化処理が正常になされた場合に、前記調光装置の制御を開始することを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
光源から射出された光を、画像情報に応じて変調して投写する画像投写部と、光を遮る遮光部材を動かして前記光源から射出された光の光量を調整する調光装置と、少なくとも前記調光装置を収容する筐体と、前記調光装置による前記光量の調整状態を、前記画像情報に基づいて制御する制御部と、を備えたプロジェクターの制御方法であって、
前記筐体の内部の温度を検出する温度検出ステップと、
前記温度検出ステップで検出された温度が所定温度以上になった場合に、前記制御部による前記調光装置の制御を開始するための初期化処理を行う初期化ステップと、
を備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクターの制御方法であって、
前記初期化ステップでは、前記調光装置の前記調整状態を所定の初期状態に設定することを特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のプロジェクターの制御方法であって、
前記調光装置の制御が正常になされているか否かを判断する第1の判断ステップをさらに備え、
前記初期化ステップでは、前記第1の判断ステップで前記調光装置の制御が正常ではないと判断された場合に前記初期化処理を行うことを特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載のプロジェクターの制御方法であって、
前記初期化ステップの後に、前記初期化処理が正常になされたか否かを判断する第2の判断ステップと、
前記第2の判断ステップにて、前記初期化処理が正常になされたと判断された場合に、前記調光装置の制御を開始する制御開始ステップと、
をさらに備えたことを特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44851(P2013−44851A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181294(P2011−181294)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】