説明

プロジェクター

【課題】光学素子を効果的に冷却できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、冷却流体により光学素子を冷却する冷却装置4を備える。冷却装置4は、冷却流体を吐出する吐出手段と、光束を通過させる透光性基板Cr1及び光学素子が互いに隙間を空けた状態で取り付けられ、透光性基板Cr1及び光学素子との間で内部に所定の空間Arが形成される枠状の光学素子保持部5とを備える。光学素子保持部5には、吐出手段から吐出された冷却流体を空間Arに流入させる2つの流入部54A,54Bと、空間Ar内部の冷却流体を空間Ar外部に流出させる流出部55A,55Bとが設けられている。2つの流入部54A,54Bは、空間Arへの冷却流体の各流入方向R1,R2が互いに交差するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、液晶パネルや偏光板等の光学素子を冷却する冷却装置を備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の冷却装置は、一対のシロッコファンと、一対のシロッコファンから吐出された空気を光学素子の下方側に導くダクトとを備える。
そして、一対のシロッコファンから吐出された空気は、ダクトを介して、下方側から上方側に向けて光学素子の表面に沿って流通し、当該光学素子を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−121931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、ダクトから光学素子に向うまでに空気の流速が低下し、当該流速の低い空気が光学素子の表面に沿って流通する恐れがある。
光学素子の表面に沿って流通する空気の流速が低い場合には、当該空気は、所謂、層流(乱れを含まない流れ)の状態で光学素子の表面に沿って流通する。
また、光学素子の表面には、空気の粘性の影響により、所謂、速度境界層(流体の流速の変化が激しい薄い層の領域(表面で流速がゼロ))が存在する。
そして、上記のように層流の状態で光学素子の表面に沿って空気が流通した場合には、光学素子の表面の速度境界層により、流通する空気と光学素子との間で熱交換が良好に行われないこととなる。
したがって、光学素子を効果的に冷却することが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、光学素子を効果的に冷却できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクターは、冷却流体により光学素子を冷却する冷却装置を備えたプロジェクターであって、前記冷却装置は、前記冷却流体を吐出する吐出手段と、光束を透過させる透光性基板及び前記光学素子が互いに隙間を空けた状態で取り付けられ、前記透光性基板及び前記光学素子との間で内部に所定の空間が形成される枠状の光学素子保持部とを備え、前記光学素子保持部には、前記吐出手段から吐出された前記冷却流体を前記空間に流入させる少なくとも2つの流入部と、前記空間内部の前記冷却流体を前記空間外部に流出させる流出部とが設けられ、前記少なくとも2つの流入部は、前記空間への前記冷却流体の各流入方向が互いに交差するように設けられていることを特徴とする。
ここで、冷却流体とは、空気に限らず、液体等も含むものである。
【0007】
本発明では、吐出手段からの冷却流体は、少なくとも2つの流入部を介して、上述したように透光性基板及び光学素子が配設されることで光学素子保持部内部に形成される空間に流入し、光学素子の表面に沿って流通することとなる。
そして、少なくとも2つの流入部は、空間への冷却流体の各流入方向が互いに交差するように設けられている。
このことにより、少なくとも2つの流入部を介して空間に流入した冷却流体同士を互いに衝突させることができる。このため、当該衝突によって、光学素子の表面に沿って乱流の状態で冷却流体を流通させることができる。
そして、光学素子の表面に沿って乱流の状態で冷却流体が流通した場合には、光学素子の表面に存在する速度境界層を破壊する、あるいは、速度境界層を薄くすることができる。
すなわち、光学素子の表面の速度境界層を破壊する、あるいは、速度境界層を薄くすることで、流通する冷却流体と光学素子との間で熱交換を良好に行わせることができ、光学素子を効果的に冷却できる。
【0008】
ところで、従来の構成では、ダクトと光学素子とが離間しているため、ダクトを介して光学素子の表面に空気を送風することが難しい。
本発明では、光学素子保持部内部に上述した空間を形成し、当該空間に冷却流体を流入させる構成としているので、光学素子の表面に沿って冷却流体を確実に流通させることができる。
また、透光性基板及び光学素子の隙間を小さくすれば、空間の流路断面積を小さくすることができ、吐出手段の性能をそれほど高くしなくても、光学素子の表面に沿って流通する冷却流体(空間に流入した冷却流体)の流速を高くすることができる。
【0009】
本発明のプロジェクターでは、前記冷却流体は、空気であることが好ましい。
ところで、空気は、液体に比較して、動粘性係数が小さいものである。
そして、冷却流体の動粘性係数が小さい場合(冷却流体が空気の場合)には、動粘性係数が大きい場合(冷却流体が液体の場合)に比較して、光学素子の表面に存在する速度境界層が薄くなるものである。
したがって、冷却流体として液体を利用する場合と比較して、速度境界層を薄くして流通する空気と光学素子との熱交換を良好に行わせることができる。
【0010】
本発明のプロジェクターでは、前記少なくとも2つの流入部は、前記光学素子に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記光学素子の表面の中心位置で前記各流入方向が互いに交差するように設けられていることが好ましい。
ところで、光学素子に光束を照射する場合には、光学素子全体を均一に照射することができず、光学素子の表面における中心領域(中心位置を含む所定の領域)の照度が高く、他の領域の照度が低くなる。すなわち、光学素子には、高い照度の中心領域の温度が高く、低い照度の他の領域の温度が低くなり、照度分布に応じて温度分布が生じることとなる。
【0011】
本発明では、少なくとも2つの流入部が上述したように設けられているので、少なくとも2つの流入部を介して空間に流入した冷却流体同士を光学素子の表面の中心位置で互いに衝突させることができる。
すなわち、光学素子の表面に沿って流通する冷却流体には、光学素子の表面における中心領域で乱流が生じることなり、当該中心領域の速度境界層を主に破壊あるいは薄くすることができる。
したがって、光学素子の表面における中心領域の速度境界層を主に破壊あるいは薄くすることで、流通する冷却流体により当該中心領域を主に冷却し、光学素子の温度分布を均一化することができる。
【0012】
本発明のプロジェクターでは、前記流出部は、複数設けられていることが好ましい。
本発明では、流出部が複数設けられているので、流入部を介して空間に流入した冷却流体を空間外部に良好に排出することができる。
したがって、光学素子にて温められた冷却流体が空間に滞留することを抑制し、冷却流体と光学素子との熱交換をより良好に行わせることができる。
【0013】
本発明のプロジェクターでは、前記流出部の数は、前記流入部の数と同一であり、前記複数の流出部は、前記少なくとも2つの流入部にそれぞれ対向し、対向する前記流入部の前記流入方向に沿って外部と前記空間とを連通することが好ましい。
本発明では、流出部の数は、流入部の数と同一であり、上述したように外部と空間とを連通する。すなわち、各流入部における冷却流体の各流入方向の先に、当該各流入方向に沿って外部と空間とを連通した各流出部がそれぞれ設けられている。
このことにより、各流入部を介して空間に流入し、光学素子の表面に沿って流通した後の冷却流体を、各流出部を介して空間外部に良好に排出することができる。
したがって、光学素子にて温められた冷却流体が空間に滞留することをより一層抑制できる。
【0014】
本発明のプロジェクターでは、前記冷却装置は、内部に前記冷却流体を流通可能とする複数の流体循環部材を備え、前記複数の流体循環部材は、前記吐出手段と前記流入部及び前記流出部との間に接続され、前記冷却流体を前記吐出手段から前記光学素子保持部を介して再度、前記吐出手段に戻す環状の流路を形成することが好ましい。
本発明では、複数の流体循環部材にて吐出手段と流入部及び流出部とが接続されることで環状の流路が形成され、冷却流体は、環状の流路に沿って循環する。
このことにより、冷却流体を略密閉された環状の流路に沿って循環させることができ、外部から塵埃等が冷却流体に混入し、光学素子の表面に付着する等の不具合を防止できる。したがって、良好な画質の投影画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における冷却装置の構成を模式的に示す図。
【図3】第1実施形態における光学素子保持部の構造を示す図。
【図4】第1実施形態における光学素子保持部の構造を示す図。
【図5】第1実施形態における光学素子保持部の構造を示す図。
【図6】第1実施形態における流入部及び流出部の各連通方向を示す図。
【図7】第1実施形態における光学素子保持部内部に流入した空気の流通状態を示す図。
【図8】第2実施形態における光学素子保持部を光入射側から見た斜視図。
【図9】第3実施形態における光学素子保持部を光入射側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3及び冷却装置4(図2参照)を備える。
【0017】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、図1に示すように、発光管311及びリフレクター312を有する光源装置31と、レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、3つの光変調装置36と、3つの出射側偏光板37と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム38と、投射光学装置としての投射レンズ39とを備える。
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各光変調装置36にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム38にて合成されて画像となり、投射レンズ39にてスクリーンに投射される。
【0018】
〔冷却装置の構成〕
図2は、冷却装置4の構成を模式的に示す図である。
冷却装置4は、環状の流路C(図2)に沿って冷却流体を循環させ、当該冷却流体により光変調装置36を冷却する。
本実施形態では、冷却流体として、空気を利用している。
そして、冷却装置4は、図2に示すように、光学素子保持部としての3つの光学素子保持部5と、ラジエーター6と、吐出手段としての流体吐出装置7と、複数の流体循環部材8とを備える。
複数の流体循環部材8は、内部に空気を流通可能とする管状部材で構成され、各部材5〜7を接続し、環状の流路Cを形成する。
なお、流体循環部材8による各部材5〜7の接続構造については、後述する。
【0019】
〔光学素子保持部の構成〕
図3ないし図5は、光学素子保持部5の構造を示す図である。具体的に、図3は、光学素子保持部5を光入射側から見た斜視図である。図4は、図3のIV-IV線の断面図である。図5は、図3のV-V線の断面図である。
先ず、光学素子保持部5の構成を説明する前に、光変調装置36の構成について説明する。なお、各光変調装置36は、同様の構成であり、以下では1つの光変調装置36のみを説明する。
光変調装置36は、図4または図5に示すように、光学素子としての液晶パネル361と、透光性基板としての入射側防塵ガラスCr1と、出射側防塵ガラスCr2とを備える。
【0020】
液晶パネル361は、図4または図5に示すように、ガラス等からなる一対の基板361A,361Bに電気光学物質である液晶が密閉封入された構成を有している。
一対の基板361A,361Bのうち、一方の基板361Aは、液晶を駆動するための駆動基板であり、具体的な図示は省略したが、複数のデータ線と、複数の走査線と、走査線及びデータ線の交差に対応して形成された画素電極と、TFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子とを有している。
また、他方の基板361Bは、駆動基板361Aに対して所定間隔を空けて対向配置される対向基板であり、具体的な図示は省略したが、所定の電圧Vcomが印加される共通電極を有している。
そして、駆動基板361Aは、図4または図5に示すように、対向基板361Bの外形形状よりも大きい外形形状となるように形成されている。
【0021】
入射側防塵ガラスCr1は、水晶等の熱伝導性の高い透光性材料から構成され、対向基板361Bと略同一の外形形状を有し、対向基板361Bに対して光入射側に配設される。
出射側防塵ガラスCr2は、入射側防塵ガラスCr1と同様の材料から構成され、駆動基板361Aの外形形状と略同一の外形形状を有し、駆動基板361Aの外面(光出射側の端面)に貼り付けられている。
【0022】
3つの光学素子保持部5は、3つの光変調装置36をそれぞれ保持するとともに、内部に空気が流入出し、当該空気により3つの光変調装置36(液晶パネル361)をそれぞれ冷却する。なお、各光学素子保持部5は、同様の構成であり、以下では1つの光学素子保持部5のみを説明する。
この光学素子保持部5は、図3ないし図5に示すように、光変調装置36が内部に収納される矩形枠形状を有する。
【0023】
具体的に、光学素子保持部5において、光出射面には、図4または図5に示すように、駆動基板361Aの外形形状に対応した第1凹部51が形成されている。
また、第1凹部51の底部分には、対向基板361Bの外形形状に対応した第2凹部52が形成されている。
さらに、第2凹部52の底部分には、液晶パネル361の画像形成領域に対応して、光学素子保持部5の光入射面に貫通した開口部53が形成されている。
以上のように、光学素子保持部5は、各凹部51,52及び開口部53により光変調装置36に入射する光束の光軸に沿って貫通する枠状に形成されている。
【0024】
そして、入射側防塵ガラスCr1は、光学素子保持部5の光出射側から、光学素子保持部5内部に挿入され、図4または図5に示すように、光入射面が第2凹部52の底部分に当接した状態で、光学素子保持部5内部に収納される。
また、液晶パネル361は、出射側防塵ガラスCr2が貼り付けられた状態で、光学素子保持部5の光出射側から、光学素子保持部5内部に挿入される。そして、液晶パネル361は、図4または図5に示すように、駆動基板361Aが第1凹部51の底部分に当接した状態で、光学素子保持部5内部に収納される。
【0025】
以上のように、光学素子保持部5内部に光変調装置36が収納された状態では、図4または図5に示すように、入射側防塵ガラスCr1と、対向基板361Bとの間に隙間が形成された状態となる。
すなわち、光学素子保持部5内部には、当該隙間により、第2凹部52の側壁、入射側防塵ガラスCr1、及び対向基板361Bの間で所定の空間Arが形成される。
本実施形態では、各凹部51,52の深さ寸法や、入射側防塵ガラスCr1及び対向基板361Bの厚み寸法を適宜、設定することで、入射側防塵ガラスCr1と対向基板361B間の離間寸法は、1mm以下に設定されている。
【0026】
また、光学素子保持部5において、下方側の端部における左右方向の略中央部分の位置には、図3または図4に示すように、外部に突出する第1流入部54Aが形成されている。
さらに、光学素子保持部5において、光入射側から見て右側の端部における上下方向の略中央部分の位置には、図3または図5に示すように、外部に突出する第2流入部54Bが形成されている。
また、光学素子保持部5において、上方側の端部における左右方向の略中央部分の位置(第1流入部54Aに対向する位置)には、図3または図4に示すように、外部に突出する第1流出部55Aが形成されている。
さらに、光学素子保持部5において、光入射側から見て左側の端部における上下方向の略中央部分の位置(第2流入部54Bに対向する位置)には、図3または図5に示すように、外部に突出する第2流出部55Bが形成されている。
【0027】
図6は、第1,第2流入部54A,54B及び第1,第2流出部55A,55Bの各連通方向R1〜R4をそれぞれ示す図である。具体的に、図6は、光学素子保持部5を光入射側から見た図である。
第1,第2流入部54A,54B、及び第1,第2流出部55A,55Bは、図4または図5に示すように、光学素子保持部5外部と第2凹部52とを連通する部分であり、光学素子保持部5内部に光変調装置36が収納された状態では、光学素子保持部5外部と空間Arとをそれぞれ連通する。
そして、第1,第2流入部54A,54B、及び第1,第2流出部55A,55Bは、図6に示すように、液晶パネル361に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、光学素子保持部5外部から空間Arへの各連通方向R1〜R4が液晶パネル361(対向基板361B)の中心位置Oで互いに交差するように形成されている。
【0028】
より具体的に、各連通方向R1,R2は、図6に示すように、互いに90°で交差する。
また、第1,第2流出部55A,55Bは、第1,第2流入部54A,54Bにそれぞれ対向し、対向する流入部54A,54Bの各連通方向R1,R2に沿って外部と空間Arとを連通する。すなわち、各連通方向R3,R4も、図6に示すように、互いに90°で交差する。
【0029】
〔ラジエーターの構成〕
ラジエーター6は、環状の流路Cに沿って循環する空気の熱を放熱する部分である。
このラジエーター6は、具体的な図示は省略したが、複数回、折れ曲がって蛇行するように形成された管状部材と、当該管状部材が貫通され、当該管状部材と熱伝達可能に接続する複数のフィン状部材とで構成されている。
すなわち、管状部材内部を空気が流通する際に、当該空気の熱が管状部材及び複数のフィン状部材を介して外部に放熱される。
【0030】
〔流体吐出装置の構成〕
流体吐出装置7は、ポンプやファン等で構成され、空気を吸入及び吐出し、環状の流路Cに沿って空気を循環させる部分である。
【0031】
〔流体循環部材による接続構造〕
次に、流体循環部材8による各部材5〜7の接続構造について説明する。
なお、以下では、説明の便宜上、図2に示すように、3つの光学素子保持部5のうち、R色光側の光変調装置36を保持する光学素子保持部をR側光学素子保持部5R、G色光側の光変調装置36を保持する光学素子保持部をG側光学素子保持部5G、B色光側の光変調装置36を保持する光学素子保持部をB側光学素子保持部5Bとする。
流体循環部材8は、図2に示すように、第1〜第5流体循環部材8A〜8Eの5本で構成されている。
【0032】
具体的に、第1流体循環部材8Aは、流入側が流体吐出装置7の吐出側に接続され、流出側がラジエーター6の前記管状部材の一端に接続される。
第2流体循環部材8Bは、流入側がラジエーター6の前記管状部材の他端に接続される。また、第2流体循環部材8Bは、流出側が2つに分岐し、R側光学素子保持部5Rの第1,第2流入部54A,54Bにそれぞれ接続される。
第3流体循環部材8Cは、流入側が2つに分岐し、R側光学素子保持部5Rの第1,第2流出部55A,55Bにそれぞれ接続される。また、第3流体循環部材8Cは、流出側が2つに分岐し、G側光学素子保持部5Gの第1,第2流入部54A,54Bにそれぞれ接続される。
【0033】
第4流体循環部材8Dは、流入側が2つに分岐し、G側光学素子保持部5Gの第1,第2流出部55A,55Bにそれぞれ接続される。また、第4流体循環部材8Dは、流出側が2つに分岐し、B側光学素子保持部5Bの第1,第2流入部54A,54Bにそれぞれ接続される。
第5流体循環部材8Eは、流入側が2つに分岐し、B側光学素子保持部5Bの第1,第2流出部55A,55Bに接続される。また、第5流体循環部材8Eは、流出側が流体吐出装置7の吸入側に接続される。
なお、第2流体循環部材8Bの流出側、第3,第4流体循環部材8C,8Dの各流入出側、第5流体循環部材8Eの流入側は、上述したように2つに分岐しているが、図2では図示を簡略化するために、当該分岐状態の図示を省略している。
【0034】
以上のような流体循環部材8による接続構造により、図2に示すように、流体吐出装置7〜ラジエーター6〜R側光学素子保持部5R(第1,第2流入部54A,54B〜空間Ar〜第1,第2流出部55A,55B)〜G側光学素子保持部5G(第1,第2流入部54A,54B〜空間Ar〜第1,第2流出部55A,55B)〜B側光学素子保持部5B(第1,第2流入部54A,54B〜空間Ar〜第1,第2流出部55A,55B)を辿り、再度、流体吐出装置7に戻る環状の流路Cが形成される。
【0035】
図7は、空間Arに流入した空気の流通状態を示す図である。具体的に、図7は、光学素子保持部5を光入射側から見た図である。
環状の流路Cに沿って循環する空気は、第1,第2流入部54A,54B及び第1,第2流出部55A,55Bが上述した位置に形成されているため、空間Arにおいて、以下に示すように、流通することとなる。
第1,第2流入部54A,54Bは、各連通方向R1,R2が中心位置Oで交差するように形成されている。このため、第1,第2流入部54A,54Bを介した空気A1,A2は、図7に示すように、各連通方向R1,R2に沿って空間Arにそれぞれ流入する。
すなわち、各連通方向R1,R2は、本発明に係る流入方向に相当する。以下では、説明の便宜上、各連通方向R1,R2を流入方向R1,R2と記載する。
【0036】
そして、空間Arに流入した空気A1,A2は、中心位置Oで互いに衝突し、乱流の状態で入射側防塵ガラスCr1及び対向基板361Bの表面に沿って流通し、入射側防塵ガラスCr1や液晶パネル361(対向基板361B)を冷却する。
入射側防塵ガラスCr1及び対向基板361Bの表面に沿って流通した後の空気は、図7に矢印で示すように、第1,第2流出部55A,55Bを介して空間Ar外部に流出する。
【0037】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、流体吐出装置7からの空気は、第1,第2流入部54A,54Bを介して、上述したように入射側防塵ガラスCr1及び液晶パネル361が配設されることで光学素子保持部5内部に形成される空間Arに流入し、入射側防塵ガラスCr1及び液晶パネル361(対向基板361B)の表面に沿って流通することとなる。
そして、第1,第2流入部54A,54Bは、空間Arへの空気の各流入方向R1,R2が互いに交差するように設けられている。
【0038】
このことにより、第1,第2流入部54A,54Bを介して空間Arに流入した空気A1,A2同士を互いに衝突させることができる。このため、当該衝突によって、液晶パネル361の表面に沿って乱流の状態で空気を流通させることができる。
そして、液晶パネル361の表面に沿って乱流の状態で空気が流通した場合には、液晶パネル361の表面に存在する速度境界層を破壊する、あるいは、速度境界層を薄くすることができる。
すなわち、液晶パネル361の表面の速度境界層を破壊する、あるいは、速度境界層を薄くすることで、流通する空気と液晶パネル361との間で熱交換を良好に行わせることができ、液晶パネル361を効果的に冷却できる。
【0039】
また、光学素子保持部5内部に空間Arを形成し、空間Arに空気を流入させる構成としているので、液晶パネル361の表面に沿って空気を確実に流通させることができる。
さらに、入射側防塵ガラスCr1及び対向基板361Bの隙間を小さくすれば、空間Arの流路断面積を小さくすることができ、流体吐出装置7の性能をそれほど高くしなくても、液晶パネル361の表面に沿って流通する空気(空間Arに流入した空気)の流速を高くすることができる。
【0040】
また、冷却流体として、液体に比較して、動粘性係数が小さいため液晶パネル361の表面に存在する速度境界層が薄くなる空気を利用している。
このことにより、冷却流体として液体を利用する場合と比較して、速度境界層を薄くして流通する空気と液晶パネル361との熱交換を良好に行わせることができる。
【0041】
さらに、第1,第2流入部54A,54Bにおける各流入方向R1,R2が中心位置Oで互いに交差するので、第1,第2流入部54A,54Bを介して空間Arに流入した空気A1,A2同士を中心位置Oで互いに衝突させることができる。
すなわち、液晶パネル361の表面に沿って流通する空気には、液晶パネル361の表面における中心領域(中心位置Oを含む所定の領域)で乱流が生じることとなり、当該中心領域の速度境界層を主に破壊あるいは薄くすることができる。
したがって、液晶パネル361の表面における中心領域の速度境界層を主に破壊あるいは薄くすることで、流通する空気により当該中心領域を主に冷却し、液晶パネル361の温度分布を均一化することができる。
【0042】
また、第1,第2流入部54A,54Bにおける空気の各流入方向R1,R2の先に、各流入方向R1,R2に沿って外部と空間Arとを連通した第1,第2流出部55A,55Bがそれぞれ設けられている。
このことにより、第1,第2流入部54A,54Bを介して空間Arに流入し、液晶パネル361の表面に沿って流通した後の空気を、第1,第2流出部55A,55Bを介して空間Ar外部に良好に排出することができる。
したがって、液晶パネル361にて温められた空気が空間Arに滞留することを抑制し、空気と液晶パネル361との熱交換をより一層良好に行わせることができる。
【0043】
また、第1流入部54Aが下方側の端部における左右方向の略中心位置に設けられ、第2流入部54Bが光入射側から見て右側の端部における上下方向の略中心位置に設けられている。
このことにより、第1,第2流入部54A,54Bを介して空間Arに流入した空気A1,A2を、空間Ar全体に亘って流通させることができ、液晶パネル361の冷却効率を向上させることができる。
さらに、5本の流体循環部材8により環状の流路Cが形成され、空気は、環状の流路Cに沿って循環する。
このことにより、液晶パネル361を冷却するための空気を略密閉された環状の流路Cに沿って循環させることができ、外部から塵埃等が当該空気に混入し、入射側防塵ガラスCr1や対向基板361Bの表面に付着する等の不具合を防止できる。
したがって、良好な画質の投影画像を表示することができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図8は、第2実施形態における光学素子保持部5を光入射側から見た斜視図である。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、図8に示すように、光学素子保持部5において、第2流出部55Bを省略し、本発明に係る流出部を第1流出部55Aの1つのみとした点が異なるのみである。その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
そして、本実施形態のように、本発明に係る流出部を第1流出部55Aの1つのみとした場合であっても、光学素子保持部5の構造の簡素化を図りつつ、前記第1実施形態と同様に液晶パネル361を効果的に冷却できるという効果を享受できる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図9は、第3実施形態における光学素子保持部5を光入射側から見た図である。
以下の説明では、前記第2実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施形態では、前記第2実施形態に対して、図9に示すように、光学素子保持部5において、第1流出部55Aが異なるのみである。その他の構成は、前記第2実施形態と同様である。
【0046】
具体的に、第1流出部55Aは、図9に示すように、光入射側から見て、光学素子保持部5の上方側の端部において、左側の角隅部分に形成されている。
また、第1流出部55Aは、前記第2実施形態と同様に、図9に示すように、液晶パネル361に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、連通方向R3が中心位置Oに向うように形成されている。
【0047】
上述した第3実施形態によれば、前記第2実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、矩形状の光学素子保持部5における4つの側壁部W1〜W4のうち、互いに隣り合う第1側壁部W1(下方側の側壁部)及び第2側壁部W2(光入射側から見て右側の側壁部)に第1,第2流入部54A,54Bがそれぞれ形成されている(図9)。また、第1,第2側壁部W1,W2とは異なる第3側壁部W3(上方側の側壁部)において、第1,第2側壁部W1,W2の角部分C1の対角位置にある角部分C2側に第1流出部55Aが形成されている(図9)。
このことにより、第1,第2流入部54A,54Bを介して空間Arに流入した空気は互いに衝突した後に角部分C2側に向けて流通するので、当該衝突した後の空気を、角部分C2側に形成された第1流出部55Aを介して空間Ar外部に良好に排出することができる。
【0048】
また、第1流出部55Aにおける空気の連通方向R3が中心位置Oに向うように(角部分C1,C2の対角方向に沿うように)設定されているので、衝突した後の空気を、第1流出部55Aを介して空間Ar外部にさらに良好に排出することができる。
したがって、本発明に係る流出部を第1流出部55Aの1つのみとして光学素子保持部5の構造の簡素化を図りながら、液晶パネル361にて温められた空気が空間Arに滞留することを抑制できる。
【0049】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、冷却流体として空気を利用していたが、これに限らず、水やエチレングリコール等の液体を冷却流体として利用しても構わない。
前記各実施形態では、略密閉された環状の流路Cに沿って空気を流通させていたが、これに限らず、第5流体循環部材8Eを省略した構成等、空気を循環させない構成を採用しても構わない。
【0050】
前記各実施形態では、本発明に係る透光性基板として入射側防塵ガラスCr1を採用し、当該入射側防塵ガラスCr1を利用して光学素子保持部5内部に空間Arを形成していたが、これに限らない。
例えば、本発明に係る透光性基板として入射側偏光板35を採用し、当該入射側偏光板35を利用して光学素子保持部5内部に空間Arを形成しても構わない。
前記各実施形態において、冷却対象として液晶パネル361を採用していたが、これに限らず、偏光変換素子323、入射側偏光板35、出射側偏光板37等の他の光学素子を冷却対象としても構わない。
【0051】
前記各実施形態において、本発明に係る流入部は、第1,第2流入部54A,54Bの2つ設けられていたが、3つ以上、設けても構わない。
例えば、前記第1実施形態において、第1,第2流出部55A,55Bのいずれか一方を、流入部として機能させても構わない。
なお、本発明に係る流出部も同様に、3つ以上、設けても構わない。
また、前記各実施形態において、本発明に係る流入部及び流出部の形成位置も、前記各実施形態で説明した形成位置に限らず、各流入方向R1,R2が交差していれば、いずれの位置に形成しても構わない。
【0052】
前記各実施形態では、第1,第2流入部54A,54B、及び第1,第2流出部55A,55Bの連通方向R1〜R4は、直線状に設定されていたが、これに限らず、折れ曲がるように設定してもよく、あるいは、曲線状に設定しても構わない。
【0053】
前記実施形態において、冷却装置4を構成する各部材5〜7の配設順序は、前記実施形態で説明した順序に限らず、その他の順序で配設しても構わない。
前記実施形態では、液晶パネル361は、3つ設けられていたが、その数は3つに限らず、1つ、2つ、あるいは、4つ以上であっても構わない。
前記実施形態において、光変調装置としては、透過型または反射型の液晶パネルの他、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調装置を採用しても構わない。
前記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクターの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクターにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアターに用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・プロジェクター、4・・・冷却装置、5・・・光学素子保持部、7・・・流体吐出装置(吐出手段)、8・・・流体循環部材、54A・・・第1流入部、54B・・・第2流入部、55A・・・第1流出部、55B・・・第2流出部、361・・・液晶パネル(光学素子)、Ar・・・空間、C・・・環状の流路、Cr1・・・入射側防塵ガラス(透光性基板)、O・・・中心位置、R1,R2・・・流入方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体により光学素子を冷却する冷却装置を備えたプロジェクターであって、
前記冷却装置は、
前記冷却流体を吐出する吐出手段と、
光束を透過させる透光性基板及び前記光学素子が互いに隙間を空けた状態で取り付けられ、前記透光性基板及び前記光学素子との間で内部に所定の空間が形成される枠状の光学素子保持部とを備え、
前記光学素子保持部には、
前記吐出手段から吐出された前記冷却流体を前記空間に流入させる少なくとも2つの流入部と、前記空間内部の前記冷却流体を前記空間外部に流出させる流出部とが設けられ、
前記少なくとも2つの流入部は、
前記空間への前記冷却流体の各流入方向が互いに交差するように設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却流体は、空気である
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記少なくとも2つの流入部は、
前記光学素子に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記光学素子の表面の中心位置で前記各流入方向が互いに交差するように設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記流出部は、複数設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記流出部の数は、
前記流入部の数と同一であり、
前記複数の流出部は、
前記少なくとも2つの流入部にそれぞれ対向し、対向する前記流入部の前記流入方向に沿って外部と前記空間とを連通する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記冷却装置は、
内部に前記冷却流体を流通可能とする複数の流体循環部材を備え、
前記複数の流体循環部材は、
前記吐出手段と前記流入部及び前記流出部との間に接続され、前記冷却流体を前記吐出手段から前記光学素子保持部を介して再度、前記吐出手段に戻す環状の流路を形成する
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−198402(P2012−198402A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62566(P2011−62566)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】