説明

プロジェクター

【課題】簡易かつ小型な構成で、高品質な画像を得ることが可能なプロジェクターを提供すること。
【解決手段】互いに異なる波長域の色光であるコヒーレント光を射出する複数の光源部と、複数の光源部から入射したコヒーレント光を回折させ、回折光を射出する回折光学素子12と、回折光学素子12から入射した回折光の光束を平行化させる平行化レンズ14と、平行化レンズ14から入射した光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置15と、回折光学素子12を動かすことにより、回折光学素子12におけるコヒーレント光の入射位置を変化させる駆動手段である回転モーター13と、を有し、回折光学素子12には、コヒーレント光を回折させる複数のホログラム構造が形成され、コヒーレント光を入射させるホログラム構造を駆動手段の駆動により時間的に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、特に、回折光学素子による回折光を利用して画像を表示するプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
一つの空間光変調装置によって複数の色光を変調する、いわゆる単板式プロジェクターは、色光ごとに設けられた複数の空間光変調装置を用いる場合に比較して、プロジェクターを簡易な構成とし、小型にできるという利点がある。従来、単板式プロジェクターの一つとして、空間光変調装置に対して互いに異なる入射角度で各色光を入射させることにより、各画素へ各色光を振り分けるカラー表示方式を採用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、単板式プロジェクターにおいて、回折光学素子を用いて、各画素へ各色光を振り分ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。回折光学素子は、コヒーレント光であるレーザー光を回折させることにより、照射領域の整形及び拡大、照射領域における光量分布の均一化を行う。回折光学素子に複数の機能を持たせることで、プロジェクターは、さらにコンパクトにできる。回折光学素子としては、例えば、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)を用いる。CGHは、比較的設計が容易であること、高精度な形状を作製できること、転写によって容易に複製品を作製できることが長所として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−60538号公報
【特許文献2】特開2007−286110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デジタルホログラムであるCGHを用いる場合、例えば回折光同士が干渉し合うことにより、照射領域において粒状の照度ムラが生じる場合がある。照射領域における照度ムラは、画像の光量分布へ影響を及ぼすことで、画像の品質を低下させる原因となり得る。本発明は、簡易かつ小型な構成で、高品質な画像を得ることが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るプロジェクターは、互いに異なる波長域の色光であるコヒーレント光を射出する複数の光源部と、前記複数の光源部から入射した前記コヒーレント光を回折させ、回折光を射出する回折光学素子と、前記回折光学素子から入射した前記回折光の光束を平行化させる平行化レンズと、前記平行化レンズから入射した光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、前記回折光学素子を動かすことにより、前記回折光学素子における前記コヒーレント光の入射位置を変化させる駆動手段と、を有し、前記回折光学素子には、前記コヒーレント光を回折させる複数のホログラム構造が形成され、前記コヒーレント光を入射させる前記ホログラム構造を前記駆動手段の駆動により時間的に変化させることを特徴とする。
【0006】
回折光学素子には、回折光の方向、照射領域の形状を同じとし、照度ムラの出方が異なるように設計された複数のホログラム構造を用意する。ホログラム構造のそれぞれに光が入射するように回折光学素子を高速に動かし、コヒーレント光を入射させるホログラム構造を時間的に変化させる。コヒーレント光を入射させるホログラム構造を時間的に変化させることにより、各ホログラム構造から射出させる回折光を照射領域の位置で時間的に重畳させる。照度ムラの出方が異なる回折光を時間的に重畳させることにより、照度ムラを目立たなくさせ、画像の光量分布への影響を低減させる。プロジェクターは、複数の色光を変調する空間光変調装置と回折光学素子とを用いることで、簡易かつ小型な構成にできる。これにより、プロジェクターを簡易かつ小型な構成とし、高品質な画像を得ることができる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様としては、前記コヒーレント光を入射させる前記ホログラム構造を前記駆動手段の駆動により連続的に変化させることが望ましい。これにより、各色光を入射させるホログラム構造を時間的に変化させる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様としては、前記駆動手段は、前記回折光学素子を回転させることが望ましい。これにより、各色光を入射させるホログラム構造を時間的に変化させるように、回折光学素子を動かすことができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、複数の色光のうちピーク波長が長い色光ほど、前記回折光学素子のうち前記駆動手段による回転中心から離れた位置へ入射させることが望ましい。デジタルホログラムによる照度ムラは、光が長波長であるほど低周波のムラとなって目立ち易くなる。回転中心から離れた位置へ長波長の光を入射させることで、より多くのホログラム構造からの回折光を時間的に重畳させる。照度ムラのパターンを時間的により多く重畳させることで、照度ムラが生じ易い長波長の光について、照度ムラを目立たなくすることができる。これにより、画像全体について、照度ムラを低減させることができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、一つの前記回折光学素子を有し、前記回折光学素子へ複数の色光が入射することが望ましい。一つの回折光学素子へ各色光を入射させる構成とすることで回折光学素子を回転させるための駆動手段を一つにでき、機械的な不具合の発生を低減させることができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、二つ以上の前記回折光学素子を有し、それぞれの前記回折光学素子へ異なる色光が入射することが望ましい。複数の色光を複数の回折光学素子へ振り分けることにより、回折光学素子の径を小さくできる。これにより、プロジェクターの小型化、薄型化が可能となる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様としては、前記駆動手段は、前記回折光学素子を揺動させることが望ましい。これにより、回折光学素子における各色光の入射位置が変化するように、回折光学素子を動かすことができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様としては、前記駆動手段は、第1の方向へ前記回折光学素子を揺動させる第1駆動手段と、前記第1の方向に略垂直な第2の方向へ前記回折光学素子を揺動させる第2駆動手段と、を有し、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段は、互いに異なる周期で前記回折光学素子を揺動させることが望ましい。これにより、多くのホログラム構造へ光を入射させることにより多くの照度ムラのパターンを時間的に重畳可能とし、照度ムラの効果的な低減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係るプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
【図2】回折光学素子の平面模式図である。
【図3】実施例2に係るプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
【図4】実施例3に係るプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
【図5】図4に示す構成の一部についての斜視図である。
【図6】デジタルホログラムによる照度ムラについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係るプロジェクター10の概略構成を示す模式図である。プロジェクター10は、一つの空間光変調装置15によって三つの色光を変調する、いわゆる単板式プロジェクターである。赤色(R)光用光源部11R、緑色(G)光用光源部11G、青色(B)光用光源部11Bは、コヒーレント光であるレーザー光を射出する光源部であって、互いに異なる波長域の色光を射出する。R光用光源部11Rは、R光を射出するレーザー光源であって、例えば、半導体レーザーを備える。G光用光源部11Gは、G光を射出するレーザー光源であって、例えば、半導体励起固体(Diode Pumped Solid State:DPSS)レーザーを備える。B光用光源部11Bは、B光を射出するレーザー光源であって、例えば、半導体レーザーを備える。なお、各色光は、コリメーターレンズにより光束を平行化することとしても良い。
【0017】
回折光学素子12は、各色光用光源部11R、11G、11Bから入射したレーザー光を回折させ、回折光を射出する。回折光学素子12は、ガウス強度分布を持つレーザービームを、空間光変調装置15の矩形形状へ整形し、さらに光量分布を均一化させる。プロジェクター10は、例えば、回折光学素子12で生じた一次回折光を変調することにより、画像を表示する。平行化レンズ14は、回折光学素子12から入射した回折光の光束を平行化させる。回折光学素子12及び平行化レンズ14は、空間光変調装置15の照射領域の位置で各色光を重畳させる。回転モーター13は、回折光学素子12を回転させる駆動手段である。回転モーター13は、回折光学素子12を回動させることにより、回折光学素子12へ入射する各色光の入射位置を変化させる。
【0018】
空間光変調装置15は、平行化レンズ14から入射した光を画像信号に応じて変調する。空間光変調装置15は、例えば、透過型液晶表示装置である。空間光変調装置15は、複数のマイクロレンズをアレイ状に並列させたマイクロレンズアレイ(図示省略)を有する。マイクロレンズアレイを構成する複数のマイクロレンズは、空間光変調装置15の照射領域における画素と同じピッチで設けられている。空間光変調装置15の照射領域における画素は、R光用、G光用、B光用の各サブ画素により構成されている。マイクロレンズに対して互いに異なる入射角度で入射した各色光は、画素内のそれぞれのサブ画素へ集光される。マイクロレンズアレイを設けることにより、マイクロレンズに入射した各色光を異なる位置に集光させ、各サブ画素に各色光を高精度に分配することができる。投写レンズ16は、空間光変調装置15で変調された光をスクリーン(図示省略)に投写させる。なお、マイクロレンズアレイは、空間光変調装置15に付属するものである場合に限られず、空間光変調装置15とは別のものとしても良い。
【0019】
図2は、回折光学素子12の平面模式図である。回折光学素子12は、微小な凹凸が表面に施された表面レリーフ型の回折光学素子の一つである。回折光学素子12は、回転モーター13の回転軸20を中心とする円形状をなしている。回折光学素子12の表面には、B光用回折領域17、G光用回折領域18、R光用回折領域19が形成されている。B光用回折領域17、G光用回折領域18、R光用回折領域19は、回転軸20を中心として同心円状に設けられている。各領域のうち、B光用回折領域17は、回折光学素子12のうち回転軸20に最も近い中央部に設けられている。R光用回折領域19は、回折光学素子12のうち回転軸20から最も離れた外縁部に設けられている。G光用回折領域18は、B光用回折領域17及びR光用回折領域19の間に設けられている。
【0020】
各回折領域17、18、19には、それぞれ複数のCGH構造(ホログラム構造)21、22、23が形成されている。CGH構造21、22、23は、各回折領域17、18、19において、回転軸20を中心とする同心円状に並列させて設けられている。各CGH構造21、22、23には、それぞれ複数の凹凸が形成されている。CGH構造21、22、23は、凹凸の幅、配置パターンを含む表面条件が最適化されている。
【0021】
B光用回折領域17に形成されたCGH構造21は、B光LBに対して表面条件が最適化されている。各CGH構造21は、B光LBを回折させる。各CGH構造21は、空間光変調装置15の照射領域へB光LBを進行させる以外に、B光LBについて、CGH構造21同士で照度ムラの出方が変化するように設計されている。
【0022】
G光用回折領域18に形成されたCGH構造22は、G光LGに対して表面条件が最適化されている。各CGH構造22は、G光LGを回折させる。各CGH構造22は、空間光変調装置15の照射領域へG光LGを進行させる以外に、G光LGについて、CGH構造22同士で照度ムラの出方が変化するように設計されている。
【0023】
R光用回折領域19に形成されたCGH構造23は、R光LRに対して表面条件が最適化されている。各CGH構造23は、R光LRを回折させる。各CGH構造23は、空間光変調装置15の照射領域へR光LRを進行させる以外に、R光LRについて、CGH構造23同士で照度ムラの出方が変化するように設計されている。
【0024】
回折光学素子12の表面条件を最適化する設計手法としては、例えば反復フーリエ変換等、所定の演算手法(シミュレーション手法)を用いる。回折光学素子12は、例えば、所望の形状を備えるモールド(型)を形成した後、モールドの形状を基板に熱転写する、いわゆるナノインプリントの手法を用いて製造する。この他、回折光学素子12は、所望の形状を形成可能であれば、従来用いられる他の手法により製造することとしても良い。
【0025】
B光用光源部11Bから射出されたB光LBは、B光用回折領域17へ入射する。G光用光源部11Gから射出されたG光LGは、G光用回折領域18へ入射する。R光用光源部11Rから射出されたR光LRは、R光用回折領域19へ入射する。回転モーター13が回折光学素子12を回転させることにより、B光LBは、B光用回折領域17に並列させたCGH構造21へ順次入射する。G光LGは、G光用回折領域18に並列させたCGH構造22へ順次入射する。R光LRは、R光用回折領域19に並列させたCGH構造23へ順次入射する。
【0026】
このように、回折光学素子12を回動させることにより、B光LBを入射させるCGH構造21、G光LGを入射させるCGH構造22、R光LRを入射させるCGH構造23を、それぞれ連続的に変化させる。これにより、各色光LB、LG、LRを入射させるCGH構造21、22、23を時間的に変化させる。B光用回折領域17のCGH構造21から射出したB光LB、G光用回折領域18のCGH構造22から射出したG光LG、R光用回折領域19のCGH構造23から射出したR光LRは、いずれも平行化レンズ14を経て、空間光変調装置15の位置で時間的に重畳される。
【0027】
デジタルホログラムであるCGHは、例えば、回折光同士が干渉し合うことにより、粒状の照度ムラを生じさせる場合がある。本実施例に係るプロジェクター10は、照度ムラの出方が異なる回折光を時間的に重畳させることにより、照度ムラを目立たなくさせ、画像の光量分布への影響を低減させることが可能となる。デジタルホログラムによる照度ムラは、光が長波長であるほど低周波のムラとなって目立ち易くなる。例えば、図6に照度ムラの出方を表すように、450nmのB光の照度ムラと640nmのR光の照度ムラとでは、長波長であるR光のほうが粗い照度ムラが生じることとなる。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施例のプロジェクター10は、回転中心に近い側からB光LB、G光LG、R光LRの順になるように、回折光学素子12へ各色光を入射させる。各色光のうちピーク波長が長い色光ほど回転中心から離れた位置へ入射させることにより、ピーク波長が長い色光ほど、回折光学素子12を一回転させる間に時間的に重畳させる照度ムラのパターンを多くすることが可能となる。照度ムラのパターンを時間的に多く重畳させることにより、照度ムラが生じ易い長波長の色光について、照度ムラを目立たせなくすることができる。これにより、画像全体について、照度ムラを低減させることが可能となる。プロジェクター10は、複数の色光を変調する空間光変調装置15とCGH12とを用いることで、簡易かつ小型な構成にできる。以上により、プロジェクター10を簡易かつ小型な構成とし、高品質な画像を得られるという効果を奏する。
【0029】
本実施例に係るプロジェクター10において、空間光変調装置15へ入射させる各色光の入射角度は、照射領域とマイクロレンズとの距離、及びサブ画素の間隔によって定まる。照射領域とマイクロレンズとの距離を長くし、またサブ画素の間隔を短くすることにより、マイクロレンズへ入射する各色光の入射角度を小さくできる。マイクロレンズへ入射する各色光の入射角度を小さくできるほど、回折光学素子12へ入射させる各色光の間隔を短くでき、回折光学素子12を小型にすることが可能となる。回折光学素子12を小型にできるほど、プロジェクター10は、小型化、薄型化が可能となる。なお、空間光変調装置15における画素の開口率はサブ画素の間隔に依存するため、サブ画素の間隔は、空間光変調装置15の透過率との関係に応じて、適切に設定されることが望ましい。
【0030】
デジタルホログラムによる照度ムラを低減させる手法としては、光を拡散させる拡散板を配置する手法も採り得る。例えば、回折光学素子12及び平行化レンズ14の間の光路中に拡散板を設けると、平行化レンズ14からの光束の平行度が低下することで、マイクロレンズによる集光スポットが拡大することとなる。集光スポットの拡大は、空間光変調装置15の透過率の低下や混色を引き起こす場合がある。これに対して、本実施例に係るプロジェクター10は、平行化レンズ14からの光束の平行度を保持したまま照度ムラを低減可能であるため、高い光利用効率及び良好な色再現性を得られるという利点がある。また、本実施例に係るプロジェクター10は、レーザー光のコヒーレンス性によって生じるスペックルノイズを低減させる効果も得られる。
【0031】
本実施例では、一つの回折光学素子12へ各色光を入射させる構成とすることで、回折光学素子12を回転させるための駆動手段を一つにでき、機械的な不具合の発生を低減させることができる。なお、駆動手段は、回折光学素子12を連続して回転させることが可能であれば良く、回転モーター13以外のものであっても良い。駆動手段は、レーザー光を入射させるホログラム構造を連続的に変化させるものに限られず、段階的に変化させるものであっても良い。
【実施例2】
【0032】
図3は、本発明の実施例2に係るプロジェクター30の概略構成を示す模式図である。本実施例に係るプロジェクター30は、二つの回折光学素子31、32を有することを特徴とする。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。第1回折光学素子31は、G光用光源部11Gから入射したG光を回折させ、回折光を射出する。第2回折光学素子32は、R光用光源部11Rから入射したR光、B光用光源部11Bから入射したB光を回折させ、回折光を射出する。第1回転モーター33は、第1回折光学素子31を回転させる駆動手段である。第2回転モーター34は、第2回折光学素子32を回転させる駆動手段である。
【0033】
第1回折光学素子31、第2回折光学素子32は、いずれも円形状をなしている。第1回折光学素子31の円形状の径は、第2回折光学素子32の円形状の径より小さい。第1回折光学素子31の表面には、G光用回折領域が形成されている。第2回折光学素子32の表面には、R光用回折領域及びB光用回折領域が形成されている。B光用回折領域は、第2回折光学素子32のうち中央部に設けられている。R光用回折領域は、第2回折光学素子32のうち外縁部に設けられている。
【0034】
第1回折光学素子31のG光用回折領域には、G光について表面条件が最適化されたCGH構造が設けられている。第2回折光学素子32のR光用回折領域には、R光について表面条件が最適化されたCGH構造が設けられている。第2回折光学素子32のB光用回折領域には、B光について表面条件が最適化されたCGH構造が設けられている。なお、本実施例では、各回折領域、CGH構造の図示を省略している。
【0035】
第1回折光学素子31から射出したG光、第2回折光学素子32から射出したR光、B光は、いずれも平行化レンズ14を経て、空間光変調装置15の位置で時間的に重畳される。本実施例の場合も、プロジェクター30を簡易かつ小型な構成とし、高品質な画像を得ることができる。本実施例では、第1回折光学素子31にG光、第2回折光学素子32にR光及びB光と、各色光を振り分けることにより、第1回折光学素子31、第2回折光学素子32の径を小さくできる。これにより、プロジェクター30のさらなる小型化、薄型化が可能となる。
【0036】
第1回折光学素子31にG光、第2回折光学素子32にR光及びB光をそれぞれ入射させることにより、ピーク波長が長い色光ほど、第1回折光学素子31、第2回折光学素子32をそれぞれ一回転させる間に時間的に重畳させる照度ムラのパターンを多くすることが可能となる。これにより、本実施例でも、照度ムラが生じ易い長波長の色光について、照度ムラを目立たせなくすることができる。なお、プロジェクター30は、二つ以上の回折光学素子を備え、それぞれへ異なる色光を入射させる構成であれば良く、各回折光学素子の配置、各回折光学素子へ入射させる色光の組み合わせ等、適宜変形しても良い。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明の実施例3に係るプロジェクター40の概略構成を示す模式図である。本実施例に係るプロジェクター40は、回折光学素子41を揺動させる駆動手段を有することを特徴とする。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。回折光学素子41は、各色光用光源部11R、11G、11Bから入射したレーザー光を回折させ、回折光を射出する。振動発生部42は、回折光学素子41を揺動させる駆動手段である。振動発生部42は、回折光学素子41を揺動させることにより、回折光学素子41へ入射する各色光の入射位置を変化させる。
【0038】
図5は、図4に示す構成の一部についての斜視図である。回折光学素子41は、矩形形状をなしている。回折光学素子41の表面には、各色光用光源部11R、11G、11Bに対応するように並列されたR光用回折領域43、G光用回折領域44、B光用回折領域45が形成されている。また、回折光学素子41は、固定治具46によって振動発生部42に固定されている。
【0039】
R光用回折領域43には、R光LRについて表面条件が最適化されたCGH構造23が設けられている。G光用回折領域44には、G光LGについて表面条件が最適化されたCGH構造22が設けられている。B光用回折領域45には、B光LBについて表面条件が最適化されたCGH構造21が設けられている。CGH構造21、22、23は、各回折領域45、44、43において二次元方向に並列させて設けられている。
【0040】
振動発生部42は、第1アクチュエーター47及び第2アクチュエーター48を有する。第1アクチュエーター47、第2アクチュエーター48は、リニアモーターの動力とバネの復元力とを利用し、特定の方向について往復運動をするリニア振動アクチュエーターである。リニア振動アクチュエーターは、小型で、高効率かつ高速な往復運動を得ることができるという特長を持つ。第1アクチュエーター47は、第1の方向であるY軸方向への振動を発生させる第1駆動手段として機能する。第2アクチュエーター48は、第2の方向であるX軸方向への振動を発生させる第2駆動手段として機能する。ここで、X軸及びY軸は、回折光学素子41の入射面に平行、かつ互いに垂直な軸であるとする。
【0041】
第1アクチュエーター47は、固定治具46を介して、Y軸方向へ回折光学素子41を揺動させる。第2アクチュエーター48は、第1アクチュエーター47及び固定治具46を介して、X軸方向へ回折光学素子41を揺動させる。振動発生部42が回折光学素子41を揺動させることにより、B光LBを入射させるCGH構造21、G光LGを入射させるCGH構造22、R光LRを入射させるCGH構造23を、それぞれ連続的に変化させる。これにより、各色光LB、LG、LRを入射させるCGH構造21、22、23を時間的に変化させる。
【0042】
第1アクチュエーター47及び第2アクチュエーター48は、互いに異なる周期で回折光学素子41を揺動させる。X軸方向及びY軸方向について互いに異なる周期で回折光学素子41を揺動させることにより、各回折領域43、44、45において多くのCGH構造21、22、23へ光を入射させることが可能となる。多くのCGH構造21、22、23へ各色光を入射させることにより多くの照度ムラのパターンを時間的に重畳可能とし、照度ムラの効果的な低減ができる。
【0043】
仮に、第1アクチュエーター47及び第2アクチュエーター48を同じ周期で回折光学素子41を揺動させる場合、回折光学素子41は、X軸及びY軸に対して斜め方向への直線運動、又は軌道が同一な円運動を繰り返すこととなる。これに対して、第1アクチュエーター47及び第2アクチュエーター48を互いに異なる周期で駆動させることで、回折光学素子41の動作を多様にでき、より多くのCGH構造21、22、23へ光を入射させることが可能となる。
【0044】
なお、駆動手段は、二次元方向へ連続して回折光学素子41を揺動させることが可能であれば良く、二つのリニア振動アクチュエーターを備える構成以外のものであっても良い。プロジェクターは、フロント投写型プロジェクター、リアプロジェクターのいずれであっても良い。フロント投写型プロジェクターは、スクリーンに光を投写させ、スクリーンで反射する光を観察することで画像を鑑賞するプロジェクターである。リアプロジェクターは、スクリーンの一方の面に光を供給し、スクリーンの他方の面から射出される光を観察することで画像を鑑賞するプロジェクターである。
【符号の説明】
【0045】
10 プロジェクター、11R R光用光源部、11G G光用光源部、11B B光用光源部、12 回折光学素子、13 回転モーター、14 平行化レンズ、15 空間光変調装置、16 投写レンズ、17 B光用回折領域、18 G光用回折領域、19 R光用回折領域、20 回転軸、21、22、23 CGH構造、30 プロジェクター、31 第1回折光学素子、32 第2回折光学素子、33 第1回転モーター、34 第2回転モーター、40 プロジェクター、41 回折光学素子、42 振動発生部、43 R光用回折領域、44 G光用回折領域、45 B光用回折領域、46 固定治具、47 第1アクチュエーター、48 第2アクチュエーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長域の色光であるコヒーレント光を射出する複数の光源部と、
前記複数の光源部から入射した前記コヒーレント光を回折させ、回折光を射出する回折光学素子と、
前記回折光学素子から入射した前記回折光の光束を平行化させる平行化レンズと、
前記平行化レンズから入射した光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置と、
前記回折光学素子を動かすことにより、前記回折光学素子における前記コヒーレント光の入射位置を変化させる駆動手段と、を有し、
前記回折光学素子には、前記コヒーレント光を回折させる複数のホログラム構造が形成され、
前記コヒーレント光を入射させる前記ホログラム構造を前記駆動手段の駆動により時間的に変化させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
前記コヒーレント光を入射させる前記ホログラム構造を前記駆動手段の駆動により連続的に変化させることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記回折光学素子を回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
複数の色光のうちピーク波長が長い色光ほど、前記回折光学素子のうち前記駆動手段による回転中心から離れた位置へ入射させることを特徴とする請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項5】
一つの前記回折光学素子を有し、前記回折光学素子へ複数の色光が入射することを特徴とする請求項3又は4に記載のプロジェクター。
【請求項6】
二つ以上の前記回折光学素子を有し、それぞれの前記回折光学素子へ異なる色光が入射することを特徴とする請求項3又は4に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記回折光学素子を揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記駆動手段は、第1の方向へ前記回折光学素子を揺動させる第1駆動手段と、前記第1の方向に略垂直な第2の方向へ前記回折光学素子を揺動させる第2駆動手段と、を有し、
前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段は、互いに異なる周期で前記回折光学素子を揺動させることを特徴とする請求項7に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84009(P2013−84009A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7199(P2013−7199)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2009−56035(P2009−56035)の分割
【原出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】